説明

反射鏡付放電ランプ

【課題】反射鏡の開口部側の電極の温度上昇を抑制し、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプを提供する。
【解決手段】この発明に係る反射鏡付放電ランプ100は、開口部3aとこの開口部3aの反対側にネック部3とを有する楕円形反射鏡3と、中心軸が楕円形反射鏡3の開口部3aとネック部3bとを結ぶ中心軸に略一致し、発光部11の中心が楕円形反射鏡3の焦点と略一致し、石英バルブ20内にFリード線17が溶接されたFモリブデン箔15を溶接したF電極12と、Rリード線18が溶接されたRモリブデン箔16を溶接したR電極13と、水銀14と、希ガスとを封入した発光部11を略中央部に有する発光管1と、発光部11を形成する石英バルブ20における、少なくとも楕円形反射鏡3の開口部3a側のF電極12付近の表面に施され、F電極12の温度上昇を抑制する電極温度上昇抑制加工部60とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクタ装置に使用される反射鏡付放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
現状、交流タイプの反射鏡付放電ランプ(以下、ランプとも呼ぶ)は、特に楕円形反射鏡との組合せの場合、光学系からの反射光により楕円形反射鏡の開口部側の電極の温度が上昇し、それにより両電極間に温度差が発生し正常なハロゲンサイクルが機能しなくなる。結果として、楕円形反射鏡の開口部側の電極先端が損耗し、ランプ特性が維持できなくなる場合がある。また、電極損耗により、電極形状が変化しアークスポットのずれが発生する。一般的に交流タイプの超高圧水銀ランプの場合、サイクル毎のスポットずれが、「ちらつき」となって感じられる。
【0003】
この対策として、サイクル毎の電流波形に重畳パルスを加えて、電極先端の温度を高め、ハロゲンサイクルの最適化を図る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表平10−501919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、常に一定の電流パルスが発生しており、ハロゲンサイクルの最適化を図るどころか、逆に電極に大きなダメージを与えることになりかねない。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、反射鏡の開口部側の電極の温度上昇を抑制し、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る反射鏡付放電ランプは、
開口部とこの開口部の反対側にネック部とを有する反射鏡と、
中心軸が前記反射鏡の前記開口部と前記ネック部とを結ぶ中心軸に略一致し、発光部の中心が前記反射鏡の焦点と略一致し、石英バルブ内にFリード線が溶接されたFモリブデン箔を溶接したF電極と、Rリード線が溶接されたRモリブデン箔を溶接したR電極と、水銀と、希ガスとを封入した前記発光部を略中央部に有する発光管と、
前記発光部を形成する前記石英バルブにおける、少なくとも前記反射鏡の前記開口部側のF電極付近の表面に施され、前記F電極の温度上昇を抑制する電極温度上昇抑制加工部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記電極温度上昇抑制加工部の前記反射鏡の前記開口部側の軸方向端部は、前記Fモリブデン箔側の封止部の前記反射鏡の前記開口部側の端部付近まで延びるように構成することを特徴とする。
【0008】
また、前記電極温度上昇抑制加工部を、赤外線反射膜で構成することを特徴とする。
【0009】
また、前記電極温度上昇抑制加工部を、フロスト加工により施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る反射鏡付放電ランプは、発光部を形成する石英バルブにおける、少なくとも反射鏡の開口部側のF電極付近の表面に施され、F電極の温度上昇を抑制する電極温度上昇抑制加工部を備えたことにより、反射鏡の開口部側の電極の温度上昇を抑制し、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプが得られる。
【0011】
また、電極温度上昇抑制加工部の反射鏡の開口部側の軸方向端部を、Fモリブデン箔側の封止部の反射鏡の開口部側の端部付近まで延びるように構成することにより、さらに反射鏡の開口部側の電極の温度上昇を抑制し、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプが得られる。
【0012】
また、電極温度上昇抑制加工部を赤外線反射膜で構成することにより、プロジェクタ装置の光学系からの反射光を反射するので、反射鏡の開口部側のF電極の温度上昇を抑制することができ、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプが得られる。
【0013】
また、電極温度上昇抑制加工部をフロスト加工により施すことにより、電極温度上昇抑制加工部の表面積が増加する。また、プロジェクタ装置の光学系からの反射光を電極温度上昇抑制加工部の凹凸により拡散させる。これらの二つの要因により、反射鏡の開口部側のF電極の温度上昇を抑制することができる。それにより、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1乃至図8は実施の形態1を示す図で、図1は反射鏡付放電ランプ100の構成図、図2は一部を破断して断面で示す反射鏡付放電ランプ100の構成図、図3は製造過程における初期のF電極12の構成を示す図、図4はF電極12の先端を溶解してメルト電極12cを形成した図、図5はF電極12を点灯させて電極先端部12dを形成した図、図6はシミュレーションに用いたプロジェクタ装置の構成の概念図、図7は図6の構成において光学系から発光管1へ戻るエネルギーを求めた結果を示す図、図8は一部を破断して断面で示す変形例の反射鏡付放電ランプ100の構成図である。
【0015】
本実施の形態は、発光管1の石英バルブの表面に施す加工に特徴がある。従って、反射鏡付放電ランプ100の全体構成については、簡単に説明する。
【0016】
図1、図2により、反射鏡付放電ランプ100の構成を説明する。反射鏡付放電ランプ100は、発光管1と、この発光管1を保持するセラミックリング2と、セラミックリング2が固定される楕円形反射鏡3(反射鏡の一例)と、セラミックリング2の後面に固定されるキャップ5とを備える。セラミックリング2は、発光管1のRモリブデン箔付近(封止部)を保持する。反射鏡は、楕円形反射鏡3以外に、放物型反射鏡等でもよい。
【0017】
発光管1は、石英バルブ20内にFリード線17が溶接されたFモリブデン箔15を溶接したF電極12と、Rリード線18が溶接されたRモリブデン箔16を溶接したR電極13と、水銀14と、希ガス(アルゴン等)を封入した略球状の発光部11を中央部(中央部分)に有する。
【0018】
楕円形反射鏡3は、回転楕円体形状の一部分の形をしている。楕円形反射鏡3の材質は、ガラスである。
【0019】
発光管1は、F電極12を楕円形反射鏡3の開口部3a側に、R電極13をネック部3b側にして配置させる。
【0020】
発光管1の中心軸を、楕円形反射鏡3の開口部3aとネック部3bを結ぶ中心軸に一致させ、発光部11の中心が楕円形反射鏡3の焦点に一致するように発光管1を楕円形反射鏡3に組み込んだ構造とする。
【0021】
セラミックリング2は、外周面2a、内周面2bを有する略円筒形である。セラミックリング2は、楕円形反射鏡3に固定される側の端部に、楕円形反射鏡3のネック部3bを覆うように嵌合する嵌合部22を備える。
【0022】
また、セラミックリング2は、楕円形反射鏡3に固定される側の端部に、楕円形反射鏡3のネック部3bの軸方向端部が当接する当接部21を備える。当接部21は、発光管1の中心線方向に対して略直角である。
【0023】
セラミックリング2は、セメント4aにより楕円形反射鏡3に固定される。セメント4aの主成分は、シリカである。
【0024】
さらに、セラミックリング2は、楕円形反射鏡3に固定される側の端部に、嵌合部22を切り欠いた切り欠き部23を備える。切り欠き部23は、通風口として機能する。反射鏡付放電ランプ100において、楕円形反射鏡3にセラミックリング2を固定した状態では、切り欠き部23が開口している。発光管1が何らかの原因により破裂した場合、ガラスの破片がこの切り欠き部23から飛び散る恐れがあるので、図1に示すように、切り欠き部23にメッシュ7を設けている。
【0025】
ここで、反射鏡付放電ランプ100の組み立て手順を簡単に説明する。
【0026】
先ず、楕円形反射鏡3にセラミックリング2を固定する。楕円形反射鏡3のネック部3bに、セラミックリング2の嵌合部22をネック部3bを覆うように嵌め、ネック部3bの軸方向端部にセラミックリング2の当接部21を当接させる。
【0027】
その状態で、セメント4aで、楕円形反射鏡3とセラミックリング2とを接着する。セメント4aの主成分は、シリカである。
【0028】
次に、発光管1を楕円形反射鏡3とセラミックリング2の内部に挿入する。そして、発光管1を点灯させながら、発光管1に3次元的な位置調整(軸調整ともいう)を行う。
【0029】
これにより、発光管1の中心軸が楕円形反射鏡3の開口部3aとネック部3bを結ぶ中心軸に一致し、発光部11の中心が楕円形反射鏡3の焦点となる状態となる。
【0030】
そして、セメント4bを発光管1とセラミックリング2の内周面2bとの隙間に注入し乾燥する(図2)。セメント4bは、セメント4aと同様、主成分はシリカである。
【0031】
さらに、セラミックリング2から突出している発光管1を切断する。このとき、Rリード線18は切断しない。
【0032】
Rリード線18とトリガーワイヤ9とを、かしめ部材(図示せず、金属製)でかしめる。リング状のかしめ部材にRリード線18とトリガーワイヤ9とを通し、リング状のかしめ部材を潰してかしめるイメージである。
【0033】
Rリード線18とトリガーワイヤ9とをかしめたかしめ部材を第1の端子6に溶接する。
【0034】
そして、キャップ5をセラミックリング2に被せる。このとき、キャップ5にはその側壁に切り欠き部(図示せず)があり、この切り欠き部に第1の端子6が納まる。
【0035】
尚、発光管1の楕円形反射鏡3の開口部3a側のFリード線17は、楕円形反射鏡3の外周面に取り付けられる第2の端子31に接続される。
【0036】
第1の端子6と、第2の端子31とが電源に接続される。
【0037】
本実施の形態の特徴は、発光管1の発光部11を形成する石英バルブ20における、楕円形反射鏡3の開口部3a側のF電極12付近の表面に電極温度上昇抑制加工部60を施す点に特徴がある。電極温度上昇抑制加工部60は、楕円形反射鏡3の開口部3a側のF電極12の温度上昇を抑制するために設けられる。詳細を後述する。
【0038】
次に、F電極12、R電極13の構成について説明する。F電極12とR電極13の基本的な構成は同じであるので、F電極12を例に説明する。
【0039】
図3に示すように、F電極12は、先ず芯線12aの一方の端部(R電極13と対向する側)にコイル12bを所定線径、所定巻数で巻く。コイル12bの所定線径、所定巻数は、ランプのワット数によって変わる。
【0040】
図3に示すF電極12は、例えば、250Wワットのランプに使用されるものである。ワット数が増えると、コイル12bの所定線径、所定巻数は増加する。
【0041】
芯線12aの材料は、タングステンである。また、芯線12aの線径は、0.5mm程度である。
【0042】
コイル12bの材料も、タングステンである。また、コイル12bの線径は、0.25〜0.3mm程度である。
【0043】
F電極12(R電極13も同じ)は、図3の形状のままでは、ランプでの放電が安定しないため、R電極13に対向する部分を滑らかな曲面にする。F電極12の先端に、滑らかな曲面形状のメルト電極12cを形成する(図4参照)。
【0044】
メルト電極12cは、F電極12及びR電極13にタングステンが溶解する程度の電流を流すことで形成される。タングステンの融点は、約3407°Cである。
【0045】
このメルト電極12cは、F電極12及びR電極13を発光管1に組み込む前に行う場合と、F電極12及びR電極13を発光管1に組み込んだ後に行う場合とがある。どちらでもよい。
【0046】
さらに、ランプ完成後に、エージング(ランプを点灯させる)を行うと、F電極12(R電極13も同じ)のメルト電極12cの先端に、メルト電極12cに比べると小さい電極先端部12d(図5参照)が形成される。
【0047】
メルト電極12cのサイズは、例えば、軸方向長さ、最大径ともに約0.1〜0.2mm程度である。
【0048】
次に、プロジェクタ装置の光学系からのランプへ戻る反射光のエネルギーをシミュレーションにより調査した結果を示す。
【0049】
図6はシミュレーションに用いたプロジェクタ装置の構成の概念図である。図6において、本実施の形態の反射鏡付放電ランプ100は、プロジェクタ装置の前面ガラス30を備えるホルダーに保持される。
【0050】
前面ガラス30は、反射鏡付放電ランプ100の中心線100aに対する直交線に対して、角度θ1傾斜している。角度θ1は、例えば、十度以内である。前面ガラス30では、発光管1から放射された光は、全透過する(一例)。
【0051】
前面ガラス30の前方に、紫外線と赤外線を反射するUV/IRフィルタ40(紫外線/赤外線フィルタ)を設ける。UV/IRフィルタ40も、反射鏡付放電ランプ100の中心線100aに対する直交線に対して、角度θ2傾斜している。角度θ2は、例えば、十数度である。
【0052】
UV/IRフィルタ40を角度θ2傾斜させているのは、UV/IRフィルタ40から戻る紫外線/赤外線が反射鏡付放電ランプ100から外れ、発光管1に戻るエネルギーが傾斜させない場合より小さくなると考えられるからである。
【0053】
UV/IRフィルタ40の前方に、カラーフォイル50を設ける。カラーフォイル50からは、光が前方へ放射される。但し、カラーフォイル50から戻るエネルギーもある。
【0054】
図7は図6の構成において光学系から発光管1へ戻るエネルギーを求めた結果を示す図であり、横軸は前面ガラス30と発光管1の放電中心(F電極12とR電極13との間の中心)との距離、縦軸は発光管1へ戻るエネルギー(全放射エネルギーに対する比[%])である。そして、図6の構成において、F電極12とR電極13とに戻るエネルギーを求めている。また、参考に図6の構成からUV/IRフィルタ40を省いたときのF電極12に戻るエネルギーも求めている。但し、このデータについては、特に以下では言及しない。
【0055】
図7から解るように、プロジェクタ装置で通常採用される前面ガラス30と発光管1の放電中心との距離において、図6の構成では、
(1)F電極12へ戻るエネルギー(全放射エネルギーに対する比[%])は、6.5〜8[%]程度である。
(2)R電極13へ戻るエネルギー(全放射エネルギーに対する比[%])は、1〜2[%]程度である。
【0056】
このように、R電極13に比べ、F電極12へ戻るエネルギーが圧倒的に大きい。そのため、F電極12の温度が上昇し、R電極13との温度差が発生する場合は、F電極12の電極先端部12dが損耗し、ランプ特性が維持できなくなる場合がある。また、電極先端部12dの損耗により、電極形状が変化しアークスポットのずれが発生する。交流タイプの反射鏡付放電ランプ100の場合、サイクル毎のスポットずれが、「ちらつき」となって感じられることになる。
【0057】
上記シミュレーション(図6の構成)におけるF電極12とR電極13の温度データの一例は、以下に示す通りである。
(1)F電極12の温度:約2900℃
(2)R電極13の温度:約2800℃
両者には、約100℃の差があることが解る。
【0058】
参考データであるが、反射鏡付放電ランプ100をプロジェクタ装置から外に出し、自然点灯した場合のF電極12とR電極13の温度データの一例は、以下に示す通りである。
(1)F電極12の温度:2815〜2820℃
(2)R電極13の温度:2811〜2817℃
両者には、殆ど差がないことが解る。
【0059】
このように、反射鏡付放電ランプ100をプロジェクタ装置に組込むと、プロジェクタ装置の光学系からの反射光により楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の温度が上昇することが解る。それによりF電極12とR電極13との間に温度差が発生し正常なハロゲンサイクルが機能しなくなる。結果として、楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の電極先端部12dが損耗し、ランプ特性が維持できなくなる場合がある。
【0060】
そこで、本実施の形態では、図2に示すように、発光管1の発光部11を形成する石英バルブ20における、楕円形反射鏡3の開口部3a側のF電極12付近の表面に電極温度上昇抑制加工部60を施す。楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の電極先端部12dを含むF電極12の温度上昇を抑制して、F電極12の電極先端部12dの損耗を低減することが目的である。
【0061】
電極温度上昇抑制加工部60は、例えば、以下に示す方法で形成する。
(1)赤外線反射膜を石英バルブ20の表面に塗布する。
(2)フロスト加工(サンドブラスト加工)を施す。
【0062】
赤外線反射膜としては、例えば、高屈折率材料として酸化タンタル(Ta)、低屈折率材料としてシリカ(SiO)からなる多層膜が広く使用されているものを用いる。
【0063】
サンドプラスト加工は、石英バルブ20の表面を荒らす加工である。サンドプラスト加工により、約1μm以下の凹凸が形成される(粗面化される)。
【0064】
また、電極温度上昇抑制加工部60が施される位置は、
(1)電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3aの反対側の軸方向(発光管1の軸方向)端部と、F電極12のコイル12bの芯線12a側(R電極13の反対側)の軸方向(発光管1の軸方向)端部とが略一致する。発光管1からの光束を低下させないためである。
(2)電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3a側の軸方向(発光管1の軸方向)端部は、発光管1の石英バルブ20の発光部11と、Fモリブデン箔15側の封止部20aとの境界線(ネック部ということもある)付近に位置する。
【0065】
但し、電極温度上昇抑制加工部60が施される領域は、F電極12付近の発光部11を形成する石英バルブ20付近に施されていればよい。
【0066】
赤外線反射膜により形成される電極温度上昇抑制加工部60は、プロジェクタ装置の光学系からの反射光を反射するので、楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の温度上昇を抑制することができる。それにより、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプを提供することができる。
【0067】
フロスト加工(サンドブラスト加工)により形成される電極温度上昇抑制加工部60は、電極温度上昇抑制加工部60の表面積が増加する。また、プロジェクタ装置の光学系からの反射光を電極温度上昇抑制加工部60の凹凸により拡散させる。これらの二つの要因により、楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の温度上昇を抑制することができる。それにより、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプを提供することができる。
【0068】
図8は一部を破断して断面で示す変形例の反射鏡付放電ランプ100の構成図である。図2では電極温度上昇抑制加工部60を、(1)電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3aの反対側の軸方向(発光管1の軸方向)端部と、F電極12のコイル12bの芯線12a側(R電極13の反対側)の軸方向(発光管1の軸方向)端部とが略一致し、
(2)電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3a側の軸方向(発光管1の軸方向)端部は、発光管1の石英バルブ20の発光部11と、Fモリブデン箔15側の封止部20aとの境界線(ネック部ということもある)付近に位置する、ようにした。
【0069】
これに対して、図8に示す電極温度上昇抑制加工部60は、
(1)電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3aの反対側の軸方向(発光管1の軸方向)端部と、F電極12のコイル12bの芯線12a側(R電極13の反対側)の軸方向(発光管1の軸方向)端部とが略一致し、
(2)電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3a側の軸方向(発光管1の軸方向)端部は、Fモリブデン箔15側の封止部20aの楕円形反射鏡3の開口部3a側の端部付近まで延びる。
【0070】
このような構成とすることにより、赤外線反射膜により形成される電極温度上昇抑制加工部60は、及びフロスト加工(サンドブラスト加工)により形成される電極温度上昇抑制加工部60の効果を高めることができる。
【0071】
以上のように、赤外線反射膜又はフロスト加工(サンドブラスト加工)により形成される電極温度上昇抑制加工部60を、少なくともF電極12付近の発光部11を形成する石英バルブ20付近に施すことにより、プロジェクタ装置の光学系からの反射光による楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の温度上昇を抑制することができる。それにより、電極損耗の少ない反射鏡付放電ランプを提供することができる。
【0072】
また、電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3aの反対側の軸方向(発光管1の軸方向)端部と、F電極12のコイル12bの芯線12a側(R電極13の反対側)の軸方向(発光管1の軸方向)端部とが略一致するようにすることにより、発光管1からの光束を低下させることなく、プロジェクタ装置の光学系からの反射光による楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の温度上昇を抑制することができる。
【0073】
また、電極温度上昇抑制加工部60の楕円形反射鏡3の開口部3a側の軸方向(発光管1の軸方向)端部は、Fモリブデン箔15側の封止部20aの楕円形反射鏡3の開口部3a側の端部付近まで延びるように構成することにより、さらに、プロジェクタ装置の光学系からの反射光による楕円形反射鏡3の開口部側のF電極12の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施の形態1を示す図で、反射鏡付放電ランプ100の構成図。
【図2】実施の形態1を示す図で、一部を破断して断面で示す反射鏡付放電ランプ100の構成図。
【図3】実施の形態1を示す図で、製造過程における初期のF電極12の構成を示す図。
【図4】実施の形態1を示す図で、F電極12の先端を溶解してメルト電極12cを形成した図。
【図5】実施の形態1を示す図で、F電極12を点灯させて電極先端部12dを形成した図。
【図6】実施の形態1を示す図で、シミュレーションに用いたプロジェクタ装置の構成の概念図。
【図7】実施の形態1を示す図で、図6の構成において光学系から発光管1へ戻るエネルギーを求めた結果を示す図。
【図8】実施の形態1を示す図で、一部を破断して断面で示す変形例の反射鏡付放電ランプ100の構成図。
【符号の説明】
【0075】
1 発光管、2 セラミックリング、2a 外周面、2b 内周面、3 楕円形反射鏡、3a 開口部、3b ネック部、4a セメント、4b セメント、5 キャップ、6 第1の端子、7 メッシュ、9 トリガーワイヤ、11 発光部、12 F電極、12a 芯線、12b コイル、12c メルト電極、12d 電極先端部、13 R電極、14 水銀、15 Fモリブデン箔、16 Rモリブデン箔、17 Fリード線、18 Rリード線、20 石英バルブ、20a 封止部、21 当接部、22 嵌合部、23 切り欠き部、30 前面ガラス、31 第2の端子、40 UV/IRフィルタ、50 カラーフォイル、60 電極温度上昇抑制加工部、100 反射鏡付放電ランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部とこの開口部の反対側にネック部とを有する反射鏡と、
中心軸が前記反射鏡の前記開口部と前記ネック部とを結ぶ中心軸に略一致し、発光部の中心が前記反射鏡の焦点と略一致し、石英バルブ内にFリード線が溶接されたFモリブデン箔を溶接したF電極と、Rリード線が溶接されたRモリブデン箔を溶接したR電極と、水銀と、希ガスとを封入した前記発光部を略中央部に有する発光管と、
前記発光部を形成する前記石英バルブにおける、少なくとも前記反射鏡の前記開口部側のF電極付近の表面に施され、前記F電極の温度上昇を抑制する電極温度上昇抑制加工部とを備えたことを特徴とする反射鏡付放電ランプ。
【請求項2】
前記電極温度上昇抑制加工部の前記反射鏡の前記開口部側の軸方向端部は、前記Fモリブデン箔側の封止部の前記反射鏡の前記開口部側の端部付近まで延びるように構成することを特徴とする請求項1記載の反射鏡付放電ランプ。
【請求項3】
前記電極温度上昇抑制加工部を、赤外線反射膜で構成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反射鏡付放電ランプ。
【請求項4】
前記電極温度上昇抑制加工部を、フロスト加工により施すことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の反射鏡付放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−61816(P2010−61816A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223100(P2008−223100)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】