説明

反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物

【課題】多量の溶剤を揮散しないポリウレタン水性組成物を用いた水性プライマー、これを用いたウレタン系防水積層体及びこのウレタン系防水積層体の施工方法の提供。
【解決手段】ウレタンプレポリマー(A)及びアルコキシシラン誘導体(S)からなるポリウレタン水性組成物(B)と、ヒドラジド化合物(C)とを含有する反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物である。ウレタンプレポリマー(A)は、有機ポリイソシアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)と、ケトン性カルボニル基を含有しイソシアネート基との反応性を有する少なくとも1個の活性水素を含有するケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)との反応により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物に関し、より詳細には、土木建築現場等において各成分を所定の割合で調合する必要のない一液型ポリウレタン水性プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、ゴム弾性、耐摩耗性、耐久性などの諸物性に優れており、従来から土木建築構造体に塗布する防水材として広く利用されている。
【0003】
ウレタン防水材は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを主成分とする主剤と、アミノ基又は水酸基を有する硬化剤とからなる二液型の溶剤系又は無溶剤系で構成されており、土木建築現場において二液を所定の割合で調合してハンドミキサーを使用して混合後、コテ又はローラーによって塗布して塗膜を硬化形成するものや、二液衝突混合技術を持つ機械スプレーによって塗布して塗膜が超速で硬化形成するものなどがある。また、空気中の湿気によって環状化合物が分解し、開環後の分子中に水酸基又はアミノ基を有する構造体となってイソシアネート基との反応が進行する潜在性硬化剤を利用した一液湿気硬化型のものがある。
【0004】
このようにして形成されたウレタン−ウレア樹脂は強靭な物性を示し、優れた防水機能を有するが、無機躯体へ直接塗布した場合に無機躯体との密着性に問題があるため、通常は無機躯体をプライマーで処理した後、ウレタン防水材を塗布する工程をとることが好ましい。ここで使用されるプライマーとしては、湿気硬化型ポリウレタン系のプライマーが挙げられるが、作業性や無機躯体への含浸性を確保する目的で多量の溶剤を含有する製品が主流となっている。
【0005】
このような多量の溶剤を含有するプライマーは、作業中の溶剤の揮散によって作業者の健康を害し、さらに、環境に影響を及ぼす等の問題がある。また、トルエンやキシレンなどの溶剤は居住空間に放散された場合、シックハウス症候群をおこす原因物質とされており、近年これらの溶剤を含有しない水性プライマーの開発が望まれている。
【0006】
水性プライマーは樹脂成分が水に乳化又は分散された製品形態をとり、水が蒸発して樹脂の乳化体や分散体が融着することによって樹脂皮膜を形成することができる。また、樹脂希釈媒体に水を使用することから製品の低粘度化を容易に行なうことが可能であり、十分な作業性を確保することができる。さらには、希釈剤として溶剤を使用する必要が無いため、作業者の健康や地球環境保護の観点からも優れた材料であるといえる。
【0007】
一般に、水性樹脂の乳化又は分散は大きく2つの手法に大別され、一つは樹脂骨格に親水成分となり得る構造を導入することで乳化又は分散を可能とし、他の一つは界面活性剤等の親水成分を添加することにより強制的に乳化又は分散を可能とするものである。
【0008】
しかしながら、このようにして乳化又は分散された水性樹脂は、樹脂自身が親水性であり又は外的要因として親水成分を含有しており、得られる樹脂皮膜の耐水密着性が問題となる。また、樹脂の分子量が制限されるため、プライマーとしての基本性能である密着性、遮蔽性、耐久性等において十分に満足する性能が得られないという問題がある。
【0009】
これらの問題点を解決すべく、水性プライマーの設計に際し、架橋による樹脂皮膜の強靭化が図られており、主成分となる水性樹脂の樹脂骨格に親水成分となり得る構造を有する水分散イソシアネートプレポリマーを添加することで樹脂皮膜の強靭化が図られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では主成分となる水性樹脂が水分散イソシアネートプレポリマーと反応し得る官能基を有していないため、形成される樹脂皮膜の分子量が小さく、遮蔽性が満足できる性能にまで向上しない。また、ウレタン樹脂とアクリルエマルジョン樹脂の樹脂間の架橋が進行しないため相溶性が問題となり、十分な耐水密着性を得ることができない。
【0010】
また、架橋構造を有する水酸基含有水性アクリル樹脂、架橋構造を有する水酸基含有水性ウレタン樹脂、及び水に分散可能なポリイソシアネート化合物の3種類の組み合わせからなる水性樹脂組成物(特許文献2)や、水分散ポリイソシアネートと水酸基価を有するアクリル樹脂水分散液からなる二液水性プライマー組成物が開示されている(特許文献3)。しかしながら、これらの水性樹脂プライマーは反応型の設計を取っているが、水酸基を有する水性アクリル樹脂や水性ウレタン樹脂の分子量が非常に大きく、低温条件でのポリイソシアネートとの反応性に乏しく設計通りに高分子量化できないため、冬場の施工において遮蔽性や耐水密着性等の十分な性能を得ることができない。
【0011】
また、これらの水性プライマーは二液型又は2種類以上の成分を使用する混合型プライマーであり、土木建築現場において各成分を所定の割合で調合する必要があるため、計量ミスや混合不良等により、目的の性能が安定して得られない場合がある。従って、現場での計量の必要のない一液型ポリウレタン水性プライマーの開発が待たれている。
【特許文献1】特開2004−196914号公報
【特許文献2】特開2000−265053号公報
【特許文献3】特開2006−83372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するために為されたもので、その目的とするところは、土木建築構造体の無機躯体に使用し得る、作業中に多量の溶剤を揮散することのないポリウレタン水性組成物を用いた水性プライマーを提供し、また、土木建築現場での計量や撹拌混合などの作業を必要とせず、塗布後の反応性高く、プライマーとしての基本性能である密着性、遮蔽性、耐久性、耐水密着性において十分に満足する性能が非常に安定して発現し得る反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物を提供することである。更に、土木建築構造体の無機躯体に反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物を塗布して乾燥皮膜を形成後、さらにウレタン防水材を塗布したウレタン系防水積層体、及びこのウレタン系防水積層体の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の水性プライマー組成物は、作業中に多量の溶剤を揮散することのないポリウレタン水性組成物を用い、また、土木建築現場での計量や撹拌混合などの作業を必要とせず、さらには塗布後の反応性が発揮されるため、基本性能を非常に安定して発現し得るものであり、従来の溶剤系と同等以上の性能を発揮することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物は、ウレタンプレポリマー(A)及びアルコキシシラン誘導体(S)を反応させて水に乳化又は分散してなるポリウレタン水性組成物(B)と、ヒドラジド化合物(C)とを含有する反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物であって、ウレタンプレポリマー(A)が、有機ポリイソシアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)と、ケトン性カルボニル基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する少なくとも1個の活性水素を含有するケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)とを反応させることにより得られ、且つ、前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内にイソシアネート基又はエポキシ基を有するウレタンプレポリマー(A−1)であり、前記アルコキシシラン誘導体(S)が、メルカプト基、一級アミノ基及び二級アミノ基からなる群から選択される基を有し、ヒドラジド化合物(C)が2個以上のヒドラジノ基を有していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物は、ウレタンプレポリマー(A)及びアルコキシシラン誘導体(S)を反応させて水に乳化又は分散してなるポリウレタン水性組成物(B)と、ヒドラジド化合物(C)とを含有する反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物であって、ウレタンプレポリマー(A)が、有機ポリイソシアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)と、ケトン性カルボニル基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する少なくとも1個の活性水素を含有するケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)とを反応させることにより得られ、且つ、前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内にヒドロキシル基、メルカプト基、一級アミノ基及び二級アミノ基からなる群から選択される基を有するウレタンプレポリマー(A−2)であり、前記アルコキシシラン誘導体(S)が、イソシアネート基又はエポキシ基を有し、ヒドラジド化合物(C)が2個以上のヒドラジノ基を有していることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物は、ウレタンプレポリマー(A)、アルコキシシラン誘導体(S)及びヒドラジド化合物(C)を反応させて水に乳化又は分散してなるポリウレタン水性組成物(D)からなる反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物であって、ウレタンプレポリマー(A)が、有機ポリイソアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)と、ケトン性カルボニル基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する少なくとも1個の活性水素を含有するケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)とを反応させることにより得られるウレタンプレポリマーであり、前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内にイソシアネート基又はエポキシ基を有するウレタンプレポリマー(A−3)であり、前記アルコキシシラン誘導体(S)が、メルカプト基、一級アミノ基及び二級アミノ基からなる群から選択される基を有し、前記ポリウレタン水性組成物(D)がヒドラジノ基を含有していることを特徴とする。
【0017】
ここで、ウレタンプレポリマー(A)が分子内にイソシアネート基又はエポキシ基を有するウレタンプレポリマー(A−1)又は(A−3)である場合には、前記アルコキシシラン誘導体(S)が、一般式(I)及び/又は一般式(II)で表されるアルコキシシラン誘導体であることが好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
この場合、一般式(I)及び(II)において、Rはメチル基又はエチル基を表し、R’は炭素数2又は3のアルキレン基を表し、Xは式(III)で示す基を表す。
【0021】
【化3】

【0022】
また、ウレタンプレポリマー(A)が分子内にヒドロキシル基、メルカプト基、一級アミノ基及び二級アミノ基からなる群から選択される基を有するウレタンプレポリマー(A−2)である場合には、前記アルコキシシラン誘導体(S)が、一般式(I)及び/又は一般式(II)で表されるアルコキシシラン誘導体であることが好ましい。
【0023】
この場合、一般式(I)及び(II)において、Rはメチル基又はエチル基を表し、R’は炭素数2又は3のアルキレン基を表し、Xは式(IV)で示す基を表す。
【0024】
【化4】

【0025】
前記ウレタンプレポリマー(A)は、親水性基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する活性水素を1個以上含有する親水性基含有化合物(d)を更に反応させてなるものであってもよい。
【0026】
本発明のウレタン系防水積層体は、無機躯体の上に、上記何れかに記載の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物を含有するプライマーを塗布し、乾燥皮膜を形成した後、更にウレタン防水材を塗布することにより得られることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のウレタン系防水積層体の施工方法は、無機躯体の上に、上記の何れかの反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物を含有するプライマーを塗布し、乾燥皮膜を形成した後、更にウレタン防水材を塗布することを特徴とする。
【0028】
なお、本明細書において、分散とは、溶解、乳化、可溶化等、巨視的に見て一様な系にすることをいい、水性組成物とは、溶液、水溶液、乳化物、可溶化物等、巨視的に見て一様な系をいう。
【発明の効果】
【0029】
本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物は、作業中に多量の溶剤を揮散することのないポリウレタン水性組成物を用いるため、作業者の健康及び地球環境保護の観点から好ましく、また、一液型のプライマー組成物であるため、土木建築現場での作業性に優れ、さらには、塗布後に反応性が発揮される非常に安定した性能を発現し得る。
【0030】
また、土木建築構造体の無機躯体上に前記の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物塗布して乾燥皮膜を形成した後、更にウレタン防水材を塗布する施工方法によって、防水性に優れたウレタン系防水積層体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物は、イソシアネート基、ヒドロキシル基、メルカプト基、一級アミノ基、二級アミノ基及びエポキシ基のうちの少なくとも一つの基と、ケトン性カルボニル基とを有する、水分散性又は水溶性のウレタンプレポリマー(A)が好適に使用される。ウレタンプレポリマー(A)は、以下の方法で合成される。
【0032】
まず、本発明に用いる有機ポリイソシアネート(a)としては、従来から慣用されている芳香族、脂肪族、脂環族又は芳香脂肪族の有機ポリイソシアネートを使用することができ、具体例として、脂肪族ジイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等)、脂環族ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等)、芳香族ジイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等)、芳香脂肪族ジイソシアネート(例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)等を挙げることができる。これらは単独でも用いることができ、また2種以上の混合物にして用いることもできる。
【0033】
本発明に用いる活性水素含有化合物(b)は、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有するものである。即ち、ヒドロキシル基、アミノ基又はメルカプト基を有するもので、一般に公知のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリブタジエン、ポリシロキサン等であり、好ましくは、分子末端に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物である。具体的には、2個以上の活性水素基を有するポリヒドロキシ化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシエチルテレフタレート、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール、それらのオキシアルキレン誘導体又はそれらの多価アルコール若しくはオキシアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、若しくは多価カルボン酸エステルとにより得られるエステル化合物、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ヒマシ油ポリオール、フッ素ポリオール、シリコンポリオール等のポリオール化合物やその変性体が挙げられる。また、必要により低分子量の1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等のグリコール、トリオール等を使用してもよい。
【0034】
また、本発明に用いるケトン性カルボニル基含有活性水素基含有化合物(c)は、イソシアネート基と反応性のある少なくとも1個の活性水素基を有しているが、イソシアネート基と反応性のある活性水素基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシル基が挙げられる。このようなケトン性カルボニル基含有活性水素基含有化合物(c)としては、例えば、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、6−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、ヒドロキシアセトン、ヒドロキシアセトフェノン、アミノアセトフェノン、アミノベンゾフェノン等のイソシアネート基と反応性のある1個の活性水素基を有している化合物、1,3−ジヒドロキシ−2−プロパノン、ジヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン等のイソシアネート基と反応性のある2個以上の活性水素基を有している化合物が挙げられる。また、これらのケトン性カルボニル基含有上記活性水素基含有化合物は単独で用いてもよく、また複数を同時に用いてもよい。
【0035】
さらに、上記ケトン性カルボニル基含有活性水素基含有化合物(c)は、イオン性基を有していてもよいが、イオン性基としては、例えば、親水性ノニオン性基、親水性アニオン性基、親水性カチオン性基、親水性両性基等が挙げられる。親水性ノニオン性基としては、ケトン性カルボニル基含有活性水素基含有化合物(c)の主鎖や側鎖に導入されたオキシエチレン基の繰り返し単位の部分等であり、親水性アニオン性基としては、カルボキシル基等であり、親水性カチオン性基としては、三級アミノ基等である。
【0036】
さらに、ケトン性カルボニル基含有上記活性水素基含有化合物(c)は、イソシアネート基との反応性のある2個以上の活性水素基を有していることが好ましく、ダイアセトンアクリルアミドにジアルカノールアミンを付加反応させたものであることがより好ましい。
【0037】
ケトン性カルボニル基の1mol当たりのウレタンプレポリマー(A)の重量は、600〜8000g/molの範囲で有することが好ましく、1000g〜5000g/molの範囲で有することがさらに好ましい。ケトン性カルボニル基を、600g/mol未満で有していると、硬化収縮が大きくなり、また経済的にも不利となるおそれがあり、一方、8000g/molを超えて有していると、架橋が不十分となるおそれがある。
【0038】
本発明に用いる、親水性基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する活性水素を1個以上含有する親水性基含有化合物(d)としては、(d−1)塩形成性のカルボン酸又はスルホン酸基を有する化合物及びこれらに対応する塩形成剤、(d−2)酸で中和可能な第4級又は第3級基となり得る基を有する化合物及びこれらに対応する塩形成剤、(d−3)エチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、又はエチレンオキシドの繰り返し単位を30重量%以上含有するノニオン性化合物が挙げられる。
【0039】
上記(d−1)の塩形成性のカルボン酸又はスルホン酸基を有する具体的な化合物としては、例えば、グリコール酸、リンゴ酸、グリシン、アミノ安息香酸、アラニン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のヒドロキシ酸、アミノカルボン酸、多価ヒドロキシ酸類や、タウリン、2−ヒドロキシエタンスルホン酸等のアミノスルホン酸、ヒドロキシスルホン酸類等が、それに対応する塩形成剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の1価の金属水酸化物やアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン化合物等が挙げられる。
【0040】
上記(d−2)の酸で中和可能な第4級又は第3級基になり得る基を有する具体的な化合物としては、例えばN,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルコキシル化アミン類やN−メチル−N−(3−アミノプロピル)−エタノールアミン、N,N−ジメチルヒドラジン等のアミノアルコール類やアミン類等が挙げられる。また、それに対応する塩形成剤としては、例えば塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸、ジメチル硫酸、メチルクロライド、ベンジルクロライド等の有機酸類及び無機酸類、反応性ハロゲン原子を有する化合物等が挙げられる。
【0041】
上記(d−3)のエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、又はエチレンオキシドの繰り返し単位を30重量%以上含有するノニオン性化合物の具体的な化合物としてはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体トリオール等が挙げられる。
【0042】
ウレタンプレポリマー(A)を得る反応は、従来から公知の一段又は多段イソシアネート重付加反応法により、50〜120℃の温度条件下で行われ、この反応により、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0043】
この反応に際し、必要に応じてリン酸、アジピン酸、ベンゾイルクロライド等の反応制御剤、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、トリエチルアミン等の反応触媒、更には、イソシアネート基と反応しない有機溶剤を反応に際し又は反応終了後に添加してもよい。これら有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等がある。
【0044】
本発明に使用される前記ウレタンプレポリマーのうち、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A−1)は、活性水素を2個以上含有する化合物と有機ポリイソシアネートとの反応により製造される。この反応は、有機ポリイソシアネートが過剰な系で、溶剤の存在下又は不存在下で実施される。
【0045】
次に、上記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに導入されるアルコキシシラン誘導体(S)について説明する。このイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに対して、メルカプト基、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有するアルコキシシラン誘導体(S)が使用され、例えば、一般式(III)に示すアミノ基又はメルカプト基を含有する一般式(I)及び/又は一般式(II)で表されるアルコキシシラン誘導体(S)が用いられる。
【0046】
これらアルコキシシラン誘導体(S)の使用量は、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基/アルコキシシラン誘導体(S)中のアミノ基又はメルカプト基=1/1〜1/0.1の範囲が好ましい。
【0047】
次に、アルコキシシラン誘導体(S)とウレタンプレポリマーとの反応により得られたポリウレタン組成物は、水に溶解又は分散される。その方法として以下の方法が採用できる。
【0048】
(1)前述のウレタンプレポリマーを合成し、HLB値6〜18のノニオン性活性剤を、アルコキシシラン誘導体(S)と反応後50℃以下で添加混合する方法。但し、このノニオン活性剤の使用量は、乳化分散性、製品皮膜の耐水性等を考慮して、ウレタンプレポリマーの全重量に対して15重量%以下であることが好ましい。
【0049】
(2)前述のウレタンプレポリマー調製段階で予め分子内に親水性基を含有し、且つイソシアネート基との反応性を有する活性水素を1個以上含有する上記親水性基含有化合物(d)を反応させておき、導入された親水性基がプレポリマーを乳化させるだけの活性能を付与する方法などが挙げられる。
【0050】
さらには(2)の方法では、10重量%以下の界面活性剤を併用することもできる。10重量%を超えて界面活性剤を配合すると、ポリウレタン樹脂の吸水率が著しく増加して、耐水性が低下するので好ましくない。このとき使用し得る界面活性剤としては、従来より公知の各種活性剤を挙げることができ、HLB値6〜18のノニオン性活性剤やポリウレタン樹脂のイオン性に応じたイオン性活性剤を適宜選択して使用することができる。これらの処理は、ウレタンプレポリマー自身が分散性を有する場合には必要ないものである。
【0051】
ウレタンプレポリマーの分散に要する時間は、アルコキシシランの加水分解、及び分子間縮合を考慮して10〜40℃、好ましくは20〜30℃であり、この温度を維持しながら30分から180分間撹拌混合される。分散に際し、ホモミキサー、ホモジナイザー等の乳化、分散装置を用いることが好ましい。更に、必要であれば、分散終了後、減圧下で、ウレタンプレポリマーの合成反応に使用した上述の有機溶剤を回収してもよい。
【0052】
なお、アミノ基を2個含有するアルコキシシラン誘導体(S)を使用する場合は、前記ウレタンプレポリマーを水中に乳化後、アルコキシシラン誘導体(S)を添加、反応させてもよい。
【0053】
次に、本発明に使用されるウレタンプレポリマーのうち、分子内にエポキシ基を有するウレタンプレポリマーの合成について説明する。このエポキシ基を有するウレタンプレポリマーは、前述の分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基とエポキシ基を同一分子内に有するグリシドール等を反応させて、末端にエポキシ基を導入することにより得られる。
【0054】
次に、上記のエポキシ基含有ウレタンプレポリマーに、本発明で使用されるアルコキシシラン誘導体(S)を反応させる。このエポキシ基含有ウレタンプレポリマーに対しては、メルカプト基、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有するアルコキシシラン誘導体(S)が使用され、例えば、一般式(III)に示すアミノ基又はメルカプト基を含有する一般式(I)及び/又は一般式(II)のアルコキシシラン誘導体(S)が用いられ、非水系で反応が実施される。このウレタンプレポリマーの場合、水中に分散させる好ましい方法として、前記した(1)及び(2)の方法が適用できる。
【0055】
次に、本発明に使用されるウレタンプレポリマーのうち、分子内にヒドロキシル基を有するプレポリマーの合成について説明する。このヒドロキシル基を有するプレポリマーは、前記した分子末端にイソシアネートを含有するウレタンプレポリマーに、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類を反応させて、末端にヒドロキシル基を導入する方法により得られる。
【0056】
次に、上記ヒドロキシル基を有するウレタンプレポリマーに、アルコキシシラン誘導体(S)を反応させる。このヒドロキシル基を有するウレタンプレポリマーに対しては、一般式(IV)に示すエポキシ基又はイソシアネート基を含有する一般式(I)及び/又は一般式(II)のアルコキシシラン誘導体(S)が用いられる。
【0057】
これらアルコキシシラン誘導体(S)の使用量は、ウレタンプレポリマーのヒドロキシル基/アルコキシシラン誘導体(S)のエポキシ基又はイソシアネート基=1/1〜1/0.1の範囲が好ましい。このアルコキシシラン誘導体(S)とヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマーとの反応は、非水系下で20〜60℃、好ましくは30〜40℃で実施される。
【0058】
アルコキシシラン誘導体(S)とヒドロキシル基含有ウレタンプレポリマーとの反応により得られたポリウレタンは、次に水に溶解又は分散される。このポリウレタンの場合には水中に分散させる方法として、前記した(1)及び(2)の方法が適用できる。
【0059】
次に、本発明に使用されるウレタンプレポリマーのうち、分子内にメルカプト基を有するウレタンプレポリマーの合成について説明する。このメルカプト基を有するウレタンプレポリマーは、前記した分子末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーに、エチレンチオグリコール、1,4−ブタンチオグリコール等のチオグリコール類を反応させて、末端にメルカプト基を導入する方法により得られる。
【0060】
次に、上記メルカプト基を有するウレタンプレポリマーに、アルコキシシラン誘導体(S)を反応させる。この反応には、前述のヒドロキシル基を有するウレタンプレポリマーと同様に、一般式(IV)に示すエポキシ基又はイソシアネート基を含有する一般式(I)及び/又は一般式(II)のアルコキシシラン誘導体(S)が用いられ、同様な方法で反応される。
【0061】
アルコキシシラン誘導体(S)とメルカプト基含有ウレタンプレポリマーとの反応により得られたポリウレタンは、次に水に溶解又は分散される。このポリウレタンの場合には、水中に分散させる方法として、前記した(1)及び(2)の方法が適応できる。
【0062】
次に、本発明に使用されるウレタンプレポリマーのうち、分子内に一級アミノ基又は二級アミノ基を有するウレタンプレポリマーの合成について説明する。
【0063】
分子内に一級アミノ基又は二級アミノ基を有するウレタンプレポリマーのうち、分子末端に一級又は二級アミノ基を含有するものは、前記した分子末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーに、アミノエチルピペラジン等の一級アミノ基と二級アミノ基とを同一分子内に各1個有するジアミン類、アミノエチルピペラジン、ジエチレントリアミンのモノ、ジケチミン化合物等を反応させることにより得られる。この反応は、5〜30℃、好ましくは10〜20℃で行われる。この反応により、分子末端に一級又は二級アミノ基が導入される。
【0064】
尚、ケチミン化合物を用いた場合、水で希釈して、ケチミン部分を加水分解して、一級アミノ基に変換させる方法がとられる。
【0065】
次に、主鎖中に二級アミノ基を有するウレタンプレポリマーの合成について説明する。このウレタンプレポリマーは、前記した分子末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーを水中に分散した後、一級アミノ基を少なくとも2個、二級アミノ基を少なくとも1個含有するジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンペンタミン等のポリアミンを添加することにより得られる。このポリアミンのうち、好ましいものはジエチレントリアミンである。ポリアミンの使用量は、イソシアネート基/ポリアミン中の1級アミノ基=1/1.2〜1/0.7の範囲であることが好ましい。ポリアミンを添加し、水中下で均一な反応を行うためには、反応温度を5〜40℃、好ましくは5〜30℃、より好ましくは5〜20℃の範囲に設定する必要がある。この方法により、主鎖中に二級アミノ基が導入されたウレタンプレポリマーのエマルジョンが調製される。
【0066】
次に、上記分子内に一級アミノ基又は二級アミノ基を有するウレタンプレポリマーに、アルコキシシラン誘導体(S)を反応させる。この反応には、一般式(IV)に示すエポキシ基又はイソシアネート基を含有する一般式(I)及び/又は一般式(II)のアルコキシシラン誘導体(S)が用いられ、非水系及び水系何れの系でも反応が実施される。好ましい反応温度は5〜40℃の範囲であり、特に水系で実施するに好ましい反応温度は5〜30℃、より好ましくは5〜20℃である。
【0067】
分子末端に一級又は二級アミノ基含有ウレタンプレポリマーを用いたポリウレタンの場合には、水中に乳化、分散させる方法として前記した(1)及び(2)の方法が適応できる。また、主鎖中に二級アミノ基を有するウレタンプレポリマーを用いたポリウレタンの場合には、水中に乳化、分散させる方法として前記した(1)及び(2)の方法が適応できる。
【0068】
上記で説明した反応により、ポリウレタン骨格にケトン性カルボニル基とアルコキシシラン基が導入され、且つ、水分散性又は水溶性を有するポリウレタン化合物が調製される。
【0069】
そして、このポリウレタンを水で希釈し又は分散することにより、改良されたポリウレタン水性組成物が得られる。
【0070】
上記で得られたポリウレタン水性組成物は、アルコキシシラン基を導入したものであるにもかかわらず、水中へ乳化分散する際、更にその後の貯蔵時にもエマルジョン破壊等は起らず、非常に安定である。
【0071】
また、上記ポリウレタン水性組成物は、例えば、アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、天然ゴム、SBR、NBR等の合成ゴムラテックス系、ポリウレタンエマルジョン系等の一般の合成樹脂エマルジョンと併用又は配合して使用することも可能である。また、それらの性能を改良することも可能である。また、増粘剤、顔料、フィラー等を添加配合して使用することもできる。
【0072】
本発明に使用されるヒドラジド化合物(C)の具体例としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、カルボヒドラジド等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中で、汎用性の点や水への溶解性が良好である点から、アジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
【0073】
また、上記ヒドラジド化合物(C)として、多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物が用いられてもよく、具体例として、「アミキュアVDH」(味の素(株)製)等が挙げられる。
【0074】
また、上記ヒドラジド化合物(C)としては、末端に少なくとも2個のイソシアネート基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、少なくとも2個のヒドラジノ基を有する化合物を反応させた、末端に少なくとも2個のヒドラジノ基を有する末端ヒドラジノ基含有ウレタンプレポリマーも挙げることができ、このとき、少なくとも2個のヒドラジノ基を有する化合物として、アジピン酸ジヒドラジドを用いることが好ましい。
【0075】
本発明の反応性一液型プライマー組成物は、ポリウレタン骨格にケトン性カルボニル基とアルコキシシラン基が導入された水性ポリウレタン組成物と、ヒドラジド化合物(C)とを含有してなるものであり、ヒドラジド化合物(C)のヒドラジノ基は、カルボニル基含有活性水素化合物(c)のケトン性カルボニル基1モルに対して、0.1〜3.0モルの範囲で含有していることが好ましい。本発明の組成物は、反応性一液型プライマー組成物であって、土木建築構造体の無機躯体上に塗布した後、水が揮発すると常温での架橋が進行する皮膜を形成する。また、さらにウレタン防水材を塗布する施工方法によって優れたウレタン系防水積層体を得ることができる。
【0076】
本発明の他の実施形態に係る反応性一液型プライマー組成物は、有機ポリイソシアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)とケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)とを反応させることにより得られるウレタンプレポリマー(D’)に、一般式(III)で示す基を有する一般式(I)及び/又は一般式(II)で表記されるアルコキシシラン誘導体(S)を反応させ、さらにヒドラジド化合物(C)を反応させた、末端ヒドラジノ基含有水性ポリウレタン組成物(D)を含有してなる。上記に於ける各成分は、前述したものと同じである。本実施形態においては、末端ヒドラジノ基を、カルボニル基含有活性水素化合物(c)のケトン性カルボニル基1モルに対して、0.1〜3.0モルの範囲で含有していることが好ましい。
【0077】
本実施形態の反応性一液型プライマー組成物は、ポリウレタン骨格にケトン性カルボニル基とアルコキシシラン基が導入された水性ポリウレタン組成物と、ヒドラジド化合物(C)の二種を必須成分とする先に説明した実施形態の組成物とは異なり、末端ヒドラジノ基含有水性ポリウレタン組成物(D)のみを必須成分としている。
【0078】
本実施形態の末端ヒドラジノ基含有水性ポリウレタン組成物(D)を含有してなる反応性一液型プライマー組成物は、上記二成分の組成物と同様に、土木建築構造体の無機躯体上に塗布した後、水が揮発すると常温での架橋が進行する皮膜を形成する。また、さらにウレタン防水材を塗布する施工方法によって優れたウレタン系防水積層体を得ることができる。
【0079】
本発明に使用する水性ポリウレタン組成物は、その平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が5μm以上であると、使用時に均一なプライマー皮膜を得ることができなくなり、十分な耐水密着性が発揮されない場合がある。さらには、長期保管において、水分散体が分離してしまい実用上に問題を生じる。
【0080】
本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物は、水性ポリウレタン組成物の含有量が2重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上30重量%以下であることがさらに好ましい。ポリウレタンの含有量が2重量%より少ないと、揮発成分が多くなるためプライマー塗布後の乾燥が遅く、さらには塗膜に塗布されるポリウレタン樹脂量が不十分となり安定した密着性が得られないため好ましくない。また、水性ポリウレタン組成物の含有量が50重量%より多いと、プライマー塗布時の乾燥によって増粘が起こり、取り扱いが困難になるので好ましくない。
【0081】
また、本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物は、通常は前記水性ポリウレタン組成物単独で使用されるが、他の水分散体、例えば、酢酸ビニル系,エチレン酢酸ビニル系,アクリル系,アクリルスチレン系等のエマルジョン、スチレン・ブタジエン系,アクリロニトリル・ブタジエン系,アクリル・ブタジエン系等のラテックス、ポリエチレン系,ポリオレフイン系等のアイオノマー、ポリウレタン,ポリエステル,ポリアミド,エポキシ系の水分散体を混合配合して使用することができる。その場合にも、最終的に得られる水性樹脂のブレンド混合物あるいは変性水性ウレタン樹脂についても、その平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。また、水性樹脂の含有量についても、2重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上30重量%以下であることがさらに好ましい。
【0082】
本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物には、無機系のフィラーを含有させることができる。含有させる無機フィラーとしては、例えば、珪砂、ガラスバルーンなどを挙げることができる。反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物に無機フィラーを含有させることにより、遮蔽性を向上することができる。
【0083】
また、本発明の組成物を用いて形成されるプライマーの耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性、接着性、硬さ、塗布作業性を改善する目的で、必要に応じて、例えば、顔料、染料、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、揺変剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、造膜助剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒、硬化剤、消泡剤等を添加することができる。
【0084】
本発明のウレタン系防水積層体は、上記何れかに記載の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物を含有するプライマーを塗布し、乾燥皮膜を形成した後、更にウレタン防水材を塗布したものである。プライマーの上に塗布するウレタン防水材としては、従来より公知の各種のものを使用することができる。また、ウレタン系防水材の塗布も、従来より公知の各種の方法によって行うことができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、後述する実施例、比較例、合成例及び比較合成例中の「部」及び「%」は特に断らない限り各々、重量部、重量%を示す。
【0086】
<ケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c−1)の合成>
ダイアセトンアクリルアミド169重量部に対して、ジエタノールアミン94.5重量部を添加し、100℃で3時間加熱し、活性水素基含有化合物(c−1)を得た。得られた活性水素基含有化合物(c−1)の臭素価は6.1であった。なお、臭素価はJIS−K−3331に準拠して測定した。
【0087】
<ウレタンプレポリマー溶液(1)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、2官能ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=1000)194.3部、トリメチロールプロパン4.5部、ケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c−1)76.2部を、メチルエチルケトン100部に溶解させた。これにイソホロンジイソシアネートを180部仕込み、75℃で4時間反応させた後、ジメチロールプロピオン酸23.7部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分70.5%、末端イソシアネート基含有量1.9%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(1)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0088】
<ウレタンプレポリマー溶液(2)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、ポリブタジエンポリオール(数平均分子量=1200:R−15HT、出光石油化学(株)製)206.6部、トリメチロールプロパン9.0部、3−ヒドロキシ−2−ブタノン37.5gを、メチルエチルケトン100部に溶解させた。イソホロンジイソシアネートを180部仕込み、75℃で4時間反応させた後、ジメチロールプロピオン酸23.7部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分69.5%、末端イソシアネート基含有量2.2%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(2)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0089】
<ウレタンプレポリマー溶液(3)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、2官能ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=1000)194.3部、2官能ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=400)111.2部、トリメチロールプロパン4.5部を、メチルエチルケトン100部に溶解させた。これにイソホロンジイソシアネートを180部仕込み、75℃で4時間反応させた後、ジメチロールプロピオン酸23.7部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分72.0%、末端イソシアネート基含有量1.7%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(3)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0090】
<ウレタンプレポリマー溶液(4)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、ポリブタジエンポリオール(数平均分子量=1200:R−15HT、出光石油化学(株)製)260.2部、ケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c−1)76.2部を、メチルエチルケトン100部に溶解させた。これにヘキサメチレンジイソシアネートを135.6部仕込み、75℃で3時間反応させた後、N−メチルジエタノールアミン21.1部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分71.1%、末端イソシアネート基含有量1.7%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(4)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0091】
<ウレタンプレポリマー溶液(5)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、ポリブタジエンポリオール(数平均分子量=1200:R−15HT、出光石油化学(株)製)357.0部、1,4−ブタンジオール10.0部、メチルエチルケトン200部に溶解させた。これにヘキサメチレンジイソシアネートを135.6部仕込み、75℃で4時間反応させた後、N−メチルジエタノールアミン29.8部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分64.0%、末端イソシアネート基含有量1.6%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(5)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0092】
<ウレタンプレポリマー溶液(6)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、2官能ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=1000)340部、トリメチロールプロパン4.5部、ケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c−1)76.2部を、メチルエチルケトン100部に溶解させた。これにトリレンジイソシアネートを140.4部仕込み、75℃で2時間反応させた後、ポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量=2500)120部、メチルエチルケトン200部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分69.4%、末端イソシアネート基含有量1.3%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(6)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0093】
<ウレタンプレポリマー溶液(7)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、ポリブタジエンポリオール(数平均分子量=1200:R−15HT、出光石油化学(株)製)206.6部、トリメチロールプロパン9.0部、3−ヒドロキシ−2−ブタノン37.5gを、メチルエチルケトン100部に溶解させた。トリレンジイソシアネートを140.4部仕込み、75℃で4時間反応させた後、ジメチロールプロピオン酸23.7部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分67.6%、末端イソシアネート基含有量2.4%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(7)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0094】
<ウレタンプレポリマー溶液(8)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、トリメチロールプロパン1.0部、ケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c−1)148.0部、ジメチロールプロピオン酸9.8部を、メチルエチルケトン200部に溶解させた。これにヘキサメチレンジイソシアネートを101.7部仕込み、75℃で4時間反応させることにより、固形分56.6%、末端水酸基のウレタンプレポリマー溶液(8)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0095】
<ウレタンプレポリマー溶液(9)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、2官能ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=1000)194.3部、トリメチロールプロパン4.5部、ケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c−1)50.8部を、メチルエチルケトン100部に溶解させた。これにトリレンジイソシアネートを135部仕込み、75℃で2時間反応させた後、ジメチロールプロピオン酸23.7部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分67.1%、末端イソシアネート基含有量3.4%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(9)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0096】
<ウレタンプレポリマー溶液(10)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、ポリブタジエンポリオール(数平均分子量=1200:R−15HT、出光石油化学(株)製)206.6部、トリメチロールプロパン9.0部、3−ヒドロキシ−2−ブタノン28.0gを、メチルエチルケトン100部に溶解させた。トリレンジイソシアネートを140.4部仕込み、75℃で4時間反応させた後、ジメチロールプロピオン酸23.7部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに2時間反応させることにより、固形分67.1%、末端イソシアネート基含有量3.5%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(10)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0097】
<ウレタンプレポリマー溶液(11)の合成>
予め乾燥したフラスコ中に、2官能ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=1000)194.3部、トリメチロールプロパン4.5部、ケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c−1)50.8部を、メチルエチルケトン100部に溶解させた。これにトリレンジイソシアネートを120部仕込み、75℃で2時間反応させた後、ジメチロールプロピオン酸23.7部、メチルエチルケトン100部を仕込み、さらに3時間反応させることにより、固形分66.3%、末端イソシアネート基含有量1.7%(固形分換算)のウレタンプレポリマー溶液(11)(メチルエチルケトン溶液)を得た。
【0098】
<合成例1〜3>
前述のウレタンプレポリマー溶液(1)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、メチルエチルケトン200部と、表1に示すアミノアルキルアルコキシシラン誘導体(S)を、末端イソシアネート基に対して当量添加し、30〜35℃下で反応を実施した。その後、イソシアネート基が消失したことを確認した後、水で希釈し、乳化分散を行い、合成例1〜3のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表1に示した。
【0099】
<合成例4>
同じく、前述のウレタンプレポリマー溶液(1)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、水で希釈し、乳化した後、20〜30℃にて表1に示すアミノアルキルアルコキシシラン誘導体(S)を前記プレポリマー(1)の末端イソシアネート基とアミノアルキルアルコキシシラン誘導体(S)のアミノ基とが等量となるように添加し、30℃で60分間分散を実施した。その後、イソシアネート基が消失したことを確認した後に分散を行い、合成例4のポリウレタン水性組成物を得た。その調製条件及び得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表1に併せて示した。
【0100】
<比較合成例1>
前述のウレタンプレポリマー溶液(1)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、水で希釈し、乳化した後、従来技術であるエチレンジアミンを20〜30℃で添加し、30℃で60分間分散を実施し、比較合成例1の水性組成物を得た。その調製条件及び得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表1に併せて示した。
【0101】
<合成例5>
前述のウレタンプレポリマー溶液(2)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、水で希釈し、乳化した後、20〜30℃にて表1に示すアミノアルキルアルコキシシラン誘導体(S)を末端イソシアネート基とアミノアルキルアルコキシシラン誘導体(S)のアミノ基とが等量となるように添加し、30℃で60分間分散を実施した。その後、イソシアネート基が消失したことを確認した後に分散を行い、合成例5のポリウレタン水性組成物を得た。その調製条件及び得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表1に併せて示した。
【0102】
<比較合成例2>
前述のウレタンプレポリマー溶液(3)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、メチルエチルケトン200部と、表1に示すアミノアルキルアルコキシシラン誘導体(S)を、末端イソシアネート基に対して当量添加し、30〜35℃下で反応を実施した。その後、イソシアネート基が消失したことを確認した後、水で希釈し、乳化分散を行い、比較合成例2のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表1に併せて示した。
【0103】
<比較合成例3>
また、前述のウレタンプレポリマー溶液(3)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、水で希釈し、乳化した後、従来技術であるエチレンジアミンを20〜30℃で添加し、30℃で60分間分散を実施し、比較合成例3の水性組成物を得た。その調製条件及び得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表1に併せて示した。
【0104】
【表1】

【0105】
<性能試験:実施例1〜7、比較例1〜5>
上記で得られた合成例1〜5及び比較合成例1のポリウレタン水性組成物にアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液を配合して水性プライマー組成物を作成した。また、上記で得られた比較合成例2、3のポリウレタン水性組成物をそのまま水性プライマー組成物とした。これらの水性プライマー組成物について耐水性試験、及び密着性試験を実施した。また、保管安定性についても評価を実施した(表2)。
【0106】
<単離ウレタン樹脂皮膜の耐水性試験(吸水率)>
ポリエチレン板製剥離板に実施例1〜7及び比較例1〜5の水性プライマー組成物を塗布量2000g/m2の割合で均一にそれぞれ塗布し、23℃で1週間養生後、剥離版より剥がして試験サンプルとした。
【0107】
単離ウレタン樹脂皮膜の耐水性試験は、上記試験サンプルの吸水率によって評価した。なお、吸水率は予め重量を測定した上記試験片(4cm x 4cm)を23℃の蒸留水に24時間浸漬し、取出してすぐに乾燥した布で表面の水分を拭き取って重量を測定し、吸水による皮膜の重量増加率から算出した。
【0108】
<密着性試験(180度剥離試験)>
モルタル板に実施例1〜7及び比較例1〜5の水性プライマー組成物を塗布量200g/m2の割合で均一にそれぞれ塗布し、23℃で24時間乾燥した後、ウレタン防水材(ノンタールコート・エコ;第一工業製薬(株)製)を塗布量2000g/m2の割合で綿布に含浸させながら塗布し、23℃で1週間養生して試験用サンプルを得た。前期試験用サンプルの綿布を25mm幅で裁断し、JIS−K−6854−2に準拠して評価した。なお、試験結果は下記に示す基準で評価した。
【0109】
○:平均剥離強度50N/25mm以上
△:いずれかの部材の材料破壊であるが剥離強度50N/25mm未満
×:モルタル板/プライマー間の層間剥離 且つ 50N/25mm未満
×:プライマー/防水材間の層間剥離 且つ 50N/25mm未満。
【0110】
また、上記試験用サンプルの綿布を1インチ幅で下部ウレタン防水層に達する深さまで裁断し、23℃及び60℃の蒸留水に1週間浸漬し、取出してすぐに乾燥した布で表面の水分を拭き取り、24時間後に23℃条件下で耐水密着性、及び耐温水密着性を上記同様の基準で評価した。
【0111】
<保管安定性試験>
実施例1〜7及び比較例1〜5の水性プライマー組成物をガラス製サンプル瓶(100ml)に入れ、23℃及び60℃で1ヵ月間の保管安定性について以下の基準で評価した。
【0112】
○:安定、異常なし
△:増粘
×:部分ゲル化、水性プライマー組成物の分離。
【0113】
<性能試験の結果>
表2に明らかなように、実施例1〜7の水性プライマー組成物は比較例1〜5に比較して、単離ウレタン樹脂塗膜の吸水率が低く良好であり、180度剥離試験の結果についても、耐水密着性、耐温水密着性が良好であった。また、水性プライマー組成物の保管安定性は実施例1〜7、比較例1〜5のいずれにおいても優れていた。
【0114】
【表2】

【0115】
<合成例6,7>
前述のウレタンプレポリマー溶液(4)の3級アミノ基をジメチル硫酸22.3部で4級化した後、メチルエチルケトン200部と、水で希釈し乳化し、その後、表3に示すアルコキシシラン誘導体(S)を、末端イソシアネート基に対して当量添加し、30〜35℃下で反応を実施した。その後、イソシアネート基が消失したことを確認した後、水で希釈し、乳化分散を行い、合成例6〜7のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表3に示した。
【0116】
<比較合成例4>
前述のウレタンプレポリマー溶液(4)の3級アミノ基をジメチル硫酸22.3部で4級化した後、水で希釈し、乳化した後、従来技術であるエチレンジアミンを20〜30℃で添加し、30℃で60分間分散を実施し、比較合成例4の水性組成物を得た。その調製条件及び得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表3に併せて示した。
【0117】
<比較合成例5>
前述のウレタンプレポリマー溶液(5)の3級アミノ基をジメチル硫酸31.5部で4級化した後、メチルエチルケトン200部と、表3に示すアミノアルキルアルコキシシラン誘導体(S)を、末端イソシアネート基に対して当量添加し、30〜35℃下で反応を実施した。その後、イソシアネート基が消失したことを確認した後、水で希釈し、乳化分散を行い、比較合成例5のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表3に併せて示した。
【0118】
<比較合成例6>
また、前述のウレタンプレポリマー溶液(5)の3級アミノ基をジメチル硫酸31.5部で4級化した後、水で希釈し、乳化した後、従来技術であるエチレンジアミンを20〜30℃で添加し、30℃で60分間分散を実施し、比較合成例6の水性組成物を得た。その調製条件及び得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表3に併せて示した。
【0119】
【表3】

【0120】
<合成例8>
前述のウレタンプレポリマー溶液(6)に、更にグリシドール15.8部とメチルエチルケトン300部を仕込み、75℃で2時間反応し、イソシアネート基が消失したことを確認した後、表4に示すアミノプロピルトリエトキシシラン47.3部を添加し、30〜35℃下で反応した。その後、ノニオン性活性剤(ノイゲンEA−157:第一工業製薬(株)製)8.9部を添加して均一に混合後、水で希釈し、乳化分散を行い、合成例8のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表4に示した。
【0121】
<合成例9>
また、前述のウレタンプレポリマー溶液(6)にさらにモノエタノールアミン13.0部とメチルエチルケトン300部を仕込み75℃で2時間反応し、イソシアネート基が消失したことを確認した後、表4に示すイソシアネートプロピルトリエトキシシラン52.8部を添加し、50℃下で反応した後、ノニオン性活性剤(ノイゲンEA−157:第一工業製薬(株)製)8.9部を添加して均一に混合後、水で希釈し、乳化分散を行い、合成例9のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表4に併せて示した。
【0122】
<合成例10>
また、前述のウレタンプレポリマー溶液(6)にさらにアミノエチルピペラジン27.6部とメチルエチルケトン300部を仕込み75℃で2時間反応し、イソシアネート基が消失したことを確認した後、表4に示すグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン53.0部を添加し、30〜35℃下で反応した後、ノニオン性活性剤(ノイゲンEA−157:第一工業製薬(株)製)9.2部を添加して均一に混合後、水で希釈し、乳化分散を行い、合成例10のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表4に併せて示した。
【0123】
<比較合成例7>
合成例9において、表4に示すイソシアネートプロピルトリエトキシシランを添加せず、ノニオン性活性剤(ノイゲンEA−157:第一工業製薬(株)製)7.9部を添加したものと比較合成例7のポリウレタン水性組成物とした。このポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表4に併せて示した。
【0124】
<合成例11>
前述のウレタンプレポリマー溶液(7)にさらにモノエタノールアミン13.2部とメチルエチルケトン300部を仕込み75℃で2時間反応し、イソシアネート基が消失したことを確認した後、表4に示すイソシアネートプロピルトリエトキシシラン52.8部を添加し、50℃下で反応した後、カルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和後、水で希釈し、乳化分散を行い、合成例11のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表4に併せて示した。
【0125】
<比較合成例8>
前述のウレタンプレポリマー溶液(8)のカルボキシル基をトリエチルアミン7.4部で中和した後、メチルエチルケトン200部と、表4に示すイソシアネートプロピルトリエトキシシラン4.8部を添加して50℃下で反応した後、ノニオン性活性剤(ノイゲンEA−157:第一工業製薬(株)製)7.9部を添加して均一に混合後、水で希釈し、乳化分散を行い、比較合成例8のポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表4に併せて示した。
【0126】
【表4】

【0127】
<合成例12>
前述のウレタンプレポリマー溶液(9)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、メチルエチルケトン200部と、表5に示すアミノプロピルトリエトキシシラン34.0部を添加し、30〜35℃下で反応を実施した。その後、アジピン酸ジヒドラジド32.3部を含む水に希釈し、乳化分散を行い、合成例12の末端ヒドラジノ基含有ポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表5に示した。
【0128】
<合成例13>
前述のウレタンプレポリマー溶夜(10)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、メチルエチルケトン200部と、表5に示すアミノプロピルトリエトキシシラン34.0部を添加し、30〜35℃下で反応を実施した。その後、アジピン酸ジヒドラジド32.3部を含む水に稀釈し、乳化分散を行い、合成例13の末端ヒドラジノ基含有ポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表5に示した。
【0129】
<比較合成例9>
また、前述のウレタンプレポリマー溶液(11)のカルボキシル基をトリエチルアミン17.9部で中和した後、メチルエチルケトン200部と、表5に示すアミノプロピルトリエトキシシラン34.0部を添加し、30〜35℃下で反応を実施した。その後、アジピン酸ジヒドラジド2.4部を含む水に希釈し、乳化分散を行い、比較合成例9の末端ヒドラジノ基含有ポリウレタン水性組成物を得た。得られたポリウレタン水性組成物の理論上のケトン性カルボニル基含有量(固形分換算)を表5併せて示した。
【0130】
【表5】

【0131】
<性能試験:実施例8〜15、比較例6〜12>
上記で得られた合成例6〜11及び比較合成例4、7、8のポリウレタン水性組成物にアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液を添加して水性プライマー組成物を作成した。また、上記で得られた合成例10及び比較合成例5、6、9のポリウレタン水性組成物をそのまま水性プライマー組成物とした。これらの水性プライマー組成物について、上記と同様の耐水性試験、密着性試験、及び保管安定性について評価を実施した(表6)。
【0132】
【表6】

【0133】
<性能試験の結果>
表6に明らかなように、実施例8〜13の水性プライマー組成物は比較例6〜9に比較して、単離ウレタン樹脂塗膜の吸水率が良好であり、180度剥離試験の結果についても、耐水密着性、耐温水密着性が良好であった。また、水性プライマー組成物の保管安定性は実施例8〜13、及び比較例6〜9のいずれにおいても優れていた。比較例10、11は水性プライマー組成物の保管安定性に劣るという結果であった。
【0134】
また、末端ヒドラジノ基含有ポリウレタン水性組成物を含有する水性プライマー組成物については、実施例14及び15の結果から単離ウレタン樹脂塗膜の吸水率が良好であり、180度剥離試験の結果についても、耐水密着性、耐温水密着性が良好であった。水性プライマー組成物中に含有するヒドラジノ基が、カルボニル基含有活性水素化合物(c)のケトン性カルボニル基1モルに対して、モル比が0.1以下であった比較例12については、プライマーの架橋が不足し、十分な耐水密着性及び耐温水密着性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物によれば、作業中に多量の溶剤を揮散することなく防水層を形成し得るため、土木建築の分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマー(A)及びアルコキシシラン誘導体(S)を反応させて水に乳化又は分散してなるポリウレタン水性組成物(B)と、ヒドラジド化合物(C)とを含有する反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物であって、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、有機ポリイソシアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)と、ケトン性カルボニル基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する少なくとも1個の活性水素を含有するケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)とを反応させることにより得られ、且つ、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内にイソシアネート基又はエポキシ基を有するウレタンプレポリマー(A−1)であり、
前記アルコキシシラン誘導体(S)が、メルカプト基、一級アミノ基及び二級アミノ基からなる群から選択される基を有し、
ヒドラジド化合物(C)が2個以上のヒドラジノ基を有している
ことを特徴とする反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物。
【請求項2】
ウレタンプレポリマー(A)及びアルコキシシラン誘導体(S)を反応させて水に乳化又は分散してなるポリウレタン水性組成物(B)と、ヒドラジド化合物(C)とを含有する反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物であって、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、有機ポリイソシアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)と、ケトン性カルボニル基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する少なくとも1個の活性水素を含有するケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)とを反応させることにより得られ、且つ、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内にヒドロキシル基、メルカプト基、一級アミノ基及び二級アミノ基からなる群から選択される基を有するウレタンプレポリマー(A−2)であり、
前記アルコキシシラン誘導体(S)が、イソシアネート基又はエポキシ基を有し、
ヒドラジド化合物(C)が2個以上のヒドラジノ基を有している
ことを特徴とする反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物。
【請求項3】
ウレタンプレポリマー(A)、アルコキシシラン誘導体(S)及びヒドラジド化合物(C)を反応させて水に乳化又は分散してなるポリウレタン水性組成物(D)からなる反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物であって、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、有機ポリイソアネート(a)と、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を2個以上含有する活性水素化合物(b)と、ケトン性カルボニル基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する少なくとも1個の活性水素を含有するケトン性カルボニル基含有活性水素化合物(c)とを反応させることにより得られるウレタンプレポリマーであり、
前記ウレタンプレポリマー(A)が、分子内にイソシアネート基又はエポキシ基を有するウレタンプレポリマー(A−3)であり、
前記アルコキシシラン誘導体(S)が、メルカプト基、一級アミノ基及び二級アミノ基からなる群から選択される基を有し、
前記ポリウレタン水性組成物(D)がヒドラジノ基を含有していることを特徴とする反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物。
【請求項4】
前記アルコキシシラン誘導体(S)が、一般式(I)及び/又は一般式(II)で表されるアルコキシシラン誘導体であることを特徴とする請求項1又は3に記載の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物。
【化1】

【化2】

(一般式(I)及び(II)において、Rはメチル基又はエチル基を表し、R’は炭素数2又は3のアルキレン基を表し、Xは式(III)で示す基を表す。)
【化3】

【請求項5】
前記アルコキシシラン誘導体(S)が、一般式(I)及び/又は一般式(II)で表されるアルコキシシラン誘導体であることを特徴とする請求項2記載の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物。
(一般式(I)及び(II)において、Rはメチル基又はエチル基を表し、R’は炭素数2又は3のアルキレン基を表し、Xは式(IV)で示す基を表す。)
【化4】

【請求項6】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、親水性基を含有し且つイソシアネート基との反応性を有する活性水素を1個以上含有する親水性基含有化合物(d)を更に反応させてなるものである請求項1乃至5の何れかに記載の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物。
【請求項7】
無機躯体の上に、請求項1乃至6の何れかに記載の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物を含有するプライマーを塗布し、乾燥皮膜を形成した後、更にウレタン防水材を塗布することにより得られるウレタン系防水積層体。
【請求項8】
無機躯体の上に、請求項1乃至6の何れかに記載の反応性一液型ポリウレタン水性プライマー組成物を含有するプライマーを塗布し、乾燥皮膜を形成した後、更にウレタン防水材を塗布することを特徴とするウレタン系防水積層体の施工方法。

【公開番号】特開2008−214617(P2008−214617A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23536(P2008−23536)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】