説明

取り付け角度を設定可能な手摺り

【課題】着脱が容易に行え、耐荷重が大きく、取り付け角度を設定可能な手摺りが提供できるようにする。
【解決手段】第1手摺り部分と第2手摺り部分が中折れ機構を介して連結されることにより、当該中折れ機構部分で手摺りを屈曲可能にし、中折れ機構部分及び各手摺り部分の端部に吸着用レバーにより壁面に吸着する吸着取り付け機構を設けるとともに、中折れ機構部分の吸着取り付け機構は吸着用レバー操作により、第1手摺り部分と第2手摺り部分との連結角度を固定するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室やトイレあるいは洗面所等に後付けで取り付けられる手摺りの関するものである。
【背景技術】
【0002】
一組の夫婦とその子どもだけによって構成される核家族が増えており、かかる核家族では、若年夫婦であることが多いことから、家庭の家屋内には手摺りが殆んど設けられていない。しかしながら、高齢者が来訪されたときや、自身が高齢になった時、手摺りが必要になる。
【0003】
そこで、既存の家屋内に設ける手段としては、特許文献1に示されるように、壁面にバックアッププレートをあらかじめ埋設し、このアンカーボルトに手摺りを固定する形式と、特許文献2に示されるように、棒状の手摺り本体の両端部分に吸盤が設けられた手摺りを、その両端の吸盤を壁面に吸着させて取り付けるようにする手段が知られている。
【0004】
ところが、壁面にバックアップ用プレートをあらかじめ埋設し、このバックアップ用プレートに手摺りを固定する前者の場合、バックアップ用プレートを埋設する手間がかかり、不要になった時に取り外すと埋設されたバックアップ用プレートが露出し、美感を損ねてしまうという問題もある。
さらに、使用に当たっては、使用者の身長や姿勢により手摺りを取り付ける望ましい位置が異なるが、こうした万人の要請にこたえることが難しく、使勝手が悪いものになっていた。
【0005】
また、棒状の手摺り本体の両端部分に吸盤が設けられた手摺りを、その両端の吸盤を壁面に吸着させて取り付けるようにしたものでは、吸盤を着脱することにより、手摺りの取り付け位置を簡単に変えることができるものの、手摺りに作用する荷重が手摺り本体の両端部分に設けられた吸盤で受けるために、その耐荷重が低く安全性に問題があった。
さらに、後者では手摺りが1本ずつ設けられるために、使用者の行動パターンに合わせようとすると吸盤同士を近接させた状態にしても、間が開き不連続にしか設けられず、上記安全性の問題とともに使勝手の悪いものとなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−118067号公報
【特許文献2】実用新案登録第3128278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて提案されたもので、着脱が容易に行え、耐荷重が大きく、取り付け角度が設定可能な手摺りを提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺りは、第1手摺り部分と第2手摺り部分が中折れ機構を介して連結されることにより、当該中折れ機構部分で手摺りを屈曲可能にし、中折れ機構部分及び各手摺り部分の端部に吸着用レバーにより壁面に吸着する吸着取り付け機構を設けるとともに、中折れ機構部分の吸着取り付け機構は吸着用レバー操作により、第1手摺り部分と第2手摺り部分との連結角度を固定するように構成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0009】
本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺りでは、第1手摺り部分の一端部と第2手摺り部分の一端部とを重ね合わせ、当該重ね合わせた接合面に環状の凹凸嵌合面を形成して中折れ機構を構成し、吸盤から突出させた吸着操作桿を前記環状の凹凸嵌合面の中心部分を貫通させ、その端部分に吸着用レバーを揺動可能取り付け、吸着用レバーの吸着操作により吸着操作桿が引き上げられると、環状の凹凸嵌合面が嵌合して、第1手摺り部分と第2手摺り部分の連結角度を固定するようにしたことも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
第1手摺り部分と第2手摺り部分が中折れ機構を介して連結され、その中折れ機構部分で手摺りが屈曲可能にするとともに、中折れ機構部分及び各手摺り部分の端部に吸着用レバーにより壁面に吸着する吸着取り付け機構を設けるようにし、吸着用レバー操作により、第1手摺り部分と第2手摺り部分との連結角度を固定できるように中折れ機構部分の吸着取り付け機構を構成してある。
これにより、手摺りを既存の家屋内にも必要に応じて任意な場所に着脱が容易に行える利点がある。
【0011】
さらに、手摺りが不要になった時に、手摺りを取り外した跡には従来のようなバックアップ用プレートもなく、美感を損なうことをなくせる利点もある。
また、中折れ機構部分で折り曲げ角度を自由にすることができるので、使用者の姿勢等に合わせて最も使い勝手のよい角度に設定して取り付けることにより、至便な手摺りにすることができる。
【0012】
加えて、取り付けられた手摺りからの荷重は、第1手摺り部分と第2手摺り部分の各端部と中折れ機構部分に設けられた吸盤で支えられるので、3箇所での吸着力によりその耐荷重が大幅に向上し、耐久性が向上する。
特に、第1手摺り部分と第2手摺り部分を角度を持たせて取り付けた場合、一方の手摺り部分に作用する荷重に対して、他方の手摺り部分が大きな対抗力として作用するので、安全性を大幅に向上させることができる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】は本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺りの側面図である。
【図2】は本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺りの正面図である。
【図3】は本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺りの一部を切り欠いた側面図である。
【図4】は本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺りを浴室に付設した使用状態を示す斜視図である。
【図5】は本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺りを角度を変えてトイレに付設した使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の取り付け角度を設定可能な手摺りにかかる最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は本発明にかかる取り付け角度を設定可能な手摺り(以下単に手摺りという)の側面図、図2はその正面図であって、図中符号1はこの手摺りを全体的に示す。
この手摺り1は、第1手摺り部分2と第2手摺り部分3と、両手摺り部分2・3を連結する中折れ機構4とを備えるとともに、両手摺り部分2・3の端部およびを中折れ機構部分4にはそれぞれ吸着取り付け機構5を設けて構成されている。
【0016】
上記第1手摺り部分2と第2手摺り部分3とは、中折れ機構部分4を除いて略同様の構造になっている。
すなわち、各手摺り部分2・3は、図3に示すように、中空に形成された握り部本体6の端部に略球形の吸盤収納部7を形成されている。
この吸盤収納部7には、ここに収納される軟質合成樹脂製の吸盤8から上方に吸着操作桿9を延出し、前記吸盤収納部7を貫通させて吸着操作桿9を上方に突出させ、この突出する吸着操作桿9の上端部に当該吸着操作桿9を引き上げる吸着用レバー10を揺動可能に取り付けて吸着取り付け機構5が形成されている。
そして、吸盤8と吸盤収納部7との間には吸盤8を吸盤収納部7外(図3上、下向き)に押し出し付勢するコイルバネ11が吸着操作桿9と同心状に設けてある。
【0017】
上記中折れ機構4は、第1手摺り部分2と第2手摺り部分3の連結する端部同士を上下に重ね合わせ、重ね合わされる接合面に連続する山形からなる凹凸嵌合面12を環状に形成したもので、下方に位置する図上、第2手摺り部分3の下面側に球状凹部からなる吸盤収納部7が形成されている。
この吸盤収納部7には、上記と同様に構成された吸着取り付け機構5の吸盤8から上方に延出された吸着操作桿9が中折れ機構5部分の上記凹凸嵌合面12の中心部分を貫通して上方に突出させ、その端部分に吸着用レバー10を揺動可能取り付けてある。
【0018】
上記のように構成された手摺り1を図4に示すように浴室13の壁面14に敷設する使用する手順を次に説明する。
先ず、吸着取り付け機構5のすべての吸着用レバー10を図1に示すように、跳ね上げた吸着を解除する状態にする。
すると、中折れ機構4の凹凸嵌合面12の嵌合が解除され、当該中折れ機構4部分で第1手摺り部分2と第2手摺り部分3とが屈曲自在となる。
【0019】
第1手摺り部分2と第2手摺り部分3とが屈曲自在な状態で浴室13の壁面14に任意な角度にし、各吸盤8を上から押さえて仮付けする。
然る後、吸着用レバー10を倒して吸盤8を吸着させる状態にすると、この吸着用レバー10の吸着操作により吸着操作桿9が引き上げられる。
吸着操作桿9が引き上げられると、各吸盤8が壁面14にしっかりと吸着するとともに、中折れ機構4部分では、環状の凹凸嵌合面12が嵌合して、第1手摺り部分2と第2手摺り部分4とが所望する連結角度で固定される。
【0020】
斯くして、図4に示すように逆「く」の字状に取り付けられた手摺り1の例えば第1手摺り部分2に入浴者からの荷重(体重)が下向きに作用すると、この荷重は第1手摺り部分2から第2手摺り部分3にも伝えられる。
この時、第2手摺り部分3の端部の吸盤8が第1手摺り部分2の延長線15上にないので、第1手摺り部分2に作用する荷重は凹凸嵌合面12を介して第2手摺り部分3の端部の吸盤8を浮かせる方向に作用するが、第2手摺り部分3の端部の吸盤8が中折れ機構4の凹凸嵌合面12から離れていることから、第2手摺り部分3は大きな力でしっかりと耐え、凹凸嵌合面12を介して第1の手摺り部分2が撓むのを防止する。これにより手摺り1の全体の耐荷重性能が大幅に向上する。
【0021】
上記の撓み防止効果は、図5に示すように第1手摺り部分2と第2手摺り部分3とを略90度に設置したときに最大に発揮する。
因みに、図5に示すものはトイレ15の壁面14にペーパホルダ17を囲むように手摺り1を略90度にして取り付けたものである。
また、一旦取りつけた手摺り1を取り外す場合は、これまで吸盤8を吸着させる状態にあった吸着用レバー10を跳ね上げて吸着を解除する状態にし、吸盤8を壁面14から分離すると手摺りを簡単に取り外すことができる。
こうして手摺り1が取り外された壁面14には傷や痕跡もなく、綺麗な状態の壁面14があらわれることになる。
【0022】
上記実施の形態では手摺り1を浴室13やトイレ16の壁面14の取り付けるようにしてあるが、こうしたものに限られず、洗面所その他、吸盤を吸着できる面があれば本発明の手摺り1を何処でも、何時でも、誰でも簡単に着脱して使用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・手摺り
2・・・第1手摺り部分
3・・・第2手摺り部分
4・・・中折れ機構
5・・・吸着取り付け機構
6・・・握り部本体
7・・・吸盤収納部
8・・・吸盤
9・・・吸着操作桿
10・・・球着用レバー
11・・・コイルバネ
12・・・凹凸嵌合面
13・・・浴室
14・・・壁面
15・・・延長線
16・・・トイレ
17・・・ペーパホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1手摺り部分と第2手摺り部分が中折れ機構を介して連結されることにより、当該中折れ機構部分で手摺りを屈曲可能にし、中折れ機構部分及び各手摺り部分の端部に吸着用レバーにより壁面に吸着する吸着取り付け機構を設けるとともに、中折れ機構部分の吸着取り付け機構は吸着用レバー操作により、第1手摺り部分と第2手摺り部分との連結角度を固定するように構成したことを特徴とする取り付け角度を設定可能な手摺り。
【請求項2】
第1手摺り部分の一端部と第2手摺り部分の一端部とを重ね合わせ、当該重ね合わせた接合面に環状の凹凸嵌合面を形成して中折れ機構を構成し、吸盤から突出させた吸着操作桿を前記環状の凹凸嵌合面の中心部分を貫通させ、その端部分に吸着用レバーを揺動可能取り付け、吸着用レバーの吸着操作により吸着操作桿が引き上げられると、環状の凹凸嵌合面が嵌合して、第1手摺り部分と第2手摺り部分の連結角度を固定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の取り付け角度を設定可能な手摺り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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