説明

反応性パテ材およびその製造法

【課題】反応性樹脂を主成分とする主剤からなる第1成形体および硬化剤を主成分とする第2成形体が並行配置されたタイプの反応性パテ材において、製品流通および保管期間中に反応性樹脂を主成分とする第1成形体の硬化剤を主成分とする第2成形体と対向する側の端面ないし側縁部分またはその周辺部分の硬化反応が進みがたく、また硬化剤として揮発性のある比較的反応速度が大きなものを配合したり使用したりすることも可能な反応性パテ材およびその製造法を提供する事を目的とする。
【解決手段】反応性樹脂を主成分とする主剤からなる棒状の第1成形体(1)と硬化剤を主成分とする棒状の第2成形体(2)との間に、第1成形体(1)および第2成形体(2)のどちらとも反応しない非反応性樹脂を主成分とする棒状の第3成形体(3)を接触するように配置し、かつその並行接触配置体の上下両面に離型性シート(4)(4)が貼着されている反応性パテ材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性樹脂を主成分とする主剤からなる棒状の成形体と、硬化剤を主成分とする棒状の成形体との間に、非反応性樹脂を主成分とする棒状の成形体を接触するように配置したタイプの反応性パテ材およびその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−234123号公報
【0003】
<第1のタイプの反応性パテ材>
反応性パテ材として、反応性樹脂を主成分とする主剤からなる棒状の第1成形体と、硬化剤を主成分とする棒状の第2成形体とを、別々に包装したものが知られている(第1のタイプの反応性パテ材とする)。各成形体の製造工程における取り扱いを容易にし、かつ包装後の成形体が包材に粘着するのを防止するため、各成形体の両面には離型性シートを貼着しておくのが通常である。
【0004】
この第1のタイプの反応性パテ材を使用するときには、第1成形体および第2成形体のそれぞれから必要量を切り取り、両者を指で混練してから、パテ材として用いる。家庭工作用には、両成形体の形状を同一にして、目分量で混合するときに多少の誤差があってもほぼ等量の混合が達成する事が出来るようにすることが多い。
【0005】
<第2のタイプの反応性パテ材>
また、別のタイプの反応性パテ材(第2のタイプの反応性パテ材とする)として、反応性樹脂を主成分とする主剤からなる棒状の第1成形体(101)と、硬化剤を主成分とする棒状の第2成形体(102)とを、若干の距離をあけて並行に配置し、かつそれらの第1成形体および第2成形体の並行配置体(101)(102)の両面に離型性シート(103)(103)を貼着し(図4(A)参照)、さらに全体を包材(104)で包装したものが知られている(図4(B)参照)。ここで、第1成形体(101)と第2成形体(102)とを若干離すようにするのは、両者が接触すると接触界面において硬化が急速に進むからである。
【0006】
この第2のタイプの反応性パテ材は、製造工程における、第1成形体(101)および第2成形体(102)の形成のための押出機からの吐出、吐出後の並行配置体(101)(102)の両面への離型性シート(103)(103)の貼着、さらには包装までの一連の工程を自動化できるので、生産性の点で好ましい。しかもその使用に際してこの並行配置体(101)(102)を巾方向に横断して切り取れば、第1成形体(101)および第2成形体(102)の各ピースが所定の重量割合で得られるので、両ピース(101)(102)を混練するだけで所定の主剤・硬化剤の混合比となり、上記第1タイプの反応性パテに比し使い勝手の点でも好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記第2のタイプの反応性パテ材にあっては、第2成形体(102)の主成分である硬化剤として適度の硬化速度を有するものを用いると、そのような硬化剤は一般に若干の揮発性を有するので、製品の流通および保管期間中にその揮発ガス(具体的にはアミンガス)が第1成形体(101)の主成分である反応性樹脂に影響を与え、比較的短期間で第1成形体(101)の第2成形体(102)と対向する側の端面ないし側縁部分またはその周辺部分が硬化してしまい、さらに保存期間が長くなると実際の使用に際して支障を生ずるようになることを免れない。
【0008】
そこで、第2成形体(102)の硬化剤として揮発性の小さい硬化剤(例えば、第1成形体(101)の主剤がビスフェノールA型エポキシ樹脂であるときはポリアミド系硬化剤)を使用する工夫もなされているが、使用に際して混合後の硬化速度が過度に遅くなる傾向がある上、その硬化剤中に微量に残留する反応性の揮発ガスにより、製品流通および保管期間が長くなると、依然として第1成形体(101)の第2成形体(102)と対向する側の端面ないし側縁部分またはその周辺部分が硬化してくることを有効には防止できない。
【0009】
また、第1成形体(101)および第2成形体(102)からなる第2のタイプの反応性パテ材の全体を包装する包材(104)として孔明き包材を用い、第2成形体(102)から揮散するガス状の硬化剤をできるだけすみやかに外部に逃がすような工夫もなされているが、依然として第1成形体(101)の第2成形体(102)と対向する側の端面ないし側縁部分またはその周辺部分が硬化することを充分には防止できない。
【0010】
<第3のタイプの反応性パテ材>
上記の問題に鑑み、特許文献1に記載の発明に係る反応性パテ材(第3のタイプの反応性パテ材とする)が提案されている。これは、図5(A)に示すように、第1成形体(101)と第2成形体(102)とが、溝状の隙間(105)を介して並行に配置され、かつその並行配置体の上下両面に離型性シート(103)(103)が貼着されている反応性パテ材であって、溝状の隙間(105)において、両離型性シート(103)(103)同士が互いに接触または近接するようにされていると共に、それら両離型性シート(103)(103)が、上記の第1成形体(101)および第2成形体(102)の相対向する対向端面(101a)(102a)をも被覆しているものである。これは、図5(B)に示すように、上記の溝状の隙間(105)において離型性シート(103)(103)を第1および第2成形体(101)(102)の相対向する対向端面(101a)(102a)に密着させるために、ローラー(R)などによる離型性シート(103)(103)の押圧によって形成されたものである。
【0011】
この構成により、第2成形体(102)の硬化剤中に微量に残留する反応性の揮発性ガスの揮散が有効に防止され、その流通過程や保管過程において、第1成形体(101)の第2成形体(102)と対向する側の端面ないし側縁部分またはその周辺部分が硬化しにくい反応性パテ材が提供できたものである。また、硬化剤として揮発性のある比較的反応速度の大きなものを配合したり使用したりすることも可能となるので、硬化剤の選択の巾が拡がり、パテ材使用時の使い勝手も良い反応性パテ材が提供できたものである。
【0012】
しかしながら、この第3のタイプの反応性パテ材にあっても、上記反応性の揮発性ガスの揮散が完全に防止されたものではなく、長期にわたる保存中に第1成形体(101)と第2成形体(102)との各々における、隙間(105)に面する部分が硬化してしまうなどの問題を依然有しており、更に優れた反応性パテ材が望まれていた。
【0013】
本発明は、このような背景下において、上記第2のタイプの反応性パテ材のように第1成形体と第2成形体を若干の距離をあけて並行配置したものの両面に離型性シートを貼着し、さらに全体を包装したものにおいて、製品の流通および保管期間中に第1成形体の第2成形体と対向する側の端面ないし側縁部分またはその周辺部分の硬化反応が進みがたく、また硬化剤として揮発性のある比較的反応速度の大きなものを配合したり使用したりすることも可能であって、かつ、上記第3のタイプの反応性パテ材よりも更に長期にわたる保存性に優れる反応性パテ材を、工業的に有利に製造できる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の請求項1に記載の反応性パテ材は、反応性樹脂を主成分とする主剤からなる第1成形体(1)と、硬化剤を主成分とする第2成形体(2)との間に、第1成形体(1)および第2成形体(2)のどちらとも反応しない非反応性樹脂を主成分とする第3成形体(3)を接触するように配置したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の反応性パテ材は、上記請求項1に記載の反応性パテ材において、上記の第1成形体(1)と第2成形体(2)と第3成形体(3)とからなる、並行接触配置体の上下両面に離型性シート(4)(4)が貼着されたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の反応性パテ材は、上記請求項2に記載の反応性パテ材において、上記の、離型性シート(4)(4)が貼着された状態にある並行接触配置体の全体が、包材(5)で包装されたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の反応性パテ材は、上記請求項1〜3のいずれかに記載の反応性パテ材において、第1成形体(1)がエポキシ樹脂を主成分とする主剤の成形体であり、第2成形体(2)がポリアミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤およびポリチオール系硬化剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を主成分とする硬化剤の成形体であり、第3成形体(3)がキシレン樹脂等の非反応性樹脂を主成分とする成形体であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載の反応性パテ材の製造法は、反応性樹脂を主成分とする主剤からなる主剤組成物と、硬化剤を主成分とする硬化剤組成物との間に、主剤と硬化剤のどちらとも反応しない非反応性樹脂を主成分とする非反応性組成物が挟まれるように、上記の各組成物をそれぞれ押出機から吐出して、並行に配置された、棒状の第1成形体(1)と棒状の第2成形体(2)との間に第3成形体(3)が配置された、並行接触配置体を形成していく工程を実施することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項6に記載の反応性パテ材の製造法は、請求項5に記載された工程に際して、または当該工程に続いて、上記の並行接触配置体の上下両面に離型性シート(4)(4)を貼着する工程を実施することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項7に記載の反応性パテ材の製造法は、請求項6に記載された工程に際して、または当該工程に続いて、上記の離型性シート(4)(4)が貼着された並行接触配置体を巾方向に横断するように、所定の長さにカットする工程を実施することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の請求項8に記載の反応性パテ材の製造法は、請求項7に記載された工程に際して、または当該工程に続いて、上記のカットされた並行接触配置体を包材(5)で包装する工程を実施することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の反応性パテ材は第1成形体(1)および第2成形体(2)の間に第3成形体(3)が並行接触配置され、その上下面は離型性シート(4)(4)で被覆されている。そのため第2成形体(2)の硬化剤中に微量に残留する反応性揮発ガスの揮散が有効に防止され、その流通経路や保管過程において、第1成形体(1)と第2成形体(2)の一部が硬化することがない。
【0023】
加えて、従来のこのタイプの反応性パテ材にあっては、硬化剤として反応速度の高いものを使用したりすることは不可能であったが、本発明によれば、硬化剤として揮発性のある比較的反応速度の大きなものを配合したりすることも可能となるので、硬化剤選択の巾が拡がり、パテ使用時の使い勝手も良くなるという利点もある。
【0024】
また、本発明の反応性パテ材にあっては、従来の反応性パテ材よりも更に長期にわたる保存性に優れる反応性パテ材を提供できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<反応性パテ材>
本発明の反応性パテ材は、図1及び図2(A)に示すように、棒状の第1成形体(1)と棒状の第2成形体(2)の間に第3成形体(3)を接触するように配置した並行接触配置体の上下両面に、離型性シート(4)(4)が貼着された基本構成を有する。
【0026】
第1成形体(1)は反応性樹脂を主成分とする主剤からなり、第2成形体(2)は上記反応性樹脂を硬化する作用を有する硬化剤を主成分とするものであり、第3成形体(3)は上記反応性樹脂および硬化剤と反応する作用を有さない非反応性樹脂を主成分とする。
【0027】
反応性樹脂と硬化剤と非反応性樹脂との組み合わせに特に限定はないが、エポキシ樹脂とその硬化剤および非反応性樹脂の組み合わせが重要となる。
【0028】
第1成形体(1)の反応性樹脂がエポキシ樹脂であるときの樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂などが用いられる。これらのエポキシ樹脂に、グリシジルエーテル系希釈剤をはじめとする反応性希釈剤や、非反応性希釈剤を併用することもできる。
【0029】
第2成形体(2)の硬化剤としては、例えば、ポリアノアミド系硬化剤、脂肪族ポリアミン系硬化剤、芳香族ポリアミン系硬化剤、ポリチオール系硬化剤などの硬化剤や、これらの2種以上の混合物からなる各種の硬化剤が用いられる。これらの中では、ポリアミノアミド(ポリアミドと呼ばれる高分子領域の硬化剤や、これと構造的に類似し同じ機能を持つ単量体単位の低分子硬化剤化合物)、ポリチオール硬化剤、またはこれらに硬化速度を調整するための第3級アミンなどを配合することもできる。
【0030】
第3成形体(3)の非反応性樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオール、ボリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、液状ニトリルゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、キシレン樹脂などが用いられる。また、これらにベンジルアルコールや流動パラフィンなどの非反応性希釈剤を併用することもできる。
【0031】
第1成形体(1)、第2成形体(2)、第3成形体(3)のそれぞれには主成分のほかに、多量のフィラーを配合することが多い。その他に必要に応じて、膨形用中空フィラー、着色剤、その他の添加剤を配合することもできる。フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、タルク、クレー、焼成クレー、焼成タルク、カオリン、微粉マイカ、シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、セピオライト、ベントナイト、ゼオライト、酸化亜鉛などがある。膨形用中空フィラーとして、例えば、有機質マイクロバルーン、シリカバルーン、ガラスバルーン、フライアッシュバルーンなどがある。顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンなどがある。添加剤としては、分散剤、消泡剤、タレ防止剤、沈降防止剤、スコーチ防止剤、レベリング剤、発泡剤、酸化防止剤、光安定剤などがある。
【0032】
第1成形体(1)、第2成形体(2)、第3成形体(3)の断面形状は棒状とする。この場合、図1および図2に示すように、矩形断面の板棒状にすることが多いが、第1成形体、第2成形体の側面は片台形断面とすることもでき、その他長円形断面、円形断面のような断面形状とすることもできる。その他、第1成形体(1)と第2成形体(2)の間に第3成形体(3)を接触配置させることが出来る形状ならば、どの様な形状でも差し支えない。例えば、図3(A)に示したように、円柱状の第2成形体(2)を取り巻くように、円管状の第1成形体(1)と第3成形体(3)とが配置された形状や、図3(B)に示したように、各成形体が平板状に形成されて、各々の広い面同士が接触するようにされた形状や、図3(C)に示したように、図3(B)に示したものの更に周囲を第3成形体(3)で包んだようにした形状などが挙げられる。
従来は、例えば図4や図5に示すように、第1成形体(1)と第2成形体(2)との間に空間を設ける必要があったため、実施可能な形状が限られていたが、本発明では、第1成形体(1)と第2成形体(2)の間が第3成形体(3)によって保持されるものであるため、上記のように種々の形状での実施が可能である。
【0033】
第1成形体(1)、第2成形体(2)の太さ(断面積)は、これを同一にして、目分量で混合するときに多少の誤差があってもほぼ等量の混合が達成できるようにすることが多い。しかしながら、たとえば、第1成形体(1)の方を太くし、第2成形体(2)の方の太さを細くしても差し支えない。というのは、これらの第1成形体(1)、第2成形体(2)は後述のように並行配置体となっており、その並行配置体の巾方向に横断するようにカットして用いるものであるので、常に一定の混合比率が得られるからである。
【0034】
第3成形体(3)は、第1成形体(1)と第2成形体(2)の間に接触するように、並行接触配列される。その巾は適宣に設定できるもので特に限定しないが、薄すぎると製造工程上困難となり、広すぎると物量的に主剤と硬化剤の反応生成物を希釈することになるので、硬化物物性に影響を与えない設定を行う必要がある。
【0035】
ここで、後述の実施例では、第1成形体(1)、第2成形体(2)のそれぞれの巾12mmに対して第3成形体(3)を巾2mmとしている。つまり、並行接触配置体の全巾に対する第3成形体(3)の巾の比率は、(2/(12+12+2)×100)=7.69%となる。この比率は、上記理由により、2%〜20%の範囲内で実施することが望ましい。
【0036】
第1成形体(1)と第2成形体(2)と第3成形体(3)とからなる並行接触配置体の上下両面には、離型性シート(4)(4)が貼着される。ここで離型性シート(4)(4)としては、たとえば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、紙、ポリエチレンラミネート紙などの薄膜シートをシリコーン形剥離剤などの離型剤で処理したシート、その材質自体が離型性を有するシート、樹脂に剥離剤を内添して製膜したシートなどが用いられる。
【0037】
<反応性パテ材の製造法>
本発明の反応性パテ材は、上記の構成を有する限りにおいて任意の方法により製造することができるが、工業的には、
(イ)反応性樹脂を主成分とする主剤からなる主剤組成物と、硬化剤を主成分とする硬化剤組成物との間に、主剤と硬化剤のどちらとも反応しない非反応性樹脂を主成分とする非反応性組成物が挟まれるように、上記の各組成物をそれぞれ押出機から吐出して、並行に配置された、棒状の第1成形体(1)と棒状の第2成形体(2)との間に第3成形体(3)が配置された、並行接触配置体を形成していく工程、
(ロ)前工程に際してまたは前工程に続いて、上記の並行接触配置体の上下両面に離型性シート(4)(4)を貼着する工程、
(ハ)上記の離型性シート(4)(4)で被覆された並行接触配置体を巾方向に横断するように、所定の長さにカットする工程、
(ニ)上記のカットされた並行接触配置体を包材(5)で包装する工程、を実施する方法により製造することが特に好ましい。
【0038】
上記工程(ニ)における包材(5)としては、たとえば、ヒートシール可能なフィルム、内面となる側にシーラント層を設けた基材フィルム、アルミニウム箔ラミネートフィルム、紙、樹脂コート紙、不織布などを用いることができる。
【0039】
また、この包材(5)として孔あき包材を用いることにより、第2成形体(2)から揮散するおそれのあるアミン類などの揮発性ガスを袋外に放出させるようにすることも好ましい。
【0040】
<用途>
本発明の反応性パテ材は、ホビー用をはじめとする各種材料の接着のほか、自動車バンパーの補修、木工家具類の凹部補修、浴室のタイル補修、フローリングの補修、陶磁器の補修、コンクリートのひび割れ補修、外装仕上げ材の剥離部の補修など補修目的に有用である。
【0041】
<使い方>
本発明の反応性パテ材を使用するにあたっては、包材(5)を開封してから、並行接触配置体を巾方向に横断するようにカットして必要量の第1成形体(1)と第2成形体(2)と第3成形体(3)の並行接触配置体のピースを得る(離型性シート(4)(4)はカット前または後に除去する)。ついで両ピースを指で混練してから、対象物を接着したり、必要箇所の充填に用いたりする。その後は放置するだけで、接着や補修の目的が達成される。
【実施例】
【0042】
次に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。以下「部」とあるのは重量部である。
図2(A)は本発明の反応性パテ材の一例を示した巾方向の断面図である。
【0043】
反応性樹脂を主成分とする主剤からなる主剤組成物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100部、炭酸カルシウム100部、タルク100部、および少量の中空フィラーと顔料よりなる組成物を準備した。
【0044】
硬化剤を主成分とする硬化剤組成物としてポリアミド樹脂を60部、ポリアミン樹脂40部、炭酸カルシウム100部、タルク100部、その他少量の中空フィラーと顔料よりなる組成物を準備した。
【0045】
実施例1の非反応性樹脂を主成分とする非反応性組成物としてキシレン樹脂100部、炭酸カルシウム200部、その他少量の中空フィラーと顔料よりなる組成物を準備した。
【0046】
実施例2の非反応性樹脂を主成分とする非反応性組成物としてポリオール(ビスフェノールAエチレンオキシド)100部、炭酸カルシウム200部、その他少量の中空フィラーと顔料よりなる組成物を準備した。
【0047】
離型性シート(4)(4)として片面にシリコーン系離型剤による剥離処理を施した厚み50μmのポリエチレンフィルムを準備した。また包材(5)として、厚み50μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に厚み30μmのポリエチレンシーラント層を設けたラミネートフィルムに、0.3mmφの孔を5〜6個/cm2の割合で設けた孔あき包材を準備した。
【0048】
上記3種の組成物をそれぞれの押出機に供給し、それぞれのダイから、搬送ベルト上を走行する離型性シート(4)(4)の剥離処理面上に、厚み3.5mm、巾12mmの長尺の第1成形体(1)と厚み3.5mm、巾12mmの長尺の第2成形体(2)との間に、厚み3.5mm、巾2mmの第3成形体(3)が配置された並行接触配置体として吐出すると共に、その上から離型性シート(4)(4)を離型処理面が並行接触配置体側となるように被覆貼着していった。
【0049】
続いて、全体を所定の長さに巾方向に横断するようにカットし、上述の包材(5)で包装した。これにより図2(B)に示すような反応性パテ材が得られた。
【0050】
この反応性パテ材を、温度40℃の加速試験に供して、第1成形体(1)と第2成形体(2)と第3成形体(3)との接触部分における硬化の有無を見ると共に、何日経過したときに実際の使用に際して支障を生ずるかどうかの、保存性の評価を行った。
【0051】
次に、比較例1として、次の反応性パテ材を製作した。
上記のうち、主剤組成物と硬化剤組成物をそれぞれの押出機に供給し、それぞれのダイから、搬送ベルト上を走行する離型性シート(103)(103)の剥離処理上に、厚み3.5mm、巾12mmの長尺の第1成形体(101)と厚み3.5mm、巾12mmの長尺の第2成形体(102)を5mmの溝状の間隔をあけて並行に配置されるように吐出すると共に、その上から離型性シート(103)(103)を離型処理面が並行接触配置体側となるように被覆貼着していった(図4(A)参照)。続いて、全体を所定の長さに巾方向に横断するようにカットし、上述の包材(104)で包装した。これにより図4(B)に示すような反応性パテ材(比較例1)が得られた。
【0052】
また、特許文献1に記載の、従来における第3のタイプのパテ材についても、比較例2として製作した。これは、図4(A)に示すものの、第1成形体(101)と第2成形体(102)との間における離型性シート(103)(103)を、ローラーによって上方から押圧して得られた、図5(C)に示すような反応性パテ材である。
上記のようにして得られた各比較例の反応性パテ材につき、上記実施例と同様にして保存性の評価を行った。
【0053】
<結果>
各実施例と各比較例との保存性の評価結果を表1に示す。表中で、○は初期状態に比して変化なし、△は端縁部分のタックがなくなりかけた時点、×は実際の使用に際して支障を生ずるようになった時点(端縁部分のタックがなくなると共に固くなるため、折ったときにクラックが入り、第1成形体(1)(101)および第2成形体(2)(102)の混練に際して「ブツ」を生ずるようになった時点)である。
なお、表中の「表面」とは、図2(B)及び図4(B)、図5(C)上における上下側の面であり、同「外側の側面」とは同各図上における左右の外側面である。
また、同「接触部」とは、実施例においては、第1成形体(1)あるいは第2成形体(2)の、第3成形体(3)と接する面であり、比較例2においては、図5(C)で「V」形とされた部分における第1成形体(101)と第2成形体(102)との接触部分である。また、同「間隙部」とは、比較例1における第1成形体(101)と第2成形体(102)との対向面である。
また、同「混練物」とは、第1成形体(1)(101)と第2成形体(2)(102)とを混練した状態を指す。
【0054】
表1に示すように、比較例1では、60日経過後に支障が生じるようになり、比較例2では、240日経過後に支障が生じるようになった。これに対し、実施例では270日までは何ら支障なく使用でき、従来の反応パテ材よりも長期にわたる保存性に優れることが確認できた。
【0055】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の反応性パテ材の構成を示した斜視図である。
【図2】(A)は本発明の反応性パテ材を示した巾方向の断面図であり、(B)は本発明の反応性パテ材を包装した状態を示した巾方向の断面図である。
【図3】(A)〜(C)共、本発明の反応性パテ材における、主剤組成物と硬化剤組成物の間に非反応性組成物を接触配置させる例を示した斜視図である。
【図4】(A)は従来タイプの反応性パテ材を示した巾方向の断面図であり、(B)は包装された従来タイプの反応性パテ材を示した巾方向の断面図である。
【図5】(A)は他の従来タイプの反応性パテ材を示した巾方向の断面図であり、(B)は(A)の反応性パテ材の製造工程を示す斜視の説明図である。また、(C)は他の従来タイプの反応性パテ材の異なる形態を示した巾方向の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
(1)…第1成形体
(2)…第2成形体
(3)…第3成形体
(4)…離型性シート
(5)…包材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性樹脂を主成分とする主剤からなる第1成形体(1)と、硬化剤を主成分とする第2成形体(2)との間に、第1成形体(1)および第2成形体(2)のどちらとも反応しない非反応性樹脂を主成分とする第3成形体(3)を接触するように配置したことを特徴とする反応性パテ材。
【請求項2】
上記の第1成形体(1)と第2成形体(2)と第3成形体(3)とからなる、並行接触配置体の上下両面に離型性シート(4)(4)が貼着されたことを特徴とする、請求項1に記載の反応性パテ材。
【請求項3】
上記の、離型性シート(4)(4)が貼着された状態にある並行接触配置体の全体が、包材(5)で包装されたことを特徴とする、請求項2に記載の反応性パテ材。
【請求項4】
第1成形体(1)がエポキシ樹脂を主成分とする主剤の成形体であり、
第2成形体(2)がポリアミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤およびポリチオール系硬化剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上を主成分とする硬化剤の成形体であり、
第3成形体(3)がキシレン樹脂等の非反応性樹脂を主成分とする成形体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の反応性パテ材。
【請求項5】
反応性樹脂を主成分とする主剤からなる主剤組成物と、硬化剤を主成分とする硬化剤組成物との間に、主剤と硬化剤のどちらとも反応しない非反応性樹脂を主成分とする非反応性組成物が挟まれるように、上記の各組成物をそれぞれ押出機から吐出して、
並行に配置された、棒状の第1成形体(1)と棒状の第2成形体(2)との間に第3成形体(3)が配置された、並行接触配置体を形成していく工程を実施することを特徴とする反応性パテ材の製造法。
【請求項6】
請求項5に記載された工程に際して、または当該工程に続いて、
上記の並行接触配置体の上下両面に離型性シート(4)(4)を貼着する工程を実施することを特徴とする反応性パテ材の製造法。
【請求項7】
請求項6に記載された工程に際して、または当該工程に続いて、
上記の離型性シート(4)(4)が貼着された並行接触配置体を巾方向に横断するように、所定の長さにカットする工程を実施することを特徴とする反応性パテ材の製造法。
【請求項8】
請求項7に記載された工程に際して、または当該工程に続いて、
上記のカットされた並行接触配置体を包材(5)で包装する工程を実施することを特徴とする反応性パテ材の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−84679(P2007−84679A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274821(P2005−274821)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000127031)株式会社アルテコ (6)
【出願人】(393000320)日東化成工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】