説明

収差補正集束イオンビーム装置

【課題】本発明は収差補正集束イオンビーム装置に関し、色収差拡大時にエミッション電流の変動を抑制することができる収差補正集束イオンビーム装置を提供することを目的としている。
【解決手段】正の加速電圧が印加されているイオン源15と、加速電圧よりも低い電位が印加されている引出電極4と、引き出されたイオンビームの開き角を制御する開き角制御レンズと、色収差や球面収差等を補正するための収差補正装置と、イオンビームを試料上に集束するための対物レンズを備えた収差補正集束イオンビーム装置において、加速電圧の変化に伴いイオン源15と引出電極4間の電圧を一定にするように、又は少なくとも加速電圧を変化させた場合よりもイオン源15と引出電極4間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧の2電圧を同時に変化させ、色収差を拡大させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収差補正集束イオンビーム装置に関し、更に詳しくは色収差を拡大させるようにした収差補正集束イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM)においてその分解能を制限する要素は、近似的には光学系が持つ一次の色収差、三次の球面収差及び回折収差の3つである。その中で、色収差は電子源(エミッタ)から放出され、加速電圧で加速された電子の持つエネルギーが一定ではなく、加速電圧絶対値を中心にある程度の幅を持っていることにより発生する。荷電粒子レンズの作用は荷電粒子のエネルギーが大きくなるほど減少するため、像点位置(焦点距離)に幅が発生することに起因するものである。
【0003】
焦点距離に幅が発生することに起因する色収差の大きさを、可視光での1レンズ光学系を例とし、図4で説明する。図4は色収差の発生原因の説明図である。ここでは、色収差の大きさをωchrと定義してある。このレンズには、さまざまな波長の光が混合した白色平面光がレンズに垂直に入射するとする。
【0004】
可視光での光学レンズの屈折率は波長が短いほど大きくなるため、波長の短い光成分はレンズから短い距離で焦点を結び、波長の長い光成分はレンズから遠い距離で焦点を結ぶ。そのため、焦点位置での光の大きさは点ではなく、有限の大きさを持ってしまう。図4では、この大きさはdcと記載され、色収差の大きさを示す。
【0005】
荷電粒子光学系では、K1に相当するものがエネルギーの高い粒子であり、K2に相当するものがエネルギーの低い粒子に相当する。荷電粒子が持つエネルギー分布の拡がり幅(例えば半値幅)をエネルギー拡がりΔE(Energy Spread)といい、熱電界電子源(TFE)で0.45eV程度、電界電子源(FE)で0.2〜0.3eVを示す。なお、一次の色収差係数Ccと色収差dcの関係は、αを試料への開き角、Vaccを加速電圧絶対値とした時、dc=Cc・α・(ΔE/Vacc)で表される。
【0006】
荷電粒子光学系に用いられる収差補正装置とは、負(−)の色収差係数、球面収差係数を与えることが可能な装置で、その他の光学要素が持つ正(+)の収差係数を打ち消すことが可能なため、分解能を制限しているこれら収差の値を最小にできる。このような収差補正装置を搭載したSEMは2003年に初めて市場に導入された。
【0007】
このような装置においては、色収差補正のために収差補正装置を調整する際に、色収差を拡大して観測する必要がある。色収差を拡大する最も簡単な方法は、加速電圧絶対値
accを現在使用している加速電圧Vacc,0を中心にして大きさΔV(>0)だけ、上下片方向(Vacc→Vacc,0+ΔV、又はVacc,0→Vacc−ΔV)、又は上下両方向
(Vacc→Vacc,0±ΔV)に振ることにより疑似的に大きなエネルギー拡がり
ΔEaqv=ΔV>>ΔEを作り出すことである。通常の装置では、これは加速電圧の上に乗っている電子源(エミッタ)先端(emitter tip)の電位だけをΔV変化させることを意味する。この原理を図5を使用して説明する。
【0008】
図5は色収差拡大の原理を示す図である。(a)に示すように、いま加速電圧絶対値
cc=Vacc,0で全ての光学要素が過渡的に最適設定され、試料上でのビームスポットの大きさが最小である状態(ジャストフォーカス)にあるとする。次に、(b)に示すように加速電圧を除く他の設定を全てそのままにして、加速電圧絶対値だけをVacc=Varc,0+ΔV(ΔV>0)と設定すると、電子の運動エネルギーはΔVだけ大きくなるため、像点位置は試料表面位置よりも遠くになり、試料上のスポット径は大きくなる(ボケが発生する)。
【0009】
又は加速電圧絶対値だけをVacc=Vacc,0−ΔVと設定すると、像点位置は試料表面位置よりも近くになり、同様に試料上のスポット径は大きくなる。この時の疑似的なエネルギー拡がりΔEacq=ΔVを、本来のエネルギー拡がりΔE(Energy Spread)より大きく取れば色収差は拡大されて観察されることが可能になる。即ち、ΔEaqv=ΔVを大きくすればするほど、色収差は拡大されることが可能になる。
【0010】
現在市場に出ている収差補正装置を搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)では、上記方法で色収差を拡大して色収差補正の調整を実行している。一方、収差補正装置搭載の集束イオンビーム装置(FIB)は、2006年時点では市場に出ていない。これはSEMのために開発された電磁場重畳型収差補正装置は、電子よりもはるかに質量の大きなイオンを用いた光学系には簡単に適用できない理由による。しかしながら、現在イオン光学系にも適用可能な全静電型収差補正装置が一部で研究されている。このような装置においても、色収差補正のために収差補正装置を調整する際に、色収差を拡大して観測する必要がある。
【0011】
従来のこの種の装置としては、第1のレンズと第2のレンズを有し、集束イオンビーム装置のイオン照射系の第1のレンズは発散モードで使用し、小イオンビーム電流値領域において最高の分解能を得るようにした時、前記第1のレンズの倍率が設定可能な最低倍率となるように、第1と第2のレンズ間の距離を設定することによって、幅広いイオンビーム電流値領域で最小のビーム径が得られるようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−273601号公報(段落0011〜0021、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既に述べたように、色収差補正のために収差補正装置を調整する際に、色収差を拡大して観測する必要がある。色収差を拡大する最も簡単な方法は、加速電圧Vacc=Vacc,0で全ての光学要素が過渡期に最適設定され、試料上でのビームスポットの大きさが最小である状態(ジャストフォーカス)から、他の設定はそのままにしてて加速電圧(実際には加速電圧上に乗っている電子源(エミッタ)先端の電位)だけを、現在使用している加速電圧Vacc,0を中心にして、大きさΔV(>0)だけ、上下片方向、又は上下両方向に振ることにより疑似的に大きなエネルギー拡がりΔEaqv=ΔV>>ΔEを作り出すことである。
【0013】
しかしながら、他の設定の一つである引出電極電位をそのままにして、加速電圧だけを振るということは、実質的な引出電圧を変化させることを意味する。このことを、図6を例にして示す。図6は走査型電子顕微鏡顕微鏡の電子源周辺の光学要素とその電源の関係を示す図である。(a)は引出電圧電源、及びレンズ電圧電源がグランド上に乗っている場合を、(b)は引出電圧電源、及びレンズ電圧電源が加速電圧電源上に乗っている場合を示している。
【0014】
図6において、1は加速電圧電源、2はレンズ電圧電源、3は引出電圧電源、4は引出電圧電源3と接続された引出電極、5はレンズ電圧電源2と接続されたレンズ電極、6はグランド(GND)と接続されたグランド電極である。10は加速電圧電源1が接続されるヒータ電源、11は該ヒータ電源10で加熱させられ、熱電子を発生するエミッタである。ヒータ電源10とエミッタ11とで電子源12を構成している。ここではエミッタ11が電子銃となり、電子ビームEBが放出される。20はその内部にエミッタ11,引出電極4,レンズ電極5及びグランド電極が内蔵されるる鏡筒である。
【0015】
(a)において、SEMの電子源(エミッタ)11は負(−)の値の加速電圧Vacc(<0)に乗っている。この時、電子ビームEBが得る運動エネルギーは加速電圧絶対値と等しくなる。TFF又はFE電子源では、エミッタ先端に向かう方向に高電場を生成させ、電子をエミッタ11より電界放出させる。
【0016】
このため、引出電極4にはエミッタ11に印加されている加速電圧より高い電位
ext(<Vacc)を与える。いま色収差拡大のため、エミッタ11先端の電位Vacc(<0)だけをΔV(>0)だけ変化させることは、エミッタ11先端の電位と引出電極4の電位の差をΔVだけ変化させることを意味する。
【0017】
電子源12からのエミッション電流大きさはエミッタ11の先端の電場大きさ、即ちエミッタ11先端の電位と引出電極4の電位差(Vext−Vacc)に依存するため、色収差拡大のために加速電圧を振ることはエミッション電流を変化させることを意味する。
【0018】
一部の装置では、図6の(b)に示すように、加速電圧を変化させてもエミッション電流が変化しないように、引出電圧電源3は加速電圧電源1の上に乗っている。この場合、エミッタ先端と引出電極の電位の差は、引出電圧の値と同じになる。このような構成の場合、加速電圧を変えることによりエミッタ11先端の電位だけでなく、引出電極4の電位も同じ方向に同じ量だけ変化する。
【0019】
そのため色収差を拡大させるために、エミッタ11先端の電位VaccだけをΔV(>0)変化させるには、加速電圧変化と同時に、引出電圧を逆の方向に同じ量だけ変化させなければならない。即ち、引出電圧を大きくしなければならない。即ち、図6の(b)の構成でも、図6の(a)と同じように色収差拡大のために加速電圧を振ることはエミッション電流を変化させることを意味する。
【0020】
次に、色収差拡大のためにエミッタ11先端の電位のみ振る時、エミッション電流がどのように変化するかを考える。色収差補正の調整の際には、色収差は経験的にその最大分解能の通常500〜2000倍に拡大されて観察される必要がある。若し、収差補正を実行しない場合の熱電界電子源(TFE)を搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)の分解能が例えば加速電圧1kVで5nmとする。この時、色収差を1000倍拡大(色収差は約5μm)したい時、ΔVの値は光学系に依存するが、大体2.5Vから10Vに相当する。
【0021】
一方、LMIS(Liquid Metal Ion Source)Gaイオン源搭載の現状集束イオンビーム(FIB)装置の最大分解能も、加速電圧30kVで約5nmとなる。この色収差を約1000倍に拡大(色収差は約5μm)するためのΔVの値は、光学系に依存するが、大体30Vから100Vとなる。即ち、色収差を拡大するために実質的な引き出し電圧を、SEMの場合は±2.5Vから±10V、FIBの場合は±30Vから±100V変化させなければならないことを意味する。
【0022】
SEMで使用される図6の(b)で示される構成を持った熱電界電子源(TFE)のエミッション電流Iemission−引出電圧Vext特性を図8の(a)に、集束イオンビーム装置に搭載される図7の構成を持ったLMIS Gaイオン源のエミッション電流Iemission−引出電圧Vext特性を図8の(b)に示す。
【0023】
図7は収束イオンビーム(FIB)の液体金属イオン源(LMIS)周辺の光学要素とその電源を示す図である。図6に示すものと同一のものは、同一の符号を付して示す。この例は、イオン源が液体金属イオン源15に変わっただけである。図8は、電子源とイオン源のエミッション電流Iemission−引出電圧Vext特性を示す図である。図8において、(a)がTFE電子源の場合を、(b)がLMIS Ga−イオン源の場合をそれぞれ示す。何れも横軸が引き出し電圧Vextを、縦軸がエミッション電流Iemissionをそれぞれ示す。
【0024】
なお、図7の構成は、取り扱っている荷電粒子がイオンのため各電源の電圧値正負が全て図6の(b)の場合の逆になっていることに注意を要する。なお、エミッション電流安定性、エミッタ寿命及び到達可能な最大分解能等を考慮して、通常SEMではIemission≒100μA、FIBではIemission≒2μA近傍の値が用いられる。Iemission=100μAとおいたSEMの場合、色収差拡大のため実質的な引出電圧を2.5〜10V振ったとしても、エミッション電流は傾きΔIemission/ΔVext≒0.05μA/Vより、せいぜい0.13〜0.5μA(0.13〜0.5%)しか変化しないため問題は発生しない。
【0025】
しかしながらFIBの場合、色収差拡大のため実質的な引出電圧を30〜100V振ることは、下方に振った場合はエミッションの停止、上方に振る場合はエミッション電流の200〜500%の増大を意味する。これは像輝度の大幅な変化又は像喪失のせいで、収差補正装置調整の際に必要な値の色収差拡大が困難であることを意味する。
【0026】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、色収差拡大時にエミッション電流が遮断されたり、極端に大きな値になることを防ぐことができる収差補正集束イオンビーム装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(1)請求項1記載の発明は、正の加速電圧が印加されているイオン源と、加速電圧よりも低い電位が印加されている引出電極と、引き出されたイオンビームの開き角を制御する開き角制御レンズと、色収差や球面収差等を補正するための収差補正装置と、イオンビームを試料上に集束するための対物レンズを備えた収差補正集束イオンビーム装置において、加速電圧の変化に伴いイオン源と引出電極間の電圧を一定にするように、又は少なくとも加速電圧を変化させた場合よりもイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧の2電圧を同時に変化させ、色収差を拡大させるようにしたことを特徴とする。
【0028】
(2)請求項2記載の発明は、色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択する選択手段を設けたことを特徴とする。
【0029】
(3)請求項3記載の発明は、色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源と引出電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧と引出電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時での引出電圧変化量の調整を可能にしたことを特徴とする。
【0030】
(4)請求項4記載の発明は、正の加速電圧が印加されているイオン源と、加速電圧よりも低い電位が印加されている引出電極と、引き出されたイオンビームの開き角を制御する開き角制御レンズと、色収差や球面収差等を補正するための収差補正装置と、イオンビームを試料上に集束するための対物レンズを備えた収差補正集束イオンビーム装置において、加速電圧の変化に伴いイオン源とサプレッサ電極間の電圧を一定にするように、又は少なくとも加速電圧を変化させた場合よりもイオン源とサプレッサ電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧とサプレッサ電圧の2電圧を同時に変化させ、色収差を拡大させるようにしたことを特徴とする。
【0031】
(5)請求項5記載の発明は、色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源とサプレッサ電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧とサプレッサ電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択する選択手段を設けたことを特徴とする。
【0032】
(6)請求項6記載の発明は、色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源とサプレッサ電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧とサプレッサ電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時でのサプレッサ電圧変化量の調整を可能にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
(1)請求項1記載の発明によれば、色収差拡大時にエミッション電流が遮断されたり、極端に大きな値になることを防ぐことができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択することができる。
【0034】
(3)請求項3記載の発明によれば、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源と引出電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧と引出電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時での引出電圧変化量の調整を可能とすることができる。
【0035】
(4)請求項4記載の発明によれば、色収差拡大時にエミッション電流が遮断されたり、極端に大きな値になることを防ぐことができる。
(5)請求項2記載の発明によれば、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源とサプレッサ電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧とサプレッサ電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択することができる。
【0036】
(6)請求項3記載の発明によれば、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源とサプレッサ電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧とサプレッサ電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時でのサプレッサ電圧変化量の調整を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明は、収差補正装置が搭載されたイオン光学系の色収差補正調整法に関する。このような光学系には集束イオンビーム装置又はイオン・リソグラフィー装置等があり、搭載されるイオン源はガリウム(Ga)で代表されるような液体イオン源(LMIS)、さらに最近研究が進んでいるガス電界イオン源(GFIS)等がある。
【0038】
本発明の本質は、収差補正装置が搭載された集束イオンビーム装置、又はイオン・リソグラフィー装置等のような装置において、色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、対グランド電位に対してイオン源の電位を与える加速電圧だけを、使用する基準加速電圧を中心にして変化させる方法の代わりに、加速電圧の変化だけでなく、イオン源−引出電極間の電圧を一定にするように、又は少なくとも加速電圧だけを変化させた場合よりもイオン源−引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧の2電圧を同時に変化させるという手段を用いることである。この手段を用いることにより、色収差拡大時に、エミッション電流が遮断されたり、極端に大きな値になったりすることを防ぐことができる。
【0039】
この手段により発生する像ボケの原因には、色収差の拡大だけでなく、引出電圧変化によるデフォーカスも含むことになる。しかしながら、実際にはデフォーカス量は小さい。即ち、本発明は荷電粒子光学系において、その引出電圧Vext、若しくはサプレッサ電圧Vsupの変化が荷電粒子のレイパスに与える影響、即ちビーム径変化に与える影響は少ないという理論的及び実験的事実に基づいている。この手段が有効なことは、これを色収差だけの拡大と判断して収差補正装置の色収差補正の調整を実行しても得られる最小ビーム径に殆ど変化が無いことが計算により導かれることにより証明される。
【0040】
いま、加速電圧Vacc=30kV、引出電圧Vext=6kV、ビーム電流Ip=1pAで、イオン源電位(加速電圧)の変化、ΔV=100(V)だけで色収差を拡大し、色収差補正の調整を実行した場合、2.5nmのビーム径が得られる収差補正イオン光学系を考察する。この光学系の色収差補正の調整を、イオン源電位だけでなく、イオン源と引出電極間の電圧を一定にするように、引出電圧も同時に変化させて実行した場合得られるビーム径は、計算では2.62nm程度が予想される。
【0041】
これは、最悪の条件で通常考えられるΔV=30(V)での場合、2.55nm程度が得られると推察される。これらの値の相違は実際上区別できない範囲であり、この手段による色収差補正の調整はなんら問題ないと判断できる。なお、加速電圧を変えた時の劣化値は、率では同程度、サプレッサ電極を使用した場合の劣化値は引出電極制御のみよりもはるかに小さいことを付け加えておく。
【0042】
なお、上記方法で加速電圧を変更して色収差を拡大する方法を以下の2つの名前で呼ぶことにする。
1)ACCステッピング(ACC−stepping):色修正補正の調整実行者の命令により、色収差を拡大するために加速電圧を変更する。変更された電圧は、次の命令が来るまで保持される。
2)ACCウォブリング(ACC−wobbling):色修正補正の調整実行者の命令により、色収差を拡大するために加速電圧を設定された周期、振幅により継続的に変更する。この動作は次の命令が来るまで保持される。
【0043】
以下、本発明の実施の形態を、下記2種類のガンレンズの構成に従い説明する。
1)イオン源から放出されるエミッション電流の制御が引出電極のみで実行される場合。
2)イオン源から放出されるエミッション電流の制御がサプレッサ電極と引出電極の組で実行される場合。
(実施の形態1)
本実施の形態では、イオン源から放出されるエミッション電流の制御が、引出電極のみで実行される場合について説明する。この実施の形態は、請求項1〜請求項3に相当している。
(I)構成
色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、対グランド電位に対してイオン源の電位を与える加速電圧だけを、使用する基準加速電圧を中心にして変化させる方法の代わりに加速電圧の変化だけでなく、イオン源と引出電極間の電圧を一定にするよう、又は少なくとも加速電圧だけを変化させた場合よりもイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧の2電圧を同時に変化させる手段を実現するためには、特別の構成は必要としない。
【0044】
即ち、加速電圧と引出電圧を独自に設定できれば、原則的にはACC−steppingも、ACC−wobblingもソフトウェア的に対応可能となる。しかしながら、stepping又はwobbling電圧電源を持つことによりソフトウェア的対応を減らすことも可能になる。これらの構成例を下記のように分類して、その動作を説明する。
1)ソフトウェア的対応
a)引出電圧電源が加速電圧上に乗っている場合
この機械的構成は、図7に既に示されている。今、イオン源、引出電極のみに限定した場合には、この構成は図1の(a)に示すように簡単になる。図1は設定値変更によるACC−stepping実施のための構成例を示す図である。図6と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、15は液体金属イオン源である。このような構成は、ソフトウェア的負担の少ないACC−steppingに適応していると思われるが、ACC−wobblingにも対応可能である。
b)引出電圧電源がGNDラインに乗っている場合
イオン源、引出電極のみに限定した場合の機械的構成図は図1の(b)に示すようになる。通常のFIBの場合、引出電圧電源3がGNDラインに乗っていると、加速電圧だけを変えると、エミッション電流が変化してしまうため、通常は用いられないが対応は可能である。
2)ハードウェア的対応
a)引出電圧電源が加速電圧上に乗っている場合
この場合の特性は、図2の(a)のようになる。この場合は、ΔVacc電圧電源、
ΔVext電圧電源の2電源が必要になる。この電源を周波数、振幅が設定できるようにするとACC−wobblingに適した構成になる。この場合は、周波数をゼロにすれば、ACC−steppingも可能になる。
【0045】
図2は電圧電源追加によるACC−wobbling実施のための構成例を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、1は加速電圧電源、3は引出電圧電源、7は加速電圧電源1の上に乗り、エミッタ11にΔVacc電圧を与えるΔVacc電圧電源、8は加速電圧電源1と引出電圧電源3の上に乗り、引出電極にその電圧が印加されるΔVext電圧電源である。
b)引出電圧電源がグランドラインに乗っている場合
この場合の構成図は図2の(b)のようになる。この場合も、ΔVacc電圧電源、ΔVext電圧電源の2電源が必要となる。図2の(b)は引出電圧電源3とΔVext電圧電源8がグランドからの電位として与えられている。図2の(a)と同一のものは、同一の符号を付して示す。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
(II)動作
ここでは、本実施の形態の動作を構成毎に分類して説明する。
1)ソフトウェア的対応
a)引出電圧電源が加速電圧上に乗っている場合
最初にACC−steppingについての発明の動作を図1の(a)ではなく、レンズ電極も考慮してある機械的構成図である図7によって説明する。いまACCステッピング電圧をΔVacc、このとき同時に変化させる引出電圧の値をΔVextと定義する。いま、オペレータにより電圧ΔVacc(>0)のACC−stepping指令が出たとする。
【0046】
この時、ソフトウェア的方法により、各電圧Vacc、Vext、VCL(レンズ電圧)が下記のように自動的に変更されれば、これは従来の方法で、イオン源電位のみを変化させることになる。
【0047】
acc→Vacc+ΔVacc (1)
ext→Vext−ΔVacc (2)
CL→VCL−ΔVacc (3)
ここでの発明は、対グランド電位に対してイオン源の電位を与える加速電圧だけを、使用する基準加速電圧を中心にして変化させる方法の代わりに、加速電圧の変化だけでなくイオン源と引出電極間の電圧を一定にするよう、又は少なくとも加速電圧だけを変化させた場合よりもイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧の2電圧を同時に変化させる手段を実現することである。
【0048】
この時、ΔVextの値を、0≦ΔVext≦ΔVaccと定義しておき、オペレータにより電圧ΔVacc(>0)のACCステッピング指令が出たとき、各電圧Vacc、Vext、VCLが下記のように自動的に変更されれば、本発明の手段が実現される。
【0049】
acc→Vacc+ΔVacc (4)
ext→Vext−ΔVacc (5)
CL→VCL−ΔVCL (6)
いま、ΔVext=0の時は、ACC−stepping時も、イオン源と引出電極間の電圧変化は無く、ΔVext=ΔVaccの時は従来のACC−stepping法になる。なお、この例はACCステッピングの方法を示すが、ソフトウェア的にΔVaccの値を、ある周期、振幅をもって変化させれば、ACC−wobblingも可能である。この場合も、0≦ΔVext≦ΔVaccの条件は守る必要がある。以下の説明では、簡単のためレンズ電圧の設定について説明を省く。
b)引出電圧電源がグランドラインに乗っている場合
ここではACC−steppingについての発明の動作を、図1の(b)によって説明する。今、オペレータにより電圧ΔVacc(>0)のACC−steppingの指令が出たとする。この時、ソフトウェア的方法により、各電圧Vacc、Vext、VCL(レンズ電圧)が下記のように自動的に変更されれば、これは従来の方法でイオン源電位のみを変化させることになる。
【0050】
acc→Vacc+ΔVacc (7)
ext=Vext(変化なし) (8)
この時、各電圧Vacc、Vext(0≦ΔVext≦ΔVacc)を、下記のように自動的に変化させれば、本発明の手段が実現される。
【0051】
acc→Vacc+ΔVacc
ext→Vext+ΔVext
いま、ΔVext=0の時は、ACC−stepping時も、イオン源と引出電極間の電圧変化は無く、ΔVext=ΔVaccの時は従来のACC−stepping法になる。なお、この例はACCステッピングの方法を示すが、ソフトウェア的にΔVaccの値を、ある周期、振幅をもって変化させれば、ACC−wobblingも可能である。この場合も、0≦ΔVext≦ΔVaccの条件は守られる必要がある。
2)ハードウェア的対応
a)引出電圧電源が加速電圧上に乗っている場合
最初にACC−wobblingについての発明の動作を、図2の(a)によって説明する。通常の状態では、ΔVacc、ΔVext両電源の出力はゼロとする。いまACC−wobbling電圧振幅をΔVacc,0、この時同時に変化させる引出電圧振幅の値を
ΔVext,0と定義する。
【0052】
今、オペレータにより振幅ΔVacc,0、周期fのACC−wobbling指令が出たとする。このときwobbling波形は矩形波、正弦波、又は階段波等、どのような場合でも構わない。ここでは簡単のため正弦波で説明する。この時、ΔVacc、ΔVext両電源の出力が以下のように変化すれば、これは従来の方法で、イオン源電位のみを変化させることになる。
【0053】
ΔVacc=ΔVacc,0・cos(2πft) (9)
ΔVext=−ΔVacc,0・cos(2πft) (10)
この時、ΔVacc、ΔVext両電源の出力が、下記のように自動的に変更されれば、本発明の手段が実現される(0≦ΔVext,0≦ΔVacc,0)。
【0054】
ΔVacc=ΔVext,0・cos(2πft) (11)
ΔVext=−ΔVext,0・cos(2πft) (12)
ここでの説明は、ACC−wobblingについてであるが、周期f=0に設定すれば、ACC−steppingになる。
b)引出電圧がグランドラインに乗っている場合
ここでも最初にACC−wobblingについての発明の動作を図2の(b)によって説明する。いま、オペレータにより振幅ΔVacc,0、周期fのACC−wobbling指令が出たとする。この時、ΔVacc、ΔVext両電源の出力が以下のように変化すれば、これは従来の方法で、イオン源電位のみを変化させることになる。
【0055】
ΔVacc=ΔVacc,0・cos(2πft) (13)
ΔVext=ΔVacc,0・cos(2πft) (14)
この時、ΔVacc、ΔVext両電源の出力が、下記のように自動的に変更されれば、本発明の手段が実現される(0≦ΔVext,0≦ΔVacc,0)。
【0056】
ΔVacc=ΔVacc,0・cos(2πft) (15)
ΔVext=ΔVext,0・cos(2πft) (16)
ここでの説明は、ACC−wobblingについてであるが、周期f=0に設定すれば、ACC−steppingになる。
【0057】
以上、詳細に説明したように、実施の形態1によれば、色収差拡大時にエミッション電流が遮断されたり、極端に大きな値になることを防ぐことができる。また、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択することができる。また、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源と引出電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧と引出電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時での引出電圧変化量の調整を可能とすることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、イオン源から放出されるエミッション電流の制御が、サプレッサ電極と引出電極の組みで実行される場合について説明する。なお、この実施の形態は、請求項3〜6に相当する。
(I)構成
実施の形態2を示す代表的な構成を図3に示す。図3はサプレッサ電極搭載時での設定値変更によるACC−stepping実施のための構成例を示す図である。この実施の形態2は通常のサプレッサ電極を搭載したイオン光学系と同等である。図において、1は加速電圧電源、3は該加速電圧電源1の上に乗った引出電圧電源、31は同じく加速電圧電源1の上に乗ったサプレッサ電圧電源である。32は該サプレッサ電圧電源31が印加されるサプレッサ電極である。このような装置でも、本発明はソフトウェア的に実行可能である。
【0058】
ガリウムに代表される液体金属イオン源(LMIS)の場合、図6の(b)が示すように、エミッション電流はエミッション時間と引出電圧により変化する。そのため、ビーム電流を時間的に一定にするためには常に引出電圧を変化させなければならない。既に述べたように、その引出電圧Vextの変化が荷電粒子のレイパスに与える影響は少ないが、それでも引出電圧Vextの変化は、像デフォーカスにより対物レンズ電圧や収差補正条件の変化を必要とする。
【0059】
この現象は、引出電極とイオン源との間にサプレッサ電極を設置することにより大幅に減少させ得る。サプレッサ電極が搭載された場合、引出電圧は通常10〜12kV間の固定値に設定され、エミッション電流の制御はサプレッサ電圧Vsupにより実行される。通常、サプレッサ電圧電源31は、図3に示すように加速電圧電源1の上に乗っている。この場合、サプレッサ電圧か加速電圧より数100V〜1.5kVの間で変化させられる。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
(II)動作
最初にACC−steppingについての発明の動作を図3によって説明する。いまACCステッピング電圧をΔVacc、この時同時に変化させるサプレッサ電圧の値を
ΔVsup、引出電圧の値をΔVsupと定義する。いま、オペレータにより電圧Vacc(>0)のACC−stepping指令が出たとする。この時、ソフトウェア的方法により、各電圧Vacc、Vext、VCL(レンズ電圧)が下記のように自動的に変更されれば、これは従来の方法でイオン源電位のみを変化させることになる。
【0060】
acc→Vacc+ΔVacc (17)
sup→Vsup−ΔVacc (18)
ext→Vext−ΔVacc (19)
ここでの発明は、対グランド電位に対してイオン源の電位を与える加速電圧だけを、使用する基準加速電圧を中心にして変化させる方法の代わりに、加速電圧の変化だけでなく、イオン源とサプレッサ電極間の電圧を一定にするよう、又は少なくとも加速電圧だけを変化させた場合よりもイオン源とサプレッサ電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧の2電圧を同時に変化させる手段を実現することである。
【0061】
この時、ΔVsupの値を、0≦ΔVsup≦ΔVaccと定義しておき、オペレータにより電圧ΔVacc(>0)のACCステッピング指令が出た時、各電圧Vacc、Vsup、Vextが下記のように自動的に変更されれば、本発明の手段が実現される。
【0062】
acc→Vacc+ΔVacc (20)
sup→Vsup−ΔVsup (21)
ext→Vext−ΔVacc (22)
いま、ΔVsup=0の時は、ACC−stepping時も、イオン源とサプレッサ電極間の電圧変化は無く、ΔVsup=ΔVaccの時は従来のACC−stepping法になる。なお、この例はACCステッピングの方法を示すが、ソフトウェア的にΔVaccの値を、ある周期、振幅をもって変化させれば、ACC−wobblingも可能である。この場合も、0≦ΔVsup≦ΔVaccの条件は守る必要がある。
【0063】
なお、本発明の実施の形態では、ソフトウェア的手段での構成のみ示すが、実施の形態1の2)ハードウェア的対応で示したように、ΔVacc電圧電源、ΔVsup電圧電源の2電源を追加してハードウェア的に本発明の手段を実行させることも可能になる。しかしながら、この方法は実施の形態1の引出電圧(電源)をサプレッサ電圧(電源)に置き換えれば同様に実施できりるため、説明は省略する。
【0064】
この実施の形態2では、色収差拡大時にエミッション電流が遮断されたり、極端に大きな値になることを防ぐことができる。また、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源とサプレッサ電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧とサプレッサ電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択することができる。
【0065】
更に、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源とサプレッサ電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧とサプレッサ電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時でのサプレッサ電圧変化量の調整を可能とすることができる。
【0066】
上述の実施の形態では、収差補正集束イオンビーム装置について説明したが、本発明は、これに限るものではなく、収差補正イオン・リソグラフィ装置についても等しく適用することができる。
【0067】
本発明によれば、以下のような効果が得られる。
FIBの場合、色収差拡大のため実質的な引出電極を30〜100V振るということは、下方に振った場合はエミッションの停止、上方に振る場合はエミッション電流の200〜500%の増大を意味する。これは収差補正装置調整の際に必要な値の色収差拡大ができないということを意味し、大問題となる。この場合に、本発明の手段を実行することにより、色収差拡大時に、エミッション電流が遮断されたり、極端に大きな値になったりすることを防ぐことができるため、正確な色収差補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】設定値変更によるACC−stepping実施のための構成例を示す図である。
【図2】電圧電源追加によるACC−wobbling実施のための構成例を示す図である。
【図3】サプレッサ電極搭載時での設定値変更によるACC−stepping実施のための構成例を示す図である。
【図4】色収差の発生原因の説明図である。
【図5】色収差拡大の原理を示す図である。
【図6】走査型電子顕微鏡(SEM)の電子源周辺の光学要素とその電源の関係を示す図である。
【図7】集束イオンビーム(FIB)の液体金属イオン源(LMIS)周辺の光学要素とその電源を示す図である。
【図8】電子源とイオン源のエミッション電流Iemission−引出電圧Vext特性を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 加速電圧電源
2 引出電圧電源
10 ヒータ電源
11 液体金属イオン源
13 イオン源
25 SIM鏡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の加速電圧が印加されているイオン源と、加速電圧よりも低い電位が印加されている引出電極と、引き出されたイオンビームの開き角を制御する開き角制御レンズと、色収差や球面収差等を補正するための収差補正装置と、イオンビームを試料上に集束するための対物レンズを備えた収差補正集束イオンビーム装置において、
加速電圧の変化に伴いイオン源と引出電極間の電圧を一定にするように、又は少なくとも加速電圧を変化させた場合よりもイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧の2電圧を同時に変化させ、色収差を拡大させるようにしたことを特徴とする収差補正集束イオンビーム装置。
【請求項2】
色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源と引出電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧と引出電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択する選択手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の収差補正集束イオンビーム装置。
【請求項3】
色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源と引出電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧と引出電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時での引出電圧変化量の調整を可能にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の収差補正集束イオンビーム装置。
【請求項4】
正の加速電圧が印加されているイオン源と、加速電圧よりも低い電位が印加されている引出電極と、引き出されたイオンビームの開き角を制御する開き角制御レンズと、色収差や球面収差等を補正するための収差補正装置と、イオンビームを試料上に集束するための対物レンズを備えた収差補正集束イオンビーム装置において、
加速電圧の変化に伴いイオン源とサプレッサ電極間の電圧を一定にするように、又は少なくとも加速電圧を変化させた場合よりもイオン源とサプレッサ電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧とサプレッサ電圧の2電圧を同時に変化させ、色収差を拡大させるようにしたことを特徴とする収差補正集束イオンビーム装置。
【請求項5】
色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧だけを使用する基準加速電圧に対して上下に変化させる第1の方法、又はイオン源とサプレッサ電極間の電圧変化が小さくなる方向に加速電圧とサプレッサ電圧を同時に変化させる第2の方法のうち、何れか一方を選択する選択手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の収差補正集束イオンビーム装置。
【請求項6】
色収差補正のための収差補正装置調整の際に色収差を拡大する手段として、加速電圧を使用する基準加速電圧に対して上下に振る際に、イオン源とサプレッサ電極間の電圧が加速電圧のみを変化させた場合と、加速電圧とサプレッサ電圧を同じ方向に同じ量だけ変化させた場合との間の任意の値に設定できるように加速電圧変化時でのサプレッサ電圧変化量の調整を可能にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の収差補正集束イオンビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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