説明

受信機

【課題】 データの伝送速度が低下することなく、かつ伝送媒体の長さに拘わりなく正確にシリアルデータを復調することができる受信機を提供する。
【解決手段】 分周部32は、同期用クロック信号26を生成して送信機21に与える。送信機21のシリアルデータ生成部25は、同期用クロック信号26に同期して、シリアルデータ24およびストローブ信号27を送信する。復調用クロック信号生成部33は、ストローブ信号27に基づいてシリアルデータ24の伝送の開始を検出すると、同期用クロック信号26と同じ信号波形を有し、かつシリアルデータ24の各ビットのデータの周期内の予め定めるタイミングで立上り、シリアルデータ24の各ビットのデータを読込むタイミングを表す復調用クロック信号36を生成する。データ復調部34は、復調用クロック信号36に同期してシリアルデータ24を1ビットずつ順次読込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック同期式のシリアルデータ通信において送信機から送信されるシリアルデータを受信する受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
装置間においてデータを送受信する方式としてシリアル通信方式があり、送信されるシリアルデータをクロック信号に再生するクロック信号再生装置がある(たとえば特許文献1参照)。たとえば従来の技術では、産業用および民生用の電子機器において、複数のコンピュータ間でシリアル通信方式を用いてデータを伝送している。またメカトロニクス関連機器において、コントローラと機構部との間でシリアル通信方式を用いてセンサ信号および動作指令信号を伝送している。
【0003】
図3は、送信機1と受信機2との電気的構成を示すブロック図である。送信機1と受信機2とは、電線などの電気信号を伝送する伝送媒体によって接続され、この伝送媒体を介してクロック同期式のシリアル通信を行う。
【0004】
送信機1は、パラレルデータから構成されるデジタルデータ3を、シリアルデータ4に変換するシリアルデータ生成部5によって実現される。デジタルデータ3は、マイクロコンピュータなどによって実現されるデジタルデータ生成部から与えられる。シリアルデータ生成部5は、受信機2から与えられる同期用のクロック信号(以下、同期用クロック信号という)6に同期して、ストローブ信号7および変換したシリアルデータ4を受信機2に与える。
【0005】
受信機2は、クロック生成部8と、データ復調部9とを含んで構成される。クロック生成部8は、一定の周波数で高電圧のハイレベルHと低電圧のローレベルLとを繰返すクロック信号を生成し、生成したクロック信号を同期用クロック信号6としてシリアルデータ生成部5に与えるとともに、生成したクロック信号を復調用のクロック信号(以下、復調用クロック信号という)10としてデータ復調部9に与える。同期用クロック信号6と復調用クロック信号10とは、クロック生成部8によって生成されるクロック信号を分岐して生成されるので、同一の位相を有する。
【0006】
データ復調部9は、シリアルデータ4の伝送が開始することを表すストローブ信号7を受信すると、復調用クロック信号10に同期してシリアルデータ4を1ビットずつ読込む。
【0007】
図4は、送信機1または受信機2が送受信するデータのタイミングチャートである。図4において横軸は、時間を表す。図4において、同期用クロック信号6は、シリアルデータ生成部5が受信した信号波形を表し、復調用クロック信号10、ストローブ信号7、およびシリアルデータ4は、データ復調部9が受信した信号波形を表す。
【0008】
同期用クロック信号6は、伝送媒体を伝送することによって位相に遅延が生じるので、シリアルデータ生成部5が受信する同期用クロック信号6と、データ復調部9が受信する復調用クロック信号10とには、位相差が生じる。図4では、伝送媒体の距離が短いと仮定して、この位相差を無視している。また同様にシリアルデータ生成部5が送信するストローブ信号7およびシリアルデータ4と、データ復調部9が受信するストローブ信号7およびシリアルデータ4とには、各データが伝送媒体を伝送することによって位相差が生じるが、図4ではこの位相差を無視している。
【0009】
ストローブ信号7は、ハイレベルHのときにシリアルデータ4を伝送していないことを表し、ローレベルLのときにシリアルデータ4を伝送していることを表す。つまり、ストローブ信号7がハイレベルHからローレベルLに立下がると、シリアルデータ4の伝送が開始することを表し、ローレベルLからハイレベルHに立上ると、シリアルデータ4の伝送が終了することを表す。シリアルデータ生成部5は、シリアルデータ4の伝送に応じて、同期用クロック信号6の立下りに同期してストローブ信号7をハイレベルHからローレベルLまたはローレベルLからハイレベルHに切換える。またシリアルデータ生成部5は、同期用クロック信号6の立下りに同期してシリアルデータ4を構成する各ビットのデータを生成して出力する。したがってシリアルデータ4を構成する各ビットのデータの周期Tは、同期用クロック信号6および復調用クロック信号10の周期T(以下、基本周期Tという)と同じである。図4では、シリアルデータ生成部5が、データ(0)からデータ(N)(記号「N」は、自然数を表す)までのN+1ビットのシリアルデータ4を伝送するときのシリアルデータ4を示す。前述したようにシリアルデータ4は、伝送媒体を伝送することによって位相に遅延が生じるが、この遅延を無視するので復調用クロック信号10の立下りにおいてシリアルデータ4を構成する各データが順次切換わる。
【0010】
時刻t1において復調用クロック信号10がハイレベルHからローレベルLに切換わるときに、これに同期してストローブ信号7がハイレベルHからローレベルLに切換わり、シリアルデータ4の伝送が開始する。データ復調部9は、ストローブ信号7の立下りを検出しすることによって、シリアルデータ4の伝送が開始することを検知する。
【0011】
時刻t1から基本周期Tの半周期(T/2)後の時刻t2において復調用クロック信号10がローレベルLからハイレベルHに切換わる。データ復調部9は、ストローブ信号7がローレベルL、すなわちシリアルデータ4が伝送されている状態において復調用クロック信号10の立上りを検出するとシリアルデータ4を読込むので、この時刻t2においてシリアルデータ4を構成するデータ(0)がハイレベルHかローレベルLかを読込む。
【0012】
次に時刻t3の復調用クロック信号10の立下りにおいて、ストローブ信号7がローレベルLを維持しているので、さらにシリアルデータ4が伝送されることを検出するとともに、シリアルデータ4を構成するデータが、データ(0)からデータ(1)に切換わる。以下同様に、データ復調部9は、復調用クロック信号10の立上りに同期してシリアルデータ4を読込むことによって、シリアルデータ4を1ビットずつ順次読込む。
【0013】
時刻tXにおいてストローブ信号7がローレベルLからハイレベルHに切換わると、データ復調部9は、シリアルデータ4の伝送が終了することを検出して、シリアルデータ4の読込みを終了する。
【0014】
以上説明したようにデータ復調部9は、復調用クロック信号10の立上りに同期してシリアルデータ4を読込むことによって、シリアルデータ4を送信機1に同期して読込むことができる。このようにして送信機1から受信機2にシリアルデータ4が送信される。
【0015】
また同期用クロック信号6を用いずに、送信機1と受信機2との間のデータの送受信を同期して実行するために、送信すべきデジタルデータ3に、同期をとるためのデータを付加したシリアルデータを送信する方法もある。たとえばイーサネット(登録商標)のプロトコルでは、MACフレームの先頭にプリアンブルとSFD(Start of Frame Delimiter)とを設けて送信機と受信機との同期をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−44063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図4に示すタイミングチャートでは、送信機1と受信機2との間の伝送媒体の長さが短く、伝送媒体を伝送することによって生じる位相の遅延を小さいとして無視しているが、伝送媒体の長さが長くなるほど位相の遅延が大きくなり、位相の遅延を無視することができなくなる。
【0018】
シリアルデータ生成部5が受信する同期用クロック信号6の位相は、伝送媒体を伝送するので、データ復調部9が受信する復調用クロック信号10の位相に対して遅れが生じる。シリアルデータ生成部5が送信するストローブ信号7およびシリアルデータ4は、この位相遅延が生じた同期用クロック信号6に同期して生成されるので、同期用クロック信号6と同様に復調用クロック信号10の位相に対して遅れが生じる。データ復調部9が受信するストローブ信号7およびシリアルデータ4は、伝送媒体を伝送することによって復調用クロック信号10の位相に対してさらに位相遅延が生じる。すなわちデータ復調部9が受信するストローブ信号7およびシリアルデータ4は、データ復調部9が受信する復調用クロック信号10の位相に対して伝送媒体を往復する場合に相当する位相遅延が生じる。たとえば2Mhzのクロック信号が、光速で伝送媒体を伝送する場合、75メートルで半周期の位相遅延が発生する。電線から成る伝送媒体を伝送する場合には、75メートルよりも短い距離で半周期の位相遅延が生じる。データ復調部9は、伝送媒体の長さ、すなわち位相遅延に無関係に復調用クロック信号10に同期してシリアルデータ4を読込むので、位相遅延が大きくなるとシリアルデータを正確にデジタルデータ3に復調することができない場合がある。
【0019】
図5は、一例として復調用クロック信号10の位相に対して同期用クロック信号6の位相に4分の1周期(T/4)の遅延が生じた場合の送信機1または受信機2が受信するデータのタイミングチャートである。ストローブ信号7およびシリアルデータ4は、復調用クロック信号10に対して4分の1周期(T/4)位相の遅れた同期用クロック信号6に同期して送信される。したがってデータ復調部9が受信するストローブ信号7およびシリアルデータ4は、伝送媒体を伝送することによって復調用クロック信号10に対して半周期(T/2)の位相遅延が生じる。
【0020】
時刻t1において復調用クロック信号10が立下がるとともに、受信機2から送信される同期用クロック信号6も立下がる。シリアルデータ生成部5は、同期用クロック信号6に位相遅延が生じるので、この同期用クロック信号6の立下りを時刻t1から4分の1周期(T/4)後の時刻t2において受信する。シリアルデータ生成部5は、時刻t2において同期用クロック信号6の立下りに同期してストローブ信号7をハイレベルHからローレベルLに切換えるとともに、シリアルデータ4の伝送を開始する。データ復調部9は、ストローブ信号7の立下りおよびシリアルデータ4の伝送の開始を、時刻t2から4分の1周期(T/4)後の時刻t3において受信する。この時刻t3において復調用クロック信号10が立上る。
【0021】
データ復調部9は、復調用クロック信号10の立上りと、シリアルデータ4の伝送の開始とを時刻t3において同時に受信するので、以後復調用クロック信号10の立上りと、シリアルデータ4を構成する各ビットのデータの切換わりとを同時に受信する。すなわちデータ復調部9は、時刻t3から基本周期T後の時刻t4において復調用クロック信号10の立上りを受信すると同時に、データ(0)から切換わるデータ(1)を受信する。さらにデータ復調部9は、時刻t4から基本周期T後の時刻t5において復調用クロック信号10の立上りを受信すると同時に、データ(1)から切換わるデータ(2)を受信する。前述したように、データ復調部9は、ストローブ信号7がローレベルLにおいて復調用クロック信号10の立上りに同期してシリアルデータ4を読込ので、シリアルデータ4を構成する各ビットのデータが切換わるときにシリアルデータ4を読込むことになる。シリアルデータ4がローレベルLからハイレベルHまたはハイレベルHからローレベルLに切換わる場合には、シリアルデータ4がローレベルLからハイレベルHまたはハイレベルHからローレベルLに切換わってから安定するまでに所定の時間を要するので、シリアルデータ4を構成する各ビットのデータが切換わる時刻では、シリアルデータ4は、ハイレベルHかローレベルLかのいずれか一方に安定していない。このようにデータ復調部9は、シリアルデータ4がローレベルLかハイレベルHかの不安定な状況の時刻においてシリアルデータ4を読込むので、データ復調部9は、正確にシリアルデータ4を読込むことができず、シリアルデータ4をパラレルデータから成るデジタルデータ3に正確に復調することができない。
【0022】
このような位相遅延を補償するために、伝送媒体の長さに基づいて位相遅延を逆算して、復調用クロック信号10に対してシリアルデータ4を読込むタイミングを調整することが考えられる。この場合は、伝送媒体の長さに応じてシリアルデータ4を読込むタイミングを調整する必要が生じ、受信機2の汎用性が低くなる。
【0023】
また同期用クロック信号6を用いずに、送信機と受信機との間のデータの送受信を同期して実行するために、送信すべきデジタルデータに、同期をとるためのデータを付加したシリアルデータを送信する場合には、デジタルデータに同期用のデータを付加するので、冗長度が増大して伝送速度が低下するという問題が生じる。
【0024】
したがって本発明の目的は、データの伝送速度が低下することなく、かつ伝送媒体の長さに拘わりなく正確にシリアルデータを復調することができる受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、受信する同期用のクロック信号に同期してシリアルデータおよびこのシリアルデータを伝送するタイミングを表すストローブ信号を送信する送信機に対して送信する前記同期用のクロック信号を生成する同期用クロック信号生成手段と、
前記送信機から送信されるストローブ信号に基づいてシリアルデータの伝送の開始を検出すると、前記同期用のクロック信号と同じ信号波形を有し、かつ前記送信機から送信されるシリアルデータの各ビットのデータの周期内の予め定めるタイミングで立上りまたは立下り、前記送信機から送信されるシリアルデータの各ビットのデータを読込むタイミングを表す復調用のクロック信号を生成する復調用クロック信号生成手段と、
復調用のクロック信号に同期して前記シリアルデータを1ビットずつ順次読込むデータ読込み手段とを含むことを特徴とする受信機である。
【0026】
また本発明は、前記同期用のクロック信号および前記復調用のクロック信号よりも周波数の高い基準クロック信号を生成する基準クロック信号生成手段をさらに含み、
前記同期用クロック信号生成手段は、基準クロック信号を分周することによって同期用のクロック信号を生成し、
前記復調用クロック信号生成手段は、基準クロック信号を分周することによって復調用のクロック信号を生成することを特徴とする。
【0027】
また本発明は、前記予め定めるタイミングは、シリアルデータの各ビットの最も安定していると推定される周期の半周期近傍の時刻であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、同期用クロック信号生成手段は、同期用のクロック信号を生成して送信機に与える。送信機は、受信機から与えられる同期用のクロック信号に同期して、ストローブ信号と、シリアルデータとを送信する。ストローブ信号は、シリアルデータを伝送するタイミングを表す。
【0029】
送信機から受信機にデータが伝送されるまでの間に、データの位相に遅延が生じる。送信機と受信機との間におけるストローブ信号とシリアルデータとの伝送距離は、ほぼ等しいので、互いの位相遅延の大きさもほぼ等しくなる。復調用クロック信号生成手段は、シリアルデータとほぼ等しい位相遅延の生じるストローブ信号に基づくことによって、送信機と受信機との間の伝送距離に無関係にシリアルデータの伝送の開始のタイミングを確実に検出することができる。復調用クロック信号生成手段は、検出したシリアルデータの伝送の開始のタイミングに合わせて、各ビットのデータを読込むタイミングを表す復調用のクロック信号を生成する。復調用のクロック信号は、同期用のクロック信号と同じ信号波形を有し、シリアルデータの各ビットのデータの周期内の予め定めるタイミングにおいて立上りまたは立下がる。
【0030】
送信機は、受信機から与えられる同期用のクロック信号に同期してデータを送信するので、送信機から送信されるシリアルデータの各ビットのデータの周波数は、受信機が与える同期用のクロック信号に確実に一致する。復調用クロック信号生成手段が生成する復調用のクロック信号の周波数は、同期用のクロック信号の周波数と同じなので、シリアルデータの各ビットのデータの周波数と同じである。したがって、時系列においてシリアルデータの各ビットのうちの先頭のビットのデータの周期内の予め定めるタイミングにおいて、データを読込むタイミングを表す復調用のクロック信号を生成すると、おのずとシリアルデータの各ビットのデータの周期内の予め定めるタイミングにおいて、各ビットのデータを読込むタイミングを表す復調用のクロック信号が順次生成される。
【0031】
データ読込み手段は、復調用のクロック信号に同期してシリアルデータを1ビットずつ順次読込むことによって、シリアルデータの各ビットのデータに同期してシリアルデータを確実に読込むことができる。このように、送信機と受信機との間のデータの伝送距離に無関係にシリアルデータの伝送の開始のタイミングを確実に検出して、このシリアルデータの伝送の開始に合わせて復調用のクロック信号を生成するので、従来の技術のようにシリアルデータを読込むタイミングがデータの伝送距離に依存して変わることがなくなる。したがって従来の技術のように、所定のデータの伝送距離の場合に、シリアルデータの各ビットのデータが切換わるタイミングでシリアルデータを読込むことがなくなり、データの伝送距離に無関係に正確にシリアルデータを読込むことができる。
【0032】
また同期をとるためのデータを付加したシリアルデータを送信する必要がないので、冗長度が増大することがなく、データの伝送速度が低下しない。
【0033】
また本発明によれば、同期用のクロック信号と復調用のクロック信号とは、基準クロック信号を分周することによって生成される。同期用のクロック信号と復調用のクロック信号とをそれぞれ別々の発振回路を用いて生成する場合に、互いの周波数を一致させるのは困難であるが、基準クロック信号を分周することによって同期用のクロック信号の周波数と復調用のクロック信号の周波数とを容易に一致させることができる。また基準クロック信号を発生する発振回路だけで同期用のクロック信号と復調用のクロック信号とを生成することができるので、各クロック信号をそれぞれ別々の発振回路を用いて発生させる場合に比べて受信機の構成が簡易になる。
【0034】
また本発明によれば、復調用クロック信号生成手段は、シリアルデータの各ビットの最も安定していると推定される周期の半周期近傍の時刻においてシリアルデータを読込むタイミングを表す復調用のクロック信号を生成する。データ読込み手段は、この復調用のクロック信号に同期してシリアルデータを読込むので、シリアルデータの各ビットのデータが切換わる時刻から最も離れた時刻においてシリアルデータを読込む。シリアルデータの各ビットのデータが切換わる時刻から最も離れた時刻は、シリアルデータが最も安定していると推定される時刻なので、この時刻においてシリアルデータを読込むことによって、最も正確にシリアルデータを読込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の一形態の送信機21と、受信機22との電気的構成を示すブロック図である。
【図2】送信機21または受信機22がそれぞれ受信するデータおよび高周波クロック信号35のタイミングチャートである。
【図3】送信機1と受信機2との電気的構成を示すブロック図である。
【図4】送信機1または受信機2が受信するデータのタイミングチャートである。
【図5】一例として復調用クロック信号10の位相に対して同期用クロック信号6の位相に4分の1周期(T/4)の遅延が生じた場合の送信機1または受信機2が受信するデータのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の実施の一形態の送信機21と、受信機22との電気的構成を示すブロック図である。送信機21と受信機22とは、電線などの電気信号を伝送する伝送媒体によって接続され、この伝送媒体を介してクロック同期式のシリアル通信を行う送受信システムを構成する。送信機21と受信機22とは、たとえば産業用および民生用の電子機器に設けられ、複数のコンピュータ間でデータを伝送したり、メカトロニクス関連機器に設けられ、コントローラと機構部との間でセンサ信号および動作指令信号を伝送したりする。
【0037】
送信機21は、パラレルデータから構成されるデジタルデータ23を、シリアルデータ24に変換するシリアルデータ生成部25によって実現される。デジタルデータ23は、たとえば8ビットまたは16ビットのパラレルデータによって構成され、マイクロコンピュータなどによって実現されるデジタルデータ生成部によって生成される。シリアルデータ生成部25は、受信機22から与えられる同期用のクロック信号(以下、同期用クロック信号という)26に同期して、ストローブ信号27および変換したシリアルデータ24を受信機22に与える。
【0038】
ストローブ信号27は、シリアルデータ24を伝送するタイミングを表す。本実施の形態ではストローブ信号27は、ローレベルLのときにシリアルデータ24を伝送していることを表し、ハイレベルHのときにシリアルデータ24を伝送していないことを表す。つまり、ストローブ信号27がハイレベルHからローレベルLに立下がると、シリアルデータ24の伝送が開始することを表し、ローレベルLからハイレベルHに立上ると、シリアルデータ24の伝送が終了することを表す。シリアルデータ生成部25は、シリアルデータ24の伝送に応じて、同期用クロック信号26の立下りに同期してストローブ信号27をハイレベルHからローレベルLまたはローレベルLからハイレベルHに切換える。またシリアルデータ生成部25は、同期用クロック信号26の立下りに同期してシリアルデータ24の各ビットのデータを生成して出力する。したがってシリアルデータ24の各ビットのデータの周期Tは、同期用クロック信号26の周期(以下、基本周期という)Tと同じである。本実施の形態では、データ(0)からデータ(N)までのN+1ビットのシリアルデータ24を送信機21が送信して、受信機22がこのシリアルデータ24を受信する手順について説明する。シリアルデータ生成部25は、たとえばシフトレジスタを含んで構成されるパラレル―シリアル変換回路によって実現される。
【0039】
受信機22は、基準クロック信号生成手段に相当するクロック信号生成部31と、同期用クロック信号生成手段に相当する分周部32と、復調用クロック信号生成部33と、データ読込み手段に相当するデータ復調部34とを含んで構成される。クロック信号生成部31は、一定の周波数で高電圧のハイレベルHと低電圧のローレベルLとを繰返す高周波クロック信号35を生成し、生成した高周波クロック信号35を分周部32に与えるとともに、復調用クロック信号生成部33にも与える。クロック信号生成部31は、たとえば水晶振動子を含んで構成される発振回路によって実現される。
【0040】
分周部32は、クロック信号生成部31から与えられる高周波クロック信号35をn分周(記号「n」は、2以上の自然数を示す)して低周波数の同期用クロック信号26を生成し、生成した同期用クロック信号26をシリアルデータ生成部25に与える。本実施の形態では分周部32は、高周波クロック信号35を8分周して同期用クロック信号26を生成する。すなわち同期用クロック信号26の周波数は、高周波クロック信号35の周波数fの8分の1(f/8)である。分周部32は、たとえばフリップフロップを含んで構成されるn進カウンタによって実現される。
【0041】
復調用クロック信号生成部33は、ストローブ信号27に基づいてシリアルデータ24の伝送の開始を検出すると、シリアルデータ24の各ビットのデータの周期T内の予め定めるタイミングにおいて、前記各ビットのデータを読込むタイミングを表す復調用のクロック信号(以下、復調用クロック信号という)36を生成する。この復調用クロック信号36は、シリアルデータ24の各ビットのデータの周期T内の予め定めるタイミングにおいて立上るまたは立下がる。復調用クロック信号36の周期Tは、同期用クロック信号26の周期Tと等しく選ばれる。また本実施の形態において予め定めるタイミングは、シリアルデータ24の各ビットのデータの半周期(T/2)に選ばれる。
【0042】
本発明の他の実施形態では、8分周に限らずに遅延がT/4のとき2分周でもよいが、遅延量によっては、データの最も安定する中央部から外れることがあり得るため、前述の実施形態では、より中央に近いポイントをサンプリングできる例として8分周とした。
【0043】
送信機21から受信機22にデータが伝送されるまでの間に、データの位相に遅延が生じる。送信機21と受信機22との間におけるストローブ信号27とシリアルデータ24との伝送距離は、ほぼ等しいので、互いの位相遅延の大きさもほぼ等しくなる。復調用クロック信号生成部33は、シリアルデータ24とほぼ等しい位相遅延が生じるストローブ信号27に基づくことによって、送信機21と受信機22との間の伝送距離に無関係にシリアルデータ24の伝送の開始のタイミングを確実に検出することができる。具体的には、復調用クロック信号生成部33は、ストローブ信号27の立下りを検出することによってシリアルデータ24の復調の開始を検出する。
【0044】
復調用クロック信号生成部33は、ストローブ信号27がローレベルLのときに、クロック信号生成部31から与えられる高周波クロック信号35を分周して低周波の復調用クロック信号36を生成し、生成した復調用クロック信号36をデータ復調部34に与える。すなわち復調用クロック信号生成部33は、ストローブ信号27の立下がりに同期して復調用クロック信号36の送信を開始し、ストローブ信号27が立上ると復調用クロック信号36の送信を停止する。本実施の形態では復調用クロック信号生成部33は、シリアルデータ24の各ビットのデータの周期T内の予め定めるタイミングにおいて立上る復調用クロック信号36を生成する。すなわち復調用クロック信号生成部33は、シリアルデータ24の各ビットのデータが切換わる時刻から基本周期Tの半周期(T/2)後に立上る復調用クロック信号36を生成する。
【0045】
復調用クロック信号生成部33は、同期用クロック信号26と同じ信号波形を有する復調用クロック信号36を生成する。本実施の形態では復調用クロック信号生成部33は、高周波クロック信号35を8分周して復調用クロック信号36を生成する。すなわち復調用クロック信号36の周波数は、高周波クロック信号35の周波数fの8分の1(f/8)である。
【0046】
このように同期用クロック信号26と復調用クロック信号36とは、高周波クロック信号35を分周することによって生成される。同期用クロック信号26と復調用クロック信号36とをそれぞれ別々の発振回路を用いて生成する場合に、互いの周波数を一致させるのは困難であるが、高周波クロック信号35を分周することによって同期用クロック信号26の周波数と復調用クロック信号36の周波数とを容易に一致させることができる。また高周波クロック信号35を発生するクロック信号生成部31だけで同期用クロック信号26と復調用クロック信号36とを生成することができるので、各クロック信号をそれぞれ別々の発振回路を用いて発生させる場合に比べて受信機22の構成が簡易になる。
【0047】
前述したように、シリアルデータ生成部25から送信されるシリアルデータ24の各ビットのデータの周期Tは、同期用クロック信号26の周期Tと等しい。復調用クロック信号生成部33が生成する復調用クロック信号36の周波数は、同期用クロック信号26の周波数と同じなので、シリアルデータ24の各ビットのデータの周波数と同じである。したがって、時系列においてシリアルデータ24の各ビットのうちの先頭のビットのデータの周期T内の予め定めるタイミングにおいて、データを読込むタイミングを表す復調用クロック信号36を生成すると、おのずとシリアルデータ24の各ビットのデータの周期T内の予め定めるタイミングにおいて、各ビットのデータを読込むタイミングを表す復調用クロック信号36が順次生成される。
【0048】
復調用クロック信号生成部33は、たとえばセレクト回路とn進カウンタによって実現される。セレクト回路は、ストローブ信号27がローレベルLのときに高周波クロック信号35を通過させてn進カウンタに与え、ストローブ信号27がハイレベルHのときに高周波クロック信号35を遮断してn進カウンタに与えない。セレクト回路は、たとえばストローブ信号27を反転するインバータと、インバータからの出力および高周波クロック信号35が入力されるAND回路によって実現される。
【0049】
データ復調部34は、送信機21からストローブ信号27が与えられる。データ復調部34が受信するストローブ信号27は、復調用クロック信号生成部33が受信するストローブ信号27を分岐した信号である。データ復調部34は、シリアルデータ24の伝送が開始することを表すストローブ信号27を受信すると、復調用クロック信号36に同期してシリアルデータ24を1ビットずつ読込む。データ復調部34は、たとえばシフトレジスタを含んで構成されるシリアル―パラレル変換回路を含んで構成される。
【0050】
シリアル―パラレル変換回路は、復調用クロック信号36の立上りに同期してシリアルデータ24を読込んで、シリアルデータ24をパラレルデータから成るデジタルデータ23に復調する。
【0051】
図2は、送信機21または受信機22がそれぞれ受信するデータおよび高周波クロック信号35のタイミングチャートである。図2において横軸は、時間を表す。図2において、同期用クロック信号26は、シリアルデータ生成部25が受信した信号波形を表し、復調用クロック信号36、ストローブ信号27、およびシリアルデータ24は、データ復調部34が受信した信号波形を表す。本実施の形態では、伝送線路をデータが伝送することによって、同期用クロック信号26の基本周期Tに対して4分の1周期(T/4)の位相遅延が生じる場合について説明する。
【0052】
シリアルデータ生成部25は、時刻t1において同期用クロック信号26の立下りに同期してストローブ信号27をハイレベルHからローレベルLに切換えるとともに、シリアルデータ24の送信を開始する。ストローブ信号27およびシリアルデータ24は、伝送線路を伝送することによって位相遅延が生じ、時刻t1から基本周期Tの4分の1周期(T/4)後の時刻t2にデータ復調部34に伝送される。時刻t2では、復調用クロック生成部33が受信するストローブ信号27がハイレベルHからローレベルLに切換わる。
【0053】
復調用クロック信号生成部33は、時刻t2においてストローブ信号27がハイレベルHからローレベルLに切換わると、高周波クロック信号35のカウントを開始して、復調用クロック信号36の生成を開始する。この復調用クロック信号36の周波数は、前述したように高周波クロック信号35の周波数fの8分の1(f/8)なので、時刻t2から基本周期Tの半周期(T/2)後の時刻t3において復調用クロック信号36がローレベルLからハイレベルHに立上る。以後復調用クロック信号生成部33は、ストローブ信号27がローレベルLからハイレベルHに切換わるまで基本周期Tの復調用クロック信号36をデータ復調部34に与え続ける。
【0054】
データ復調部34は、復調用クロック信号36の立上りに同期してシリアルデータ24を読込むので、復調用クロック信号36の立上る時刻t3においてデータ(0)を読込む。時刻t3から基本周期Tの半周期(T/2)後の時刻t4では、復調用クロック信号36が立下がるとともに、シリアルデータ24がデータ(0)からデータ(1)に切換わる。時刻t4から基本周期Tの半周期(T/2)後の時刻t5では、復調用クロック信号36がローレベルLからハイレベルHに立上るので、データ復調部34は、データ(1)を読込む。以後、ストローブ信号27がローレベルLのときに、データ復調部34は、復調用クロック信号36の立上りに同期してシリアルデータ24の各ビットのデータを順次読込む。
【0055】
時刻tYにおいて、シリアルデータ生成部25は、同期用クロック信号26の立下りに同期してストローブ信号27をローレベルLからハイレベルHに切換えるとともに、シリアルデータ24の送信を停止する。ストローブ信号27の立上りと、シリアルデータ24の送信の停止は、伝送媒体を伝送することによって時刻tYから基本周期Tの4分の1周期(T/4)後の時刻tZにデータ復調部34に到達する。
【0056】
時刻tZにおいてストローブ信号27がローレベルLからハイレベルHに立上ると、復調用クロック信号生成部33は、復調用クロック信号36の生成を停止するとともに、データ復調部34は、シリアルデータ24の読込みを停止する。
【0057】
データ復調部34は、読込んだシリアルデータ24をパラレルデータから成るデジタルデータ23に復調し、マイクロコンピュータなどに与える。
【0058】
以上説明した本実施の形態の受信機22によれば、復調用クロック信号生成部33は、送信機21と受信機22との間のデータの伝送距離に無関係にシリアルデータ24の伝送の開始のタイミングを確実に検出して、このシリアルデータ24の伝送の開始に合わせて復調用クロック信号36を生成するので、従来の技術のようにシリアルデータを読込むタイミングがデータの伝送距離に依存して変わることがなくなる。データ復調部34は、このようにして生成される復調用クロック信号36に同期してシリアルデータ24を読込むので、従来の技術のように、所定のデータの伝送距離の場合に、シリアルデータの各ビットのデータが切換わるタイミングでシリアルデータを読込むことがなくなり、データの伝送距離に無関係に正確にシリアルデータ24を読込むことができる。
【0059】
また同期をとるためのデータを付加したシリアルデータを送信する必要がないので、冗長度が増大することがなく、データの伝送速度が低下しない。
【0060】
また本実施の形態の受信機22によれば、復調用クロック信号生成部33は、シリアルデータ24の各ビットの周期Tの半周期(T/2)の時刻においてシリアルデータ24を読込むタイミングを表す復調用クロック信号36を生成する。復調用クロック信号生成部33は、この復調用クロック信号生成部33に同期してシリアルデータ24を読込むので、シリアルデータ24の各ビットのデータが切換わる時刻から最も離れた時刻においてシリアルデータ24を読込む。シリアルデータ24の各ビットのデータが切換わる時刻から最も離れた時刻は、シリアルデータ24が最も安定していると推定される時刻なので、この時刻においてシリアルデータ24を読込むことによって、最も正確にシリアルデータ24を読込むことができる。
【0061】
本実施の形態の受信機22の分周部32および復調用クロック信号生成部33は、高周波クロック信号35を8分周するとしたけれども、8分周に限らずに、高周波クロック信号35をn分周して同期用クロック信号26および復調用クロック信号36をそれぞれ生成してもよい。データ復調部34は、このような復調用クロック信号36に同期することによって、正確にシリアルデータ24を読込むことができる。
【符号の説明】
【0062】
21 送信機
22 受信機
23 デジタルデータ
24 シリアルデータ
25 シリアルデータ生成部
26 同期用クロック信号
27 ストローブ信号
31 クロック生成部
32 分周部
33 復調用クロック信号生成部
34 データ復調部
35 高周波クロック信号
36 復調用クロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信する同期用のクロック信号に同期して、シリアルデータおよびこのシリアルデータを伝送するタイミングを表すストローブ信号を送信する送信機に対して、送信する前記同期用のクロック信号を生成する同期用クロック信号生成手段と、
前記送信機から送信されるストローブ信号に基づいてシリアルデータの伝送の開始を検出すると、前記同期用のクロック信号と同じ信号波形を有し、かつ前記送信機から送信されるシリアルデータの各ビットのデータの周期内の予め定めるタイミングで立上りまたは立下り、前記送信機から送信されるシリアルデータの各ビットのデータを読込むタイミングを表す復調用のクロック信号を生成する復調用クロック信号生成手段と、
復調用のクロック信号に同期して前記シリアルデータを1ビットずつ順次読込むデータ読込み手段とを含むことを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記同期用のクロック信号および前記復調用のクロック信号よりも周波数の高い基準クロック信号を生成する基準クロック信号生成手段をさらに含み、
前記同期用クロック信号生成手段は、基準クロック信号を分周することによって同期用のクロック信号を生成し、
前記復調用クロック信号生成手段は、基準クロック信号を分周することによって復調用のクロック信号を生成することを特徴とする請求項1記載の受信機。
【請求項3】
前記予め定めるタイミングは、シリアルデータの各ビットの最も安定していると推定される周期の半周期近傍の時刻であることを特徴とする請求項1または2記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−171859(P2011−171859A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31850(P2010−31850)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】