説明

反応性微粒子およびその製造方法

【課題】
本発明は、光硬化性コーティング剤に添加して使用した場合、コーティング膜からの脱落を防止できる反応性微粒子に関する。本発明により得られる反応性微粒子は、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤として利用することができる。
【解決手段】
エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの反応性微粒子で粒子径の変動係数が10%未満である反応性微粒子を提供する。さらに、エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させてなる反応性微粒子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線や電子線などにより硬化する反応性微粒子に関し、さらに詳しくは、ミクロンサイズであり、かつ、粒度分布の狭い反応性微粒子に関する。本発明にて得られる反応性微粒子は、光硬化性樹脂バインダーやモノマーに添加して使用することができ、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来から、メラミン樹脂を含むアミノ樹脂微粒子は、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤などとして利用されてきた。これら用途に使用する場合、一般的には、樹脂バインダーと混合し、コーティング剤として使用される。また、生産性や環境問題からコーティング剤は、紫外線や電子線で硬化する光硬化性のタイプがしばしば用いられる。これらに利用するアミノ樹脂微粒子としては、例えば、アミノ樹脂水溶液に硫酸等の触媒を加え、攪拌下該樹脂を重合させ微細樹脂とする方法(特許文献1参照)は古くから知られている。また、メラミンとアルデヒド化合物との水溶性初期縮合物あるいはメラミンのメチルエーテル化物と水溶性ポリマーを含む溶液に、酸触媒を加えてメラミン微粒子を得る方法(特許文献2参照)が開示されている。これら微粒子は、紫外線や電子線により反応する官能基を有していないため、前記用途に使用した場合、微粒子がコーティング膜から脱落するという問題が発生する。特に、光拡散剤、光散乱剤、スペーサーについては、近年、電子産業の発展とともに、その利用が高まっており、それら電子部品に利用された場合、脱落した微粒子が様々な弊害を起こす可能性がある。
【特許文献1】特公昭46−28087号公報
【特許文献2】特開平4−304220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、紫外線や電子線により反応する官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの反応性微粒子を提供することにある。
また、光硬化性樹脂バインダーや光硬化性モノマーの存在下で、被膜の固着性や鉛筆硬度を向上させることのできる反応性微粒子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの反応性微粒子に関する。
【0005】
さらに本発明は、粒子径の変動係数が、10%未満である反応性微粒子に関する。
【0006】
さらに本発明は、エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させてなる反応性微粒子に関する。
【0007】
さらに本発明は、エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させてなる反応性微粒子に関する。
【0008】
さらに本発明は、上記反応性微粒子と、光硬化性樹脂バインダーおよび/または光硬化性モノマーとを含んでなる光硬化性組成物に関する。
【0009】
さらに本発明は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させる反応性微粒子の製造方法に関する。
【0010】
さらに本発明は、トリアジン環を有するアルデヒド化合物と縮合しうる化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させる反応性微粒子の製造方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、塩基性下で行う工程と、酸触媒存在下で行う工程との、2つの工程からなる反応性微粒子の製造方法であって、前記酸触媒が、多塩基酸である反応性微粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、紫外線や電子線により反応する官能基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる反応性微粒子を提供することができた。さらに詳しくは、光硬化性コーティング剤に添加して使用した場合、コーティング膜からの脱落を防止できる反応性微粒子を提供できた。本発明により得られる反応性微粒子は、光硬化性樹脂に加えた際には、フィルムあるいはコーティング膜に均一に分散し、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明でいう反応性微粒子は、エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる。本発明の反応性微粒子は、エチレン性不飽和基を有しているため、紫外線や電子線などより反応性を発現する。エチレン不飽和基は、微粒子中のどこに存在してもかまわないが、より有効に機能するには、粒子の表面または、その近傍に存在する方が好ましい。
【0014】
さらに、本発明の反応性微粒子は、平均粒径が0.5〜100μmで変動係数が10%未満の単分散な反応性微粒子である。
【0015】
本発明で言う平均粒径は、光学顕微鏡で測定した100個の粒子の数平均であり、変動係数は、その100個の粒子径を統計計算し、次式によって求められた数値である。
【0016】
変動係数(%)=(標準偏差/平均粒径)×100
【0017】
エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させて得ることができる。
【0018】
本発明のアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)は、トリアジン環を有するアミノ化合物のことであり、例えばメラミン、ベンゾグアナミンやアセトグアナミンなどのグアナミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上併用することもできる。通常、最も安価で官能基も多いメラミンを主体的に用い、他のトリアジン系モノマーを共縮合させて諸物性を調節する。
【0019】
また、本発明では、上述のアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)と共縮合しうる化合物、例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素類、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロールなどのフェノール類、アニリン等を併用することも可能である。
【0020】
本発明のアルデヒド化合物(B)とは、脂肪族、脂環族、芳香族、複素環アルデヒド化合物、それらの縮合体やアルデヒド化合物を発生しうる化合物などが挙げられる。たとえば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、パラホルムアルデヒド、パラアセトアルデヒド等が挙げられる。好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドであり、溶媒として水に溶解した水溶液が用いられる。ホルムアルデヒドの水溶液である、市販の濃度37%ホルマリン水溶液が最も安価であり容易に使用することができる。
【0021】
本発明のエチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)とは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独でも併用しても使用することができる。
【0022】
本発明の反応性微粒子を構成する、エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂の製造は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させて得ることができるが、その縮合反応は、塩基性下で行う工程と、酸触媒存在下で行う工程との2つの工程からなる。
【0023】
アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)と、アルデヒド化合物(B)との反応は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドであれば、メラミン1モルに対してホルムアルデヒド6モルまで反応させることができる。通常、等モルで反応させると直鎖状ポリマーが生成する。架橋構造を付与させ微粒子とするためには、さらに数割のアルデヒド化合物(B)が必要とされる。理論的には、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)に対して1.0倍モルより多いアルデヒド化合物(B)によって本発明の微粒子が合成される。
【0024】
本発明の反応性微粒子は、塩基性下での縮合反応工程で得られた縮合生成物が、酸触媒存在下での縮合反応工程において三次元架橋により不溶化して形成される。よって、ある程度アルデヒド化合物(B)が過剰な方が均一な微粒子を得やすい。アルデヒド化合物(B)が少ないと反応初期の架橋点が減り、二次元架橋のまま不溶化、あるいは微粒子の生成過程で粒子同士の癒着の原因になるため、異形微粒子、融着微粒子、あるいは凝集微粒子が目立つようになり、単分散な微粒子を得ることができない。しかし、あまり過剰にアルデヒド化合物(B)が存在すると、未反応物として系内に残存し、環境汚染の原因のとなる場合がある。このため本発明では、アルデヒド化合物(B)はアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)に対して2.0〜4.0倍モルが好ましく、さらには2.5〜3.5倍モル用いることがより好ましい。
【0025】
まず、塩基性下での縮合反応工程について説明する。この工程では、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を同時に仕込む場合と、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)を仕込む場合の二通りの方法があるが、特に限定される物ではない。この工程では、アルデヒド化合物(B)のアルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)への付加反応が主に起こり、縮合反応がわずかに進行している状態である。よって、生成する縮合物は、比較的低分子量であり、水溶性の状態で得られる。また、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を使用した場合、化合物(C)の水酸基が縮合反応に一部取り込まれると推測される。
【0026】
この工程では、反応液が塩基性であれば無触媒でもよく、必要あればアルカリ触媒を使用することもできる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、トリエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種類以上を併用することも可能である。
【0027】
また、メチロールメラミン、アルキルメチロール化メラミン、メチロールベンゾグアナミン、アルキルメチロール化ベンゾグアナミンなどは、トリアジン系モノマーとホルムアルデヒドとの水溶性縮合物であるから、これらの化合物も使用することができる。
【0028】
反応温度は、15〜100℃の範囲が好ましく、さらには20〜90℃であることがより好ましい。
【0029】
次に、酸触媒存在下での縮合反応工程について説明する。この工程では、塩基性下での縮合反応工程で得られた縮合生成物を、さらに縮合して目的の微粒子を得る工程である。この工程で、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を添加してもよい。この工程で、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)が互いに縮合して微粒子を形成する。この縮合反応により、本発明の微粒子に、エチレン性不飽和基が導入されることになる。
【0030】
本発明は、酸触媒として、多塩基酸を用いることに特徴がある。 多塩基酸とは、1分子中に塩基を中和することのできる水素原子が2個以上含まれている酸、すなわち塩基度が2以上の酸のことである。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸類、またマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸類、さらにはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類、そして硫酸などの無機酸類といった二塩基酸が挙げられる。また、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸などのトリカルボン酸類、そしてリン酸、ヒ酸、ホウ酸などの無機酸といった三塩基酸が挙げられる。さらにベンゼンテトラカルボン酸などの四塩基酸、ベンゼンヘキサカルボン酸などの六塩基酸が挙げられるが、これに限るものではない。
【0031】
このうち、1分子内に塩基を中和することのできる水素原子が2個以上含まれているカルボン酸、すなわち上記多塩基酸のうち、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、テトラカルボン酸類、さらにはヘキサカルボン酸類などの使用がより好ましい。また、モノオールポリカルボン酸、ジオールポリカルボン酸類などのように、1分子内にカルボキシル基以外の官能基を有するカルボン酸含有化合物もこれに含まれる。さらには酸無水物なども用いることができる。これらは2種類以上を併用することもできる。これらの、酸触媒を用いることで、系内に余分な無機物を混在させることなく微粒子を製造することができ、光学材料等の特殊な用途における無機物の除去操作を省くことができる。
【0032】
その他の酸触媒としては、例えば、塩酸等の無機酸、酢酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ポリオキシエチレンおよびその誘導体のスルホン化物等の有機酸などを用いても微粒子を得ることは可能であるが、微粒子の単分散性は劣る。
【0033】
酸触媒の添加量は、重合系がpH6以下になる量が好ましく、より好ましくは、pHが2〜5になるようにする。pHが6より高いと粒度分布が広くなる、凝集が発生する等の原因となる場合がある。
【0034】
酸触媒添加後、10秒〜5分で白濁するが、内部架橋を完結させるためさらに1時間以上そのままの温度で攪拌を続ける。架橋が不十分だと、後処理で微粒子が融着したり破壊したりする場合がある。初期の反応温度が40℃以下の低温である場合は、内部架橋の進行を促進するため、途中昇温してもよい。
【0035】
次に、本発明に使用するシリカ化合物(D)について説明する。本発明で使用されるシリカ化合物(D)は、微粒子の分散安定剤として機能する。特に、粒子を形成する酸触媒存在下での縮合反応工程に使用するのが好ましい。粒径1〜100nmのシリカ粒子がSiO2として10〜50重量%、コロイド状に分散しているものが好ましく、市販の各種グレードが使用できる。例えば、ルドックス(デュポン株式会社製)、スノーテックス(日産化学工業株式会社製)、Cataloid(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT(旭電化工業株式会社製)等が挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0036】
本発明は、酸性領域における縮合反応によって微粒子を生成させるため、pH7未満の水分散体であり、酸性領域で安定に使用できるシリカ化合物(D)を用いるのが好ましい。例えば、ルドックスTMA(デュポン株式会社製)、スノーテックスO(日産化学工業株式会社製)、スノーテックスOXS(日産化学工業株式会社)CatalodSN(媒化成工業株式会社製)、アデライトAT−20Q(旭電化工業株式会社製)等の酸性シリカ化合物や、ルドックスAM(デュポン株式会社製)、スノーテックスC(日産化学工業株式会社製)、CataloidSC−30(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT−20A(旭電化工業株式会社製)等の特殊処理によりpH変動に影響されないシリカ化合物(D)が挙げられる。
【0037】
シリカ化合物(D)の添加量は、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)とアルデヒド化合物(B)とを合計した重量に対して、0.5〜20重量%であることが好ましい。0.5重量%より少ないと微粒子が安定化せず凝集物が多くなり、20重量%より多いと粒子表面に残存し、結果的に被覆されるシリカ量が多くなって熱硬化性樹脂の特徴を損なう場合がある。より好ましくは、1〜15重量%である。
【0038】
また、必要に応じて分散安定剤を併用することができる。分散安定剤とは、ミセルを形成し得る界面活性剤、もしくは分散安定剤としての役割を果たす高分子量物のことをいう。例えば、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウムのようなアルキルスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸塩といったアニオン性界面活性剤、
ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテートのようなアルキルアミン塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライドのような四級アンモニウム塩類といったカチオン性界面活性剤、
さらに、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドといった両性界面活性剤、またさらには、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルのようなポリエチレングリコールアルキルエーテル等といった非イオン性界面活性剤が挙げられる。さらに、これら界面活性剤にエチレン性不飽和単量体と共重合可能な官能基が結合されているものも界面活性剤として使用することができる。
【0039】
また、高分子量の分散安定剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、その共重合体およびこれらの中和物ならびにポリメタクリル酸、その共重合体およびこれらの中和物、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらは併用することもできる。
【0040】
縮合反応の溶媒には、原則的には水を使用する。所望によっては本発明の特徴を損なわない程度にアルコールを加えることも可能であるが、メチロール基がアルコールによりエーテル化し、アルコールに対して親和性が高くなると、微粒子を生成せず溶液全体がゲル化する場合があるので必要最低限に抑える必要がある。
【0041】
得られた反応性微粒子は、そのまま水性分散体、もしくは一般的なろ過・乾燥操作により粉末状の粒子として得ることができるが、非水系有機溶媒に置換して、非水系微粒子分散体とすることも可能である。
【0042】
非水系有機溶媒とは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、メチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、等のケトン類;などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の反応性微粒子は、赤外線スペクトルを測定することにより、微粒子中にエチレン性不飽和基が導入されていることを確認した。
【0044】
本発明の反応性微粒子は、光硬化性樹脂バインダーや光硬化性モノマーに添加して、光硬化性のコーティング剤として使用することができる。光硬化性のコーティング剤として使用する場合、バインダー樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤などの混合物に添加して使用する。
バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、エチレン性不飽和結合が導入され光硬化性樹脂バインダーであってもよい。エチレン性不飽和結合の導入方法はどのようなものであっても構わない。例えば、反応性の異なる少なくとも2種(例えば、ビニル基とアクリル基)の光硬化性官能基を有するモノマーを含むモノマーを重合してなるビニル基を側鎖に有する樹脂バインダーがあげられる。また、反応性官能基を有するモノマーを重合し反応性官能基を有する樹脂とした後、前記反応性官能基を変性してなる光硬化性樹脂バインダーがあげられる。これらの樹脂を単独で添加しても良いし、他の樹脂を含む、複数の樹脂を混合して添加しても良い。
光硬化性モノマーとしては、公知の単官能あるいは多官能の、アクリル系モノマー、ビニル系モノマーが使用できる。
【0045】
本発明の反応性微粒子を使用した光硬化性のコーティング剤は、有機溶剤を含まない硬化性組成物としても、有機溶剤を含む硬化性組成物としても用いることができる。
有機溶剤を含む場合には、各種基材に塗布し、前記有機溶剤を揮発させた後に硬化に必要な紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射すればよい。有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、トルエン、メチルプロピレングリコールアセテート等が挙げられる。
【0046】
この他、目的を損なわない範囲で任意成分として、さらに溶剤、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラー等を添加することができる。
【0047】
<感光>
本発明の反応性微粒子または、反応性微粒子を使用した光硬化性のコーティング剤は、公知のラジエーション硬化方法により硬化させ硬化物とすることができ、活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、400〜500nmの可視光を使用することができる。
照射する電子線の線源には熱電子放射銃、電界放射銃等が使用できる。また、紫外線および400〜500nmの可視光の線源(光源)には、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。具体的には、点光源であること、輝度の安定性から、超高圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプが用いられることが多い。照射する活性エネルギー線量は、5〜2000mJ/cm2の範囲で適時設定できるが、工程上管理しやすい50〜1000mJ/cm2の範囲であることが好ましい。また、これら紫外線または電子線と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0048】
本発明の反応性微粒子は、紫外線や電子線などにより反応性を発現する新規な微粒子である。また、粒径0.5〜20μmかつ変動係数10%以下の単分散な微粒子である。本発明の反応性微粒子は、光硬化性のコーティング剤に添加して使用でき、例えば、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤等、微粒子の一般用途から精密用途まで幅広く使用できる。
【実施例】
【0049】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。実施例において部及び%とあるのは、特に指定のない限り、すべて重量基準であるものとする。
【0050】
(実施例1)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液122部(1.5mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート29部(0.25mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてシュウ酸20部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.1であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径1.54μm、変動係数7.03%の単分散微粒子分散液であった。
【0051】
得られた水分散液にエチレングリコールモノイソプロピルエーテル700部を添加し、150℃まで加熱して水を蒸発除去した。さらにシクロヘキサノン2000部を数回に分けて添加し、最終的に固形分20%のシクロヘキサノン分散体を得た。
【0052】
(実施例2)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液122部(1.5mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、N−メチロールアクリルアミド25部(0.25mol)、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてイタコン酸25部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.0であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.4%、平均粒径1.34μm、変動係数7.88%の単分散微粒子分散液であった。
【0053】
得られた水分散液にエチレングリコールモノイソプロピルエーテル700部を添加し、150℃まで加熱して水を蒸発除去した。さらにシクロヘキサノン2000部を数回に分けて添加し、最終的に固形分20%のシクロヘキサノン分散体を得た。
【0054】
(実施例3)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液122部(1.5mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン50部(0.4mol)、ベンゾグアナミン19部(0.1mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンおよびベンゾグアナミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、N−メチロールアクリルアミド25部(0.25mol)、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてコハク酸25部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH3.9であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.5%、平均粒径1.71μm、変動係数8.44%の単分散微粒子分散液であった。
【0055】
得られた水分散液にエチレングリコールモノイソプロピルエーテル700部を添加し、150℃まで加熱して水を蒸発除去した。さらにシクロヘキサノン2000部を数回に分けて添加し、最終的に固形分20%のシクロヘキサノン分散体を得た。
【0056】
(比較例1)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液113部(1.4mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてシュウ酸20部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.1であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.2%、平均粒径1.59μm、変動係数6.98%の単分散微粒子分散液であった。
【0057】
得られた水分散液にエチレングリコールモノイソプロピルエーテル700部を添加し、150℃まで加熱して水を蒸発除去した。さらにシクロヘキサノン2000部を数回に分けて添加し、最終的に固形分20%のシクロヘキサノン分散体を得た。
【0058】
(比較例2)
攪拌機、還流冷却器、温度計がついた反応器に37%ホルマリン液113部(1.4mol)、トリエチルアミン0.3部仕込み、pHが9以上であることを確認した後に、イオン交換水600部、メラミン63部(0.5mol)を仕込み攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃でメラミンが溶解し無色透明になっていることを確認後、分散安定剤としてスノーテックスOXS(日産化学工業株式会社製、SiO2分11.5%、粒子径4nm、pH3〜4)59部、続いてプロピオン酸20部を水100部に溶解したものを添加し、この時のpH4.5であることを確認した。2分後白濁してから3時間、そのまま80℃で攪拌を続けることによって微粒子分散液を得た。その分散液は固形分8.2%、平均粒径1.81μm、変動係数15.65%の微粒子分散液であった。
【0059】
得られた水分散液にエチレングリコールモノイソプロピルエーテル700部を添加し、150℃まで加熱して水を蒸発除去した。さらにシクロヘキサノン2000部を数回に分けて添加し、最終的に固形分20%のシクロヘキサノン分散体を得た。
【0060】
(評価)
上記で得られた粒子2部を、バインダーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート55部とアクリロイルモルフォリン38部の混合物に添加して攪拌、混合した。さらに光開始剤としてイルカギュア184を5部加え、PETフィルムにアプリケーターで膜厚が10μmになるように塗工し、メタルハライドランプで400mJ/cm2の紫外線を照射し、塗工物を作製した。室温で1週間経過したものを以下の評価に用いた。
鉛筆硬度は、JIS K5400 8.4.2に従って試験を行い、表1の結果となった。
固着性は、200gの荷重をかけながら#1000のスチールウールで塗膜を10往復させた後、塗膜上にでた粉を目視で観察した。結果は、表1の様になった。
【0061】
【表1】

【0062】
表1より明らかな通り、本発明の実施例1〜3は、比較例1および2と比べると固着性に優れていた。また、塗膜の鉛筆硬度も高くなっていた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の反応性微粒子は、ブロッキング防止剤、光拡散剤、光散乱剤、スペーサー、フィルム補強剤、機械強度改質のための樹脂改質剤、マット剤、滑剤等、微粒子の一般用途から精密用途まで幅広く使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂からなる、平均粒径が0.5〜100μmの反応性微粒子。
【請求項2】
粒子径の変動係数が、10%未満である請求項1記載の反応性微粒子。
【請求項3】
エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させてなる請求項1または2記載の反応性微粒子。
【請求項4】
エチレン性不飽和基とトリアジン骨格とを有するアミノ樹脂が、アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させてなる請求項1〜3いずれか記載の反応性微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の反応性微粒子と、光硬化性樹脂バインダーおよび/またはモノマーとを含んでなる光硬化性組成物。
【請求項6】
アルデヒド化合物と縮合しうるトリアジン環を有する化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を縮合反応させる反応性微粒子の製造方法。
【請求項7】
トリアジン環を有するアルデヒド化合物と縮合しうる化合物(A)、アルデヒド化合物(B)、および、エチレン性不飽和基と水酸基とを有する化合物(C)を、シリカ化合物(D)を含む水性液体中で、縮合反応させる請求項6記載の反応性微粒子の製造方法。
【請求項8】
塩基性下で行う工程と、酸触媒存在下で行う工程との、2つの工程からなる請求項6または7記載の反応性微粒子の製造方法であって、前記酸触媒が、多塩基酸である反応性微粒子の製造方法。


【公開番号】特開2007−186633(P2007−186633A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7025(P2006−7025)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】