説明

収穫植物に対する害虫忌避薬の調製方法および使用方法

【課題】収穫植物用の害虫忌避薬の調製方法、農業収穫製品の加工方法、野菜廃棄物の処理方法、害虫忌避薬用の洗浄組成物の製造方法および害虫忌避薬用の洗浄組成物に関する。
【解決手段】害虫忌避薬の調製方法は、植物を供給する段階、植物の一部を採集する段階、植物の一部から抽出物を得る段階および収穫植物に抽出物を塗布する段階からなる。農業収穫製品の加工方法は、農業収穫製品を供給する段階、農業収穫製品の一部を採集する段階、農業収穫製品の一部から抽出物を得る段階および抽出物を塗布して農業収穫製品を洗浄する段階からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収穫植物に対する害虫忌避薬の調製方法および使用方法に関し、特に細かく切られた野菜に対する害虫忌避薬の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用の収穫植物(果物、野菜など)は害虫によって損傷を受けることが多い。殺虫剤が開発される前は、イモムシなどの害虫を防ぐ方法は、手で害虫を取るか、収穫植物に耐虫性の高い植物の一部を噴霧するかであった。20世紀に化学的な殺虫剤が発明されるまで、人々は天然の殺菌薬を用いて植物の病害を制御していた。殺虫剤を使用することは、経済的負担が少なく、便利であり、有効であるため、人々は大量の殺虫剤を使用しており、それが著明な不都合をもたらしている。
【0003】
調査によれば、米国人の84%は、殺虫剤を用いずに育てた野菜を買いたいと考えている。しかし、食物の有機収穫は、こうした人々の増加に追いついていないのが現状である。殺虫剤の使用と植物の疾患の制御とのバランスを取るための多くの方法が提案されており、その例として総合的病害虫管理(IPM)が挙げられるが、目標は殺虫剤の使用量を減らすことである。熱帯地域および亜熱帯地域の多くは暑くて湿度の高い気候であり、複雑なものであることのおおい植物病害の発現率が高い。そのため、殺虫剤を使用することなく健常な植物を維持することは単調かつ骨の折れる仕事である。そのため、害虫を除去するための自然な技術はインスタント食品または調理の下ごしらえ製品の売り上げに影響を与え、害虫を除去するための自然な技術の需要は依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の重要な目的は、既知のほとんどの化学的忌避薬がそうであるように、消費者に有害な副作用を与えることなく、忌避薬で収穫作物を処理することのできる毒性をもたない害虫忌避薬を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明は収穫植物用の害虫忌避薬の調製方法、農業収穫製品の処理方法、野菜廃棄物の処理方法、害虫忌避薬の洗浄用組成物の製造方法および害虫忌避薬の洗浄用組成物に関する。害虫忌避薬の調製方法には、植物の供給、植物の一部の採集、植物の一部からの抽出物の入手および収穫植物へのその抽出物の塗布が含まれる。農業収穫製品の処理方法には、農業収穫製品の供給、農業収穫製品の一部の採集、農業収穫製品の一部からの抽出物の入手および農業収穫製品の洗浄のためのその抽出物の塗布が含まれる。
【0006】
本発明のその他の目的、利益および新しい特性は、添付の図表と組み合わせた以下の詳細な説明によってより明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は収穫植物用の害虫忌避薬の調製方法、農業収穫製品の処理方法、野菜廃棄物の処理方法、害虫忌避薬の洗浄用組成物の製造方法および害虫忌避薬の洗浄用組成物に関する。
【0008】
収穫植物用の害虫忌避薬の調製方法は、収穫植物の葉、根、茎、花、果実、皮または非食用部分などの収穫植物の一部を採集する段階、採集部分をジューサーを用いた好適な溶液中で切断または浸漬して洗浄用組成物を得る段階および、その洗浄用組成物内に収穫植物を浸漬、洗浄または攪拌して洗浄する段階からなる。害虫はこの洗浄用組成物によって刺激され弛緩され、収穫植物から離れると思われる。このため、収穫植物を洗浄するのに用いられる化学的洗浄剤は少なくてすむ。
【0009】
本明細書で使用する用語「収穫植物」は、野菜または果物などの菜園製品を指す。望ましい実施形態において、野菜は根、茎、葉、花または果実であることができる。より望ましい実施形態において、野菜の例としては、キャベツ、カリフラワー、レタス、白菜、ブロッコリー、カノーラその他をはじめとするアブラナ科植物および白菜、ナタネ、カラシナ、キャベツ、セロリ、ほうれん草、春菊、ネギまたは西洋ニラネギをはじめとする細かく切られた野菜であることができる。
【0010】
本明細書で使用する用語「害虫」または「イモムシ」は、昆虫、アブラムシ、ゴミムシダマシの幼虫またはカタツムリなどの野菜を食物として食べる生物を指す。
【0011】
本明細書で使用する用語「非食用部分」は、例えばブロッコリーまたはカリフラワーの葉など、野菜の根、古いか損傷を受けた葉、または茎といった通常は食物として使用されない植物または野菜の一部を指す。
【0012】
本明細書で使用する用語「抽出物」は、植物または植物部位の源から得られた物質又は組成物を指し、その物質または組成物が植物の外部に認められるか(滲出液など)、植物または植物の一部の内部に認められるがその細胞に関していえば外側に認められるか、あるいは植物の細胞内部に認められるかどうかは関係がない。当業界で理解されているように、植物または植物の一部からこの物質または組成物を得るには化学的および/または物理的操作が必要になることがある。
【0013】
本発明に基づく収穫植物用の害虫忌避薬の調製方法および使用方法は、収穫植物を供給する段階、その収穫植物の一部を採集する段階、その収穫植物の一部から抽出物を得る段階およびその抽出物を収穫植物に塗布する段階からなる。
【0014】
植物の一部を採集する段階において、植物の一部は望ましくは植物全体、根、茎、葉、花または果実、さらに望ましくは葉が古い葉または損傷を受けた葉である。
【0015】
抽出物を得る段階において、抽出物は望ましくは使用前にさらに濾過し、さらに望ましくは使用前に希釈し、最も望ましくは抽出物を1:50の濃度で希釈する。
【0016】
望ましくは、抽出物を収穫植物に塗布する段階は、収穫植物の浸漬、洗浄または攪拌からなり、より望ましくは攪拌からなる。
【0017】
望ましくは、その収穫植物は1種類または数種類の植物を含む。
【0018】
本発明に基づく農業収穫製品の処理方法は、農業収穫製品を供給する段階、農業収穫製品の一部を採集する段階、その農業収穫製品の一部から抽出物を得る段階およびその抽出物を用いて農業収穫製品を洗浄する段階からなる。
【0019】
望ましくは、農業収穫製品の一部は望ましくは植物全体、根、茎、葉、花または果実、さらに望ましくは葉が古い葉または損傷を受けた葉である。
【0020】
望ましくは、抽出物を使用前にさらに濾過し、さらに望ましくは使用前に希釈し、最も望ましくは抽出物を1:50の濃度で希釈する。
【0021】
望ましくは、抽出物を収穫植物に塗布する段階は、収穫植物の浸漬、洗浄または攪拌からなり、より望ましくは攪拌からなる。
【0022】
本発明のある側面は、野菜廃棄物の処理方法に関する。この方法は、野菜廃棄物を供給する段階、野菜廃棄物を抽出して固形の廃棄物および抽出物を得る段階、抽出物をリサイクルする段階および固形廃棄物を燃やす段階からなる。
【0023】
望ましくは、葉は古い葉または損傷を受けた葉である。
【0024】
本発明のある側面は、害虫忌避薬の洗浄用組成物の製造方法に関する。この方法は、植物を供給する段階、植物の一部を採集する段階、植物の一部を抽出して抽出物を得る段階および抽出物をリサイクルして洗浄組成物を製造する段階からなる。
【0025】
望ましくは植物の一部は、植物全体、根、茎、葉、花または果実、さらに望ましくは抽出物を使用前にさらに濾過し、さらに望ましくは使用前に希釈し、最も望ましくは抽出物を1:50の濃度で希釈する。
【0026】
本発明のある側面は、害虫忌避薬の洗浄用組成物に関する。
【実施例】
【0027】
以下の実施例は読み手が本発明を実施するにあたって介助をする目的で作成されたものであって、いかなる方法によっても本発明を限定する意図をもったものではない。
【0028】
実施例で実施される実験の準備において、市販のブロッコリーおよびカリフラワーを無作為に選択し、モデルとして用いた。ブロッコリーおよびカリフラワーの上のイモムシを計数し、平均値を得た。
【0029】
【表1】

【0030】
表1を見ると、収穫野菜には昆虫およびイモムシなどの多くの害虫がおり、害虫の数は天候(晴れ、曇りまたは雨)によって左右されている。野菜に用いざるをえない殺虫剤の量は、雨の日に著明に増加する。このため、害虫を取り除くため、殺虫剤とともに害虫忌避薬を用いる有効な方法を組み合わせることにより、野菜に使用しなければならない殺虫剤の量は減少すると思われる。
【0031】
実施例1:カリフラワーおよびブロッコリーから洗浄剤を調製する
1.1 調製方法
カリフラワーおよびブロッコリーの古い損傷を受けた葉または茎50gを取り、容器に採集し、水500mlをその容器に添加した。この古い損傷を受けた葉および茎と水を切断し、ひき潰し、1000〜2000rpmで2分間以上遠心分離し、濾過して、野菜洗浄剤を得た。
【0032】
1.2 洗浄方法
この野菜洗浄剤に水2リットルを添加し、野菜洗浄剤を1:50の濃度まで希釈した。目的とする野菜をこの希釈した野菜洗浄剤の中にいれ、洗浄した。洗浄方法は、浸漬、洗浄または攪拌であり、攪拌が望ましい。攪拌速度は約100〜110rpmであり、105rpmが望ましい。害虫忌避薬の結果を記録した。
【0033】
1.3 結果
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
浮かび沈むイモムシの観察所見は、野菜上の害虫の除去を示すものである。表3に記録された結果に基づけば、イモムシの80%〜100%は3分で除去された。
【0037】
さらに、本発明は種々の洗浄方法の有効性を推定している。水で洗浄した野菜は対照として用いた。その結果、洗浄のための攪拌方法が時間の節約になり有効であることが明らかになった。
【0038】
【表4】

【0039】
本発明に基づけば、害虫は野菜洗浄剤の導入により除去することができた。そのため、収穫植物には害虫はいない。さらに、この野菜洗浄剤は、種々の野菜を洗浄するため数種類の野菜を含むことができる。この野菜洗浄剤組成物は、収穫植物の古い葉、損傷を受けた葉、皮、茎といった農業廃棄物から調製され、収穫植物の上記の一部はさらに切断され、ひき潰され、濾過されるため、農業廃棄物量は減少する。この切断した農業廃棄物はさらに肥料として使用することができ、土壌の肥沃度を高める。
【0040】
さらに、本発明は果物および野菜の加工工場でも有用である。多くの野菜および果物はサラダを調製するための工場で加工されるため、最初の段階は果物または野菜の食べられない部分を取り除くことである。そのため、この食べられない部分は野菜洗浄剤粗生物を調製するために採集することができる。その後、こうして得られた野菜洗浄剤組成物は1:50の濃度で攪拌しながら希釈し、その果物または野菜を洗浄することができる。最後に、害虫が果物または野菜から取り除かれれば、洗浄した果物または洗浄した野菜はさらに食品として包装される(サラダなど)。本発明によれば、輸出用の果物および野菜はその導入により容易に洗浄することができ、化学残留物を残さず、農業製品の価値を向上させることができる。
【0041】
本発明はその望ましい実施形態を参照に、詳しく図示し説明されているが、形態および詳細に種々の変化を加えても本発明の意図および適用範囲から外れることはないことは当該業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫植物から害虫を取り除く方法であって、
収穫植物を供給する段階、
収穫植物の一部を採集する段階、
収穫植物の一部を抽出して抽出物を得る段階および、
その抽出物で収穫植物を洗浄する段階からなる
方法。
【請求項2】
収穫植物の一部が植物全体、根、茎、葉、花または果実である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
葉が古い葉または損傷を受けた葉である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
抽出物がさらに使用前に濾過される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
濾過された抽出物がさらに使用前に希釈される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抽出物が1:50の濃度で希釈される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
収穫植物が浸漬、洗浄または攪拌によって洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
植物が攪拌により洗浄される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
植物が1種類または数種類の植物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
収穫農業製品の加工方法であって、
収穫農業製品を供給する段階、
収穫農業製品の一部を採集する段階、
収穫農業製品の一部を抽出して抽出物を得る段階および、
その抽出物で収穫農業製品を洗浄する段階からなる、
加工方法。
【請求項11】
収穫農業製品の一部が植物全体、根、茎、葉、花または果実である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
葉が古い葉または損傷を受けた葉である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
抽出物がさらに使用前に濾過される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
濾過された抽出物がさらに使用前に希釈される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抽出物が1:50の濃度で希釈される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
収穫農業製品が浸漬、洗浄または攪拌によって洗浄される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
収穫農業製品が抽出物中の攪拌によって洗浄される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
野菜または果実廃棄物の処理方法であって、
野菜または果物の廃棄物を供給する段階、
野菜または果物の廃棄物を抽出して固形の廃棄物および抽出物を得る段階、
抽出物をリサイクルする段階および、
固形廃棄物を燃やす段階からなる
処理方法。
【請求項19】
野菜廃棄物が野菜の古い葉または損傷を受けた葉である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
害虫忌避薬用の洗浄組成物の製造方法であって、
植物を供給する段階、
植物の一部を採集する段階、
植物の一部を抽出して抽出物を得る段階および、
抽出物をリサイクルして洗浄組成物を製造する段階からなる、
製造方法。
【請求項21】
植物の一部が植物全体、根、茎、葉、花または果実である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
抽出物がさらに濾過される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抽出物がさらに水で希釈される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抽出物が1:50の濃度で希釈される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項20〜24のいずれかで調製される害虫忌避薬用の洗浄組成物。

【公開番号】特開2008−260744(P2008−260744A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174069(P2007−174069)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(596032694)財団法人食品工業発展研究所 (9)
【Fターム(参考)】