説明

受圧板

【課題】施工面の起伏や曲率に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能な受圧板を提供すること。
【解決手段】アンカーボルトBを挿入する固定穴111を中央に有し、ナットNの締め付けにより地面側に下降する基台部101と、基台部101地面側であって固定穴111から所定間隔離れた位置に配され、地面側へ向けて圧力をかける複数のバネ103と、固定穴111を中心とした径方向に延伸する複数のアーム102であって、径基端側がそれぞれ固定穴111穿孔方向に垂直な方向に軸支されて径先端側が上下に回動可能であるとともに、中途にバネ103下端がそれぞれ当接ないし結合したアーム102と、アーム102それぞれの径先端側に取り付けられ、地面を押さえつける接地板104と、を設けたことを特徴とする受圧板100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受圧板に関し、特に、法面が平らでなくとも固定性が高い受圧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面補強に際しては、法面にアンカーボルトを深く打ち込み、受圧板をあててナットにより締め付け固定をしていた。
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
法面は、前施工により可能な限り平面にすることが好ましいが、岩石が介在する場合や、カーブのある道路左右の法面にみられるように進行方向に対して斜面自体が曲率を有する場合がある。
【0004】
ここで、一般的な受圧板は、十字型か、正方形型であって、接地面が同一平面上にあるため、浮きが生じる部分があるなど、必ずしも全面にわたって固定されない、すなわち、固定性に劣る場合があるという問題点があった。
【0005】
また、施工直後は、法面を強固に押さえつけている場合でも、雨や草木の繁茂の影響により、固定が弱くなるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−313877号
【特許文献2】特開2002−227211号
【特許文献3】特開2004−150200号
【特許文献4】特開2004−27600号
【特許文献5】特開2001−329542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、施工面の起伏や曲率に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能な受圧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の受圧板は、アンカーボルトを挿入する孔部を中央に有し、ナットの締め付けにより地面側に下降する基台部と、基台部地面側であって孔部から所定間隔離れた位置に配され、地面側へ向けて圧力をかける複数の押圧体と、孔部を中心とした径方向に延伸する複数のアーム体であって、径基端側がそれぞれ孔部穿孔方向に垂直な方向に軸支されて径先端側が上下に回動可能であるとともに、中途に押圧体下端がそれぞれ当接ないし結合したアーム体と、アーム体それぞれの径先端側に取り付けられ、地面を押さえつける板体と、を設けたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1にかかる発明は、独立したアーム体それぞれが施工面の起伏や曲率に追従するため長期にわたり安定的な法面補強が可能となる。
【0010】
なお、孔部穿孔方向に垂直な方向、とは、受圧板を傾斜のない地面に設置した場合に孔部穿孔方向は鉛直方向となるため、水平方向(地面に対して水平方向)となる位置関係意味する。上下に回動可能とは、同様に、地面に対して上下(実際には弧を描く上下)に可動することをいう。また、アーム体の基端側の軸受は、適宜基台部から延伸または基台部と一体化させることができる。
【0011】
また、押圧体やアーム体は、孔部を中心として回転対称な位置に複数設けられている態様であってもよい。これにより、法面を均等に押圧する受圧板を提供することができる。回転対称とは、たとえば、120°回転対称(アーム体3本)、90°回転対称(アーム体4本)とすることができる。
【0012】
また、板体とは、所定の接触面積を有して地面を押さえつけることができれば、必ずしも板でなく、たとえば、網目状であるなど、孔などがあっても良い。この意味で板体とは、板様体と表現することもできる。また、板体は、アーム体から着脱可能であって、接地面の状態に応じて形状および面積を異ならせるようにしてもよい。これにより、法面に即して設計自由度の高い補強が可能となる。
【0013】
請求項2に記載の受圧板は、アンカーボルトを挿入する孔部を中央に有し、ナットの締め付けにより地面側に下降する基台部と、基台部地面側であって孔部と中心を一致させた、地面側へ向けて圧力をかける円筒形押圧体と、孔部を中心とした径方向に延伸する複数のアーム体であって、径基端側がそれぞれ孔部穿孔方向に垂直な方向に軸支されて径先端側が上下に回動可能であるとともに、中途に円筒形押圧体下端がそれぞれ当接ないし結合したアーム体と、アーム体それぞれの径先端側に取り付けられ、地面を押さえつける板体と、を設けたことを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項2にかかる発明は、独立したアーム体により、施工面の起伏に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能となる。なお、円筒形押圧体とは、たとえば、大型の1つのコイルバネとすることができ、このほか、複数のコイルバネが同一円周上に並べられ、下面を穴あき円盤として各コイルバネがこれに結合して、アーム体を均等に押し下げる構成とすることもできる。
【0015】
請求項3に記載の受圧板は、請求項1または2に記載の受圧板において、押圧体として、コイルバネを用いたことを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項3にかかる発明は、簡便な構成で法面を押圧することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、施工面の起伏や曲率に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能な受圧板を提供することが可能となる。具体的には、独立したアーム体それぞれを施工面の起伏や曲率に追従させて長期にわたり安定的な法面補強が可能となる(請求項1)。また、独立したアーム体により、施工面の起伏に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能となる(請求項2)。また、簡便な構成で法面を押圧することが可能となる(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1の受圧板を示した平面模式図である。
【図2】図1に示した受圧板を側面からみた模式断面図である。
【図3】実施の形態2の受圧板を示した平面模式図である。
【図4】図3に示した受圧板を側面からみた模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本発明の受圧板の一例を示した平面模式図である。図2は、図1に示した受圧板の模式断面図である。なお、図1および図2では、受圧板を鉛直下向きに伏せた状態として、すなわち、地面が水平面であるとして説明する。
【0020】
受圧板100は、中央の基台部101と、四本のアーム102と、四本のシリンダ形状のバネ103と、4枚の接地板104と、を基本構成としている。
【0021】
基台部101は、アンカーボルトBを挿通する固定穴111と、固定穴111上部の凹部であるナット受112と、下面に設けられたアーム受113と、を有する。また、バネ103は、アーム受113より基台部101の周縁側の下面に、その軸を略鉛直に向けて取り付けられている。
【0022】
アーム受113は、アーム102が他端を上下に回動可能に軸支し、回動軸114は、固定穴111の軸とねじれの位置としつつ直交、すなわち、水平方向、かつ、固定穴111の軸からみて径方向に対して直角に配された状態としている。なお、アーム102の基台部101への取付け後(回動軸114への挿通後)は、抜け防止のためのアタッチメント115をはめ込む。
【0023】
アーム102は、基端側(固定穴111側)に、回動軸114に挿し込む孔121が設けられ、先端側は、継手122を形成し、接地板104を所定範囲内で自由に首振りできるようにしつつ着脱可能に結合させている。これにより、接地板104は、地面に凹凸ないし曲率がある場合であっても、最も強固に地面に圧着する。また着脱可能にすることにより、所望の地面被覆が可能となる。
【0024】
また、アーム102は、中途にバネ103の下端を取り付ける取付部123が設けられている。これにより、ナットNの締め付けにより基台部101が下降すると、四本のアーム102がそれぞれ独立して接地板104を地面に押し付けることとなる。
【0025】
バネ103は、中空円柱状の上シリンダ131と、下シリンダ132とでコイルばね133を封入し、軸方向に弾性力を伝達する。
【0026】
接地板104は、中心にアーム接合部141が凸設された網状の剛性の高い金属製平板142からなる。網状であることにより草が繁茂し、雨による土砂流出、ひいては締め付け力の減衰が防止できる。
【0027】
受圧板100は、ステンレススチールに溶融亜鉛メッキを施したものを用いることができる。また使用の態様により、FRP製とすることもできる。大きさも特に限定されないが、対向するアーム102の先端間が1000mm程度とすることができる。
【0028】
受圧板100は、以上の構成であるので、弾性力により、個々の接地板104が独立して地面を押さえつけ、かつ、首振りにより個々の接地板104は最も接地面への押圧力を大きくして地面を押さえつける。また、弾性力により浮きを生じさせなくするので、施工面の起伏や曲率に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能となる。
【0029】
なお、受圧板100の構成は上記に限定されない。バネ103は、シリンダで被覆せずむき出しのままでもよい。また、受圧板100は、接地面の状態により形状や大きさを変えるようにしても良いし、隣り合う受圧板100が重なるような態様であっても良い。また、網目でなく、パンチングメタルを用いてもよい。また、図1では四本足構造の受圧板を説明したが、たとえば、三本のアームとして120度の回転対称としても良い。このほか、平面視においてアーム先端が長方形の角に位置するように180度の回転対称としてもよい。
【0030】
<実施の形態2>
実施の形態1では、バネ103が四本ある態様の受圧板を説明したが、実施の形態2では、バネが1本である受圧板について説明する。なお、同一の構成については、同一の符号を付するものとして、その説明を省略する。図3は、実施の形態2の受圧板の平面模式図である。図4は、図3に示した受圧板を側面からみた模式断面図である。なお、図3および図4でも、受圧板を鉛直下向きに伏せた状態として、すなわち、地面が水平面であるとして説明する。
【0031】
受圧板200は、中央の基台部101と、四本のアーム102と、1本のシリンダ形状の大型バネ203と、4枚の接地板204と、を基本構成としている。
【0032】
大型バネ203は、円筒形の上シリンダ231と、下シリンダ232との間に、大型のコイルばね233を封入してなり、円筒の軸と固定穴の軸を同一として、受圧板100の下面に取り付けられる。そして、大型バネ203の下面は、四本のアーム102の取付部123により四カ所で結合されている。
【0033】
受圧板200は、以上の構成であるので、弾性力により、個々の接地板104が独立して地面を押さえつけ、かつ、首振りにより個々の接地板104は最も接地面への押圧力を大きくして地面を押さえつける。また、弾性力により浮きを生じさせなくするので、施工面の起伏や曲率に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能となる。受圧板200は、バネが一本で共通するため、ナットNを同じ締め付けトルクとした場合に、受圧板100より固定力が弱まる可能性があるが、構成が受圧板100より簡便であるので、適宜法面補強の設計強度に応じて使い分けるようにしても良い。また、締め付けトルクを大きくするようにしてもよい。
【0034】
なお、受圧板200も、受圧板100と同様に種々の構成を採用することができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、施工面の起伏や曲率に追従して長期にわたり安定的な法面補強が可能な受圧板を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
100、200 受圧板
101 基台部
102 アーム
103、203 バネ
104、204 接地板
111 固定穴
112 ナット受
113 アーム受
114 回動軸
115 アタッチメント
121 孔
122 継手
123 取付部
131、231 上シリンダ
132、232 下シリンダ
133、233 コイルバネ
141 アーム接合部
142 金属製平板
203 大型バネ
B アンカーボルト
N ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトを挿入する孔部を中央に有し、ナットの締め付けにより地面側に下降する基台部と、
基台部地面側であって孔部から所定間隔離れた位置に配され、地面側へ向けて圧力をかける複数の押圧体と、
孔部を中心とした径方向に延伸する複数のアーム体であって、径基端側がそれぞれ孔部穿孔方向に垂直な方向に軸支されて径先端側が上下に回動可能であるとともに、中途に押圧体下端がそれぞれ当接ないし結合したアーム体と、
アーム体それぞれの径先端側に取り付けられ、地面を押さえつける板体と、
を設けたことを特徴とする受圧板。
【請求項2】
アンカーボルトを挿入する孔部を中央に有し、ナットの締め付けにより地面側に下降する基台部と、
基台部地面側であって孔部と中心を一致させた、地面側へ向けて圧力をかける円筒形押圧体と、
孔部を中心とした径方向に延伸する複数のアーム体であって、径基端側がそれぞれ孔部穿孔方向に垂直な方向に軸支されて径先端側が上下に回動可能であるとともに、中途に円筒形押圧体下端がそれぞれ当接ないし結合したアーム体と、
アーム体それぞれの径先端側に取り付けられ、地面を押さえつける板体と、
を設けたことを特徴とする受圧板。
【請求項3】
押圧体として、コイルバネを用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の受圧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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