説明

反射防止フィルム、偏光板及び透過型液晶ディスプレイ

【課題】本発明は、未反応のアミド化合物を減らし偏光層の退色を防ぎ長期間の使用に耐え得るフィルム構造を提供することにある。
【解決手段】透明基材上にハードコート層、反射防止層を形成した反射防止フィルムにおいて、ハードコート層を形成するハードコート層形成用塗液中の処方、およびハードコート層形成過程プロセスにより、未反応のアミド化合物を減らし偏光層の退色を防ぎ長期間の使用に耐え得るように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなどの画像表示装置、またガラスやプラスチックフィルムからなるウィンドウ、光学レンズ、眼鏡等の表面に使用される反射防止フィルム、偏光板及び透過型液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像表示装置においては、外光が表示画面上に映りこむことによって画像を認識しづらくなるという問題がある。さらに、最近では、屋内だけでなく屋外にも持ち出される機会が増加し、表示画面上への外光の映り込みや高度な耐久性がより重要な問題になっている。
【0003】
ところで、この表示画面上への映りこみは、反射率を下げる方法によって解決される。その手法として、反射防止フィルムには、屈折率の異なる層を積層する方法が用いられ、層数が増えるほど反射防止性能は向上する。
【0004】
しかし、層数の増加とともにコストも上がるため、コストを抑えつつ単層より良好な反射防止性能を発揮する2層または3層の積層体が使用されることが多い。この中で2層構成の場合、高屈折率材料を第1層として基材側に堆積し、低屈折率材料を第2層である最外層に用いる構成が一般的であり低反射フィルム特性が良好なものが得られる。
【0005】
反射防止フィルムを製造する際には、物理蒸着(PVD)法や化学蒸着(CVD)法などのドライコーティング法とウェットコーティング法とが知られている。ドライコーティング法の場合は、ウェットコーティング法では難しい高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある。
【0006】
この反射防止フィルムをディスプレイ表面に設けることにより、その反射防止機能によって、外光の反射を抑制することができ、明所でのコントラストを向上させることができる。また、同時に透過率を向上させることができることから画像をより明るく表示可能にすることができる。また、バックライトの出力などを抑える省エネ効果も期待できる。
【0007】
このような反射防止フィルムにおいては、透明基材上に形成するハードコート層により表面硬度を付与している。ハードコート層は一般にアクリル多官能化合物の重合体からなり、アクリル樹脂の特性により表面硬度、耐擦傷性を有するが、絶縁性が高いために帯電しやすく、ハードコート層を設けた製品表面への埃等の付着や、帯電による走行不良などの問題を抱えている。このため、透明基材上にハードコート層と反射防止層を備える反射防止フィルムにおいては、ハードコート層に帯電防止機能を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
このハードコート層の硬度とカールは相反する関係にあるが、これらを両立するためにはハードコート層を形成するハードコート塗液中にアミド化合物を含有させればよいことが知られている。
【0009】
ところで、この反射防止フィルムは、その透明基材の一方の面にハードコート層と反射防止層が順に備えられた反射防止非形成面側に、第1の偏光層と第2の透明基材を順に備えて画像表示装置の一部である偏光板に用いられている。この偏光板の偏光層は、主として延伸配向したポリビニルアルコールフィルム及びその誘導体をヨウ素で染色することにより偏光機能が付与され、染色の際、ヨウ素は吸着・配向することによって偏光性能を発揮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−321428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、反射防止フィルムにあっては、帯電防止性能を付与するためにハードコート層形成用塗液中に導電性材料として四級アンモニウム塩及びハードコート層の硬度とカールの両立を目的として炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物が加えられる。このため、四級アンモニウム塩及び炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物を含むハードコート層形成用塗液を用いてハードコート層を形成した場合には、反射防止フィルムを偏光板化した際に、偏光板の偏光層が退色するといった問題を有する。
【0012】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、偏光板化した際に偏光層の退色がなく、長期間の使用に耐えうる反射防止フィルム、偏光板及透過型液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層及び反射防止層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、前記ハードコート層は、ハードコート層形成用塗液を前記透明基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜に対して乾燥及び紫外線照射が行われて形成され、かつ、前記ハードコート層形成用塗液が四級アンモニウム塩と炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物、光重合開始剤、紫外線硬化型材料を含み、前記ハードコート層形成用塗液における光重合開始剤の添加量が炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物の重量100重量部に対して60〜300重量部の添加量であることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0014】
請求項2に係る発明は、前記ハードコート層形成用塗液に含まれる紫外線硬化型材料が分子量1000以下であり、かつ、官能基を3つ以上持つ光重合性モノマーであることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0015】
請求項3に係る発明は、前記ハードコート層形成用塗液により形成された塗膜に対し、紫外線照射をおこなう際の照射量が200mj/cm以上であることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3に記載の反射防止フィルムのハードコート層、反射防止層の形成面と反対側の透明基材上に偏光層、第2の透明基材を順に備えたことを特徴とする偏光板である。
【0017】
請求項5に係る発明は、観察者側から請求項4に記載の偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットを順に配して備え、前記反射防止層が表面に位置されることを特徴とする透過型液晶ディスプレイである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、反射防止機能、帯電防止機能を備えるだけでなく、偏光板化した際に退色のない反射防止フィルム、偏光板及び透過型液晶ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る反射防止フィルムを断面して示す断面模式図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る偏光板を断面して示す断面模式図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイを断面して示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム、偏光板及び透過型液晶ディスプレイについて図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る反射防止フィルム10を示すもので、第1の透明基材11上にハードコート層12、反射防止層13が順に積層されている。このうち反射防止層13は、最表面を形成する。
【0022】
ここで、第1の透明基材11上にハードコート層12を設けることにより、その表面に高い表面硬度を付与することができ、耐擦傷性に優れた反射防止フィルム10とすることができる。また、ハードコート層12に4級アンモニウム塩を添加することにより帯電防止性を付与する。
【0023】
前記透明基材11は、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂フィルム、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等のビニル化合物、ポリアクリル酸(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール等を用いることができるがこれらに限定されるものではなく、機械的強度や寸法安定性に優れるものであれば良い。また、密着性を良くするために前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理などを施しておいても良い。
【0024】
上述した透明基材11の中でも、複屈折が少なく透明性が良好であるトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを用いることが特に好ましい。
【0025】
また、前記ハードコート層12は、ハードコート層形成用塗液を透明基材11上に塗工後、加熱乾燥により塗膜中の溶媒を揮発させ、その後、紫外線照射等により塗膜を硬化させて形成される。ハードコート層12の膜厚としては、5μm以上12μm以下であることが好ましい。ハードコート層12の形成用塗液の塗布方法としては、ハードコート層形成用塗液の場合と同様に、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0026】
ハードコート層12は、紫外線を照射することにより塗膜は硬化され形成される。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。
【0027】
そして、得られたハードコート層12は、第1の透明基材11の表面硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を付きにくくすることができ、第1の透明基材11の屈曲により、反射防止層13とともにクラックが入るのが抑制されて、反射防止フィルム10の機械的強度を改善する。
【0028】
帯電防止性能を付与するには、4級アンモニウム塩の他に金属粒子や金属酸化物粒子などの導電性粒子をハードコート層12に含有させる方法があるが、後者を用いた場合には全光線透過率が劣るなどの課題があることから、本発明にあっては4級アンモニウム塩を用いている。
【0029】
ハードコート層形成用塗液にあっては、4級アンモニウム塩材料として、4級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料を好適に用いることができる。4級アンモニウム塩材料は−N の構造を示し、4級アンモニウムカチオン(−N )とアニオン(X )を備えることによりハードコート層に導電性を発現させる。このとき、X としては、Cl 、Br 、I 、F 、HSO 、SO 2− 、NO 、PO 3− 、HPO 2− 、H PO 、SO 、OH 等を挙げることができる。
【0030】
四級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料としては、四級アンモニウム塩(−N )を官能基として分子内に含む多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0031】
四級アンモニウム塩を官能基として分子内に含むアクリル系材料として具体的には、ライトエステルDQ−100(共栄社化学株式会社製)等を用いることができる。
【0032】
ハードコート層形成用塗液には、炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物が加えられる。炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物とは、一分子内に1以上のアミド基および1以上の重合性基を有するモノマーである。具体的には、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N−モノブチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアクリル系化合物、N−ビニルホルムアミド、2−プロペニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタムなどのビニル系化合物が挙げられる。
【0033】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。電離放射線としては、紫外線、電子線などが挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。また、電離放射線を照射する際、その雰囲気に限定されるものではなく、大気、窒素やアルゴンなどの不活性ガスなど様々な雰囲気下で照射することができる。本発明にあっては、反応性をあげて未反応のアミド化合物を減らすという点から光重合開始剤の添加量は多いほうが好ましい。アミド化合物の添加量100重量部に対して60〜300%重量部の添加量が好ましく、さらには、80〜200重量部の範囲が好ましい。
【0034】
ここで、導電性材料として四級アンモニウム塩、炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物および光重合開始剤を加えたハードコート層形成用塗液中によりハードコート層を形成した際に、炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物に対して光重合開始剤の量を60〜300重量部の添加量とすることにより、反射防止フィルム10を偏光板化した際の偏光層の退色を防ぐことが可能となる。なお、光重合開始剤の添加量をアミド化合物の添加量に対して60重量部未満とした場合には、反射防止フィルム10を偏光板化した際に退色が発生する。一方、光重合開始剤の量を300重量部を超えるものとした場合には、退色は発生しないもののヘイズが上昇し、反射防止フィルム10として適さなくなってしまう。
【0035】
ハードコート層形成用塗液に含まれる紫外線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【0036】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0037】
紫外線硬化型材料としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に本発明では、反応性を上げるという点から分子量1000以下で官能基を3つ以上持つ紫外線硬化型材料を用いることが好ましく、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。官能基が2つ以下だと硬度に乏しく好ましくない。
【0038】
その他、アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0039】
これらを含むハードコート層形成用塗液は、通常、揮発性溶媒に希釈して塗布される。希釈溶媒として用いられるものは、特に限定されないが、組成物の安定性、ハードコート層に対する濡れ性、揮発性などを考慮して、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。また、溶媒は1種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。
【0040】
また、反射防止層13は、第1の透明基材11表面に形成されたハードコート層12表面上に形成される。反射防止層13の膜厚としては、95nm以上110nm以下の範囲であることが好ましい。
【0041】
この反射防止層13の形成方法としては、反射防止層形成用塗液を第1の透明基材11上に塗工後、加熱乾燥により塗膜中の溶媒を揮発させ、その後、紫外線照射等により塗膜を硬化させる。反射防止層13の形成用塗液の塗布方法としては、反射防止層形成用塗液の場合と同様に、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0042】
反射防止層13は、ハードコート層12上の塗膜に対し、紫外線を照射することにより塗膜は硬化され形成される。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。
【0043】
反射防止層形成用塗液に加えられる電離放射線硬化型材料としては、ハードコート層形成用塗液の場合と同様に、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような単官能または多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0044】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0045】
反射防止層形成用塗液に加えられる低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、NaAlF(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができる。
【0046】
低屈折率粒子においては、粒子の内部に空隙を有する低屈折率粒子を好適に用いることができる。粒子の内部に空隙を有する粒子においては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
【0047】
反射防止層形成用塗液に加えられる低屈折率シリカ粒子としては、粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。さらには、粒径が50nm以上80nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0048】
前記低屈折率シリカ粒子の粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、反射防止層13が白化して反射防止フィルム10の透明性が低下する傾向にある。一方、低屈折率シリカ粒子の粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による反射防止層における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0049】
内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率シリカ粒子とすることができる。内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子としては、多孔質シリカ粒子やシェル構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0050】
反射防止層形成用塗液に加えられる撥水性能を有するシリコーン系材料としては、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキルポリエーテル変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0051】
また、撥水性能を有するシリコーン系材料としては、フッ素を含有せず、(メタ)アクリル基を持たない有機ケイ素化合物を用いることもできる。具体的には、アルキルアルコキシシラン化合物、シランシロキサン化合物、ポリエステル基を含有するシラン化合物、ポリエーテル基を有するシラン化合物、シロキサン化合物を用いることもできる。
【0052】
光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは1重量部以上7重量部以下である。
【0053】
また、反射防止フィルム10は、平均視感反射率が0.5%以上1.5%以下の範囲内であることが好ましい。平均視感反射率が1.5%を越える場合は、反射防止性能が低下してしまい、外光の映り込みが発生しやすくなる。一方、平均視感反射率が0.4%未満の場合は、高い反射防止性能を実現するために高屈折率層、低屈折率を積層する必要があり、コスト高となる。また、全光線透過率が95%未満の場合には、透過型液晶ディスプレイ等の画像装置の表面に設けるのに適さなくなってしまう。
【0054】
平均視感反射率は、低屈折率層表面の分光反射率曲線から求められる。本発明の反射防止フィルム10の分光反射率曲線は、その低屈折率層と反対側の面を黒色塗料で艶消し処理した後におこなわれ、低屈折率層表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。平均視感反射率は、可視光の各波長の反射率を比視感度により校正し、平均した反射率の値である。このとき、比視感度は明所視標準比視感度が用いられる。
【0055】
また、反射防止フィルム10は、反射防止層表面の表面抵抗値が1.0×10 (Ω/cm)以上1.0×1011(Ω/cm)以下であることが好ましい。表面の表面抵抗値が1.0×1011(Ω/cm )以下といった高い帯電防止性をハードコート層に付与するにあっては、金属粒子や金属酸化物粒子といった導電性粒子を用いて帯電防止性を有するハードコート層を形成する場合には相当量の導電性粒子を添加する必要があり、このとき、全光線透過率が低下してしまう。しかしながら、4級アンモニウム塩材料を用い、帯
電防止性を有するハードコート層を形成するにあっては、良好な帯電防止性能を発現し、かつ全光線透過率の低下を防ぐことができる。
【0056】
また、本発明の反射防止フィルム10にあっては、そのヘイズを0.05%以上0.3%以下の範囲内とすることが好ましい。本発明の反射防止フィルム10のヘイズを0.3%以下とすることにより、明所コントラストの高い反射防止フィルムとすることができる。ヘイズが0.3%を超える場合には、散乱による透過損失によって暗所での黒表示させた際の光モレを見かけ上抑制することが可能となるが、明所での黒表示の際に散乱によって黒表示が白ボケしてコントラストが低下してしまう。反射防止フィルム10のヘイズは、小さいほうが好ましいが、0.01%未満に作製することは困難である。
【0057】
次に、本発明の一実施の形態に係る反射防止フィルム10を用いて構成される偏光板である第1の偏光板20について図2を参照して説明する。
【0058】
即ち、前記反射防止フィルム10を用いた反射防止性偏光板210は、第1の透明基材11の一方面にハードコート層12と、反射防止層13を順に設けられて反射防止フィルム10が形成され、その他方面の反射防止層非形成面側に、第1の偏光層23と、第2の透明基材22が順に設けられて形成される。
【0059】
また、前記反射防止フィルム10は、ディスプレイ部材、画像装置等の一部として用いることができる。
【0060】
次に、本発明の一実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイについて図3を参照して説明する。
【0061】
即ち、前記反射防止フィルム10は、その一方の面に貼り合わせた第1の偏光板20を反射防止層非形成面に備えた反射防止性偏光板200、液晶セル30、第2の偏光板40、バックライトユニット50をこの順に備えている(図3(a)参照)。このとき、反射防止フィルム10側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0062】
図3(a)に示す構成にあっては、反射防止フィルム10の透明基材11と第1の偏光板20の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0063】
そして、バックライトユニット50は、光源と光拡散板を備える。液晶セル30は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル30を挟むように設けられる第1、第2の偏光板20、40にあっては、透明基材21、22、41、42間に偏光層23、43を挟持した構造となっている。
【0064】
また、図3(b)に示す構成にあっては、透明基材11の一方の面に反射防止層13を備えた反射防止フィルム10と、当該反射防止フィルム10の反射防止層非形成面に、偏光層23、透明基材22を順に備えて、反射防止性偏光板210を形成し、この反射防止性偏光板210、液晶セル30、第2の偏光板40、バックライトユニット50をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム10の反射防止層13側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0065】
ここで、反射防止フィルム10の反射防止層非形成面には、第1の偏光板として、偏光層23と透明基材22が、この順に配された反射防止性偏光板210を備えた透過型液晶ディスプレイが構成される。
【0066】
そして、図3(b)に示す構成においても、図3(a)と同様に、バックライトユニット50は、光源と光拡散板を備える。液晶セル30は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル30を挟むように設けられる第1、第2の偏光板20、40にあっては、透明基材11、22、41、42間に偏光層23、43を挟持した構造となっている。
【0067】
ここで、前記透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
以下、本発明による具体的な実施例1,2と比較例1〜4を作製して比較検討する。
【0069】
(実施例1)
(ハードコート層の形成)
4級アンモニウム塩材料としてメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド( 共栄社製、ライトエステルD Q − 1 0 0 )20重量部、アミド化合物としてN-ビニルホルムアミド(荒川化学製、ビームセット770)10重量部、光重合性モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレート25重量部、開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン社製)20重量部、その他にウレタンアクリレート75重量部、酢酸メチルを50重量部と、2−ブタノンを50重量部混合しハードコート層形成用塗液を調液した。透明基材であるトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層の形成用塗液を塗布し、乾燥、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量250mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚10μmの透明なハードコート層を形成させた。
【0070】
(反射防止層の形成)
低屈折率シリカ粒子(平均粒子径50nm)36重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを1.6重量部、撥水性能を有するシリコーン系材料(東芝GEシリコーン社製TSF44)0.2重量部、イルガキュア184(チバ・ジャパン社製)0.2重量部、イソプロピルアルコールを72.2重量部と、メチルイソブチルケトンを13.8重量部混合し、反射防止層形成用塗液を調液した。得られた反射防止層形成用塗液をハードコート層の表面に塗布し、乾燥、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/mで紫外線照射をおこなうことにより乾燥膜厚100nmの反射防止層を形成させた。
【0071】
(偏光板の作成)
得られた反射防止フィルムを市販のPVA(理学機器メーカーケニス製)に貼付し、得られた反射防止フィルム/PVA/TACの偏光板を作成した。
【0072】
(実施例2)
実施例1のハードコート層形成用塗液について、光重合性モノマーとして6官能のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量部、開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン社製)10重量部、照射線量200mJ/mに変更した以外は、実施例1と同様に反射防止フィルム、偏光板の作成を行った。
【0073】
(比較例1)
実施例1のハードコート層形成用塗液について、開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン社製)5重量部に変更した以外は、実施例1と同様に反射防止フィルム、偏光板の作成を行った。
【0074】
(比較例2)
実施例1のハードコート層形成用塗液について、開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン社製)50重量部に変更した以外は、実施例1と同様に反射防止フィルム、偏光板の作成を行った。
【0075】
(比較例3)
実施例1のハードコート層形成用塗液について、光重合性モノマーとして2官能のトリプロピレングリコールジアクリレート25重量部に変更した以外は、実施例1と同様に反射防止フィルム、偏光板の作成を行った。
【0076】
(比較例4)
実施例1のハードコート層形成用塗液について、紫外線照射線量150mJ/mに変更した以外は、実施例1と同様に反射防止フィルム、偏光板の作成を行った。
【0077】
(ヘイズ)
得られた反射防止フィルムについて、日本電色社製 ヘイズメーターNDH2000にて測定を行った。
【0078】
(視感平均反射率)
得られた反射防止フィルムの反射防止層表面について、自動分光光度計(日立製作所製、U−4100、測定波長360〜800nm)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち反射防止層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。
【0079】
(表面抵抗値)
得られた反射防止フィルムの反射防止層表面の表面抵抗値を、JIS K 6911に
準拠して測定した。
【0080】
(偏光板の退色評価)
まず、実施例1〜2、比較例1〜4で得られた偏光板を65℃−95%の条件で200hr投入した。取り出したのち、暗室にて予め作成したTAC/PVA/TAC構成の偏光板をランプの上部にてクロスニコルの状態にセットした。ランプの上部より、目視にて光漏れがあるかどうか評価した。
【表1】

【0081】
評価は、表1に示すように実施例1、実施例2では、偏光板の退色が見られないが、比較例1、比較例3、比較例4では偏光板の退色が発生した。また、比較例2では、偏光板の退色は見られなかったが、開始剤量が多く溶解しきらなかったためヘイズが上昇し反射防止フィルムの性能として適さないことが確認された。
【0082】
本発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0083】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の反射防止フィルムは、画像表示装置、またガラスやプラスチックフィルムから
なるウィンドウ、光学レンズ、眼鏡等の表面に使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10…反射防止フィルム
11…第1の透明基材
12…ハードコート層
13…反射防止層
20…第1の偏光板
22…第2の透明基材
23…第1の偏光層
200…反射防止性偏光板
210…反射防止性偏光板
30…液晶セル
40…第2の偏光板
41…第3の透明基材
42…第4の透明基材
43…第2の偏光層
50…バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層及び反射防止層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、
前記ハードコート層は、ハードコート層形成用塗液を前記透明基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜に対して乾燥及び紫外線照射が行われて形成され、かつ、前記ハードコート層形成用塗液が四級アンモニウム塩と炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物、光重合開始剤、紫外線硬化型材料を含み、前記ハードコート層形成用塗液における光重合開始剤の添加量が炭素−炭素不飽和二重結合を備えるアミド化合物の重量100重量部に対して60〜300重量部の添加量であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層形成用塗液に含まれる紫外線硬化型材料が分子量1000以下であり、かつ、官能基を3つ以上持つ光重合性モノマーであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層形成用塗液により形成された塗膜に対し、紫外線照射をおこなう際の照射量が200mj/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の反射防止フィルムのハードコート層、反射防止層の形成面と反対側の透明基材上に偏光層、第2の透明基材を順に備えたことを特徴とする偏光板。
【請求項5】
観察者側から請求項4に記載の偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットを順に配して備え、前記反射防止層が表面に位置されることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−198340(P2012−198340A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61642(P2011−61642)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】