説明

取引処理装置、取引処理プログラム、および取引処理方法

【課題】無線通信機能を有する非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額を精算する利用者に対するサービスの向上を図った取引処理装置を提供する。
【解決手段】取引処理装置1は、非接触式ICカード5が記憶する媒体情報の1つである価値情報で取引金額を精算することをカード処理装置2に指示する。取引処理装置1は、カード処理装置2による非接触式ICカード5が記憶する価値情報での取引金額の精算時に、処理未了が発生すると、非接触式ICカード5が記憶する最新の取引にかかる取引ログを取得する。そして、この最新の取引ログが、今回の取引の取引ログであるかどうかを判定する。今回の取引の取引ログであれば、処理未了が発生したが、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額が精算されていることが確認された取引として処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取引データが入力された取引の取引金額を、無線通信機能を有する非接触媒体が記憶する価値情報で精算する取引処理装置、取引処理プログラム、および取引処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信機能を有する非接触式ICカードには、電子マネーとして利用できる価値情報を記憶したものがある。この非接触式ICカードが利用できる店舗では、取引データを入力する取引処理装置と、非接触式ICカードと無線通信を行うカード処理装置と、をデータ通信ラインで接続している。オペレータは、取引処理装置で取引データを入力する。取引処理装置は、取引金額を非接触式ICカードで精算する選択入力が行われると、カード処理装置に対して取引金額の精算を指示する。カード処理装置は、この指示にしたがって、無線通信エリア内に位置する非接触式ICカードと無線通信を行い、当該非接触式ICカードが記憶する価値情報で取引金額を精算する。このとき、非接触式ICカードは、記憶している価値情報の残高や、今回の取引にかかる取引ログの記憶等にかかるカード情報の更新を行い、更新完了をカード処理装置に通知する。カード処理装置は、非接触式ICカードに対する取引金額の精算が完了すると(非接触式ICカードから更新完了通知を受信すると)、その旨を取引処理装置に通知する。取引処理装置は、カード処理装置から精算完了が通知されると、取引内容を印字した取引伝票等を発行する。
【0003】
周知のように、カード処理装置は、非接触式ICカードとの無線通信エリアをアンテナから数cmの範囲に限ることで、利用者と、その利用者が所持する非接触式ICカードとの対応づけを正確に行っている。このため、非接触式ICカードとの無線通信開始後に、この非接触式ICカードから更新完了の通知を受信する前に、この非接触式ICカードが無線通信エリア外に移動されて、無線通信が途絶え、取引金額の精算が適正に行えないことがある。この場合、非接触式ICカードは、カード情報を更新していることもあれば、更新していないこともある。このような事態(以下、処理未了と言う。)が生じたときには、店舗では、取引金額を一旦現金で精算してもらい、サービスカウンタ等で非接触式ICカードが記憶する取引ログを確認し、取引金額が引き去られていれば(カード情報が更新されていれば)、利用者に取引金額を返金している。
【0004】
なお、店舗では、非接触式ICカードが記憶する価値情報で精算された取引金額を、この非接触式ICカードの発行を管理しているカード会社に対して請求する。カード会社は、店舗からの請求に基づいて、当該店舗への取引金額を入金を行う。このため、店舗では、処理未了が発生したが、非接触式ICカード5で取引金額を精算した取引を管理する必要がある。
【0005】
また、自動改札機でも、非接触式ICカードとの無線通信開始後に、この非接触式ICカードから更新完了通知を受信する前に、この非接触式ICカードが無線通信エリア外に移動されて、無線通信が途絶え、入出場処理が適正に完了されない、処理未了が生じることがある。特許文献1、2では、非接触式ICカードがアンテナに翳されたときに、この非接触式ICカードのID等に基づいて、入出場処理が適正に完了されなかった非接触式ICカードであるかどうかを判定し、この判定結果に応じて非接触式ICカードに対する処理を切り換えている。
【特許文献1】特開2001−283265号公報
【特許文献2】特開2001−325622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、店舗では、処理未了が発生した場合、利用者をサービスカウンタ等に行かせることになり、利用者に対するサービスがよくない。また、上記特許文献1、2に記載されている構成では、非接触式ICカードがアンテナに翳される毎に、処理未了が発生した非接触式ICカードであるかどうかを確認することから、非接触式ICカードに対する処理時間が長くなる。このため、店舗等では、この処理時間の増加が、レジの混雑を招くことになり、利用者に対するサービスを低下させてしまう。
【0007】
この発明の目的は、無線通信機能を有する非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額を精算する利用者に対するサービスの向上を図った取引処理装置、取引処理プログラム、および取引処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる取引処理装置は、上記課題を解決するために以下のように構成されている。
【0009】
取引処理装置は、非接触媒体と無線通信を行う媒体処理装置がデータ通信可能に接続されている。精算指示手段が、取引データが入力された取引について、取引金額を非接触媒体が記憶する媒体情報の1つである価値情報で精算することを、前記媒体処理装置に指示する。前記精算指示手段が精算することを指示した取引金額が、今回の取引で使用された非接触媒体が記憶する価値情報で精算されたかどうかが不明である精算不明状態になった場合に、取引ログ取得手段が、この非接触媒体が記憶する最新の取引にかかる取引ログを前記媒体処理装置を介して取得する。判定手段が、前記取引ログ取得手段が取得した最新の取引ログが、前記精算指示手段が今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであるかどうかを判定する。処理手段は、前記判定手段が今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであると判定した場合に、今回の取引を前記精算不明状態になったが、非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額が精算されていることが確認された、精算完了確認済取引として処理する。
【0010】
これにより、非接触媒体から更新完了の通知を受信する前に、この非接触媒体が無線通信エリア外に移動されて、無線通信が途絶え、取引金額が精算されたかどうかが不明な精算不明状態になっても(所謂、処理未了が発生した場合であっても)、再度、利用者が、非接触媒体を無線通信エリア内に位置させることで、取引金額が精算されているかどうかの確認を行わせ、取引を処理させることができる。これにより、無線通信機能を有する非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額を精算する利用者に対するサービスの向上が図れる。
【0011】
また、処理手段が処理した取引について、その取引の取引内容を印字した顧客用取引伝票を発行する取引伝票発行手段を備え、この取引伝票発行手段が、前記処理手段が処理した取引が前記精算完了確認済取引であった場合に、その取引の取引内容とともに、前記精算完了確認済取引である旨を印字した管理用取引伝票を追加発行する構成を設ければ、店舗側で精算完了確認済取引の管理も行える。
【0012】
また、精算指示手段を、前記判定手段において、今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログでないと判定した場合に、非接触媒体が記憶する価値情報での取引金額の精算を前記媒体処理装置に再度指示する構成とすれば、現金を用いることなく、非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額を精算することができる。
【0013】
また、前記処理手段が前記精算完了確認済取引として処理した取引の取引データを集計する集計手段を設ければ、精算完了確認済取引の集計が人手をかけずに、簡単に行える。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、無線通信機能を有する非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額を精算する利用者に対するサービスの向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態である取引処理装置について説明する。
【0016】
図1は、この発明の実施形態である取引処理装置を適用した取引処理システムの概略の構成を示す図である。この取引処理システムは、取引処理装置1と、カード処理装置2と、管理サーバ3と、を備えている。また、図1中に示す5は、電子マネーとして利用できる価値情報を記憶した非接触式ICカードである。図1に示すように、複数の取引処理装置1が、管理サーバ3にデータ通信可能に接続されている。各取引処理装置1には、カード処理装置2がデータ通信可能に接続されている。取引処理装置1、およびカード処理装置2は、店舗のレジに設置され、管理サーバ3は、センタに設置される。
【0017】
取引処理装置1は、所謂POS端末であり、商品の登録を受け付け(取引データの入力を受け付け)、登録された商品について取引を処理する。取引処理装置1は、入力された取引データの取引について、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額を精算する場合、非接触式ICカード5による取引金額の精算を、接続されているカード処理装置2に指示する。カード処理装置2は、取引処理装置1から取引金額の精算にかかる指示があると、無線通信エリア内に位置する非接触式ICカード5と無線通信を行い、この非接触式ICカード5が記憶するカード情報の1つである価値情報により、取引金額を精算する。この価値情報は、所謂電子マネーにかかる情報である。また、カード処理装置2は、非接触ICカード5に対する取引金額の精算にかかる処理が完了すると、その旨を取引処理装置1に通知する。取引処理装置1は、取引金額の精算が完了した取引について、取引内容を印字した取引伝票の発行等を行うとともに、取引を処理する。取引処理装置1は、処理した取引毎に取引データを記憶し、適当なタイミングで、記憶している取引データを管理サーバ3に送信する。管理サーバ3は、各取引処理装置1から送信されてきた取引データを記憶し、管理する。
【0018】
図2は、取引処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。取引処理装置1は、制御部10と、入力部11と、表示部12と、印字部13と、記憶部14と、第1の通信部15と、第2の通信部16と、を備えている。制御部10は、本体各部の動作を統括的に制御する。制御部10は、後述する処理を行うプログラムに基づいて本体各部を動作させる。入力部11は、オペレータが入力操作を行う操作キーを有している。また、入力部11には、商品に付されているバーコードを読み取るバーコードリーダが接続されている。入力部11は、取引する商品の登録等にかかる取引データの入力を受け付ける。表示部12は、入力部11で入力された取引データに基づく表示等を行う。印字部13は、取引内容を印字した取引伝票や、管理用伝票を発行する。取引伝票は、利用者に渡す伝票であり、管理用伝票は、店舗側での取引の管理に用いる伝票である。記憶部14は、商品毎に価格を対応づけたPLUファイルや、処理した取引にかかる取引データ等を記憶する。第1の通信部15は、カード処理装置2とデータ通信を行うインタフェースである。第2の通信部16は、管理サーバ3とデータ通信を行う。
【0019】
図3は、カード処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。カード処理装置2は、制御部20と、無線通信部21と、通信部22と、を備えている。制御部20は、本体各部の動作を制御する。無線通信部21は、非接触式ICカード5と無線通信を行う。無線通信部21は、アンテナを有し、このアンテナから数cmの範囲が無線通信エリアである。すなわち、アンテナから数cmの無線通信エリア内に位置する非接触式ICカード5と無線通信が行える。言い換えれば、このアンテナに翳された非接触式ICカード5と無線通信が行える。アンテナは、カード処理装置2本体表面に設けられている。通信部22は、取引処理装置1とデータ通信を行うインタフェースである。
【0020】
図4は、管理サーバの主要部の構成を示すブロック図である。管理サーバ3は、制御部30と、通信部31と、記憶部32と、を備えている。制御部30は、本体各部の動作を制御する。通信部31は、接続されている取引処理装置1とデータ通信を行う。記憶部32は、接続されている取引処理装置1から送信されてきた取引データを記憶する。
【0021】
図5は、非接触式ICカードの主要部の構成を示すブロック図である。非接触式ICカード5は、制御部50と、無線通信部51と、記憶部52と、を備えている。制御部50は、非接触式ICカード5本体各部の動作を制御する。無線通信部51は、カード処理装置2と無線通信を行う。記憶部52は、識別コードや取引ログ等のカード情報を記憶する。取引ログには、取引日時、取引した店舗を示す店舗コード、取引金額、取引後の価値情報の残高等が含まれている(図6参照)。
【0022】
図7は、取引処理装置の取引処理にかかる動作を示すフローチャートである。取引処理装置1は、入力部11において、取引する商品の登録を受け付ける(s1)。商品の登録は、入力部11が有する操作キーの操作や、入力部11に接続されたバーコードリーダによるバーコードの読み取りにより行える。取引処理装置1は、取引する商品の登録が完了すると(s2)、取引金額の精算を現金で行うか、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で行うかの選択を受け付ける(s3)。取引処理装置1は、現金での精算が選択されると、オペレータが顧客から受け取った現金で取引金額を精算する現金精算処理を行う(s4、s5)。このとき、オペレータは、顧客から受け取った現金の金額を取引処理装置1に入力する。取引処理装置1は、入力された金額に基づいて、釣り銭を算出し、表示部13に表示する。取引処理装置1は、現金による精算が完了すると、印字部14において今回の取引の内容を印字した取引伝票を発行するとともに、今回の取引にかかる取引データを記憶部14に記憶し(s6、s7)、本処理を終了する。一方、取引処理装置1は、非接触式ICカード5が記憶する価値情報での精算が選択されると、取引金額を非接触式ICカード5が記憶する価値情報で精算する電子マネー精算処理を実行する(s8)。
【0023】
図8は、この電子マネー精算処理を示すフローチャートである。また、図9は、カード処理装置の動作を示すフローチャートである。取引処理装置1は、第1の通信部15において、接続されているカード処理装置に対して非接触式ICカード5が記憶する価値情報による取引金額の精算を指示する(s21)。この指示には、非接触式ICカード5に記憶させる取引ログに必要なデータ(取引金額や店舗コード等)が含まれている。このとき、オペレータは、利用者に対して取引金額の精算に使用する非接触式ICカード5をカード処理装置2のアンテナに翳すことを指示する。また、表示部13においても、同様の指示が表示される。
【0024】
カード処理装置2は、取引処理装置1から非接触式ICカード5が記憶する価値情報による取引金額の精算が指示されると(s41)、無線通信部21の無線通信エリア内に位置する非接触式ICカード5との無線通信を開始し、非接触式ICカード5の識別コードと記憶している価値情報の残高と、を取得する(s42)。具体的に言うと、カード処理装置2は、無線通信エリア内に位置する非接触式ICカード5に対して、識別コードと記憶している価値情報の残高の送信を要求するコマンドを、非接触式ICカード5からの応答があるまで、一定時間毎に送信する。利用者が、非接触式ICカード5を無線通信部21のアンテナに翳すと、この非接触式ICカード5がカード処理装置2からの上記コマンドを受信し、識別コードと価値情報の残高を送信する。また、カード処理装置2は、取引処理装置1からの精算指示に含まれていた取引金額等を制御部20に設けられているメモリ(不図示)に一時的に記憶する。
【0025】
カード処理装置2は、非接触式ICカード5から価値情報の残高を取得すると、今回取得した価値情報の残高が、取引処理装置1から通知された取引金額以上であるかどうかを判定する(s43)。カード処理装置2は、非接触式ICカード5から取得した識別コード、および価値情報の残高を制御部20に設けられているメモリに一時的に記憶する。カード処理装置2は、s43で非接触式ICカード5が記憶している価値情報の残高が取引金額未満であると判定すると、取引処理装置1に対して残高不足を通知し(s44)、本処理を終了する。カード処理装置2は、このとき、非接触式ICカード5が記憶する価値情報の残高を取引処理装置1に通知している。
【0026】
取引処理装置1は、カード処理装置2から残高不足が通知されると(s22)、非接触式ICカード5が記憶する価値情報の残高や、不足金額等を表示部12に表示し(s23)、この電子マネー精算処理を終了する。取引処理装置1は、残高不足により非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額が精算できなかったときには(s9)、上述したs5以降の処理を行う。すなわち、取引金額を現金で精算し、取引を処理する。
【0027】
また、カード処理装置2は、s43で非接触式ICカード5が記憶している価値情報の残高が取引金額以上であると判定すると、非接触式ICカード5に対して、今回の取引にかかる取引ログの記憶や、価値情報の残高更新等のカード情報の更新を指示する(s45)。カード処理装置2は、このカード情報の更新指示を行うと、非接触ICカード5から更新完了の通知を受信するか、この非接触式ICカード5との無線通信が途絶えるのを待つ(s46、s47)。カード処理装置2は、s45でカード情報の更新指示を行ってから、予め定められた時間(例えば、1s)経過しても、非接触ICカード5から更新完了の通知を受信しなければ、この非接触式ICカード5との無線通信が途絶えたと判断する。カード処理装置2は、非接触式ICカード5から更新完了の通知を受信すると、取引処理装置1に異常が生じることなく精算が完了した旨を通知し(s48)、本処理を終了する。
【0028】
取引処理装置1は、カード処理装置2から異常が生じることなく精算が完了した旨の通知を受信すると(s24)、非接触カード5が記憶する価値情報による取引金額の精算が正常終了したと判断し(s25)、この電子マネー精算処理を終了する。取引処理装置1は、非接触カード5が記憶する価値情報による取引金額の精算が正常終了したと判断した取引であれば(s10)、上述したs6以降の処理を行う。このとき、印字部14が取引金額を非接触式ICカード5で精算した取引であることを取引伝票に印字するとともに、記憶部15が非接触式ICカード5で取引金額を精算した取引として取引内容を記憶する。
【0029】
また、カード処理装置2は、s47で非接触式ICカード5との無線通信が途絶えたと判定すると、非接触式ICカード5に対するカード情報の更新が適正に行えなかったことを通知する処理未了を取引処理装置1に通知する(s49)。この処理未了には、非接触式ICカード5から既に得ている、識別コード、および精算前の価値情報の残高等が含まれている。このとき、非接触式ICカード5のカード情報は、更新されていることもあれば、更新されていないこともある。カード情報が更新されていれば、今回の取引にかかる取引金額は、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で精算されており、反対にカード情報が更新されていなければ、今回の取引にかかる取引金額は、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で精算されていない。すなわち、この時点では、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額が精算されているかどうかが不明である精算不明状態になっている。
【0030】
取引処理装置1は、カード処理装置2から処理未了を受信すると(s26)、精算不明状態になったと判断し、カード処理装置2に対して、非接触式ICカード5が記憶する最新の取引ログの取得を要求する(s27)。取引処理装置1は、処理未了に含まれている非接触式ICカード5の識別コードや、精算前の価値情報の残高等を、制御部10に設けられているメモリに一時的に記憶する。また、取引処理装置1は、表示部13において、非接触式ICカード5に対するカード情報の更新が適正に行えなかったことや、非接触式ICカード5を再度アンテナに翳すことを指示する画面を表示する。
【0031】
なお、カード処理装置2は、取引処理装置1に対して処理未了を通知してから、予め定められた時間(例えば、30s)経過するまで、再度非接触式ICカード5が無線通信エリア内に位置されるの待ち、無線通信エリア内に非接触式ICカード5が位置された場合に、先の処理のリカバリを行うリカバリー機能を設けてもよい。この場合、カード処理装置2は、この待ち時間内に、非接触式ICカード5が無線通信エリア内に位置されなかったときに、タイムアウトを取引処理装置1に通知する。また、取引処理装置1は、カード処理装置2からタイムアウトが通知された時点で、精算不明状態になったと判断し、s27以降の処理を行えばよい。このリカバリー機能は、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額が精算されているかどうかを判定し、精算されていれば、取引処理装置1に異常が生じることなく精算が完了した旨を通知し、反対に精算されていなければ、非接触式ICカード5に対して再度カード情報の更新を行い、更新完了後に、取引処理装置1に異常が生じることなく精算が完了した旨を通知する処理とすればよい。
【0032】
カード処理装置2は、取引処理装置1から、非接触式ICカード5が記憶する最新の取引ログの取得が要求されると、無線通信部21の無線通信エリア内に位置する非接触式ICカード5との無線通信を開始し、非接触式ICカード5が記憶している最新の取引ログを取得する(s50、s51)。具体的に言うと、カード処理装置2は、無線通信エリア内に位置する非接触式ICカード5に対して、最新の取引ログの送信を要求するコマンドを、非接触式ICカード5からの応答があるまで、一定時間毎に送信する。利用者が、非接触式ICカード5を無線通信部21のアンテナに翳すと、この非接触式ICカード5がカード処理装置2からの上記コマンドを受信し、最新の取引ログを送信する。カード処理装置2は、s50で取得した最新の取引ログを取引処理装置1に通知し(s52)、本処理を終了する。
【0033】
なお、カード処理装置2は、最新の取引ログだけでなく、他の取引ログも一緒に取得してもよい。また、取得した取引ログを取引処理装置1に全て送信してもよいし、最新の取引ログのみ取引処理装置1に送信してもよい。
【0034】
取引処理装置1は、カード処理装置2から通知された最新の取引ログを用いて、非接触式ICカード5のカード情報が今回の取引によって更新されているかどうかを判定する(s28、s29)。s29にかかる判定は、すでに得ている精算前の価値情報の残高と、最新の取引ログに対応づけられている価値情報の残高と、の差額が、今回の取引金額と一致するかどうかで行ってもよいし、取引日時や取引金額等も含めて総合的に判定してもよい。すなわち、非接触式ICカード5が記憶している最新の取引ログが、今回の取引にかかる取引ログであるかどうかが適正に判定できれば、どのような情報を用いて行ってもよい。取引処理装置1は、s29で非接触式ICカード5のカード情報が今回の取引によって更新されている、すなわち価値情報で取引金額が精算されている、と判定すると、処理未了が発生したが取引金額については価値情報で精算された取引であると判断し(s30)、この電子マネー精算処理を終了する。反対に、s29で非接触式ICカード5のカード情報が今回の取引によって更新されていない、すなわち価値情報で取引金額が精算されている、と判定すると、処理未了が発生し、取引金額が価値情報で精算されなかった取引であると判断し(s31)、この電子マネー精算処理を終了する。
【0035】
取引処理装置1は、処理未了が発生したが、取引金額が価値情報で精算されている取引であれば(s11)、印字部14において今回の取引の内容を印字した取引伝票を発行する(s12)。また、処理未了が発生したが、取引金額が価値情報で精算されている取引である旨を印字した管理用取引伝票も発行する(s13)。s13で発行する管理用取引伝票は、処理未了が発生したが、取引金額が価値情報で精算されている取引を店舗側で管理するための伝票として利用される。さらに、今回の取引にかかる取引データを記憶部14に記憶し(s14)、本処理を終了する。また、取引処理装置1は、処理未了が発生し、取引金額が価値情報で精算されていない取引であれば(s11でNの場合)、s8に戻って、上述した電子マネー精算処理を再度実行する。
【0036】
このように、非接触式ICカード5が記憶する価値情報による取引金額の精算途中に、非接触式ICカード5との無線通信が途絶え、処理未了が発生した場合であっても、再度、非接触式ICカード5を無線通信エリア内に位置させることで、取引金額が精算されているかどうかの確認が行える。また、処理未了が発生した場合のみ、s26以降の処理を行うので、非接触式ICカード5が記憶する価値情報による取引金額の精算処理に要する時間の増加も抑えられる。また、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額が精算されていないと確認された場合には、電子マネー精算処理を再実行するので、利用者は、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額を精算することができる。
【0037】
また、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額を精算した取引について、処理未了が発生しなかった取引と、処理未了が発生した取引と、を区別して管理することができる。店舗では、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で精算された取引金額を、この非接触式ICカード5の発行を管理しているカード会社に対して請求する。カード会社は、店舗からの請求に基づいて、当該店舗への取引金額を入金を行う。このため、店舗では、処理未了が発生したが、非接触式ICカード5で取引金額を精算した取引を管理する必要がある。上述したように、処理未了が発生したが、非接触式ICカード5で取引金額を精算した取引については、管理用取引伝票も発行されるので、処理未了が発生したが、非接触式ICカード5で取引金額を精算した取引の管理が一層簡単に行える。また、この管理用取引伝票を用いて、カード会社に対する取引金額の請求や、カード会社から入金された取引金額との突き合わせ等が容易に行え、店舗における事務処理にかかる手間を低減することができる。
【0038】
また、記憶部14に記憶している取引データについて、処理未了が発生した取引の取引データを集計する機能を取引処理装置1に設ければ、上述した処理未了が発生したが、非接触式ICカード5で取引金額を精算した取引の管理が一層容易に行え、店舗における事務処理にかかる手間を一層低減することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、処理未了が発生し、非接触式ICカード5が記憶する価値情報で取引金額が精算されていないと確認された場合には、電子マネー精算処理を再実行するとしたが、取引金額を現金で精算するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施形態である取引処理装置を適用した取引処理システムの概略の構成を示す図である。
【図2】取引処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図3】カード処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】管理サーバの主要部の構成を示すブロック図である。
【図5】非接触式ICカードの主要部の構成を示すブロック図である。
【図6】非接触式ICカードが記憶する取引ログを示す図である。
【図7】取引処理装置の取引処理にかかる動作を示すフローチャートである。
【図8】取引処理装置の電子マネー精算処理を示すフローチャートである。
【図9】カード処理装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1−取引処理装置
2−カード処理装置
5−非接触式ICカード
10−制御部
11−入力部
12−表示部
13−印字部
14−記憶部
15−第1の通信部
16−第2の通信部
20−制御部
21−無線通信部
22−通信部
50−制御部
51−無線通信部
52−記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を有する非接触媒体と無線通信を行って、当該非接触媒体が記憶する媒体情報の読取や更新を行う媒体処理装置がデータ通信可能に接続される取引処理装置において、
取引データが入力された取引について、取引金額を非接触媒体が記憶する媒体情報の1つである価値情報で精算することを、前記媒体処理装置に指示する精算指示手段と、
前記精算指示手段が精算することを指示した取引金額が、今回の取引で使用された非接触媒体が記憶する価値情報で精算されたかどうかが不明である精算不明状態になった場合に、この非接触媒体が記憶する最新の取引にかかる取引ログを前記媒体処理装置を介して取得する取引ログ取得手段と、
前記取引ログ取得手段が取得した最新の取引ログが、前記精算指示手段が今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであるかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段が、前記精算指示手段が今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであると判定した場合に、今回の取引を前記精算不明状態になったが、非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額が精算されていることが確認された、精算完了確認済取引として処理する処理手段と、を備えた取引処理装置。
【請求項2】
前記処理手段が処理した取引について、その取引の取引内容を印字した顧客用取引伝票を発行する取引伝票発行手段を備え、
前記取引伝票発行手段は、前記処理手段が処理した取引が前記精算完了確認済取引であった場合に、その取引の取引内容とともに、前記精算完了確認済取引である旨を印字した管理用取引伝票を追加発行する手段である、請求項1に記載の取引処理装置。
【請求項3】
前記取引ログには、取引後における、当該非接触媒体が記憶する価値情報の残高が含まれており、
前記判定手段は、前記取引ログ取得手段が取得した最新の取引ログが、前記精算手段が今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであるかどうかを、この取引ログに含まれている価値情報の残高に基づいて判定する手段である、請求項1または2に記載の取引処理装置。
【請求項4】
前記精算指示手段は、前記判定手段において、今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログでないと判定した場合に、非接触媒体が記憶する価値情報での取引金額の精算を前記媒体処理装置に再度指示する手段である、請求項1〜3のいずれかに記載の取引処理装置。
【請求項5】
前記処理手段が前記精算完了確認済取引として処理した取引の取引データを集計する集計手段を備えた、請求項1〜5のいずれかに記載の取引処理装置。
【請求項6】
無線通信機能を有する非接触媒体と無線通信を行って、当該非接触媒体が記憶する媒体情報の読取や更新を行う媒体処理装置がデータ通信可能に接続される取引処理装置の制御部を、
取引データが入力された取引について、取引金額を非接触媒体が記憶する媒体情報の1つである価値情報で精算することを、前記媒体処理装置に指示する精算指示手段と、
前記精算指示手段が精算することを指示した取引金額が、今回の取引で使用された非接触媒体が記憶する価値情報で精算されたかどうかが不明である精算不明状態になった場合に、この非接触媒体が記憶する最新の取引にかかる取引ログを前記媒体処理装置を介して取得する取引ログ取得手段と、
前記取引ログ取得手段が取得した最新の取引ログが、前記精算指示手段が今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであるかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段が、前記精算指示手段が今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであると判定した場合に、今回の取引を前記精算不明状態になったが、非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額が精算されていることが確認された、精算完了確認済取引として処理する処理手段と、して機能させるための取引処理プログラム。
【請求項7】
無線通信機能を有する非接触媒体と無線通信を行って、当該非接触媒体が記憶する媒体情報の読取や更新を行う媒体処理装置がデータ通信可能に接続される取引処理装置の制御部に、
取引データが入力された取引について、取引金額を非接触媒体が記憶する媒体情報の1つである価値情報で精算することを、前記媒体処理装置に指示する精算指示ステップと、
前記精算指示ステップが精算することを指示した取引金額が、今回の取引で使用された非接触媒体が記憶する価値情報で精算されたかどうかが不明である精算不明状態になった場合に、この非接触媒体が記憶する最新の取引にかかる取引ログを前記媒体処理装置を介して取得する取引ログ取得ステップと、
前記取引ログ取得ステップが取得した最新の取引ログが、前記精算指示ステップが今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであるかどうかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップが、前記精算指示ステップが今回取引金額の精算を指示した取引の取引ログであると判定した場合に、今回の取引を前記精算不明状態になったが、非接触媒体が記憶する価値情報で取引金額が精算されていることが確認された、精算完了確認済取引として処理する取引処理ステップと、を実行させる取引処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−176410(P2008−176410A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7346(P2007−7346)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】