説明

反応性希釈剤を含有するポリウレタン塗料組成物

【課題】高粘度であるため作業性が劣るポリカーボネートジオールやアクリルポリオールなどのポリオールとの相溶性が優れる反応性希釈剤を用いることにより作業性を改善し、且つ塗膜の耐熱性、耐薬品性、密着性、光沢、耐候性が優れるポリウレタン塗料を得ることであり、特に低VOC塗料又は無溶剤塗料などの環境対応塗料に使用可能なポリウレタン塗料組成物を提供することである。
【解決手段】反応性希釈剤としてポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%であるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを使用することによって、上記課題が解決し、特に耐熱性及び密着性に優れたポリウレタン塗料が得られることを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性希釈剤を含有するポリウレタン塗料に関するものである。詳しくは低VOC化或いは無溶剤化、作業性、塗膜の耐熱性、耐薬品性、密着性、光沢、耐候性などが要求されるポリウレタン塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂は、合成皮革、人工皮革、接着剤、家電・家具用塗料、自動車塗料、電気・電子材料、フォーム等の幅広い用途で使用されており、イソシアネートと反応させるポリオール成分として様々なポリオールが用いられている。一般に、ポリウレタン樹脂のポリオールとして、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエングリコール、ポリイソプレンポリオール等は粘度が高く、特にポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールは塗料用途で使用される場合、その高粘度故に作業性の改善、生産性の向上が望まれている。その方法としては、一般的に溶剤や水、あるいは反応性希釈剤の使用が挙げられる。このうち、溶剤の使用による粘度低減化は当然の如く可能であり、充分な塗膜性能を有する溶剤系コーティング剤(特許文献1)、あるいは硬化性組成物(特許文献2)など多数が開示されている。しかしながら、最近では環境問題の観点から、水系化あるいは、低VOC化が望まれている。水系化による粘度低減化についても充分可能なものであり、エマルジョン塗料、水溶性塗料に代表される水系ウレタン塗料も多数存在している。しかしながら、水系樹脂塗料においても依然、排水処理の問題が残ることから、環境面において充分であるとは言い切れない点が存在し、更に溶剤系の塗膜性能に比べると耐水性などが劣るという課題が存在する(非特許文献1)。一方、反応性希釈剤による粘度低減化も行なわれており、これは溶媒と同様に粘度を低下させるが、反応に関与するため生成ポリウレタン中に取り込まれる。したがって環境面においては、VOCがなく、且つ排水も生じない点において、他の手法に比べて優れていると言える。このような反応性希釈剤としては、一般的にイソシアネートと反応する水酸基を含有する低分子量化合物が使用される。低分子量且つ低粘度のジオール、トリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリンなどを使用することが公知である。しかしながら、これらのアルコールは水酸基価が高く、イソシアネートの使用量が増加し不経済となるため、ポリオール成分の水酸基価の調整、あるいは架橋剤として少量配合される場合が多い。したがって、水酸基価が高過ぎずイソシアネートの増量に繋がらない、即ち経済性に優れる反応性希釈剤が望まれている。また、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエングリコール、ポリイソプレンポリオール等のポリオールとの相溶性が良好な反応性希釈剤の種類は限られ、且つ個々において相溶性が異なるため、相溶性、粘度低下性、経済性を併せ持った反応性希釈剤が要望されている。
【0003】
この他に、ポリプロピレングリコール、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加させたポリオキシプロピレントリオール、及びペンタエリスリトールにプロピレンオキサイドを付加させたポリオキシプロピレンテトラオールのようなポリオキシプロピレン誘導体が用いられるが、耐熱性が充分とは言えず、更に塗料用途においては、耐候性が問題となりやすかった。
【特許文献1】特開2006−182904号公報
【特許文献2】特開2007−112986号公報
【非特許文献1】2005年版 ポリウレタン原料・製品の総合分析(シーエムシー出版)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、高粘度であるため作業性が劣るポリカーボネートジオールやアクリルポリオールなどのポリオールとの相溶性が優れる反応性希釈剤を用いることにより作業性を改善し、且つ塗膜の耐熱性、耐薬品性、密着性、光沢、耐候性が優れるポリウレタン塗料を得ることであり、特に低VOC塗料又は無溶剤塗料などの環境対応塗料に使用可能なポリウレタン塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するため鋭意検討した結果、(a)ポリオール、(b)ポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%であるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、(c)イソシアネートを含有することによって、上記課題が解決し、特に耐熱性及び密着性に優れたポリウレタン塗料が得られることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0006】
反応性希釈剤としてポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを使用することにより、ポリオールの粘度低減化が可能となり、作業性の改善及び生産性の向上に繋がるとともに、塗膜の耐熱性、耐薬品性、密着性、光沢、耐候性に優れたポリウレタン塗料組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳細にする。
【0008】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは、ポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%の生成物である。それら化合物について、一般的な製造方法に従って合成した。すなわち、ポリグリセリンを触媒量のアルカリ存在下、アルキレンオキサイドを付加する工程及びその付加物を種々の脂肪酸と脱水縮合反応によりエステル化する工程からなる。ただし、この製造方法は例示であって、本発明で示す反応性希釈剤を製造する際、この製造方法に限定されるわけではない。
【0009】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルに使用するポリグリセリンは、好ましくは水酸基当量から得られる平均重合度が2〜10のものであり、より好ましくは同平均重合度が2〜6である。平均重合度が低過ぎると得られるポリウレタン塗料の塗膜性能が悪化する傾向があり、一方平均重合度が高過ぎると反応性希釈剤の粘度が高くなる傾向があり、ポリオールに配合した際の作業性の改善、生産性の向上に繋がりにくいため、好ましくない。
【0010】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルに使用するアルキレンオキサイドは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられるが、エチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドは単独でも併用しても良い。アルキレンオキサイドの付加単位数は、好ましくはポリグリセリン1モルに対して4〜80モルであり、より好ましくは4〜60モルである。アルキレンオキサイドの付加モル数が低過ぎるとウレタン用ポリオールとの相溶性が悪化する傾向があり、一方アルキレンオキサイドの付加モル数が高過ぎるとポリウレタン塗料において、耐水性等の塗膜性能が悪化する原因となるため、好ましくない。
【0011】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルに使用する脂肪酸は、炭素数が2〜18の直鎖状若しくは分岐状の、及び飽和若しくは不飽和のいずれの脂肪酸でもよく、単独または混合で使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが好ましく、なかでもカプリル酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸がより好ましい。
【0012】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルのエステル化率は、好ましくは20〜80%の範囲であり、より好ましくは30〜70%である。エステル化率が20%未満では、主剤ポリオールとの相溶性が悪化する、あるいは得られるポリウレタン塗料において耐熱性等の塗膜性能が低下する等の物性低下を招く原因となり、さらにポリイソシアネートの使用量が増加するため不経済となり好ましくない。一方エステル化率が80%を超える場合では、主剤ポリオールとの相溶性が悪化する、あるいは得られるポリウレタン塗料において、ブリードが生じる等の物性低下を招く原因となり好ましくない。
【0013】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの25℃における粘度は、好ましくは10〜1000mPa・sの範囲であり、より好ましくは50〜400mPa・sである。粘度が10mPa・s未満の反応性希釈剤はエステル化率が高くなるため、得られるポリウレタン塗料の塗膜性能が低下する、あるいはブリードが生じる等の物性低下を招く原因となり好ましくない。一方粘度が1000mPa・sを越える場合では、ポリオールの粘度低減効果が小さく、作業性の改善に繋がらず好ましくない。
【0014】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの水酸基価は、上述したポリグリセリンの重合度及びアルキレンオキサイドの付加モル数及びエステル化率の調整によって適宜変更が可能であるが、好ましくは50〜400mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは100〜200mgKOH/gである。水酸基価が50mgKOH/g未満では、主剤ポリオールとの相溶性が悪化する、あるいは得られるポリウレタン塗料の耐熱性が低下する等の物性低下を招く原因となり、一方水酸基価が400mgKOH/gを越える場合では、主剤ポリオールとの相溶性が悪化する、あるいは得られるポリウレタン塗料においてブリードが生じる等の物性低下を招く原因となり、さらにポリイソシアネートの使用量が増加するため不経済となり好ましくない。
【0015】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの具体例としては、ポリオキシエチレン(4)ジグリセリルエーテルのカプリル酸エステル(エステル化率50%)、ポリオキシエチレン(4)ジグリセリルエーテルの2−エチルヘキサン酸エステル(エステル化率50%)、ポリオキシエチレン(13)ジグリセリルエーテルのカプリル酸エステル(エステル化率50%)、ポリオキシエチレン(13)ジグリセリルエーテルの2−エチルヘキサン酸エステル(エステル化率50%)、ポリオキシエチレン(13)ジグリセリルエーテルのオレイン酸エステル(エステル化率25%)などが挙げられる。
【0016】
本発明のポリウレタン塗料組成物は、少なくとも主剤のポリオールであるポリカーボネートジオール、アクリルポリオール、ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール等と反応性希釈剤であるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとをあらかじめ混合した後に、イソシアネートを配合する工程を経て調製される。
【0017】
本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの添加量としては、主剤のポリオールの重量に対し通常1〜80重量%であり、好ましくは5〜60重量%であり、さらに好ましくは10〜40重量%である。添加量が1重量%以下ではポリオールの粘度低減効果が小さく、作業性の改善に繋がらない。又、80重量%を越える場合は、得られるポリウレタン塗料において耐熱性、耐水性などの塗膜性能が悪化するため、この範囲が好ましい。
【0018】
本発明に用いられるポリオールの種類は特に限定されず、当業者が一般に入手可能なポリオールを使用することができる。本発明において使用されるポリオールの具体例としては、商品名PCDL T−5652、T−5651、T−5650J(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)等のポリカーボネートポリオール、商品名 ARUFON UH−2000、UH−2032、UH−2041(以上、東亞合成株式会社製)等のアクリルポリオール、商品名poly bd R−45HT、R−15HT(以上、出光興産株式会社製 水酸基末端液状ポリブタジエン)、商品名 G−1000、G−2000、G−3000(以上、日本曹達株式会社製 α,ω―ポリブタジエングリコール)、商品名 GI−1000、GI−2000、GI−3000(以上、日本曹達株式会社製 水素添加型ポリブタジエングリコール)等のポリブタジエングリコール類、商品名 poly ip(出光興産株式会社製 水酸基末端液状イソプレン)、商品名 エポール(出光興産株式会社製 水素添加型ポリオレフィン系ポリオール)等のポリイソプレンポリオール類が挙げられる。なお、これらの記載は本発明に好適なポリオールの例示であり、これらにより本発明が限定されるものではない。
【0019】
本発明のポリウレタン塗料組成物に用いられるイソシアネート成分の具体例としては、4,4’−または2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメライズドジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5,−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5,−トリエチルシクロヘキシルイソシアネート、をはじめとする種々のポリイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3,3’−ジイソシアネートジプロピルエーテル、あるいはこれらのポリイソシアネートのウレタン変性体、二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、プレポリマー、ブロック化物などが挙げられる。耐候性が要求される場合は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの無黄変ポリイソシアネートを選択することが望ましい。
【0020】
本発明のポリウレタン塗料組成物は、上述のポリオール成分とポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとイソシアネート成分を含有する。水酸基含有成分すなわちポリオール組成物とイソシアネート成分との配合比率はNCO/OHの当量比で通常0.7〜1.4、好ましくは0.8〜1.2である。これらの範囲を外れる場合はポリウレタン塗料において、耐熱性、密着性等の塗膜性能が悪化するため好ましくない。
【0021】
本発明のポリウレタン塗料組成物の調製に際しては、必要に応じて、多価アルコール等の反応調整剤、鎖延長剤、架橋剤、フィラー、顔料、充填剤、可塑剤、ウレタン化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、水分吸収剤、消泡剤、防カビ剤、シラン系やチタン系のカップリング剤、離形剤、難燃剤、界面活性剤、pH調整剤等を添加して製造される。
【0022】
本発明のポリウレタン塗料組成物の硬化は、室温ないし100℃程度の温度でおこなうことができ、温度が高い場合は硬化反応がそれだけ促進される。硬化時間は室温では1〜7日程度、100℃硬化では1〜10時間程度と適宜定めればよく、使用する触媒の種類及び量によっても調整が可能である。一例としては、塗膜作製後に室温で5日間乾燥する方法、あるいは80℃で2時間加熱乾燥する方法等が採用される。
【実施例】
【0023】
以下、本発明に用いられるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステル及びポリウレタン塗料組成物について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
<合成例1>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数4)455.7g(1.299mol)、カプリル酸393.4g(2.728mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら180℃まで昇温し1時間反応し、その後220℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数4)のカプリル酸エステル795.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率50.3%、粘度151mPa・s(25℃)、水酸基価184.6mgKOH/gであった。
【0025】
<合成例2>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数4)446.6g(1.273mol)、2−エチルヘキサン酸403.8g(2.801mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら220℃まで昇温し1時間反応し、その後250℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数4)の2−エチルヘキサン酸エステル795.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率48.1%、粘度224mPa・s(25℃)、水酸基価196.1mgKOH/gであった。
【0026】
<比較合成例1>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数13)360.6g(0.489mol)、オレイン酸469.3g(1.661mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら230℃まで昇温し8時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)エチレンオキサイド付加物(付加モル数13)のオレイン酸エステル795.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率85.0%、粘度175mPa・s(25℃)、水酸基価20.6mgKOH/gであった。
【0027】
<比較合成例2>
温度計、撹拌機、窒素吹き込み管、排気ラインを備えた反応器に、ポリグリセリン(平均重合度2)191.1g(1.151mol)、オレイン酸650.4g(2.302mol)、水酸化ナトリウム0.1gを仕込み、一定量の窒素を吹き込み、かつ撹拌しながら230℃まで昇温し5時間反応を行った。反応終了後、60℃まで冷却し、ポリグリセリン(平均重合度2)のオレイン酸エステル795.0gを得た。得られた生成物は、エステル化率50.1%、粘度317mPa・s(25℃)、水酸基価160.8mgKOH/gであった。
【0028】
<実施例1>
粘度8970mPa・s(25℃)のポリカーボネートポリオール(PCDL T−5651<旭化成ケミカルズ株式会社製>)を77.2重量部、合成例1に記載される反応性希釈剤を20.0重量部、反応調整剤として水酸基価768mgKOH/gの2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(オクタンジオール<協和発酵ケミカル株式会社製>)を2.8重量部配合し、ポリオール成分の水酸基価が144mgKOH/gとなるように調整した。このポリオール配合物を攪拌し、透明均一な状態になることを確認した。また、このポリオール配合物の粘度は3770mPa・s(25℃)であった。次にこのポリオール成分に対して、NCO(wt%)=23.1%のポリイソシアネート(デュラネートTPA−100<旭化成ケミカルズ株式会社製>)をNCO/OHの当量比が1.05となる部数を配合し、更にレベリング剤BYK−331(ビックケミー社製)0.07重量部、ジブチルスズジラウレート0.02重量部を配合し、再度均一になるまで攪拌後5torrの真空下にて5分間脱泡し、塗布液を調製した。これをガラス板又はABS板上にアプリケーターを用いて塗布し、80℃で2時間加熱硬化することにより膜厚約30μmのポリウレタン塗膜を得た。これを耐熱性、光沢保持率、密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐アルコール性、耐オレイン酸性、耐候性の試験に用いた。
【0029】
<実施例2>
粘度8970mPa・s(25℃)のポリカーボネートポリオール(PCDL T−5651<旭化成ケミカルズ株式会社製>)を77.6重量部、合成例2に記載される反応性希釈剤を20.0重量部、反応調整剤として水酸基価768mgKOH/gの2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(オクタンジオール<協和発酵ケミカル株式会社製>)を2.4重量部配合し、ポリオール成分の水酸基価が144mgKOH/gとなるように調整した。このポリオール配合物を攪拌し、透明均一な状態になることを確認した。また、このポリオール配合物の粘度は4150mPa・s(25℃)であった。次にこのポリオール成分に対して、NCO(wt%)=23.1%のポリイソシアネート(デュラネートTPA−100<旭化成ケミカルズ株式会社製>)をNCO/OHの当量比が1.05となる部数を配合し、更にレベリング剤BYK−331(ビックケミー社製)0.07重量部、ジブチルスズジラウレート0.02重量部を配合し、再度均一になるまで攪拌後5torrの真空下にて5分間脱泡し、塗布液を調製した。以下は実施例1と同様におこないポリウレタン塗膜を得た。
【0030】
<比較例1>
粘度8970mPa・s(25℃)のポリカーボネートポリオール(PCDL T−5651<旭化成ケミカルズ株式会社製>)を72.2重量部、比較合成例1に記載される反応性希釈剤を20.0重量部、反応調整剤として水酸基価768mgKOH/gの2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(オクタンジオール<協和発酵ケミカル株式会社製>)を7.8重量部配合し、ポリオール成分の水酸基価が144mgKOH/gとなるように調整した。このポリオール配合物を攪拌したが、白濁し、しばらく放置した後に分離することを確認した。したがって、相溶性不良と判定し以後の評価は実施しなかった。
【0031】
<比較例2>
粘度8970mPa・s(25℃)のポリカーボネートポリオール(PCDL T−5651<旭化成ケミカルズ株式会社製>)を76.5重量部、比較合成例2に記載される反応性希釈剤を20.0重量部、反応調整剤として水酸基価768mgKOH/gの2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(オクタンジオール<協和発酵ケミカル株式会社製>)を3.5重量部配合し、ポリオール成分の水酸基価が144mgKOH/gとなるように調整した。このポリオール配合物を攪拌したが、白濁し、しばらく放置した後に分離することを確認した。したがって、相溶性不良と判定し以後の評価は実施しなかった。
【0032】
<比較例3>
粘度8970mPa・s(25℃)のポリカーボネートポリオール(PCDL T−5651<旭化成ケミカルズ株式会社製>)を75.0重量部、ポリプロピレングリコール(ニューポールPP−1000<三洋化成工業株式会社製>を20.0重量部、反応調整剤として水酸基価768mgKOH/gの2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(オクタンジオール<協和発酵ケミカル株式会社製>)を5.0重量部配合し、ポリオール成分の水酸基価が144mgKOH/gとなるように調整した。このポリオール配合物を攪拌し、透明均一な状態になることを確認した。また、このポリオール配合物の粘度は4200mPa・s(25℃)であった。次にこのポリオール成分に対して、NCO(wt%)=23.1%のポリイソシアネート(デュラネートTPA−100<旭化成ケミカルズ株式会社製>)をNCO/OHの当量比が1.05となる部数を配合し、更にレベリング剤BYK−331(ビックケミー社製)0.07重量部、ジブチルスズジラウレート0.02重量部を配合し、再度均一になるまで攪拌後5torrの真空下にて5分間脱泡し、塗布液を調製した。以下は実施例1と同様におこないポリウレタン塗膜を得た。
【0033】
実施例1〜2及び比較例1〜3において用いた反応性希釈剤を以下に示す。
実施例1:合成例1に記載される反応性希釈剤(反応性希釈剤A)
実施例2:合成例2に記載される反応性希釈剤(反応性希釈剤B)
比較例1:比較合成例1に記載される反応性希釈剤(反応性希釈剤C)
比較例2:比較合成例2に記載される反応性希釈剤(DO−150)
比較例3:ポリプロピレングリコール(粘度=148mPa・s(25℃)、水酸基価=110mgKOH/g、分子量=1000)
【0034】
<評価>
以下に評価方法を示す。評価結果は表1に示す。
(1) 相溶性
ポリカーボネートポリオール、反応性希釈剤、反応調整剤からなるポリオール成分を25℃に1日間放置して相溶性を目視観察した。
○・・・透明均一
△・・・白濁
×・・・2層に分離
(2) 粘度
上記(1)のポリオール成分の25℃における粘度(mPa・s)を東京計器株式会社製B型回転粘度計を用いて測定した。
(3) 耐熱性
ポリウレタン塗膜を作成した塗布ガラス板を80℃乾燥器中に500時間放置し、加熱前後の塗膜重量から、下記計算式により加熱重量減少(%)を求めた。
計算式;加熱重量減少(%)=(初期重量−加熱後の重量)÷初期重量×100
(4) MEK不溶分率
膜厚約1mmのポリウレタンフィルムを作成し、縦20mm、横20mmの正方形に切り取り、温度20℃条件下にてMEK(特級試薬)に24〜100時間浸せきさせた。各時間にポリウレタンフィルムを取りだし、80℃の乾燥器にて10時間乾燥後の重量を測定し、下記計算式によりMEK不溶分率(%)を求めた。
計算式;MEK不溶分率(%)=浸せき・乾燥後の重量÷浸せき前の重量×100
(5) 光沢保持率
上記(3)記載の80℃、500時間経過後のポリウレタン塗膜について、光沢計(PG−1:日本電色工業株式会社製)を用いて60°鏡面光沢度を測定した。試験前の塗膜についても同様に測定し、下記計算式により光沢保持率(%)を求めた。
計算式;光沢保持率(%)=加熱後の光沢度÷初期の光沢度×100
(6) 密着性
ABS(サイコラック1001:UMGABS株式会社製)基材に対し、種々の反応性希釈剤を配合したポリウレタン塗膜を作成し、JIS K5400に従い碁盤目テープ法による密着性を評価した。表1には100升中の残存升目を表記した。
(7) 耐酸性
温度20℃条件下にて、0.1Nの硫酸水溶液に、ポリウレタン塗膜を作成した塗布ガラス板を24時間浸せき後、塗膜の表面状態を下記指標に従い目視判定した。
(8) 耐アルカリ性
温度55℃条件下にて、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に、ポリウレタン塗膜を作成した塗布ガラス板を4時間浸せき後、塗膜の表面状態を下記指標に従い目視判定した。
(9) 耐アルコール性
温度20℃条件下にて、50wt%エタノール水溶液に、ポリウレタン塗膜を作成した塗布ガラス板を4時間浸せき後、塗膜の表面状態を下記指標に従い目視判定した。
(10)耐オレイン酸性
耐汗性に対する代替評価として、温度20℃条件下にて、オレイン酸(LUNAC−OLL−V:花王株式会社製)を、ポリウレタン塗膜を作成した塗布ガラス板上に0.1g付着させ、4時間後、塗膜の表面状態を下記指標に従い目視判定した。次いで、温度80℃条件下にて168時間後の膜の表面状態を下記指標に従い目視判定した。
(11)耐候性
キセノンウェザーメーター(WEL−75XS−HC.B.Ec:スガ試験機株式会社製)を用いて、ブラックパネル温度63℃、1時間当たりの降水時間10分、試験時間100時間にておこなった。試験片はABS(サイコラック1001:UMGABS株式会社製)基材に対し、種々の反応性希釈剤を配合したポリウレタン塗膜を作成したものを用いた。取りだし後の塗膜の表面状態を下記指標に従い目視判定した。
【0035】
以下に耐薬品性試験、耐候性試験の目視判定指標を示す。
(目視判定指標)
3・・・塗膜表面に劣化が見られない
2・・・塗膜表面の一部に劣化が見られる
1・・・塗膜の劣化が著しい
【0036】
【表1】

【0037】
本発明において、特定のポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを反応性希釈剤として使用した場合に、反応性希釈剤を全く使用しない場合と比べて、ポリウレタン塗料組成物の作業性が優れると共に、ポリウレタン塗膜の耐熱性、耐薬品性、密着性、光沢、耐候性等の塗膜性能において、大きな差異が見られないことが確認された。ポリプロピレングリコールを反応性希釈剤として使用した比較例3では、加熱重量減少がやや大きいことや、耐アルコール性試験では白化現象が見られること、更には耐オレイン酸性試験においては、塗膜の黄変、膨潤に加え、剥離現象が見られた。以上の結果から、本発明の構成要件の合理性と有意性が実証され、本発明が従来技術に比べて、卓越していることが明確であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のポリウレタン塗料組成物は、作業性、塗膜の耐熱性、耐薬品性、密着性、光沢、耐候性に優れたポリウレタン塗料を得ることができ、特にプラスチック、鋼板、コンクリート、木材等に使用される低VOC塗料又は無溶剤塗料などの環境対応塗料として使用できる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオール、(b)ポリグリセリン(平均重合度2〜10)及びアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイドであって、付加モル数が4〜80)及び直鎖若しくは分岐鎖を有する飽和若しくは不飽和である脂肪酸(炭素数2〜18)を反応して得られるエステル化率が20〜80%であるポリグリセリンポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、(c)イソシアネートを含有するポリウレタン塗料組成物。
【請求項2】
ポリオールがポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールの1種又は2種からなる請求項1記載のポリウレタン塗料組成物。

【公開番号】特開2009−96942(P2009−96942A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271985(P2007−271985)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】