説明

反射防止フィルム

【課題】塗液の水分混入が発生しやすい開放系の塗工方式において、溶剤に親水性溶剤を用い、シリカゲルにて脱水処理を行うことにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながらハジキ欠陥、色ムラの発生を抑えた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】透明基材の少なくとも片面に、低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、低屈折率層がマイクログラビア方式により形成され、低屈折率層形成用塗液とする電離放射線硬化型樹脂組成物に、シリコーン系撥水剤と、レべリング剤が含まれており、さらに、粒径0.5nm以上200nm以下の低屈折率微粒子が含まれており、且つ、シリカゲルを含ませ脱水剤として使用することを特徴とする反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイの表示画面に適用される、反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須である。
【0003】
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明薄膜からなる多層膜を形成することで得られる。これらの多層膜は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法により形成することが可能だが、蒸着による形成方法は生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、多層膜の形成方法として、大面積化、連続生産、低コスト化が可能であるウェットコーティング法による反射防止膜の生産が注目されている。
【0004】
ウェットコーティング法による生産方式において、ナノレベルでの均一な膜を作製するためにはマイクログラビア方式が有効であるが、マイクログラビア方式は開放系であり、塗液が空気中の水分を吸収し、それによりハジキ欠陥、色ムラといった不具合が発生する。
【0005】
この塗液の水分吸収を抑える為に、使用溶剤にケトン系のような疎水性溶剤を使用することが有効であるが、疎水性溶剤は粘性が低く、塗工時における色ムラが発生しやすい傾向である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−191544号公報
【特許文献2】特開2007−102206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、塗液の水分混入が発生しやすい開放系の塗工方式において、溶剤に親水性溶剤を用い、シリカゲルにて脱水処理を行うことにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながらハジキ欠陥、色ムラの発生を抑えた反射防止積層体、およびそれを用いた偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、透明基材の少なくとも片面に、低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、低屈折率層がマイクログラビア方式により形成され、低屈折率層形成用塗液とする電離放射線硬化型樹脂組成物に、シリコーン系撥水剤と、シリコーン系レべリング剤が含まれており、さらに、粒径0.5nm以上200nm以下の低屈折率微粒子が含まれており、且つ、シリカゲルを含ませ脱水剤として使用することを特徴とする反射防止フィルムである。
【0009】
請求項2に係る発明としては、低屈折率層形成用塗液とシリカゲルの重量比が低屈折率層形成用塗液/シリカゲルとして3.3以上10.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムである。
【0010】
請求項3に係る発明としては、低屈折率層の形成における低屈折率層形成用塗液の溶剤がアルコール系であり、溶剤中に、沸点10℃以上120℃以下の溶剤が溶剤比で60%以上85%以下であり、沸点120℃以上200℃以下の溶剤が溶剤比で15%以上40%以下含まれていることを特徴とする請求項1から請求項2に記載の反射防止フィルムである。
【0011】
請求項4に係る発明としては、請求項1から請求項3のいずれかに記載の反射防止フィルムにおいて、L色度系における反射色相が0≦a≦5、−3≦b≦3であり、且つ、平均視感反射率(Y)が0.5%以上1.3%以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、電離放射線硬化型樹脂と、シリコーン系撥水剤を用いることにより膜の摩擦強度が増加し、耐擦傷性向上することが可能となり、シリコーン系レベリング剤を用いることにより色ムラ低減することが可能となる。また、シリカゲルを使用することにより、開放系の塗工による塗液の水分吸収を抑制することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、シリカゲルの孔径を使用することにより、塗液内の脱水を効率的に実施することが可能であり、重量比がこの範囲にあることにより、シリカゲルが塗液内のシリコーン系撥水剤およびシリコーン系レベリング剤を吸着することなく、水分のみ吸着することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中の溶剤が溶剤比を制御することにより、色ムラの少ない均一な膜を作製することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、L色度系における反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3であることにより、反射色としての赤色、青色の出現を抑え、反射色が無色に極めて近く色ムラが少ない。また、平均視感反射率(Y)は、反射防止機能の出現による反射率の低下を示すものであり、平均視感反射率(Y)の値が小さいほど視認性が良くなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の反射防止フィルムは、透明基材の少なくとも片面に、低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率層に電離放射線硬化型樹脂組成物に、シリコーン系撥水剤と、シリコーン系レべリング剤、シリカゲルを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の反射防止フィルムにおける透明基材について述べる。
【0019】
本発明の反射防止フィルムの透明基材としては、公知の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらに耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより、機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものではなく、複数の層を積層されたものであってもよい。また、透明基材の厚みとしては、38μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。さらに、トリアセチルセルロースを用いる場合は、35μm以上80μm以下の厚みを用いることが好ましい。
【0020】
次に、ハードコート層について述べる。
【0021】
本発明の反射防止フィルムのハードコート層形成用塗液にあっては、電離放射線硬化型材料であるアクリル系材料を含んでいてもよい。多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0022】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0025】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。
【0026】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0027】
また、ハードコート層形成用塗液にあっては、光重合開始剤を含んでいてもよい。透明基材上にハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により塗布し塗膜を形成後、電離放射線として紫外線を用い、紫外線照射により塗膜を硬化するにあっては、塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を用いることができる。
【0028】
また、ハードコート層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒が加えられる。溶媒を加えることにより、塗工適性を向上させることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。
【0029】
ハードコート層形成用塗液にあっては、ハードコート層形成用塗液を塗布し、形成される塗膜においてハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止するために、表面調整剤と呼ばれる添加剤を加えても良い。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜(防眩層)の表面張力を低下させる働きを備える。
【0030】
また、ハードコート層形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。
【0031】
以上の材料を調整して得られるハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により透明基材上に塗布し、塗膜を形成し、必要に応じて塗膜の乾燥をおこなったあとに、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、ハードコート層が形成される。
【0032】
このとき、湿式成膜法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0033】
ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、ハードコート層が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0034】
なお、硬化によりハードコート層を形成する工程の前後に乾燥工程もしくは加熱工程を設けてもよい。特に、塗液が溶媒を含む場合、形成された塗膜の溶媒を除去するために電離放射線を照射する前に乾燥工程を設ける必要がある。乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。
【0035】
なお、本発明の反射防止フィルムにおいて、形成されるハードコート層の膜厚は3μm以上10μm以下であることが好ましく、鉛筆硬度は、物理的な耐擦傷性を備えるために、H以上であることが好ましい。
【0036】
次に、低屈折率層について述べる。
【0037】
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層は低屈折率微粒子と適宜選択した電離放射線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂と光重合開始剤を主成分とする形態が好ましい。
【0038】
電離放射線硬化型樹脂としては、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーが使用でき、好ましくはアクリル樹脂を使用する。
【0039】
さらに、電離放射線硬化型樹脂の中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリーn−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0040】
低屈折率微粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFもしくはAlF(以上、いずれもn=1.4)、NaAlF(氷晶石、n=1.33)などを使用することができ、好ましくは、シリカゾル微粒子を使用する。シリカゾル微粒子の表面をアルミニウムアルコキシドなどアルミニウム有機物で修飾することが好ましい。
【0041】
また、低屈折率微粒子は、平均粒径が0.5nm以上200nm以下の範囲内であるのが好ましい。この平均粒径が200nmよりも大きくなると、低屈折率層の表面においてレイリー散乱によって光が散乱され、白っぽく見え、透明性が低下する。また、平均粒径が0.5nm未満であると、微粒子が凝集しやすくなってしまう。 また、添加量としては、低屈折率層中に10重量%以上80重量%以下が好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、1.30以上1.45以下が好ましい。
【0042】
低屈折率層の屈折率を1.30以上1.45未満の範囲内とすることにより、反射防止フィルムに反射防止機能を付与することができる。低屈折率層の屈折率が1.45を超える場合にあっては得られる反射防止フィルムが十分な反射防止機能を得られなくなってしまうことがある。一方、低屈折率層の屈折率は低い方が好ましいが、1.30を下回るようにするには、内部の空隙を有するシリカ粒子を大量に添加する必要があり、低屈折率層の形成は困難となってしまう。
【0043】
また、L色度系における反射色相が0≦a≦5かつ−3≦b≦3であることにより、反射色としての赤色、青色の出現を抑え、反射色が無色に極めて近く色ムラが少ない。また、平均視感反射率(Y)は、反射防止機能の出現による反射率の低下を示すものであり、平均視感反射率(Y)の値が小さいほど視認性が良くなる。従来の反射防止フィルムでは、Yが1.3%以下であると反射色が出現してしまうが、本発明の反射防止フィルムは、Yが1.3%以下においても反射色相が0≦a ≦5かつ−3≦b ≦3であり、反射防止機能と反射光の色味の低減とを同時に満たすことができる。しかし、Yが0.5%を下回るように低屈折率層を形成しようとすると、低屈折率微粒子を大量に添加する必要があり、硬化が困難となってしまう。
【0044】
シリコーン系レべリング剤としては、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。シリコーン系撥水剤としては、フッ素を含有せず、(メタ)アクリル基を持たない有機ケイ素化合物を用いることができる。具体的には、アルキルアルコキシシラン化合物、シランシロキサン化合物、ポリエステル基を含有するシラン化合物、ポリエーテル基を有するシラン化合物、シロキサン化合物を用いることができる。
【0045】
シリカゲルとしては、表面積450m/g、細孔容積0.80ml/g、平均細孔直径70ÅのB型シリカゲルを用いることができる。
【0046】
低屈折率層形成用塗液にシリカゲルを含有して使用するとき、低屈折率層形成用塗液とシリカゲルの重量比が低屈折率層形成用塗液/シリカゲルとして3.3以上10.0以下であることが好ましい。低屈折率層形成用塗液/シリカゲルの重量比が10.0を超えるとシリカゲルに塗液のシリコーン系撥水剤およびシリコーン系レベリング剤が吸着し耐擦傷性が弱くなる。また、低屈折率層形成用塗液/シリカゲルの重量比が3.3未満になると塗液の吸水による不具合が生じ、ハジキ欠陥および色ムラが顕著に発生する。
【0047】
溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類の中から塗工適正等を考慮して適宜選択することはできる。その中において、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールのアルコール系溶剤を用いることが好ましい。
【0048】
低屈折率層作製時における低屈折率層形成用塗液のアルコール系溶剤中に、沸点10℃以上120℃以下の溶剤が溶剤比で60%以上85%以下の範囲にあることが好ましく、85%を越える、もしくは、60%未満になると色ムラが顕著に発生する。
また、沸点120℃以上200℃以下の溶剤が溶剤比で15%以上40%以下の範囲にあることが好ましく、40%を越える、もしくは、15%未満になると色ムラが顕著に発生する。
【0049】
シリコーン系撥水剤としては、珪素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。さらには、一般式(1)RSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
【0050】
一般式(1)で表される珪素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を用いることができる。珪素アルコキシドの加水分解物は、一般式(I)で示される金属アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0051】
または、フッ素化合物として一般式(2)R´Si(OR)4−z(但し、式中R´はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することにより反射防止フィルムの低屈折率層表面に撥水性を付与することができる。
【0052】
一般式(2)で示される珪素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
本発明の反射防止フィルムの製造方法において、低屈折率層は、電離放射線硬化型樹脂組成物と、シリコーン系撥水剤と、レべリング剤と、低屈折率微粒子と、シリカゲルと、溶媒とを含む形成用塗液を塗布し塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、塗膜に紫外線を照射する紫外線照射工程によって形成される。
【0054】
塗布工程としては、ロール・ツー・ロール方式により形成される。塗布方式としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができるが、特に、開放系の塗工による塗液の水分吸収を抑制することが可能であることから、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーターを用いることが好ましい。さらには、反射防止フィルムにおいては均一な膜を作製することが必要であることから、マイクログラビアコーターを用いることが好ましい。
【0055】
乾燥工程もしくは加熱工程としては、塗液が溶媒を含む場合、形成された塗膜の溶媒を除去するために電離放射線を照射する前に乾燥工程を設ける必要がある。乾燥手段としては加熱、送風、熱風などが例示される。
【0056】
紫外線照射工程としては、乾燥後に、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、塗膜を硬化させる。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0057】
本発明の反射防止フィルムは、偏光板に適用することができる。例えば、ディスプレイ用として通常用いられる偏光板における偏光膜の保護膜として使用することができる。さらに、反射防止フィルムを備える画像表示装置を提供する。このような画像表示装置としては、特に限定されず、CRTディスプレイ、液晶(LCD)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等、いずれの方式のものであってもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例および比較例に限定されるものではない。
【0059】
以下の低屈折率層形成用塗液(L−1〜L−7)を調整した。
【0060】
[低屈折率層形成用塗液(L−1)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合してA溶液を作製した。
このA溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合してB溶液を作製した。
このB溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを80重量部と20重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、塗液Cを作製した。
この塗液CとA型シリカゲルを90重量部と10重量部になるように調整し、24時間放置して低屈折率層形成用塗液L−1を作製した。
【0061】
[低屈折率層形成用塗液(L−2)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合してA溶液を作製した。
このA溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合してB溶液を作製した。
このB溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを90重量部と10重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、塗液Dを作製した。
この塗液Dと純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24時間放置して低屈折率層形成用塗液L−2を作製した。
【0062】
[低屈折率層形成用塗液(L−3)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合してA溶液を作製した。
このA溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合してB溶液を作製した。
このB溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを50重量部と50重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、塗液Eを作製した。
この塗液Eと純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24時間放置して、低屈折率層形成用塗液L−3を作製した。
【0063】
[低屈折率層形成用塗液(L−4)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合してA溶液を作製した。
このA溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合してB溶液を作製した。
このB溶液を、メチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを80重量部と20重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、塗液Fを作製した。
この塗液Fと純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24時間放置して、低屈折率層形成用塗液L−4を作製した。
【0064】
[低屈折率層形成用塗液(L−5)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合してA溶液を作製した。
このA溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合してB溶液を作製した。
このB溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを80重量部と20重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、塗液Cを作製した。
この塗液CとA型シリカゲルを95重量部と5重量部になるように調整し、24時間放置して低屈折率層形成用塗液L−5を作製した。
【0065】
[低屈折率層形成用塗液(L−6)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合してA溶液を作製した。
このA溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合してB溶液を作製した。
このB溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを80重量部と20重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、塗液Cを作製した。
この塗液Cと純水を97重量部と3重量部になるように調整し、24時間放置して低屈折率層形成用塗液L−6を作製した。
【0066】
[低屈折率層形成用塗液(L−7)]
アクリル系樹脂とシリコーン系撥水剤とシリコーン系レベリング剤[BYK−330(ビックケミー株式会社製)]を、モル比1:0.75:0.18の割合になるように組み合わせて混合してA溶液を作製した。
このA溶液と平均粒径60nmの中空シリカとを63重量部と37重量部の割合になるように組み合わせて混合してB溶液を作製した。
このB溶液を、イソプロピルアルコールとダイアセトンアルコールを80重量部と20重量部の割合になるように混合した希釈溶剤を用いて、固形分換算で3.5%になるように調整し、塗液Cを作製した。
この塗液CとA型シリカゲルを50重量部と50重量部になるように調整し、24時間放置して低屈折率層形成用塗液L−7を作製した。
【0067】
前記低屈折率層形成用塗液(L−1〜L−7)の詳細を(表1)に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
(実施例1)
厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムの一方の面に電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を膜厚5μm〜7μmで形成する。そのハードコート層の表面に前記低屈折率層形成用塗液(L−1)をマイクログラビア法を用いて塗布し、乾燥、紫外線照射をおこない膜厚100nmの低屈折率層となるように形成した。
【0070】
(比較例1)〜(比較例6)
(実施例1)と同様に、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムの一方の面に電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を膜厚5μm〜7μmで形成する。そのハードコート層の表面に前記低屈折率層形成用塗液(L−2〜L−7)を、それぞれマイクログラビア法を用いて塗布し、乾燥、紫外線照射をおこない膜厚100nmとなるように低屈折率層を形成した。
【0071】
前記(実施例1)及び、(比較例1〜6)について、各種物性評価方法を以下に示す。
【0072】
「光学特性」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、自動分光光度計(日立製作所製、U−4100、測定波長360〜800nm)を用い、入射角5°における波長550nmの分光反射率を測定した。
【0073】
「耐擦傷試験」
学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製AB−301)を用いて、反射防止フィルムの低屈折率層表面に500g/cmの荷重をかけたスチールウール(日本スチールウール製ボンスター#0000)を用い、10往復擦り、擦り跡やキズなどによる外観の変化を目視で評価した。
【0074】
評価判定は、傷なし(◎)、程度が小さい傷あり(○)、相当傷つく(△)、著しく傷つく(×)の4段階とした。
【0075】
「色ムラ」
積層の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処理を行った反射防止フィルムを目視で観察し、色ムラの発生を評価した。
【0076】
評価判定は、明るい環境下でも色ムラが見えにくい(◎)、明るい環境下にて色ムラが見える(○)、暗い環境下でも色ムラが見える(△)、暗い環境下にて色ムラがはっきりと見える(×)の4段階とした。
【0077】
「ハジキ欠陥」
積層の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処理を行った反射防止フィルムを目視で観察し、ハジキ欠陥の発生を評価した。
【0078】
評価判定は、明るい環境下にてハジキ欠陥がない(○)、明るい環境下にてハジキ欠陥がある(×)とした。
【0079】
「油性ペンの拭き取り性」
反射防止フィルムの表面に付着した油性ペンのインキをセルロース製不織布〔旭化成工業(株)製:ベンコットM−3〕で拭き取り、その取れ易さを目視判定で行った。
【0080】
評価判定は、油性ペンのインキを完全に拭き取ることが出来る(○)、油性ペンのインキの拭き取り跡が残る(△)、油性ペンのインキを拭き取ることが出来ない(×)の3段階とした。
【0081】
「指紋の拭き取り性」
反射防止フィルムの表面に付着した指紋をセルロース製不織布〔旭化成工業(株)製:ベンコットM−3〕で拭き取り、その取れ易さを目視判定で行った。
【0082】
評価判定は、指紋を完全に拭き取ることが出来る(○)、指紋の拭き取り跡が残る(△)、指紋を拭き取ることが出来ない(×)の3段階とした。
【0083】
前記(実施例1)及び、(比較例1〜6)について、各種物性評価結果を(表2)に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
(表2)から、本発明の反射防止フィルムは、使用するシリカゲルの量、溶剤種類、溶剤比率を調整することにより、十分な反射防止性能、防汚性、耐擦傷性を有しながら色ムラおよびハジキ欠陥の発生を抑えていることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも片面に、低屈折率層を積層した反射防止フィルムにおいて、低屈折率層がマイクログラビア方式により形成され、低屈折率層形成用塗液とする電離放射線硬化型樹脂組成物に、シリコーン系撥水剤と、シリコーン系レべリング剤が含まれており、さらに、粒径0.5nm以上200nm以下の低屈折率微粒子が含まれており、且つ、シリカゲルを含ませ脱水剤として使用することを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
低屈折率層形成用塗液とシリカゲルの重量比が低屈折率層形成用塗液/シリカゲルとして3.3以上10.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
低屈折率層の形成における低屈折率層形成用塗液の溶剤がアルコール系であり、溶剤中に、沸点10℃以上120℃以下の溶剤が溶剤比で60%以上85%以下であり、沸点120℃以上200℃以下の溶剤が溶剤比で15%以上40%以下含まれていることを特徴とする請求項1から請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の反射防止フィルムにおいて、L色度系における反射色相が0≦a≦5、−3≦b≦3であり、且つ、平均視感反射率(Y)が0.5%以上1.3%以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルム。

【公開番号】特開2011−81119(P2011−81119A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232264(P2009−232264)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】