説明

取り外し可能な磁性挿入物を備えるMALDIプレート

保持プレート(11)、サンプル挿入プレート(14)および磁石(16)を備えるサンプルプレート構造体(10)が提供され、この保持プレートは、その周囲に沿って谷部(13)を備える中央凹部(12)を備え、このサンプル挿入プレートは、この凹部の接触表面内にフィットし、そしてこの接触表面上に載り、そしてこの磁石は、この接触表面の下方に保持される。この挿入物の底部表面(15)の一部分は、磁性材料から形成される。磁石(16)は、MALDI MS分析の間、挿入プレート(14)を保持プレート(11)内に保持するために十分な力を提供する。このサンプル挿入プレート(14)は、周囲構成を備え、この構成は、このサンプル挿入プレートが、このサンプルプレート支持構造体内で適切に配向し、そして平坦に保持されることを保証する。突出物のための穴(18)は、配向特徴に対する挿入物の容易な設置および整列を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権および関連出願)
本願は、2003年10月10日に出願された、米国特許出願10/683,024(その全体が本明細書中に参考として援用される)から優先権を主張する。
【0002】
(背景)
本技術は、質量分析法(例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)分析)において有用なプレートに関し、特に、分析されるべきサンプルを支持するための取り外し可能な挿入物を有するMALDIプレートに関する。
【背景技術】
【0003】
大きい分子(例えば、生体分子)の分析のために、MALDI質量分析法は、標準的な方法になっている。MALDI質量分析法は、代表的に、高い平坦性公差を有する、高価な導電性のプレートを使用して、化学的サンプルを質量分析計(MS)機器に導入している。プレート表面が極度に平坦であることに対するこの要件は、主として、このプレートが、質量分析計の一体的部品になり、MALDI分析の間になされる測定の信号分解および質量精度を増強することの必要性に起因する。現在の製造の実際は、これらのプレートを、これらのプレートを使い捨てにするための十分には費用効果的に作製することを妨げる。従って、使用者は、1つの分析手順から次の手順へのサンプルの持ち越しを排除するために、厳密な品質管理手順の実施を伴う、労力のかかる清浄化工程を利用することが必要である。さらに、イオン源の限定された空間、および高い電場の印加は、安価な単回使用のプレートを製造するための、可能な技術的解決策の数を減少させる。可能な再分析のために、高価なサンプルを含有するサンプルプレートをアーカイブすることもまた、比較的安価なプレートを必須にする。さらに、使用者は、現在、MALDI MSに、実験のための特別な材料または表面化学を、費用効果的に導入することが不可能である。このような実験のためには、試行材料(例えば、膜または組織切片)を、分析のために、現在のプレートの頂部に取り付けることが、通常の実施である。この実施は、時々、器具の不安定性および減圧の問題を引き起こし、そして器具の最適化を変化させ、再現性のあるMSの結果を、さらにより困難にする。従って、消耗品としての使用を可能にするために十分に費用効果的な、MALDI MSにおいて使用するためのサンプルプレートを提供することが望ましい。このようなサンプルプレートは、このプレートの1回の使用を可能にし、これによって、このプレートを清浄化する必要性、および収集されたデータの品質管理確認の必要性を排除する。従って、使い捨てプレートを有することにより、そのプレートが使用された先の分析からの分析物信号の持ち越しがないことが確実になり、一方で、サンプルプレート支持構造体の複数回の使用を可能にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
本教示に従って、取り外し可能な挿入物を備えるMALDIサンプルプレート構造体が提供される。このプレート構造体は、中央凹部または「ポケット」部分を有する保持プレートを備え、この中央凹部または「ポケット」部分は、分析物/マトリックス混合物を支持するサンプルプレート挿入物を受容するための形状にされる。この挿入物の底部表面の一部または全部は、磁性材料から形成される。この保持プレートは、MALDI MS分析の間、この挿入物をプレート内に保持するために十分な力を提供するために適切な、磁石を備える。種々の実施形態において、このサンプルプレート挿入物は、複数のサンプルを保持するための構成にされ、そして1回の使用の後に、アーカイブされ得るかまたは処分され得る。種々の実施形態において、このサンプルプレートは、疎水性材料でコーティングされてもよく、コーティングされなくてもよい。種々の実施形態において、このプレート挿入物は、使い捨てであり、そして保持プレートは、所望であれば、異なる表面構成を有するさらなるサンプルプレート挿入物と共に、再使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(種々の実施形態の説明)
本教示は、MALDI MS分析において使用され得る、単回使用のサンプル挿入プレート、およびこの挿入プレートを保持するための再使用可能なサンプルプレート支持構造体を提供する。本発明者らは、MALDI MS分析によって、質量分析とタンデム型質量分析との両方を意味する。タンデム型質量分析は、しばしば、MS/MS分析またはMS分析と称される。このサンプルプレートは、導電性であり、そしてその底部表面の少なくとも一部分は、磁性材料を含む。このサンプル挿入プレートは、磁性材料から形成された金属のような、金属であり得る。この材料は、費用効果的な様式で(例えば、スタンピングなどによって)容易に加工され得る。このサンプル挿入プレートを形成するために適切な代表的な金属は、ステンレス鋼、アルミニウム、または金でコーティングした鋼および他の金属めっきされた基材(例えば、ニッケルめっきされたアルミニウムなど)であり得る。あるいは、このサンプル挿入プレートは、導電性の非金属組成物(例えば、ケイ素、金属でコーティングされたガラスもしくは伝導性ガラス、ドープされた基材など)から形成され得、この使い捨てサンプル挿入プレートの底部表面の少なくとも一部分に、磁性材料が形成される。種々の実施形態において、ステンレス鋼の使い捨てサンプル挿入プレートは、磁性の400系統のステンレス鋼から作製され得る。
【0006】
このサンプル挿入プレートは、周囲構成を備え、この構成は、このサンプル挿入プレートが、サンプルプレート支持構造体内に適切に位置決めされ、そして平坦に保持されることを保証する。このように構成されたサンプル挿入プレートによって、サンプルが得られる源を正しく同定されながら、そのサンプルが連続して分析され得ることが保証される。このことは、次に、サンプル分析を、そのサンプルの供給源(例えば、特定のヒト患者)と一致させることを可能にする。このサンプルプレートはまた、特定の表面構成または表面化学を備え得、これは、複数のサンプルをこのサンプルプレート上に堆積させた後に、個々のサンプルを適切に位置決めし、そして単離し、一方で、サンプルの混合を回避するために働く。種々の実施形態において、サンプルを単離するために、くぼみまたはマーキングが、このサンプル挿入プレート上に作製され得る。あるいは、このサンプルプレートは、疎水性材料(例えば、パラフィン、脂質、蝋、シリコンオイルなど)でコーティングされ得、この疎水性材料は、米国特許出願番号10/277,088(同一人に譲渡され、その開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、水性サンプルが、サンプル領域から移動することを防止する。サンプルプレート上のサンプルを単離するための他の任意の公知の技術が、使用され得る。
【0007】
このサンプルプレート支持構造体は、凹部を備えるホルダまたは保持プレートを備える。この凹部は、サンプル挿入プレートの独特の配向を提供し、この凹部の4つの辺のうちの2つに対して、正確な位置を有する。この凹部の上表面は、挿入されるサンプルプレートのための接触表面を提供し、そしてサンプル挿入プレートがこの凹部に挿入される場合に、このサンプル挿入プレートの平坦かつ一定の高さを提供するために構成される。この開口凹部の周囲は、サンプル挿入プレートを1つのみの配向で受容するために構成され、その結果、分析されているサンプルの順序が常に決定され、そして所望であれば、所定のサンプルが、ただしく再分析され得る。この構成により、分析されているサンプルは、常に、そのサンプルの正しい供給源に一致し得る。この保持プレートは、当業者によって周知であるように、MALDI MSプレート装填機構を介しての、この保持プレートとサンプル挿入プレートとの、質量分析計内での輸送および位置合わせ整列を可能にする、一連の穴を備え得る。
【0008】
種々の実施形態において、凹部の深さと、サンプル挿入プレートの厚さとの組み合わせは、このサンプル挿入プレートの面と保持プレート構造体の頂部とが互いに同一面になるように合わせられる。この構成の器具調整は、標準的な、再使用可能な平坦なプレートがサンプル分析のために使用される場合に、最も類似している。
【0009】
種々の実施形態において、この保持プレートは、この凹部の周囲に沿った接触表面の下方に機械加工された、谷部を備え得る。このような特徴を組み込むことによって、このサンプル挿入プレートの周囲の周りでのわずかな縁部の不完全性(例えば、ばり)に対する公差が提供される。この不完全性は、公差が提供されない場合、このサンプル挿入プレートを、保持プレート内で傾け、これによって、MALDI MS分析に影響を与える傾向がある。
【0010】
図1を参照すると、サンプルプレート構築物10は、開口凹部12を有する保持プレート11、磁石に引き付けられる材料から作製された底部表面15を有するサンプル挿入プレート14、および磁石16を備える。磁石16は、ばね付勢された保持クリップ17によって、保持プレート11の穴内に保持される。
【0011】
ホルダ11は、穴18を備え、この穴を通して、突出物(例えば、使用者の指)が挿入され、プレート14の底部表面のみとの接触を介して、サンプル挿入プレート14を保持プレート11から取り外し得るか、またはサンプル挿入プレート14を保持プレート11内で精密に位置決めし得る。この様式で、適切な整列および調節が、分析されるべきサンプルに触れることなく達成され得る。ホルダ11はまた、凹部12の周囲全体に沿って、谷部13を備え得る。谷部13は、わずかな不完全性がサンプル挿入プレート14の縁部に存在する場合でさえも、凹部12内でのサンプルプレート14の平坦かつ同一面の位置合わせを保証する。
【0012】
サンプル挿入プレート14は、面取りされた角部19を備え得、この角部は、保持プレート11の面取りされた角部20と整列する。これらの面取りされた角部19および20は、先に議論されたように、正しい順序のサンプルが分析されるために、サンプル挿入プレート14が、適切に位置決めされることを保証する。サンプル挿入プレート上の代表的な数のサンプルスポットは、96、192または384であり得、産業用の標準的なサンプル貯蔵デバイスからのパターンに一致する。
【0013】
種々の実施形態において、サンプル挿入プレート14は、面取りされた角部19によって提供される配向特徴を使用して、分析されるべきサンプルがMALDI機器に入るにつれて液体クロマトグラフィー−MALDI(LC−MALDI)堆積ロボットから堆積される不連続なスポットおよびサンプル軌道の位置および配向を維持し、そして位置合わせを可能にする。
【0014】
種々の実施形態において、このサンプル挿入物は、面取りされた角部19によって提供されるこの配向特徴を使用して、不連続なスポット以外のサンプル(例えば、MALDI機器による分析のためのサンプル(例えば、膜、組織切片)、または質量分析のための生体分子を分離または捕捉するために使用される他の技術)の位置、配向を維持し、そして位置合わせを可能にする。
【0015】
穴21は、精密に、高い公差で、保持プレート11に機械加工され得、当業者に公知であるように、MALDI MS内でのサンプルプレート構築物10の輸送(例えば、グリッパーによる)および位置合わせを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の1つの実施形態の分解図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル支持構造体であって、以下:
サンプル挿入プレートを受容するための形状にされた中央凹部を有する、保持プレート;
サンプル挿入プレートであって、該サンプル挿入プレートは、複数のサンプルを保持するための構成にされた表面、および該中央凹部内に1つのみの配向でフィットするための形状にされた周囲表面を有し、該サンプル挿入プレートは、少なくとも一部分が磁性材料から形成されている底部表面を有する、サンプル挿入プレート;ならびに
該保持プレートにおける穴を通して該保持プレートに取り付けられている磁石、
を備える、構造体。
【請求項2】
前記凹部内に穴を備え、該穴は、該穴内への突出物の挿入を可能にするために十分に大きい、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記保持プレートの内周部が、谷部を備える、請求項1に記載の構造体。
【請求項4】
前記保持プレートの内周部が、谷部を備える、請求項2に記載の構造体。
【請求項5】
前記サンプル挿入プレートの周囲表面が、面取りされた角部を備え、該角部は、前記凹部の面取りされた角部に適合する、請求項1に記載の構造体。
【請求項6】
前記サンプル挿入プレートの周囲表面が、面取りされた角部を備え、該角部は、前記凹部の面取りされた角部に適合する、請求項2に記載の構造体。
【請求項7】
前記サンプル挿入プレートが、MALDI MS分析のためのMALDIサンプルプレートである、請求項1に記載の構造体。
【請求項8】
前記サンプル挿入プレートが、MALDI MS分析のためのMALDIサンプルプレートである、請求項2に記載の構造体。

【図1】
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【公表番号】特表2007−508664(P2007−508664A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534305(P2006−534305)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/032992
【国際公開番号】WO2005/037434
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】