説明

反射屈折光学系及びそれを有する撮像装置

【課題】広い波長域に渡って諸収差を良好に補正し、かつ広い撮像領域に渡って高い解像力を持つ反射屈折光学系を得ること。
【解決手段】物体の中間像IMを形成する第1結像光学系G1と、中間像IMを像面105に結像させる第2結像光学系G2を有し、第1結像光学系G1は、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち物体側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第1の光学素子M1と、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち像側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第2の光学素子M2と、第1の光学素子M1と第2の光学素子M2との間の光路中に負レンズL1とを有し、物体からの光束は、順に第1の光学素子M1、負レンズL1、第2の光学素子M2、負レンズL1、第1の光学素子M1、負レンズL1、第2の光学素子M2を介した後に第2結像光学系G2側に出射しており、負レンズL1の材料のアッベ数は第2の光学素子M2の材料のアッベ数よりも大きいこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料(物体)を拡大し、観察する際に好適な反射屈折光学系及びそれを有する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の病理検査では、光学顕微鏡を用いて病理標本(試料)を直接、人の目で観察している。近年、病理標本を画像データとして取り込み、ディスプレイ上で観察するバーチャル顕微鏡と呼ばれるものが利用されている。バーチャル顕微鏡では病理標本の画像データをディスプレイ上で観察できるため、複数人で同時に観察することができる。またこのバーチャル顕微鏡を用いると画像データを遠方の病理医と共有して診断を仰ぐこともできるなど多くの利点がある。しかし、この方法は病理標本を撮像して画像データとして取り込むためには時間がかかるという問題があった。
【0003】
時間がかかる原因の1つとして、大きな撮像範囲の病理標本を顕微鏡の狭い撮像領域を用いて画像データとして取り込まねばならないことが挙げられる。顕微鏡の撮像領域が狭い場合、複数回撮像して、もしくはスキャンしながら撮像してそれらを繋げることで一枚の画像とする必要がある。従来より撮像回数を少なくして画像データを取り込む時間を短縮するために、広い撮像領域を持った光学系(撮像光学系)が求められている。
【0004】
この他、病理標本を観察する上で、広い撮像領域が求められていると同時に可視領域(広い波長域)での高い解像力を持った光学系が要望されている。高い解像力を持った光学系は病理診断の用途に限らず様々な分野で要望されている。屈折光学系より成り可視光全域に渡って収差を良好に低減した生体細胞などの観察に好適な顕微鏡対物レンズが知られている(特許文献1)。
【0005】
また集積回路やフォトマスクに存在する欠陥を検査するため反射屈折光学系を用いて紫外の広波長帯域に渡って高い解像力を有した超広帯域紫外顕微鏡映像システムが知られている(特許文献2)。また、広い領域に微細なパターンを露光して半導体素子を製造するのに好適な反射屈折光学系が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭60−034737号公報
【特許文献2】特表2007−514179号公報
【特許文献3】WO00/039623
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている顕微鏡対物レンズは、可視光全域に渡って諸収差を良好に低減しているが、観察領域の大きさが必ずしも十分でない。また、特許文献2に開示されている広帯域顕微鏡カタディオプトリック結像系は広波長帯域に渡って収差を良好に低減し、高い解像力を持っているものの視野領域の大きさが必ずしも十分でない。
【0008】
また、特許文献3に開示されている反射屈折結像光学系は広い領域に渡って、高い解像力を持っているが収差が良好に補正されている波長域の広さが必ずしも十分でない。試料を拡大して観察するための顕微鏡レンズとしては、観察領域が大きく、かつ広い波長範囲にわたり高い光学性能を有することが求められている。
【0009】
本発明は、広い波長域に渡って諸収差を良好に補正し、かつ広い撮像領域に渡って高い解像力を持つ反射屈折光学系及びそれを有する撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の反射屈折光学系は、物体からの光束を集光して該物体の中間像を形成する反射屈折部を含む第1結像光学系と、該中間像を像面に結像させる屈折部を含む第2結像光学系を有する反射屈折光学系であって、
前記第1結像光学系は、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち物体側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第1の光学素子と、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち像側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第2の光学素子と、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の光路中に負レンズとを有し、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子は互いに裏面反射部が対向するように配置されており、
前記物体からの光束は、順に前記第1の光学素子の光透過部、前記負レンズ、前記第2の光学素子の裏面反射部、前記負レンズ、前記第1の光学素子の裏面反射部、前記負レンズ、前記第2の光学素子の光透過部を介した後に前記第2結像光学系側に出射しており、前記負レンズの材料のアッベ数は前記第2の光学素子の材料のアッベ数よりも大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、広い波長域に渡って諸収差を良好に補正し、かつ広い撮像領域に渡って高い解像力を持つ反射屈折光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例の撮像装置の実施例1の概略断面図である。
【図2】実施例1の反射屈折光学系の要部概略図である。
【図3】実施例1の反射屈折光学系の収差図である。
【図4】実施例2の反射屈折光学系の要部概略図である。
【図5】実施例2の反射屈折光学系の収差図である。
【図6】実施例3の反射屈折光学系の要部概略図である。
【図7】実施例3の反射屈折光学系の収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の反射屈折光学系104は、物体103からの光束を集光して物体の中間像IMを形成する反射屈折部を含む第1結像光学系G1と、中間像IMを像面105に結像させる屈折部を含む第2結像光学系G2を有する。本発明の撮像装置1000は、光源手段101と、光源手段101からの光束で物体103を照明する照明光学系102と、物体103を結像する反射屈折光学系104を有している。更に撮像装置1000は反射屈折光学系104によって結像された物体像を光電変換する撮像素子105と、撮像素子105からのデータより画像情報を生成する画像処理系106と画像処理系106で生成した画像データを表示する表示手段107とを有する。
【0014】
本発明の反射屈折光学系104を構成する第1結像光学系G1は、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち物体側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第1の光学素子M1を有する。更に光軸周辺が光透過部、周辺部のうち像側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第2の光学素子M2とを有する。更に反射屈折光学系104は第1の光学素子M1と第2の光学素子M2との間の光路中に負レンズL1とを有する。この負レンズL1の材料のアッベ数は、第2の光学素子M2の材料のアッベ数よりも大きい。
【0015】
図1は本発明の撮像装置の要部概略図である。図2は本発明の反射屈折光学系の実施例1の要部概略図である。図3は本発明の反射屈折光学系の実施例1の収差図である。図4は本発明の反射屈折光学系の実施例2の要部概略図である。図5は本発明の反射屈折光学系の実施例2の収差図である。図6は本発明の反射屈折光学系の実施例3の要部概略図である。図7は本発明の反射屈折光学系の実施例3の収差図である。
【0016】
[実施例1]
以下、図1を参照して、本発明の反射屈折光学系104を有する撮像装置1000の構成について説明する。ここで図1は、本発明の撮像装置1000の概略断面図である。撮像装置1000は、光源手段101からの光を照明光学系102によって集光して試料(物体)103を均一に照明する。このとき使用する光は可視光(例えば、波長400nm〜波長700nm)が用いられる。可視光としては波長486nm〜波長656nmの範囲内の光束が含まれていれば良い。
【0017】
反射屈折光学系104は試料(物体)103の像を撮像素子105上に結像する。撮像素子105で取得したデータ(画像情報)は、画像処理系106によって画像データを生成し、生成した画像データを表示手段107などに表示する。この他記録媒体(記録手段)に保持している。画像処理系106では反射屈折光学系104で補正しきれなかった収差を補正したり、または、撮像位置の異なった画像データを繋げて一枚の画像データに合成したりするなど用途に応じた処理が行われる。
【0018】
図2は、図1の反射屈折光学系104の構成を説明するための概略図である。図2において、104A(他の実施例では104B、104C)は反射屈折光学系、103は試料が配置される物体面、105は撮像素子が配置される像面である。AXは反射屈折光学系104Aの光軸である。反射屈折光学系104Aは物体103からの光束を集光し、所定面に中間像IMを形成する反射面を含む第1結像光学系G1を有する。
【0019】
中間像IMが形成される位置にはフィールドレンズ部FLが配置されている。フィールドレンズ部FLは中間像IMからの光束を第2結像光学系G2に効率良く導光している。尚、フィールドレンズ部FLは省略しても良い。そして中間像IMを像面105に結像する屈折面と遮光部OBSを含む第2結像光学系G2を有する。
【0020】
第1結像光学系G1は、物体側から順に第1の光学素子(マンジャンミラー)M1、負レンズL1、第2の光学素子(マンジャンミラー)M2を有している。第1の光学素子M1は同心形状又は略同心形状より成っている。負レンズL1の材料のアッベ数は第2の光学素子M2の材料のアッベ数よりも大きい。第2結像光学系G2は、物体側から順にレンズ群G21、遮光部OBS、レンズ群G22を有している。
【0021】
図2は、物体面103から像面105に至る光束が示されている。第1結像光学系G1の第1の光学素子M1は、物体103側の面M1aが凸形状で、像側の面M1bが凹形状で光軸付近及び光軸周辺が正の屈折力の光透過部M1T、周辺部のうち物体側の面M1aに反射膜を施し、裏面反射部としている。面M1aは非球面形状より成っている。負レンズL1は物体側の面が凹で非球面形状である。負レンズL1はメニスカス形状で面全体が光透過面となっている。
【0022】
第2の光学素子M2は物体側に凹面を向けたメニスカス形状で、光軸周辺が正の屈折力の光透過部M2T、周辺部のうち像側の面M2bに反射膜を施し、裏面反射部としている。M2aは第2の光学素子M2の物体側の面である。面M2bは非球面形状である。第1の光学素子M1と第2の光学素子M2は互いに裏面反射部M1a、M2bが対向するように配置されている。第2の結像光学系G2は物体103からの光束のうち光軸近傍の光束を遮光し、撮像素子105に入射するのを防止する遮光板OBSが第2結像光学系G2中又は開口絞り若しくはその近傍に配置されている。
【0023】
図2に示す反射屈折光学系104Aでは、照明光学系102からの光束で照明され、試料103から出射した光束は第1の光学素子M1の中央透過部M1Tを通過する。その後、負レンズL1を通過し、発散され第2の光学素子M2の屈折面M2aに入射する。その後裏面反射部M2bで反射し集光されて、屈折面M2a、負レンズL1を通過して第1の光学素子M1の屈折面M1bに入射する。その後、第1の光学素子M1の裏面反射部M1aで反射する。そして屈折面M1b、負レンズL1を通過し、第2の光学素子M2の中央透過部M2Tを通過し、第2結像光学系側G2へ出射する。その後フィールドレンズ群FLの近傍に試料103の中間像IMを形成する。
【0024】
本実施例において、フィールドレンズ群FLを配置せずに中間像IMを形成する構成としても良い。中間像IMからの発散光束は、正の屈折力のレンズ群G21と正の屈折力のレンズ群G22を通過し、像面105に入射する。そして像面105上に物体103の像を拡大結像する。撮像素子105に結像された物体103の像は画像処理系106によって処理されて表示手段107に表示される。
【0025】
本実施例の中間像IMを形成する第1結像光学系G1の特徴について説明する。マンジャンミラーよりなる第1の光学素子M1とマンジャンミラーよりなる第2の光学素子M2の光路間に負レンズL1を配置している。これによって、第1結像光学系G1で発生する球面収差の補正を容易にしている。ここで、第1の光学素子M1の外径(有効径、以下同じ)をH1とし、第1の光学素子M1の透過部の有効径をH2とする。物体103からの光は第1の光学素子M1の光透過部M1Tおよび負レンズL1を通過後、第2の光学素子M2の面M2bで反射される。
【0026】
そして再び負レンズL1に入射し、負レンズL1の負のパワーにより第1の光学素子M1へ入射する光束の角度が光軸に対して小さくなる。これにより、第1の光学素子M1の径H1が大きくなり、物体面103から第1の光学素子M1へ入射したときの透過部の径H2との比率H2/H1を下げている。つまり、光軸AX上の中央遮蔽率を小さく抑えて、その結果、像性能の悪化を防いでいる。
【0027】
また、第1の光学素子M1の形状をほぼ同心円状にすることで色収差の発生を軽減しつつ、球面収差の補正を容易にしている。また、第1、第2の光学素子M1、M2間にある負レンズL1の材料のアッベ数を第2の光学素子M2の材料のアッベ数よりも大きくすることで、第1結像光学系G1で発生する色収差を小さくしている。更に、第1結像光学系G1の負レンズL1の材料のアッベ数νnと第2の光学素子M2の材料のアッベ数ν2が以下の条件式(1)を満足するようにしている。
【0028】
0.5<ν2/νn<1 ・・・(1)
これにより、第1結像光学系G1で発生する色収差を小さくしている。条件式(1)の下限値あるいは上限値を超えると第1結像光学系G1で発生する色収差、特に軸上色収差が大きくなり、これを第2結像光学系G2で打ち消すためには多くのレンズ枚数を必要とするので良くない。更に、反射屈折型光学系は、第1結像光学系G1のパワーをφ1、負レンズL1のパワーをφnとするとき、以下の条件式(2)を満足するのが良い。
【0029】
0.10<|φn/φ1|<0.30 ・・・(2)
これにより、第1結像光学系G1で発生する色収差を小さくすることができる。条件式(2)の下限値を下回ると、負レンズL1のパワーが強くなりすぎ、負レンズL1より発生する収差が多くなり、この収差の補正が困難となる。また、負レンズL1より発生する収差を補正するためには第2の光学素子M2のパワーを強くしなければならず、その結果、第2の光学素子M2のレンズ端の厚みを確保することが困難になる。条件式(2)の上限値を上回ると、負レンズL1のパワーが弱くなりすぎ、中央遮蔽率H2/H1が大きくなり、像性能が悪化するので良くない。
【0030】
第1の光学素子M1の形状がほぼ同心形状とは、次のことをいう。第1の光学素子M1の物体側と像面側の面の曲率半径を各々r1、r2とするとき、
0.40<r1/r2<1.00 ・・・(3)
を満足することである。
【0031】
本実施例の反射屈折型光学系では、負レンズL1の凹面を非球面形状としている。これによって、球面収差とコマ収差を良好に補正している。本実施例の反射屈折型光学系では、第1、第2の光学素子M1、M2の反射面M1a、M2bを非球面形状としている。これによって、球面収差およびコマ収差をさらに良好に補正している。本実施例の反射屈折型光学系は、後述する数値実施例をmm単で表したとき視野領域をφ(直径)3mm以上としている。視野領域がこれ以下であると、物体面全体を分割撮像する場合の撮像回数が増えて、撮像全体に掛かる時間が長くなるため好ましくない。
【0032】
視野領域をφ3mm以上とすることにより、分割撮像の分割数が少なくなるので撮像時間の短縮が容易となる。更に、視野領域がφ10mm以上であれば更に好ましく、物体面の一括撮像が容易になるので、撮像時間の大幅な短縮が容易になる。
【0033】
本実施例において第1、第2の光学素子M1、M2の裏面の反射部は何れも凹形状であり、且つ、何れも非球面形状としている。負レンズL1の凹面もまた非球面形状である。このように3つの非球面形状を用いることにより、色収差を増加させることなく、球面収差とコマ収差等の諸収差の発生を抑えている。実施例1の反射屈折光学系104Aにおいて、物体側の開口数は0.7であって、倍率は6倍、物体高は14.14mm、視野領域はφ28.28mmである。視野領域はφ3mm以上を満たしており、且つφ10mm以上も満たしている。
【0034】
物体側、像側とも、ほぼテレセントリックな光学系となっている。また、可視域の波長486nm〜656nmの範囲をカバーする白色光での波面収差が50mλrms以下に抑えられている。
【0035】
図3は実施例1の像面(撮像素子面)における横収差を示しており、軸上、軸外とも、可視域の広い波長帯域で収差が良好に補正されている。収差図においてYは像高である。また、負レンズL1の材料のアッベ数νnと第2の光学素子M2の材料のアッベ数ν2の比、ν2/νnは0.60となり、条件式(1)の範囲内である。さらに、負レンズL1のパワーφnの値は−0.0018であり、第1結像光学系G1のパワーφ1は0.01181であり、条件式(2)の範囲内である。
【0036】
[実施例2]
図4の実施例2の反射屈折光学系について説明する。なお、特に述べない部分については実施例1と同様である。実施例2の反射屈折光学系において、物体側の開口数は0.7であって、倍率は6倍、物体高は14.14mm、視野領域はφ28.28mmである。視野領域はφ3mm以上を満たしており、且つφ10mm以上も満たしている。物体側、像側とも、ほぼテレセントリックな光学系となっている。また、可視域の波長486nm〜656nmの範囲をカバーする白色光での波面収差が50mλrms以下に抑えられている。
【0037】
図5は実施例2の像面(撮像素子面)における横収差を示しており、軸上、軸外とも、可視域の広い波長帯域で収差が良好に補正されている。また、負レンズL1の材料のアッベ数νnと第2の光学素子M2の材料のアッベ数ν2の比、ν2/νnは0.84となり、条件式(1)の範囲内である。さらに、負レンズL1のパワーφnの値は−0.0021、第1結像光学系G1のパワーφ1は0.01099であり、条件式(2)の範囲内である。
【0038】
[実施例3]
図6の実施例3の反射屈折光学系について説明する。なお、特に述べない部分については実施例1と同様である。実施例3の反射屈折光学系において、物体側の開口数は0.7であって、倍率は6倍、物体高は14.14mm、視野領域はφ28.28mmである。視野領域はφ3mm以上を満たしており、且つφ10mm以上も満たしている。物体側、像側とも、ほぼテレセントリックな光学系となっている。また、可視域の波長486nm〜656nmの範囲をカバーする白色光での波面収差が50mλrms以下に抑えられている。
【0039】
図7は実施例3の像面(撮像素子面)における横収差を示しており、軸上、軸外とも、可視域の広い波長帯域で収差が良好に補正されている。また、負レンズL1の材料のアッベ数νnと第2の光学素子M2の材料のアッベ数ν2の比、ν2/νnは0.71となり、条件式(1)の範囲内である。さらに、負レンズL1のパワーφnの値は−0.0027、第1結像光学系G1のパワーφ1は0.011588であり、条件式(2)の範囲内である。
【0040】
以上のように各実施例によれば、高NAで可視光全域に亘って収差を低減し、かつ広い視野領域を有する反射屈折光学系及びそれを用いた撮像装置が得られる。以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形、及び、変更が可能である。例えば、本発明は大画面をスキャンする撮像装置にもスキャンしない撮像装置にも適用可能である。
【0041】
以下、各実施例の数値実施例を示す。面番号は物体面(試料面)から像面まで数えた光が通過する順の光学面である。rは第i番目の光学面の曲率半径である。dは第i番目と第i+1番目の間隔である(符号は物体側から像面側へ測ったときを(光が進行するときを)正、逆方向を負としている)。Nd、νdは波長587.6nmに対する材料の屈折率とアッベ数をそれぞれ示している。非球面の形状は、以下の式に示す一般的な非球面の式で表される。以下の式において、Zは光軸方向の座標、cは曲率(曲率半径rの逆数)、hは光軸からの高さ、kは円錐係数、A、B、C、D、E、F、G、H、J・・・は各々、4次、6次、8次、10次、12次、14次、16次、18次、20次、・・・の非球面係数である。
【0042】
【数1】

【0043】
「E−X」は「10-X」を意味する。各実施例における各要素の光学定数及び前述した各条件式と数値実施例との関係を表−1に示す。
【0044】
[数値実施例1]

面番号 r d Nd νd
物体面 6.00
1 337.13 13.70 1.8052 25.43
2 374.52 65.18
3 -120.72 9.20 1.5237 60.10
4 -213.77 8.82
5 -174.37 9.49 1.5889 35.83
6 -152.43 -9.49 1.5889 35.83
7 -174.37 -8.82
8 -213.77 -9.20 1.5237 60.10
9 -120.72 -65.18
10 374.52 -13.70 1.8052 25.43
11 337.13 13.70 1.8052 25.43
12 374.52 65.18
13 -120.72 9.20 1.5237 60.10
14 -213.77 8.82
15 -174.37 9.49 1.5889 35.83
16 -152.43 3.00
17 983.84 3.61 1.8040 46.58
18 -206.61 9.98
19 -87.23 8.91 1.7395 27.33
20 136.90 12.01 1.8040 46.58
21 -70.30 0.50
22 60.02 21.77 1.8040 46.58
23 -103.47 3.64 1.7346 27.49
24 106.25 13.87 1.8040 46.58
25 -115.15 35.52
26 175.99 16.45 1.8041 44.96
27 -88.70 4.48 1.7208 27.99
28 -423.28 34.79
29 -291.12 20.41 1.8044 37.17
30 -74.03 0.50
31 127.61 20.29 1.8040 46.58
32 -373.57 5.61
33 -351.62 6.26 1.7799 28.92
34 86.74 68.63
35 -88.66 6.60 1.5934 35.24
36 -554.01 20.77
37 -103.78 7.72 1.6578 56.16
38 -170.99 4.05
39 -181.71 23.65 1.8040 46.58
40 -103.36 0.50
41 1023.54 24.07 1.8040 46.58
42 -289.07 10.00
像面 0.00

【0045】
【表1】



【0046】
[数値実施例2]

面番号 r d Nd νd
物体面 6.00
1 390.58 10.00 1.8052 25.43
2 432.37 81.29
3 -119.76 9.00 1.5087 56.98
4 -241.63 6.54
5 -195.40 9.00 1.7726 48.08
6 -163.28 -9.00 1.7726 48.08
7 -195.40 -6.54
8 -241.63 -9.00 1.5087 56.98
9 -119.76 -81.29
10 432.37 -10.00 1.8052 25.43
11 390.58 10.00 1.8052 25.43
12 432.37 81.29
13 -119.76 9.00 1.5087 56.98
14 -241.63 6.54
15 -195.40 9.00 1.7726 48.08
16 -163.28 3.00
17 -586.62 4.00 1.8040 46.58
18 -192.54 4.92
19 -95.85 6.07 1.6264 32.71
20 80.99 12.20 1.7053 52.19
21 -79.05 1.34
22 77.57 14.24 1.8040 46.58
23 -75.54 4.00 1.5861 36.24
24 308.44 9.36 1.8040 46.58
25 -158.65 29.41
26 260.65 13.44 1.7022 52.41
27 -59.00 4.00 1.8052 25.43
28 -84.22 60.04
29 2550.04 22.62 1.7977 46.86
30 -82.71 0.50
31 154.20 13.22 1.8043 38.54
32 1196.56 20.48
33 -244.57 6.00 1.7170 28.58
34 94.75 59.28
35 -65.02 10.00 1.5502 42.95
36 699.95 9.25
37 -432.81 35.00 1.8040 46.58
38 -104.32 0.50
39 -22758.34 25.30 1.8041 43.70
40 -287.63 10.00
像面 0.00

【0047】
【表2】



【0048】
[数値実施例3]

面番号 r d Nd νd
物体面 6.00
1 461.73 10.00 1.6031 58.77
2 1120.55 79.64
3 -106.20 9.00 1.6541 56.52
4 -197.77 2.00
5 -185.42 9.67 1.8042 40.34
6 -152.17 -9.67 1.8042 40.34
7 -185.42 -2.00
8 -197.77 -9.00 1.6541 56.52
9 -106.20 -79.64
10 1120.55 -10.00 1.6031 58.77
11 461.73 10.00 1.6031 58.77
12 1120.55 79.64
13 -106.20 9.00 1.6541 56.52
14 -197.77 2.00
15 -185.42 9.67 1.8042 40.34
16 -152.17 20.30
17 64.13 4.25 1.8040 46.58
18 189.21 5.05
19 -83.43 7.00 1.7060 28.56
20 89.39 8.41 1.7264 50.74
21 -287.04 1.00
22 80.68 1.36
23 102.32 5.62 1.8040 46.58
24 4255.70 7.13
25 54.32 18.20 1.8040 46.58
26 -169.08 38.03
27 112.01 28.58 1.6393 53.55
28 -47.40 6.00 1.8052 25.43
29 468.82 12.65
30 299.80 30.00 1.8046 32.49
31 -76.74 0.50
32 173.71 15.00 1.8043 37.45
33 -786.95 24.66
34 -62.97 4.00 1.7339 27.51
35 206.43 35.40
36 -50.06 28.18 1.8040 46.58
37 -75.07 3.00
38 -327.29 23.25 1.8048 29.77
39 -134.69 6.36
40 322.77 18.82 1.8052 25.71
41 19763.06 30.94
像面 0.00

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【符号の説明】
【0051】
101 光源 102 照明光学系 103 試料 104 結像光学系
105 撮像素子 IM 中間像 AX 光軸 G1 第1結像光学系
G2 第2結像光学系 FL フィールドレンズ群 L1 負レンズ
M1、M2 マンジャンミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体からの光束を集光して該物体の中間像を形成する反射屈折部を含む第1結像光学系と、該中間像を像面に結像させる屈折部を含む第2結像光学系を有する反射屈折光学系であって、
前記第1結像光学系は、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち物体側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第1の光学素子と、光軸周辺が光透過部、周辺部のうち像側の面に反射膜を施し、裏面反射部とした第2の光学素子と、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の光路中に負レンズとを有し、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子は互いに裏面反射部が対向するように配置されており、
前記物体からの光束は、順に前記第1の光学素子の光透過部、前記負レンズ、前記第2の光学素子の裏面反射部、前記負レンズ、前記第1の光学素子の裏面反射部、前記負レンズ、前記第2の光学素子の光透過部を介した後に前記第2結像光学系側に出射しており、前記負レンズの材料のアッベ数は前記第2の光学素子の材料のアッベ数よりも大きいことを特徴とする反射屈折光学系。
【請求項2】
前記負レンズの材料のアッベ数をνn、前記第2の光学素子の材料のアッベ数をν2とするとき
0.5<ν2/νn<1.0
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の反射屈折光学系。
【請求項3】
前記負レンズのパワーをφn、前記第1結像光学系のパワーをφ1とするとき
0.10<|φn/φ1|<0.30
を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の反射屈折光学系。
【請求項4】
前記第1の光学素子は物体側の面が凸でメニスカス形状の正の屈折力を有し、前記負レンズは物体側の面が凹でメニスカス形状であり、前記第2の光学素子は像面側の面が凸でメニスカス形状の正の屈折力を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反射屈折光学系。
【請求項5】
前記第1の光学素子の物体側と像面側の面の曲率半径を各々r1、r2とするとき
0.40<r1/r2<1.00
を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の反射屈折光学系。
【請求項6】
光源手段と、前記光源手段からの光束で物体を照明する照明光学系と、該物体を結像する請求項1乃至5のいずれか1項の反射屈折光学系と該反射屈折光学系によって結像された物体像を光電変換する撮像素子と、該撮像素子からのデータより画像情報を生成する画像処理系とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
前記物体における視野領域がφ3mm以上であることを特徴とする請求項6の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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