説明

反応における複数の核酸配列の同時検出

本発明は、反応において核酸配列を同時に増幅及び検出するための方法であって、以下の工程、(i)少なくとも一つの核酸分子を含む試料を準備する工程、(ii)少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、さらに好ましくは少なくとも6つのプローブを含む、増幅反応を行うための試薬を準備する工程、ここで、(a)各プローブは、核酸配列に特異的であり、(b)少なきとも2つ、好ましくは少なくとも3つのプローブは、同じ標識を有し、そして(c)同じ標識を持つ各プローブの融解温度(Tm)は、同じ標識を持つ他のプローブの融解温度に対して、加熱によりプローブが標的の核酸配列から解離する際には、2℃より大きい差を有し、(iii)反応において核酸配列を増幅する工程、(iv)標識されたプローブがその核酸配列に結合しているか否かを測定することにより増幅された核酸を検出する工程、そして(v)各所与の標識されたプローブが、結合した核酸配列から解離する温度を検出する工程、を含む方法に関する。本発明はまた、このような方法に用いるキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学及び化学の分野、特には、分子生物学及びヒトゲノムの分野に関する。本発明は、試料中のある種の核酸配列を同定する分野に関する。特に、本発明は、反応において、核酸配列を同時に増幅しそして検出する分野に関する。本発明は、試料中の核酸配列を検出するための方法、キット及び系に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の生物物質、例えば病原体を感度よく、特異的に、そして素早く検出する診断分析は、疾患と診断に関する生物物質のモニターリングの両者において、益々重要になってきている。伝染性または有害な物質の存在の初期の検出において、適当な時間スケールでもって生理的または臨床的に関連する生物体を正確に検出できる分析方法はほとんどない。
【0003】
DNAマイクロアレイは、一般に、個々の遺伝子を表す顕微鏡的なDNAスポットの集合体が、化学的マトリックスに共有結合することにより、個体表面上に配置されたものである。DNAアレイは、検出系の一部としてDNAを用いるかDNAを測定するかという点でのみ、他のマイクロアレイとは異なっている。DNAマイクロアレイを用いた定性的または定量的な測定は、高ストリンジェントな条件でのDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションの選択特性とフルオロフォアに基づく検出を用いる。DNAアレイは、一般に、発現プロファイリング、即ち、数千の遺伝子の発現レベルを同時にモニターするため、または比較ゲノムハイブリダイゼーションのために用いられる。この系の欠点は、分析に先立ち、複数の工程を実施することが必要なことである。また、DNAアレイは、高感度ではない。
【0004】
今までのところ、最も高感度な検出方法はPCRを含む。一つの試料中の複数の生物物質の存否の決定は、複数の検出方法を用いることによって達成できる。
多重PCRは、一つのPCR反応で複数の特有のプライマーセットを用いて、異なったDNA配列、即ち異なったトランスジーンに特異的な種々の大きさのアンプリコンを産生する。一度に複数の遺伝子をターゲットとすることによって、単一テストの実行により、さもなければそのために数倍の試薬や多くの時間を要求するような、追加情報をうることができる。各プライマーセットのアニーリング温度は、単一の反応内で正確に行われるように最適化されなければならず、そしてアンプリコンの大きさ、すなわち、それらの塩基対の長さは、ゲル電気泳動において可視化する際に、区別されるバンドを形成するに十分に異なるべきである。
多重リアルタイムPCRは、診断検査に用いることができる一つの方法である。PCRに基づくアッセイは、費用効果がある数の反応チューブで複数の物質を検査するためには、PCR反応の最適化の複雑さのために制限されうる。一般には、非常に特異的な確認を裏付けるに必要なプローブ数は、2から6つまでのできるだけ多くの数の配列の範囲となる。当業者が認識しているように、多くの異なったプライマー対とプローブを用いたPCR反応の最適化は、検出すべきターゲットの数が増加するに伴い、益々扱いにくくなる大変やっかいな作業となりうる。PCRに基づくアッセイはまた、結果の分析のために利用できる特有の標識の数によっても制限されうる。例えば、リアルタイムPCRアッセイは、一般に、蛍光標識を用いる。
単一の反応において用いることができる標識の数は、用いる光学検出系において利用できる蛍光色チャンネルの数によって制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの容器で、複数の核酸配列を同時に増幅及び検出する方法は有利であろう。
【0006】
国際公開2005/111243A2号公報は、2つの容器中の物質の検出方法に関する。国際公開2005/111243A2号公報に記載された方法の欠点は、2つの容器が必要であるという事実である。理想的には、反応は一つの容器を必要とするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、反応において核酸配列を同時に増幅及び検出するための方法であって、以下の工程、(i)少なくとも一つの核酸分子を含む試料を準備する工程、(ii)少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、さらに好ましくは少なくとも6つのプローブを含む、増幅反応を行うための試薬を準備する工程、ここで、(a)各プローブは、核酸配列に特異的であり、(b)少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのプローブは、同じ標識を持ち、そして(c)同じ標識を持つ各プローブの融解温度(Tm)は、同じ標識を持つ他のプローブの融解温度に対して、加熱によりターゲットの核酸配列から解離する際には、2℃より大きい差である、(iii)反応において核酸配列を増幅する工程、(iv)標識されたプローブが核酸配列に結合したか否かを測定することにより増幅された核酸を検出する工程、そして(v)それぞれの所与の標識されたプローブが、結合した核酸配列から解離する温度を検出する工程、を含む方法に関する。本発明はまた、このような方法に用いるキットに関する。
【0008】
本明細書で用いられる「核酸配列」なる語は、本発明の文脈において、核酸上の配列を意味する。核酸は、とりわけ、RNA、DNA、cDNA(相補的DNA)、LNA(ロックド核酸)、mRNA(メッセンジャーRNA)、mtRNA(ミトコンドリアRNA)、rRNA(リボソームRNA)、tRNA(トランスファーRNA)、nRAN(核内RNA)、siRNA(低分子干渉RNA)、snRNA(低分子核内RNA)、snoRNA(核小体低分子RNA)、scaRNA(カハール体低分子RNA)、マイクロRNA、dsRNA(二本鎖RNA)、リボザイム、リボスイッチ、ウィルスRNA,dsDNA(二本鎖DNA)、ssDNA(一本鎖DNA)、プラスミッドDNA、コスミドDNA、染色体DNA、ウィルスDNA、mtDNA(ミトコンドリアDNA)、nDNA(核内DNA)、snDNA(低分子核内DNA)等、または試料中のバルク核酸と区別されうる他のクラス或いはサブクラスの核酸である。
【0009】
本明細書で用いられる「プローブ」なる語は、他の核酸と結合できる核酸を意味する。
本明細書で用いられる「組織」なる語は、ヒト、動物または植物のいずれかの組織または液体を意味し、乳房、前立腺、血液、血清、脳脊髄液、肝臓、腎臓、胸、頭及び首、咽頭、甲状腺、すい臓、胃、大腸、結腸直腸、子宮、頚、骨、骨髄、精巣、脳、神経組織、卵巣、皮、及び肺を含むが、これらに限定されない。
本明細書で用いられる「プローブセット」なる語は、特異的な位置すなわち配列において核酸分子と相互作用しうる3つまたはそれ以上の物質のセットを意味する。
ここで、「標識」とは、プローブと共有結合または非共有結合して、光学的または他の物理的手段によって検出されうる信号を与えることができる成分を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初の実施態様では、本発明は、以下の工程、
(i)少なくとも一つの核酸分子を含む試料を準備する工程、
(ii)増幅反応を行うための試薬を準備する工程、ここで、試薬は、少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、さらに好ましくは少なくとも6つのプローブを含み、さらに、
(a)各プローブは、核酸配列に特異的であり、
(b)少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのプローブは、同じ標識を持ち、そして
(c)同じ標識を持つ各プローブの融解温度(Tm)は、同じ標識を持つ他のプローブの融解温度に対して、加熱によりプローブが標的の核酸配列から解離する際には、2℃より大きい差を有する、
(iii)反応において核酸配列を増幅する工程、
(iv)標識されたプローブが核酸配列に結合したか否かを測定することにより増幅された核酸を検出する工程、及び
(v)それぞれの所与の標識されたプローブが、それが結合した核酸配列から解離する温度を検出する工程、
を含む、反応において核酸配列を同時に増幅及び検出する方法に関する。
【0011】
本発明の方法の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも4つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも4つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
【0012】
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも5つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも5つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも5つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0013】
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも6つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも6つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも6つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0014】
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも7つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも7つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも7つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0015】
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも8つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも8つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
本発明の方法の他の好ましい実施態様では、試薬は、少なくとも8つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0016】
プローブの標識は、好ましくは蛍光標識である。
2またはそれ以上の蛍光標識は、それらの最大発光波長が10nm以内、好ましくは5nm以内である場合は、同じ標識と仮定する。最も好ましくは、同じ蛍光標識は、同じ蛍光色素である。
同じ蛍光標識を持つプローブは、それらが融解点によって区別できるように、異なった融解温度(Tm)を有するのが好ましい。
【0017】
上記したように、同じ標識を持つプローブは、少なくとも2℃の、好ましくは少なくとも約5℃の、さらに好ましくは約5℃から10℃の間の、もっと好ましくは約5℃から8℃の間の、さらに好ましくは約5℃から7℃の間の、よりもっと好ましくは約5℃から6℃の間の、異なった融解温度を有する。本明細書で、温度の数値に関する文脈においては、「約」なる語は、その温度数値の±10%の違いを含むと理解されるべきである。
【0018】
本発明は、ある特定の実施態様では、以下の工程、(i)少なくとも一つの核酸分子を含む試料を準備する工程、(ii)増幅反応を行うための試薬を準備する工程、ここで、試薬は、少なくとも2つのプローブセットを含み、さらに、(a)各プローブセットは、各プローブセットは少なくとも3つのプローブからなり、(b)各プローブは、核酸配列に特異的であり、(c)所定のプローブセット中の各プローブは、異なる標識を持ち、(d)所定のプローブセット中のすべてのプローブは、加熱によりプローブがターゲットの核酸配列から解離する際には、類似の、好ましくは同一の融解温度(Tm)を有する、(iii)反応において核酸配列を増幅する工程、(iv)標識されたプローブが核酸配列に結合したか否かを測定することにより増幅された核酸を検出する工程、及び(v)それぞれの所定の標識されたプローブが、結合した核酸配列から解離する温度を検出する工程、を含む、反応において核酸配列を同時に増幅及び検出する方法に関する。
さらなる実施態様では、本発明の方法は、少なくとも3つのプローブセットを含み、そこでは、各プローブセットは少なくとも3つのプローブからなる。
【0019】
本発明をより明瞭に説明するために、図1を参照する。本発明に従ったプローブセットは、少なくとも3つのプローブを含む。あるプローブセットは、すべてのプローブが共通の標識を共有しているとして見えるが、また、すべてのプローブが共通の融解温度(Tm)を有しているとして見える。理想的には、プローブセット中のプローブは、同じ標識または異なった融解温度をもつ他のプローブと区別できない標識を持つ。同一または非常に似ている融解温度を持つプローブセット中のプローブは、異なった標識を持つべきである。
【0020】
当業者は、試薬は通常、例えば、増幅用酵素、緩衝液、ヌクレオチド等を含むと理解する。もちろん、これは増幅のタイプに依存する。
発明者は、例えば20のテンプレートを用いた、多重増幅反応を実施できる方法を開発した。一つの実施態様において、5つの異なった標識が用いられ、共通の標識を共有するすべてのプローブは、僅かに異なった融解温度を持つ。一方、共通の融解温度を共有するすべてのプローブは、異なった標識を持つ。増幅中または増幅後に、標識及び融解温度を検出することにより、発明者は、一つのチューブ中で、例えば、20テンプレートを分析できる手段を初めて提供した。
【0021】
本発明の一般原理をさらに説明するために図1を参照願いたい。ここで、行1のすべてのプローブは、共通の標識を共有する。行1のすべてのプローブは、融解温度が異なる。列Dのすべてのプローブは、所与の融解温度を共有する。行1のプローブは緑の標識をもち、そして、標識が異なっている列Dのプローブは共通の55℃という融解温度を共有すると仮定した場合、もし、55℃の融解温度において緑のシグナルが検出された場合は、プローブ「4」に対するテンプレートが反応において存在するか否かを決定することができるであろう。
【0022】
原則として、「標識されたプローブが核酸配列に結合しているか否かを決定することにより増幅された核酸を検出すること」、及び「所与の標識された各プローブが、それが結合した核酸配列から解離する温度を検出すること」は、所与の反応の終わりまたは反応中に行いうる。
【0023】
種々の増幅方法が用いられうるが、これらは例えば、ローリングサークル増幅(例えば、リューら、「ローリングサークルDNA合成:DNAポリメラーゼの効率的なテンプレートとしての小環状オリゴヌクレオチド」ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ118号、1587−1594頁、1996年)、等温増幅(例えば、ウォーカーら、「等温の鎖置換増幅、インビトロDNA増幅技術」、ヌクレイック・アシッド・リサーチ、20巻7号、1691-6ページ、1992年)、リガーゼ連鎖反応(例えば、ランデゲレンら、「リガーゼ仲介遺伝子検出技術」、サイエンス、241号、1077-1080ページ、1988年、または ビートマンら、「リガーゼ連鎖反応(LCR)−概説及び用途」PCRメソッズ・アンド・アプリケーションズ(コールドスプリングハーバーラボラトリィプレス、コールドスプリングハーバーラボラトリィ、ニューヨーク、1994年、S51〜S64ページ)。しかしながら、ポリメラーゼ連鎖反応増幅が好ましい。
【0024】
反応がポリメラーゼ連鎖反応の場合は、「標識されたプローブが核酸配列に結合しているか否かを決定することによる増幅された核酸の検出」及び「所与の標識された各プローブが、それが結合した核酸配列から解離する温度の検出」は、各反応サイクルの後、1サイクルの後、2以上のサイクルの後、間隔を空けて、またはPCR反応が完了した後に行いうる。
【0025】
PCR反応は、10から100「サイクル」の、DAN分子の変性及び合成からなりうる。好ましい実施態様では、温度サイクリング増幅反応において変性が起こる温度は、約90℃から95℃より高い温度、より好ましくは92〜94℃の範囲である。好ましい温度サイクリング増幅法は、約10から約100サイクル、より好ましくは約25から約50サイクルの、そして約90℃から95℃より高い、より好ましくは92〜94℃のピーク温度の、ポリメラーゼ連鎖反応を含む。好ましい実施態様では、PCR反応は、DNAポリメラーゼIを用いて行われ、もし(a)ターゲット配列の末端が十分に詳細に知られており、それらにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーが合成でき、そして(b)連鎖反応を開始するために少量のターゲット配列が入手できるのであれば、少なくとも一つの核酸配列が反応工程の数に対して指数関数的な量で産生される。連鎖反応の産生物は、用いた特異的なプライマーの末端に対応する終端を持つ別々の核酸二本鎖である。いずれの起源の核酸も、もし、それが所望のターゲット核酸配列を含んでいるかまたは含んでいると考えられれば、精製したまたは非精製の形態で、開始核酸として用いることができる。従って、本発明の工程は、例えば、一本鎖または二本鎖のDNAを用いることができる。加えて、それぞれの一本差を含むDAN−RNAハイブリッドも用いることができる。これらの核酸の混合物もまた用いることができ、或いは、同じまたは異なったプライマーを用いた先の増幅反応から産生された核酸を利用することもできる。増幅された核酸は、好ましくはDNAである。増幅されるターゲット核酸配列は、単に大きな分子の画分であることもでき、又、ターゲット配列が完全な核酸配列を構成することができるように、最初は別々の分子として存在することもできる。増幅されるターゲット配列は、精製された形で存在することは必要ではなく、その組織が特定の生物試料の非常に微量な画分を構成しうる特定の動物のためには、複合混合物の微量の画分でもまた核酸配列の一部分でもよい。開始核酸は、同一または異なる、1より大きい所望のターゲット核酸配列を含みうる。従って、本発明の方法は、同一または異なる核酸分子上の位置する複数のターゲット核酸配列を同時に増幅するために有用である。核酸は、いずれの供給源からもうることができ、プラスミド、クローン化DNA、及びバクテリア、酵母、ウィルス、及び植物や動物等の高等生物を含むいずれかの供給源から得られるDNAを含む。DNAは、例えば、血液または他の液体、または絨毛膜絨毛や羊水細胞等の組織物質から、種々の技術、例えば、マニアティスら、モレキュラークローニング、ラボラトリィマニュアル(ニューヨーク、コールドスプリングハーバーラボラトリィ、280-281ページ、1982年)に記載された技術を用いて、抽出することができる。加えて、ゲナコテムPCR(Geneco's Tem-PCR)技術とルミネックス(Luminex's)xMAP技術を組み合わせたテンプレックス(Templex)技術を用いることができる。
【0026】
本発明のアッセイは、座位特異的プライマーを用いる。オリゴヌクレオチドプライマーは、任意の適した方法、例えば、ホスホトリエステル及びホスホジエステル法またはそれらを自動化したもの、を用いて調整しうる。自動化された態様においては、ジエチロホスホラミタイド(diethylophosphoramidites)が、開始物質として用いられ、ボーケージら、テトラヘドロンレターズ(Tetrahedron Letters)、22巻、1859-1862ページ、1981年に記載の方法により合成されうる。この文献は、参照することにより本明細書の一部である。改変固相支持体上でのオリゴヌクレオチドの合成法の一つは、米国特許第4458006号に記載されており、これは、参照することにより本明細書の一部である。生物供給源(例えば、制限酵素消化物)から単離されたプライマーを用いることもできる。好ましいプライマーは、約15〜100,より好ましくは約20〜50,最も好ましくは約20〜40塩基の長さをもつ。本発明の方法のプライマーは、ターゲット配列を含む領域に及ぶことが必須である。ターゲット核酸配列を、テンプレートとしての配列を含む核酸を用いて増幅する。もし、核酸が2つの鎖を含む場合は、テンプレートとして用いる前に、分離工程によりまたはプライマー伸長産物の合成と同時に、核酸の鎖を分けることが必要である。鎖分離は、物理的、化学的または酵素的な手段を含む、任意の適した変性方法により達成できる。核酸の鎖を分離する一つの物理的手段は、完全に(>99%)変性するまで核酸を加熱することを含む。典型的な加熱変性は、約80℃〜105℃、好ましくは約90℃〜約98℃、より好ましくは93℃〜95℃の温度範囲で、約1〜10分の時間範囲での加熱を含む。等温増幅の場合は、鎖分離はまた、ヘリカーゼとして知られた酵素分類の酵素、またはヘリカーゼ活性を持ちDNAを変性すると知られている酵素RecAにより誘導される。ヘリカーゼを用いた核酸の鎖を分離するのに適した反応条件は、コールド・スプリング・ハーバー・シンポジウム・オン・クオンティタティブ・バイオロジー、43巻、「DNAレプリケーションとリコンビネーション」(ニューヨーク、コールドスプリングハーバーラボラトリィ、1978年)に記載されており、そして、RecAを用いる技術は、シー・ラディング、アニュアル・レビュー・オブ・ジェネティクス、16号、405-37ページ(1982年)で論評されており、これは、参照することにより、本明細書の一部である。
【0027】
合成は、任意の適当な方法を用いて達成できる。一般には、合成は、緩衝水溶液中で起こる。好ましい実施態様では、緩衝液pHは、約7.5〜8.9である。好ましくは、過剰モル濃度のオレゴヌクレオチドプライマー(クローン化核酸に対して、通常約1000:1/プリマ-:テンプレート、及びゲノム核酸に対して、通常約106:1/プライマー:テンプレート)を、分離されたテンプレート鎖を含む緩衝液に添加する。しかし、本発明の方法がいくつかの用途に用いられる場合は、相補鎖の量は判らないかも知れないので、相補鎖の量に対するプライマーの量が正確に決定できないということが理解される。しかしながら実際的問題として、増幅される配列が複雑な長鎖の核酸鎖の混合物中に含まれる場合は、添加されるプライマーの量は、一般には、相補鎖(テンプレート)の量に対して過剰モル濃度である。本発明の方法の効率を改善するためには、大過剰モル濃度が好ましい。
【0028】
ヌクレオチド三リン酸、好ましくはdATP、dCTP、dGTP、dTTP及び/またはdUTPもまた、適当な量で、合成混合物に添加される。ヌクレオチドの好ましいモル濃度は、下記の通り、0.025mM〜1mM、好ましくは0.05〜0.6mM、最も好ましくは0.1〜0.5mMである。
【0029】
本発明に従ったポリメラーゼは、サーマス属(Thermus)、アキフェックス属(Aquifex)、サーモトガ属(Thermotoga)、サーモクリデス属(Thermocridis)、ヒドロゲノバクター属(Hydrogenobacter)、 サーモスシンセコッカス属(Thermosynchecoccus)及びサーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)の属グループから選択されるのが好ましい。
本発明に従ったポリメラーゼは、アキフェックスエオリカス属(Aquifex aeolicus)、アキフェックスピョゲン属(Aquifex pyogenes)、サーマスサーモフィラス属(Thermus thermophilus)、サーマスアクアティカス属(Thermus aquaticus)、サーモトガネアポリタナ属(Thermotoga neapolitana)、サーマスパチフィカス(Thermus pacificus)、サーマスエッゲルトソニィ(Thermus eggertssonii)及びサーモトガマルタイム属(Thermotoga maritima)の微生物のグループから選ばれるのが好ましい。
【0030】
ポリメラーゼは、Taqポリメラーゼであることが最も好ましい。しかしながら、以下により詳細に概説されるように、いくつかの実施態様では、ポリメラーゼは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を持つことが好ましい。他の実施態様では、ポリメラーゼは、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くことが好ましい。大部分の実施態様では、ポリメラーゼは、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を欠くことが好ましい。
【0031】
一つの実施態様では、ウラシル残基がPCR反応の間に取り込まれる。ウラシルDNAグリコシラーゼ(ウラシル−N−グリコシラーゼ)は、大腸菌ung遺伝子の産物であり、クローン化され、配列決定され、そして大腸菌中で発現される。ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)は、DNA糖−ホスホジエステル主鎖を破壊することなく、DNA(一本鎖及び二本鎖)からウラシル残基を除き、従って、ハイブリダイゼーションターゲットまたはDNAポリメラーゼのためのテンプレートとしてのそれらの使用を防ぐ。得られた脱塩基の部位は、影響を受けやすく、上昇した温度で加水分解切断される。従って、ウラシル塩基の除去は、通常は、DNAの断片化をもたらす。当業者は、混入を避けるために、ウラシルDNAグルコシラーゼをどのように用いるかを知っている。同様に、酵素とウラシルヌクレオチドは共に、本発明に従ったキット中で用いることができる。
【0032】
理想的には、第一及び第二またはさらなるプローブセット中のプローブの標識は、蛍光標識であり、非常に類似した発光波長を有する。つまり、理想的には、標識は、検出装置により検出されうる波長調整を変更することなしに検出しうる。第一、第二及び第三またはさらなるプローブセット中のプローブの標識は同一であることが好ましい。
【0033】
同じ標識をもつプローブは、所与の装置での融解点によって区別できるように、融解温度(Tm)が異なることが好ましく、典型的には、0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃より大きい融解温度の差を持つ。差は、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、4℃、5℃より大きいことが好ましい。
【0034】
一つの実施態様では、二本鎖セグメントの融解転移は、二本鎖核酸特異的(dsNAS)な色素の蛍光強度をモニターすることによって決定することができる。一つの実施態様では、二本鎖核酸特異的色素は、SYBR(登録商標)グリーン1、SYBR(登録商標)ゴールド、臭化エチジウム、臭化プロピジウム、Picoグリーン、ヘキスト33258、YO−PRO−I及びYO−YO−I、SYTO(登録種商標)9、LCグリーン(登録商標)、LCグリーン(登録商標)プラス+、エバグリーン(商標)からなる群より選ばれる。これらの飽和色素は、PCRの阻害を最小化できる一方、増幅中または増幅後に、DNAに対して十分に飽和した状態で存在できる。たとえば、PCRと両立する最大濃度で、二本鎖DNA結合色素は、少なくとも50%の飽和量を持つ。他の実施態様では、飽和量は少なくとも80%である。また他の実施態様では、飽和量は少なくとも99%である。飽和量は、飽和濃度における同じ色素の蛍光に対する蛍光パーセントであると理解される。飽和濃度は、所定の濃度の二本鎖DNAの存在で可能な最も高い蛍光強度を提供する濃度である。これらの色素は、特定の核酸反応を妨害することなしに有意に高い濃度で存在できるので、一本鎖核酸と二本鎖核酸の高次構造をモニターするのに特に有用でありうる。
【0035】
好ましい反応は、ポリメラーゼ連鎖反応である。
プローブは、TaqManプローブ、分子ビーコン(molecular beacon)プローブ、スコーピオン(scorpion)プローブ及びライトサイクラー(light cycler)プローブからなる群から選択されるのが好ましい。増幅産物それ自体の検出は、以下のプローブ、TaqManプローブ、分子ビーコンプローブ、スコーピオンプローブ及びライトサイクラープローブ、ハイブリダイゼーションプローブ、置換プローブ、及び配列特異的なプローブ型の他のタイプのいずれかを用いることにより達成されうる。
【0036】
TaqMan(登録商標)アッセイは、蛍光標識プローブ(FAM(商標)標識MGB)を切断するTaqDNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用する。
【0037】
分子ビーコンは、アテムアンドループ(stem-and-loop)構造を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブである(図2)。ループは、ターゲット配列に相補的なプローブ配列を含み、ステムは、プローブ配列のいずれかの端に位置する相補的なアーム配列のアニーリングによって形成される。フルオロフォアは、一つのアームの端に共有結合され、そしてクエンチャーは、他のアームの端に共有結合されている。分子ビーコンは、溶液中でそれらが遊離しているときは蛍光を発しない。しかし、それらが、ターゲット配列を含む核酸鎖とハイブリダイズしたとき、それらは立体構造変化を起こし明るく蛍光を発することができる。ターゲットが存在しないときは、ステムは、一時的に電子を共有するつまりフルオロフォアが蛍光を発することをできなくする非蛍光のクエンチャーの近くにフルオロフォアを配置するのでプローブは暗い。プローブがターゲット分子と遭遇したときは、プローブは、ステムハイブリッドより安定で長いプローブ−ターゲットハイブリッドを形成する。プローブ−ターゲットハイブリッドの剛性及び長さは、ステムハイブリッドの同時の存在を排除する。結果的に、分子ビーコンは、自発的な立体構造の再構築を受け、それは、ステムハイブリッドを解離させ、そしてフルオロフォアとクエンチャーを互いに遠ざかるように動かし、蛍光を回復する。分子ビーコンは、遺伝子の増幅を行う前にアッセイ混合物に添加され、蛍光はリアルタイムで測定される。分子ビーコンは、異なった色のフルオロフォアを有するように合成でき、本発明の方法を達成できる。
得られた蛍光の色は、もしあれば、融解温度の決定と組み合わせて、病原性物質を同定できる。
スコーピオンプライマー(図3)は、プライマーがプローブに共有結合している二機能性分子である。分子はまた、フルオロフォア及びクエンチャーを含む。ターゲットが存在しないときは、近くのクエンチャーがフルオロフォアによって発せられる蛍光を吸収する。スコーピオンPCR反応中、ターゲットが存在しているときは、離れたフルオロフォア及びクエンチャーは、発光する蛍光の増加をもたらす。蛍光は、反応チューブ中で検出し測定できる。
【0038】
ライトサイクラーFRETプローブ系は、一本鎖蛍光標識オリゴヌクレオチドの対である。プローブ1(ドナープローブ)は、その3’末端がドナー蛍光(一般にはフルオレセイン)によって標識され、プローブ2(アクセプタープローブ)はその5’末端が4つの利用可能なフルオロフォア(レッド610,640,670または705)のいずれかで標識されている。プローブ2の自由な3’ヒドロキシル基は、リン酸基(P)でブロックされTaqDNAポリメラーゼ伸長を阻止していなければならない。両プローブ上のドナー及びアクセプターフルオロフォア間の立体問題を避けるために、それらは1〜5nt(4〜25オングストローム距離)の空間を取り、2つのプローブは互いに離れているべきである。リアルタイム定量PCR反応を行う前に、チューブ内部の蛍光バックグランドを観察することができる。
リアルタイム定量PCRのアニーリング工程中、PCRプライマー及びライトサイクラープローブは、それらの特異的ターゲット領域にハイブリダイズして、ドナー色素がアクセプター色素に近接するようになる。ドナー色素が、ライトサイクラー機器(hy1)からの光によって励起されると、エネルギーが、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によって、ドナーからアクセプター色素に転移する。エネルギー転移は、機器(hy1)から発せられる光より長い波長での、アクセプター色素の発光(hy2)を引き起こす。アクセプターフルオロフォアの発光波長は、機器の光学ユニットで検出される。測定された蛍光シグナルの増加は、蓄積するターゲットDNAの量に直接比例する。
【0039】
その他のプローブは、エクリプスプローブ(Eclipse Probe)(Epoch,Nanogen)、置換プローブ(チェンら、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ、2004年、32巻、7号)、プレイアデスプローブ(pleiades probe)(ヌクレイック・アシッド・リサーチ、2007年、35巻、5号、e30(オンライン版))、及びプレクサー系(plexor system)(Promega)である。もちろん、他のプローブ系も、同様に本発明に含まれる。
【0040】
本発明の一つの実施態様では、TaqManプローブが、融解点分析のために挿入色素と組み合わされる。
他の実施態様では、TaqManプローブは、融点分析のためにハイブリダイゼーションプローブと組み合わされ、特別な実施態様においてはTaqManプローブがハイブリダイゼーションプローブである。他の実施態様では、TaqManプローブは、ハイブリダイゼーションプローブではなく、別のオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションプローブとして働く。
【0041】
図4は、非常に好ましい実施態様を示している。ここで、反応は、ハイブリダイゼーションプローブ及びTaqManプローブの両者を含む。ここで、(a)各プローブセットは、例えば、少なくとも2つのプローブからなり、プローブはハイブリダイゼーションプローブである、(b)各プローブは、核酸配列に特異的である、(c)所与のプローブセット中の各ハイブリダイゼーションプローブ(例えば、図4中のBHQ1、BHQ2、BHQ3)は、異なる標識をもつ(例えば、図1の列A参照)、(d)所与のプローブセット中のすべてのプローブは、加熱によりターゲット核酸配列から解離するときに、類似の、好ましくは同一の融解温度(Tm)を持つ(例えば、図1の列A参照)。反応において、核酸配列が増幅され、増幅された核酸が検出され、そして、各所定の標識されたプローブが、結合している核酸配列から解離する温度が決定される。この実施態様では、必須ではないが、ハイブリダイゼーションプローブの融解点は、増幅のためのプライマーの融点より低いことが好ましい。
一つの実施例を図5に示す。PCR反応中、所与の融解点(ハイブリダイゼーションプローブQ1のための融解点)において、ハイブリダイゼーションプローブQ1は、DNA鎖から解離する。ハイブリダイゼーションプローブは、クエンチャーを持つ。いったん解離されると、下流のTaqManプローブが、もはや消光されない蛍光標識から生じるシグナルを引き起こす。融解点は、シグナルによって判る(融解点、mp1)。標識は判っている(FL1)。従って、このハイブリダイゼーションプローブが、例えば、病原体1(p1)に対して特異的であったか、従って病原体1が反応中に存在したかを決定することができる。同時に、TaqManプローブは、PCR反応中、オンライン定量を可能とする。
【0042】
反応は、二本鎖核酸特異的な色素をさらに含むのが好ましい。二本鎖特的な色素を用いた場合は、色素は、SYBR(登録商標)グリーン1、SYBR(登録商標)ゴールド、臭化エチジウム、臭化プロピジウム、Picoグリーン、ヘキスト33258、YO−PRO−I及びYO−YO−Iの群から選ばれるのが好ましい。SYBR(登録商標)グリーン1が特に好ましい。
理想的には、本発明に従って、二本鎖核酸特異的色素は、プローブ標識と分光的に区別できる。
【0043】
理想的には、標識は蛍光標識であり、標識は、FAM(5−または6−カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、FITC、IRD−700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、HEX、TET、TAMRA、JOE、ROX、BODIPY TMR、オレゴングリーン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テキサスレッド、ヤキマイエロー(Yakima Yellow)、アレクシアフルオレ(Alexa Fluor)PET、バイオサーチブルー(商標)、マリーナブルー(登録商標)、ボセルブルー(Bothell Blue)(登録商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)、350 FAM(商標)、SYBR(登録商標)グリーン 1、フルオレセイン、エバグリーン(商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)488 JOE(商標)、VIC(商標)、HEX(商標)、TET(商標)、カルフルオレ(CAL Fluor)(登録商標)ゴールド540、ヤキマイエロー(登録商標)、ROX(商標)、カルフルオレ(登録商標)レッド610、Cy3.5(商標)、テキサスレッド(登録商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)、568 Cy5(商標)、クエーサー(Quasar)(商標)670、ライトサイクラー(Light Cycler)レッド640(登録商標)、アレクシアフルオレ633 クエーサー(商標)705、ライトサイクラーレッド705(登録商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)680、SYTO(登録商標)9、LCグリーン(登録商標)、LCグリーン(登録商標)プラス+、エバグリーン(商標)の群から選ばれる。
【0044】
本発明の方法はまた、融解曲線分析を、ターゲットの識別を可能とする一本鎖の二重標識プローブを用いたPCR反応の終わりに行う言う基本原理に基づいている。プローブの加水分解を避けるために、TaqManリアルタイムPCRの伸長工程の間に古典的に行われているように、プローブの融解点(Tm)は、PCRプライマーのTmより10℃低い温度を選択した。PCR反応の終わりにプローブをハイブリダイズし、そして蛍光を連続的にモニターしながら、混合物を、段階的に温度を上げていった。典型的なTaqManリアルタイムPCRと同様に、プローブによる蛍光シグナルの産生は、フォルスター共鳴エネルギー転移(FRET)現象に基づく。
しかしながら、そしてTaqManリアルタイムPCRで起こることとは逆に、Taqポリメラーゼによるプローブ分子の加水分解は、この実施態様では、全くまたはほんの部分的しか含まれない。むしろ、手順は、プローブがターゲットから離れ、ランダムな一本鎖構造に到達するときに観察されるFRETの減少に依存する。二重標識プローブのレポーターとクエンチャー分子間の平均距離は、プローブがターゲット配列とのハイブリッドから遊離されたときにより短くなる。FRET効果は、この距離の6乗に反比例するので、蛍光発色の違いは、プローブのハイブリダイズした構造と融解した構造の間で容易に検出できる。一般的図式を図6に示す。ここで、蛍光の変化が、異なった反応温度に対してサイクル毎に認められる。本発明の方法の好ましい実施態様では、用いたポリメラーゼは、5’−3’エクソヌクレアゼーゼ活性を欠いている。
好ましい実施態様では、非対称のプライマー濃度が用いられる。このことは、プローブに結合するDNA鎖を産生するプライマーを他のプライマーより高い濃度で添加するようにして、各ターゲットのプライマーの比を変更することによって行われる。
【0045】
本発明に従った方法の他の実施態様では、(a)標識されたプローブは、ハイブリダイゼーションプローブ及びTaqManプローブからなる群であり、(b)TaqManプローブは、標識を持ち、(c)標識は蛍光標識であり、(d)TaqManプローブは、さらにクエンチャーを含み、(e)任意に、ハイブリダイゼーションプローブは、TaqManプローブに結合した標識の蛍光を消光する追加のクエンチャーを持ち、(f)TaqManプローブ及びハイブリダイゼーションプローブは、両プローブがそれぞれの配列に結合する際には、ハイブリダイゼーションプローブ上に存在するクエンチャーは、少なくとも部分的に、TaqManプローブ上の標識の蛍光を消光するように、隣接する核酸配列に結合できる。しかし、ハイブリダイゼーションプローブは、TaqManプローブに結合した標識の蛍光を消光できる追加のクエンチャーを有することが好ましい。
【0046】
この実施態様では、同一の標識を持つプローブは、融解温度(Tm)の異なるハイブリダイゼーションプローブとグループを形成し、それらは、例えば、少なくとも0.1℃、0.5℃、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃の違いで区別されうる。0.5℃、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、4℃、5℃を超えて異なるのが好ましい。最も好ましくは、約5℃である。この実施態様ではまた、ハイブリダイゼーションプローブの融解温度(Tm)が、TaqManプローブの融解温度(Tm)より低いのが好ましい。従って、反応において、アニーリングが起こると、温度が上昇し、ハイブリダイゼーションプローブはその相補鎖から解離し、Tmに達したときに最初のシグナルを生じる。ついで、ポリメラーゼがTaqManプローブに近づき、そして第二のTaqManシグナルを生じる。
【0047】
この実施態様では、ハイブリダイゼーションプローブは、ポリメラーゼが最適活性を示す温度より低い温度の融解温度(Tm)を有するのが好ましい。このことは、ハイブリダイゼーションプローブが解離し、ポリメラーゼが自由にTaqManプローブへ近づけるようにする。本発明の方法は、理想的には、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を示すポリメラーゼを用いることは、明らかである。
【0048】
リアルタイムPCRには、温度サイクラー、コンピューター、蛍光励起と発光回収のための光学部、及びデータ取得と分析ソフトウェアからなる機器のプラットフォームが必要である。これらの機器は、いくつかの製造会社から入手できるが、試料容量(あるものは96ウェルまたは384ウェルの標準プレート型であり、他のものはより少ない試料を処理しまたは特別のガラスキャピラリーチューブを要求し、そしてあるものは、ブロック形状であり、他のものは円状である)、励起方法(あるものはレーザーを用い、他のものは、広いスペクトル光源を用いていており、調節可能なフィルターまたは1またはそれ以上のダイオードを持つ)、検出(あるものはカメラを用い、他のものは、光電子増倍管または他のタイプの光検出システムを用いる)及び全体として感度が異なる。また、どのようにソフトウェアがデータを処理するかについて、プラットフォーム特異的な違いもある。原則として、2またはそれ以上の検出チャンネルを内部に持つ、入手可能な機器が、本発明の方法に適している。
【0049】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、1またはそれ以上の核酸分子とハイブリダイズできる、少なくとも4つの、好ましくは少なくとも5つの、より好ましくは少なくとも6つのプローブを含むキットに関し、ここで、
a.各プローブは、核酸配列に特異的であり、
b.少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つのプローブは、同じ標識を持ち、そして
c.同じ標識を持つ各プローブの融解温度(Tm)は、同じ標識を持つ他のプローブの融解温度に対して、加熱によりプローブが標的の核酸配列から解離する際には、2℃より大きい差を有する。
【0050】
好ましい実施態様では、キットは、少なくとも4つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも4つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
【0051】
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも5つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも5つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも5つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0052】
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも6つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも6つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも6つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0053】
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも7つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも7つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも7つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0054】
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも8つのプローブを含み、ここで少なくとも2つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも8つのプローブを含み、ここで少なくとも3つのプローブは同じ標識を持つ。
他の好ましい実施態様では、キットは、少なくとも8つのプローブを含み、ここで少なくとも4つのプローブは同じ標識を持つ。
【0055】
2またはそれ以上の蛍光標識は、それらの最大発光波長が10nm以内、好ましくは5nm以内である場合は、同じ標識と仮定する。最も好ましくは、同じ蛍光標識は、同一の蛍光色素である。
【0056】
上記したように、同じ標識を持つプローブは、少なくとも2℃の、好ましくは少なくとも約5℃の、さらに好ましくは約5℃から10℃の間の、もっと好ましくは約5℃から8℃の間の、よりもっと好ましくは約5℃から7℃の間の、よりもっと好ましくは約5℃から6℃の間の、異なった融解温度を持つ。
【0057】
特定の実施態様では、本発明は、ストリンジェントな条件下で、1またはそれ以上の核酸分子とハイブリダイズできる、少なくとも6つのプローブを含むキットに関し、ここで、a)少なくとも3つのプローブの第一のグループは第一の標識を持ち、このグループのすべてのプローブは、融解温度が異なり、そしてb)少なくとも3つのプローブの第二のグループは第二の標識を持ち、このグループのすべてのプローブは、融解温度が異なる。
【0058】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、1またはそれ以上の核酸分子とハイブリダイズできる、少なくとも9つのプローブを含むキットに関し、ここで、(a)少なくとも2つのプローブの第一のグループは第一の標識を持ち、このグループのすべてのプローブは、融解温度が異なり、(b)少なくとも2つのプローブの第二のグループは第二の標識を持ち、そして、(c)少なくとも2つのプローブの第三のグループは第三の標識を持ち、このグループのすべてのプローブは、融解温度が異なり、そして少なくとも2つのプローブの少なくとも第三のグループは第三の標識を持ち、このグループのすべてのプローブは、融解温度が異なる。もちろん、発明はまた、より多くのプローブセット及び/またはより多くのプローブを持つキットに関する。
【0059】
異なる融解温度(Tm)を持つプローブは、融解温度が、少なくとも、0.5℃、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃違う。融解温度は、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、4℃、5℃より異なるのが好ましい。理想的にはプローブは、融解温度が、約5℃異なる。理想的には、同じ標識を持つプローブは、融解温度(Tm)の差の間隔で固定され、融点分析、例えば5℃の融点分析によって、確実に区別できるように選択される。このような実施態様では、例えば、フルオレセイン標識されたプローブは、例えば、40℃、45℃、50℃及び55℃の融解温度(Tm)を持つであろう。
本発明のキットは、緩衝液、ヌクレオチド及び1またはそれ以上の酵素、例えばポリメラーゼをさらに含むことができる。
本発明のキットは、プレミックスとして使用することもでき、このときは、使用者はプローブの添加のみが必要である。
【0060】
本発明のプライマー及びプローブは、種々のターゲット、例えば疾患マーカー、病原体、法医学マーカーまたは増幅によって対象とできる他のターゲットに対して特異的でありうる。本発明はとくに病原体の分析に適している。最も普通のバクテリア疾患は、バクテリアである結核菌によって引き起こされる結核であり、それにより、殆どがサハラ以南のアフリカであるが年に約2百万人が死んでいる。病原体バクテリアは、他の世界的に重要な疾患、例えば、肺炎(バクテリア、例えば、連鎖状球菌やシュードモナス菌によって引き起こされる)や食中毒(赤痢菌、カンピロバクター、サルモネラ菌によって引き起こされる)に寄与している。病原性バクテリアはまた、例えば、破傷風、腸チフス、ジフテリア、梅毒、及びハンセン病などの感染を引き起こす。食品または水が汚染する主要な感染源の一つは、供給飲料水中または農耕地の上に、未処理の汚水を放出することであり、その結果、汚染した供給源を食べたり飲んだりした人が感染する。発展途上国では、殆どの汚水は、環境中または農耕地上に放出される。このことが、コレラ、A型肝炎、ポリオ及びロタウィルスの感染病原体の伝搬の仕方である。従って、実施態様では、プライマー及びプローブは、1またはそれ以上の病原性バクテリアに特異的である。
本発明のキットは、ヒトまたは動物の診断、食品や水の検査、法医学上の適用、または科学的目的のために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の原理を示している。例えば行1中のプローブを用いて行う反応は、すべて共通の標識を共有する。しかし、プローブの融解温度は異なる。従って、異なる融解温度により、各プローブを同定することができる。例えば、列D中のプローブは、すべて同じ融解温度を持つが、異なった標識を持つ。従って、異なった標識により各プローブを同定できる。
【図2】図2は、分子ビーコンプローブの原理を示している。分子ビーコンは、例えば、診断アッセイにおいて、アンプリコン検出プローブとして用いることができる。ハイブリダイズしていない分子ビーコンは暗いので、アッセイ中に合成されたアンプリコンの数を決定するためにプローブ−ターゲットハイブリッドを分離する必要がない。従って、それらは本発明に適しており、理想的である。分子ビーコンは、遺伝子増幅を行う前にアッセイ混合物に添加され、蛍光がリアルタイムで測定される。
【図3】スコーピオンプローブにより、一本鎖オリゴヌクレオチドを用いて、配列特異的なプライミングとPCR産物の検出が達成される。スコーピオンプローブは、非ハイブリダイズ状態では、ステム−ループ構造を維持する。フルオロフォアは、5’末端に結合しており、3’末端に結合した部分によって消光される。ステムの3’部分はまた、プライマーの伸長産物に相補的な配列を含む。この配列は、非増幅モノマーを介して特異的プライマーの5’末端に結合している。スコーピオンプライマーの伸長後に、特異的プローブ配列は、伸長したアンプリコン中の相補部分に結合でき、その結果ヘアピンループが広がる。このことによって、蛍光が消光されるのが妨げられ、シグナルが観察される。
【図4】図4は、本発明の一つの好ましい実施態様を示している。ここで、2つのプローブが、各ターゲット配列のために反応中に存在する。最初のハイブリダイゼーションプローブは、標識、例えば、隣接するTaqManプローブによって消光される蛍光標識を持って存在する。融解温度に達したとき、ハイブリダイゼーションプローブは、それが結合している鎖から解離する。その結果、蛍光標識は、もはや消光されなくなり、シグナルを生じる。
【図5】図5は、本発明の一つの好ましい実施態様を示している。融解温度mp1における蛍光シグナルFL1は、反応中にターゲット配列p1が存在することを示している。
【図6】図6は、サイクル並びにPCRを通じて変化する、一本鎖の二重標識されたプローブの蛍光シグナルの強度を示している。ターゲットに結合した時にシグナルは強い。解離したときにシグナルは弱い。また、シグナルは、テンプレート量の増加によって、反応の終わりに向かって強くなる。
【図7】図7は、本発明のワークフローを示している。パネルA中に、図1で既に記載した本発明の好ましい実施態様を示す。反応は、プローブを用いて行われ、例えば、行1中のプローブは、すべて共通の標識を共有する。しかし、プローブの融解温度は、上記パネルAに示すように、約60℃から約80℃の範囲において、約5℃異なる。所与のプローブ融解温度は、典型的なPCRパラメーターとよく適合するので、プローブシグナルもまたリアルタイムPCRで検出されるときは、約60℃(約は、約±10%の差を意味する)から約80℃の範囲が好ましい。図の例中において、ターゲット22が試料中に含まれる。パネルBは、多重アッセイのリアルタイムPCRの結果を、ターゲット22(黒丸で示した)が試料中に含まれる場合を例として模式的に示しており、ターゲット22のプローブ上に含まれる標識を検出する検出チャンネル中の増加する増幅プロットが注目される。リアルタイムPCRデータの取得は、光学段階で行われるが、本発明の方法を行うためには必須ではない。図1C中、多重チャンネルの融解カーブ実験は、十分な産物が存在しシグナルを生じる反応段階において行われる。好ましい実施態様では、このことは、反応の定常状態で行われる。多重チャンネル融解曲線分析を行うことによって、異なった融解温度により、各プローブを同定することが可能となる。列Dのプローブは、例えば、すべて同一の融解温度をもつが、異なった標識を有する。従って、異なった標識により各プローブを同定することが可能となり、多重チャンネル融解曲線分析が本発明の中心的な要素となる、示された融解ピークは、dF/dTシグナルを表しており、最大ピークは、それぞれのプローブの融解点として参照される。
【図8】図8は、実施例1からの、多重チャンネル融解曲線分析の結果を示す。表9に示されるテンプレートPCR条件から得られた四つ組の反応の蛍光融解曲線を示す。「緑」、「オレンジ」及び「深紅色」と印された横軸パネルは、表5で特定されたそれぞれの検出チャンネルで得られたシグナルを示す。点線の横線で区切られたデータのセットは、表9からの6つの異なったテンプレートPCR条件の結果を表し、期待された検出チャンネル中で期待されたポジティブな融解ピークシグナルのみを示し、そして期待された融解点は、ポジティブコントロール(内部標準:IC)に対して常に確かにポジティブである。得られた融解点を表11に要約する。
【図9】図9は、実施例2のポストPCR融解曲線分析の結果を示している。パネルAには、表20の実験PCR条件で得られた反応のための一本鎖反応蛍光融解ピーク(df/dT)を示す。4つの各プローブの測定された融解点をそれぞれの図の下に示し、表21に要約する。パネルBには、蛍光融解ピーク(df/dT)(左から右)が示され、最初は、Ubi及びHPRTの二本鎖、第二は、Ubi、HPRT及びHSPの三重鎖、第四(黒色枠中)は、Ubi、HPRT、HSP及びCmycの四重鎖である。4つの各プローブの測定された融解点を、それぞれの図の下に示し、表21に要約する。得られた融解点は、表21に要約する。これらのデータは、同一の標識を持ついくつかのプローブが、それらの融解点によって明らかに区別されるということを明白に示している。
【実施例】
【0062】
実施例1:多重リアルタイムPCR及びその後の蛍光標識プローブを用いた融解曲線分析のための本発明の技術的概念の実施態様
この実施例では、図7に示された技術的概念の実行可能性を示す。反応は、表7に示された如くに構成され、四つ組(4つの実験)としてセットアップされ、そして表6に示されるプロトコールに従って実施された。この目的のために表8の試薬が用いられた。20倍のプライマー混合物及び50倍のプローブ混合物の組成を、それぞれ表2及び表3に示す。プライマー及びプローブの配列を表1に示す。PCRのテンプレート核酸として、PCR産物を、ヒト白血球からのcDNA及び表1に示される各ターゲットに対するプライマー及びリバースプライマーのそれぞれを用いて産生した。PCR産物は、QiaQuick(Qiagen)PCR精製キットを用いて精製し、1:1000希釈して用いた。テンプレートを、表9に示される個々の反応に加えた:最初の場合は、「内部標準(IC)のみ」であり、Ubiテンプレートを加え、内部のポジティブコントロールとして機能させた。第二のケースでは、Ubi ICとターゲット1 Albを加えた。第三のケースでは、Ubi IC及びターゲット2 Cmycを用いた。第四のケースでは、Ubi ICとターゲット3 TBPを導入した。第5のケースでは、Ubi ICとターゲット4 GAPを添加した。第六のケースでは、Ubi ICとターゲット5 SRYをテンプレートとし添加した。
【0063】
リアルタイムPCRは、72ポジションローターを用いて、ロータージーン(RotorGene)6000PCRシステム(6チャンネル)で行った。6検出チャンネルの仕様を、それぞれのチャンネルにおいて検出されるのに適した蛍光色素の例を含めて、表5に示す。PCRサイクリング及びその後の融解曲線のパラメーターを表6に示す。
引き続き、適した装置ソフトウエアを用いて実行データを分析した。内部標準(IC)及びそれぞれのターゲットのリアルタイムPCRで観察されるCT値を、表10に示す。プローブの融解点(図8に示された融解ピークの最大)が決定された。その結果を表11に示す。四つ組の反応の、6つの異なった実験条件(表9)での観察された融解ピークを図8に示す。すべての反応が期待の結果を示した。正しい検出チャンネル中でCT値を示し、そして追加のターゲットを検出するそれぞれのプローブの期待された融解点を持つ融解ピークを示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

融解曲線のソフトウエア設定:各チューブの最適化。ソフトウエアは一つの検出チャンネルからの融解データの取得、それ故、3つの引き続く融解曲線が進み、最初に緑から、ついで、オレンジから、その後深紅チャンネルから融解データを検出。
【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
【表9】

【0073】
【表10】

【0074】
【表11】

【0075】
実施例2:FAM検出チャンネルで検出される、区別できる融解温度(Tm)をもつ異なったプローブの、多重リアルタイムPCR及びそれに引き続いての融解曲線分析による方法の技術的発想の実現
この実験では、同じ検出チャンネルで、同じ標識を持ついくつかのプローブを区別できることが証明される。反応は、表18に示された構成で、表17に示したプロトコールに従って行った。この目的のために、表18及び表19の試薬を用いた。20倍のプライマー混合物及び10μMのプローブ混合物の組成を、それぞれ表13及び14に示す。プライマー及びプローブの配列は、表12に示す。テンプレートとして、ヒト白血球のRNAから産生した10ng/RxN cDNA、及び各ターゲットに対するフォワード及びリバースプライマーを表12に示す。4つの各ターゲットについて、1回の反応、2重、3重、及び4重の反応を準備し、分析した。7つの異なった条件及び所期の結果を表20に示す。
【0076】
リアルタイムPCRを、72ポジションローターを持つロータージーン6000PCRシステム(6チャンネル)を用いて行った。6検出チャンネルの仕様を、それぞれのチャンネルでの検出に適した蛍光色素の例と共に表16に示す。PCRサイクリング及びその後の融解曲線のパラメーターを表17に示す。
引き続いて、進行データを、適した機器ソフトウエアを用いて分析した。プローブの融解点(表9に示された融解ピークの最大点)を決定した。結果を表21に示す。
【0077】
【表12】

【0078】
【表13】

【0079】
【表14】

【0080】
【表15】

【0081】
【表16】

【0082】
【表17】

融解曲線のソフトウエア設定:各チューブの最適化。ソフトウエアで一つの検出チャンネルからの融解データの取得。
【0083】
【表18】

【0084】
【表19】

【0085】
【表20】

【0086】
【表21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応において、核酸配列を同時に増幅し検出する方法であって、
(i)少なくとも一つの核酸分子を含む試料を準備する工程、
(ii)増幅反応を行うための試薬を準備する工程、ここで、試薬は、少なくとも4つのプローブを含み、さらに、
a.各プローブは、核酸配列に特異的であり、
b.少なくとも2つのプローブは、同じ標識を有し、そして
c.同じ標識を持つ各プローブの融解温度(Tm)は、同じ標識を持つ他のプローブの融解温度に対して、加熱によりプローブが標的の核酸配列から解離する際には、2℃より大きい差を有する、
(iii)反応中の核酸配列を増幅する工程、
(iv)標識されたプローブが核酸配列に結合したかを決定することにより増幅された核酸を検出する工程、及び
(v)所与の標識された各プローブが、それが結合した核酸配列から解離する温度を検出する工程、
を含む方法。
【請求項2】
プローブの標識が蛍光標識である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応増幅である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プローブが、TaqManプローブ、分子ビーコンプローブ(molecular beacon probe)、スコーピオンプローブ(scorpion probe)及びライトサイクラープローブ(light cycler probe)、ハイブリダイゼーションプローブ、及び置換プローブからなる群より選択される請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
反応がさらに二本鎖核酸特異的色素を含む、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
二本鎖核酸特異的色素がプローブ標識からスペクトル的に区別できる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
二本鎖核酸特異的色素が、SYBR(登録商標)グリーン1、SYBR(登録商標)ゴールド、臭化エチジウム、臭化プロピジウム、ピコグリーン(Pico Green)、ヘキスト33258、YO−PRO−I及びYO−YO−I、ボクスト(Boxto)、エバグリーン(Evergreen)、LCグリーン、LCグリーンプラス、及びSyto9から選択される請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
標識が蛍光標識であり、かつ標識が、FAM(5−または6−カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、FITC、IRD−700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、HEX、TET、TAMRA、JOE、ROX、BODIPY TMR、オレゴングリーン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テキサスレッド、ヤキマイエロー、アレクシアフルオレ(Alexa Fluor)PET、バイオサーチブルー(商標)、マリーナブルー(登録商標)、ボセルブルー(登録商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)、350 FAM(商標)、SYBR(登録商標)グリーン1、フルオレセイン、エバグリーン(商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)488 JOE(商標)、VIC(商標)、HEX(商標)、TET(商標)、カルフルオレ(CAL Fluor)(登録商標)ゴールド540、ヤキマイエロー(登録商標)、ROX(商標)、カルフルオレ(登録商標)レッド610、Cy3.5(商標)、テキサスレッド(登録商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)、568 Cy5(商標)、クエーサー(Quasar)(商標)670、ライトサイクラー(Light Cycler)レッド640(登録商標)、アレクシアフルオレ633クエーサー(商標)705、ライトサイクラーレッド705(登録商標)、アレクシアフルオレ(登録商標)680、SYTO(登録商標)9、LCグリーン(登録商標)、LCグリーン(登録商標)プラス+、エバグリーン(商標)からなる群より選択される、上記請求項1から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法であって、
a.標識プローブは、ハイブリダイゼーションプローブ及びTaqManプローブからなるグループであり、
b.TaqManプローブが該標識を有し、
c.該標識は蛍光標識であり、
d.TaqManプローブはさらにクエンチャーを含み、
e.場合により、ハイブリダイゼーションプローブは、TaqManプローブに結合した標識の蛍光を消光できる追加のクエンチャーを有し、
f.該TaqManプローブ及び該ハイブリダイゼーションプローブは、両プローブがそれぞれの配列に結合したときには、ハイブリダイゼーションプローブ上に存在するクエンチャーが、少なくとも部分的に該TaqManプローブ上の該標識の蛍光を消光するような状態で該核酸配列に結合できる、
方法。
【請求項10】
同一の標識を有する該プローブは、少なくとも2℃の融解温度(Tm)差をもつハイブリダイゼーションプローブとグループを形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ハイブリダイゼーションプローブの融解温度(Tm)はTaqManプローブの融解温度より低い、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ハイブリダイゼーションプローブは、ポリメラーゼが最適活性示す温度より低い融解温度(Tm)を有する、請求項9から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
ポリメラーゼが5’−3’エクソヌクレアーゼ活性を示す、請求項9から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
ストリンジェントな条件下で、1またはそれ以上の核酸分子にハイブリダイズできる少なくとも4つのプローブを含むキット、ここで、
a.各プローブは核酸配列に特異的であり、
b.少なくとも2つのプローブは、同じ標識を有し、そして、
c.同じ標識を持つ各プローブの融解温度(Tm)は、同じ標識を持つ他のプローブの融解温度に対して、加熱によりプローブが標的の核酸配列から解離する際には、2℃より大きい差を有する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−519570(P2011−519570A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507888(P2011−507888)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055404
【国際公開番号】WO2009/135832
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【出願人】(510293992)キアゲン ハンブルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】