説明

反射防止用積層体およびその製造方法、硬化性組成物

【課題】低屈折率性および耐擦傷性に優れた硬化膜を一度の塗布工程で形成することができる硬化性組成物、あるいは該硬化膜を有する反射防止用積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】反射防止用積層体の製造方法は、(a)(A)重合性化合物、(B)屈折率が1.40以下である粒子22、および(D)溶剤を少なくとも含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材10上に塗布する工程と、(b)前記硬化性組成物を硬化させて前記セルロース樹脂基材10上に硬化膜20を形成する工程と、を含む、前記硬化膜20中において前記セルロース樹脂基材10と接する面とは反対の面側に前記粒子22が偏在している反射防止用積層体の製造方法であって、前記(D)溶剤中、(D1)基材のセルロース樹脂を溶解し、かつ、0.1MPaにおける沸点が80℃以上250℃以下である溶剤を、3質量%以上100質量%以下含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止用積層体およびその製造方法、ならびに該反射防止用積層体を形成する際に用いられる硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、パーソナルコンピュータ等の表示装置として、液晶表示装置が使用されている。かかる液晶表示装置において、外光の映りを防止して画質を向上させるために、低屈折率層を含有する反射防止膜を使用することが提案されている。
【0003】
従来の液晶表示装置に使用される反射防止膜は、低屈折率層とハードコート層を多層塗工することで低屈折率性および耐擦傷性を備えていた。このような多層構造を有する反射防止膜は、低屈折率層において反射率を低減させることができるが、多層構造とするために生産性やコストに劣るという問題があった。さらに、低屈折率層とハードコート層とを積層させることにより製造された反射防止膜は、低屈折率層とハードコート層との界面で剥離が起こりやすいという問題を抱えていた。
【0004】
このような問題を解決するために、フッ素シランでシリカ粒子を修飾し、表面エネルギーによりその液体中でシリカ粒子を偏在化させてから硬化膜を形成するという反射防止膜の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3861562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、シリカ粒子の偏在性が不十分で低屈折率性が得られないばかりでなく、硬化膜表面の耐擦傷性に優れないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明にかかる幾つかの態様は、上記課題を解決することで、低屈折率性および耐擦傷性に優れた硬化膜を一度の塗布工程で形成することができる硬化性組成物、あるいは該硬化膜を有する反射防止用積層体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本発明に係る反射防止用積層体の製造方法の一態様は、
(a)(A)重合性化合物、(B)屈折率が1.40以下である粒子、および(D)溶剤を少なくとも含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布する工程と、
(b)前記硬化性組成物を硬化させて前記セルロース樹脂基材上に硬化膜を形成する工程と、
を含む、前記硬化膜中において前記セルロース樹脂基材と接する面とは反対の面側に前記粒子が偏在している反射防止用積層体の製造方法であって、
前記(D)溶剤100質量%中、(D1)基材のセルロース樹脂を溶解し、かつ、0.1MPaにおける沸点が80℃以上250℃以下である溶剤を、3質量%以上100質量%以下含有することを特徴とする。
【0010】
[適用例2]
適用例1において、
前記工程(a)と(b)との間に、
前記硬化性組成物を加熱する工程、をさらに含むことができる。
【0011】
[適用例3]
適用例2において、
加熱温度は、前記(D1)成分の沸点よりも低くすることができる。
【0012】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記(B)粒子は、中空シリカ粒子であることができる。
【0013】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記セルロース樹脂基材は、トリアセチルセルロース基材であることができる。
【0014】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
前記(D1)成分は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、N−メチル−2−ピロリドンおよびγ−ブチロラクトンから選択される少なくとも1種であることができる。
【0015】
[適用例7]
本発明に係る硬化性組成物の一態様は、
(A)重合性化合物と、(B)屈折率が1.40以下である粒子と、(D)溶剤と、を少なくとも含有し、
前記(D)溶剤100質量%中、(D1)基材のセルロース樹脂を溶解し、かつ、0.1MPaにおける沸点が80℃以上250℃以下である溶剤を、3質量%以上100質量%以下含有する。
【0016】
[適用例8]
適用例7において、
前記(B)粒子は、中空シリカ粒子であることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る反射防止用積層体の製造方法によれば、セルロース樹脂基材上に前記硬化性組成物を一度塗布して硬化させることで、セルロース樹脂基材と接触する面とは反対の面側に屈折率が1.40以下である粒子が高密度に存在する層を形成し、セルロース樹脂基材と接触する面側に屈折率が1.40以下である粒子が実質的に存在しない層を形成することができる。これにより、耐擦傷性および低屈折率性の双方を兼ね備えた反射防止用積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る反射防止用積層体の製造方法により製造された反射防止用積層体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含む。
【0020】
1.硬化性組成物
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)重合性化合物と、(B)屈折率が1.40以下である粒子と、(D)溶媒と、を少なくとも含有する。以下、本実施の形態に係る硬化性組成物の各成分について詳細に説明する。なお、以下の記載において(A)ないし(D)の各材料を、それぞれ(A)成分ないし(D)成分と省略して記載することもある。
【0021】
1.1.(A)重合性化合物
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)重合性化合物を含有する。(A)成分は、硬化膜を形成する主成分である。
【0022】
(A)成分としては、分子内に2個以上の重合性基を含むものであれば特に制限はないが、例えば(メタ)アクリルエステル化合物、ビニル化合物、エポキシ化合物、アルコキシメチルアミン化合物が挙げられ、(メタ)アクリルエステル化合物が好ましい。
【0023】
(メタ)アクリルエステル化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、およびこれらの水酸基へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、およびオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。これらの中では、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0024】
ビニル化合物類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0025】
エポキシ化合物としては、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等が挙げることができる。
【0026】
アルコキシメチルアミン化合物としては、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル等が挙げられる。
【0027】
このような(A)成分の市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスM−400、M−404、M−408、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−208、M−210、M−215、M−220、M−225、M−233、M−240、M−245、M−260、M−270、M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−221、M−203、TO−924、TO−1270、TO−1231、TO−595、TO−756、TO−1343、TO−902、TO−904、TO−905、TO−1330、日本化薬株式会社製のKAYARAD D−310、D−330、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、SR−295、SR−355、SR−399E、SR−494、SR−9041、SR−368、SR−415、SR−444、SR−454、SR−492、SR−499、SR−502、SR−9020、SR−9035、SR−111、SR−212、SR−213、SR−230、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−349、SR−601、SR−602、SR−610、SR−9003、PET−30、T−1420、GPO−303、TC−120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−167、R−526、R−551、R−712、R−604、R−684、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、KS−HDDA、KS−TPGDA、KS−TMPTA、共栄社化学株式会社製のライトアクリレート PE−4A、DPE−6A、DTMP−4A等を挙げることができる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本実施の形態に係る硬化性組成物中において、(A)重合性化合物の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、通常80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。この理由は、添加量が80質量%未満であると、十分な硬度が得られない場合があるからである。
【0029】
1.2.(B)屈折率が1.40以下である粒子
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(B)屈折率が1.40以下である粒子を含有する。かかる粒子が硬化膜の表面に偏在化することにより低屈折率層を形成し、硬化膜に反射防止膜としての機能を付与することができる。また、該粒子が硬化膜の表面に偏在化することで、硬化膜の表面の硬度を向上させたり、カールを小さくさせたりする効果も期待される。
【0030】
粒子の屈折率は、1.40以下であり、好ましくは1.35以下、より好ましくは1.30以下である。屈折率を1.40以下とした理由は、屈折率が1.40を超える粒子を添加しても、反射防止性に優れた硬化膜を得ることができないからである。また、屈折率は、1.00を下限とし低いほど好ましいが、中空粒子を使用した場合は、屈折率が低くなるにつれ粒子の強度が低下するため、硬化膜の硬度や耐擦傷性も低下する。そのため、屈折率の下限は1.20とすることが好ましい。本明細書中における「屈折率」とは、25℃におけるNa−D線(波長589nm)の屈折率をいう。本明細書中における「粒子の屈折率」は、同一マトリックス中に、固形分中の粒子含量を、1質量%、10質量%、20質量%とした組成物を成膜し、JIS K7105に従い、25℃におけるNa−D線での屈折率を測定し、検量線法で計算した粒子含量100質量%の値をいう。
【0031】
粒子としては、屈折率が1.40以下のものであれば特に限定されないが、例えば中空シリカ粒子、フッ化金属粒子等が挙げられる。これらの中でも、シリカを主成分とする中空シリカ粒子であることが好ましい。中空シリカ粒子は、その内部に空洞を有するため、中実粒子と比べてより低屈折率化することができる。
【0032】
透過型電子顕微鏡により測定した粒子の数平均粒子径は、好ましくは1〜100nmであり、より好ましくは5〜60nmである。粒子の形状は、球状に限定されず不定形の形状であってもよい。
【0033】
中空シリカ粒子の市販品としては、例えば、日揮触媒化成株式会社製の「JX1008SIV」(透過型電子顕微鏡で求めた数平均粒子径50nm、固形分20質量%、イソプロピルアルコール溶媒)、「JX1009SIV」(透過型電子顕微鏡で求めた数平均粒子径50nm、固形分20質量%、メチルイソブチルケトン溶媒)等が挙げられる。
【0034】
本実施の形態に用いられる中空シリカ粒子は、粒子変性剤で変性されたものであってもよい。粒子変性剤としては、重合性不飽和基および加水分解性シリル基を有する化合物(以下、「重合性粒子変性剤」ともいう。)等が挙げられる。重合性粒子変性剤の重合性不飽和基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。なお、加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノール基(Si−OH)を生成するものであって、例えば、ケイ素に1以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシル基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子が結合したものをいう。
【0035】
本実施の形態に用いられる重合性粒子変性剤は、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の市販品を使用することもできるし、例えば、国際公開公報WO97/12942号公報に記載された化合物を用いることもできる。
【0036】
また、粒子変性剤として、フッ素を含有する加水分解性シリル基を有する化合物(以下、「含フッ素粒子変性剤」ともいう。)、を使用することもできる。含フッ素粒子変性剤を使用することで、中空シリカ粒子を効率よく偏在させることが可能となる。本実施の形態に用いられる含フッ素粒子変性剤は、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等の市販品を使用することができる。
【0037】
また、アルキル基を有する粒子変性剤や、シリコーン鎖を有する粒子変性剤も、含フッ素粒子変性剤と同様に使用することができる。
【0038】
上記の各種粒子変性剤は1種を用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本実施の形態に用いられる中空シリカ粒子を変性させるためには、中空シリカ粒子と粒子変性剤とを混合し、加水分解させることにより両者を結合させればよい。得られた反応性中空シリカ粒子中の有機重合体成分、すなわち加水分解性シランの加水分解物および縮合物の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少%の恒量値として、例えば空気中で室温から通常800℃までの熱重量分析により求めることができる。
【0040】
反応性中空シリカ粒子への粒子変性剤の結合量は、変性後の中空シリカ粒子を100質量%とした場合、好ましくは0.01〜40質量%であり、より好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。中空シリカ粒子に反応させる粒子変性剤の量を上記範囲とすることで、組成物中における中空シリカ粒子の分散性を向上させることができるだけでなく、得られる硬化物の透明性や耐擦傷性を高める効果が期待できる。
【0041】
本実施の形態に係る硬化性組成物中において、(B)成分の含有量は、形成する硬化膜の膜厚に応じて適宜調整できる。例えば、硬化膜の膜厚が10μmの場合、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは0.4〜1.2質量%、より好ましくは0.5〜1質量%の範囲内である。例えば、硬化膜の膜厚が7μmの場合、好ましくは0.6〜1.8質量%、より好ましくは0.7〜1.5質量%であり、硬化膜の膜厚が3μmの場合、好ましくは1.2〜4質量%、より好ましくは1.5〜3質量%の範囲内である。(B)成分の含有量が上記の範囲未満であると、反射防止性を発現する(B)成分が高密度に存在する層(低屈折率層)を形成できない場合がある。一方、(B)成分の含有量が上記の範囲を超えると、反射防止性を発現する(B)成分が高密度に存在する層(低屈折率層)の厚さが大きくなりすぎて、反射率低減効果が発現しない場合がある。
【0042】
1.3.(C)重合開始剤
本実施の形態にかかる硬化性組成物は、(C)重合開始剤を含有してもよい。このような(C)重合開始剤としては、(A)成分として(メタ)アクリルエステル化合物および/またはビニル化合物を含有する場合には、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物(熱重合開始剤)および放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物(放射線(光)ラジカル重合開始剤)等の汎用品を挙げることができる。また、(A)成分としてエポキシ化合物および/またはアルコキシメチルアミン化合物を含有する場合には、酸性化合物および放射線(光)照射により酸を発生させる化合物(放射線(光)酸発生剤)等の汎用品を挙げることができる。これらの中でも、放射線(光)重合開始剤が好ましい。
【0043】
放射線(光)ラジカル重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始させられるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
【0044】
放射線(光)ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、チバジャパン株式会社製のイルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、BASF社製のルシリン TPO、8893UCB社製のユベクリル P36、ランベルティ社製のエザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
【0045】
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱により分解してラジカルを発生して重合を開始するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0046】
放射線(光)酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩類、ジアリールヨードニウム塩類の化合物を使用することができる。放射線(光)酸発生剤の市販品としては、サンアプロ社製のCPI−100P、101A等が挙げられる。
【0047】
本実施の形態に係る硬化性組成物中において、必要に応じて用いられる(C)重合開始剤の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の範囲内である。0.01質量%未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となるおそれがあり、20質量%を超えると、塗膜の硬度が損なわれるおそれがある。なお、(C)重合開始剤は複数種の化合物を併用することもできる。
【0048】
1.4.(D)溶剤
本実施の形態に係る硬化性組成物は、塗膜の厚さを調節するために、(D)溶剤で希釈して用いられる。例えば、本実施の形態に係る硬化性組成物を反射防止膜や被覆材として用いる場合の粘度は、通常0.1〜50,000mPa・秒/25℃であり、好ましくは0.5〜10,000mPa・秒/25℃である。
【0049】
本実施の形態で使用される(D)溶剤には、(D1)基材のセルロース樹脂を溶解し、かつ、0.1MPaにおける沸点が80℃以上250℃以下である溶剤(以下、(D1)成分ともいう。)が含まれる。本発明において、「基材のセルロース樹脂を溶解する」とは、18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmのセルロース樹脂フィルムを6gの溶剤に2時間浸したときに、該フィルムの質量減少率が2%以上であることをいう。
【0050】
このような(D1)成分としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。ここに示した各化合物のトリアセチルセルロースに対する溶解性および0.1MPaにおける沸点は、後の実施例において示す表1に記載のとおりであり、いずれの化合物も上記(D1)成分の条件を満たすものである。これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0051】
本実施の形態にかかる硬化性組成物は、(D1)成分を含有することにより、加熱乾燥時にセルロース樹脂基材との親和性が高い(D1)成分がセルロース樹脂基材側に引き寄せられ、その結果として(B)成分がセルロース樹脂基材とは逆の界面に偏在化するものと考えられる。
【0052】
後述のとおり、本実施の形態に係る反射防止用積層体の製造方法においては、本実施の形態に係る硬化性組成物をセルロース樹脂基材に塗布した後、通常80〜120℃で加熱乾燥する工程が行われる。ここで、セルロース樹脂に対する溶解性を有する溶剤の0.1MPaにおける沸点が80℃未満であると、この加熱乾燥時に溶剤が蒸発してしまうため、(B)成分の偏在化が起こらない。また、0.1MPaにおける沸点が250℃より高いと硬化膜中に溶剤が残留してしまい、硬度の低下を招くおそれがある。このような理由から、(D1)成分の0.1MPaにおける沸点は、80℃以上250℃以下であり、好ましくは100℃以上240℃以下、より好ましくは120℃以上220℃以下である。
【0053】
また、(D1)成分以外の溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0054】
本実施の形態に係る硬化性組成物において、(D)溶剤の含有量は、(D)溶剤を除く成分の合計を100質量部としたときに、50〜10,000質量部の範囲内であることが好ましい。溶剤の含有量は、塗布膜厚、硬化性組成物の粘度等を考慮して適宜決定することができる。
【0055】
また、本実施の形態に係る硬化性組成物において、(D)溶剤100質量%中の(D1)成分の割合は、3質量%以上100質量%以下であり、5質量%以上100質量%以下であることが好ましい。(D)溶剤100質量%中の(D1)成分の割合が3質量%未満であると、前述した(B)成分の偏在化が起こりにくくなる。
【0056】
1.5.その他の添加剤
本実施の形態に係る硬化性組成物は、必要に応じて、粒子分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を含有することができる。これらの内、粒子分散剤として、フッ素原子を含有する化合物、シロキサン鎖を有する化合物を使用することで、中空シリカ粒子の偏在化を促進し、塗膜の屈折率を低下させることができる。
【0057】
1.6.硬化性組成物の製造方法
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)重合性化合物、(B)粒子、(D)溶媒、必要に応じて(C)ラジカル重合開始剤、その他の添加剤をそれぞれ添加して、室温または加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサー、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて調製することができる。但し、加熱条件下で混合する場合には、熱重合開始剤の分解温度以下で行うことが好ましい。
【0058】
2.反射防止用積層体およびその製造方法
本実施の形態に係る反射防止用積層体の製造方法は、
(a)(A)重合性化合物、(B)屈折率が1.40以下である粒子、および(D)溶剤を少なくとも含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布する工程と、
(b)前記硬化性組成物を硬化させて前記セルロース樹脂基材上に硬化膜を形成する工程と、を含む。本実施の形態に係る反射防止用積層体の製造方法において、前記(D)溶剤100質量%中、(D1)基材のセルロース樹脂を溶解し、かつ、0.1MPaにおける沸点が80℃以上250℃以下である溶剤を、3質量%以上100質量%以下含有する。
【0059】
かかる反射防止用積層体の製造方法によれば、セルロース樹脂基材上に前記硬化性組成物を一度塗布して硬化させることで、セルロース樹脂基材と接触する面とは反対の面側に屈折率が1.40以下である粒子が高密度に存在する層を形成し、セルロース樹脂基材と接触する面側に屈折率が1.40以下である粒子が実質的に存在しない層を形成することができる。これにより、耐擦傷性および低屈折率性の双方を兼ね備えた反射防止用積層体を製造することができる。以下、工程ごとに説明する。
【0060】
2.1.工程(a)
まず、前述した硬化性組成物を準備する。かかる硬化性組成物の構成や製造方法等は前述したとおりであるため、詳細な説明は省略するものとする。
【0061】
次に、準備した硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布する。塗布する方法は、特に制限されず、例えばバーコート塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の公知の方法を用いることができる。
【0062】
2.2.工程(b)
次に、セルロース樹脂基材上に塗布された硬化性組成物を硬化させて、前記セルロース樹脂基材上に硬化膜を形成する。硬化性組成物の硬化条件についても特に限定されるものではない。具体的には、0〜200℃、好ましくは80〜120℃で加熱処理して揮発成分を乾燥させた後、放射線および/または熱で硬化処理を行うことにより反射防止用積層体を形成することができる。熱で硬化させる場合の好ましい条件は、20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲で行われる。放射線で硬化させる場合、紫外線または電子線を用いることが好ましい。紫外線の照射光量は、好ましくは0.01〜10J/cmであり、より好ましくは0.1〜2J/cmである。また、電子線の照射条件は、加圧電圧が10〜300kV、電子密度が0.02〜0.30mA/cm、電子線照射量が1〜10Mradである。
【0063】
以上で説明したように、工程(a)と工程(b)との間に、セルロース樹脂基材上に塗布された硬化性組成物を加熱する工程をさらに設けておくことが好ましい。加熱する工程を設けることにより、硬化性組成物中の(D)溶媒を揮発させて除去することができる。加熱する工程をさらに設けることにより(D)溶媒が除去されるので、硬化性に優れた反射防止用積層体を形成することができる。ここで、加熱温度は、前述した(D1)成分の沸点との関係から、0〜200℃、好ましくは80〜120℃であるが、(D1)成分の沸点よりも低く設定しておくとよい。(D1)成分の沸点よりも高い温度で加熱することによって(D1)成分が速やかに揮発して除去されてしまうと、(B)粒子の偏在化が起こりにくくなるからである。なお、「加熱温度」とは、当該温度の雰囲気中に、硬化性組成物を塗布したセルロース樹脂基材をさらすことを意味し、セルロース樹脂基材または塗膜が当該温度に達していなくてもよい。
【0064】
セルロース樹脂基材上に前記硬化性組成物を一度塗布して硬化させることで(B)粒子が偏在する機構を以下に説明する。セルロース樹脂上に塗布された硬化性組成物中に前記(D1)成分が存在するため、基材であるセルロース樹脂の一部が、硬化性組成物中に溶解する。溶け出したセルロース樹脂は親水性であるため、塗布された硬化性組成物は基材付近の親水性が高まり、相対的に疎水性である(B)成分が基材と反対側に偏在化するものと考えられる。
【0065】
2.3.反射防止用積層体
次に、前述した本実施の形態に係る反射防止用積層体の製造方法によって製造された反射防止用積層体について説明する。図1は、本実施の形態に係る反射防止用積層体の製造方法によって製造された反射防止用積層体を模式的に示した断面図である。図1に示すように、反射防止用積層体100は、基材となるセルロース樹脂基材10の上に前述した硬化性組成物を硬化させた硬化膜20が形成されており、前記硬化膜20のうち、セルロース樹脂基材10と接触した面側には粒子22が実質的に存在しないハードコート層24が形成され、基材10と接触した面とは反対の面側に粒子22が高密度に存在する低屈折率層26が形成されている。以下、本実施の形態に係る反射防止用積層体の各層について説明する。
【0066】
2.3.1.基材
本実施の形態に係る反射防止用積層体に用いられる基材は、セルロース樹脂基材である。基材としてセルロース樹脂を用いることにより、前述した硬化性組成物中に含まれる(D1)成分がセルロース樹脂基材と相互作用し、(D1)成分がセルロース樹脂基材と接触した面側に引き寄せられる。この作用により、セルロース樹脂基材と接触した面とは反対の面側に粒子22が高密度に存在する低屈折率層26を形成することができるものと考えられる。一方、セルロース樹脂以外の樹脂を基材として使用した場合には、前述したような作用効果を奏しない。本実施の形態において、セルロース樹脂基材とは、基材自体がセルロース樹脂で形成されていてもよいし、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等の基材表面にセルロース樹脂層を有する基材であってもよい。ここで、基材として使用可能なセルロース樹脂としては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
【0067】
また、基材をセルロース樹脂とする反射防止用積層体は、カメラのレンズ部、テレビ(CRT)の画面表示部、あるいは液晶表示装置における偏光子の保護フィルム等の広範なハードコートおよび/または反射防止膜の利用分野において、優れた耐擦傷性および反射防止効果を得ることができる。
【0068】
2.3.2.ハードコート層
ハードコート層24は、前述した硬化性組成物を硬化して得られる二層構造を有する硬化膜20のうち、粒子22が実質的に存在しない層から構成される。
【0069】
ハードコート層24の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜10μmである。ハードコート層24の厚さが1μm未満であると、硬度が不足する場合があり、一方、50μmを超えると、均質な膜を形成することが困難となったり、積層体のカールが大きくなり扱いづらくなる場合があるからである。硬化性組成物を塗布した際にセルロース樹脂を溶解させるため、ハードコート層24はセルロース樹脂成分を含んでいてもよい。
【0070】
2.3.3.低屈折率層
低屈折率層26は、前述した硬化性組成物を硬化して得られる二層構造を有する硬化膜20のうち、粒子22が高密度に存在する層から構成される。
【0071】
低屈折率層26の厚さは、特に限定されないが、好ましくは50〜200nm、より好ましくは60〜150nm、特に好ましくは80〜120nmである。低屈折率層26の厚さが50nm未満であると、十分な反射防止効果が得られない場合があり、一方、200nmを超えると、反射防止効果が低下する場合があるからである。
【0072】
反射防止用積層体100におけるハードコート層24と低屈性率層26との屈折率差は、0.05以上の値とすることが好ましい。この理由は、ハードコート層24と低屈折率層26との屈折率差が0.05未満の値であると、これらの反射防止膜での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合があるからである。
【0073】
3.実施例
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0074】
3.1.実施例1
3.1.1.硬化性組成物の製造
紫外線を遮蔽した容器中において、中空シリカ粒子(商品名「JX−1009SIV」、メチルイソブチルケトンゾル、日揮触媒化成株式会社製)5質量部(固形分として1質量部)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名「カヤラッドPET−30」、日本化薬株式会社製)96質量部、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリホリノプロパン−1−オン(商品名「イルガキュア(登録商標)907」、チバジャパン株式会社製)3質量部、サイラプレーンFM0725(チッソ株式会社製)0.1質量部、さらにメチルイソブチルケトンを95質量部、γ−ブチロラクトンを5質量部加えて室温で2時間撹拌することにより均一な溶液を得た。この溶液をアルミ皿に2g秤量後、175℃のホットプレート上で30分間乾燥させ、秤量した後固形分含量を求めたところ、50質量%であった。
【0075】
3.1.2.硬化膜サンプルの作製
前記「3.1.1.硬化性組成物の製造」で得られた溶液をトリアセチルセルロースフィルム(商品名「TDY−80UL」、富士フイルム株式会社製)上にバーコーターを用いて全体の硬化膜厚が約7μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥後、窒素フロー下で高圧水銀灯(300mJ/cm)を用いて硬化させた。なお、塗布は、ロール状に巻かれたフィルムの内側の面に塗膜を形成するように行った。
【0076】
3.2.実施例2〜11、比較例1〜3
表2または表3に示す成分を、表2または表3に示す組成で配合したこと以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を製造し、硬化膜サンプルを得た。なお、溶剤成分の種類、トリアセチルセルロース(TAC)に対する溶解性、沸点に関するデータを表1にまとめておいた。なお、トリアセチルセルロースに対する溶解性の有無は、前述した方法により判定した。すなわち、18cm×1cmの大きさに切った厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名「TDY−80UL」、富士フイルム株式会社製)を、6gの溶剤に2時間浸したときのトリアセチルセルロースフィルムの質量減少率を測定し、質量減少率が2%以上である場合には該溶剤がセルロース樹脂に対する溶解性を有するものと判断し、2%未満である場合には該溶剤が基材のセルロース樹脂を溶解しないものと判断した。
【0077】
【表1】

【0078】
また、実施例9および実施例10で使用した基材は、セルロースアセテートブチレート樹脂(商品名「CAB−381−20」、イーストマンケミカル社製)をアセトンに20質量%に溶解した溶液を、それぞれポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート基材上に、バーコーターを用いて塗布し80℃で3分間乾燥させ、5μmのセルロース樹脂膜を形成した基材を使用した。なお、γ−ブチロラクトンへのセルロースアセテートブチレートの溶解性を同様に試験したところ、溶解性が高く、引き上げ時に基材が崩れてしまったため数値を示していない。
【0079】
実施例11で使用した粒子「B−1」は、次のようにして合成した。中空シリカ粒子(商品名「JX−1009SIV」、メチルイソブチルケトンゾル、日揮触媒化成株式会社製)90.9質量部(固形分濃度;20質量部)、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製)1質量部、イソプロパノール0.1質量部およびイオン交換水0.05質量部の混合液を、80℃で3時間攪拌後、オルトギ酸メチルエステル0.7質量部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の粒子分散液B−1を得た。B−1をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、22.5質量%であった。
【0080】
3.3.評価試験
実施例および比較例で得られた硬化性組成物および硬化膜の特性を下記項目について評価した。その結果を表2および表3に併せて示す。
【0081】
3.3.1.反射率
得られた硬化膜の裏面を黒色スプレーで塗装し、分光反射率測定装置(大型試料室積分球付属装置150−09090を組み込んだ自記分光光度計U−3410、日立製作所株式会社製)により波長340〜700nmの範囲における反射率を基材側から測定して評価した。具体的には、アルミの蒸着膜における反射率を基準(100%)として、各波長における反射防止用積層体(反射防止膜)の反射率を測定し、そのうち波長550nmにおける光の反射率を表2および表3に併せて示した。反射率は、3%未満であれば低反射性を有すると判断することができる。
【0082】
3.3.2.耐擦傷性(スチールウール耐性テスト)
得られた硬化膜をスチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール株式会社製)を学振型摩擦堅牢度試験機(AB−301、テスター産業株式会社製)に取り付け、硬化膜の表面を荷重200gの条件で10回繰り返し擦過し、当該硬化膜の表面における傷の発生の有無を以下の基準により目視で確認した。評価基準は、以下のとおりである。
AA:硬化膜に傷が発生しない。
A :硬化膜の剥離や傷の発生がほとんど認められないか、あるいは硬化膜にわずかな細い傷が認められる。
B :硬化膜全面に筋状の傷が認められる。
C :硬化膜の剥離が生じる。
【0083】
3.3.3.鉛筆硬度
得られた硬化膜を「JIS K5600−5−4」に準拠し、ガラス基板上に固定させて評価した。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
3.4.評価結果
表2および表3の結果から、実施例1〜11の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜においては、反射率が3%未満となり反射防止性を有していることが分かった。また、耐スチールウール性の結果から耐擦傷性にも優れていることが分かった。
【0087】
これに対し、表2の結果から、比較例1〜3の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜においては、耐擦傷性には優れているが、反射率が3%を超えてしまい反射率が劣ることが分かった。
【0088】
なお、実施例2、3、8および比較例1の硬化膜において、ハードコート層のラマン分光測定(日本電子株式会社製、形式「JRS−SYSTEM2000」を使用)を行った。その結果、実施例2、3および8のハードコート層からは、トリアセチルセルロースのカルボニル基に由来する1740cm−1のピークが検出されたが、比較例1のハードコート層からはトリアセチルセルロースに由来するピークは検出されなかった。すなわち、実施例2、3および8のハードコート層中には、基材のトリアセチルセルロースの一部が混入していることが示唆された。
【0089】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0090】
10…セルロース樹脂基材、20…硬化膜、22…粒子、24…ハードコート層、26…低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(A)重合性化合物、(B)屈折率が1.40以下である粒子、および(D)溶剤を少なくとも含有する硬化性組成物をセルロース樹脂基材上に塗布する工程と、
(b)前記硬化性組成物を硬化させて前記セルロース樹脂基材上に硬化膜を形成する工程と、
を含む、前記硬化膜中において前記セルロース樹脂基材と接する面とは反対の面側に前記粒子が偏在している反射防止用積層体の製造方法であって、
前記(D)溶剤100質量%中に、(D1)基材のセルロース樹脂を溶解し、かつ、0.1MPaにおける沸点が80℃以上250℃以下である溶剤を、3質量%以上100質量%以下含有することを特徴とする、反射防止用積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(a)と(b)との間に、
前記硬化性組成物を加熱する工程、をさらに含む、反射防止用積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
加熱温度は、前記(D1)成分の沸点よりも低い、反射防止用積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記(B)粒子は、中空シリカ粒子である、反射防止用積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記セルロース樹脂基材は、トリアセチルセルロース基材である、反射防止用積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記(D1)成分は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、N−メチル−2−ピロリドンおよびγ−ブチロラクトンから選択される少なくとも1種である、反射防止用積層体の製造方法。
【請求項7】
セルロース樹脂基材上に、(A)重合性化合物、(B)屈折率が1.40以下である粒子を含有する硬化性組成物の硬化膜を有する積層体であって、
前記硬化膜中において前記セルロース樹脂基材と接する面とは反対の面側に前記(B)屈折率が1.40以下である粒子が偏在しており、かつ、前記硬化膜中にセルロース樹脂成分を含有することを特徴とする、反射防止用積層体。
【請求項8】
(A)重合性化合物と、(B)屈折率が1.40以下である粒子と、(D)溶剤と、を少なくとも含有し、
前記(D)溶剤100質量%中、(D1)基材のセルロース樹脂を溶解し、かつ、0.1MPaにおける沸点が80℃以上250℃以下である溶剤を、3質量%以上100質量%以下含有する、硬化膜中において基材と接する面とは反対の面側に前記粒子が偏在した反射防止積層体形成用の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項8において、
前記(B)粒子は、中空シリカ粒子である、硬化性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−203560(P2011−203560A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71708(P2010−71708)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】