説明

反応槽

【課題】収容容器内での結露の発生を防ぎ、また反応容器への結露の発生を防ぐことができる反応槽を提供する。
【解決手段】収容容器1に搬入する以前に予めマイクロプレート100を加温し、収容容器1の内部と、マイクロプレート100との温度差を少なくしてマイクロプレート100の表面の結露を防ぐ。収容容器1の上部を加熱し、収容容器1の上部の内壁面に付着する結露水を蒸発させて、収容容器1の内部に搬入したマイクロプレート100への結露水の滴下を防ぐ。反応槽を使用していないとき、もしくは収容容器1の内部が高湿度となったときに、扉体14を開けて開口(12,13)を開放させて、収容容器1の内部の結露を防止して、収容容器1の内部でのカビの発生、細菌の繁殖を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば免疫学的凝集反応などにおいて凝集反応を行わせるための反応槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液などの検体中に存在する物質の分析や検査においては、板状に形成した一方の面にウェルと呼ばれる複数の反応凹部をマトリクス状に設けた反応容器(マイクロプレート)が用いられている。そして、マイクロプレートの各ウェルに検体および試薬を微量分注して反応槽内で反応させ、この反応によって生ずる凝集物を測定することで、検体中に存在する物質を分析する。
【0003】
従来では、上記分析を自動化した自動分析装置が提案されている。この自動分析装置では、各種の分析項目に必要な反応時間が経過するまで多数のマイクロプレートを反応ライン(反応槽)に収納しておき、反応が終了したマイクロプレートを順次搬出し、各ウェルにおける凝集パターンをCCDカメラなどの検出器によって側光して検出することで検体中に存在する物質を分析している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−273216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の自動分析装置に用いられる反応槽は、マイクロプレートを収容する容器内に蒸発皿を設けた構成が一般的であり、蒸発皿に注いだ水を容器内で自然蒸発させることで容器内を加湿してウェル内の検体の凝集反応を行わせるようにしている。
【0006】
しかし、従来の反応槽は、容器内に結露が発生してカビや細菌繁殖のおそれがある。一般的な反応槽では、結露を排水する排水手段を設けるが、検体の反応を促進するために容器の密閉度を上げた場合には当該排水手段での結露水の排水が十分でなくなる。さらに、容器内に発生した結露がマイクロプレートに滴下すると検体の側光に影響をおよぼすことになる。また、従来の反応槽では、マイクロプレートが容器内温度よりも冷えている場合、容器の外部から容器内にマイクロプレートを搬入したときに、マイクロプレートの表面に結露が発生することがある。このため、マイクロプレートのウェブに分注した検体に影響がでて側光データが不良となるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、収容容器内での結露の発生を防ぎ、また反応容器への結露の発生を防ぐことができる反応槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る反応槽は、収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で反応容器に分注した検体の分析に係る反応を行わせる反応槽であって、前記収容容器に搬入する以前に予め前記反応容器を加温する加温手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る反応槽は、収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で反応容器に分注した検体の分析に係る反応を行わせる反応槽であって、前記収容容器の上部を加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る反応槽は、収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で反応容器に分注した検体の分析に係る反応を行わせる反応槽であって、前記収容容器の内外に通じる開口と、当該開口を開閉する扉体とを前記収容容器に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る反応槽は、収容容器に搬入する以前に予め反応容器を加温する加温手段を設けたことによって、加温した反応容器を収容容器の内部に搬入する。この結果、収容容器内と反応容器との温度差が少なくなるので、反応容器の表面に結露が発生する事態を防ぐことができる。
【0012】
また、収容容器の上部を加熱する加熱手段を設けたことによって、収容容器の上部の内壁面に付着する結露水を蒸発させる。この結果、収容容器内に搬入した反応容器に結露水が滴下する事態を防ぐことができる。
【0013】
また、収容容器の内外に通じる開口と、当該開口を開閉する扉体とを前記収容容器に設けたことによって、反応槽を使用していないとき、もしくは収容容器内が高湿度となったときに、扉体を開けて開口を開放させることで収容容器内の結露を防止する。この結果、収容容器内でのカビの発生、細菌の繁殖を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る反応槽の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明に係る反応槽の実施の形態を示す概略図である。図1に示す反応槽は、血液などの検体中に存在する物質の分析や検査を行う自動分析装置(図示せず)に適用するものである。自動分析装置では、板状に形成した一方の面にウェル(図示せず)と呼ばれる複数の反応凹部をマトリクス状に設けた反応容器100(以下マイクロプレートという)が用いられている。そして、自動分析装置は、マイクロプレート100の各ウェルに検体および試薬を微量分注して、本発明に係る反応槽で反応させた後、各ウェルにおける凝集パターンをCCDカメラなどの検出器によって側光して検出することで検体中に存在する物質を分析する。本発明に係る反応槽は、各ウェルに検体および試薬を微量分注したマイクロプレート100を収容して所望の雰囲気中で検体および試薬を反応させる。
【0016】
図1に示すように反応槽は、マイクロプレート100を所望の雰囲気中に収容するための収容容器1を有している。収容容器1は、その内外を隔てる隔壁11を有した箱体を構成してなり、その内部にマイクロプレート100を搬入する搬入口12と、その外部にマイクロプレート100を搬出する搬出口13とを有している。これら、収容容器1の内外に通じる開口としての搬入口12および搬出口13は、それぞれ扉体14によって開閉可能に設けてある。また、扉体14は、マイクロプレート100の搬入・搬出などに応じて自動的に開閉するように構成してある。なお、図には明示しないが収容容器1の内部には、搬入口12から搬入したマイクロプレート100を保持し、当該マイクロプレート100を搬出口13の位置まで搬送する搬送機構が設けてある。また、図には明示しないが収容容器1に対し、搬入口12からのマイクロプレート100の搬入、および搬出口13からのマイクロプレート100の搬出は、上記自動分析装置に設けた搬入搬出機構によって行われる。
【0017】
上記収容容器1には、加湿手段2、加熱手段3、加温手段4および湿度検出手段5が設けてある。
【0018】
加湿手段2は、収容容器1の内部を加湿するためのものであって、本実施の形態では上部が開放した皿状の器体をなし、収容容器1の内部の底に配置してある。この加湿手段2は、通常、器体に水を貯留してこの水を自然蒸発させることによって収容容器1の内部を加湿する。
【0019】
加熱手段3は、収容容器1の上部を加熱するためのものであって、本実施の形態では収容容器1の外部の上面に配置したヒータからなる。なお、加熱手段3による収容容器1の加熱によって上記加湿手段2の器体に貯留した水を積極的に蒸発させてもよい。
【0020】
加温手段4は、収容容器1の外部において、当該収容容器1に搬入する以前のマイクロプレート100を加温するためのものであって、本実施の形態では搬入口12の近傍であって上記搬入搬出手段(図示せず)の搬入側に配置したヒータからなる。加温手段4によってマイクロプレート100を加温する温度は、人体の血液などを検体とした場合に当該検体に影響を及ぼさない温度であって、人体の体温とほぼ同じ35〜37℃程度が好ましい。
【0021】
湿度検出手段5は、いわゆる湿度センサであって、収容容器1の内部の湿度を検出するものである。この湿度検出手段5は、例えば湿度の変化によって抵抗値が変化してこの変化を電気信号の変化として取得する抵抗可変型の湿度センサや、湿度の変化とともにセンサ端子間の静電容量が変化する容量変化型の湿度センサなどがある。
【0022】
以下、上述した反応槽の動作について説明する。まず、分析を行っていないときには、加熱手段3の稼働をOFFし、扉体14を開けて開口としての搬入口12および搬出口13を開放する。すなわち、収容容器1の内部が加湿されない状態になり、収容容器1の内部に結露が発生しない。
【0023】
そして、分析の開始に伴い、扉体14を閉じて開口としての搬入口12および搬出口13を閉塞する。すなわち、加湿手段2によって収容容器1の内部が加湿されることになる。なお、収容容器1の内部の湿度は、湿度検出手段5によって検出される。そして、検出した湿度が所定湿度(例えば相対湿度80%)を上回って収容容器1の内部が高湿度となったときには、扉体14を開けて搬入口12や搬出口13を開放する。すなわち、収容容器1の内部が過剰に加湿されない状態になり、収容容器1の内部に結露が発生しない。
【0024】
そして、収容容器1の内部が所望の湿度(例えば相対湿度80%)になったとき、当該収容容器1の内部にマイクロプレート100を搬入する。このとき、加温手段4によって収容容器1に搬入する以前のマイクロプレート100を加温する。
【0025】
また、分析の開始に伴い、もしくは収容容器1の内部が上記高湿度となったとき、加熱手段3の稼働をONする。すなわち、加熱手段3によって収容容器1の上部が加熱されて、当該収容容器1の上部の内壁面に付着する結露水を蒸発させる。
【0026】
したがって、上述した反応槽では、収容容器1に搬入する以前に予めマイクロプレート100を加温する加温手段4を設けたことによって、加温したマイクロプレート100を収容容器1の内部に搬入する。この結果、収容容器1の内部と、搬入するマイクロプレート100との温度差が少なくなるので、マイクロプレート100の表面に結露が発生する事態を防ぐことが可能になる。
【0027】
また、収容容器1の上部を加熱する加熱手段3を設けたことによって、収容容器1の上部の内壁面に付着する結露水を蒸発させる。この結果、収容容器1の内部に搬入したマイクロプレート100に結露水が滴下する事態を防ぐことが可能になる。
【0028】
また、収容容器1の内外に通じる開口としての搬入口12および搬出口13と、開口を開閉する扉体14とを設けたことによって、反応槽を使用していないとき、もしくは収容容器1の内部が高湿度となったときに、扉体14を開けて開口を開放させて、収容容器1の内部に結露が生じなくする。この結果、収容容器1の内部でのカビの発生、細菌の繁殖を防ぐことが可能になる。なお、開口は、搬入口12および搬出口13に限らず、別途収容容器1内外に通じるように扉体によって開閉可能に設けてもよい。
【0029】
ところで、上述した反応槽において、温湿度バリデーションを行えるように構成してもよい。例えば、図1に示すように収容容器1の隔壁11に内外に通じる孔15を設ける。この孔15は、収容容器1を反応槽として用いる通常状態では栓16で塞いでおく。そして、バリデーション時には、オペレータが栓16を外して外部温湿度計(図示せず)を孔15から収容容器1の内部に挿入し、バリデーションデータを得る。この結果、温湿度バリデーションが行え、湿度検出手段3の校正を行うことが可能になる。なお、栓16で塞いだ孔15は、湿度検出手段3に外部温湿度計(図示せず)を近づけることができる位置に設けておくことが好ましい。また、栓16で塞いだ孔15を複数箇所に設けて複数箇所のバリデーションを行えるようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る反応槽の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1 収容容器
11 隔壁
12 搬入口(開口)
13 搬出口(開口)
14 扉体
15 孔
16 栓
2 加湿手段
3 加熱手段
4 加温手段
5 湿度検出手段
100 マイクロプレート(反応容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で反応容器に分注した検体の分析に係る反応を行わせる反応槽であって、
前記収容容器に搬入する以前に予め前記反応容器を加温する加温手段を設けたことを特徴とする反応槽。
【請求項2】
収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で反応容器に分注した検体の分析に係る反応を行わせる反応槽であって、
前記収容容器の上部を加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする反応槽。
【請求項3】
収容容器内に湿度を付与した雰囲気中で反応容器に分注した検体の分析に係る反応を行わせる反応槽であって、
前記収容容器の内外に通じる開口と、当該開口を開閉する扉体とを前記収容容器に設けたことを特徴とする反応槽。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−232375(P2007−232375A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50573(P2006−50573)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】