説明

反応性デンドリマー

【課題】デンドロン及び/又はコア中に飽和単位を有するデンドロン及びデンドリマーを生成させるための合成手順の限界を克服し、オプトエレクトロニクスデバイス、特にOLEDにおけるその使用を可能とする。
【解決手段】デンドリマーの一部を形成するために少なくとも1つのデンドロンを改変するための方法であって、前記デンドロンが次式、FO(デンドライト−Q(式中、FOは、直接か、又は1個以上の反応可能な不飽和単位を含むことができる結合基を介して、前記デンドライトの第1分枝原子若しくは分枝基に結合した官能基であり、同じであっても異なっていてもよい各「デンドライト」は、分枝原子若しくは分枝基及び任意選択的に結合基を含み、FO以外にも2個以上の基と結合していなければならない前記第1分枝原子若しくは分枝基を少なくとも含み、前記デンドライトの少なくとも1つ、又は存在すればFOへの前記結合基は、1個以上の反応可能な不飽和単位を含み、yは1又は2以上であり、Qは表面基であり、aは0又は整数であり、ただし、a=0である場合、デンドライト若しくは各デンドライトの各アームの末端基は(ヘテロ)アリール基である)を有し、化学選択的なやり方で少なくとも1つの前記反応可能な不飽和基を反応させて、より小さい不飽和度の基を生成させることを含む、上記方法、並びに同様の手法でデンドリマーを改変するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンドロン及びデンドリマーの生成方法とオプトエレクトロニクスデバイスでのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
デンドリマーは、デンドライトとしても知られている、コア及び結合したデンドロンを有する分枝型の巨大分子である。デンドロンは分枝単位及び任意選択的に結合単位を含む分枝した構造物である。デンドロンのジェネレーションは分枝基のセットの数で定義される。図1を参照のこと。同一構造(構成)であるが、より高次のジェネレーションすなわち階数(order)を有するデンドロンは、同一構造単位(分枝及び結合単位)であるが追加のレベルの分枝を有するものからできている。デンドロンの周囲すなわち末端単位に表面基が存在することができる。
【0003】
異なるジェネレーションのデンドリマーは異なる種類の分枝点及び結合単位を有することができる。デンドリマーは一般に収束的経路又は発散的経路によって合成される。収束的経路では、直接反応してより高次ジェネレーションのデンドロン又はデンドリマーを生成するか、又は、反応する前に活性化されてより高次ジェネレーションのデンドロン又はデンドリマーを生成できる官能基がデンドロン中心に必要となる。発散的経路では、末端官能基を、活性化後か又は直接用いて、次のより高次のジェネレーションのデンドリマーを生成する。デンドリマーが生成すると、表面基を改変すること、例えばt−ブチルカーボネートを外してヒドロキシル部分を残すことができることが実証されている。デンドリマーの結合、分枝及びコアの単位は、飽和単位からも不飽和単位からも生成することができる。デンドロン又はデンドリマー内に不飽和単位が存在すると、構造を改変して、有益な特性を有し、別の方法では容易に形成することができない最終デンドリマーを形成する可能性をもたらす。具体的には、本発明は、単位内の原子の間に、より飽和された結合をもたらすための、デンドロン又はデンドリマー内の1個以上の不飽和単位の化学的転換に関する。その方法は、他の不飽和単位について報告されている反応とは異なるものである。例えば、デンドリマー内の二置換のビニレン単位が存在する場合、これらのビニレン単位を異性化することができることが先に報告されている(J.N.G.Pillowら、Macromolecules、1999年、32、5985頁参照)。これは化学的な変換ではあるが、飽和のレベルは変化していない。したがって本発明の範囲からは外れる。さらに、フェニレンをベースとしたデンドリマーを酸化して、グラファイト状の構造を形成させることが報告されている(図Aはデンドリマーの1成分を示す)(M.D.Watsonら、Chem.Rev.、2001年、101、1267頁)。これは、デンドロン及び/又はデンドリマー構造内での反応であるが、ベンゼン環sp混成炭素の飽和のレベルの低下をもたらしていない。この場合、炭素−プロトン結合は炭素−炭素結合に転換されるだけである。同様に、ジ−デンドロン化した飽和4,4’−ジフェニルアセチレンデンドロンを環化させて、より大きいベンゼン中心のデンドリマーを生成させている(M.D.Watsonら、Chem.Rev.、2001年、101、1267頁)。図Bでの出発原料はデンドロンである。アセチレン単位が中心であり、それに2つのデンドロンが結合している。これらのデンドロンの3つの中心は、反応してデンドリマーの中央ベンゼン単位を形成し、デンドロンの他の成分は変らない。最近、不飽和単位を有するデンドリマーが、有機発光ダイオードの発光層として有用であることがわかった。
【0004】
有機エレクトロルミネセンス(EL)デバイスとしても知られている有機発光ダイオード(OLED)は最近注目されているディスプレイ技術である。OLEDは基本的には、2つの電極の間に挟まれた薄い有機層又は有機積層を含み、それによって、電圧を印加した時に可視光又は他の光を発する。電極のうちの少なくとも1つは、光透過性でなければならない。ディスプレイ用途には、光は当然目に見えなければならず、したがって、電極の少なくとも1つは、可視光に対して透過性でなければならない。
【0005】
有機層をOLEDに被着するために用いることのできる主要な技術は2つある。すなわち、熱蒸発と溶液処理である。潜在的により大きいスループットが得られ、且つ、大きなサイズの基板を扱えるため、溶液処理の方がより低コストの技術である潜在的可能性を有している。適当な材料、特にポリマーを開発するための重要な研究がなされてきている。より最近では、固体状態で光ルミネセントであるデンドリマーが、OLEDにおける溶液加工性発光材料として非常に有望であることが明らかにされている(S.−C.Loら、Adv.Mater.、2002年、13、975頁;J.P.J.,Markhamら、Appl.Phys.Lett.、2002年、80、2645頁)。
【0006】
発光性デンドリマーは発光性コアを有するのが典型的であり、多くの場合、本質的に少なくとも部分的に共役したデンドロンを有している。本明細書で用いる、本質的に少なくとも部分的に共役したデンドリチックな構造は、デンドリチックな構造を構成する基の間で共役関係があるが、π系が必ずしも完全に非局在化されていない構造である。π系の非局在化は、種々の基である結合物の位置化学に依存している。そうしたデンドロンは共役デンドロンとすることができる。発光性デンドリマーの更なる例には、P.W.Wangら、Adv.Mater.、1996年、8、237頁;M.Halimら、Adv.Mater.、1999年、11、371頁;A.W.Freemanら、J;Am.Chem.Soc.、2000年、122、12385頁;A.Adronovら、Chem.Comm.、2000年、1701.;C.C.Kwokら、Macromolecules、2001年、34、6821頁に見出されるものが含まれる。発光性デンドリマーは、コア、デンドロン及び表面基の性質を独立に変えることができるので、発光特性及び加工特性を独立に最適化できる点で、発光性ポリマーより優れている。例えば、発光コアを含むデンドリマーを用いると、コアを変えるだけでデンドリマーの発光色を変えることができる。発光コアを有するデンドリマーが好ましいが、コアが発光性でない場合、デンドロン中の発色団を発光性とすることができる。
【0007】
粘度などの他の物理的特性も、デンドリマーを、ポリマーに比べてより簡単に利用可能な製造プロセスに適合できるものにしているのかもしれない。これまで、有機金属デンドリマーは、フィルム中の単一成分(すなわちニートなフィルム)として、或いは分子材料とのブレンド体、又は1種を超える異なる種類(すなわち異なるコア)のデンドリマーのブレンド体でOLED用途に使用されてきた。例えば、J.M.Luptonら、Adv.Funct.Mater.、2001年、11、287頁及びJ.P.J.、Markhamら、Appl.Phys.Lett.、2002年、80、2645頁を参照のこと。
【0008】
分子間の相互作用は、有機発光用材料及び輸送材料のオプトエレクトロニクス特性において重要な役割を果たす。密な接触と良好な配列によって、高い電荷移動性をもたらすことができるが、励起状態の二量体の生成による発光の減少を招く可能性もある。従来の研究で、本発明者らは、デンドリマーと結合したデンドロンのジェネレーションによって、分子間相互作用を制御できることを明らかにした(J.M.Luptonら、Phys.Rev.B、2001年、63、5206頁;J.P.J.,Markhamら、Appl.Phys.Lett.、2002年、80、2645頁)。しかし、分子間相互作用の性質は、コアに結合しているデンドロンの種類によって影響を受ける。一般に、デンドリマーを収束的又は発散的経路を経て調製した場合、最終デンドリマーの主構造は、合成で使用したデンドロン分枝基と結合単位によって規定される。このことは、デンドリマーの構造と特性を制御する上で限界をもたらす。デンドロン又はデンドリマー内部において、表面基、分枝基及び結合単位(存在する場合)、並びにデンドロンの場合における中心、及びデンドリマーの場合におけるコアが改変される潜在的可能性がある。デンドリマー及びデンドロンの表面基、並びにデンドロンの中心を改変することができることは知られている。しかし、多くのデンドリマーが飽和の結合単位及び分枝基を有しているので、これらの単位の改変は困難であり得る。これに対して、デンドロン及びコアの結合単位及び分枝基の中に不飽和単位を含むデンドロン又はデンドリマーは、デンドロン及びデンドリマー構造を改変するのに予想外の利点をもたらす。これは、不飽和部を含む表面基若しくは中心基を、更なるジェネレーション構築のために表面基に転換させる発散的経路又は収束的経路で用いられる反応とは異なる。例えば発散的経路においては、より低いジェネレーションの表面基は、活性化し、次の段階で加えられる種と反応性を持つようにするのが典型的である。これは、アクリロニトリルの1,4−ジアミノブタンへのマイケル(Michael)付加反応によって生成するポリ(イミノプロパン−1,3−ジイル)(PPI)デンドリマーの合成で示される。付加反応後、得られる末端ニトリル基を還元して、第一アミン末端の第1ジェネレーションデンドリマーを生成する。次いでこれを、当量を超えるアクリロニトリルと反応させることができる。還元を繰り返して、次のジェネレーションデンドリマーを生成する(「最近の化学における話題、デンドリマーIII(Topics in Current Chemistry、Dendrimers III)」、86頁、Springer−Verlag、Berlin Heidelberg、2001年)。これは本発明のアプローチとは異なる。本発明では、デンドロン又はデンドリマー構造全体を、分枝基及び/又は結合単位、及び/又はコア内に不飽和単位を含むように構築し、次いで前記単位の一部又は全部を反応させることによって、そのデンドロン又はデンドリマーを改変するのである。具体的には、デンドリマーのデンドロン内のアセチレニル基及びビニル基などの不飽和基が反応する。この方法によって、本発明者らは、強力なPd触媒を使用したアリールハライドとアルケンのカップリング、それに続く単純な水素化を用いて、エチレン単位で結合されたアリール分枝基を有するデンドリマーを生成することができた。これに対して、芳香族分枝基間の飽和結合への従来の経路は、複数のステップを経て炭化水素結合単位を導入し、次いでPdカップリングしてデンドリマーを生成させるという複雑な一連の反応を伴っていた(Z.Bo,A.D.Schluter、J.Org.Chem.2002年、第67巻、5327頁)。本発明の更なる利点は、最終生成物の選択に更なる柔軟性を付与することである。カップリングして不飽和単位を生成した後、アルケン及びアセチレンのハロゲン化及び水素化などのある範囲の反応を用いて、同一中間材料から様々な別の生成物を得ることができる。本発明者らは、デンドロンの分枝点の間にアセチレン及びビニレン結合を含むデンドロンを用い、さらにこれを反応させることによって、デンドロン引いてはデンドリマーを有利に改変するための方法が得られることを発見した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
すなわち、本発明は、デンドロン及び/又はコア中に飽和単位を有するデンドロン及びデンドリマーを生成させるための合成手順の限界を克服することと、オプトエレクトロニクスデバイス、特にOLEDにおけるその使用とを対象とする。
【0010】
本発明によれば、デンドリマーの一部を形成するために少なくとも1つのデンドロンを改変するための方法であって、前記デンドロンが次式、
FO(デンドライト−Q (I)
(式中、FOは、直接か、又は1個以上の反応可能な不飽和単位を含むことができる結合基を介して、前記デンドライトの第1分枝原子若しくは分枝基に結合した官能基であり、同じであっても異なっていてもよい各「デンドライト」は、分枝原子若しくは分枝基及び任意選択的に結合基を含み、FO(直接か又は結合基を介して)以外にも2個以上の基と結合していなければならない前記第1分枝原子若しくは分枝基を少なくとも含み、且つ、前記デンドライトの各アームの末端基がアリール基若しくはヘテロアリール基であるデンドライトであり、前記デンドライトの少なくとも1つ、又は存在すればFOへの前記結合基は、1個以上の反応可能な不飽和単位を含み、yは1又は2以上であり、Qは表面基であり、aは0又は整数である)を有し、化学選択的なやり方で少なくとも1つの前記反応可能な不飽和基を反応させて、より小さい不飽和度の基を生成させることを含む、上記方法が提供される。
【0011】
aが0である場合表面基はないが、好ましくはaは整数であり、一般に1〜16である。
【0012】
本発明は、次式のデンドリマー
CORE−[デンドライト−Q
(式中、Q及びaは上記の定義通りであり、xは1又は2以上であって、xが1を超える場合、各デンドライト−Qは同じであっても異なっていてもよく、COREは原子又は基を表し、COREの末端はそのデンドライト若しくは各デンドライト中の第1分枝原子若しくは分枝基への単結合であり、同じであっても異なっていてもよい各「デンドライト」は、分枝原子若しくは分枝基及び任意選択的に結合基を含むデンドライトであり、CORE及び「デンドライト」のうちの少なくとも1つは少なくとも1個の反応可能な不飽和基を含み、ただし、そのデンドライト若しくは各デンドライトの各アームの末端基はアリール基若しくはヘテロアリール基である)を改変するための方法であって、例えばQを変化させないままで、化学選択的なやり方で少なくとも1つの前記反応可能な不飽和基を反応させてより小さい不飽和度の基を生成させることを含む、上記方法をも提供する。
【0013】
本発明はまた、少なくとも1つのデンドロンをデンドリマー前駆体と反応させることを含むデンドリマーの作製方法であって、デンドロンが本発明の方法によって改変されたデンドロンである方法をも提供する。そうした方法は、デンドロンの官能基、FOをデンドリマー前駆体と反応させる慣用の仕方で実施することができる。本明細書では、「官能基」は、直接か又は活性化後に1種以上の他の分子と反応し、それによって、任意選択的に1種以上の別のデンドロンと結合した後に、収束的経路を経てデンドリマーを生成できる基を意味する。一般に、FO及びQは独立に反応できるものでなければならない。したがって、これらは、同一のものではないことになる。デンドロンの官能基、FOは、得られるデンドリマーにおいて、コアの一部を形成することができる。官能基、FOは2つの種類のうちの1つとすることができる。1つのケースは、他の部分と反応してデンドリマーを生成できるアルコール、ハライド、アルデヒド又はボロン酸基などの単純な官能基である。これらのケースでは、官能基は、最終デンドリマー中にもはや存在しなくてもよい。例えば、アルデヒド中心デンドロンはピロールと反応して、デンドロンが結合されているポルフィリンコアを形成する。アルデヒド自体はもう存在しないが、アルデヒドの炭素原子はポルフィリンコアの一部を形成する。或いは、官能基は複数の成分、例えば1個以上の(ヘテロ)アリール環からなる、より複雑な基とすることができる。例えばコアが有機金属性である場合、官能基は金属カチオンと反応してデンドリマーを生成する配位子とすることができる。この場合、デンドリマーを生成する反応において、官能基はコアの一部となるが、出発部分としてなお容易に特定することができる。例えば、2−フェニルピリジン官能基に結合したデンドロンはイリジウムカチオンと反応して、コアの一部として2−フェニルピリジンを有するイリジウムベースのデンドリチックな錯体を生成する。官能基は、他の分子と反応してデンドリマーを生成する前に、活性化、例えば脱保護又は他の種類の官能基への変換を必要とすることがある。しかし、それは、中心にある官能基であって、デンドリマーを形成するために用いられるデンドライト中のFOと第1分枝原子若しくは分枝基との間の結合ではない。結合単位を介してFOがデンドライトに結合される場合、結合単位の主鎖はsp及び/又はsp混成原子(改変前)だけを含む。デンドロンと反応してデンドリマーを生成する他の反応性部分、例えば上記の例のピロール又は三塩化イリジウムはデンドリマー前駆体と見なされる。デンドリマーの形成の際に1種以上のデンドリマー前駆体が関与することもある。
【0014】
特に有機金属デンドリマーでは、yは2以上とすることができる。例えばフェニル−ピリジルなどの二環配位子では、デンドライトはそれぞれの環に結合することができる。
本発明は以下を包含する。
(1) デンドリマーの一部を形成するために少なくとも1つのデンドロンを改変するための方法であって、
前記デンドロンが次式、
FO(デンドライト−Q
(式中、FOは、直接か、又は1個以上の反応可能な不飽和単位を含むことができる結合基を介して、前記デンドライトの第1分枝原子若しくは分枝基に結合した官能基であり、同じであっても異なっていてもよい各「デンドライト」は、分枝原子若しくは分枝基及び任意選択的に結合基を含み、FO以外にも2個以上の基と結合していなければならない前記第1分枝原子若しくは分枝基を少なくとも含み、且つ、前記デンドライトの各アームの末端基がアリール基若しくはヘテロアリール基であるデンドライトであり、前記デンドライトの少なくとも1つ、又は存在すればFOへの前記結合基は、1個以上の反応可能な不飽和単位を含み、yは1又は2以上であり、Qは表面基であり、aは0又は整数である)を有し、
化学選択的なやり方で少なくとも1つの前記反応可能な不飽和基を反応させて、より小さい不飽和度の基を生成させることを含む、上記方法。
(2) 次式のデンドリマー、
CORE−[デンドライト−Q
(式中、Q及びaは上記の定義通りであり、xは1又は2以上であって、xが1を超える場合、各デンドライト−Qは同じであっても異なっていてもよく、COREは原子又は基を表し、COREの末端はその「デンドライト」若しくは各「デンドライト」中の第1分枝原子若しくは分枝基への単結合であり、同じであっても異なっていてもよい各「デンドライト」は、分枝原子若しくは分枝基及び任意選択的に結合基を含むデンドライトであり、CORE及びデンドライトのうちの少なくとも1つは少なくとも1個の反応可能な不飽和基を含み、ただし、そのデンドライト若しくは各デンドライトの各アームの末端基はアリール基若しくはヘテロアリール基である)を改変するための方法であって、
化学選択的なやり方で少なくとも1つの反応可能な不飽和基を反応させて、より小さい不飽和度の基を生成させることを含む、上記方法。
(3) 前記反応可能な不飽和基を完全に飽和させる、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 結合基と分枝基の両方を反応させる、(1)から(3)までのいずれか一項に記載の方法。
(5) 結合基だけを反応させる、(1)から(3)までのいずれか一項に記載の方法。
(6) aが0、又は(1)から(16)である、(1)から(5)までのいずれか一項に記載の方法。
(7) 前記反応可能な不飽和基がビニレン基又はアセチレニル基である、(1)から(6)までのいずれか一項に記載の方法。
(8) 前記デンドライト中の第1分枝点が(ヘテロ)アリール基又は縮合(ヘテロ)アリール基である、(1)から(7)までのいずれか一項に記載の方法。
(9) 前記デンドライト中のすべての分枝点がアリール、ヘテロアリール又は縮合(ヘテロ)アリールである、(8)に記載の方法。
(10) 前記デンドライト中の前記第1分枝点が1,3,5−置換フェニル基又は3,6−N−置換カルバゾール基である、(1)から(9)までのいずれか一項に記載の方法。
(11) 前記反応可能な不飽和基が、前記デンドライト中の前記分枝点間の結合であり、且つ、すべてがアセチレニル基であるか、又はすべてがビニレン基である、(1)から(10)までのいずれか一項に記載の方法。
(12) 前記反応可能な不飽和基が、前記デンドライト中の前記分枝点間の結合であり、且つ、ビニレン基とアセチレニル基の混合物である、(1)から(6)までのいずれか一項に記載の方法。
(13) 前記分枝点が1,3,5−置換ベンゼンである、(11)又は(12)に記載の方法。
(14) 前記反応可能な不飽和基が、前記コアの一部であり、デンドライトの前記第1分枝基に直接結合している、(1)から(13)までのいずれか一項に記載の方法。
(15) 前記反応可能な不飽和基が、デンドライトの最後の分枝アリールと末端アリールとの間の結合である、(1)から(13)までのいずれか一項に記載の方法。
(16) 前記デンドリマーが非対称である、(2)から(15)までのいずれか一項に記載の方法。
(17) 前記デンドリマーが有機金属デンドリマーである、(2)から(16)までのいずれか一項に記載の方法。
(18) 化学選択的反応によって反応した基を続いて更に反応させる、(1)から(17)までのいずれか一項に記載の方法。
(19) 前記化学選択的反応が付加反応である、(1)から(18)までのいずれか一項に記載の方法。
(20) 前記化学選択的反応が水素化である、(1)から(19)までのいずれか一項に記載の方法。
(21) 前記化学選択的反応が、ハロゲン水素化、ハロゲン化、ヒドロシリル化又はヒドロホウ素化及び後続の酸化を含む、(1)から(19)までのいずれか一項に記載の方法。
(22) 前記化学選択的反応が付加環化である、(1)から(21)までのいずれか一項に記載の方法。
(23) 前記デンドリマーが発光性である、(2)から(22)までのいずれか一項に記載の方法。
(24) 前記デンドリマーが蛍光性である、(2)から(22)までのいずれか一項に記載の方法。
(25) 前記デンドリマーがリン光性である、(2)から(22)までのいずれか一項に記載の方法。
(26) 前記反応可能な不飽和基が、1つの少なくとも本質的に部分的に共役したデンドライトを有するデンドリマーの一部である、(2)から(25)までのいずれか一項に記載の方法。
(27) 前記反応可能な不飽和基が、1つを超える少なくとも本質的に部分的に共役したデンドライトを含むデンドリマーの一部であり、前記デンドライトが、前記コアの一部を形成する金属カチオンと錯体を形成している少なくとも2つの配位子と結合しており、前記化学選択的反応が前記コア中で起こる、(2)から(17)までのいずれか一項に記載の方法。
(28) 前記有機金属デンドリマーが、前記コアの一部としてイリジウムを含む、(27)に記載の方法。
(29) 前記有機金属デンドリマーが、前記コアの一部として白金を含む、(27)に記載の方法。
(30) 前記有機金属デンドリマーが、前記コアの一部としてレニウムを含む、(27)に記載の方法。
(31) 得られたデンドリマーから固体フィルムを作製する、(1)から(30)までの一項に記載の方法。
(32) 前記得られたデンドリマーが溶液処理可能である、(2)から(31)までのいずれか一項に記載の方法。
(33) 前記デンドリマーが、パターニングを可能にする1個以上の表面基を有する、(2)から(32)までのいずれか一項に記載の方法。
(34) 前記フィルムが可視光を発することができる、(31)から(33)までのいずれか一項に記載の方法。
(35) 実質的に上記した通りである、(1)又は(2)に記載の方法。
(36) 少なくとも1つのデンドロンをデンドリマー前駆体と反応させることを含むデンドリマーの作製方法であって、前記デンドロンが、(1)、及び(3)から(35)までのいずれか一項に記載の方法によって改変されたものである、上記方法。
(37) (1)から(36)までのいずれか一項に記載の方法によって常に得られるデンドロン又はデンドリマー。
(38) 基板、電極、任意選択的な第1電荷輸送層、発光層、任意選択的な第2電荷輸送層及び対向電極の層を順に含む有機発光デバイスであって、前記発光層、任意選択的な第1電荷輸送層及び任意選択的な第2電荷輸送層のうちの少なくとも1つが(37)に記載のデンドリマーのフィルムである、上記有機発光デバイス。
(39) 前記発光層が(37)に記載のデンドリマーのフィルムである、(38)に記載のデバイス。
(40) 少なくとも1つの電荷輸送層を含む、(39)に記載のデバイス。
(41) 前記発光層が、追加の成分として発光性ドーパントをも含む、(38)から(40)までのいずれか一項に記載のデバイス。
(42) 前記発光層が、追加の成分として1つ若しくは複数の電荷輸送種をも含む、(38)から(41)までのいずれか一項に記載のデバイス。
(43) 前記発光層が、追加の成分として分子種、デンドリチックな種又はポリマーも含む、(38)から(42)までのいずれか一項に記載のデバイス。
(44) 前記追加の成分が全組成物の95から5モル%を構成する、(41)から(43)までのいずれか一項に記載のデバイス。
(45) 実質的に上記した通りである、(38)に記載のデバイス。
(46) (37)に記載した通りのデンドリマーを少なくとも1つ含む光起電デバイス。
(47) そのコアの一部としての金属カチオンと、
以下の構造
【化1】


(式中、Yは酸素であり、その場合−Z−Z−は−N=CR−を表すか、又はYは−N−Rであり、その場合−Z−Z−はベンゼン環又は−N=CRの一部を形成し、Rは任意選択的に置換されたベンゼン基を表し、Rは任意選択的に置換されたアルキル若しくはアリール基を表す)を含む少なくとも1つのデンドロンとを有する有機金属デンドリマーであって、前記デンドロンが、前記コアのエチレン、置換エチレン、ビニレン若しくはアセチレニル基を介して結合している、上記有機金属デンドリマー。
(48) 前記デンドロンが前記コアのアセチレニル基を介して結合している、(47)に記載のデンドリマー。
(49) Yが酸素である、(47)又は(48)に記載のデンドリマー。
(50) Yが−N−Rである、(47)又は(48)に記載のデンドリマー。
(51) Rがフェニル基を表す、(50)に記載のデンドリマー。
(52) コアの一部として金属カチオンを有する有機金属デンドリマーであって、前記コアが、エチレン若しくは置換エチレン基によって、少なくとも1つのデンドロンの第1分枝基に直接結合している、上記有機金属デンドリマー。
(53) 前記デンドロンが(ヘテロ)アリール結合及び/又は分枝点を含む、(52)に記載のデンドリマー。
(54) 本明細書で具体的に特定されている、(47)又は(52)に記載のデンドリマー。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】それぞれジェネレーション2及び3のデンドリマーA及びBを図示したものである。
【図2】デンドロン又はデンドリマー内に、表面基ではなく、さらに反応することができる少なくとも1個の不飽和基(反応可能な基)を含んでいなければならないことを示した図である。
【図3】不飽和結合が反応して飽和結合を生成し、コアの発色団をデンドロン中の不飽和単位から電子的に切り離すことを示した図である。
【図4】例1を図示したものである。
【図5】例2を図示したものである。
【図6】不飽和結合が反応して飽和結合を生成し、コアの発色団をデンドロン中の不飽和単位から電子的に切り離すことを示した図である。
【図7】反応すべき不飽和単位がデンドロン又はデンドリマーの末端近傍にあることが好ましいことを示す図である。
【図8】M.D.Watsonら、Chem.Rev.、2001年、101、1267頁に関連する図であり、図Aはデンドリマーの1成分を示し、図Bでの出発原料はデンドロンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、デンドリマーを生成させるための反応の前か、又はデンドリマーの一部として、ビニレン、アセチレニル、イミノ、アゾ又はビニルニトリル単位を含むデンドライト又はCORE内の不飽和基を改変すること、この方法で作製したデンドリマー、及び続くオプトエレクトロニクスデバイス、特にOLEDでこれらのデンドリマーを使用することを対象とする。
【0017】
改変のためとして考慮できるデンドロン又はデンドリマーには複数の種類があるが、すべて、デンドロン又はデンドリマー内に、表面基ではなく、さらに反応することができる少なくとも1個の不飽和基(反応可能な基)を含んでいなければならない(図2)。6及び7(図2参照)のような分枝点を形成できるこれらの反応可能な基は、反応を施されて、より飽和された、好ましくは完全に飽和された結合を原子間に生成できる基である。例えば、アセチレン結合は、リンドラー(Lindlar)の条件下で還元してビニレンにする、すなわち水素とチャーコール担持のパラジウムとを用いてエチレンを生成させることができるだろう。化学選択的反応とは、分子中の反応可能な不飽和基だけが反応を施され、FO(存在すれば)及びすべてのQを含む分子中の他の基がその反応によって変化しない反応である。デンドライトの分枝点は、窒素などの原子であっても基であってもよいが、好ましくは、アリール及びヘテロアリールが縮合環系の一部を形成することもできるアリール若しくはヘテロアリールである。分枝単位は1,3,5−置換ベンゼン又は3,6,N−置換カルバゾリル基であることがより好ましい。その反応性基は、ビニレン又はアセチレンであるのが典型的であり、デンドリマー中ではデンドライトのすべての分枝基間において結合を形成するか、又はデンドライトの第1分枝点に直接結合したコアの一部を形成するか、或いは、デンドライトの最後の分枝基とデンドライトの末端のアリール基との間の結合である。一態様では、デンドロン中のデンドライト若しくは各デンドライトは少なくとも1個の反応可能な不飽和基を含む。第2の態様では、デンドライトは反応性の不飽和基だけを含む。他の態様では、デンドライトのFOと第1分枝点との間の結合基若しくは各結合基は、デンドロン中に反応可能な不飽和基だけを含む。さらに他の態様では、COREはデンドリマー中に反応可能な不飽和基だけを含む。分枝点間の結合(図2のBG)は、例えば図2の1のようなアセチレニル、2のようなビニルなどのすべて1種類のものであっても、また3のような混合物であってもよい。非アリール基だけが反応することが好ましい。1、2及び3では、本発明の方法によって、1個以上の不飽和結合を、試薬の当量数に応じて飽和結合へ転換させることができる。これによって、デンドロン又はデンドリマーの混合物がもたらされる。当量の不飽和基のすべてが反応することが好ましい。例えば、ビニレン単位が存在する場合、これらはすべて反応する。4では、分枝部分は2個のビニレンと1個のメチレンオキシ結合単位を有している。この2個のアルケン基を転換させることができる。別の非対称デンドリマータイプは、デンドロン中にアルケニル、アセチレニル及びアリール−アリール結合の混合物を有するものである。5では、アルケニル及びアリールのケースの例を示す。この場合、アルケニル基とアセチレニル基だけが反応することが好ましい。分枝点のうちの1つは、6のビニレン及び7のイミン単位の場合のような不飽和炭素原子であると考えることもできる。分枝点間のすべての結合が反応性である場合、これらは、ビニル若しくはアセチレニル、又はこの2つの組合せを含むことが好ましい。一般に、結合基の主鎖はsp及び/又はsp混成原子だけを含む。ビニル及びアセチレンと、アリール及びヘテロアリール分枝並びにアリール−アリール結合(5がその例である)との組合せも好ましい。好ましい単位には、フェニル−ビニル−フェニル及びフェニル−アセチレニル−フェニルが含まれる。分枝基は、不飽和基が反応した時(例えば水素化)に変化しないでいる(ヘテロ)アリールであることが特に好ましい。分枝点間での様々な数と組合せの共役単位が存在し得ることが理解されよう。飽和単位を得るためのビニル、アセチレニル若しくはイミニル基の反応によって、共役がなくなり、新規の官能基が導入される可能性がある。好ましい態様では、不飽和基は完全に飽和される。新規の官能基が、例えば架橋反応でさらに反応できる場合もある。例えば、デンドロン中の2個のフェニル基の間のビニレン単位への臭化水素の付加によって、アルコールなどのある範囲の求核試薬で置換できるベンジル型ブロミド(benzylic bromide)が得られる。ジオールを用いる場合、2つのデンドロン又はデンドリマーを共有結合で互いに結合することができる。結合単位は、反応のできる1つを超える不飽和単位を有することができることが理解されよう。例えば、2つのフェニル分枝点の間にジビニルベンゼン結合が存在することができる。
【0018】
本発明の方法に供することができるデンドロン及びデンドリマーの例には、WO99/21935に記載されているもの、例えば以下の式(A)
CORE−[DENDRITE](A)
(式中、COREは原子又は基を表し、nは少なくとも1である整数を表し、nが1を超える場合同じであっても異なっていてもよいDENDRITEは、アルケニル基の炭素原子を介して、アリール基若しくはヘテロアリール基の環炭素原子に互いに結合しているアリール及び/又はヘテロアリール基とアルケニル基を含む、本性的に少なくとも部分的に共役したデンドリチックな分子構造を表し、COREの末端は、1つを超える少なくとも部分的に共役したデンドリチックな鎖が結合している(ヘテロ)アリール基の環炭素原子に結合している第1の単結合であり、前記環炭素原子はDENDRITEの一部を形成し、CORE及び/又はDENDRITEは発光性である)、などの少なくとも1つの本性的に部分的に共役したデンドロンを有するデンドリマーが含まれ、
また、一般に以下の式(B)
CORE−[DENDRITE[DENDRITE(B)
(式中、COREは原子又は基を表し、同じであっても異なっていてもよいn及びmはそれぞれ少なくとも1である整数を表し、nが1を超える場合同じであっても異なっていてもよい各DENDRITE及びmが1を超える場合同じであっても異なっていてもよい各DENDRITEはデンドリチックな構造を表し、前記構造のうちの少なくとも1つは、完全に共役しており、前記(ヘテロ)アリール、ビニル及びアセチレニル基のsp若しくはsp混成炭素原子を介して結合した、アリール及び/又はヘテロアリール基及び任意選択的にビニル及び/又はアセチレニル基を含み、DENDRITE中の分枝点の間の少なくとも1つの分枝点及び/又は結合は、DENDRITE中のものとは異なり、COREの末端は、1つを超える共役したデンドリチックな分枝が結合している第1の(ヘテロ)アリール基のsp混成(環)炭素原子に結合している単結合であり、前記環炭素原子は前記完全に共役したDENDRITE又はDENDRITEの一部を形成し、COREの末端は、前記DENDRITE又はDENDRITEの他方のための第1分枝点との単結合であり、CORE、DENDRITE及びDENDRITEのうちの少なくとも1つは発光性である)を有する、PCT国際出願/GB02/00765(WO 02/066575A1)に開示されているようなすべてのデンドロンが同一ではないものを含み、以下の式(C)のもの、
CORE−[DENDRITE](C)
(式中、COREは原子又は基を表し、nは少なくとも1である整数を表し、同じであっても異なっていてもよい各DENDRITEは、前記(ヘテロ)アリール、ビニル及びアセチレニル基のsp若しくはsp混成炭素原子を介して結合している、アリール及び/又はヘテロアリール並びに任意選択的にビニル及び/又はアセチレニル基を含む本性的に少なくとも部分的に共役したデンドリチックな分子構造を表し、前記DENDRITE中の隣接する分枝点間の結合はすべてが同一ではなく、COREの末端は、1つを超えるデンドリチックな分枝が結合している第1の(ヘテロ)アリール基のsp混成(環)炭素原子に結合している単結合であり、前記環炭素原子は前記DENDRITEの一部を形成し、CORE及び/又はDENDRITEは発光性である)及び、一般に式(D)
CORE−[DENDRITE(−Q)(D)
(式中、COREは原子又は基を表し、nは少なくとも1である整数を表し、Qはプロトン又は表面基であり、aは整数であり、nが1を超える場合同じであっても異なっていてもよいDENDRITEは、前記アリール基若しくはヘテロアリール基のsp混成環原子間の結合を介して互いに結合したアリール及び/又はヘテロアリール基を含む共役したデンドリチックな構造を表し、COREの末端は、1つを超える共役したデンドリチックな分枝が結合している(ヘテロ)アリール基のsp混成環原子に結合している第1の単結合であり、前記原子はDENDRITEの一部を形成し、CORE及び/又はDENDRITEは発光性である)を有する、PCT/GB02/00739(WO 02/067343A1)に開示されているような、デンドロンがアリール−アリール配位子及び分枝点を含むもの、並びに典型的には以下の式(E)
CORE−[DENDRITE] (E)
(式中、COREは金属イオン、又は金属イオンを含有する基を表し、nは1以上の整数を表し、同じであっても異なっていてもよい各DENDRITEは、前記(ヘテロ)アリールビニル及びアセチレニル基のsp若しくはsp混成炭素原子を介して、或いはNと(ヘテロ)アリール基の間の単結合を介して結合しているアリール及び/又はヘテロアリール基又は窒素、及び任意選択的にビニル若しくはアセチレニル基を含む、本性的に少なくとも部分的に共役したデンドリチックな分子構造を表し、COREの末端は、1つを超える少なくとも部分的に共役したデンドリチックな分枝が結合している第1の(ヘテロ)アリール基又は窒素のsp混成(環)炭素原子に結合している単結合であり、前記環炭素原子又はNは前記DENDRITEの一部を形成している)を有する、PCT/GB01/00750(WO 01/63070A1)に開示されている有機金属デンドリマー、及び、一般に以下の式(F)
【化2】


(式中、xは3、2又は1であり、同じであっても異なっていてもよいn及びnは0、又は1〜3であり、Xは二価のモノ若しくはポリ−芳香族及び/又はヘテロ芳香族部分を表し、そのY又は各Y(xが1である場合同じであっても異なっていてもよい)は水素又は任意選択的に置換された炭化水素基を表し、Zは、別の(ヘテロ)芳香族基の環炭素原子へのヘテロ芳香族基の炭素原子を介してか、或いは、アルケニレン基が存在する場合、アルケニレン基の炭素原子への(ヘテロ)芳香族基の環炭素原子を介して互いに結合している、芳香族及び/又はヘテロ芳香族基及び任意選択的にアルケニレン基を含む、本性的に少なくとも部分的に共役したデンドリチックな分子構造を表し、前記デンドリチックな分子構造は、1つを超える少なくとも部分的に共役したデンドリチックな鎖が結合している(ヘテロ)芳香族基の環炭素原子を介して分子の残余部に結合しており、デンドリマーの(ヘテロ)芳香族環の1つ以上は任意選択的に置換されており、Z及び/又は分子の残余部(Y基を除く)は発光性であり、典型的にはxは3でなければならない(それについてはさらに詳細に言及しなければならない))を有する、WO01/59030に開示されている窒素−コア含有デンドリマーを含む。式Dの場合、反応性の不飽和単位がCOREの一部であることが好ましいことは理解されよう。
【0019】
改変後に生成したデンドロン及びデンドリマーが、オプトエレクトロニクス用途、特に発光ダイオードに適した発色団を含むことは好ましいことであるが、本発明の方法は、分枝の形態でない線状ポリマーの基本反復単位を含むデンドロン及び/又はコアを有するデンドリマーをも含む、他の用途に適したデンドリマーを調製するために用いることができる。例えば、WO99/21935に記載のフェニル分枝点及びビニレン結合単位を含むデンドリマーは、本発明の方法によってビニレン単位がすべて飽和されると、樹木型のポリ(フェニレンエチレン)を提供することになる。しかし、発光性コア及び/又はデンドロンを含み、OLEDで使用できるデンドリマーが特に好ましい。デンドリマーのコアは蛍光性又はリン光性とすることができる。有機単位だけを含む、すなわち金属カチオンがない蛍光性コアの場合、アリール及びヘテロアリール、縮合したアリール及びヘテロアリール、並びに直接結合したアリール及びヘテロアリール系が好ましい。すなわち、コアは、芳香族でない不飽和単位を含有すべきではないということである(さもないと、デンドロン中の非芳香族不飽和基が反応した際、その不飽和単位が反応することがあるからである)。例としては、フェニル、フルオレニル、チオフェニル、ピリジル及びこれらの置換された誘導体が含まれる。蛍光性金属錯体コアも可能であるが、リン光性金属錯体コアが好ましい。コアの一部である金属カチオンで好ましいものはイリジウム(最も好ましい)、レニウム、ロジウム及び白金であり、ここで、デンドロンは、例えば、ピリジン、フェニル、ベンゾチオフェン、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ベンズアミドアゾリル、カルバゾリル、フルオレニル、ピラゾリニル、オキサゾリニル、オキサジアゾリニル、トリアゾリル、トリアジニル、チアジアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、フリル、並びに特にフェニル−ピリジル及び置換された誘導体から選択された2つの芳香族基を含む配位子のような配位子を含むアリール及び窒素ヘテロアリールに結合している。
【0020】
デンドリマーの表面基は一般に、デンドリマーが、溶液処理に適した溶媒、例えばTHF、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレン及びメタノールなどのアルコール系溶媒に溶解されるように選択する。適切な基にはWO99/21935に開示されているものが含まれる。表面基は、デンドリマーがパターニングされ得るように選択することもできる。例えば、照射又は化学反応によって架橋され得る架橋性基を表面基として選択することができる。或いは、表面基は、取り外されて架橋性の基を残すことが可能な保護基を含むことができる。他の反応性表面基の場合、それらは、デンドロン又はデンドリマーの中で不飽和結合を反応させるために用いられる条件下で安定であるように選択すべきである。したがって、ビニル表面基は一般に存在してはならない。表面基が結合しているデンドライトの末端基は、アリール基若しくはヘテロアリール基である。t−ブチル基がフェニル環に結合した表面基である場合、1個を超えるものが末端フェニル単位のそれぞれに結合していることが好ましい。
【0021】
具体的な態様では、最初のデンドリマーは、そのコアの一部としての金属カチオンと、芳香族環系の一部を形成するか、又はデンドロンがコアのビニレン若しくはアセチレニル基を介して結合されている本発明者らの英国特許出願GB0206356.8に記載の種類の少なくとも2個の芳香族基と直接結合している、少なくとも1個の窒素原子を含む少なくとも1つのデンドロンとを有する有機金属デンドリマーである。ビニレン若しくはアセチレニル基は、その後エチレン基に転換する。
【0022】
一態様では、デンドリマーは以下の式のものではなく、
【化3】


一般に以下の式のデンドロン
【0023】
【化4】


(式中、Rは2−エチルヘキシルオキシである)
を水素化して得られたものである。
【0024】
特に、デンドロンは以下の構造
【化5】


{式中、Yは酸素(その場合−Z−Z−は−N=CR−を表す)であるか、又はYは−N−R(その場合−Z−Zはベンゼン環又は−N=CRの一部を形成する)であり、Rは任意選択的に置換されたベンゼン基を表し、Rは任意選択的に置換されたアルキル若しくはアリール基を表す}
をとる。したがって、窒素含有環はオキサジアゾールかイミダゾールかトリアゾールのいずれかである。したがって、反応は典型的には図6に示すようなものである。Rは、1種以上の表面基、例えば3,5−ジ第三ブチルによって置換されているのが典型的である。Rはフェニル(これが好ましい)、又はアルキル、例えば炭素原子1〜15個のメチル又はエチルなどのアルキルである。これらは置換されていてもよく、例えばRがフェニルである場合、例えば1個以上のアルキル、アルコキシ又はハロ置換基で置換されていてもよい。これらのデンドリマーは本発明の他の側面を形成する。
【0025】
本発明は、そのコアの一部として、金属カチオンを有する有機金属デンドリマーであって、そのコアが、エチレン又は置換エチレン基によって、少なくとも1つのデンドロンの第1分枝基に直接結合しているデンドリマーをも提供する。
【0026】
当技術分野では、不飽和結合に対して実施できる多くの反応が知られている。唯一の制約は、化学選択的でなければならない、すなわち所望の官能基とだけ反応しなければならないことである。例えば、ビニレン単位を水素化してエチレン単位が得られるが、水素化はベンジルエーテルを開裂させるためにも用いられ得る。したがって、4のケースで分枝基BGがフェニルである場合、水素化は、ベンジルエーテルでなく、ビニル(より反応性が高い基である)を反応させるように実施しなければならない。有用な反応の例は、エチレン基をもたらすビニレン及びアセチレニル基の水素化、及びアミンをもたらすイミンの還元である。付加反応であってもよい。ビニレン及びアセチレンを反応させてジフルオロとテトラフルオロエチレンを得ることもできる。ビニレンのジボランとの反応(ヒドロホウ素化)に続いて酸化的な処理をしてアルコールを得ることができる。HPtClの存在下でのビニレンのHSiClとの反応によってトリクロロアルキルシランを得ることができる(ヒドロシリル化)。このシランはさらに反応させることができる。水素ハライド(ハロゲン水素化)(HX、例えばH=Cl又はBr)又はジハロゲン(ハロゲン化)(X)による求電子付加反応を施して、ビニレンからそれぞれモノハロエチレン及びジハロエチレンを得ることができ、一方、アセチレンからジハロエチレン及びテトラハロエチレンをそれぞれ得ることもできる。アセチレン及びビニレンなどの不飽和単位も付加環化反応を受けることができるが、これは余り好ましくはない。例えば、ディールス−アルダー反応及び1,3−双極性付加環化を用いることができ、反応した不飽和基が、元の結合に関与した原子間において、反応前より少ない不飽和度を有する結果をもたらす。これらの反応はすべてよく知られており、当技術分野の技術者は、特にそれが化学選択的であることが望まれている場合、用いるべき反応条件によく承知することであろう。
【0027】
本発明の他の利点は、合成と最初の処理に適している表面基がすべてデンドロン及び/又はデンドリマーを生成させるための化学反応に適合しているわけではなく、架橋及びパターニングプロセスのためにも利用可能であるということである。それで、デンドロン中に1個以上の不飽和単位を含むことによって、デンドロン又はデンドリマーを生成した後、これらの単位をパターニング又は架橋プロセスで使用できる反応性基に転換することができる。本発明のこの側面のためには、図7に示すように、反応すべき不飽和単位はデンドロン又はデンドリマーの末端近傍にあることが好ましい。
【0028】
好ましいデンドロンは、コアと反応することができるか、又はコアの成分の一部となるアセチレニル又はビニル単位をその中心に有する。次いで、この不飽和結合が反応して飽和結合を生成し、それによって、図3及び図6に示すように、コアの発色団をデンドロン中の不飽和単位から電子的に切り離す。これによって、コア発光の色純度の制御性が向上し、ほかの方法では容易に合成できないデンドリマーの生成が可能になる。図6を参照のこと。
【0029】
デンドリマーの特性は、これを溶液処理に理想的なものとしている。好ましいデンドリマーは溶媒中に溶解し、その溶液は基板上に被着し、溶媒を除去して固体フィルムを残留させることができる。従来の溶液処理技術、例えばスピンコーティング、印刷(例えば、インクジェット印刷)及びディップコーティングを用いることができる。得られる固体フィルムは、基板の片方側上に生成させることが好ましい。その固体フィルムの厚さは2ミクロン未満であることが好ましい。
【0030】
本発明は、本発明の方法で得られた1つ以上のデンドリマーを含む固体フィルムを組み込んだOLEDをも提供する。最も簡単な形では、有機発光デバイス又はエレクトロルミネセンスデバイスは、少なくともその1つが発せられた光に対して透明である2つの電極間に挟まれた発光層で形成することができる。より一般的には、陰極と発光層との間に1つ以上の空孔輸送層が存在し、及び/又は発光層と陽極との間に1つ以上の電子輸送層が存在する。
【0031】
次いで、本発明は、基板、電極、任意選択的な第1電荷輸送層、発光層、任意選択的な第2電荷輸送層及び対向電極の層を順に含むOLEDデバイスであって、発光層、又は存在すれば第1若しくは第2電荷輸送層のうちの1つ、特に発光層が、本発明の方法によって得られたデンドリマーを少なくとも部分的に含むデバイスをも提供する。
【0032】
一態様では、本発明によるデバイスは、少なくとも部分的に、改変されたデンドロン及び/又はコアを有するデンドリマーを含み、発光ドーパント、電荷輸送種などの1つ以上の追加の種、並びに/又は追加の分子材料、デンドリチックな材料及び/又はポリマー材料を含む。
【0033】
好ましい一態様では、デンドリマーを含むフィルムは、OLED内で発光層を形成する。この発光層において、デンドリマーが発光種であることが特に好ましい。別の態様では、デンドリマーを含むフィルムは、OLED内で電荷輸送層を形成する。
【0034】
そうしたデバイスは、例えばガラス若しくはPET層などの透明基板層、透明電極層、発光層及び第2電極を含む通常の配置を有することができる。通常透明である陰極はインジウムスズ酸化物(ITO)製が好ましいが、酸化インジウム/酸化スズ、酸化スズ/アンチモン、酸化亜鉛/アルミニウム、金及び白金を含む他の同様の材料も使用できる。PANI(ポリアニリン)又はPEDOT/PSSなどの導電性ポリマーも使用できる。陽極は、通常Al、Ca、Mg、Li又はMgAlなどの低い仕事関数の金属又は合金から作製され、また任意選択的にLiFの追加の層を有する。別の構成では、基板は、ケイ素などの不透明な材料からできていてよく、光は反対の電極を通して発せられる。OLEDデバイスは正又は負に指定されていてよい。
【0035】
典型的なOLEDデバイスでは、上記のようにデンドリマーが発光性である場合、デンドリマーの溶液を、透明電極層を覆って塗布することができ、溶媒を蒸発させ、続いて電荷輸送層を塗布することができる。OLED内でのデンドリマー層の厚さは典型的には10nm〜1000nm、好ましくは200nm以下、より好ましくは30nm〜120nmである。陰極と発光性デンドリマー含有層との間に空孔輸送層を組み込む場合、溶液が被着する間、空孔輸送材料は、除去されてしまわずにある程度残留していなければならない。
【0036】
デンドリマーを含む発光層を組み込んだOLEDデバイスは、隣接した第1及び/又は第2電荷輸送層を任意選択的に有することができる。デンドリマーに関する本発明者らの研究によれば、発光性デンドリマー層と陽極との間に少なくとも1つの空孔阻止/電子輸送層を有することが特に有益であることが判明した。そうした空孔阻止/電子輸送層のための適切な材料は知られており、それには、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、1,3,5−トリス[2−N−フェニルベンズイミダゾリル)ベンゼン(TPBI)、並びに2−ビフェニル−5(4’−t−ブチルフェニル)オキサジアゾール(PBD)アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノレート)(Alq)及びアルミニウムビス(2−メチル−8−キノラート)−4−フェニルフェノレート(BAlq)が含まれる。本態様及び他の態様では、デンドリマー含有層は、2つ以上のデンドリマー(そのすべてが本発明のデンドリマーである必要はない)の種類の混合物を含むことができる。
【0037】
さらに、追加の発光性(蛍光性若しくはリン光性)種又は電荷輸送種を任意選択的にデンドリマーの層に加え、例えば効率及び寿命時間などのデバイス特性を向上させることができる。性能の向上をもたらすために、デンドリマー中に1種以上の分子、及び/又はデンドリマー系及び/又はポリマー系の種を含めることはさらに有益である。分子、デンドリチックな種又はポリマー系の種は、例えば共役したポリマー又は共役したデンドリマーのように、それ自体で電荷を輸送できることが好ましい。一態様では、そうした追加の成分は、ブレンド物全体の95〜5モル%の部分を形成する。例えば、発光性デンドリマーと共に使用するための追加の電荷輸送成分は、TPBI、PBD、BCP、4,4’−ビス−(N−カルバゾールビフェニル)(CBP)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)及びトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミン(MTDATA)である。
【0038】
そうしたデンドリマーは、1つ以上の層を含むことができる光起電力電池などの他のデバイス用途でも使用できる。光起電力電池で使用する場合、デンドリマーは光及び/又は輸送電荷を吸収できなければならない。デンドリマーは、光起電デバイス中の均一層として、又は他の分子材料及び/又はデンドリチックな材料及び/又はポリマー系材料とブレンドして使用することができる。デンドリマーは光起電デバイスの1つ以上の層で使用することができる。光電池の用途では、有機金属デンドリマーは必ずしも電荷中立性である必要はない。
【実施例】
【0039】
以下の例によって本発明をさらに説明する。
【0040】
(例1)
図4にこれを示す。
【0041】
例1では、水素化による分枝フェニル環間のエチレン結合の生成と、続くポルフィリンコアを含む発光性デンドリマーへの変換による、デンドロンを含むスチルベンの改変方法を述べる。例1では、ポルフィリンコアを有するデンドリマーと、スチルベン及びジフェニルエタンベースのデンドロンとの光ルミネセント量子収量(PLQY)の比較を行うことによってその変換を実施することの利益をも示す(表1参照)。
【0042】
3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)ベンズアルデヒド15
ヒドロキシルアミン塩酸塩(77.66g、1.117モル)をN,Nジメチルホルムアミド(216cm)中に溶解した。粉末水酸化カリウム(73.45g、1.309モル)を加えて溶液を10分間撹拌し、発熱が進行して白色沈殿物が得られた。懸濁液をろ過し、固形物をN,N−ジメチルホルムアミド(40cm)で洗浄して、ろ液を合わせて0℃に冷却した。酢酸エチル(48.6cm)を加えてストック溶液を得た。これを0℃で撹拌した。3,5−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル−E−ビニル)ベンジルアルコール13(1.00g、1.86ミリモル)とストック溶液(20cm)の懸濁液を100℃で加熱した。ストック溶液を20cmづつ、加熱して100℃を保持しながら20分間隔で加え、均一溶液になった混合物をさらに1時間100℃で加熱し、次いで冷却した。水(100cm)を加え、生成物をエーテル(2×100cm)で抽出した。抽出物を塩酸水溶液(3M、2×75cm)とブライン(75cm)で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して溶媒を除去した。残留物を、溶離液としてジクロロメタンを用いて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製して、3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)ベンジルアルコール(957mg、95%)を白色固形物として得た。
【数1】


ジクロロメタン(4cm)中の3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)ベンジルアルコール(914mg、1.69ミリモル)とピリジニウムクロロクロメート(729mg、3.38ミリモル)の溶液を室温で18時間撹拌し、溶媒を除去して、残留物を、溶離液としてジクロロメタン−軽質石油(2:3)を用いて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製して、15(902mg、99%)を粘性のオイル状物として得た。
【数2】

【0043】
3,5−ビス(2−{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル}エチル)ベンズアルデヒド16
水性ヒドロキシルアミン(50重量/重量%、65.6cm)のN,N−ジメチルホルムアミド(250cm)中の溶液をNaCl−氷浴で冷却した。酢酸エチル(46.5cm、0.475モル)を加えて溶液を0℃未満で撹拌した。この溶液の25cm分割量を、トルエン(42cm)中の3,5−ビス[3,5−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル−E−ビニル)フェニル−E−ビニル]ベンジルアルコール(2.09g、1.78ミリモル)の懸濁液に加え、混合物を100℃に加熱した。数分後には均一溶液が生成していた。残りのヒドロキシルアミン溶液を100℃に維持して撹拌しながら3時間かけて分割して加え、添加が完了した後さらに2時間100℃に保持した。溶液を終夜にわたって冷却させた。水(150cm)を加え、混合物をエーテル(2×150cm)で抽出した。合わせた抽出物を、塩酸水溶液(3M、150cm)、水(150cm)及びブライン(150cm)で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して溶媒を除去した。H NMRによる残留物の分析で、ビニル結合の不完全な還元が起きていたことが判明した。したがって、残留物を、上記と同一反応条件(ただし上記アルコールのところでのトルエンはなし)に供し、溶媒を除去して3,5−ビス(2−{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル}エチル)ベンジルアルコールを白色固形フォーム(2.105g、100%)として得た。
【数3】


ジクロロメタン(20cm)中の3,5−ビス(2−{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル}エチル)ベンジルアルコール(1.317g、1.114ミリモル)とピリジニウムクロロクロメート(0.480g、2.23ミリモル)の溶液を、還流下で1時間加熱し、終夜にわたって冷却させた。次いで、暗褐色スラリーを、溶離液としてジクロロメタンを用いて、シリカ充填物を通してろ過し、16(1.29g、98%)を白色固形フォームとして得た。
【数4】

【0044】
5,10,15,20−テトラキス{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)フェニル}ポルフィリン17
ジクロロメタン(111cm)中の15(774mg、1.44ミリモル)、ピロール(99.7μl、1.44ミリモル)及びトリフルオロ酢酸(111μl、1.44ミリモル)の溶液を、窒素雰囲気下で暗所で9日間と2.5時間撹拌した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(326mg、1.44ミリモル)を加え、反応物を20分間撹拌し、次いで、過剰の炭酸水素ナトリウム(ca.1.0g)を加えて中和し、溶離液としてジクロロメタンを用いて、シリカ充填物を通してろ過した。残留物を、ジクロロメタン−軽質石油(1:2)で溶出させて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製し、主バンド17(231mg、28%)を紫色固形物として収集した。
【数5】

【0045】
5,10,15,20−テトラキス[3,5−ビス(2−{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル}エチル)−フェニル]ポルフィリン18
16(1.22g、1.03ミリモル)、ピロール(71.5μl、1.03ミリモル)、トリフルオロ酢酸(80μl、1.0ミリモル)及びジクロロメタン(80cm)の溶液を、アルゴン雰囲気下で暗所で6日間と19時間撹拌した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン(234mg、1.03ミリモル)を加え、反応物を5分間撹拌し、次いでジエチルアミン(2cm)を加えて中和し、溶離液としてジクロロメタンを用いて、シリカ充填物を通してろ過して溶媒を除去した。残留物を、溶離液としてジクロロメタン−軽質石油を用いて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製した。メタノールを加えることにより、ジクロロメタン溶液から生成物が沈殿した。これを真空下で乾燥して18(207mg、16%)を泡状の紫色固形物として得た。
【数6】

【0046】
5,10,15,20−テトラキス{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)フェニル}ポルフィナート白金(II)17a
5,10,15,20−テトラキス{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル)フェニル}ポルフィリン17(150mg、63.9(マイクロモル))を、ベンゾニトリル(2cm)中の塩化白金(II)(34.0mg、0.128ミリモル)の還流下の溶液に加え、ベンゾニトリル(1.0cm)で洗浄し、混合物を窒素雰囲気下で21時間還流加熱した。ベンゾニトリルを除去し、残留物を、溶離液としてジクロロメタン−軽質石油(2:3)を用いて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製し、橙色固形物をジクロロメタン−メタノール混合液から再結晶化させて17a(143mg、88%)を橙色結晶として得た。
【数7】

【0047】
5,10,15,20−テトラキス[3,5−ビス(2−{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル}エチル)フェニル]ポルフィリナート白金(II)18a
5,10,15,20−テトラキス[3,5−ビス(2−{3,5−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル}−エチル)フェニル]ポルフィリン18(273mg、0.056ミリモル)を、ベンゾニトリル(1cm)中の塩化白金(II)(54.0mg、0.203ミリモル)の還流溶液に加え、窒素を急速に流しながら溶液を3.5時間還流加熱した。ベンゾニトリルを除去し、残留物を、溶離液としてジクロロメタン−軽質石油(1:4)を用いて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製し、18a(213mg、75%)を橙色固形物として得た。
【数8】

【0048】
フェニル分枝点(スチルベン)の間に不飽和ビニレン結合を含むデンドロンを有するフリーベースで白金キレート化されたポルフィリンと、ビニレン単位が飽和エチレン単位に転換されている当量のデンドリマーのPLQYを測定して結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
ルミネセンス効率はスチルベンの水素化によって概ね高められた。ビニレンポルフィリン22及び23では、フィルムのPLQYは溶液のPLQYの20%未満であった。水素化によってデンドリマー18が得られ、フィルムPLQYは溶液PLQYの44%に向上した。17では、より低い(第1の)ジェネレーションのデンドロンによって、コアの良好な単離はもたらされず、したがってフィルムPLQYは依然低い。白金ポルフィリンスチルベンデンドリマー22a及び23aでは、溶液PLQYは低く、ジェネレーションが増進するにしたがって低下した。デンドロン中にエチレン結合を有する白金ポルフィリンデンドリマー17a及び18aでは、溶液PLQYはより高く、ジェネレーションの増進に伴う低下はなかった。17a及び18aでのフィルムPLQYも、22a及び23aでのフィルムPLQYに対して3倍高く、これはデンドロン中の不飽和を除くことによるPLQYの向上を示している。
【0051】
(例2)
本例を図5に示し、そのコアの一部としてのイリジウムカチオンを有し、且つ、ビニレン単位の水素化で生成した飽和単位を有するデンドリマーの生成方法を示す。
【0052】
2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−5−[3’’,5’’−ビス(3’’’,5’’’−ジ−tert−ブチルスチリル)スチリル]ピリジン20
3,5−ビス(3’,5’−ジ−tert−ブチルスチリル)スチレン19(2.161g、4.06ミリモル)、2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−5−ブロモピリジン9(997mg、3.69ミリモル)、炭酸ナトリウム(430mg、4.06ミリモル)、ジ−tert−ブチルクレゾール(407mg、1.85ミリモル)、trans−ジ(μ−アセタート)−ビス[ο−(ジ−ο−トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)(174mg、0.185ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド(50cm)の混合物を、高真空とアルゴンに交互に曝して脱酸素化し、次いで、130℃で21時間加熱した。水(100cm)とジクロロメタン(100cm)を加えた。水層を分離してジクロロメタン(3×50cm)で抽出した。合わせた有機層を水(5×200cm)、ブライン(200cm)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥して溶媒を除去した。粗生成物を、溶離液として酢酸エチル/軽質石油(1:8)を用いて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製した。主バンド部を単離し、溶媒を完全に除去して橙色オイル状物を得た。これをジクロロメタン/メタノールから再結晶化させて20(810mg、30%)の橙色固形物を得た。
【数9】

【0053】
2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−5−[2’’−(3’’’,5’’’−ビス[2’’’’−(3’’’’’,5’’’’’−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル)エチル]ピリジン21
20(668mg、0.925ミリモル)、5%パラジウム担持のカーボン(100mg、0.046ミリモル)及びテトラヒドロフランの混合物を脱酸素化して、水素(1atm)下で17時間撹拌した。混合物を溶離液としてエーテルを用いてCelite(登録商標)を通してろ過し、溶媒を除去して褐色オイル状物を得た。粗生成物を、溶離液として酢酸エチル−軽質石油(1:15)を用いて、シリカによるカラムクロマトグラフィーで精製した。主バンド部を単離し、溶媒を完全に除去して21(550mg、82%)を淡い色のオイル状物として得た。
【数10】

【0054】
トリス[3,5−ジフルオロ−2−(5’−[2’’−(3’’’,5’’’−ビス[2’’’’−(3’’’’’,5’’’’’−ジ−tert−ブチルフェニル)エチル]フェニル)エチル]ピリジニル)フェニル−C,N]−イリジウム24
21(177mg、0.24ミリモル)、三塩化イリジウム三水和物(34mg、0.097ミリモル)、水(1cm)及びエトキシエタノール(3cm)の混合物を脱気し、次いで、撹拌し、アルゴン下で18時間加熱還流した。黄色沈殿物が生成するまで水を加えた。これをろ別し、ジクロロメタンに溶解してろ過し、溶媒を除去して黄色固形物を得た。粗生成物を、溶離液として酢酸エチル−軽質石油(1:8)を用いて、シリカ充填物を通し、ベースラインの不純物を除去して黄色固形物(130mg)を得た。黄色固形物(122mg)、21(280mg、0.385ミリモル)と銀トリフレート(9mg、0.0363ミリモル)の混合物をアルゴン雰囲気下、150℃で24時間加熱した。粗混合物を、溶離液としてジクロロメタン−軽質石油(1:4)を用い、シリカによるカラムクロマトグラフィーで分離して24(40mg、23%)を黄色固形物として得た。
【数11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンドリマーの一部を形成するために少なくとも1つのデンドロンを改変するための方法であって、
前記デンドロンが次式、
FO(デンドライト−Q
(式中、FOは、直接か、又は1個以上の反応可能な不飽和単位を含むことができる結合基を介して、前記デンドライトの第1分枝原子若しくは分枝基に結合した官能基であり、同じであっても異なっていてもよい各「デンドライト」は、分枝原子若しくは分枝基及び任意選択的に結合基を含み、FO以外にも2個以上の基と結合していなければならない前記第1分枝原子若しくは分枝基を少なくとも含み、且つ、前記デンドライトの各アームの末端基がアリール基若しくはヘテロアリール基であるデンドライトであり、前記デンドライトの少なくとも1つ、又は存在すればFOへの前記結合基は、1個以上の反応可能な不飽和単位を含み、yは1又は2以上であり、Qは表面基であり、aは0又は整数である)を有し、
化学選択的なやり方で少なくとも1つの前記反応可能な不飽和基を反応させて、より小さい不飽和度の基を生成させることを含む、上記方法。
【請求項2】
次式のデンドリマー、
CORE−[デンドライト−Q
(式中、Q及びaは上記の定義通りであり、xは1又は2以上であって、xが1を超える場合、各デンドライト−Qは同じであっても異なっていてもよく、COREは原子又は基を表し、COREの末端はその「デンドライト」若しくは各「デンドライト」中の第1分枝原子若しくは分枝基への単結合であり、同じであっても異なっていてもよい各「デンドライト」は、分枝原子若しくは分枝基及び任意選択的に結合基を含むデンドライトであり、CORE及びデンドライトのうちの少なくとも1つは少なくとも1個の反応可能な不飽和基を含み、ただし、そのデンドライト若しくは各デンドライトの各アームの末端基はアリール基若しくはヘテロアリール基である)を改変するための方法であって、
化学選択的なやり方で少なくとも1つの反応可能な不飽和基を反応させて、より小さい不飽和度の基を生成させることを含む、上記方法。
【請求項3】
前記反応可能な不飽和基を完全に飽和させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
結合基だけを反応させる、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応可能な不飽和基がビニレン基又はアセチレニル基である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記デンドライト中の第1分枝点が(ヘテロ)アリール基又は縮合(ヘテロ)アリール基である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記デンドライト中のすべての分枝点がアリール、ヘテロアリール又は縮合(ヘテロ)アリールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記デンドライト中の前記第1分枝点が1,3,5−置換フェニル基又は3,6−N−置換カルバゾール基である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応可能な不飽和基が、前記コアの一部であり、デンドライトの前記第1分枝基に直接結合している、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記デンドリマーが非対称である、請求項2から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記デンドリマーが有機金属デンドリマーである、請求項2から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記デンドリマーがリン光性であり、そのコアとしてイリジウム錯体を含み、前記デンドロンが前記イリジウム錯体のアリール及び窒素ヘテロアリール含有配位子に結合している、請求項2から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
化学選択的反応によって反応した基を続いて更に反応させる、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化学選択的反応が付加反応である、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化学選択的反応が水素化である、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記化学選択的反応が、ハロゲン水素化、ハロゲン化、ヒドロシリル化又はヒドロホウ素化及び後続の酸化を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記化学選択的反応が付加環化である、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応可能な不飽和基が、1つの少なくとも本質的に部分的に共役したデンドライトを有するデンドリマーの一部である、請求項2から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応可能な不飽和基が、1つを超える少なくとも本質的に部分的に共役したデンドライトを含むデンドリマーの一部であり、前記デンドライトが、前記コアの一部を形成する金属カチオンと錯体を形成している少なくとも2つの配位子と結合しており、前記化学選択的反応が前記コア中で起こる、請求項2から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記有機金属デンドリマーが、前記コアの一部としてイリジウムを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記デンドリマーが、パターニングを可能にする1個以上の表面基を有する、請求項2から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記デンドリマーから固体フィルムを作製し、そのフィルムが可視光を発することができる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのデンドロンをデンドリマー前駆体と反応させることを含むデンドリマーの作製方法であって、前記デンドロンが、請求項1、及び請求項3から22までのいずれか一項に記載の方法によって改変されたものである、上記方法。
【請求項24】
請求項1から23までのいずれか一項に記載の方法によって常に得られるデンドロン又はデンドリマー。
【請求項25】
基板、電極、任意選択的な第1電荷輸送層、発光層、任意選択的な第2電荷輸送層及び対向電極の層を順に含む有機発光デバイスであって、前記発光層、任意選択的な第1電荷輸送層及び任意選択的な第2電荷輸送層のうちの少なくとも1つが請求項24に記載のデンドリマーのフィルムである、上記有機発光デバイス。
【請求項26】
前記発光層が請求項24に記載のデンドリマーのフィルムである、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
少なくとも1つの電荷輸送層を含む、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
そのコアの一部としての金属カチオンと、
以下の構造
【化1】


(式中、Yは酸素であり、その場合−Z−Z−は−N=CR−を表すか、又はYは−N−Rであり、その場合−Z−Z−はベンゼン環又は−N=CRの一部を形成し、Rは任意選択的に置換されたベンゼン基を表し、Rは任意選択的に置換されたアルキル若しくはアリール基を表す)を含む少なくとも1つのデンドロンとを有する有機金属デンドリマーであって、前記デンドロンが、前記コアのエチレン、置換エチレン、ビニレン若しくはアセチレニル基を介して結合している、上記有機金属デンドリマー。
【請求項29】
コアの一部として金属カチオンを有する有機金属デンドリマーであって、前記コアが、エチレン若しくは置換エチレン基によって、少なくとも1つのデンドロンの第1分枝基に直接結合している、上記有機金属デンドリマー。
【請求項30】
前記デンドロンが(ヘテロ)アリール結合及び/又は分枝点を含む、請求項29に記載のデンドリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−229155(P2010−229155A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140164(P2010−140164)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【分割の表示】特願2004−532291(P2004−532291)の分割
【原出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願人】(500189296)イシス イノベイション リミテッド (10)
【出願人】(504353877)ザ ユニバーシティ コート オブ ザ ユニバーシティ オブ セント アンドルーズ (6)
【Fターム(参考)】