説明

反射型偏光板、光学部材、及び液晶表示装置

【課題】製造が比較的簡単で、層間剥離等の問題が生じ難い反射型偏光板を提供する。また、この反射型偏光板を用いて、液晶表示装置の光の利用効率を高めることが出来る光学部材および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】特定の断面形状を有し、特定の海島構造を有する繊維(A)と、特定の光学透明樹脂(B)とを用い、繊維(A)が略同一方向に配置された反射型偏光板とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイとして使用される液晶表示装置、当該液晶表示装置に好適な光学部材、及び、当該光学部材を構成する反射型偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に使用される偏光板としては、通常、ヨウ素で着色され、1軸延伸されたポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)フィルムを偏光子として用いて、その片面又は両面にトリアセチルセルロース(以下、TACと略す)フィルムを保護フィルムとして貼り合せたもの、又は偏光子の片面にアクリル樹脂等によるコーティング層を設けたもの、或いは偏光子の片面にノルボルネンやポリカーボネート等の位相差フィルムをTACの代わりに貼り合せたもの等の吸収型偏光板が用いられている。
しかしながら、この吸収型偏光板は、偏光板の透過軸方向の光しか透過せず、残りの成分の光は吸収してしまう特性を有しているため、理想条件でも50%の透過率(内表面反射4%を有するため最大光透過率46%が限界)であった。このため、バックライトの有効活用、及び輝度を高めることは、液晶表示装置の命題ともなっていた。
【0003】
この命題を解決する方法の一つとして、光学反射干渉特性を利用した反射型偏光板がある。例えば、特許文献1には、コレステリック液晶層と1/4波長板とを組み合わせた反射型偏光板が示されている。コレステリック液晶と1/4波長板とを組み合わせた反射型偏光板は、まず、コレステリック液晶層によって螺旋ピッチに対応した波長の右又は左円偏光を透過し、続いて、1/4波長板で直線偏光に変換して、左又は右円偏光を反射する。
しかしながら、この反射型偏光板は、可視光全域にわたってこの特性を実現することは困難であること、及びコレステリック液晶層の界面層間接着強度が弱いことから、容易に層間剥離を生じてしまうという問題を抱えていた。
【0004】
特許文献2、3には、複屈折を有する多層膜の干渉を用いた偏光素子が記載されており、屈折率の異なる2種類のポリマーフィルムの配向多層膜によって偏光分離を行う方法が開示されている。また、非特許文献1においては、原理は上記と同様であるが、単純なポリマーブレンドを利用した偏光分離方法が提案されている。また、最近では、ポリマーブレンドの代わりにファイバーを利用した偏光分離方法も報告されている(特許文献4参照)。
偏光分離方式による反射型偏光板は、透過しない偏光成分を反射するという特性があり、当該反射された光が液晶表示装置のバックライト側に設置されている拡散反射フィルムによって反射拡散され、多重反射を繰り返すことで偏光板の透過軸方向の光と一致する光をもう一度取り出すことが可能となるものであり、透過率60%以上を実現することが出来る。
【0005】
しかしながら、特許文献4及び非特許文献2にも記載されているように、反射型偏光板を実現するためには、ブレンドされるポリマーの屈折率とバルクとなる基材の屈折率とを厳密に一致させる必要や、ブレンドポリマー、ファイバーの形状や配置を厳密に制御する必要があり、製造上の大きな問題点が存在していた。また、反射型偏光板の一つとして、既に3M社からD−BEF(輝度上昇フィルム)という商品が市販されているものの、このD−BEFは、可視の広い領域に渡って偏光特性を確保する必要があるために、全体で400から800もの積層がなされたものである。したがって、厚み制御と数百層ものポリマーフィルムの積層をおこなうこと、さらには各層ごとの屈折率制御、フィルムの幅方向での均一な特性制御等、製造にあたって技術的に困難な点が多数存在していた。
【特許文献1】特開平8−271731号公報
【特許文献2】米国特許第3610729号明細書
【特許文献3】米国特許第5486949号明細書
【特許文献4】国際公開第2005年8302号公報
【非特許文献1】ジャーナル オブ アプライド フィジックス 37巻、1998年、第4389頁
【非特許文献2】月刊ディスプレイ 2005年4月号第13頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって反射型偏光板は、吸収型偏光素子と併用することにより液晶表示装置における光の利用効率を向上できる点で非常に有用ではあるものの、技術的に困難な面が多く、製造負荷の高い部材となっていた。
【0007】
本発明の目的は、製造が比較的簡単で、層間剥離等の問題が生じ難い反射型偏光板を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、この反射型偏光板を用いて、液晶表示装置の光の利用効率を高めることが出来る光学部材を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、この反射型偏光板が積層された光学部材を用いて、バックライト光の利用効率が高められた液晶表示装置を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的及び利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため、偏光板用の高分子材料、形状等を鋭意検討した。その結果、特定の断面形状を有し、特定の海島構造を有する繊維(A)と、特定の光学透明樹脂(B)とを用い、繊維(A)を略同一方向に配置することによって、比較的簡易な方法で反射型偏光板を製造できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、本発明の上記目的及び利点は、第1に、
繊維(A)および光学透明樹脂(B)を含有してなる反射型偏光板であって、前記繊維(A)は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂成分で構成される海島構造を有し、繊維軸方向に垂直な断面は、扁平率(長軸/短軸)1.5以上の扁平形状であり、繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分は、略多角形状であり、かつ、当該略多角形状の少なくとも一辺は、繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向に対して45度以上90度未満の角度をなし、前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂成分の繊維軸方向に垂直な方向の波長589nmにおける最大の屈折率と最小の屈折率との屈折率差は、0.01以下であり、前記光学透明樹脂(B)の屈折率は、前記繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率と略同一であり、前記繊維(A)は、略同一方向に配置されている反射型偏光板よって達成される。
【0013】
本発明によれば、本発明の上記目的及び利点は、第2に、
本発明の反射型偏光板と、他の光学機能を示す光学層との積層体からなることを特徴とする光学部材によって達成される。
【0014】
本発明によれば、本発明の上記目的及び利点は、第3に、
本発明の光学部材が、液晶セルの片側又は両側に配置されてなることを特徴とする液晶表示装置によって達成される。
本発明者らは、今までフィルム内で実現しようとしてきた多層構造や、コレステリック液晶の塗布コートによる光学干渉機能の発現方法とは異なり、繊維内の構造として全反射機能を有する部分を持たせ、当該繊維を並べることにより面内の光学機能を均一に発現させることを検討した。そして、繊維軸方向の光学機能を安定的に発現させることを実現すると共に、当該繊維を略同一方向に並べて光学透明樹脂により固定化することで、幅方向の光学機能をも均一に発現させることが可能となり、その結果、繊維軸方向と幅方向の両者において光学機能が安定的に発現する反射型偏光板を実現することができた。
【0015】
また、繊維を並べるという手法であることから、フィルムの延伸加工や、コーティング加工において、従来困難であった幅方向の技術点に制約されない製造方法を実現することができた。
また、本発明の反射型偏光板は他の光学機能を有する光学層と積層することで、液晶表示装置の光の利用効率を高めることの出来る光学部材を提供することができる。さらには、本発明の反射型偏光板を積層した光学部材と液晶セルとを組み合わせることで、光の利用効率を向上させ、輝度が高く、消費電力の小さい液晶表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の断面形状を有し、特定の海島構造を有する繊維(A)と、特定の光学透明樹脂(B)とを含み、繊維(A)が略同一方向に配置された反射型偏光板とすることにより、製造が比較的簡単で、層間剥離等の問題が生じ難い反射型偏光板を得ることが可能となる。
また、本発明の反射型偏光板は、様々な位相差フィルムや光学補償フィルム等の光学機能層と組み合わせることで、円偏光フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大偏光フィルム等を提供することが可能であり、また、反透過反射型液晶表示装置、透過型液晶表示装置等と組み合わせることで、液晶表示装置の光の利用効率を高め、輝度が高く、電力消費の小さい液晶表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔繊維(A)〕
(繊維(A)の材料)
繊維(A)とは、海島構造を有する2種以上の熱可塑性樹脂からなる繊維であり、該繊維において繊維軸方向とその断面方向に光学異方性を有する。
繊維(A)に用いる少なくとも2種の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のメタクリレート類、ポリビニルエーテル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリスチレン類、6−ナイロン等の脂肪族ポリアミド等が挙げられ、本発明においては、これらから2種類以上を適宜選択して用いることができる。
【0018】
本発明において繊維(A)に用いる2種類以上の熱可塑性樹脂としては、屈折率の差が大きい熱可塑性樹脂の組み合わせを選ぶことが好ましい。屈折率の差が小さい熱可塑性樹脂の組み合わせでは、繊維(A)を光学的に見た場合、屈折率界面差が小さくなり、光の幾何光学での反射の影響が小さくなってしまう。最大の屈折率と最小の屈折率との屈折率差としては、少なくとも0.02以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.05以上、もっとも好ましくは0.08以上である。
例えば、NaD線による波長589nmの屈折率は、ポリエチレンテレフタレート:1.58、ポリエチレンナフタレート:1.63、ポリブチレンテレフタレート:1.55、ポリカーボネート:1.59、ポリエチレン:1.51、ポリスチレン:1.59、6−ナイロン:1.53である。
【0019】
(繊維(A)の断面の形状)
繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面は、扁平形状である。繊維(A)は、内部にある屈折率差を有する島構造の形状により、幾何光学による反射を利用して偏光機能を発現させるものである。このため、繊維(A)を略同一方向に配置する際、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸を、繊維(A)を配置する略平面に対して略平行とすることが、繊維(A)内における島構造の形状の配置方向を均一に保つ方法となる。
また、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面形状が扁平である場合、繊維を加工する際に、繊維に作用する張力や摩擦力等の外部応力がかかると、応力を最小値にするため面積の広い部分が底面となることから、扁平断面形状の長軸が応力のかかる面に対して平行に揃うという自己方位コントロール性を発現させることが可能となる。そして、自己方位コントロール性を有する繊維においては、入射光を扁平長軸方向と繊維の繊維軸方向とで形成する平面に対して垂直となるように調整することで、幾何光学の反射の効果を最大化することが出来る。
【0020】
このような自己方位コントロール性を繊維に付与させるためには、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の扁平率が1.5以上15以下の範囲であることが必要である。扁平率が1.5未満の繊維では、良好な自己方位コントロール性が得られず、繊維に作用する張力や摩擦力等の外部応力により、繊維自身が最密充填される形状に集合し、このため、繊維内部の島構造の配向はランダム配置となり、十分な光の反射を得ることが出来ない。一方、扁平率が15を越える場合には、過度に薄平な形状となるため、断面形態を保ち難くなり、一部が断面内で折れ曲がる等の欠陥が生じる。繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の扁平率としては、1.7以上13以下の範囲であることが好ましく、2以上10以下の範囲であることがより好ましい。
【0021】
(繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の形状)
繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の形状は、略多角形状であり、かつ、当該略多角形状の少なくとも一辺は、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸に対して45度以上90度未満の角度をなすことが必要となる。この角度は、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸及び繊維の繊維軸方向とで形成する平面に対して光を垂直に入射する場合に、幾何光学による光の反射により、入射した光を入射で反射させて、後方回帰性を発現させるために必要となる屈折率界面の角度を設定したものである。45度以上の屈折率界面がある場合には、入射した光は反射され、後方回帰性は大きく向上する。一方、島構造の形状が、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸に対して45度未満の場合には、入射した光は、入射した面を通り抜けて前方へ出射してしまうため、光の後方回帰成分の割合が低くなり、反射型偏光板として機能することが出来ない。
【0022】
さらに、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の略多角形状としては、当該多角形状の少なくとも一辺が、繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸に対してなす角度が、海構造部分と島構造部分との界面における臨界角以上90度未満であることが必要である。これは、臨界角以上の角度で光が入射した場合には、光は反射成分のみとなることから、反射面と屈折率差とを所望の値に設定することで、入射光は反射を繰り返すだけで入射側に回帰することが出来るようになり、したがって、光の成分を反射光と屈折光の成分に分ける必要なく、効率的に光の後方回帰性を高めることができるためである。
【0023】
ここで、例のひとつとして、図1を示す。図1は、繊維の繊維軸方向に垂直な断面の海構造部分における繊維軸方向の屈折率が1.54、繊維の繊維軸方向に垂直な断面の島構造部分における繊維軸方向の屈折率1.78の系であり、このため、スネルの法則により臨界角は59.9度となる。そして、図1においては、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の島構造部分の形状は、辺の長さLμm(0.3≦L≦50)のもの3本、2Lμmのもの1本で構成される台形、又は角に丸みを有する略台形の形状であり、かつ、繊維の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸方向と2Lの辺とが平行となっている。図1に示される場合には、入射光が繊維の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸方向と繊維の長さ方向(繊維軸方向)とで形成される平面に垂直に入射されると、まずは、島構造部分の斜面に到達するまでは、屈折率界面に垂直入射となることから、界面反射成分以外の光は、斜面まで直進する。次に、光が繊維の島構造部分の斜面に到達すると、屈折率界面での入射角度は60度となることから、臨界角以上となり全反射される。その後、全反射された光は、繊維の島構造部分の台形の上辺と60度の全反射、側面の辺への60度の全反射を繰り返すことにより、入射面に対して垂直に回帰する光となる。これにより、繊維軸方向の直線偏光は、台形の斜面の領域である50%が後方回帰が行われる。さらに、入射光に対して、台形の斜面の存在割合が100%であれば、原理的に繊維軸方向の直線偏光は100%後方回帰することが可能となる。このためには、島構造部分である台形を、2段以上の積層構造とし、かつ、1段目の島構造となる台形の上辺の部分に対して、2段目以降の台形の斜面が設置されるように配置することが必要となる。
【0024】
別の例として、図2を示す。図2においては、島構造部分の形状が、辺の長さがLμm(0.1≦L≦50)のもの3本で構成される正三角形、又は角に丸みを有する略正三角形状であり、かつ、繊維の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸方向と1辺とが平行となっている。また、図2は、繊維の繊維軸方向に垂直な断面の海構造部分における繊維軸方向の屈折率が1.54、繊維の繊維軸方向に垂直な断面の島構造部分における繊維軸方向の屈折率が1.78となるように設計したものである。図2の構成の場合には、後方回帰する光の成分を約100%とすることが可能となる。
さらに別の例を、図3に示す。図3においては、島構造部分の形状が、辺の長さがLμm(0.1≦L≦50)のもの6本で構成される正六角形、又は角に丸みを有する略正六角形状であり、かつ、繊維の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸方向と1辺とが平行となっている。また、図3は、海構造部分における繊維軸方向の屈折率が1.78、島構造部分における繊維軸方向の屈折率が1.54となるように設計したものである。図3の構成の場合には、後方回帰する光の成分を約100%とすることが可能となる。
繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における略多角形状の島構造部分の少なくとも一辺が、繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸に対してなす角度は、45度以上90度未満であることが好ましく、より好ましくは50度以上90度未満、さらに好ましくは60度以上90度未満である。
【0025】
ここで、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における略多角形状の島構造部分の少なくとも一辺を、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸に対して、海構造部分と島構造部分との界面における臨界角以上90度未満とする方法について説明する。まず、臨界角が45度に満たない場合には、例えば、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸に対して島構造部分の辺が45度となる二辺を有する直角二等辺三角形のプリズムを並べることで、光の後方回帰性を実現できる。また、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸に対して島構造部分の辺が60度となる辺を形成する場合には、上記した図1から図3に示す構成の海島構造を有する繊維(A)を設計することができる。これ以上の角度においては、また別の光反射を利用した海島構造が考えられる。
なお、臨界角は屈折率差により規定されるため、屈折率差が大きければ大きいほど臨界角は大きくなり、したがって、海島構造の設計の自由度が大きくなる。繊維軸方向の海構造部分と島構造部分との屈折率差は、0.10以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.24以上がもっとも好ましい。
【0026】
(島構造部分の個数)
繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の個数は、2個以上であることが好ましい。繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の個数が1個である場合には、繊維(A)における島構造部分を取り囲む海構造部分の割合が多くなるため、繊維(A)を略同一方向に配置した際、島構造部分の隣り合う距離が広くなり、光の後方回帰性が低下する要因となる。繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の個数に関して上限は無いが、口金の設計上複雑となるため、100個未満が好ましい。
【0027】
(島構造部分の配置)
また、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の構成は、2段以上の配置とすることが好ましい。繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の構成が1段の配置である場合には、例えば、図2の構成における場合についてみると、隙間無く設置されれば、1段であっても100%に近い光の後方回帰性を得ることが理論的に可能となるが、構造の欠陥等により光の後方回帰性が損われる影響が非常に高くなる。このため、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の構成は、2段以上であることが好ましく、1段目の欠陥や光が直行する構造を有する部分を補完するために、3段以上の構造とすることがより好ましい。
【0028】
(島構造部分の面積比率)
繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の海島構造における島構造部分の面積比率は、50%以上であることが好ましい。上記同様、面積比率が低い場合には、海構造部分の割合が多くなるために、繊維(A)を略同一方向に配置した際、島構造部分の隣り合う距離が広くなり、光の後方回帰性が低下する要因となる。繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の海島構造における島構造部分が面積比率としては、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
【0029】
(熱可塑性樹脂成分の屈折率差)
繊維(A)においては、少なくとも2種の熱可塑性樹脂成分の繊維軸方向に垂直な方向の波長589nmにおける最大の屈折率と最小の屈折率との屈折率差は、0.01以下である。2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける繊維軸方向に垂直な方向の屈折率差が小さい場合には、繊維(A)を用いて偏光板を形成した場合、得られる偏光板の透過軸は繊維(A)の繊維軸方向に垂直な方向となる。一方、2種以上の熱可塑性樹脂成分の繊維軸方向に垂直な面方向の屈折率差が大きい場合には、層間の屈折率差に対する反射光が発生するため、透過光量が減少すると共に、偏光板としての偏光機能を低下させる原因となる。
波長589nmにおける屈折率差を基準とするのは、波長589nmはNaD線に対応することから、NaD線を用いた光源により屈折率を観測することが容易に可能であることと、視感度の強い緑色を呈する波長において、屈折率差を最小に調整することで、可視光における偏光特性を良好に保ち、視覚的な色味の影響を最小化させることができるためである。
【0030】
繊維(A)にて、2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける繊維軸方向に垂直な方向の屈折率差としては、波長500〜700nmの範囲において、平均屈折率差が0.01以下であることがより好ましく、波長400〜700nmの範囲において、平均屈折率差が0.01以下であることがもっとも好ましい。
2種以上の熱可塑性樹脂成分のそれぞれにおける繊維軸方向に垂直な方向の屈折率差を調整する方法の一つとしては、繊維(A)を延伸加工するにあたり、特定の延伸倍率とすることで、屈折率を合せることが可能であり、このときの延伸倍率に関しては、用いる樹脂の種類により適宜設定することができる。
なお、繊維(A)の延伸加工としては特に制限されるものではなく、例えば、高屈折率樹脂と低屈折率樹脂のガラス転移温度以上であって結晶温度以下の温度の加熱浴中で、未延伸繊維を2〜20倍に延伸する方法が好ましい。延伸倍率が2倍より小さいと、得られる繊維の繊維軸方向に垂直な方向の屈折率差を0.01以下に制御することが困難であり、一方で、延伸倍率が20倍を超えると、繊維破断や繊維のボイドが発生するために、光の散乱が生じ、その結果、得られる偏光板の特性を低下させる原因となる。
【0031】
(繊維軸方向に垂直な断面の長軸の長さ)
繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面における長軸の長さは、0.7〜100μmであることが好ましい。繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸の長さが0.7μm未満であると、海島構造をとることが出来なくなると共に、繊維が波長以下のサイズとなるため、繊維自体で、Mie散乱を生じ、幾何光学での反射領域から逸脱してしまう。一方で、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸の長さが100μmを超えると、繊維加工の際の樹脂吐出のコントロールが困難になるために、均質な繊維を得ることが難しくなる。繊維(A)の繊維軸方向に垂直な扁平断面の長軸の長さとしては、より好ましくは2〜90μm、さらに好ましくは3〜80μmである。
【0032】
(反射型偏光板における繊維(A)の配置)
本発明の反射型偏光板において、繊維(A)は、略同一方向に配置される。ここで、「略同一方向」とは、反射型偏光板を構成する繊維(A)の各々の繊維軸の方向のばらつきが、1°以内であることを意味する。
配置は、繊維を1層又は2層以上の多層に、略同一方向に並べた状態とすることが好ましい。なお、積層数については特に制限されるものではなく、1層であっても比較的高い偏光性能を得ることが可能であるが、1層で隙間無く繊維を並べることは非常に難しい技術であるため、2層以上の多層とすることが好ましい。本発明の反射型偏光板における繊維(A)の積層数としては、2〜100層が好ましく、より好ましくは3〜100層、もっとも好ましくは5〜100層である。
また、繊維(A)としては、可視光の波長における光の後方回帰性を均質に得るために、海島構造のサイズや形状の異なる繊維を複数種類用いてもよく、この場合の繊維の組み合わせについては特に制限は無いが、あまり種類が多くなると積層数が多くなり、透過光量が低下するため、5種類以下とすることが好ましい。
【0033】
〔光学透明樹脂(B)〕
本発明の反射型偏光板は、繊維(A)と光学透明樹脂(B)とから基本的に形成されている。ここで、本発明においては、繊維(A)が光学透明樹脂(B)によって内包され固定化された形態であることが好ましい。これは、繊維(A)のみであると一方向に並べた状態が保持できず、偏光性能を継続して発現できないからである。光学透明樹脂(B)は、繊維(A)を固定化保持する重要な役割を担う。
また、光学透明樹脂(B)は、繊維(A)を配置させ、最終的に固定する役割を果たすのみならず、偏光板の基材としての役割をも同時に担う。このため、光学透明樹脂(B)は、可視領域に吸収が少ないか、又は吸収が実質なく、繊維(A)に対して良好な密着性を示すものであることが好ましい。また、一般に、偏光板の基材自体に複屈折があると、当該偏光板をクロスニコル配置した場合の光りぬけの欠点となりうることから、基材としての役割をも有する光学透明樹脂(B)は、複屈折の発現性が低い熱可塑性樹脂、熱又は光硬化型樹脂等の材料とすることが好ましい。
なお、本発明に用いられる光学透明樹脂(B)は、可視領域において透明であることが必要不可欠であり、具体的には、波長400nm〜800nmにおいて、光学透明樹脂を厚さ50μmのフィルムとした場合に、当該フィルムで測定した光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、もっとも好ましくは90%以上である。
【0034】
以下に光学透明樹脂(B)の材料のいくつかを例示する。
【0035】
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ(メチルメタクリレート)等のアクリル樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンオキシド等のポリエーテル、ポリビニルアルコール等のビニル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、あるいは、これらを構成するモノマーを2種以上用いた共重合体、さらには、ポリ(メチルメタクリレート)とポリ塩化ビニルの重量比82対18混合物、ポリ(メチルメタクリレート)とポリフェニレンオキシドの重量比65対35混合物、スチレン・無水マレイン酸共重合体とポリカーボネートの重量比77対23混合物等の非複屈折性のポリマーブレンド等が例示できる。しかしながら、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0036】
光学透明樹脂(B)としては、硬化型樹脂もその一つとして挙げられる。硬化型樹脂は、例えば、繊維(A)に光学透明樹脂(B)を塗布後、速やかに硬化する点において、加工性に優れた材料として好ましい。硬化型樹脂としては、例えば、外部励起エネルギーにより架橋反応等を経て硬化して得られる架橋型樹脂が代表として挙げられる。架橋型樹脂としては、紫外線や電子線等の活性線照射によって硬化する活性線硬化型樹脂、熱により架橋反応を開始する熱架橋型樹脂等が存在するが、そのいずれであってもかまわない。
【0037】
活性線硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が代表として挙げられる。紫外線硬化型樹脂の例としては、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型メタクリル酸エステル系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂及び紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂等が挙げられる。これらの中では特に、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂が好ましく、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタエリスリトール等の光重合モノマーオリゴマーを好ましく用いることができる。
【0038】
電子線硬化型樹脂の例としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等が挙げられる。
熱硬化型樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、またその混合物であってもよい。
【0039】
本発明においては、上記いずれの硬化型樹脂であっても、好適に用いることができるが、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率と略同一の屈折率を有する光学透明樹脂を選択する必要がある。ここで、「略同一」とは、繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率の値との差が0.01以内であることをいう。このように繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率と略同一の屈折率を有する光学透明樹脂(B)を用いることにより、透過率の高い偏光板が得られる。
【0040】
〔反射型偏光板〕
本発明の反射型偏光板は、液晶表示装置において、吸収型偏光板を備えた液晶パネルの観測者側とは反対側であるバックライト側に配置することにより、光の利用効率を高め、輝度が高く、電力消費を小さくすることができる。
本発明の反射型偏光板は、ツイストネマチックモード、垂直配向モード、OCB(Optically Compensated Bend)配向モード、インプレインスイッチングモード等のTFT液晶表示装置等のバックライトと吸収型偏光板とを用いたすべての液晶モードに用いることができる。また、強誘電性液晶、反強誘電性液晶を用いた液晶表示装置に使用してもよい。
【0041】
(反射型偏光板の厚み)
本発明の反射型偏光板の厚さとしては、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜250μm、もっとも好ましくは10〜200μmである。1μmより薄いと、反射型偏光板としての偏光機能を確保することが困難になり、また、ハンドリングの面からも好ましくない。一方で、300μmより厚いと、曲げに対してクラックを生じる等の問題があることから、ロール状態で扱うことが困難となり、また、カッティングの際にも非常に困難性が伴うものとなる。
【0042】
(反射型偏光板の製造方法)
本発明の反射型偏光板の製造方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、繊維(A)に対して、硬化型の光学透明樹脂(C)を必要に応じて溶媒等を用いて塗布し、硬化、乾燥等を経て製造する方法が挙げられる。生産性の点を考慮すると、塗布後速やかに硬化樹脂層を形成する光学透明樹脂(C)を用いることが好ましく、汎用的に用いられる材料、加工設備の面を考慮して、紫外線硬化樹脂を用いることがより好ましい。
また、繊維(A)をポリマーフィルムやガラス基板等の下地基材上に一列あるいは多数列に積み上げて並べ、これに硬化型の光学透明樹脂(C)を塗布し、次いで硬化させる方法も採用できる。この場合には、本発明の反射型偏光板は、ポリマーフィルムやガラス基板等と一体となって用いてもよいが、ポリマーフィルムやガラス基板を剥ぎ取って使用してもよい。
【0043】
また、繊維(A)を並べる下地基材として、位相差フィルムを用いてもよい。この場合には、本発明の反射型偏光板を位相差フィルムから剥ぎ取る必要はなく、位相差フィルム一体型偏光板を同時に作成することができる。
あるいは、繊維(A)を並べる下地基材として、吸収型偏光板を用いてもよい。この場合には、本発明の反射型偏光板を吸収型偏光板から剥ぎ取る必要はなく、吸収型偏光板一体型反射型偏光板を同時に作成することができる。なお、このとき、本発明の反射型偏光板と吸収型偏光板の透過軸を同じ方向に調節しつつ、反射型偏光板と透過型偏光板とを積層する構成とする。
さらに、繊維(A)を並べる下地基材として、プリズムシート(フィルム)を用いてもよい。この場合には、本発明の反射型偏光板をプリズムシート(フィルム)から剥ぎ取る必要はなく、プリズムシート(フィルム)一体型反射型偏光板を同時に作成することができる。
【0044】
本発明の反射型偏光板は、表面処理をしてもよい。表面処理としては、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理等を挙げることができる。
本発明の反射型偏光板をフィルムとして加工する場合には、繊維(A)の配向方向はフィルムの搬送方向に規定されるものではなく、必要に応じてフィルム搬送方向に垂直、又は所定の角度にて配向固定化することができる。反射型偏光板をフィルムとして取り扱う場合には、当該フィルムを巻き取ってロール状の形態としてもよく、このときのロールフィルムの長さ、幅は特に制限されるものではない。
【0045】
〔他の光学機能を示す光学層〕
本発明の反射型偏光板は、様々な位相差フィルムや光学補償フィルム等の光学機能層と組み合わせることで、円偏光フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大偏光フィルム等を提供することが可能であり、また、反透過反射型液晶表示装置、透過型液晶表示装置等と組み合わせることで、液晶表示装置の光の利用効率を高め、輝度が高く、電力消費の小さい液晶表示装置を提供することが可能となる。
【0046】
(吸収型偏光板)
本発明の反射型偏光板は、偏光を有する光学機能を示す光学層との積層体とすることにより、有用な光学部材とすることができる。偏光を有する光学機能を示す光学層としては、例えば、吸収型偏光板が挙げられる。
【0047】
(位相差層)
本発明の反射型偏光板は、偏光以外の他の光学機能を示す光学層と積層することにより、有用な光学部材を形成することができる。偏光以外の他の光学機能を示す光学層としては、例えば、位相差層が挙げられる。
本発明における位相差層とは、位相差を与える層であり、透明熱可塑性合成高分子フィルムを延伸加工した位相差フィルムをその一例として挙げることができる。
好適に用いることのできる位相差フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性等に優れるものが好ましい。なお、本発明においては、公知の位相差層を用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、本明細書中に記載の材料特性値等は、以下の評価法によって得られたものである。
【0049】
(1)光線透過率T、偏光度Pの測定
光線透過率Tは、400〜700nmの波長域において、10nmおきに求めた分光透過率t(λ)から、式(1)により算出した。なお、式中、P(λ)は標準光(C光源)の分光分布、y(λ)は2度視野X、Y、Z系に基づく等色関数である。分光透過率t(λ)は、分光光度計((株)日立製作所、U−4000)を用いて測定した。
【0050】
【数1】

【0051】
偏光度Pは、2枚の偏光板をそれぞれの吸収軸方向が同一になるように重ねた場合の透過率をTp(パラニコル透過率)、2枚の偏光板をそれぞれの吸収軸が直交するように重ねた場合の透過率をTc(クロスニコル透過率)とし、式(2)により算出した。なお、透過率TpおよびTcは、分光光度計(日立製、型式:U−4000)を用いて測定した。
【0052】
【数2】

【0053】
(2)厚み測定
アンリツ(株)社製の電子マイクロを用いて測定した。
(3)繊維の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率測定
偏光顕微鏡(ニコン製、商品名:ECLIPSE LV100POL)を用いて、光源に干渉フィルタ(589nm)を設置して、直線偏光光源となるように調整した。
【0054】
続いて、繊維をスライドガラスにとり、直線偏光が繊維の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向と平行になるように設置した。
屈折調整液を用いて、1.500から1.600まで、0.002STEPにて、顕微鏡を除きながら屈折調整液を繊維に順次滴下していくことで、繊維の外形が無くなるところを観測した。ここで、繊維の外形が無くなるところは、直線偏光に対して、屈折率調整液と繊維の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率とがほぼ一致したことを示す。したがって、このときの屈折率調整液の屈折率を、繊維の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率とした。
【0055】
<実施例1>
(繊維(A)の製造)
ナイロン6(極限粘度1.3)と、テレフタル酸を10モル%、スルフォイソフタル酸のナトリウムを1モル%共重合したポリエチレンナフタレート(極限粘度0.58、ナフタレンジカルボン酸89モル%、以下、共重合PENという)とを、図4に示される構造となるよう、共重合PENをナイロン6が被覆するように溶融紡糸し、1,000m/分の速度で巻き取った。引き続き、得られた未延伸繊維を、ローラー延伸機により2.0倍に延伸し、繊維(A)を得た。
得られた繊維(A)は、8フィラメントからなるマルチファイバーであり、その繊維軸方向に垂直な断面は図4に示す形態となっていた。繊維軸方向に垂直な断面の長軸の長さは66μm、短軸の長さは28μm、扁平率は2.4、島構造部分の1辺の長さL=6μm、島構造部分の構成は短軸方向に3段であり、3段の構成は、1段目の島構造部分が5個、2段目4個、3段目5個であり、断面における島構造部分の全数は14個であった。
【0056】
繊維(A)の波長589nmにおける繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率は、共重合PEN及びナイロンのいずれも1.524であった。また、繊維軸方向の共重合PENの屈折率は1.78であり、ナイロンの屈折率は1.54であった。
なお、ナイロン6自体の屈折率は1.53であり、共重合PEN樹脂自体の屈折率は1.62であり、したがって、2種の熱可塑性樹脂の屈折率差は0.09であった。
(反射型偏光板の製造)
上記で得られたマルチフィラメントである繊維(A)を、繊維の層として、約6層、ガラス板上に隙間無く同一方向に並べて、厚み150μmの繊維(A)の積層体を得た。
【0057】
次に、BPEF−Aを64質量部、UAを436質量部、希釈溶剤としてトルエンを40質量部、光開始剤として「イルガキュア(商品名)」184を15質量部、レベリング剤としてSH28PAを0.18質量部用いて、これらを順次加えて均一になるまで攪拌・調液し、塗布液を得た。
BPEF−A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート(大阪ガス社製)
UA:ウレタンアクリレート(新中村化学社製「NKオリゴU−15HA」)
「イルガキュア(商品名)」184(チバガイギー社製)
SH28PA(東レ・ダウコーニング社製)
得られた塗布液を、上記にて準備した繊維(A)の積層体の上に均一に塗布して、繊維(A)が塗布液により内包される状態を形成した。引き続き、強度160wの高圧水銀ランプにより、積算光量700mJ/cmの紫外線を照射し、塗布液を硬化させて、光学透明樹脂(B)によって繊維(A)が内包された、厚みが160μmである反射型偏光板を得た。このとき、光学透明樹脂(B)の屈折率は1.524であった。
こうして得られた反射型偏光板の光線透過率は45.0%、偏光度は99.9%であった。
【0058】
また、上記で得られた偏光板を市販の透過型液晶表示装置に組み込んで、下記のような構成の液晶表示装置を作製し、偏光板がクロスニコルとなるように配置し、ノーマリーホワイト時の輝度の増加を測定したところ、17%の輝度上昇効果が確認できた。
構成:吸収型偏光板/位相差フィルム/液晶セル/位相差フィルム/吸収型偏光板/反射型偏光板/プリズムシート/プリズムシート/プリズムシート/拡散フィルム/バックライト/拡散反射フィルム
【0059】
<実施例2>
(繊維(A)の製造)
ナイロン6(極限粘度1.3)と、テレフタル酸を10モル%、スルフォイソフタル酸のナトリウムを1モル%共重合したポリエチレンナフタレート(極限粘度0.58、ナフタレンジカルボン酸89モル%、以下、共重合PENという)とを、図5に示される構造となるよう、共重合PENをナイロン6が被覆するように溶融紡糸し、1,000m/分の速度で巻き取った。引き続き、得られた未延伸繊維を、ローラー延伸機により2.0倍に延伸し、繊維(A)を得た。
得られた繊維(A)は、8フィラメントからなるマルチファイバーであり、その繊維軸方向に垂直な断面は図5に示す形態となっていた。繊維軸方向に垂直な断面の長軸の長さは40μm、短軸の長さは17μm、扁平率は2.4、島構造部分の1辺の長さL=5μm、島構造部分の構成は短軸方向に2段であり、2段の構成は、1段目の島構造部分が8個、2段目8個であり、断面における島構造部分の全数は16個であった。
【0060】
繊維(A)の波長589nmにおける繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率は、共重合PEN及びナイロンのいずれも1.524であった。また、繊維軸方向の共重合PENの屈折率は1.78であり、ナイロンの屈折率は1.54であった。
なお、ナイロン6自体の屈折率は1.53であり、共重合PEN樹脂自体の屈折率は1.62であり、したがって、2種の熱可塑性樹脂の屈折率差は0.09であった。
(反射型偏光板の製造)
上記で得られたマルチフィラメントである繊維(A)を、繊維の層として、約6層、ガラス板上に隙間無く同一方向に並べて、厚み100μmの繊維(A)の積層体を得た。
また、実施例1と同様に透明光学樹脂(B)となる塗布液を調液し、実施例1と同様の操作により、光学透明樹脂(B)によって繊維(A)が内包された、厚みが110μmである反射型偏光板を得た。なお、光学透明樹脂(B)の屈折率は1.524であった。
こうして得られた反射型偏光板の光線透過率は45.0%、偏光度は99.9%であった。
また、実施例1と同様に液晶表示装置を作成し、ノーマリーホワイト時の輝度の増加を測定したところ、17%の輝度上昇効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の反射型偏光板は、液晶表示装置のディスプレイ等に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明における繊維(A)の島構造の形状を説明するための、反射型偏光版の模式的断面図。
【図2】本発明における繊維(A)の島構造の形状を説明するための、反射型偏光版の他の模式的断面図。
【図3】本発明における繊維(A)の島構造の形状を説明するための、反射型偏光版の他の模式的断面図。
【図4】実施例1における繊維(A)の島構造の形状を説明するための、繊維(A)の模式的断面図。
【図5】実施例2における繊維(A)の島構造の形状を説明するための、繊維(A)の模式的断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維(A)および光学透明樹脂(B)を含有してなる反射型偏光板であって、
前記繊維(A)は、少なくとも2種の熱可塑性樹脂成分で構成される海島構造を有し、
繊維軸方向に垂直な断面は、扁平率(長軸/短軸)1.5以上の扁平形状であり、
繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分は、略多角形状であり、かつ、当該略多角形状の少なくとも一辺は、繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向に対して45度以上90度未満の角度をなし、
前記少なくとも2種の熱可塑性樹脂成分の繊維軸方向に垂直な方向の波長589nmにおける最大の屈折率と最小の屈折率との屈折率差は、0.01以下であり、
前記光学透明樹脂(B)の屈折率は、前記繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向の屈折率と略同一であり、
前記繊維(A)は、略同一方向に配置されている反射型偏光板。
【請求項2】
前記繊維(A)が、前記光学透明樹脂(B)により内包され固定化されている請求項1記載の反射型偏光板。
【請求項3】
前記繊維(A)は、繊維軸方向の波長589nmにおける島構造部分の屈折率と海構造部分の屈折率との差が、0.10以上である請求項1〜2のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項4】
前記繊維(A)において、繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の略多角形状が、長さ略Lμm(0.3≦L≦50)である辺が3本と、略2Lμmである辺1本とで構成される略台形であり、かつ、当該略台形の略2Lμmの辺が、前記繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向と略平行である請求項1〜3のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項5】
前記繊維(A)において、繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の略多角形状が、長さ略Lμm(0.1≦L≦50)である3つの辺で構成される略正三角形であり、かつ、当該略正三角形の1辺が、前記繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向と略平行である請求項1〜3のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項6】
前記繊維(A)において、繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の略多角形状が、長さ略Lμm(0.1≦L≦50)である6つの辺で構成される略正六角形であり、かつ、当該略正六角形の1辺が、前記繊維(A)の繊維軸方向に垂直な断面の長軸方向と略平行である請求項1〜3のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項7】
前記繊維(A)が、繊維軸方向に垂直な断面において、2個以上の島構造部分を有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項8】
前記繊維(A)において、繊維軸方向に垂直な断面における島構造部分の面積比率が、50%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項9】
前記繊維(A)において、繊維軸方向に垂直な断面の長軸の長さが、0.7〜100μmである請求項1〜8のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項10】
前記光学透明樹脂(B)が、熱可塑性樹脂である請求項1〜9のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項11】
前記光学透明樹脂(B)が、硬化型樹脂である請求項1〜9のいずれかに記載の反射型偏光板。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の反射型偏光板と、他の光学機能を示す光学層との積層体からなることを特徴とする光学部材。
【請求項13】
前記光学層が、吸収型偏光板である請求項12記載の光学部材。
【請求項14】
前記光学層が、位相差層であることを特徴とする請求項12記載の光学部材。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の光学部材が、液晶セルの片側又は両側に配置されてなることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−241893(P2008−241893A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79347(P2007−79347)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】