説明

収容カバー、収容カバー付き電線、及び、端子収容方法

【課題】端子に新たな構成を追加することなく、収容した端子のズレを抑制する。
【解決手段】第1カバー11と第2カバー12を合わせて箱状に形成される本体部10を有し、電線3に圧着されて膨らんだ膨らみ部42cを有する端子4の電線圧着部42を前記本体部10内に収容する収容カバー2において、前記本体部10が収容する前記電線圧着部42の膨らみ部42cと対向する前記第1カバー11又は前記第2カバー12の内面から前記電線圧着部42に向かって突出して形成され、前記端子4が前記電線3の長手方向へ引っ張られたときに前記電線圧着部42の膨らみ部42cと当接して前記端子4の移動を規制する移動規制手段16を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のエンジンのスタータモータなどに供給される電力が流れる相手側の端子に接続する端子を収容する収容カバー及び収容カバー付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンのスタータモータなどには、他の機器よりも大きな電流が供給される。このため、前述したスタータモータなど大電流が流れる電子機器に設けられた端子と該端子に接続する端子との接続箇所は、絶縁性の収容カバーなどで覆われることが多い。
【0003】
上述した収容カバーとしては、特許文献1等のものが知られている。例えば、図9,10に示す収容カバー100は、電線3の端末にかしめ片42bを圧着した端子4を収容する箱状のカバー本体110と、該カバー本体110の開口111を塞ぐ蓋体120と、カバー本体110と蓋体120との間に介在してカバー本体110と蓋体120とを連結するヒンジ130と、を有している。
【0004】
収容カバー100は、ヒンジ130を中心として蓋体120を回動することで、カバー本体110の開口111を塞いだ閉状態(図9参照)から開口111を開放する開状態(図10参照)とにわたって変位自在となっている。そして、収容カバー100は、2つの第1ロック部140と、2つの第2ロック部150と、を有しており、前記塞いだ状態のときにカバー本体110と蓋体120をロック(係止)する。
【0005】
2つの第1ロック部140は、ヒンジ130が設けられた周壁101と相対する周壁102に並べて形成されている。そして、第1ロック部140の各々は、カバー本体110と蓋体120の一方側に設けられたロック突起141と、他方側に設けられたU字状のロックアーム142と、を有している。また、2つの第2ロック部150は、ヒンジ130が設けられた周壁101と該周壁101に相対する周壁102の各々に設けられている。そして、2つの第2ロック部150は、収容カバー100の中心軸と垂直に交わる直線上で対称的に配置されている。第2ロック部150の各々も、第1ロック部140と同様に、ロック突起151とロックアーム152とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−71659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した収容カバー100においては、図11に示すように、カバー本体110に端子4を嵌合した場合に、電線3の長手方向に沿ったズレ方向Dに対する端子4のズレを抑制することができないという問題があった。そのため、カバー本体110に端子4を嵌合した後から蓋体120でカバー本体110の開口111を塞ぐまでの間に端子4がずれてしまうため、端子4を抑えながら開口111を蓋体120で塞がなければならず、収容カバー100の組み付け作業が困難であるという問題があった。そこで、端子4のズレを抑制するために、端子4を特殊な形状としたり、端子4に突起等を形成して対処することが考えられるが、端子4の形状を変更するのは困難であった。
【0008】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、端子に新たな構成を追加することなく、収容した端子のズレを抑制することができる収容カバー、収容カバー付き電線、及び、端子の収容方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の収容カバーは、第1カバーと第2カバーを合わせて箱状に形成される本体部を有し、電線に圧着されて膨らんだ膨らみ部を有する端子の電線圧着部を前記本体部内に収容する収容カバーにおいて、前記本体部が収容する前記電線圧着部の膨らみ部と対向する前記第1カバー又は前記第2カバーの内面から前記電線圧着部に向かって突出して形成され、前記端子が前記電線の長手方向へ引っ張られたときに前記電線圧着部の膨らみ部と当接して前記端子の移動を規制する移動規制手段を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の収容カバーにおいて、前記移動規制手段は、前記電線圧着部が前記本体部内に収容されたときに、前記膨らみ部との間に所望の隙間が介在するように前記第1カバー又は前記第2カバーに形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の収容カバーにおいて、前記第1カバーは前記電線圧着部が挿入される開口を有する箱状に形成されており、前記第2カバーは前記第1カバーの開口を塞ぐ蓋状に形成されており、前記移動規制手段は、前記第1カバーの内面に前記電線圧着部に向かって突出して形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項4記載の収容カバー付き電線は、請求項1〜3の何れか1項に記載の収容カバー2と、前記収容カバー2に収容された前記端子を有する電線と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項5記載の端子収容方法は、請求項3に記載の収容カバーに前記電線の端子を収容する端子収容方法であって、前記膨らみ部を有する前記電線圧着部の側面から前記第1カバーの開口に前記端子を挿入して、前記移動規制手段と前記膨らみ部を並設させて前記第1カバー内に前記電線圧着部を収容する過程と、前記電線圧着部を収容している前記第1カバーの開口を前記第2カバーで塞ぐ過程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1に記載した本発明によれば、本体部に収容する電線圧着部が電線の長手方向に引っ張られたときに、移動規制手段が電線圧着部の膨らみ部と当接して端子の移動を規制するようにしたことから、電線圧着部を本体部に収容するだけで、電線の長手方向に対する端子のズレを抑制することができる。また、端子の電線圧着部に生じる膨らみ部を利用し、該膨らみ部に対応した移動規制手段を形成するだけでよいため、ズレを抑制するためにお互いの構造を複雑化することもない。さらに、移動規制手段をリブとして本体部に形成することで、本体部の強度を向上させることができる。従って、端子に新たな構成を追加することなく、本体部に収容した端子のズレを抑制することができるという効果を奏する。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、電線圧着部が本体部内に収容されたときに、移動規制手段と膨らみ部との間に所望の隙間を介在させるようにしたことから、膨らみ部の大きさ等に誤差が生じていても、端子と本体部を確実に収容することができる。また、所望の隙間を介在させることで、端子を電気的に接続する相手側部材と端子との間に生じる誤差を吸収することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、電線圧着部が挿入される開口を有する第1カバーの内面に移動規制手段を形成するようにしたことから、第1カバー内に電線圧着部を組み付けて第1カバーの開口を第2カバーで塞ぐ前の組み付け途中でも、端子のズレを抑制することができるため、より一層の組み付け作業の簡単化を図ることができる。
【0017】
以上説明したように請求項4に記載した本発明によれば、電線の端子を収容する収容カバーは、本体部に収容する電線圧着部が電線の長手方向に引っ張られたときに、移動規制手段が電線圧着部の膨らみ部と当接して端子の移動を規制することから、電線圧着部を本体部に収容するだけで、電線の長手方向に対する端子のズレを抑制することができる。また、端子の電線圧着部に生じる膨らみ部を利用し、該膨らみ部に対応した移動規制手段を形成するだけでよいため、ズレを抑制するためにお互いの構造を複雑化することもない。さらに、移動規制手段をリブとして本体部に形成することで、本体部の強度を向上させることができる。従って、端子に新たな構成を追加することなく、本体部に収容した端子のズレを抑制することができるという効果を奏する。
【0018】
以上説明したように請求項5に記載した本発明によれば、膨らみ部を有する電線圧着部の側面から第1カバーの開口に端子を挿入し、当該膨らみ部と第1カバー内の電線圧着部とを並設するように収容し、該第1カバーの開口を第2カバーで塞ぐようにしたことから、第1カバー内に電線圧着部を組み付けて第1カバーの開口を第2カバーで塞ぐ前の組み付け途中でも、端子のズレを抑制することができるため、組み付け作業の簡単化を図ることができる。また、端子の電線圧着部に生じる膨らみ部を利用し、該膨らみ部に対応した移動規制手段を形成するだけでよいため、ズレを抑制するためにお互いの構造を複雑化することもない。さらに、移動規制手段をリブとして本体部に形成することで、本体部の強度を向上させることができる。従って、端子に新たな構成を追加することなく、本体部に収容した端子のズレを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る収容カバー付き電線の開状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す収容カバー付き電線の第1収容カバーが閉状態で第2収容カバーが開状態を示す斜視図である。
【図3】図1中の第1収容カバーの開状態で第2収容カバーが閉状態の上面を示す上面図である。
【図4】図3中の直線A−Aを通る矢印方向の断面を示す断面図である。
【図5】端子が未装着の収容カバーの開状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す収容カバー付き電線の開状態を示す斜視図である。
【図7】図6の収容カバー付き電線の閉状態を示す上面図である。
【図8】図7中の直線B−Bを通る矢印方向の断面を示す断面図である。
【図9】従来の収容カバーの閉状態を示す斜視図である。
【図10】従来の収容カバーの開状態を示す斜視図である。
【図11】従来の収容カバーにおける端子のズレを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る収容カバーを有する収容カバー付き電線の実施形態の一例を、図1〜図8の図面を参照して説明する。
【0021】
図1,2において、収容カバー付き電線1は、収容カバー2と、端部に接続された端子4が収容カバー2に収容される電線3と、を有して構成している。収容カバー付き電線1は、収容カバー2によって電線3の端子4が他部品と接触するのを防止すると共に、水・塵等から保護されている。
【0022】
まず、電線3は、導電性の芯線と、該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部と、を有している。電線3は、スタータモータなどの大電流が流れる電子機器に電力を供給する。なお、本実施形態では、電線3が所謂被覆電線である場合について説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、複数の電線を束ねたワイヤハーネスとすることもできる。
【0023】
端子4は、図1,2に示すように、電気接続部41と、該電気接続部41に連なって電線3の端部に圧着される電線圧着部42と、を有している。端子4は、電気接続部41と電線圧着部42が導電性の金属部材によって一体に形成されている。そして、電気接続部41は、電線圧着部42から延在された延在部41aと、該延在部41aから斜め方向に向かって立設した端子部41bと、を有している。端子部41bは、相手側のねじ軸(図示せず)を内側に通す孔41cが形成されており、前記ねじ軸が通されて例えば端子台や相手側端子に重ねられて電気的に接続される。
【0024】
電線圧着部42は、図1に示す電気接続部41に連続した底面42aと、該底面42aの電線3の長手方向に沿った両側の縁部の各々から立設した一対のかしめ片42b(図8参照)と、を有している。一対のかしめ片42bは、皮むき処理が施された電線3の芯線を互いの間に位置付けるとともに、その先端部が互いに内向きに曲げられることにより該芯線をかしめて、該芯線と電気的に接続する。
【0025】
電線圧着部42は、図3に示すように、一対のかしめ片42bを圧着した際(かしめた際)、その端部に形成されたテーパー状の膨らみである膨らみ部42cを有している。そして、膨らみ部42cは、公知であるベルマウスであり、電線3が一対のかしめ片42bで急激につぶされた際の傷の発生等を起こりにくくしている。
【0026】
次に、収容カバー2は、端子4の電線圧着部42及び電線3の一部を収容する第1収容カバー2Aと、端子4の電気接続部41を収容する第2収容カバー2Bと、を有して構成している。収容カバー2は、第1収容カバー2Aと第2収容カバー2Bとが非導電性の合成樹脂で一体に形成されている。なお、本実施形態では、収容カバー2を第1収容カバー2Aと第2収容カバー2Bとに分けた場合について説明するが、上述した図9,10に示すように1つの収容カバーとしてもよい。
【0027】
次に、第1収容カバー2Aは、本発明の収容カバーに相当している。第1収容カバー2Aは、電線3に圧着されて膨らんだ膨らみ部42cを有する端子4の電線圧着部42を本体部10内に収容する。
【0028】
第1収容カバー2Aは、第1カバー11と第2カバー12を合わせて箱状に形成される本体部10と、ヒンジ13と、一対の係止突起14と、一対の係止部15と、移動規制手段16と、を有し、それらは非導電性の合成樹脂等によって一体に形成されている。
【0029】
第1カバー11は、電線3の端末に接続した端子4の電線圧着部42が挿入される開口11aを有する箱状に形成されている。第1カバー11は、開口11aが略長方形となる形状に形成されている。そして、第1カバー11は、図1乃至図4に示すように、底板11bと、電線3の長手方向に沿った底板11bの側縁部から立設する一対の側壁11c,11dと、を有している。
【0030】
底板11bは、図3に示すように、端子4の電線圧着部42が位置付けられる第1底部11b1と、第1底部11b1に連なった段差部11b2と、段差部11b2に連なって電線圧着部42及び電線3の端部が位置付けられる第2底部11b3と、第2底部11b3の端部から電線3を本体部10から外部に導出する導出部11b4と、を有している。なお、本実施形態の底板11bが第1底部11b1と第2底部11b3を有する場合について説明するが、段差部11b2を設けずに平面状に形成することもできる。
【0031】
第2カバー12は、第1カバー11の開口11aを塞ぐ蓋状に形成されている。第2カバー12は、第1カバー11の底板11bと相対する天井12aと、該天井12aの側縁部から前記第1カバー11の側壁11c,11dに向かって立設する周壁12b,12cと、を有しており、それらは一体に形成されている。
【0032】
ヒンジ13は、第1カバー11の側壁11cと第2カバー12の周壁12bとに跨って形成されている。ヒンジ13は、第1カバー11の開口11aに対して第2カバー12を開閉自在に第1カバー11に連結している。そして、本実施形態のヒンジ13は、第1カバー11の開口11を開放した開状態から、第1カバー11の開口11aを第2カバー12で塞いだ閉状態にわたって第1カバー11又は第2カバー12の回動を、ヒンジ13を中心に可能としている。
【0033】
一対の係止突起14は、複数のヒンジ13が設けられた第1カバー11の側壁11cと相対する側壁11dの開口11a寄りに形成されている。係止突起14は、側壁11dの立設方向の断面が略三角形となる突起状に、外側に向かって突出している。
【0034】
一対の係止部15は、一対の係止突起14に対応して、第2カバー12の周壁12bの外側の第1カバー11寄りに形成されている。係止部15は、係止突起14と係止されるU字状のロックアームであり、基部と、該基部の両端から第1カバー11の側壁11dの外側に沿って立設する一対のアームと、を有している。そして、係止部15は、前記一対のアームの間に係止突起14が位置付けられて、係止突起14と前記基部とが係止されることで、係止突起14と係止部15は係止される。
【0035】
移動規制手段16は、図4,5に示すように、本体部10が収容する電線圧着部42の膨らみ部42cと対向する第1カバー11の底板11bの内面から電線圧着部42に向かって突出したリブとして形成されている。このように移動規制手段16をリブとすることで、第1カバー11の強度を向上させることができる。そして、移動規制手段16は、端子4が電線3の長手方向(図4中のズレ方向D)へ引っ張られたときに、電線圧着部42の膨らみ部42cと当接して端子4のズレ方向Dへの移動を規制する。
【0036】
移動規制手段16は、図4に示すように、底板11bの内面から電線圧着部42の表面近傍まで突出して形成されている。即ち、移動規制手段16は、端子4がズレ方向Dにずれた場合に、電線圧着部42の膨らみ部42cと確実に引っかかる形状であればよく、例えば、1又は複数の突起等の種々異なる実施形態とすることができる。そして、移動規制手段16は、電線圧着部42の膨らみ部42cの大きさや形状に対応して設計する。
【0037】
また、本実施形態では、端子4がズレ方向Dにのみにずれる本体部10であるために、移動規制手段16を電線圧着部42の電気接続部41寄りにのみ形成しているが、電線圧着部42に一対の膨らみ部42cが存在し且つズレ方向Dとは反対方向にも端子4がずれる可能性がある場合は、一対の膨らみ部42cの各々に対応した一対の移動規制手段16を形成する実施形態とすることもできる。
【0038】
さらに、移動規制手段16は、図4に示すように、電線圧着部42が第1カバー11に収容(嵌合)されたときに、その電線圧着部42の膨らみ部42cとの間に所望の隙間Sが介在されるように、第1カバー11の底板11bに形成している。これにより、膨らみ部42cの大きさ等に誤差が生じていても、端子4を第1カバー11に確実に収容することができる。また、所望の隙間Sを介在させることで、端子4を電気的に接続する相手側部材と端子4との間に生じる誤差を吸収することができる。なお、本実施形態では、電線圧着部42の膨らみ部42cと移動規制手段16との間に隙間Sを介在させる場合について説明するが、隙間Sを介在させずに、膨らみ部42cと移動規制手段16を当接させる実施形態とすることもできる。
【0039】
第2カバー12はさらに、第1カバー11の開口11aを塞いだ閉状態のときに、第2カバー2Bに収容された端子4の電気接続部41当接する当接部17を有している。当接部17は、第2カバー12の天井12aの電気接続部41寄りの上面縁部から電気接続部41に沿って立設する壁状に形成されている。当接部17は、電気接続部41のズレ方向Dへの移動を規制している。よって、電線圧着部42の膨らみ部42cが小さい場合や、端子4に過度なズレ方向Dへの力が加わっても、端子4のズレを確実に抑制することができる。
【0040】
以上説明した第1収容カバー2Aによれば、本体部10に収容する端子4の電線圧着部42が電線3の長手方向に引っ張られたときに、移動規制手段16が電線圧着部42の膨らみ部42cと当接して端子4の移動を規制するようにしたことから、電線圧着部42を本体部に収容するだけで、電線3の長手方向に対する端子4のズレを抑制することができる。また、端子4の電線圧着部42に生じる膨らみ部42cを利用し、該膨らみ部42cに対応した移動規制手段16を形成するだけでよいため、ズレを抑制するためにお互いの構造を複雑化することもない。さらに、移動規制手段16をリブとして本体部10に形成したことで、本体部10の強度を向上させることができる。従って、端子4に新たな構成を追加することなく、本体部10に収容した端子4のズレを抑制することができるという効果を奏する。
【0041】
また、端子4の電線圧着部42が挿入される開口11aを有する第1カバー11の内面に移動規制手段16を形成するようにしたことから、第1カバー11内に電線圧着部42を組み付けて第1カバー11の開口11aを第2カバー12で塞ぐ前の組み付け途中でも、端子4のズレを抑制することができるため、本体部10におけるより一層の組み付け作業の簡単化を図ることができる。
【0042】
次に、第2収容カバー2Bは、図1乃至図3に示すように、本体部21と、蓋体22と、ヒンジ23と、一対の係止突起24と、一対の係止部25と、を有し、それらは非導電性の合成樹脂等によって一体に形成されている。
【0043】
本体部21は、電線3の端部に接続された端子4が本体部21内に挿入される開口21aを有する箱状に形成されている。本体部21は、開口21aが約七角形となる形状に形成されている。本体部21は、底板21bと、該底板21bの周縁から立設し且つその先端部にヒンジ23が形成された第1側壁21cと、該第1側壁21cが延在する方向Xと交わる方向Yに沿って相対して設けられた一対の第2側壁21d,第3側壁21eと、第1側壁の両端から第2側壁21d,第3側壁21eの各々に連なった一対の第4側壁21fと、を有している。
【0044】
蓋体22は、本体部21の開口21aを塞ぐような形状で形成されている。蓋体22は、本体部21の開口21aを塞いだ状態で本体部21の底板21bと相対する天井22aと、該天井22aの縁部から本体部21に向かって立設する周壁22bと、を有している。そして、周壁22bは、第1周壁22cと、第2周壁22dと、第3周壁22eと、一対の第4周壁22fと、を有しており、一体に形成されている。
【0045】
第1周壁22cは、本体部21の第1側壁21cに向かって天井22aから立設しており、ヒンジ23によって第1側壁21cと連なっている。第2周壁22d及び第3周壁22eは、相対する本体部21の第2側壁21dに向かって天井22aから立設している。一対の第4周壁22fは、相対する本体部21の一対の第4側壁21fの各々に向かって天井22aから立設している。
【0046】
ヒンジ23は、本体部21の第1側壁21cと蓋部22の第1周壁22cとに跨って形成されている。即ち、ヒンジ23は、本体部21の開口21aに対して蓋体22を開閉自在に本体部21に連結している。そして、本実施形態のヒンジ23は、本体部21の開口21aを開放した開状態から、本体部21の開口21aを蓋体22で塞いだ閉状態にわたって本体部21又は蓋体22の回動を、ヒンジ23を中心に可能としている。
【0047】
一対の係止突起24は、本体部21の相対する第2側壁21d及び第3側壁21eの各々の外側の開口21a寄りに形成されている。そして、係止突起24は、図1等に示すように、第2側壁21d又は第3側壁21eの立設方向の断面が略三角形となる突起状に、第2側壁21d又は第3側壁21eから外側に向かって突出している。
【0048】
一対の係止部25は、一対の係止突起24に対応した非対称となるように、蓋体22の第2周壁22d及び第3周壁22eの各々の外側の本体部21寄りに形成されている。係止部25は、係止突起24と係止されるU字状のロックアームであり、基部25aと、該基部25aの両端から第2側壁21d又は第3側壁21eの外側に沿って立設する一対のアーム25b,25cと、を有している。そして、一対のアーム25b,25cの間に係止突起24が位置付けられて、係止突起24と基部25aとが係止されることで、係止突起24と係止部25は係止される。
【0049】
次に、上述した構成の収容ケース付き電線1の組み付け例を、図面を参照して以下に説明する。
【0050】
まず、膨らみ部42cを有する端子4の電線圧着部42の側面から、第1収容カバー2Aの第1カバー11の開口11aに電線圧着部4を挿入して、第1カバー11内に電線圧着部42を嵌合させると、図4に示すように、第1カバーの移動規制手段16と電線圧着部42の膨らみ部42cは並設した状態となる。また、電線圧着部42と連なる電気接続部411は、第2収容カバー2Bの本体21内にその開口21aから収容される。
【0051】
続いて、第1収容カバー2Aのヒンジ13を中心に第2カバー12を第1カバー11の開口11aに向けて回動させて、一対の係止部15の各々を一対の係止突起14に近づけて係止させることで、図2に示すように、第2カバー12が第1カバー11の開口11aを塞ぐ。
【0052】
これにより、端子4の電線圧着部42は第1収容カバー2A内に収容されることになる。そして、この状態で図4に示すズレ方向Dへ端子4が引っ張られると、電線圧着部42との膨らみ部42cが第1カバー11内の移動規制手段16に引っかかるため、端子4のズレ方向Dへのズレを確実に抑制することができる。
【0053】
続いて、第2収容カバー2Bのヒンジを中心に蓋体22を本体部21の開口21aに向けて回動させて、複数の係止部25の各々を複数の係止突起24に係止させることで、第2収容カバー2B内に端子4の電気接続部41が収容され、端子4は収容カバー2内に収容されて、電線圧着部42に接続された電線3が第2収容カバー2Bの外部に導出された状態の収容カバー付き電線3が完成する。
【0054】
以上説明した端子4の収容方法によれば、膨らみ部42cを有する電線圧着部42の側面から第1カバー11の開口11aに端子4を挿入し、当該膨らみ部42cと第1カバー11内の電線圧着部42とを並設するように収容し、該第1カバー11の開口11aを第2カバー12で塞ぐようにしたことから、第1カバー11内に電線圧着部42を組み付けて第1カバー11の開口11aを第2カバー12で塞ぐ前の組み付け途中でも、端子4のズレを抑制することができるため、組み付け作業の簡単化を図ることができる。また、端子4の電線圧着部42に生じる膨らみ部を利用し、該膨らみ部42cに対応した移動規制手段16を形成するだけでよいため、ズレを抑制するためにお互いの構造を複雑化することもない。従って、端子に新たな構成を追加することなく、本体部に収容した端子のズレを抑制することができるという効果を奏する。
【0055】
なお、上述した実施形態では、端子4の電気接続部41が曲がっていたために、第1収容カバー2Aと第2収容カバー2Bとを有する収容カバー2に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は上述した従来のストレートの端子4を収容する収容カバー100にも適用することができる。
【0056】
例えば、図6乃至図8に示すように、収容カバー100は、端子4を収容する本体部(第1カバー)110と、このカバー本体110の開口111を塞ぐ蓋体(第2カバー)120‘と、カバー本体110と蓋体120’との間に介在してカバー本体110と蓋体120‘とを連結するヒンジ130と、2つの第1ロック部140と、2つの第2ロック部150と、を有している。なお、上述した蓋体120と蓋体120’の基本構成は同一であり、その他の収容カバー100の基本構成に変更はないため、本発明に係る部分のみを説明する。
【0057】
端子4は、電線3の長手方向に交わる電線圧着部42の両側に、一対の膨らみ部42cが形成されている。そして、端子4は、電線圧着部42の膨らみ部42cがカバー本体110の開口111を向くように、カバー本体110に嵌合されている。このような場合、図6,8に示すように、蓋体120の内面から電線圧着部42に向かって突出するように、上述した移動規制手段16を形成する。
【0058】
本実施形態では、一対の膨らみ部42cの各々に対応させて移動規制手段16を一対形成しており、端子4がずれたときに、膨らみ部42と当接するリブとなっている。また、一対の移動規制手段16は、本体部110の開口111が蓋体120‘で塞がれた場合に、電線圧着部42の膨らみ部42cと接触するように蓋体120’に形成されている。このように一対の移動規制手段16を電線圧着部42の一対の膨らみ部42cの各々に当接させることで、端子4のズレを防止すると共に、端子4のガタ付きを防止することができる。なお、上述した収容カバー2と同様に、一対の移動規制手段16と電線圧着部42の一対の膨らみ部42cとの間に隙間を介在させる実施形態とすることもできる。
【0059】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,100 収容カバー付き電線
2 収容カバー
2A 第1収容カバー(収容カバー)
3 電線
4 端子
10 本体部
11 第1カバー
12 第2カバー
16 移動規制手段
42 電線圧着部
42c 膨らみ部
120‘ 蓋体(第2カバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カバーと第2カバーを合わせて箱状に形成される本体部を有し、電線に圧着されて膨らんだ膨らみ部を有する端子の電線圧着部を前記本体部内に収容する収容カバーにおいて、
前記本体部が収容する前記電線圧着部の膨らみ部と対向する前記第1カバー又は前記第2カバーの内面から前記電線圧着部に向かって突出して形成され、前記端子が前記電線の長手方向へ引っ張られたときに前記電線圧着部の膨らみ部と当接して前記端子の移動を規制する移動規制手段を有することを特徴とする収容カバー。
【請求項2】
前記移動規制手段は、前記電線圧着部が前記本体部内に収容されたときに、前記膨らみ部との間に所望の隙間が介在するように前記第1カバー又は前記第2カバーに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の収容カバー。
【請求項3】
前記第1カバーは前記電線圧着部が挿入される開口を有する箱状に形成されており、
前記第2カバーは前記第1カバーの開口を塞ぐ蓋状に形成されており、
前記移動規制手段は、前記第1カバーの内面に前記電線圧着部に向かって突出して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収容カバー。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の収容カバーと、前記収容カバーに収容された前記端子を有する電線と、を有することを特徴とする収容カバー付き電線。
【請求項5】
請求項3に記載の収容カバーに前記電線の端子を収容する端子収容方法であって、
前記膨らみ部を有する前記電線圧着部の側面から前記第1カバーの開口に前記端子を挿入して、前記移動規制手段と前記膨らみ部を並設させて前記第1カバー内に前記電線圧着部を収容する過程と、
前記電線圧着部を収容している前記第1カバーの開口を前記第2カバーで塞ぐ過程と、
を有することを特徴とする端子収容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−89374(P2012−89374A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235555(P2010−235555)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】