説明

収納スペースを形成することができる着座部材を備える原動機付き車両用シート

本発明は原動機付き車両用シートに関するものであり、該原動機付き車両用シートは着座部表面(11)を有し、かつ原動機付き車両のフロア(3)に取り付けることができる着座部材(1)を備え、前記着座部材(1)は2つの座部側面(13)を含み、これらの座部側面(13)は前記着座部表面(11)を介して連結され、これらの座部側面(13)のそれぞれが自由辺縁(17)を含むことを特徴とし;第1使用位置ではこれらの自由辺縁(17)が前記着座部表面(11)よりも上方に配置されることを特徴とし;第2使用位置では、これらの自由辺縁(17)が前記着座部表面よりも下方に配置されて、前記着座部表面(11)がこれらの座部側面によって持ち上げられるようになることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原動機付き車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着座部材を含む原動機付き車両用シートが記載されており、この着座部材はフロアに取り付けられ、かつ当該着座部材の後方周縁で回動自在になっている。使用位置では着座部材は水平着座部表面を有し、2つの空洞スペースが設けられ、一方の空洞スペースはフロア内に設けられ、他方の空洞スペースは着座部材内に設けられ、これらの空洞スペースを使用して収納スペースを着座部材の下に形成することができる。幼児用の補助椅子はこの収納スペースに格納することができる。着座部材を持ち上げることにより、補助椅子を前述の収納スペースに格納するか、または補助椅子を収納スペースから取り出して着座部材の上で使用することができる。使用時に補助椅子は、着座部材の着座部表面に載置される必要がある。当該補助椅子の厚さは、幼児乗員を持ち上げてシートに安全ベルトストラップで正しく保持することができるように設定される。
【0003】
前述の収納スペースは極力制限され、補助椅子を着座部の上で使用する場合には手荷物または他の物品を運ぶためにしか使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】フランス特許第2724606号
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は手荷物または他の物品の収納を可能にする新規な原動機付き車両用シートを提案することにある。
【0006】
この目的は着座部表面を有し、かつ原動機付き車両のフロアに取り付けられるように適合させた着座部材を含む原動機付き車両用シートによって達成される。本発明によれば前記着座部材は2つの座部側面を含み、これらの座部側面は前記着座部表面を介して連結され、これらの座部側面の各々は自由辺縁を有し、これらの自由辺縁が前記着座部材の第1使用位置では前記着座部表面よりも上方に配置されるのに対し、これらの自由辺縁は第2使用位置では前記着座部表面よりも下方に配置されて、前記着座部表面がこれらの座部側面によって持ち上げられるようになる。
【0007】
着座部表面が持ち上げられることにより、収納スペースを着座部材の着座部表面の下に形成することができる。これらの座部側面は、着座部表面を持ち上げる支持手段として機能する。
【0008】
1つの実施形態では、これらの自由辺縁は、前記第1及び第2位置において、前記フロアに形成される開口部の周縁と相互作用することができる。前記第1位置では、着座部表面はこのようにして開口部の中に、または開口部の下に収納することができるので、シートの全体寸法を最小にすることができる。
【0009】
有利な点として前記第2使用位置では、前記着座部材が補助椅子を形成することができる。このように、着座部材によって収納スペースが提供される他に、着座部材を使用して、幼児が本発明によるシートに用いられる安全ベルトで正しく保持されるように幼児を着座させることができる。
【0010】
この目的のために前記着座部材は、前記着座部表面の裏側に配置される相補的嵌合着座部表面と安全ベルトストラップを案内して、該安全ベルトストラップを、前記相補的嵌合着座部表面に着座する幼児乗員の大腿部を押さえつけるように、所定の位置に保持する手段とを含むことができる。
【0011】
1つの変形例では、前記着座部材は前記着座部材が前記第2使用位置に収納される場合に、前記相補的嵌合着座部表面の各側に1つずつ延設され、かつ前記相補的嵌合着座部表面よりも上方に延設される2つの相補的嵌合座部側面を備える。この変形例では、安全ベルトストラップを案内する前記手段はこれらの相補的嵌合座部側面の位置に形成することができる。
【0012】
2つの相補的嵌合座部側面を使用して肘掛けを形成することができるので、有利であるとともに、これらの相補的嵌合座部側面によって更に確実に幼児が相補的嵌合着座部表面に正しく保持されるようになる。
【0013】
1つの実施形態では、前記着座部材は前記着座部表面に略直交し、かつ背もたれを前記第1使用位置で形成する後方壁を含む。
【0014】
本発明による前記シートは更に、前記着座部材を該着座部材の使用位置のうちの一方または他方の使用位置に係止する、前記着座部材の係止手段を含むことができる。
【0015】
本発明、本発明の特徴、及び本発明によってもたらされる種々の利点は、添付の図面を参照する非限定的な例によって提供される3つの実施形態に関する以下の説明によって、より深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、着座部材が第1使用位置に取り付けられた状態の本発明によるシートの第1の実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、着座部材が取り外された状態の本発明によるフロア、及びシートの一部分の斜視図である。
【図3】図3は、着座部材が第2使用位置に収納された状態の図1のシートの斜視図である。
【図4】図4は、本発明によるシートの着座部材の第2の実施形態を示している。
【図5】図5は、本発明によるシートの着座部材の第3の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明によるシートは取り外し可能であり、かつフロア3に取り付けられる着座部材1と、着座部材1に略直交する背もたれ5とを含む。着座部材1は、着座部表面11と、着座部表面11を介して連結される2つの座部側面13と、後方壁15とを含み、この後方壁15は背もたれ5と、背もたれ5の下側部分で相互作用する。この後方壁15は、背もたれのうちの、乗員の背中の下側の位置の部分を形成する。後方壁15は、着座部表面11に接続され、更にこれらの座部側面13の各々に接続されて、着座部表面11に略直交して延在する連続壁を形成する。図1に示す第1使用位置では、着座部表面11は車両内で略水平に配置され、後方壁15及びこれらの座部側面13は従って垂直に延在する。これらの座部側面13及び後方壁15の各々は自由辺縁17を有し、この自由辺縁17は着座部表面11に平行に延在し、かつ着座部表面11の反対側に着座部材1の外側に向いて配置される薄板または縁取り部19を含む。
【0018】
図1及び2に示すようにフロア3は座脚31を形成し、この座脚31の中に着座部材1が取り付けられる。この座脚31は開口部39を含み、この開口部39は略水平面内を延びている。開口部39の後方では、座脚31は略垂直な後方部分35を含み、この後方部分35はフロア3の平均的な表面よりも高くなっている。開口部39の前方に位置する座脚31の前方部分37は、略垂直であり、かつ後方部分35よりも低くなっている。後方部分35は背もたれ5の下に配置される、または垂直に背もたれと略同じ距離だけ延びて背もたれ5を形成することができる。図1に示す第1使用位置では、着座部表面11はこれらの自由辺縁17よりも下方に配置され、これらの自由辺縁17は縁取り部19を介して、座脚31に形成される開口部39の周縁と相互作用する。着座部表面11はこのように座脚31内に位置しているので、局所的にフロア3の表面よりも下方になる。座部側面13及び後方壁15は、着座部表面11を座脚31に連結して空洞のバケットシートを形成し、このバケットシートの中でユーザが着座部表面11に着座することができる。
【0019】
図2に示すように、開口部39は着座部表面11と略同じ形状を有する。この開口部39の下には、例えば電動モータ及びこのモータ用の電源バッテリが収納される。
【0020】
これらの部材は、ケーシングなどで覆うことができる。このように、座脚31は収納ハウジングを形成し、この収納ハウジングは、開口部39の下に延設され、かつ背もたれ5の下に位置する座脚31の部分において開口部39の背後に延設されている。このハウジングは狭く、このハウジングへの出し入れ作業は、着座部材1を取り外すことにより可能になる。
【0021】
図2に示すように、開口部39の外周は支持薄板38を含み、この支持薄板38は、開口部39の中心の方に狭い幅に亘って延び、着座部材1の縁取り部19と相互作用することができる。この支持薄板38は、開口部39の周縁よりもわずかに低くなっているので、第1及び第2使用位置では、縁取り部19の境界が垂直表面を圧接して、開口部39の周縁を支持薄板38に連結する。座脚31の後方部分35では、支持薄板38が、水平溝の下側表面を形成し、この水平溝に縁取り部19が収納される。
【0022】
図3は、着座部材1が第2使用位置にある状態の本発明によるシートを示している。着座部材1はひっくり返されており、着座部表面11は座脚31の開口部39に面している。従って、スーツケースのような嵩張る物体を収納スペースに収納することができ、この収納スペースへの出し入れ作業は開口部39を通して可能であり、この場合、物体は開口部39の外側に飛び出し、かつ蓋として機能する着座部材1によって覆われる。
【0023】
図3に示すように、後方壁15は、着座部材1が第2使用位置にあるときに、座脚31の前方部分37に隣接して収納される。このように、着座部材1は収納ハウジングの蓋を形成する。第2使用位置では、自由辺縁17は下方を向いて収納され、これらの自由辺縁17の縁取り部19は支持薄板38に当接する;着座部表面11は、これらの自由辺縁17よりも上方に配置される。縁取り部19のうち、着座部材1の前方周縁に位置する(着座部材1の後方壁の反対側の)部分は、座脚31の後方部分35に位置する前述の溝に収納される。着座部材1の外形部分が、高さが変化する(これらの座部側面の高さが後方壁15に向かって高くなる)2つの座部側面13と、後方壁15とを含む結果として、着座部材1が当該着座部材1の第2位置に収納される場合、着座部表面11は略水平に保持され、かつひっくり返されて開口部39に面するようになる。
【0024】
図4に示すように、着座部材1は補助椅子を形成することができる。着座部表面11の裏側になり、かつ第2使用位置の最上部に配置される着座部材1の表面2は、相補的嵌合着座部表面として使用することができる。この相補的嵌合着座部表面2は、第1使用位置の着座部表面11よりも高くなることにより、幼児はこの着座部表面2に着座することができる。
【0025】
図4及び5は、着座部材1が第2使用位置に取り付けられるときに補助椅子を形成する構成の特定の実施形態を示している。
【0026】
図5の実施形態に示すように、着座部材は着座部表面11の裏側に配置される相補的嵌合着座部表面2と安全ベルトストラップを案内して、当該ストラップを、この相補的嵌合着座部表面に着座している幼児乗員の大腿部を押さえつけるように所定の位置に保持する手段23’とを含む。これらの案内手段は、簡単なタブまたはワイヤにより構成される。
【0027】
図4に示す特定の実施形態では、着座部材1は、これらの座部側面13に略平行であり、かつ反対方向に延設される、別の表現をすると、相補的嵌合着座部表面2よりも上方に延設される相補的嵌合座部側面21を含む。これらの相補的嵌合座部側面21はそれぞれ、安全ベルトストラップ23を案内する手段、この場合はタブの形状の手段を有する。
【0028】
着座部材1が図4及び5に示すように、当該着座部材の第2使用位置に取り付けられる場合、相補的嵌合着座部表面2に着座している幼児のふくらはぎが、着座部材1の後方壁15の長さに沿って位置する。安全ベルトストラップを案内手段23,23’に滑らかに通して、幼児の腹部の上ではなく、幼児の大腿部を優先的に押さえつけるように引き延ばす。
【0029】
縁取り部19は、開口部39の周縁の下に位置する垂直表面を圧接することにより、着座部材1が使用位置のいずれの位置になっていても着座部材1の不所望な動きを全て防止する。
【0030】
図示されない1つの変形例では、着座部材1は当該着座部材の使用位置の一方または他方の使用位置にあるときに、当該着座部材1をフロア3の座脚31に固定する固定手段を含む。これらの固定手段によって、着座部材1により形成される収納スペースに不正操作防止機能を持たせることができる。これらの固定手段は、例えば衝突時に着座部材1が外れるのを防止することにより、幼児乗員の安全を確保するように機能することもできる。
【0031】
次に本発明によるシートの使用例について、図1〜3を参照しながら説明する。
【0032】
着座部材が第1使用位置にある場合、ユーザは着座部表面11に着座することができる。当該ユーザの背中は後方壁15に接触し、当該ユーザの脚は座脚を越えてかつ座脚の下方に、フロア3のうち座脚31よりも低い部分に向かって飛び出す。
【0033】
乗員が居ない場合、着座部材は、第2使用位置に収納することができる。この目的のためには、着座部材1を座脚31の前方部分37に向かって引いて、縁取り部19を、背もたれ5に形成される溝から取り外せばよいだけである。従ってユーザは手荷物または他の物品を、開口部39を通して出し入れ作業が可能なハウジングに収納することができる。次に、着座部材を図3に示すようにひっくり返し、当該着座部材で手荷物を覆う当該着座部材の第2使用位置に収納する。この第2使用位置では、着座部材1は収納スペースを形成する。着座部材1は、幼児乗員の補助椅子として使用することもできる。
【0034】
本発明によるシートは、乗員室が特に狭く制限される構成であり、かつ当該車両の全体寸法に起因して収納スペースをとることができない電動モータ付き車両において特に有用であることが判明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部表面(11)を有し、かつ原動機付き車両のフロア(3)に取り付けられるように適合させた着座部材(1)を含む原動機付き車両用シートであって、前記着座部材(1)が2つの座部側面(13)を含み、これらの座部側面(13)が前記着座部表面(11)を介して連結され、これらの座部側面(13)のそれぞれが自由辺縁(17)を有することを特徴とし;第1使用位置では、これらの自由辺縁(17)が前記着座部表面(11)よりも上方に配置されることを特徴とし;第2使用位置では、これらの自由辺縁(17)が前記着座部表面の下に配置されて、前記着座部表面(11)がこれらの座部側面によって持ち上げられるようになることを特徴とする、原動機付き車両用シート。
【請求項2】
これらの自由辺縁(17)が前記第1及び第2使用位置において、前記フロア(3)に形成される開口部(39)の周縁(38)と相互作用することができることを特徴とする、請求項1に記載の原動機付き車両用シート。
【請求項3】
前記第2使用位置では、前記着座部材(1)が補助椅子を形成することを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の原動機付き車両用シート。
【請求項4】
前記着座部材(1)が、前記着座部表面(11)の裏側に配置される相補的嵌合着座部表面(2)と、安全ベルトストラップを案内する手段(23,23’)とを含むことを特徴とする、請求項3に記載の原動機付き車両用シート。
【請求項5】
前記着座部材が、前記着座部材が前記第2使用位置に収納される場合に前記相補的嵌合着座部表面(2)の各側に1つずつ延設され、かつ前記相補的嵌合着座部表面(2)よりも上方に延設される2つの相補的嵌合座部側面(21)を含むことを特徴とする請求項4に記載の原動機付き車両用シート。
【請求項6】
前記案内手段が相補的嵌合座部側面に形成されることを特徴とする、請求項5に記載の原動機付き車両用シート。
【請求項7】
前記着座部材(1)が前記着座部表面(11)に略直交し、かつ背もたれを前記第1使用位置で形成する後方壁(15)を含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の原動機付き車両用シート。
【請求項8】
前記車両用シートが前記着座部材(1)を該着座部材の使用位置のうちの一方または他方の使用位置に係止する、前記着座部材の係止手段を含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の原動機付き車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504467(P2013−504467A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528406(P2012−528406)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051236
【国際公開番号】WO2011/033197
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】