説明

反射防止フィルム

【課題】優れた防眩性を有し、表示コントラストの低下が少なく、ギラツキがない反射防止フィルムを提供すること。
【解決手段】フィルム基材上に、平均粒径が5〜12μmの透光性粒子と樹脂を含有する少なくとも1層のハードコート層と、該ハードコート層の上に、平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子を凝集状態で含有する少なくとも1層のオーバーコート層を有し、さらにその上に少なくとも1層の低屈折率層を有し、該低屈折率層の表面凹凸形状の平均傾斜角度θが1〜4°である反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)において、ディスプレイの表面に配置することにより、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止する防眩性ハードコートフィルムとして、特許文献1が知られている。しかしながら、特許文献1に示される技術には、防眩性が不十分であるという問題がある。さらにフルスペックハイビジョン液晶テレビのような、画素サイズが小さな液晶パネルに対しては、ギラツキ(防眩フィルムの表面凹凸による画像の歪みや不均一)が悪化しやすいという問題があることがわかった。
【特許文献1】特開2007−41533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、優れた防眩性を有し、表示コントラストの低下が少なく、ギラツキがない反射防止フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が鋭意検討した結果、LCDパネルからの透過光の散乱体としては、ハードコート層の平均粒径が5〜12μmの透光性粒子を利用し、表面の凹凸は、該ハードコート層の上に、新たにオーバーコート層を設け、さらにその上に低屈折率層を設けて、そのオーバーコート層内に凝集状態にある平均粒径0.1μm以下の無機微粒子を含有させ、それを利用して、該低屈折率層の表面凹凸形状の平均傾斜角度θを1〜4°に調整することにより上記課題を達成できることを見いだし、本発明に到った。
【0005】
本発明において、オーバーコート層の凝集状態にある無機微粒子は、一次粒子サイズが0.1μm以下と小さいため、LCDパネルからの透過光の散乱体としては機能せず、表面の凹凸形状を形成することにのみ利用できる。
【0006】
また、図1のように従来の数μmサイズ球状透光性微粒子により表面凹凸を形成する場合には、図2のように球状透光性微粒子の球体上部によって被膜はドーム状の凸部を形成する。
一方、本発明の凝集状態にある無機微粒子は、一次粒子サイズが0.1μm以下と小さい粒子からなるフィラメント状の凝集のため、図3のようにオーバーコート層の被膜が小円錐状の凸部を形成する点が異なる。そして、この小円錐状の凸部からなる表面凹凸形状は、ドーム状の凸部からなる表面凹凸形状に比較して、防眩性に優れ、ギラツキを起しにくく、また明所で黒表示性が向上するため明所における表示コントラストが高いという優れた特徴があることが分かった。
【0007】
さらに、低屈折率層を塗設して反射防止能を得ることによって、明所における黒表示性が向上するため明所での表示コントラストが高いという特徴も有している。
【0008】
すなわち、本発明の上記目的は以下の手段により達成された。
【0009】
(1) フィルム基材上に、平均粒径が5〜12μmの透光性粒子と樹脂を含有する少なくとも1層のハードコート層と、該ハードコート層の上に、平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子を凝集状態で含有する少なくとも1層のオーバーコート層を有し、さらにその上に少なくとも1層の低屈折率層を有し、該低屈折率層の表面凹凸形状の平均傾斜角度θが1〜4°である反射防止フィルム。
(2) 前記反射防止フィルムの表示コントラスト特性が80以上である(1)に記載の反射防止フィルム。
(3) 前記平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子がシリカ微粒子である(1)または(2)に記載の反射防止フィルム。
(4) 前記平均粒径が5〜12μmの透光性粒子と樹脂の屈折率差が0.05以下である(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(5) 前記低屈折率層が中空状シリカ微粒子を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(6) 前記低屈折率層の屈折率が1.20〜1.40である(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0010】
防眩性に優れ、表示コントラストの低下が少なく、ギラツキのない反射防止フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の反射防止フィルムについて説明する。
【0012】
<反射防止フィルム>
〔反射防止フィルムの層構成〕
本発明の反射防止フィルムは、透明なフィルム基材(支持体ともいう)上に、少なくとも1層のハードコート層と、その上に少なくとも1層のオーバーコート層と、さらにその上に少なくとも1層の低屈折率層を有し、目的に応じてその他の機能層を単独又は複数層設けることができる。
【0013】
好ましい一つの態様としては、基材上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層された反射防止フィルムを挙げることができる。反射防止フィルムは、基材とほぼ同じ屈折率のハードコート層及びオーバーコート層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。
【0014】
上記態様のフィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成においてフィルム基材は、フィルムで構成された支持体を指している。
・ フィルム基材/ハードコート層/オーバーコート層/低屈折率層
・ フィルム基材/防湿層/ハードコート層/オーバーコート層/低屈折率層
・ 防湿層/フィルム基材/ハードコート層/オーバーコート層/低屈折率層
・ フィルム基材/ハードコート層/導電性層/オーバーコート層/低屈折率層
・ フィルム基材/導電性層/ハードコート層/オーバーコート層/低屈折率層
【0015】
これらの層は、蒸着、大気圧プラズマ、塗布などの方法により形成することができる。生産性の観点からは、塗布により形成することが好ましい。
以下各構成層について説明する。
【0016】
[低屈折率層]
本発明において、低屈折率層は、反射防止フィルムの最表面側に位置し、反射防止フィルムの層中で最も屈折率が低い層である。低屈折率層を塗設して反射防止能を得ることによって、明所における黒表示性が向上するため明所での表示コントラストが高いという効果が得られる。
【0017】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.50であることが好ましく、特に1.25〜1.45であることがより好ましく、1.20〜1.40であることが最も好ましい。
ここで、低屈折率層の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、又は分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
【0018】
積分反射率としては、0.5〜2.50%であることが好ましく、0.5〜2.00%であることがより好ましく、0.5〜1.80%であることが最も好ましい。
【0019】
また、低屈折率層の厚みは、10nm〜500nmであることが好ましく、20nm〜200nmであることがより好ましく、50nm〜150nmであることが最も好ましい。
【0020】
(エチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物)
低屈折率層は、エチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物を含有することが好ましい。エチレン性不飽和基とは、具体的には末端がビニル基、アリル基、アクリロリル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基であることを意味し、アクリロリル基、メタクリロイル基が特に好ましい。エチレン性不飽和基は1分子中に1つであってもよいが、エチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物が1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有することがより好ましい。
【0021】
2つ以上のエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物の具体例としては、公知の技術に記載されているものを使用することができ、例えば特開平9−301925号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル、特開平10−182745号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル、特開平10−182746号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル、特開2001−72646号公報に記載の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0022】
さらにエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物が重合体であることが好ましく、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCという)で、テトラヒドロフラン(以下THFという)を溶媒として測定した、ポリスチレン換算数平均分子量が1000〜500,000であることが好ましい。数平均分子量が500,000以下であれば、組成物の粘度が高くなりすぎることがなく、薄膜化が困難となるなどの不都合が生じないため好ましい。
【0023】
本発明において好ましい、エチレン性不飽和基を有する含フッ素重合体は、具体的には公知の技術によるものを使用することができ、例えば特開2005−89536号公報、特開2005−290133号公報、特開2006−36835号公報に記載されたエチレン性不飽和基含有含フッ素重合体を挙げることができる。
【0024】
これらエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物の添加量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して10〜100質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましく、30〜90質量%が最も好ましい。
【0025】
低屈折率層を形成するエチレン性不飽和基を有する含フッ素化合物は、後記の[各層の形成方法]における(硬化方法)に記載の方法により硬化させることができる。
【0026】
(中空状シリカ微粒子)
低屈折率層の屈折率を低下させるために、該低屈折率層中に中空状シリカ微粒子を用いることが好ましい。該中空状シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空状シリカ微粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。
【0027】
この時、粒子内の空腔の半径をri、粒子外殻の半径をroとすると、空隙率xは下記数式(4)で算出される。
数式(4):x=(4πri3/3)/(4πro3/3)×100
【0028】
中空状シリカ微粒子の空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空状シリカ微粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は困難である。
なお、これら中空状シリカ微粒子の屈折率はアッベ屈折率計{アタゴ(株)製}にて測定を行った。
【0029】
これら中空状シリカ微粒子の添加量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が最も好ましい。
【0030】
[オーバーコート層]
本発明においてオーバーコート層は、反射防止フィルムの低屈折率層よりも下層にあり、ハードコート層よりも上層にあり、平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子を凝集状態で含有する。
【0031】
本発明の反射防止フィルムにおいては、このように、平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子を凝集状態で含有することによって、後述するように、該反射防止フィルムの最表面に位置する低屈折率層の表面に特定の平均傾斜角度θを有する凹凸形状を形成させることができ、このことによって、本発明の反射防止フィルムは、十分な防眩性を発揮すると共に、ギラツキの少ない、明所での優れた表示コントラストを有するものとなる。
【0032】
(無機微粒子)
平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子とは、シリカ、アルミナ等の無機物質からなる微粒子を指し、特にシリカ微粒子であることが好ましい。
【0033】
上記のシリカ微粒子は、珪酸ナトリウムと硫酸の中和反応により合成された、いわゆる湿式法により得ることができるがこれに限らない。湿式法にはさらに沈降法、ゲル化法に大別させるが、どちらの方法であってもよい。具体的には東ソー・シリカ(株)製の“NIPGEL”シリーズ、触媒化成工業(株)製の“OSCAL”シリーズ、扶桑化学工業(株)製の高純度オルガノゾル、電気化学工業(株)製のUltra Fine Powder、日産化学工業(株)製のスノーテックスUPなどの市販品が使用できる。
【0034】
無機微粒子は、一次粒子の平均粒径は0.1μm以下であることが必要であるが、特に1〜100nmであることが好ましく、5〜80nmであることが最も好ましく、一次粒子として球状の粒子が複数個連結または凝集したものや、細長い形状の粒子が好ましい。
【0035】
また、無機微粒子の凝集状態を2次粒子径として表したとき、オーバーコート層の膜厚以下のサイズであることが好ましく、0.3〜1.0μmであることがさらに好ましい。
ここで凝集状態とは、オーバーコート層内で平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子が数十個〜数百個単位でランダムに集合している状態を意味する。図3に模式的に無機微粒子の凝集状態とそれによって形成される小円錐状の表面凸部を示す。
無機微粒子の凝集状態は、可視光の散乱性が少ないフィラメント状の形態が好ましい。
【0036】
無機微粒子を凝集状態で含有するとは、オーバーコート層の塗布液を塗布乾燥した後の硬化膜中で、平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子が凝集状態であることを指し、オーバーコート層の塗布液に添加する前、オーバーコート層の塗布液中、又はオーバーコート層塗布後のいずれの段階かで凝集していてもよい。
平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子を凝集させる好ましい方法としては、該無機微粒子の分散安定性がやや乏しい溶媒を塗布液溶媒として選択することにより、塗布液中もしくは塗布膜の乾燥中に凝集を形成することができる。その場合、該無機微粒子の凝集体は、オーバーコート層の厚みと同程度の大きさにすることができる。本発明において具体的な塗布溶媒としては、ケトン系溶媒が好ましい。ただし、日産化学工業(株)製のスノーテックスMEK−ST、MIBK−STなどのようにケトン系溶媒で分散性が良好なように予め表面改質をなされた無機微粒子の場合は、無機微粒子が凝集せず、好ましくない。
また、無機微粒子を凝集させる作用を持つ添加剤を塗布液に添加してもよい。
【0037】
上記平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子は、形成されたオーバーコート層中に、オーバーコート層全固形分中に1〜30質量%含有されるように配合される。より好ましくは2〜25質量%である。
【0038】
オーバーコート層の屈折率は、ハードコート層の屈折率と実質的に同じであることが好ましく、値としては1.40〜1.80であることが好ましく、特に1.45〜1.70であることがより好ましく、1.45〜1.60であることが最も好ましい。
【0039】
また、オーバーコート層の厚みは、0.3〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましく、0.5〜3μmであることが最も好ましい。
【0040】
(樹脂)
本発明においてオーバーコート層は、樹脂を含有する。オーバーコート層を形成するのに用いられる硬化性樹脂は、後記の[各層の形成方法]における(硬化方法)に記載の方法により硬化させて樹脂とすることができる。硬化性樹脂としては1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを含有することが好ましい。
【0041】
多官能性モノマーとしては、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビス−β‐(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2、3‐ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ−1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多官能モノマーは、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
本発明において、これら硬化性樹脂の添加量は、オーバーコート層の固形分100質量%に対して10〜90質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、40〜80質量%が最も好ましい。
【0043】
[ハードコート層]
本発明においてハードコート層は、オーバーコート層よりも下層にあり、平均粒径が5〜12μmの透光性粒子と樹脂を含有する。
【0044】
(透光性粒子)
透光性粒子の平均粒径は5〜12μmの範囲であることが必要であり、平均粒径が5μm未満であると、明所での表示コントラストの低下が大きく好ましくない。また、12μmを超えると、ハードコート層の膜厚も厚くなりカールしやすい点が問題となる。
【0045】
上記透光性粒子の具体例としては、アクリル系粒子、スチレン系粒子又はアクリル−スチレン系粒子等の樹脂粒子;シリカを主成分とする無機粒子が挙げられ、例えばポリ{(メタ)アクリレート}粒子、架橋ポリ{(メタ)アクリレート}粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。中でも、架橋樹脂粒子が好ましく、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ{(メタ)アクリレート}粒子、架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子が好ましく用いられる。
また、粒子径の異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。
【0046】
上記透光性粒子は、形成されたハードコート層中に、ハードコート層全固形分中に5〜60質量%含有されるように配合される。より好ましくは10〜50質量%である。
【0047】
(樹脂)
本発明においてハードコート層は、樹脂を含有する。ハードコート層を形成するのに用いられる硬化性樹脂は、後記の[各層の形成方法]における(硬化方法)に記載の方法により硬化させて樹脂とすることができる。硬化性樹脂としては1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマーを含有することが好ましい。多官能性モノマーとしては、前記のオーバーコート層で用いられるものと同様のものをあげることができる。
【0048】
本発明において、これら硬化性樹脂の添加量は、ハードコート層の固形分100質量%に対して10〜90質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、40〜80質量%が最も好ましい。
【0049】
(屈折率差)
本発明の反射防止フィルムを構成するハードコート層においては、透光性粒子と樹脂との屈折率の差(透光性微粒子の屈折率−樹脂の屈折率)は、絶対値として0.05以下が好ましく、さらに0.001〜0.050であることがより好ましい。
【0050】
ここで、上記樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、又は分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。上記透光性粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
【0051】
本発明において、表面の凹凸形状はオーバーコート層の平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子の凝集体によってのみ形成されることが好ましく、そのためハードコート層内の透光性粒子の平均粒径に対してハードコート層の厚みは同じかそれより大きいことが好ましく、さらにハードコート層の厚みは5.0〜20μmであることが好ましく、5.0〜15μmであることが最も好ましい。
【0052】
[反射防止フィルムの特性]
(平均傾斜角度)
本発明の反射防止フィルムにおいて、その最表面に位置する低屈折率層の表面凹凸形状の平均傾斜角度θは1〜4°の範囲にあることが必要である。該低屈折率層表面の凹凸は、オーバーコート層に含まれる平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子が凝集状態にあることにより形成され、表面に多数の小円錐状凸部を形成することができる。平均傾斜角θが1°未満であると、十分な防眩性を発揮することができず、外光等の映り込みが生じるという不都合がある。その一方、θが4°を超えると、ギラツキが悪化し、明所の表示コントラストの低下が大きいという不都合がある。
【0053】
本発明において、上記低屈折率層の表面凹凸形状の平均傾斜角θは、下記数式(1)で定義される値である。
数式(1):θ=tan-1Δa
【0054】
上記数式(1)において、Δaは下記数式(2)に示すように、JIS B−
0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLについて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3+…+hn)を該基準長さLで除した値である。該粗さ曲線は、断面曲線から所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形広域フィルターで除去した曲線である。また、該断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。図4に前記粗さ曲線、高さh及び基準線Lの一例を示す。
数式(2):Δa=(h1+h2+h3+…+hn)/L
【0055】
(表示コントラスト)
本発明において表示コントラストとは、明所における表示コントラストを指し、実施例において示す明所環境において測定されたコントラスト比(白表示での輝度/黒表示での輝度)について、下記数式(3)で算出した相対値である。
数式(3):表示コントラスト=(反射防止フィルムのコントラスト比)/(単純な透明ハードコートフィルムのコントラスト比)×100
表示コントラスト特性を80以上にすることで、明所でのLCDパネルの表示品位を良好なものにすることができるので好ましい。
【0056】
[フィルム基材]
本発明で用いられるフィルム基材は、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下)であれば特に制限はない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。更に、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや、これらのポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルム等も挙げられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0057】
本発明の反射防止フィルムを保護フィルムとして偏光板に使用する場合には、フィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン等が好適である。また、フィルム基材は、後述の偏光子自体であってもよい。この様な構成であると、得られる偏光板はTAC等からなる保護フィルムを必要とせず、偏光板の構造を単純化できるので製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、偏光板を一層薄層化することができる。さらに本発明の反射防止フィルムは、液晶セル表面に装着されるカバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0058】
フィルム基材の厚さについては適宜に決定しうるが、一般には、強度や取り扱い性等の作業性、薄層性等の点を考慮し、10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。更に、フィルム基材の屈折率としては特に制限されず、通常1.30〜1.80程度、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
【0059】
[各層の形成方法]
(塗布方法)
本発明の反射防止フィルムの各層は、以下の公知の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。
ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許2681294号明細書参照)、マイクログラビアコート法等。それらの中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
【0060】
ここでマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを、支持体(フィルム基材)の下方に設置し、且つ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の透明支持体を連続的に巻き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、少なくとも一層をマイクログラビアコート法によって塗工することができる。
【0061】
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチがより好ましい。グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましい。支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
【0062】
本発明の反射防止フィルムを高い生産性で供給するために、ウエット塗布量の少ない領域(20cc/m2以下)では、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。
【0063】
また本発明において、ハードコート層とオーバーコート層を含む2層以上の塗布液を同時に塗布することが好ましい。その塗布方法としては、カーテンコート法、エクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許2681294号明細書参照)、スライドコート法、及びこれらの組み合わせ等より選択できる。特にダイコートスロットを1つ以上含むダイコート法、及びダイ/スライド複合コート法が好ましいが、特にこの方法に限定されるものではない。
【0064】
(硬化方法)
本発明において、塗布乾燥された反射防止フィルムを熱、及び/又は紫外線照射により硬化することができる。ここで紫外線照射による硬化とは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等、また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等の光源を用いて乾燥した膜に紫外線を照射して膜を硬化させることをいう。
【0065】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2が好ましく、さらに好ましくは、100〜2000mJ/cm2であり、特に好ましくは、400〜2000mJ/cm2である。
【0066】
紫外線による硬化の場合、各層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射してもよい。生産性の点から、低屈折率層を形成した後、紫外線を照射することが好ましい。
【0067】
(画像表示装置)
本発明の反射防止フィルムは、液晶パネル画面の表面フィルムとして使用することが好ましい。
使用される液晶パネルとしては、棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させるVAモード、さらにそれをマルチドメイン化したMVAモードや、ネマティック液晶に横電界をかけてスイッチングする方式のIPSモード、さらに棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に対称的に配向させるOCBモードが、視野角が広いモードであるため本発明の反射防止フィルムを好ましく使用することができる。
さらに液晶パネルは、高精細なものほど本発明の反射防止フィルムを好ましく使用することができ、特に画素数が1920×1080または1440×1080のフルスペックハイビジョンと称される高解像度の液晶パネルに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0068】
本実施例において使用した化合物を以下に示す。
・ 含フッ素重合体
特開2006−36835号公報の製造例2に記載された方法に従い得られた、メタアクリル変性含フッ素重合体(A−1)を用いた。
【0069】
・ 中空状シリカ微粒子分散物
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616号公報の調製例4に準じ、サイズを変更して作製)500gに、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン{信越化学工業(株)製}30g、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5g加え混合した後に、イオン交換水9gを加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8gを添加した。この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにシクロヘキサノンを添加しながら、減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をシクロヘキサノンで調整し20質量%にしたときの粘度は25℃で5mPa・sであった。得られた分散液のイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.5%であった。
【0070】
・ 硬化性樹脂:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”[日本化薬(株)製]、硬化膜の屈折率1.52
・ 光重合開始剤:「イルガキュア184」[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
【0071】
・ シリカ微粒子:“OSCAL12”[触媒化成工業(株)製]、一次粒径12nmサイズのシリカ微粒子
・ 架橋アクリル粒子:“MX”シリーズ [綜研化学(株)製]、屈折率1.49
【0072】
なお、表中の添加量は、固形分として質量%で表した。
【0073】
<反射防止フィルムの作製>
実施例1
表1に示すような構成で反射防止フィルム試料(101)〜(106)を作製した。
【0074】
〔塗布液の調整〕
[ハードコート層]
表1に従い、硬化性樹脂“DPHA”、光重合開始剤「イルガキュア184」を溶解したメチルイソブチルケトン溶液を調製した。
さらに表1に従い、架橋アクリル粒子(平均粒径は表1に記載)を添加した。そのときの添加量は固形分で表示した。
ハードコート層用塗布液の固形分濃度は40質量%に調整した。
なお表1はハードコート層の全固形分を100質量%として記載した。
【0075】
[オーバーコート層]
表1に従い、硬化性樹脂“DPHA”、光重合開始剤「イルガキュア184」を溶解したメチルイソブチルケトン溶液を調製した。
さらに表1に従い、触媒化成工業(株)製“OSCAL”シリーズの12nmサイズを添加した。そのときの添加量は固形分で表示した。この粒子は塗布乾燥後、膜中で凝集状態となる。オーバーコート層用塗布液の固形分濃度は40質量%に調整した。
なお表1はオーバーコート層の全固形分を100質量%として記載した。
【0076】
[低屈折率層]
エチレン性不飽和基を有する含フッ素重合体として、メタアクリル変性含フッ素重合体(A−1)の固形分換算で59.0質量%、及び中空状シリカ微粒子分散物の固形分換算で40.0質量%、光重合開始剤「イルガキュア184」1.0質量%を混合して、低屈折率層の塗布液を、メチルエチルケトンを溶媒として調製した。低屈折率層用塗布液の固形分濃度は5%とした。硬化後の低屈折率層の屈折率は1.38であった。
【0077】
〔反射防止フィルムの塗設方法〕
フィルム基材として、トリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士フイルム(株)製}をロール形態で巻き出して、スロットルダイを有するコーターを用い、まず前記のハードコート層用塗布液を直接押し出して塗布した。搬送速度30m/分の条件で塗布し、30℃で15秒間、80℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射し、塗布層を硬化させ、巻き取った。ハードコート層の乾燥膜厚は表1に記載した。
【0078】
さらに上記のハードコート層上に、前記のオーバーコート層用塗布液を、スロットルダイを有するコーターを用いて塗布した。搬送速度30m/分の条件で塗布し、30℃で15秒間、80℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照射量90mJ/cm2の紫外線を照射し、塗布層を硬化させた。オーバーコート層の乾燥膜厚を表1に記載した。
【0079】
上記の様にして得られた積層フィルムのオーバーコート層の上に、スロットルダイを有するコーターを用いて、前記の低屈折率層用塗布液を塗布し、乾燥:80℃60秒で乾燥し、窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射し、表1に示す構成の反射防止フィルムを作製した。
表1おいて、成分比率は各層の固形分合計を100質量%として成分比率を記載した。
【0080】
各反射防止フィルムを以下の評価方法にて評価を行った。
スチールウール耐擦傷性及び密着性の評価は、後記の偏光板加工したフィルムで評価した。
【0081】
〔評価方法〕
[積分反射率]
作製した反射防止フィルムの裏面を、サンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計{日本分光(株)製}を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分反射率の算術平均値を用いた。
【0082】
[平均傾斜角θの測定]
作製した反射防止フィルムの非塗布面に、厚み1.3mmのガラス板を粘着剤で貼り合せた。高精度微細形状測定器「サーフコーダET4000」(商品名){(株)小阪研究所}にて測定し、JIS B0601−1994記載の算術平均粗さRa値、凹凸の平均間隔Sm値を求め、自動算出により平均傾斜角θ値を求めた。
【0083】
[防眩性の評価]
平均傾斜角測定用のサンプル片に、ルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2)を45°の角度から映し、−45°の方向から観察した際の反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
◎:蛍光灯の輪郭が全くわからない レベル
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかるレベル
△:蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できるレベル
×:蛍光灯がほとんどぼけないレベル
【0084】
[表示コントラストの測定]
(1) 作製した反射防止フィルムは、非塗布面に膜厚約20μmのアクリル系粘着材を貼りつけ、表面が平滑な偏光板に貼り合わせた(50mm×50mm)。
(2) 反射防止フィルム付き偏光板を、32型フルハイビジョン液晶テレビ“LC−32GS10”{シャープ(株)製}(画素数;1920×1080)の視認側の偏光板を剥がし、その中央部分に貼り付けた。
(3) 実装した液晶テレビに対して、受光機“SPECTRORADIOMETER CS1000A”{コニカミノルタ(株)製}を50cm上方に平行になるように設定し、リング照明“MHF−G150LR”{直径37mm、(株)モリテックス製}を高さ27mmに位置に設定した。この設定位置でのリング照明光から、液晶テレビ画面に照射される光の照射角度を角度30°とした。
(4) 照度計“ILLUMINANCE METER”{(株)トプコン製}を使用し、照度1000Lxになるように調節した。
(5) 液晶テレビ画面の画像を黒表示及び白表示にそれぞれ切り替え、偏光板の中央部分における黒表示での輝度、白表示での輝度を、それぞれ黒輝度・白輝度とし測定を行った。その値を基にコントラスト比(白輝度/黒輝度)を算出した。
(6) 基準値として、ハードコート層に微粒子を配合しなかった反射防止フィルム(101)を用いて、そのコントラスト比を前記(1)〜(5)の方法にて測定し、その値を100として規格化した。
【0085】
[ギラツキの評価]
作製した反射防止フィルムを、上記の液晶テレビに貼り付けた状態で、液晶テレビを全面G表示にした際の画面のギラツキの様子を官能評価した。
○:ギラツキが全く気にならないレベル。
△:わずかにギラツキが発生するが気にならないレベル。
×:ギラツキが強く発生し、問題となるレベル。
【0086】
評価結果を表1に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
表1において、反射防止フィルム(101)〜(106)は、いずれも平均傾斜角θが1.1°である場合の比較である。ハードコート層に透光性粒子がない比較例の反射防止フィルム(101)は、LCDパネルからの透過光を散乱するものがないので、ギラツキが問題となる。また、ハードコート層の透光性粒子サイズが小さい場合は、LCDパネルからの透過光を散乱はするが、好ましい散乱光分布になっておらず、表示コントラストが低い値しか得られない。オーバーコート層に凝集状態の無機微粒子を含有しない比較例の反射防止フィルム(106)は、ハードコート層の透光性粒子によって表面凹凸を形成するが、それでは防眩性が不充分であり、ギラツキも問題のレベルであり、さらに明所における表示コントラスト特性は劣っていた。これらの比較から、本発明の反射防止フィルム(103)、(104)及び(105)は従来技術に対して優れており、明所における表示コントラスト特性が80以上であった。
反射防止フィルム101〜105の各々の断面を電子顕微鏡で観察すると、オーバーコート層のシリカ微粒子は2次粒子径が約1μm程度の大きさに凝集しており、小円錐状の凸部を表面に形成していることが確認できた。
【0089】
実施例2
実施例1の反射防止フィルム(104)において、オーバーコート層の配合を変え、膜厚を変更して平均傾斜角を調節し、それ以外は実施例1と同様に反射防止フィルム(201)〜(206)を作製した。
各層の配合組成を表2に示した。
表2において、成分比率は各層の固形分合計を100質量%として成分比率を記載した。
【0090】
得られた反射防止フィルム(201)〜(206)を実施例1と同様に評価した。評価結果を表2に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
表2において、平均傾斜角が範囲外である比較例の反射防止フィルム(204)は、表面凹凸形状が大きくなり、ギラツキの悪化が見え、さらに表示コントラストの低下も大きい。
また、オーバーコート層に凝集状態の無機微粒子を含有しない比較例の反射防止フィルム(205)と(206)は、ハードコート層の透光性粒子によって表面凹凸を形成するが、それでは防眩性が不充分であり、ギラツキも問題のレベルであり、さらに明所における表示コントラスト特性は劣っていた。これらの比較から本発明の反射防止フィルム(201)、(202)及び(203)は、従来技術に対して優れおり、明所における表示コントラスト特性が80以上であった。
反射防止フィルム201〜203の各々の断面を電子顕微鏡で観察すると、オーバーコート層のシリカ微粒子は2次粒子径が約1μm程度の大きさに凝集しており、小円錐状の凸部を表面に形成していることが確認できた。
【0093】
実施例3
以下の素材を使用する以外は実施例2と同様に反射防止フィルムを作製した。
・ シリカ微粒子2:「スノーテックスUP」日産化学工業(株)製、一次粒径40〜100nmの細長い形状のシリカ微粒子
・ シリカ微粒子3:「スノーテックスMIBK−ST」日産化学工業(株)製、一次粒径20nmサイズのシリカ微粒子を表面処理してMIBK分散物としたもの
・ シリカ微粒子4:“SFP−20M”電気化学工業(株)製、一次粒径0.3μmのシリカ微粒子
【0094】
反射防止フィルムの各層の配合組成、および得られた反射防止フィルム(301)〜(304)を実施例1と同様に評価した評価結果を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
比較例302、303は、平均粒径0.1μm以下のシリカ微粒子であっても凝集しない場合である。凝集を形成しないため、平均傾斜角を上昇させることができないことがわかる。
比較例304は、平均粒径0.3μmのシリカ微粒子の場合であり、オーバーコート層内で凝集を形成するので、平均傾斜角は目標通りに設計できるが、粒子が大き過ぎるために凝集状態での可視光の散乱性が無視できなくなり、表示コントラストを低下させる結果となった。
本発明301は、防眩性、ギラツキ、表示コントラストのいずれにおいても優れており、その断面を電子顕微鏡で観察すると、オーバーコート層のシリカ微粒子は2次粒子径が約1μm程度の大きさに凝集しており、小円錐状の凸部を表面に形成していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】従来の透光性微粒子により表面凹凸を形成するハードコート層の断面の模式図
【図2】図1のハードコート層における透光性微粒子と該層表面凹凸との関係を表す模式図
【図3】本発明のオーバーコート層における無機微粒子の凝集と該層表面凹凸との関係を表す模式図
【図4】粗さ曲線、高さh及び基準線Lの一例を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材上に、平均粒径が5〜12μmの透光性粒子と樹脂を含有する少なくとも1層のハードコート層と、該ハードコート層の上に、平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子を凝集状態で含有する少なくとも1層のオーバーコート層を有し、さらにその上に少なくとも1層の低屈折率層を有し、該低屈折率層の表面凹凸形状の平均傾斜角度θが1〜4°である反射防止フィルム。
【請求項2】
前記反射防止フィルムの表示コントラスト特性が80以上である請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記平均粒径が0.1μm以下の無機微粒子がシリカ微粒子である請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記平均粒径が5〜12μmの透光性粒子と前記樹脂の屈折率差が0.05以下である請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記低屈折率層が中空状シリカ微粒子を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記低屈折率層の屈折率が1.20〜1.40である請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−268357(P2008−268357A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108398(P2007−108398)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】