説明

反射防止フィルム

【課題】良好な耐擦傷性を有する反射防止フィルムを再現性よく提供すること。
【解決手段】透明樹脂フィルムと、最外層にバインダーマトリクス及び無機微粒子を含む低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、前記無機微粒子の平均粒子径が、前記低屈折率層の厚みに対して100%以下であり、かつ、X線反射率測定法により測定される前記低屈折率層の密度が、1.4g/cm以上であることを特徴とする反射防止フィルム。本発明の反射防止フィルムは、偏光板や液晶表示装置に好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関する。該反射防止フィルムは、例えば、液晶表示装置の表面に設置するための部材として利用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の液晶表示装置の表面には、外光の反射を防止して画像表示の品質を保持するための反射防止フィルムが設けられている。
【0003】
かかる反射防止フィルムとして、透明樹脂フィルムと、バインダーマトリクス中に中空シリカ粒子(内部に空隙を有するシリカ粒子)などの無機微粒子が分散している低屈折率層を最外層に有するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−264221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射防止フィルムは、液晶表示装置の表面に設けられるため耐擦傷性が求められているが、前述した公知の反射防止フィルムにおいてその耐擦傷性が十分とはいえないことが有った。そこで、本発明の目的は、良好な耐擦傷性を有する反射防止フィルムを再現性よく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前述したように低屈折率層に無機微粒子を含有させる場合において、その含有量によってはX線反射率測定法により測定される該層の密度が低くなってしまうことがあり、そのため十分な耐擦傷性が得られていないことを見出した。そして、本発明者らは、低屈折率層に所定の平均粒子径を有する無機微粒子を含有させ、かつ、低屈折率層における前記密度を1.4g/cm以上にすることにより、前記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、透明樹脂フィルムと、最外層にバインダーマトリクス及び無機微粒子を含む低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、前記無機微粒子の平均粒子径が、前記低屈折率層の厚みに対して100%以下であり、かつ、X線反射率測定法により測定される前記低屈折率層の密度が、1.4g/cm以上であることを特徴とする反射防止フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な耐擦傷性を有する反射防止フィルムを再現性よく提供することができる。該反射防止フィルムは、例えば、偏光板の保護フィルムとして好適に利用でき、さらに該偏光板は、液晶表示装置に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、反射防止フィルムの例の一つであるサンプルAにおける表面付近の断面をSTEMにより撮影した写真である。
【図2】図2は、反射防止フィルムの例の一つであるサンプルBにおける表面付近の断面をSTEMにより撮影した写真である。
【図3】図3は、反射防止フィルムの例の一つであるサンプルCにおける表面付近の断面をSTEMにより撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<反射防止フィルム>
本発明の反射防止フィルムは、透明樹脂フィルムと、最外層にバインダーマトリクス及び無機微粒子を含む低屈折率層を有するものである。ここでいう透明樹脂フィルムには、従来公知のものを使用することができ、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどからなるフィルムが例示される。中でも、透明性、機械強度、熱安定性、低湿度透過性、等方性の点からセルロースアセテート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート等からなるフィルムが好ましく、透明性、機械強度の点からセルロースアセテートからなるフィルムがより好ましい。
【0011】
透明樹脂フィルムの厚みは、20μm以上250μm以下であることが好ましく、より好ましくは、30μm以上150μm以下である。透明樹脂フィルムの厚みが20μm未満である場合には、硬度の点で十分でないことがある。また、透明樹脂フィルムの厚みが250μmを上回ることは最近の画像表示装置の薄型化への要求およびコスト等の観点から好ましくない。反射防止フィルム全体の厚みを薄くする観点からは、透明樹脂フィルムの厚みは120μm以下とするのがより好ましい。
【0012】
バインダーマトリクスを形成する材料としては、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂及び重合開始剤を含む混合物に活性エネルギー線を照射することにより、重合、硬化して得られるものや、アルコキシシラン化合物の加水分解物を脱水縮合して得られるものが挙げられる。
【0013】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、多官能(メタ)アクリレート系化合物を含有するものであることができる。多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。具体例を挙げれば、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、;ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイルオキシ基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物;ならびに、上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどである。これらの化合物は単独で用いてもよく、または2種以上を用いてもよい。
【0014】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレートのほかに、単官能(メタ)アクリレート系樹脂を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いてもよく、または2種類以上を用いてもよい。
【0015】
活性エネルギー線硬化性樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、ハードコート層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーを挙げることができる。
【0016】
活性エネルギー線硬化性樹脂を重合させるための重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラtert−ブチルパーオキシカルボニルベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、およびそれらの誘導体が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いてもよく、または2種以上を用いてもよい。上記で例示した重合開始剤は、いずれも活性エネルギー線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤である。
【0017】
重合開始剤は色素増感剤と組み合わせて用いてもよい。色素増感剤としては、例えば、キサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリンが挙げられる。重合開始剤と色素増感剤との組み合わせとしては、たとえば、BTTBとキサンテンとの組み合わせ、BTTBとチオキサンテンとの組み合わせ、BTTBとクマリンとの組み合わせ、BTTBとケトクマリンとの組み合わせが挙げられる。
【0018】
バインダーマトリクスの成形材料として、アルコキシシラン化合物の加水分解物を脱水縮合して得られるものを使用する場合、そのアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランが挙げられる。アルコキシシラン化合物の加水分解物は、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0019】
また、低屈折率層に防汚性を付与したり、低屈折率層の屈折率を低下させたりするために、アルコキシ基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルコキシシラン化合物を使用することもできる。かかる化合物として、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシランが挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、または2種以上を用いてもよい。
【0020】
本発明の反射防止フィルムは、無機微粒子の平均粒子径が、低屈折率層の厚みに対して100%以下であり、かつ、X線反射率測定法により測定される低屈折率層の密度が、1.4g/cm以上であることを特徴とするものである。ここで、X線反射率測定法とは、被測定物の平滑な表面に所定の角度で入射させたX線を全反射させ、その反射率(全反射X線強度)を測定、解析することにより、各層の密度や厚みを求める方法である。
【0021】
耐擦傷性の点から、前記密度は1.55g/cm3以上であるのが好ましい。この密度が1.4g/cm未満となると、耐擦傷性が不十分になることがある。一方、反射防止フィルムの機械的強度や低屈折率層の形成の容易さの点から、この密度は2.5g/cm以下であるのが好ましく、2.0g/cm以下であるのがより好ましい。
【0022】
本発明で使用する無機微粒子としては、X線反射率測定法により測定される低屈折率層の密度が1.55g/cm以上となるようなものを採用することができ、例えば、LiF(屈折率1.4)、MgF(屈折率1.4)、3NaF・AlF(屈折率1.4)、AlF(屈折率1.4)、NaAlF(屈折率1.33)などの低屈折微粒子や、シリカ微粒子などが挙げられる。前記密度を所定値以上にするためには、これらの微粒子の含有量を高めていけばよい。一方、前記微粒子として、中空シリカ微粒子を使用することもできる。中空シリカは、その内部に屈折率が1となる空隙を有するため、低屈折率層の屈折率を低下させるのに使用されるが、その含有量があまり多いと前記密度が1.4g/cm未満となってしまうため、中空シリカ微粒子を使用する場合には、前記密度が1.4g/cm未満とならない程度の含有量にする必要がある。
【0023】
低屈折率層の厚みは、所望の反射防止性能を付与するという基本設計の点から、低屈折率層の屈折率をn、低屈折率層の厚みをd(nm)、低屈折率層に入射される光の波長をλ(nm)とすると、下記式

を満足するのが好ましい。ここで、λを可視光の波長である300〜800nmとし、低屈折率層の屈折率を1.30と設定する場合には、前記式より、低屈折率層の厚みdは、60〜150nm程度と算出される。なお、人間の網膜に対してもっとも感度の高い波長は500〜600nm程度であり、これより算出される低屈折率層の厚みd(≒70〜120nm)がより好ましい。
【0024】
無機微粒子の平均粒子径は、低屈折率層の厚みに対して100%以下であり、好ましくは、60%以下である。無機微粒子の平均粒子径が、低屈折率層の厚みに対して100%を超えてくると、低屈折率層の表面形状に影響を与える恐れがある。また、無機微粒子の平均粒子径は、3〜60nmであるのがより好ましい。
【0025】
低屈折率層の屈折率は、所望の反射防止性能を付与する観点から1.20〜1.49であるのが好ましい。
【0026】
本発明の低屈折率層は、その滑り性を向上させる観点から、さらにポリシロキサン樹脂を含んでもよい。ここでいうポリシロキサン樹脂としては、例えば、ポリアミノ変性ポリシロキサン、ポリエポキシ変性ポリシロキサン、ポリアルコール変性ポリシロキサン、ポリカルボキシル変性ポリシロキサン、ポリメルカプト変性ポリシロキサン、ポリエステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンが挙げられる。これらの中では、更に膜強度を向上させる観点から、ポリエステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンが好ましい。
【0027】
また、更に表面硬度を向上させる観点から、いずれのポリシロキサン樹脂においてもポリシロキサンの主鎖部分はジメチル基で修飾されたものがより好ましい。そのため、ポリエステル変性ポリシロキサンやポリエーテル変性ポリシロキサンの中でもポリエステル変性ジメチルポリシロキサンやポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンはさらに好ましい。
【0028】
本発明の反射防止フィルムは、透明樹脂フィルムと低屈折率層との間にハードコート層を設けてもよい。さらに、ハードコート層と低屈折率層との間に高屈折率層を設けてもよく、この場合の反射防止フィルムの層構成は、透明樹脂フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層となる。
【0029】
前記ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性樹脂及び重合開始剤を含む混合物に活性エネルギー線を照射することにより、重合、硬化して形成することができる。活性エネルギー線硬化性樹脂や重合開始剤としては、先に例示したものと同様のものを使用することができる。
【0030】
また、反射防止フィルムに防眩性を付与するために、このハードコート層に平均粒子径が0.5〜10μm程度の光拡散性微粒子を含有させることができる。ここでいう光拡散性微粒子としては、透光性を有するものが好ましく、例えば、アクリル粒子、アクリル−スチレン粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子、メラミン粒子、エポキシ粒子、ポリウレタン粒子、ナイロン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、シリコーン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、ポリフッ化ビニリデン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ポリ塩化ビニリデン粒子、ガラス粒子、シリカ粒子等を用いることができる。これらの粒子は、単独で用いてもよく、または2種以上を用いることができる。
【0031】
前記ハードコート層の厚みは、2〜25μmが好ましい。厚みが2μm未満になると表面硬度において必ずしも十分でない場合があり、一方、25μmを超えると耐屈曲性において必ずしも十分でない場合がある。
【0032】
前記ハードコート層には、必要に応じて、泡消剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤などの添加物が添加されていてもよい。
【0033】
前記高屈折率層を構成する材料としては、特に限定されるものではなく、無機材料及び有機材料を用いることができる。無機材料として、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム錫(以後、ITOとも称する。)等の微粒子が挙げられる。
【0034】
特に導電性や帯電防止能の観点より、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム錫、高屈折率の観点より、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムが好ましい。
【0035】
有機材料としては例えば、屈折率1.6〜1.8の重合性単量体を含む組成物を重合硬化したもの等を用いることができる。屈折率1.6〜1.8の重合性単量体としては、2−ビニルナフタレン、4−ブロモスチレン、9−ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0036】
また、無機材料の微粒子と有機材料とを併用することができるが、この場合には、前述の屈折率が1.6〜1.8であるような重合性単量体のみならず、それ以外の重合性単量体及びこれらの重合体を含む組成物をウェットコーティング時のバインダーとして用いることができる。無機材料の微粒子の平均粒径は層の厚みを大きく超えないことが好ましく、特に0.1μm以下であることが好ましい。無機材料の微粒子の平均粒径が層の厚みより大きくなると、散乱が生じる等、高屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。
【0037】
また、必要に応じて微粒子表面を各種カップリング剤等により修飾することができる。各種カップリング剤としては例えば、有機置換された珪素化合物や、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン等の金属アルコキシドや、有機酸塩等が挙げられる。
【0038】
前記高屈折率層の屈折率は、通常1.6〜1.8程度である。また、前記高屈折率層の厚みは、200nm以下が好ましい。
【0039】
<反射防止フィルムの製造方法>
次に、本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。ここでは、樹脂フィルム、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順で備える反射防止フィルムの製造方法を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0040】
(ハードコート層の形成)
前述した透明樹脂フィルムの一方の面に、前述した活性エネルギー線硬化性樹脂及び重合開始剤を含む混合物(以下、ハードコート液)を塗工する。ここでいうハードコート液には、活性エネルギー線硬化性樹脂及び重合開始剤に加え、通常、溶剤が含まれている。かかる溶剤として、例えば、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類などから適宜選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、または2種以上を用いてもよい。
【0041】
前記ハードコート液の塗工方法としては公知の方法を適宜選択でき、具体的には、ワイヤーバーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、スロットダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、スライドコート法、カーテンコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0042】
前記塗工後、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、重合、硬化してハードコート層を形成する。
【0043】
(高屈折率層の形成)
前述した高屈折率層を形成するための材料を用い、前述したハードコート層の上に、蒸着、スパッタ、化学蒸着(CVD)、イオンプレーティング等のドライコート法や、ディップコート、ロールコート、グラビアコート、ダイコート等のウェットコート法といった従来公知の方法により高屈折率層を形成することができる。
【0044】
なお、高屈折率層を設ける前に、ハードコート層に対し、酸処理、アルカリ処理、コロナ処理法、大気圧グロー放電プラズマ法等の表面処理をおこなっても良い。これら表面処理を行うことにより、ハードコート層と高屈折率層との密着性をさらに向上させることができる。
【0045】
(低屈折率層の形成)
バインダーマトリクスを形成する材料として、活性エネルギー線硬化性樹脂及び重合開始剤を使用する場合には、予め活性エネルギー線硬化性樹脂、重合開始剤、前述した無機微粒子及び溶剤を含む塗工液を調製しておき、次いでその塗工液を高屈折率層に塗工する。なお、高屈折率層を設けない場合には、該塗工液を直接ハードコート層に塗工する。塗工後、必要に応じて乾燥した後、活性エネルギー線を照射することにより、重合、硬化して低屈折率層を形成する。
【0046】
バインダーマトリクスを形成する材料として、アルコキシシラン化合物の加水分解物を使用する場合には、予めアルコキシシラン化合物の加水分解物、前述した無機微粒子及び溶剤を含む塗工液を調製しておき、次いでその塗工液を高屈折率層に塗工する。なお、高屈折率層を設けない場合には、該塗工液を直接ハードコート層に塗工する。塗工後、必要に応じて乾燥した後、加熱して前記加水分解物の脱水縮合反応を行い、低屈折率層を形成する。
【0047】
前述した溶剤としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適性等を考慮して適宜選択される。
【0048】
塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0049】
かくして、本発明の反射防止フィルムを得ることができる。該反射防止フィルムは、例えば、偏光板の保護フィルムとして好適に利用でき、さらに該偏光板は、液晶表示装置に好適に利用できる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0051】
(1)X線反射率測定法による密度の測定
反射防止フィルムの低屈折率層及び高屈折率層の密度は、X線反射率測定法により測定した。具体的には、サンプルを試料ホルダーに平坦に固定してX線反射率(GIXR)を測定し、密度(g/cm)を解析した。この際、入射X線波長は0.1541nm(CuK α1線)と設定した。X線の入射角度を0.05〜0.45°の範囲で0.002°ずつずらしていき、同範囲においてX線反射率を測定した。なお、密度解析には、S/N比の良い範囲を使用した(このときの密度値の誤差は±2%程度であった。)。
【0052】
(2)反射防止フィルムの層構成の分析
反射防止フィルムの断面をSTEM(Surface Science Instruments社製の「S−Probe ESCAModel 2803」を使用)により観察し、層構成、各層の厚みを観測した
【0053】
(3)低屈折率層の元素分析
Surface Science Instruments社製の「S−Probe ESCAModel 2803」を使用して、XPS法(照射X線;AL Kα)により測定した。
【0054】
(4)耐擦傷性試験
耐擦傷性試験:ハードコート層表面に、スチールウール♯0000を荷重250g/cm で10往復させた後、表面に付いた傷の程度を以下の基準で目視により評価した。
◎:傷がまったく観察されない。
○:傷がほとんど観察されない。
△:数本の傷が観察される。
×:十数本の傷が観察される。
【0055】
[サンプル評価]
サンプルA〜Cについて評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
サンプルAは、透明樹脂フィルム、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層の順で構成される反射防止フィルムであって、低屈折率層の密度が1.71g/cmとなるようにシリカ微粒子が配合されていることにより、優れた耐擦傷性を示すものとなっている。
【0058】
サンプルBは、透明樹脂フィルム、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層の順で構成される反射防止フィルムであって、低屈折率層の密度が1.55g/cmとなるように中空シリカ微粒子が配合されていることにより、良好な耐擦傷性を示すものとなっている。
【0059】
サンプルCは、透明樹脂フィルム、ハードコート層及び低屈折率層の順で構成される反射防止フィルムであって、低屈折率層に中空シリカ微粒子が配合されているものの、低屈折率層の密度が1.34g/cmとなっているため、十分な耐擦傷性を示さないものとなっている。
【符号の説明】
【0060】
1:反射防止フィルムの表面付近、2:低屈折率層、3:高屈折率層、4:ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルムと、最外層にバインダーマトリクス及び無機微粒子を含む低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、
前記無機微粒子の平均粒子径が、前記低屈折率層の厚みに対して100%以下であり、かつ、X線反射率測定法により測定される前記低屈折率層の密度が、1.4g/cm以上であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記透明樹脂フィルムと前記低屈折率層との間にハードコート層を有する請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記低屈折率層の厚みが、60〜150nm以下である請求項1又は2記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記無機微粒子の平均粒子径が、3〜60nmである請求項1〜3のいずれか記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記無機微粒子が、シリカ微粒子である請求項1〜4のいずれか記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記低屈折率層の屈折率が、1.20〜1.49である請求項1〜5のいずれか記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
X線反射率測定法により測定される前記低屈折率層の密度が、2.5g/cm以下である請求項1〜6のいずれか記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の反射防止フィルムと、偏光フィルムとを有する偏光板。
【請求項9】
請求項8記載の偏光板と、液晶セルとを有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−248036(P2011−248036A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120183(P2010−120183)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】