説明

受雷部保護範囲診断装置、及び、プログラム

【課題】受雷部による建築物の雷保護範囲を診断する。
【解決手段】受雷部保護範囲診断装置1は、診断対象とする建築物の受雷部による保護範囲を診断する。離散化処理部20は、建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、建築物の屋根又は外壁に対応する3次元モデルの表面に含まれる第1の面を、複数の離散化領域に離散化する。雷保護範囲診断処理部40は、離散化領域が建築物における受雷部による保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、離散化領域ごとに保護範囲の診断処理をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の受雷部による保護範囲を診断する受雷部保護範囲診断装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
受雷部保護範囲診断装置は、建築物(建物)の受雷部による保護範囲を診断する。従来から、突針(避雷針)や水平導体(棟上導体)などの受雷部をビルやマンション、倉庫などの建築物等に設置して直撃雷から保護することが行われている。保護する対象の建築物等における受雷部からの保護範囲は、例えば、JIS A 4201規格などの所定の規格において定められている。現在のJIS A 4201規格は、受雷部など直撃雷から建物を保護するための外部雷保護システムについて規格化されている。このJIS A 4201規格は、国際規格に整合させて回転球体法を追加する見直しが行われたものである。この見直し前の旧JIS A 4201規格による建築物等の雷保護範囲の規定においては、突針など受雷部からの保護角が、60度又は、45度に予め決められていたので、これら保護角に基づいた保護角法に従い建築物の雷保護範囲が診断されていた。
IEC62305-3規格や見直されたJIS A 4201規格の回転球体法によれば、上記の建築物等の雷保護範囲は、例えば、保護する対象の建築物等と、その建築物等に接する所定の大きさの球との位置関係に基づいて定められる。このような新JIS A 4201規格に基づいた外部雷保護システム(受電部システム)の設計効率を改善する技術が開示されている(特許文献1)。
ところで、所定の領域(3次元空間)に満たされた流体の流れを解析する流れ解析装置がある。このような流れ解析装置に対して適用できる技術として、解析対象の領域を異なる大きさの直方形(直方体)に分割して解析する技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−312248号公報
【特許文献2】特開平8−221386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、旧JIS A 4201規格から新JIS A 4201規格に変更されたことにより、以下のような問題点が生じることとなった。新JIS A 4201規格に基づいた診断においては、建築物等に接する所定の大きさの球の3次元空間における位置を繰り返し変更して、所定の条件を満たすか否かを判定する。例えば新JIS A 4201規格による建築物等における雷保護範囲を求めるには、保護レベルに応じたパラメータの選定を行い、選定したパラメータに応じた回転球体法による計算が必須となる場合がある。この回転球体法による判定においては、45度もしくは60度の保護角法のみである従来と比較して、複雑かつ多くの計算や作図による解析が必要となる。また、対象とする建築物等が複雑な形状である場合や、受電部システムの改修前後での保護範囲の違いや、各保護レベルに応じた保護範囲の比較を行うためには膨大な計算及び作図を行わなければならず、多くの手間と時間が必要となる。
また、上述の特許文献2は、所定の領域(3次元空間)に満たされた流体の流れを、解析対象の領域を分割した直方形ごとに解析する技術を示すものであり、建築物等において直撃雷に対する保護範囲を診断する技術を示すものではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、受雷部による建築物の雷保護範囲を診断する受雷部保護範囲診断装置、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、診断対象とする建築物の受雷部による保護範囲を診断する受雷部保護範囲診断装置であって、前記建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、前記建築物の屋根又は外壁に対応する前記3次元モデルの表面に含まれる第1の面を、複数の離散化領域に離散化する離散化処理部と、前記離散化領域が前記建築物における受雷部による保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、前記離散化領域ごとに前記保護範囲の診断処理をする診断処理部と、を備えることを特徴とする受雷部保護範囲診断装置である。
【0007】
また、本発明によれば、上記発明において、前記離散化処理部は、前記第1の面を離散化する際の前記離散化領域の広さが、雷撃頻度に基づいて定められる基準により定められることを特徴とする。
【0008】
また、本発明によれば、上記発明において、前記離散化処理部は、前記第1の面の外周から内側の領域であって、該外周から所定の距離に含まれる第1領域に囲まれた第2領域が存在するか否かの判定を行い、前記第2領域が存在すると判定した場合には、前記第1領域と前記第2領域とに分けて、予め定められた前記基準に従って前記第1の面を離散化し、前記第2領域が存在しないと判定した場合には、予め定められた前記基準に従って前記第1の面を離散化し、前記第1領域と前記第2領域とに分けて前記第1の面を離散化する前記基準は、前記第1領域を離散化した第1離散化領域の広さと、前記第2領域を離散化した第2離散化領域の広さとが異なるように、前記第1領域と前記第2領域とにそれぞれ定められることを特徴とする。
【0009】
また、本発明によれば、上記発明において、前記離散化処理部は、前記第1領域と前記第2領域とにそれぞれ定められた前記基準により、前記第1離散化領域より前記第2離散化領域が広くなるように離散化することを特徴とする。
【0010】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、前記離散化領域には前記離散化領域の位置を示す代表点がそれぞれ設けられており、前記設けられた代表点ごとに、該代表点が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、前記診断処理をすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明によれば、上記発明において、前記離散化領域に応じた前記代表点を前記離散化領域内に配置する代表点設定部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明によれば、上記発明において、前記代表点設定部は、前記3次元モデルの表面が前記第1の面及び第2の面を含む複数の多角形の組み合わせにより構成されており、それぞれの法線方向が異なる前記第1の面と前記第2の面において、前記第1の面の辺と前記第2の面の辺とが互いに接しており、前記互いに接している辺に面した前記第1領域に含まれる前記第1離散化領域の代表点を前記互いに接している辺の上に配置することを特徴とする。
【0013】
また、本発明によれば、上記発明において、前記代表点設定部は、前記3次元モデルの表面に含まれる面として、前記第1の面と前記第2の面とに対して法線方向が異なる第3の面があり、前記第3の面の複数の頂点のうち前記第1の面の頂点と前記第2の面の頂点に一致する頂点があり、前記第1の面と前記第2の面と前記第3の面に共通する頂点を含む前記第1離散化領域の代表点を、前記共通する頂点の位置に配置することを特徴とする。
【0014】
また、本発明によれば、上記発明において、前記代表点設定部は、前記代表点を前記離散化領域の重心又は前記離散化領域として示される多角形の頂点の位置に配置することを特徴とする。
【0015】
また、本発明によれば、上記発明において、前記代表点設定部は、前記離散化領域に応じて複数の前記代表点を設け、前記複数の代表点に対応する前記離散化領域の頂点に対応させてそれぞれ配置することを特徴とする。
【0016】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、診断対象である特定の前記離散化領域に設けられた前記複数の代表点が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断し、前記複数の代表点のうち全ての前記代表点が前記受雷部保護範囲に含まれる場合に、前記診断対象である離散化領域が前記受雷部保護範囲に含まれると診断する診断処理をすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明によれば、上記発明において、前記代表点設定部は、前記第1の面と前記第2の面に接する辺に面していない前記離散化領域の代表点を、前記代表点に対応する前記離散化領域内に配置することを特徴とする。
【0018】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、診断対象である特定の前記離散化領域に設けられた前記代表点が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断し、前記代表点が前記受雷部保護範囲に含まれる場合に、前記診断対象である離散化領域が、前記受雷部保護範囲に含まれると診断する診断処理をすることを特徴とする。
【0019】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、前記離散化領域が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断する診断方法として、メッシュ法に基づく診断方法、保護角法に基づく診断方法、及び、回転球体法に基づく診断方法のうち少なくとも何れかの診断方法を含む診断処理をすることを特徴とする。
【0020】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、前記診断方法として、前記メッシュ法に基づく診断方法、前記保護角法に基づく診断方法、及び、前記回転球体法に基づく診断方法のうちから何れか2つの診断方法を含む診断処理をするものであり、前記診断処理部は、前記診断方法として含まれる第1の前記診断方法による診断処理を先に行い、前記診断処理により非保護領域と診断された領域に対して第2の前記診断方法による診断処理をすることを特徴とする。
【0021】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、前記診断方法として、前記メッシュ法に基づく診断方法、前記保護角法に基づく診断方法、及び、前記回転球体法に基づく診断方法を含む診断処理をすることを特徴とする。
【0022】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、前記メッシュ法に基づく第1の診断処理を先に行い、次に前記第1の診断処理により保護範囲に含まれないと診断された領域に対して前記保護角法に基づく第2の診断処理を行い、続いて前記第1の診断処理と前記第2の診断処理とにより保護範囲に含まれないと診断された領域に対して前記回転球体法による第3の診断処理をすることを特徴とする。
【0023】
また、本発明によれば、上記発明において、前記診断処理部は、前記回転球体法に基づいて診断する診断方法を含む場合、前記回転球体法による診断方法に基づいて、前記3次元モデルの外部に配置される予め定められた所定の半径の球であって、判定対象の前記離散化領域の前記代表点のうちの特定の前記代表点だけが前記球の表面上の1点として含まれるように配置される全ての球が、予め定められた所定の条件を満たす場合に、前記特定の代表点の位置は、前記受雷部保護領域に含まれると判定し、前記特定の代表点の位置が前記受雷部保護領域に含まれると判定する前記所定の条件は、前記建築物の3次元モデルの表面、前記建築物が配置される地面に相当する前記3次元モデルにおける基準面、及び、前記建築物を直撃雷から保護する受雷部の位置が、前記球体内に含まれることとすることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、診断対象とする建築物の受雷部による雷保護範囲を診断する受雷部保護範囲診断装置が備えるコンピュータを、前記建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、前記建築物の屋根又は外壁に対応する前記3次元モデルの表面に含まれる第1の面を、複数の離散化領域に離散化する離散化処理部と、前記離散化領域が前記建築物における受雷部保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、前記離散化領域ごとに前記受雷部保護範囲の診断処理をする診断処理部として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、建築物の雷保護範囲を診断する受雷部保護範囲診断装置、及び、プログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態による受雷部保護範囲診断装置を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における建築物の離散化処理を示す図(その1)である。
【図3】本実施形態における建築物の離散化処理を示す図(その2)である。
【図4】本実施形態における建築物の離散化処理を示す図(その3)である。
【図5】本実施形態における建築物の対象領域の形状を簡略化する手法を示す図である。
【図6】本実施形態における建築物の対象領域に対する離散化処理の手法を示す図(その1)である。
【図7】本実施形態における建築物の対象領域に対する離散化処理の手法を示す図(その2)である。
【図8】本実施形態における建築物の対象領域に対する離散化処理の手法を示す図(その3)である。
【図9】本実施形態における建築物の離散化処理の結果の例を示す図である。
【図10】本実施形態における建築物の円形状の面に対する離散化処理を示す図である。
【図11】本実施形態における建築物の扇形の面に対する離散化処理を示す図である。
【図12】本実施形態におけるメッシュ法による雷保護範囲の診断処理を示す図である。
【図13】本実施形態における保護角法による雷保護範囲の診断処理を示す図(その1)である。
【図14】本実施形態における保護角法による雷保護範囲の診断処理を示す図(その2)である。
【図15】本実施形態における保護角法による雷保護範囲の診断処理を示す図(その3)である。
【図16】本実施形態における保護角法による雷保護範囲の診断処理を示す図(その4)である。
【図17】本実施形態における回転球体法による雷保護範囲の診断処理を示す図(その1)である。
【図18】本実施形態における回転球体法による雷保護範囲の診断処理を示す図(その2)である。
【図19】本実施形態における回転球体法による建築物の辺の部分の雷保護範囲の診断処理を示す図(その1)である。
【図20】本実施形態における回転球体法による建築物の辺の部分の雷保護範囲の診断処理を示す図(その2)である。
【図21】本実施形態における建築物の3辺以上が集まる建築物の角(頂点)の部分に位置する診断対象領域の代表点の設定処理を示す図である。
【図22】本実施形態における回転球体法による建築物の頂点の部分の雷保護範囲の診断処理を示す図(その1)である。
【図23】本実施形態における回転球体法による建築物の頂点の部分の雷保護範囲の診断処理を示す図(その2)である。
【図24】本実施形態における回転球体法による雷保護範囲の診断処理結果を示す図(その1)である。
【図25】本実施形態における回転球体法による雷保護範囲の診断処理結果を示す図(その2)である。
【図26】本実施形態における雷保護範囲の診断判定処理を示す図である。
【図27】本実施形態における雷保護範囲の診断判定処理を示す図である。
【図28】本実施形態における雷保護範囲の診断判定結果を示す図である。
【図29】本実施形態における雷保護範囲の診断判定処理の概要を示すフローチャートである。
【図30】本実施形態における雷保護範囲の診断判定処理のフローチャートである。
【図31】本実施形態における雷保護範囲の診断判定処理のフローチャートである。
【図32】本実施形態における雷保護範囲の診断判定処理のフローチャートである。
【図33】本実施形態における雷保護範囲の診断判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態による受雷部保護範囲診断装置を示すブロック図である。
この図1に示す受雷部保護範囲診断装置1は、診断対象とする建築物の受雷部による保護範囲を診断する。
受雷部保護範囲診断装置1は、建築物の屋根又は外壁に対応する3次元モデルの表面に含まれる所定の面(第1の面)を離散化して、離散化した領域(離散化領域)が受雷部による雷保護範囲に含まれるか否かを判定する。上記の判定結果に基づいて、受雷部保護範囲診断装置1は、離散化領域ごとに雷保護範囲の診断処理をする。
【0028】
以下、受雷部保護範囲診断装置1の構成、雷保護範囲の診断手法、診断処理手順について説明する。
【0029】
受雷部保護範囲診断装置1は、入力情報処理部10、離散化処理部20、代表点設定処理部30、雷保護範囲診断処理部40、及び、出力処理部50を備える。
入力情報処理部10は、入力された入力情報の入力処理を行い、入力処理によって検出した入力情報を、受雷部保護範囲診断装置1が備える所定の記憶領域に記憶させる。
入力情報処理部10に入力される入力情報には、「適用する判定方式の設定情報」、「部分診断の適用設定情報」、「離散化条件設定情報(計算間隔として設定する長さ情報)」、「建築物データ」などがある。ここで、上記の入力情報について説明する。
上記の入力情報において、「適用する判定方式の設定情報」は、雷保護範囲診断処理部40が行う雷保護範囲診断処理を定める情報である。雷保護範囲診断処理部40が行う雷保護範囲診断処理の判定方式には複数の判定方式が設定できる。この「適用する判定方式の設定情報」には、雷保護範囲診断処理部40が行う雷保護範囲診断処理の判定方式を定める情報として、例えば、旧JIS A 4201規格、新JIS A 4201規格、及び、IEC62305−3規格の何れかを定める情報が含まれる。この旧JIS A 4201規格が定められた場合には、保護角法に従った雷保護範囲診断処理の判定方式が適用される。また、新JIS A 4201規格、又は、IEC62305−3規格が定められた場合には、メッシュ法、保護角法及び回転球体法の何れかの判定方法に従った雷保護範囲診断処理の判定方式を適用するように設定することができる。このように「適用する判定方式の設定情報」には、雷保護範囲診断処理の判定方式として、新JIS A 4201規格、又は、IEC62305−3規格が設定された場合には、メッシュ法、保護角法及び回転球体法の何れの判定方法を適用するかを定める情報が含まれる。さらに、「適用する判定方式の設定情報」には、複数の判定方式を適用するように設定された場合に、複数の判定方式のうちから、適用する判定方式の順序を定める情報とが含まれる。
【0030】
また、「部分診断の適用設定情報」は、離散化処理部20が行う離散化処理、代表点設定処理部30が行う代表点設定処理の範囲、雷保護範囲診断処理部40が行う雷保護範囲診断処理の範囲を定める情報である。例えば、この情報により、建築基準法やIEC62305-3規格に基づいて定められる高さの範囲を、雷保護範囲診断処理の範囲として定めることができる。この「部分診断の適用設定情報」に基づいて、離散化処理部20、代表点設定処理部30、雷保護範囲診断処理部40の各部は、設定された診断範囲(部分診断範囲)について、それぞれの処理を行う。
【0031】
また、「離散化条件設定情報」は、離散化処理部20が行う離散化処理において、離散化した領域の大きさを定める情報である。換言すれば、「離散化条件設定情報」は、離散化処理を行った結果の領域が配置される間隔を、雷診断処理における計算位置を示す間隔(計算間隔)を設定する長さ情報である。この「離散化条件設定情報」は、離散化処理部20が行う離散化処理において参照される。
【0032】
また、「建築物データ」は、建築物をモデル化した3次元モデルを示す情報である。「建築物データ」は、離散化処理部20が行う離散化処理、代表点設定処理部30が行う代表点設定処理、雷保護範囲診断処理部40が行う雷保護範囲診断処理において参照される。
【0033】
離散化処理部20は、「建築物データ」に基づいて、建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、建築物の屋根又は外壁に対応する3次元モデルの表面に含まれる所定の面(第1の面)を、「離散化条件設定情報」に基づいて複数の離散化領域に離散化する。
離散化処理部20は、第1の面を離散化する際の離散化領域の広さが、雷撃頻度に基づいて定められる基準により定められる。同じ建築物であっても、高さ、位置により雷撃頻度が異なることが知られている。雷撃頻度の統計データに基づいて、離散化を行う基準を定めることにより演算効率を高めることができる。
例えば、離散化処理部20は、第1の面の外周から内側の領域であって、該外周から所定の距離に含まれる第1領域R1(図3、図6)に囲まれた第2領域R2(図3、図6)が存在するか否かの判定を行い、第2領域が存在すると判定した場合には、第1領域R1と第2領域R2とに分けて、予め定められた基準に従って第1の面を離散化し、第2領域R2が存在しないと判定した場合には、予め定められた基準に従って第1の面を離散化する。このように第1領域R1と第2領域R2とに分けて第1の面を離散化する基準は、第1領域R1を離散化した第1離散化領域(例えば、離散化領域R100(図3(b)))の広さと、第2領域R2を離散化した第2離散化領域(例えば、離散化領域R200(図3(b))の広さとが異なるように定められる。このように離散化する基準が、第1領域R1と第2領域R2とにそれぞれ定められる。定められた基準は、上記の「離散化条件設定情報」として受雷部保護範囲診断装置1における記憶領域に予め記憶されるものとする。上記のように基準を定めることにより、離散化処理部20は、第1領域R1と第2領域R2とにそれぞれ定められた基準に従って、離散化領域R100(第1離散化領域)より離散化領域R200(第2離散化領域)が広くなるように離散化することができる(図3(b)を参照)。
離散化処理部20は、「部分診断の適用設定情報」によって定められた範囲を離散化する。
【0034】
代表点設定部30は、離散化領域に応じた代表点を離散化領域内に配置する。
建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、建築物の屋根又は外壁に対応する3次元モデルの表面に含まれる所定の面(第1の面)が、離散化処理部20によって複数の離散化領域に離散化されている。代表点設定部30は、離散化領域の代表点を代表点に対応する離散化領域の中央部に配置する。なお、代表点設定部30は、上記の3次元モデルにおける離散化領域の位置により代表点の位置を以下に示すように最適化する。
【0035】
上記の3次元モデルにおける表面が、第1の面及び第2の面を含む複数の多角形の組み合わせにより構成されている。それぞれの法線方向が異なる第1の面と第2の面において、第1の面の辺と第2の面の辺とが互いに接している2つの面の組み合わせがある。代表点設定部30は、この2つの面の組み合わせにおいて、互いに接している辺に面した第1領域に含まれる第1離散化領域の代表点を互いに接している辺の上に配置する。
【0036】
また、上記の3次元モデルにおける表面が、第1の面と第2の面とに対して法線方向が異なる第3の面を含む複数の多角形の組み合わせにより構成されている。このような第3の面の複数の頂点において、第1の面の頂点と第2の面の頂点に一致する頂点がある。代表点設定部30は、第1の面と第2の面と第3の面に共通する頂点を含む第1離散化領域の代表点を、共通する頂点の位置に配置する。また、代表点設定部30は、離散化領域に応じて複数の代表点を設け、複数の代表点に対応する離散化領域の頂点に対応させてそれぞれ配置してもよい。代表点設定部30は、第1の面と第2の面に接する辺に面していない離散化領域の代表点を、代表点に対応する離散化領域の中央部に配置する。
なお、代表点設定部30は、3つ以上の面に共通する頂点を代表点としてもよい。
【0037】
雷保護範囲診断処理部40は、診断対象である特定の離散化領域に設けられた複数の代表点が受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断し、設けられた全ての代表点が受雷部保護範囲に含まれる場合に、診断対象である離散化領域が受雷部保護範囲に含まれると診断する診断処理をする。
雷保護範囲診断処理部40は、離散化領域が建築物における受雷部による保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、離散化領域ごとに保護範囲の診断処理をする。
雷保護範囲診断処理部40は、診断対象である特定の離散化領域に設けられた代表点が受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断し、代表点が受雷部保護範囲に含まれる場合に、診断対象である離散化領域が、受雷部保護範囲に含まれると診断する診断処理をする。
【0038】
図1に示すように雷保護範囲診断処理部40は、メッシュ法診断処理部41、保護角法診断処理部42、回転球体法診断処理部43を備える。
メッシュ法診断処理部41は、診断対象である離散化領域ごとにメッシュ法に基づいた診断処理を行う。保護角法診断処理部42は、診断対象である離散化領域ごとに保護角法に基づいた診断処理を行う。回転球体法診断処理部43は、診断対象である離散化領域ごとに回転球体法に基づいた診断処理を行う。
【0039】
回転球体法診断処理部43は、回転球体法による診断方法に基づいて、3次元モデルの外部に配置される予め定められた所定の半径の球を定める。回転球体法診断処理部43は、定められた球を次のように配置して所定の条件を満たすか否かを判定する。回転球体法診断処理部43は、判定対象の離散化領域の代表点のうちの特定の代表点だけが球の表面上の1点として含まれるように配置される全ての球が、予め定められた所定の条件を満たす場合に、上記の特定の代表点の位置が受雷部保護領域に含まれると判定する。
回転球体法診断処理部43における判定において、特定の代表点の位置が受雷部保護領域に含まれると判定する所定の条件は、建築物の3次元モデルの表面、建築物が配置される地面に相当する3次元モデルにおける基準面、及び、建築物を直撃雷から保護する受雷部の位置が、球体内に含まれることとする。
【0040】
なお、雷保護範囲診断処理部40は、離散化領域が受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断する診断方法として、メッシュ法に基づく診断方法、保護角法に基づく診断方法、及び、回転球体法に基づく診断方法のうち少なくとも何れかの診断方法を含む診断処理をする。
【0041】
或は、雷保護範囲診断処理部40は、診断方法として、メッシュ法に基づく診断方法、保護角法に基づく診断方法、及び、回転球体法に基づく診断方法のうちから何れか2つの診断方法を含む診断処理をする。このように2つの診断方法を含む診断処理をする雷保護範囲診断処理部40は、診断方法として含まれる第1の診断方法による診断処理を先に行い、診断処理により非保護領域と診断された領域に対して第2の診断方法による診断処理をする。
【0042】
或は、雷保護範囲診断処理部40は、診断方法として、メッシュ法に基づく診断方法、保護角法に基づく診断方法、及び、回転球体法に基づく診断方法を含む診断処理をする。
このように、3つの診断方法による診断処理を行う場合、診断処理の手順を定めることにより、演算処理を効率よく行うことができる。例えば、雷保護範囲診断処理部40は、メッシュ法に基づく第1の診断処理を先に行い、次に第1の診断処理により保護範囲に含まれないと診断された領域に対して保護角法に基づく第2の診断処理を行い、続いて第1の診断処理と第2の診断処理とにより保護範囲に含まれないと診断された領域に対して回転球体法による第3の診断処理をする。
【0043】
雷保護範囲診断処理部40は、回転球体法に基づいて診断する診断方法を含む場合、回転球体法による診断方法に基づいて診断する。雷保護範囲診断処理部40は、3次元モデルの外部に配置される予め定められた所定の半径の球であって、判定対象の離散化領域の代表点のうちの特定の代表点だけが球の表面上の1点として含まれるように配置される全ての球が、予め定められた所定の条件を満たす場合に、特定の代表点の位置は、受雷部保護領域に含まれると判定する。雷保護範囲診断処理部40は、特定の代表点の位置が受雷部保護領域に含まれると判定する所定の条件は、建築物の3次元モデルの表面、建築物が配置される地面に相当する3次元モデルにおける基準面、及び、建築物を直撃雷から保護する受雷部の位置が、球体内に含まれることとする。
【0044】
出力処理部50は、雷保護範囲診断処理部40によって診断された結果から、平面図及び立面図を作成し、作成した平面図及び立面図に基づいた2次元情報を出力する。
【0045】
次に、図2から図4を参照して、建築物の離散化処理について説明する。
図2から図4は、本実施形態における建築物の離散化処理を示す図である。
【0046】
この図2に示す建築物を離散化する処理の概要を示す。
建築物において受雷部により保護される雷保護範囲を診断する際に、実際の建築物に対応する建築物モデルを生成する。
例えば、図2(a)に示すように、建築物をモデル化した建築物モデルを生成する。この建築物の屋上には、受雷部として突針が設けられている。建築物モデルは、建築物の形状と、建築物に設けられている受雷部の配置とを示す位置データを含む情報によってモデル化される。建築物モデルにおける位置データは、3次元座標空間における位置を示す情報である。このようにして生成された建築物モデルに基づいて、受雷部による雷保護範囲の診断を行う。
次に、生成した建築物モデルの表面(外周)における各部が、雷保護範囲に含まれるか否かを判定するために、建築物モデルの表面における各部の位置を特定できるように細分化する。本実施形態では、建築物モデルの表面を細分化する処理を「離散化処理」という。
図2(b)は、建築物モデルの表面を離散化処理した結果の一例を示す。
この図2(b)に示されるように四角形に細分化されている領域を単位にして、その細分化された領域ごとに、その四角形の領域が雷保護範囲に含まれるか否かを判定する。
その四角形の領域が雷保護範囲に含まれるか否かを判定する際に、その領域の位置として、その領域内の任意の点を代表点として定める。例えば代表点を、その領域の重心、その領域として示される多角形の頂点などの位置に定めてもよい。
図2(c)は、図2(b)に示した離散化処理の結果による単位領域(四角形の領域)の位置を特定する代表点を黒丸印により示す。この図2(c)の場合、代表点を四角形の重心に定めたものである。
【0047】
図3(a)は、建築物モデルの表面を離散化する面積比率を一律とした場合の例を示す。このように、離散化する面積比率を一律とした場合には、位置に影響されなく同じ密度で全域を診断することができる。
ところで、実際の雷撃位置について、建築物における特徴点に応じて分類すると、次の傾向があることが知られている。例えば、所定の雷撃数において、図3(d)における点Aのように、3面以上が集まる角に雷撃を受けた比率は80%以上である。点Bのように、屋上面を含む2面が集まる辺に雷撃を受けた比率は10%以下である。点Cのように、壁面同士の2面が集まる辺に雷撃を受けた比率は5%以下である。点Dのように、鉛直な壁面に雷撃を受けた比率は5%以下である。このように、点Aのように、3面以上が集まる角に雷撃を受ける比率が他の位置に比べ高くなっている。逆に。点Dのように、鉛直な壁面に雷撃を受けた比率が、他の位置に比べ低くなっている。要するに、建築物における位置に応じて雷撃を受ける確率が異なっていることがわかる。そこで、本実施形態では、雷撃を受ける確率に応じて、その位置を離散化する面積を設定する。
このように、位置に応じて離散化する面積を雷撃頻度に応じて設定することにより、雷撃頻度が高い位置における診断の密度を高める(単位面積あたりの診断箇所数を多くして診断箇所の配置を密にする)。また、雷撃頻度が低い位置の診断の密度を低くする(単位面積あたりの診断箇所数を少なくして診断箇所の配置を粗くする)。具体的には、図3(b)に示すように、建築物の表面を形成する面における周辺領域(第1領域R1)を離散化した離散化領域R100(第1離散化領域)の面積が狭くなるようにして、建築物の表面を形成する面における中央領域(第2領域R2)を離散化した離散化領域R200(第2離散化領域)の面積が広くなるようにする。
また、図3(c)に示すように、図2(c)と同様に、離散化された各離散化領域には、単位領域(四角形の領域)の位置を特定する代表点が黒丸印により示されている。
【0048】
図4(a)に示されるように、診断が必要とされる領域を指定領域として指定することにより、指定領域を診断する領域として特定して診断処理を行うことができる。このように、診断が必要な領域を限定して診断処理を行うことができることから、診断が不必要な領域の診断処理を行うことによる無駄な演算処理を省き、演算処理量を軽減することが可能となる。
例えば、図4(b)に示すように、図4(a)において指定領域とした範囲を含む単位領域を診断対象とする領域(離散化領域)として特定して診断してもよい。
例えば、建築基準法によれば、高さ20mを越える部分の雷保護を行うことが求められている。要するに、少なくとも高さ20mを越える部分が雷保護範囲に含まれているか否かの診断が行えれば、高さ20mを越える部分が保護されていることを確認することができる。上記の指定領域として、高さ20m以上の範囲を設定し、高さ20m未満の範囲に含まれる領域を診断対象範囲から省くことができる。
また、IEC62305-3規格によれば、高さ60m以上の建築物については、屋上面の高さ、建築物の高さに対して屋上面(上部)から20%の範囲の下限を示す境界線の高さ、接地面(GL)から120mの高さのうちで、最も低い高さにより定められる範囲までを診断の対象範囲として規定されている。例えば、IEC62305-3規格に応じて、屋上面の高さ、建築物の高さに対して屋上面(上部)から20%の範囲の下限を示す境界線の高さ、接地面(GL)から120mの高さのうちで、最も低い高さにより定められる範囲までを診断の対象範囲として設定することができる。
【0049】
ところで、実際の建築物は、単純な形状をしているものが少なく、複雑な形状をしているものが多い。そのため、雷保護範囲に含まれることの診断精度を高めるためには、建築物モデルの生成処理や、建築物モデルに基づいた離散化処理において、できるだけ忠実な建築物モデルを生成することが必要とされる。その一方で、建築物モデルを忠実に生成する場合には、建築物モデルの形状が建築物と同様に複雑な形状になる。そこで、本実施形態においては、複雑な形状の建築物モデルを単純な形状の組み合わせに変換する。
【0050】
図5は、建築物の対象領域の形状を簡略化する手法を示す図である。
図5(a)は、特定の建築物の屋上面を示す平面図である。この図5(a)に示されるように、複雑な形状の面を四角形と三角形の組み合わせに変換する。なお、この変換においては、予め定められた所定の方向を基準にして、各四角形に分割する辺が、基準となる上記所定の方向に沿うように計算上の条件(設定情報)が予め定められている。また、この変換処理を行う際に、変換前の元の多角形の辺にあたる線分には、建築物の角となる辺としての情報が付与される。
また、図5(b)に示されるように、一部の頂点が凹んでいる多角形となる場合には、全ての頂点が凸になる多角形の組み合わせに変換する。
また、図5(c)に示されるように、隣接する2辺を連続する直線(線分)に近似(置換)できる場合がある。例えば、隣接する2辺が成す角度(例えば、内角)が、180度近傍である場合、その頂点を削除して、隣接する2辺を連続する直線(線分)に近似する。隣接する2辺が成す角度(例えば、内角)が、180度近傍であるか否かの判定は、180度を基準として、予め定められる所定の角度の範囲にあるか否かを判定することにより行うことができる。
【0051】
(対象領域の離散化処理)
図6から図8を参照して、離散化処理部20による建築物の対象領域に対する離散化処理の手法を説明する。
図6から図8は、建築物の対象領域に対する離散化処理の手法を示す図である。
【0052】
建築物の特定の面(例えば、屋上面)を離散化する処理を、図6(a)に示される四角形ABCDを離散化する処理として説明する。四角形ABCDの外周(各辺)の内側の領域であって、外周から所定の距離x1に含まれる第1領域R1と、第1領域R1に囲まれた第2領域R2とに領域を分割する。換言すれば、図6(a)に示される四角形ABCDにおいて四角形abcdが第2領域R2であり、四角形ABCDから第2領域R2を除く領域が第1領域R1である。
【0053】
ここで、四角形ABCDの第1領域R1の離散化処理を説明する。図6(b−1)に示すように、第2領域R2である四角形abcdの各頂点から、四角形ABCDの各辺に対する垂線を計算する。例えば、頂点aからは、辺ABに対して垂線aa’を、辺DAに対して垂線aa”を得る。頂点bからは、辺BCに対して垂線bb’を、辺ABに対して垂線bb”を得る。頂点cからは、辺CDに対して垂線cc”を、辺BCに対して垂線cc”を得る。頂点bからは、辺DAに対して垂線dd”を、辺CDに対して垂線dd”を得る。
このように四角形ABCDの各辺に対する垂線を得ることにより、第1領域R1は、四角形ABCDの頂点をそれぞれ含む領域R16、R17、R18及びR19と、四角形ABCDの各辺に接する領域R11、R12、R13及びR14とにそれぞれ離散化される。例えば、領域R16が四角形Bb’bb”であり、領域R11が四角形aa’b”bである。
【0054】
次に、第1領域R1における領域R16、R17、R18及びR19について、さらに離散化処理が行えるか否かを判定する。例えば、図6(b−2)に示すように、領域R16は、領域R17、R18及びR19に比べて面積が広い。換言すれば、四角形ABCDの辺に面した辺の長さが、図6(a)において領域を分割した所定の距離x1より長い。また、領域R17、R18及びR19は、辺c”Cと辺Cc’、辺d”Dと辺Dd’、辺a”Aと辺Aa’の何れの辺の長さも距離x1より短い。このように、離散化処理の対象とする領域の辺の長さに基づいた判定方法に従って、さらに離散化処理が行える領域を抽出する。このような判定方法によれば、領域R16、R17、R18及びR19のうちから抽出される領域は、領域R16だけになる。ここで、抽出された領域R16の離散化処理を行い、領域R16a、R16b及びR16cを得る。領域R16の離散化処理の詳細については、後述する。
【0055】
次に、第1領域R1における領域R11、R12、R13及びR14について、さらに離散化処理が行えるか否かを判定する。例えば、図6(b−3)に示すように、領域R11は、四角形ABCDの辺に面した辺の長さが、図6(a)において領域を分割した所定の距離x1より長い。領域R11を上記の所定の距離x1を基準にして、四角形ABCDの辺に沿って等間隔に分割する。領域R11は、領域R111、R112、R113、R114、R115に分割され離散化される。例えば、上記の所定の距離x1を基準にして等間隔に分割する処理は、分割する間隔が上記の所定の距離x1を越えずに最も広くなるように等分できる分割数を定める。
また、領域R12、R13及びR14も、領域R11と同様に四角形ABCDの辺に面した辺の長さが、図6(a)において領域を分割した所定の距離x1より長い。領域R12、R13及びR14を、領域R11と同様に上記の所定の距離x1を基準にして、四角形ABCDの辺に沿って等間隔に分割する。領域R12は、領域R121、R122、R123、R114に分割され離散化される。領域R13は、領域R131、R132、R133に分割され離散化される。領域R14は、領域R141、R142に分割され離散化される。
【0056】
次に、図6(c)に示すように、第2領域R2において離散化処理が行えるか否かを判定する。第2領域R2における離散化処理は、第2領域R2を図6(a)において示された第1領域R1として、図6(a)から図6(b−3)までの処理を繰り返し行う。
この第2領域R2の離散化処理により、四角形abcdにおいて四角形aの領域と、四角形aの周囲を取り囲む領域とに分割される。
四角形aの周囲を取り囲む領域は、四角形abcdの辺に接する領域R211,R212,R221,R222,及び、R230と、四角形abcdの頂点を含む領域R26,R27,R28,及び、R29に離散化される。なお、領域R26は,さらに領域R26a、R26b,R26cに離散化される。
【0057】
上記に示した離散化処理においては、離散化処理が行えるか否かの判定を判定する離散化処理の基準より対象領域が広く、図6(a)に示したように、所定の基準x1に従って内部の領域を分割できる場合について説明した。
ところで、離散化処理を進めてゆくと、上記の所定の基準(x1)に従って、内部の領域を分割することができなくなるほどに対象領域が狭くなる場合がある。
図7を参照し、離散化処理の基準に従って内部の領域を分割することができなくなるほどに対象領域が狭くなる場合の処理について説明する。
この図7においては、離散化処理の基準に従って内部の領域を分割することができなくなるほどに対象領域が狭くなる場合の処理を示す。ただし、図7に示す対象領域は、少なくとも何れかの変の長さが、離散化処理の基準より長い。この対象領域は、離散化処理の基準に従って内部の領域を分割することができないが、各辺のうち少なくとも何れかの辺の長さは、離散化処理の基準よりも長いものとする。
【0058】
図7(a)に四角形ABCDに対する処理を示す。四角形ABCDの各辺の中点Pc1、Pc2、Pc3及びPc4を算出して、対辺の中点同士の距離y1とy2とを算出する。ここで、距離y1より距離y2の方が短い。この場合、対辺の中点同士の距離が距離y2である線分Pc1−Pc3に沿って、対象領域を分割する。
図7(b)に三角形EFGに対する処理を示す。三角形EFGの各辺の中点Pc5、Pc6及びPc7を算出して、中点同士の距離y3、y4及びy5を算出する。ここで、距離y5が距離y3とy4とに比べ短い。この場合、中点同士の距離が距離y5である線分Pc5Pc6に沿って、対象領域を分割する。
なお、各辺の長さが、離散化処理の基準より短くなるまでこの離散化処理を繰り返し行う。
【0059】
図8を参照し、離散化処理の基準に従って内部の領域を分割することができなくなるほどに対象領域が狭く、さらに全ての辺の長さが離散化処理の基準に満たない場合の処理について説明する。
この図8においては、離散化処理の基準に従って内部の領域を分割することができないだけでなく、さらに全ての辺の長さが離散化処理の基準に満たない領域の一例として、四角形ABCDと三角形EFGが示されている。全ての辺の長さが離散化処理の基準に満たない場合は、対象領域の条件に応じて異なる処理を選択する。
【0060】
例えば、図8(a)において、対象領域の全ての辺が、建築物の辺としての属性を有する場合の処理を示す。四角形ABCDにおいては、領域の中心(重心)であるPs0から、各辺の中点Pc1、Pc2、Pc3及びPc4までをそれぞれ結ぶ線分に沿って四角形ABCDを分割する(離散化する)。三角形EFGにおいては、領域の中心(重心)であるPt0から、各辺の中点Pc5、Pc6及びPc7までをそれぞれ結ぶ線分に沿って三角形EFGを離散化処理部20が分割する(離散化する)。
【0061】
また、図8(b)において、対象領域の2辺が、建築物の辺としての属性を有しており、互いに隣接する場合の処理を示す。離散化処理の対象領域とされた四角形ABCD及び三角形EFGの離散化処理を行わず、四角形ABCD及び三角形EFGを雷保護診断の対象領域とする。
【0062】
また、図8(c)において、対象領域の2辺(辺BCと辺DA)が、建築物の辺としての属性を有しており、当該2辺が四角形ABCDの対辺である場合の処理を示す。四角形ABCDにおいて、建築物の辺としての属性を有していない2辺(辺ABと辺CD)があり、辺ABの中点Pc1と、辺CDの中点Pc3とを結ぶ線分に沿って四角形ABCDを分割する(離散化する)。
【0063】
また、図8(d)において、対象領域の3辺(辺AB、辺BCと辺CD)が、建築物の辺としての属性を有している場合の処理を示す。四角形ABCDにおいて、建築物の辺としての属性を有していない辺(辺DA)の中点Pc4と、辺DAの対辺である辺BCの中点Pc3とを結ぶ線分に沿って四角形ABCDを分割する(離散化する)。
また、図8に図示していないが、対象領域の全ての辺が建築物の辺としての属性を有している場合は、図8(b)に示した場合と同様に、離散化処理の対象領域とされた領域としての離散化処理を行わず、上記領域を雷保護診断の対象領域とする。
【0064】
(離散化処理を繰り返す一実施態様の離散化結果の例)
図9を参照し、離散化処理部20による建築物の離散化処理の結果について説明する。
図9は、建築物の離散化処理の結果の例を示す図である。図9(a)は、四角形ABCDが正方形の場合を示す。図9(b)は、長方形ABCDが正方形の場合を示す。図9(c)は、任意の形状の四角形ABCDを示す。図9(a)から図9(c)に示す四角形ABCDは、上記の離散化処理を3回繰り返し行った結果を示すものである。これらの結果は、1回目と2回目の離散化処理を同じ基準(第1の基準)に従って行い、3回目の離散化処理の基準として、上記の第1の基準より離散化された領域が広くなるように定めた第2の基準に従って行われた離散化処理により得られたものである。
【0065】
また、図9(d)は、三角形EFGに対して、上記の離散化処理を2回繰り返し行った結果を示すものである。これらの結果は、1回目の離散化処理の基準(第1の基準)と、2回目の離散化処理の基準(第2の基準)との差が大きくなるように定めた場合を示す例である。第1の基準に従った1回目の離散化処理により、三角形EFGの辺に面した領域が離散化される。2回面の離散化処理において、第2の基準が三角形efgのそれぞれの辺の長さより長く定められている場合に、図8(a)に示したように離散化した結果の一例である。
【0066】
(円形状の面の離散化処理)
図10を参照して、離散化処理部20による建築物の円形状の面に対する離散化処理について示す。
図10は、建築物の円形状の面に対する離散化処理を示す図である。この図10に示されるように、建築物の一部の面(例えば、屋上面)が円形になっている場合がある。例えば、円柱構造をした建築物の屋上面は円形状になる。本実施形態に示す一例として、屋上面を図10(a)に示されるような円形状の面とする。このような円形状の面を、その円周上に複数の頂点(頂点aから頂点t)が設けられた多角形(多角形abcdefghijklmnopqrst)として見なすことにより、その多角形によって上記の円形状の面を近似する。多角形を正多角形とすることにより円周上の点から各辺までの距離を所定の範囲に制限することが容易となる。また、多角形の頂点の数を多くすることにより、円周上の点から各辺までの距離を小さくすることができる。この図10(a)に示す例では、円を正20角形に近似した場合を示している。
【0067】
図10(b)に示すように、円を近似して得られた多角形を、四角形の組み合わせとして領域を分割する。この分割においては、予め定められた所定の方向を基準にして、その方向に沿って多角形を分割するように計算上の条件(設定情報)が予め定められている。ここで、この分割によって生成された各四角形において、分割前の多角形の2辺が四角形の対辺として含まれている。この四角形の対辺には、分割前の多角形の辺としての管理情報が付与されており、多角形を分割することによって生じた四角形の辺と分けて管理することができる。
【0068】
図10(c)に示すように、領域(円)の大きさが、領域(円)を離散化する基準以下の場合について説明する。例えば、円の大きさが領域(円)を離散化する基準以下の場合とは、円の半径が領域(円)を離散化する基準以下の場合のことであるとして説明する。上記の図10(b)において生成された各四角形において、多角形を分割することによって生じた四角形の辺の中点同士を結ぶ線分により分割する。要するに、各四角形は、同中点を通る線分によって2つの領域に、それぞれ離散化される。
【0069】
図10(d)に示すように、円の大きさが領域(円)を離散化する基準を超える場合について説明する。例えば、円の大きさが領域(円)を離散化する基準を越える場合とは、円の半径が領域(円)を離散化する基準を越える場合のことであるとして説明する。上記の図10(b)において生成された各四角形の領域を、多角形の辺から所定の距離に含まれている領域、換言すれば、多角形の外周(各辺)の内側の領域であって、多角形の辺を延長した直線から所定の距離(x1)に含まれる第1領域R1と、第1領域R1以外の第2領域R2とに分割する。第1領域を所定の基準(例えば、上記の第1の基準)に従って離散化する。第2領域を所定の基準(例えば、上記の第2の基準)に従って離散化する。
【0070】
(外周の一部に曲線を含む面の離散化処理)
図11を参照し、離散化処理部20による外周の一部に曲線を含む面の離散化処理について示す。
図11は、建築物の扇形の面に対する離散化処理を示す図である。この図11に示されるように、建築物の一部の面(例えば、壁面)が曲面になっている場合がある。例えば、壁面の一部が曲面により構成された建築物の場合、屋上面の辺の一部が曲線になる。本実施形態に示す一例として、屋上面を、図11(a)に示されるような扇形の面とする。
このような扇形を、その円弧上に複数の頂点(頂点aから頂点d)が設けられた多角形(多角形MabcdKL)として見なすことにより、その多角形によって上記の扇形を近似する。曲線(円弧)を近似する部分の多角形の辺の長さを一様にすることにより、曲線(円弧)上の点から各辺までの距離を所定の範囲に制限することが容易となる。また、多角形の頂点の数を多くすることにより、曲線(円弧)上の点から各辺までの距離を小さくすることができる。
【0071】
図11(b)に示すように、曲線(円弧)を近似して得られた多角形を、四角形の組み合わせとして領域を分割する。この分割においては、予め定められた所定の方向を基準にして、その方向に沿って多角形を分割するように計算上の条件(設定情報)が予め定められている。例えば、多角形に近似する曲線以外の辺の方向を、四角形に分割する基準方向としてもよい。ここで、この分割によって生成された各四角形において、分割前の多角形の2辺が四角形の対辺として含まれている。この四角形の対辺には、分割前の多角形の辺としての管理情報が付与されており、多角形を分割することによって生じた四角形の辺と分けて管理することができる。
【0072】
図11(c)に示すように、領域(例えば、扇型)の大きさが、領域を離散化する基準の大きさより小さな場合について説明する。例えば、領域の大きさが、領域を離散化する基準の大きさより小さな場合とは、領域である扇形の半径が領域(円)を離散化する基準の長さ以下の場合のことであるとして説明する。上記の図11(b)において生成された各四角形において、多角形を分割することによって生じた四角形の辺の中点同士を結ぶ線分により分割する。要するに、各四角形は、同中点を通る線分によって2つの領域に、それぞれ離散化される。
【0073】
図11(d)に示すように、領域(例えば、扇型)の大きさが、領域を離散化する基準の大きさより大きな場合について説明する。例えば、領域の大きさが、領域を離散化する基準の大きさより大きな場合とは、領域(扇形)の半径が領域(扇形)を離散化する基準を越える場合のことであるとして説明する。上記の図11(b)において生成された各四角形の領域を、多角形の辺から所定の距離に含まれている領域、換言すれば、多角形の外周(各辺)の内側の領域であって、多角形の辺を延長した直線から所定の距離(x1)に含まれる第1領域R1と、第1領域R1以外の第2領域R2とに分割する。第1領域を所定の基準(例えば、上記の第1の基準)に従って離散化する。第2領域を所定の基準(例えば、上記の第2の基準)に従って離散化する。
【0074】
上記の図10と図11に示したように、離散化対象の面の外周が曲線であっても、曲線上に設けられた頂点を、設けられた順に線分によって結ぶことによって得られる折れ線によって近似することができる。
また、建築物において、上記のように外周に曲線が含まれる面と直交する面は曲面となっている。例えば、外周に曲線が含まれる面が屋上面であれば、屋上面と直交する壁面は曲面となっている。このような曲面についても、外周に曲線が含まれる面を近似した多角形化に応じて、平面の組み合わせとして近似する。
【0075】
(雷保護範囲診断処理)
続いて、図12から図25を参照して、上記の離散化された対象部の位置が雷保護範囲に含まれるか否かの診断について、複数の診断方式による方法を順に説明する。複数の診断方式には、メッシュ法、保護角法、回転球体法がある。
【0076】
まず、図12を参照して、メッシュ法診断処理部41が行うメッシュ法による雷保護範囲の診断について示す。
図12は、メッシュ法による雷保護範囲の診断処理を示す図である。
この図12(a)に示される建築物には、メッシュ法に応じた受雷部システムが網掛け部分に設けられているものとする(JIS A 4201規格、IEC62305−3規格参照)。
受雷部保護範囲診断装置1は、メッシュ法に従って、受雷部システムによる雷保護範囲を診断する。この建築物モデルには、診断対象の面が上記の離散化処理により離散化されている。
【0077】
まず、図12(b)に示すように、メッシュ法により保護範囲と認定できる領域(領域M11と領域M12)を、建築物モデルにおける当該位置に設定する。
受雷部保護範囲診断装置1(メッシュ法診断処理部41)は、メッシュ法により保護範囲と認定できる領域(領域M11と領域M12)に含まれる離散化領域を保護領域(保護領域SZM11と保護領域SZM12)として診断する。さらに、受雷部保護範囲診断装置1は、上記の領域M11と領域M12との間の領域(領域M13)の間隔が、メッシュ法によって定められる所定の幅以下であれば、領域M13も保護領域(保護領域SZM13)として診断する。要するに、領域M13の幅が、メッシュ法によって定められる所定の幅以下であれば、領域M11、M12及びM13を含む領域M10の範囲を保護領域として診断する。
【0078】
次に、図13から図16を参照して、保護角法診断処理部42が行う保護角法による雷保護範囲の診断について示す。
図13から図16は、保護角法による雷保護範囲の診断処理を示す図である。この図13(a)に示される建築物には、保護角法に応じた受雷部システムが設けられているものとする(JIS A 4201規格参照)。例えば、この建築物には、受雷部システムの受雷部(突針Ar)が屋上に設けられている。
受雷部保護範囲診断装置1(保護角法診断処理部42)は、保護角法に従って、受雷部による雷保護範囲を診断する。例えば、受雷部(突針Ar)を頂点とする円錐に含まれる範囲にある領域は、雷保護範囲に含まれると判定する。また、図12(b)に示されるように、受雷部システムの受雷部にあたる導体(水平導体)が建築物の屋上面の周囲に設けられている場合がある。受雷部保護範囲診断装置1は、この水平導体を基準に保護角に含まれる領域も雷保護範囲として診断する。
【0079】
図14を参照して、保護角法による雷保護範囲を説明する。この図14に示される各図は、地表面GL上に配置された建築物の立面図である。
図14(a)に示されるように、建築物の屋上部に設けられている受雷部(突針Ar)の位置からの鉛直方向を基準とする所定の保護角θ(保護角度)に含まれる領域を雷保護範囲とする。所定の保護角θは、受雷部の高さと、診断対象となる高さとの差hに応じて値が定めれている。受雷部の高さと、診断対象となる高さとの差hが大きいほど、保護角θの大きさが小さくなる(JIS A 4201規格、IEC62305−3規格参照)。
また、図14(b)に示されるように、以下の場合は雷保護範囲として見なされない。例えば、雷保護範囲として見なされない場合として、受雷部と診断対象の位置を結ぶ直線が、建築物によって遮断される場合がある。要するに、建築物の面を突き抜けた先の領域を保護することができない。受雷部を設けた面以外の領域は、建築物によって遮断される。また、保護角法によって規定される高さ以上の側面を保護することができない場合がある。
【0080】
図15と図16を参照し、旧JIS A 4201規格に規定されていた保護角法による診断方法について説明する。
この図15は、突進の位置に基づいて診断する診断方法を示す。旧JIS A 4201規格の規定に準じて、突進による雷保護範囲を診断する診断方法においては、診断する高さの制限はなく、接地面GLから受雷部(突針)の高さまでの範囲において、保護角内に含まれるか否かを判定する。
【0081】
この図16は、水平導体の位置に基づいて診断する方法を示す。
旧JIS A 4201規格の規定に準じて、水平導体による雷保護範囲を診断する診断方法においては、次に示す2つの条件(条件1と条件2)をそれぞれ満たすことが必要とされる。条件1として、「屋上面が水平導体によって囲まれており、水平導体までの距離が10m(メートル)以下であること。」又は、「屋上面が水平導体と受雷部による保護範囲とによって囲まれており、水平導体又は受雷部による保護範囲までの距離が10m(メートル)以下であること。」である。また、条件2として、「水平導体と屋上面辺縁部との隔離距離が、「水平導体の、辺縁部からの許容隔離距離(例えば、20cm(センチメートル)」以下であること。)である。
このように、受雷部保護範囲診断装置1は、旧JISに規定の保護角法による診断を行うものとしてもよい。
【0082】
次に、図17と図18を参照し、回転球体法処理部43が行う回転球体法による雷保護範囲の診断処理を説明する。
図17と図18は、回転球体法による雷保護範囲の診断処理を示す図である。
この図17(a)に示される建築物には、受雷部システムが設けられているものとする(JIS A 4201規格、IEC62305−3規格参照)。例えば、この建築物には、受雷部システムの受雷部(突針Ar)が屋上に設けられている。
受雷部保護範囲診断装置1(回転球体法処理部43)は、回転球体法に従って、受雷部システムによる雷保護範囲を診断する。この建築物モデルには、診断対象の面が上記の離散化処理により離散化されている。
【0083】
回転球体法による診断を行う前に、診断対象の建築物の高さHに応じて、壁面などの鉛直な面について、以下の判定準備処理を行う。
図17(b)に示すように、診断対象の建築物の高さHが回転球体法の球g1の半径Rより高い場合には、受雷部保護範囲診断装置1は、球g1の半径R以下に位置する離散化領域を保護領域として判定する。一方,図17(c)に示すように、診断対象の建築物の高さHが回転球体法の球g1の半径Rより低い場合には、受雷部保護範囲診断装置1は、当該壁面の最上部に位置する離散化領域以下に位置する離散化領域を保護領域として判定する。要するに、当該壁面は、雷保護領域にあると診断される。
このような処理を行うことにより、回転球体法による判定を行う領域を制限することにより、演算量を低減できる。
【0084】
上記図17に示した判定準備処理を行った後、受雷部保護範囲診断装置1は、雷保護領域と判定されていない領域に位置する離散化面に対する診断処理を行う。
この図18を参照して、回転球体法の計算手順について説明する。図18(a)から図18(c)までに示されるように、計算対象の離散化面において、当該離散化面に接触する球体を求める。図18(a)のように、当該離散化面に接触する球体は、離散化面の代表点において接触し、球体の中心が代表点を基準にした離散化面の法線上に分布する。
【0085】
図18(b)のように、2つの離散化面が互いに接触する辺に接触する球体(球体g2、g3、g4など)は、2つの離散化面が互いに接触する辺上に配置された代表点において接触する。また、上記の球体の中心が、代表点を基準にそれぞれ導かれる2つの離散化面の法線の方向に挟まれる角度の方向に分布する。
【0086】
図18(c)のように、3つの離散化面が互いに接触する角に接触する球体は、3つの離散化面が互いに接触する角(頂点)に配置された代表点において接触する。また、上記の球体の中心が、代表点を基準にそれぞれ導かれる3つの離散化面の法線の方向に挟まれる角度の方向に分布する。
要するに、図18(b)、図18(c)として示したように、代表点に接触する球体は複数あり、位置が異なる球体を算出して、算出された全ての球体に対して以下の条件を満たすか否かを判定する。
【0087】
回転球体法における判定は、以下の判定基準に従って判定する。
算出された複数の球体のそれぞれにおいて、接触する代表点以外に、建築物の離散化面や、受雷部が存在するか否かを判定する。
図18(d)と図18(e)に示すように、この判定結果により、接触する代表点以外に、建築物の離散化面や受雷部(突針Ar)が存在すると判定した場合は、回転球体法における半径Rの球体g1は、当該離散化面には接触しないと判定することができる。このことから当該代表点を含む離散化面は、保護領域に含まれると診断される。
一方、図18(f)に示すように、この判定結果により、接触する代表点以外に、建築物の離散化面や受雷部が存在しないと判定した場合は、回転球体法における半径Rの球体g1は、当該離散化面には接触すると判定することができる。このことから当該代表点を含む離散化面は、非保護領域に含まれると診断される。
【0088】
さらに、図18(g)に示すように、判定する代表点の位置が、2つの面が接する辺上や、3つの面が接する角(頂点)にある場合には、算出された複数の球体についてそれぞれ判定を行う。複数の球体に応じてそれぞれ判定した判定結果により、当該代表点に接する全ての球体について、接触する代表点以外に、建築物の離散化面や受雷部(突針Ar)が存在すると判定した場合は、回転球体法における半径Rの球体g1は、当該離散化面には接触しないと判定することができる。このことから当該代表点を含む離散化面は、保護領域に含まれると診断される。
【0089】
一方、複数の球体に応じてそれぞれ判定した判定結果により、接触する代表点以外に、建築物の離散化面や受雷部が存在しない球体が少なくとも1つあると判定した場合は、回転球体法における半径Rの球体は、当該離散化面には接触すると判定することができる。このことから当該代表点を含む離散化面は、非保護領域に含まれると診断される。
【0090】
(診断対象領域の代表点の設定)
図19と図20を参照し、代表点設定部30が行う、雷保護診断を行う診断対象領域の代表点の設定処理について説明する。
図19は、回転球体法による建築物の辺の部分の雷保護範囲の診断処理を示す図である。この図19において、2辺が接する辺の部分に位置する診断対象領域の代表点の設定処理を示す。
【0091】
図19(a)に示すように、3次元モデルの表面が面PL1(第1の面)及び面PL2(第2の面)を含む複数の多角形の面の組み合わせにより構成されている。判定の対象とする面PL1は、面PL2と辺EGにおいて接している。面PL1と面PL2とは、それぞれの法線方向が異なっており、この辺EGは、建築物の角部分になる。この面PL1には判定対象領域Rkがあり、面PL2には判定対象領域Rjがあり、判定対象領域RkとRjが辺EGにおいて接して配置されている。
代表点設定部30は、この判定対象領域Rkにおいて、離散化領域に応じた代表点Pc1を判定対象領域Rk(離散化領域)内に配置する。代表点設定部30は、この判定対象領域Rjにおいて、離散化領域に応じた代表点Pc2を判定対象領域Rj(離散化領域)内に配置する。例えば、離散化領域における代表点の位置を判定対象領域(離散化領域)の重心とする。
【0092】
図19(b)に示すように、代表点設定部30は、面PL1(第1の面)の判定対象領域Rk(離散化領域)内に配置した代表点Pc1と、面PL2(第2の面)の判定対象領域Rj(離散化領域)内に配置した代表点Pc2とを配置する。代表点設定部30は、代表点Pc1と代表点Pc2とに基づいた後述の回転球体法による雷撃判定を行った結果により、何れの面における判定においても保護領域に含まれると判定された場合は、以降の処理を行わず代表点設定処理を終了する。
【0093】
一方、離散化領域内に配置した代表点に基づいて、後述の回転球体法による雷撃判定を行った結果、何れかの面における判定において、当該面が保護領域に含まれていないと判定された場合は、代表点設定部30は、辺EG上に代表点Pcomを配置する。
図19(c)に示すように、面PL1(第1の面)と面PL2(第2の面)において、面PL1の辺と面PL2の辺EGとが互いに接している。代表点設定部30は、互いに接している辺EGに面した判定対象領域Rk(離散化領域)内に含まれる代表点Pc1と、判定対象領域Rj(離散化領域)内に含まれる代表点Pc2とを集約して、集約した代表点Pcomを互いに接している辺EGの上に配置する。これにより2つの面の計算点を1つに集約することができる。
【0094】
図19(d)に示すように、代表点設定部30は、判定対象領域Rk(離散化領域)を含む面PL1(第1の面)の法線ベクトルV1と、判定対象領域Rj(離散化領域)を含む面PL2(第2の面)の法線ベクトルV2とをそれぞれ取得する。代表点設定部30は、法線ベクトルNV1から法線ベクトルNV2を見なす角度の方向に、回転球体法による判定を行う半径Rの球体の中心を定義する。
【0095】
図20は、回転球体法による建築物の辺の部分の雷保護範囲の診断処理を示す図である。この図20に示されるような方法により、代表点設定部30は、回転球体法による判定を行う半径Rの球体の中心を算出する。代表点設定部30は、法線ベクトルNV1から法線ベクトルNV2を見なす角度の方向に配置される球体の中心を算出する。
以下に示す手順により、代表点設定部30は、球体の中心を配置する間隔が計算間隔以下となるまで、順に間隔を狭めるように複数の球体の中心を算出する。雷保護範囲診断処理部40は、算出した各球体の中心の位置に基づいて、後述の回転球体法による球体の接触判定を行う。
回転球体法による球体の接触判定を行った結果により、代表点Pcomの位置が非保護領域に含まれると雷保護範囲診断処理部40によって判定されるまで、代表点設定部30は、中心間の間隔を狭めた球体の中心の位置を算出するとともに、雷保護範囲診断処理部40は、それぞれの球体の中心の位置に基づいた判定を行う。球体の中心を配置する間隔が計算間隔以下となっても、代表点Pcomの位置が非保護領域に含まれると判定されない場合は、雷保護範囲診断処理部40は、保護領域と判定する。
【0096】
例えば、代表点設定部30は、上記の球体の中心点の配置を以下の手順により行う。
まず、図20(a)に示すように、代表点設定部30は、法線ベクトルNV1と法線ベクトルNV2とが成す角を2分割した、1/2の角度の方向に中心Q0を配置する。次に、図20(b)に示すように、代表点設定部30は、法線ベクトルNV1と法線ベクトルNV2とが成す角の両端に、中心Q1とQ2とをそれぞれ配置する。まず、図20(c)に示すように、代表点設定部30は、法線ベクトルNV1と法線ベクトルNV2とが成す角を4分割した、1/4と3/4の角度の方向に中心Q3とQ4とをそれぞれ配置する。
次に、図20(b)に示すように、代表点設定部30は、法線ベクトルNV1と法線ベクトルNV2とが成す角を8分割した1/8、3/8、5/8と7/8の角度の方向に中心Q5、Q6、Q7、及びQ8をそれぞれ配置する。
【0097】
図21を参照して、代表点設定部30が行う、3辺以上が集まる建築物の角(頂点)の部分に位置する診断対象領域の代表点の設定処理を説明する。
図21は、3辺以上が集まる建築物の角(頂点)の部分に位置する診断対象領域の代表点の設定処理を示す図である。
【0098】
図21(a)に示すように、3次元モデルの表面が面PL1(第1の面)、面PL2(第2の面)及び面PL3(第3の面)を含む複数の多角形の面の組み合わせにより構成されている。判定の対象とする面PL1は、面PL2と辺EG1において接し、面PL3と辺EG2において接している。面PL1、面PL2及び面PL2は、それぞれの法線方向が異なっており、この辺EG1、EG2及びEG3が集まる頂点は、建築物の角部分になる。この面PL1には判定対象領域Rkがあり、面PL2には判定対象領域Rjがあり、面PL3には判定対象領域Riがあり、判定対象領域RkとRjとが辺EG1において接し、判定対象領域RkとRiとが辺EG2において接して配置されている。
代表点設定部30は、この判定対象領域Rkにおいて、離散化領域に応じた代表点Pc1を判定対象領域Rk(離散化領域)内に配置する。代表点設定部30は、この判定対象領域Rjにおいて、離散化領域に応じた代表点Pc2を判定対象領域Rj(離散化領域)内に配置する。代表点設定部30は、この判定対象領域Riにおいて、離散化領域に応じた代表点Pc3を判定対象領域Ri(離散化領域)内に配置する。例えば、離散化領域における代表点の位置を判定対象領域(離散化領域)の重心とする。
【0099】
図21(b)に示すように、代表点設定部30は、面PL1(第1の面)の判定対象領域Rk(離散化領域)内に配置した代表点Pc1と、面PL2(第2の面)の判定対象領域Rj(離散化領域)内に配置した代表点Pc2と、面PL3(第3の面)の判定対象領域Ri(離散化領域)内に配置した代表点Pc3とを配置する。代表点設定部30は、代表点Pc1と代表点Pc2と代表点Pc3に基づいた後述の回転球体法による雷撃判定を行った結果により、何れの面における判定においても保護領域に含まれると判定された場合は、以降の処理を行わず代表点設定処理を終了する。
【0100】
一方、離散化領域内に配置した代表点に基づいて、後述の回転球体法による雷撃判定を行った結果、何れかの面における判定において、当該面が保護領域に含まれていないと判定された場合は、代表点設定部30は、辺EG1、EG2及びEG3が集まる頂点に代表点Pcomを配置する。
図21(c)に示すように、面PL1(第1の面)と面PL2(第2の面)と面PL3(第3の面)とが辺EG1とEG2とEG3において互いに接しており、辺EG1とEG2とEG3とが1つの頂点に集まるように配置されている。代表点設定部30は、互いに接している辺EGに面した判定対象領域Rk(離散化領域)内に含まれる代表点Pc1と、判定対象領域Rj(離散化領域)内に含まれる代表点Pc2と、判定対象領域Ri(離散化領域)内に含まれる代表点Pc3とを集約して、集約した代表点Pcomを各辺が集まる頂点の位置に配置する。これにより3つの面の計算点を1つに集約することができる。
【0101】
図21(d)に示すように、代表点設定部30は、判定対象領域Rk(離散化領域)を含む面PL1(第1の面)の法線ベクトルV1と、判定対象領域Rj(離散化領域)を含む面PL2(第2の面)の法線ベクトルV2と、判定対象領域Ri(離散化領域)を含む面PL3(第3の面)の法線ベクトルV3とをそれぞれ取得する。代表点設定部30は、球体の半径Rを長さとする法線ベクトルNV1、法線ベクトルNV2及び法線ベクトルNV3があり、各ベクトルの始点を代用点Pcomに一致させて、何れか2つのベクトルを含む面によって分割される球の表面上に、回転球体法による判定を行う半径Rの球体の中心を定義する。
【0102】
図22と図23を参照し、回転球体法における球体の中心点の計算について説明する。
図22と図23は、回転球体法による建築物の頂点の部分の雷保護範囲の診断処理を示す図である。
以下、回転球体法における球体の中心点を算出する計算方法として2つの方法を示す。
まず回転球体法における球体の中心点の計算方法において2つの方法に共通する計算手順を説明する。
代表点設定部30は、回転球体法による判定を行う半径Rの球体の中心を算出する。代表点設定部30は、法線ベクトルNV1、法線ベクトルNV2、法線ベクトルNV3の方向を座標軸x、y、zに置き換えて示す。
代表点設定部30は、座標軸x、y、zによって示される座標系において、建築物の角(頂点)に代表点Pcomが座標系の原点に配置されている。また、上記座標系の各座標軸の値が負である方向に建築物がある場合、代表点設定部30は、上記座標系の各座標軸の値が正であって、座標系の原点からの距離が球体の半径Rと同じ半径である球を8つに分割された球面を、求める球体の中心位置を判定する判定領域として定める。代表点設定部30は、中心の位置が上記の8つに分割された球面上に配置される回転球体法による球体の中心位置を算出する。
【0103】
以下に示す手順により、代表点設定部30は、球体の中心を配置する間隔が計算間隔以下となるまで、順に間隔を狭めるように複数の球体の中心を算出する。雷保護範囲診断処理部40は、算出した各球体の中心の位置に基づいて、後述の回転球体法による球体の接触判定を行う。
回転球体法による球体の接触判定を行った結果により、代表点Pcomの位置が非保護領域に含まれると雷保護範囲診断処理部40によって判定されるまで、代表点設定部30は、中心間の間隔を狭めた球体の中心の位置を算出を行うとともに、雷保護範囲診断処理部40は、それぞれの球体の中心の位置に基づいた判定を行う。球体の中心を配置する間隔が計算間隔以下となっても、代表点Pcomの位置が非保護領域に含まれると判定されない場合は、雷保護範囲診断処理部40は、保護領域と判定する。
【0104】
次に、雷保護範囲診断処理部40(回転球体法診断処理部43)が行う第1の計算方法として、図22に示す集中判定法について説明する。
【0105】
第1のステップとして、図22(a)に示すように、判定領域の中間の位置に配置する中心点Q0の位置を計算する。また、図22(b)に示すように、判定領域が各座標軸に接する位置に配置する中心点Q1、Q2及びQ3の位置を計算する。
【0106】
第2のステップとして、図22(c)に示すように、図22(a)における中心点Q0と、図22(b)における中心点Q1、Q2及びQ3との間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q11、Q21及びQ31の位置を計算する。
また、図22(d)に示すように、図22(b)における中心点Q1、Q2及びQ3のうちの2点間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q4、Q5及びQ6の位置を計算する。
また、図22(e)に示すように、図22(a)における中心点Q0と、図22(d)における中心点Q4、Q5及びQ6との間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q41、Q51及びQ61の位置を計算する。
【0107】
第3のステップとして、図22(f)に示すように、図22(a)における中心点Q0と、図22(b)における中心点Q1、Q2及びQ3との間を補完する位置として、2点間の1/4と3/4の位置に配置する中心点Q12とQ13、Q22とQ23及びQ32とQ33の位置を計算する。
また、図22(g)に示すように、図22(a)における中心点Q0と、図22(d)における中心点Q4、Q5及びQ6との間を補完する位置として、2点間の1/4と3/4の位置に配置する中心点Q42とQ43、Q52とQ53及びQ62とQ63の位置を計算する。
また、図22(h)に示すように、図22(b)における中心点Q1、Q2及びQ3のうちの2点間を補完する位置として、2点間の1/4と3/4の位置に配置する中心点Q401とQ402、Q501とQ502及びQ601とQ602の位置を計算する。
また、図22(i)に示すように、図22(a)における中心点Q0と、図22(h)における中心点Q401、Q402、Q501、Q502、Q601及びQ602との間を補完する位置として、2点間の1/4、1/2及び3/4の位置に配置する中心点の位置を計算する。
【0108】
第4のステップとして、上記と同様に、第1のステップの結果に基づいて、2点間を8分割して補完する位置として、1/8、3/8、5/8、7/8の位置に配置する中心点の位置を計算する。
第5のステップとして、上記と同様に、第1のステップの結果に基づいて、2点間を16分割して補完する位置として、1/16、3/16、5/16、7/16、9/16、11/16、13/16、15/16の位置に配置する中心点の位置を計算する。
第6のステップとして、上記と同様に、第1のステップの結果に基づいて、2点間を32分割して補完する位置に配置する中心点の位置を計算する。
第7のステップとして、上記と同様に、第1のステップの結果に基づいて、2点間を64分割して補完する位置に配置する中心点の位置を計算する。
以降、同様に判定間隔が計算間隔として定めた基準以下になるまで、算出された中間点の位置を補完する位置に配置する中心点の位置を計算する。
【0109】
上記の集中判定法によれば、非保護範囲と判定される確率の高い位置に配置される球体の中心位置を先に得るように計算されることから、非保護範囲と判定される確率が高い場合に計算量を低減することができ、判定時間を短縮できる。
【0110】
次に、雷保護範囲診断処理部40(回転球体法診断処理部43)が行う第2の計算方法として、図23に示す集中判定法について説明する。
【0111】
第1のステップとして、図23(a)に示すように、判定領域が各座標軸に接する位置に配置する中心点Q1、Q2及びQ3の位置を計算する。
【0112】
第2のステップとして、図23(b)に示すように、図23(a)における中心点Q1、Q2及びQ3の間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q4、Q5及びQ6の位置を計算する。
【0113】
第3のステップとして、図23(c)に示すように、図23(a)における中心点Q1、Q2及びQ3、図23(b)における中心点Q4、Q5及びQ6の間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q401、Q402、Q501、Q502、Q601及びQ602の位置を計算する。
また、図23(d)に示すように、図23(b)における中心点Q4、Q5及びQ6のうちの2点間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q7、Q8及びQ9の位置を計算する。
【0114】
第4のステップとして、図23(e)に示すように、図23(a)における中心点Q1、Q2及びQ3、図23(b)における中心点Q4、Q5及びQ6、並びに、図23(c)における中心点Q401、Q402、Q501、Q502、Q601及びQ602の間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q403、Q404、Q405、Q405、Q406、・・・の位置を計算する。
また、図23(f)に示すように、図23(b)における中心点Q4、Q5及びQ6、並びに、図23(d)における中心点Q7、Q8及びQ9の間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q47、Q75、Q58、Q86、Q69、Q94の位置を計算する。
また、図23(g)に示すように、図23(c)における中心点Q4、Q5及びQ6、並びに、図23(d)における中心点Q401、Q402、Q501、Q502、Q601及びQ60の間を補完する位置として、2点間の中間の位置に配置する中心点Q457a〜c、Q568a〜c、Q649a〜c、Q789a〜cの位置を計算する
【0115】
第5のステップとして、上記と同様に、第1のステップから第4のステップまでの結果に基づいて、2点間の中間の位置に配置する中心点の位置を計算する。
第6のステップとして、上記と同様に、第1のステップから第5のステップまでの結果に基づいて、2点間の中間の位置に配置する中心点の位置を計算する。
第7のステップとして、上記と同様に、第1のステップから第6のステップまでの結果に基づいて、2点間の中間の位置に配置する中心点の位置を計算する。
以降、同様に判定間隔が計算間隔として定めた基準以下になるまで、算出された中間点の位置を補完する位置に配置する中心点の位置を計算する。
【0116】
上記の均一判定法によれば、判定する範囲の空間に均一に配置される中心位置が得られることから、保護範囲と判定される確率が高い場合に計算量を低減することができ、判定時間を短縮できる。
【0117】
図24と図25を参照し、雷保護範囲診断処理部40(回転球体法診断処理部43)により診断された回転球体法による雷保護範囲の診断処理結果を示す。
図24と図25は、回転球体法による雷保護範囲の診断処理結果を示す図である。この図24において、棒形状の建築物に対して回転球体法を適用した場合の結果を示す。図24(a)に示されるように、棒形状をした建築物において、建築物の大きさが離散化処理の基準とする計算間隔以下の場合は、必ず図示されるような離散化領域が算出される。
図24(b)に示されるように、図24(a)において示された棒形状をした建築物の離散化処理結果に基づいて、各離散化領域において代表点が、代表点接地処理部20によって、各離散化領域に含まれる辺の中心、又は、建築物の頂点の位置に配置される。
このように配置された代表点を用いて算出される球体の中心点の位置を伏図と立面図とによって示す。
【0118】
この図25において、円柱、扇形柱の建築物に対して回転球体法を適用した場合の結果を示す。図25(a)に示されるように、円柱、扇形柱をした建築物において、側面図は、上記棒形状をした建築物と同様の結果が得られる。建築物の大きさが離散化処理の基準とする計算間隔以下の場合は、必ず図示されるような離散化領域が算出される。
一方、屋上面は、計算間隔に対する面の大きさに応じて、異なる離散化処理結果が得られる。
図25(b)と(c)に示されるように、図24(a)において示された円形の屋上面は、モデリング時に円を多角形に近似する。近似した多角形に角(頂点)の数(又は、円を分割した数)に応じて、上記の円形の面を離散化して得られる離散化面(離散化領域)の数と、上記の円形の面から得られる一離散化面内の球体の中心点数が変動する。
この図25(b)においては、円形の面を細かく分割した場合を示す。離散化面の数は、比較的多くなる。また、上記の円形の面から得られる一離散化面内の球体の中心点数は、比較的少なくなる。
この図25(c)においては、円形の面を粗く分割した場合を示す。離散化面の数は、比較的少なくなる。また、上記の円形の面から得られる一離散化面内の球体の中心点数は、比較的多くなる。
【0119】
図26を参照し、離散化領域に設けられた複数の代表点に基づいた診断について説明する。
図26は、雷保護範囲の診断判定処理を示す図である。この図26に示されるように、代表点設定部30は、離散化領域に応じて複数の代表点を設ける。例えば、代表点設定部30は、離散化領域の複数の頂点に対応する複数の代表点をそれぞれ配置する。複数の代表点を全ての頂点に対応させて配置してもよい。例えば、離散化領域が四角形であって、代表点を全ての頂点に対応させて配置する場合には、4つの頂点のそれぞれに代表点が配置されることになる。
ところで、図26(b)のように、離散化領域に応じて1つの代表点を設けている場合は、1つの代表点の位置により診断を行う。一方で、図26(a)のように、離散化領域に応じて複数の代表点を設けている場合は、複数の代表点の位置によりそれぞれ診断を行う。要するに、離散化領域に応じて複数の代表点を設けている場合は、離散化領域を複数の代表点の位置により診断を行うことになる。このように、複数の代表点のうち何れかの代表点において、雷保護範囲外にあると診断された場合には、当該離散化領域を雷保護範囲外にあると診断する。
これにより、離散化領域を複数の代表点の位置により診断することにより、雷保護範囲の診断において安全側に判定するように診断することができる。
例えば、この図26(a)と図26(b)とを比べると、図26(a)においては円形の領域に含まれている中央の四角形の領域だけが雷保護範囲にあると診断される。一方で、図26(b)においては円形の領域に代表点が含まれている3つの四角形の領域が雷保護範囲にあると診断される。
【0120】
図27と図28を参照して、雷保護範囲の診断判定処理について説明する。
図27と図28は、雷保護範囲の診断判定処理を示す図である。
この図27に示されるように、建築物の高さに応じて定められる所定の条件を満たす範囲を計算対象とすることにより、演算量を低減することができる。上記の所定の条件を、次のように定める。例えば、IEC62305−3規格によれば、高さ60m以上の建築物について、屋上面の高さ、建築物の高さに対して屋上面(上部)から20%の範囲の下限を示す境界線の高さ、接地面(GL)から120mの高さのうちで、最も低い高さまでを診断範囲とするように定められている。また、IEC62305−3規格による建築物の高さ方向に対する診断範囲の制限は、回転球体法だけではなく、保護角法、メッシュ法にも適用することができる。この図27においては、診断方法として回転球体法を適用した場合を示している。
【0121】
この図28に示されるように、IEC62305−3規格を適用して、高さ60m以上の建築物について、屋上面の高さより、建築物の高さに対して、屋上面(上部)から20%の範囲の下限を示す境界線の高さ、又は、接地面(GL)から120mの高さのうち何れかの高さが低い場合の高さとして定められる診断範囲を回転球体法の範囲とする。
このような条件により診断範囲が制限された場合の代表点を用いて診断された結果を伏図と立面図とによって示す。
建築物に接して示される円は、所定の半径Rの球体を示す。この円が建築物に接している部分(特徴点)は、雷保護範囲に含まれない領域として診断された建築物の領域を示す。
【0122】
図29から図33を参照し、受雷部保護範囲診断装置1における受雷部による雷保護範囲の診断処理について説明する。
図29は、雷保護範囲の診断判定処理の概要を示すフローチャートである。
この図に示される受雷部による雷保護範囲の診断処理において、最初に、入力情報処理部10は、受雷部による雷保護範囲の診断処理の条件設定を行う(ステップSa100)。
ステップSa100において、入力情報処理部10は、入力された入力情報の入力処理を行い、入力処理によって検出した入力情報を、受雷部保護範囲診断装置1が備える所定の記憶領域に記憶させる。なお、入力情報処理部10が記憶領域に記憶させる入力情報には、「適用する判定方式の設定情報」、「部分診断の適用設定情報」、「離散化条件設定情報(計算間隔として設定する長さ情報)」、「建築物データ」などがある。
【0123】
次に、離散化処理部20は、ステップSa100において設定された「部分診断の適用設定情報」、「離散化条件設定情報」、「建築物データ」に基づいて、建築物モデルの表面の離散化処理を行い、離散化した各面の離散化情報を生成する。離散化処理部20は、生成した「各面の離散化情報」を記憶領域に記憶させる(ステップSa200)。
【0124】
次に、代表点設定処理部30は、離散化処理部20によって行われた建築物モデルの表面の離散化処理結果に基づいて、離散化領域ごとの代表点設定処理を行い、離散化領域ごとに設定した代表点設定情報を生成する。代表点設定処理部30は、生成した「代表点設定情報」を記憶領域に記憶させる(ステップSa300)。
ステップSa300における代表点は、代表点設定部30によって離散化領域に応じた代表点を離散化領域内に配置される。
【0125】
次に、雷保護範囲診断処理部40は、各種情報に基づいて、雷保護範囲診断処理を行い、雷保護範囲診断処理の結果情報を生成する。雷保護範囲診断処理部40は、生成した「雷保護範囲診断処理の結果情報」を記憶領域に記憶させる(ステップSa400)。なお、雷保護範囲診断処理において参照される各種情報には、ステップSa100において設定された「適用する判定方式の設定情報」、「部分診断の適用設定情報」、「建築物データ」、ステップSa200において生成された「各面の離散化情報」、ステップSa300において生成された「代表点設定情報」が含まれる。
【0126】
次に、出力処理部50は、ステップSa400において生成された「雷保護範囲診断処理の結果情報」を参照し、雷保護範囲診断処理結果の出力処理を行う(ステップSa500)。
【0127】
続いて、図30を参照して、建築物モデルの表面の離散化処理の詳細を説明する。
図30は、建築物モデルの表面の離散化処理の詳細を示すフローチャートである。
最初に、離散化処理部20は、建築物モデルの設定処理を行う(ステップSa210)。
建築物モデルの設定処理として、離散化処理部20は、モデル化する対象範囲を設定する。また、離散化処理部20は、円(円弧)からの多角形に近似する近似処理を行う。また、離散化処理部20は、多角形の変換処理として、凹多角形を組み合わされた凸多角形に置換する置換処理と、2辺を直線に近似する頂点削除処理とを必要に応じて行う(ステップSa210)。
【0128】
次に、離散化処理部20は、対象範囲として設定された複数の離散化対象領域のそれぞれについて、該離散化対象領域における内側の領域を生成することが可能か否かを判定する(ステップSa220)。このステップSa220の判定を換言すれば、各辺から所定の基準(計算間隔)より内側の領域が存在するか否かの判定である。
ステップSa220の判定により、離散化対象領域における内側の領域を生成可能と判定された場合(内側の領域が存在すると判定された場合)、離散化処理部20は、外側領域について所定の離散化手法による離散化処理を行う(ステップSa230)。この外側領域の離散化処理において、離散化処理部20は、内側領域の頂点から各辺への垂線を計算するとともに、計算間隔を基準にして対象となる領域の離散化処理をする。上記の離散化処理において、離散化処理部20は、離散化前の領域の辺と、内側領域の辺と、上記垂線とに囲まれた四辺形(長方形)の領域を離散化する。また、上記の離散化処理において、離散化処理部20は、離散化前の領域の2辺と、上記垂線とに囲まれた四角形の領域(角領域)を離散化する。
【0129】
次に、内側領域を離散化するために、内側領域を離散化対象領域として改めて設定し(ステップSa240)、ステップSa220からの処理を繰り返す。
【0130】
ステップSa220の判定により、離散化対象領域における内側の領域を生成不可能と判定された場合(内側の領域が存在しないと判定された場合)、離散化処理部20は、内側領域について離散化対象領域を四角形又は三角形に離散化する(ステップSa250)。
【0131】
図31を参照して、離散化処理部20が行う、離散化対象領域を四角形又は三角形に離散化する処理について説明する。
図31は、離散化対象領域を四角形又は三角形に離散化する処理を示すフローチャートである。
離散化処理部20は、各辺の長さが計算間隔として設定された長さに比べ長いか否かを判定する(ステップSa251)。
【0132】
ステップSa251の判定により、何れかの辺の長さが計算間隔より長いと判定された場合、離散化処理部20は、離散化対象領域を四角形又は三角形に離散化し、この離散化対象領域の離散化処理を終了する(ステップSa252)。
【0133】
ステップSa251の判定により、何れの辺も、辺の長さが計算間隔以下であると判定された場合、離散化処理部20は、対象とする離散化対象領域の辺に含まれる建築物の辺の数を判定する(ステップSa253)。
【0134】
ステップSa253における判定により、建築物の辺を含まないと判定した場合、離散化処理部20は、この離散化対象領域の離散化処理(分割処理)を終了する(ステップSa254)。
【0135】
ステップSa253における判定により、建築物の辺が2辺であると判定した場合であって、さらに、上記2辺が隣接する2辺である場合には、離散化処理部20は、この離散化対象領域の離散化処理(分割処理)を終了する。又、建築物の辺が2辺であると判定した場合であって、さらに、上記2辺が対辺である場合には、離散化処理部20は、建築物の辺以外の2辺の中点を結ぶ線分に沿って分割して、この離散化対象領域の離散化処理(分割処理)を終了する(ステップSa255)。
【0136】
ステップSa253における判定により、建築物の辺が3辺であると判定した場合には、離散化処理部20は、建築物の辺以外の辺の中点と対辺の中点とを結ぶ線分に沿って、この離散化対象領域を離散化(分割)して、この離散化対象領域の離散化処理(分割処理)を終了する(ステップSa256)。
【0137】
ステップSa253における判定により、各辺が建築物の辺であると判定した場合には、離散化処理部20は、領域の中心点と各辺の中点とをそれぞれ結ぶ線分に沿って、この離散化対象領域を離散化(分割)して、この離散化対象領域の離散化処理(分割処理)を終了する(ステップSa257)。
【0138】
図32を参照し、雷保護範囲診断処理部40が行う、雷保護範囲診断処理について説明する。
図32は、雷保護範囲診断処理を示すフローチャートである。
【0139】
まず、メッシュ法診断処理部41は、メッシュ法による雷保護範囲診断処理として、対象とされる離散化面に対してメッシュ法による診断処理を行う。 このメッシュ法による雷保護範囲診断処理において、非保護範囲にあると診断された離散化面を、次の保護角法による診断処理の対象とする(ステップSa410)。
【0140】
次に、保護角法診断処理部42は、保護角法による雷保護範囲診断処理として、対象とされる離散化面に対して保護角法による診断処理を行う。この 保護角法による雷保護範囲診断処理において、非保護範囲にあると診断された離散化面を、次の回転球体法による診断処理の対象とする(ステップSa420)。
【0141】
次に、回転球体法診断処理部43は、回転球体法による雷保護範囲診断処理として、対象とされる離散化面に対して回転球体法による診断処理を行い、雷保護範囲診断処理を終える(ステップSa430)。
【0142】
図33を参照して、回転球体法診断処理部43が行う、回転球体法による雷保護範囲診断処理について説明する。
図33は、回転球体法による雷保護範囲診断処理を示すフローチャートである。
【0143】
まず、回転球体法による診断準備処理を行う(ステップSa431)。この診断準備処理において、建築物の壁面の高さに応じて判定対象範囲を制限する。球体半径Rより建築物の壁面の高さが低い場合には、建築物の壁面に相当する判定対象とする面の最上部以下の離散化面を保護範囲に含まれていると診断する。一方、(球体半径Rより建築物の壁面の高さが高い場合には、建築物の壁面に相当する判定対象とする面において、離散化面の代表点が球体半径R以下にある離散化面を保護範囲に含まれていると診断する。
【0144】
次に、離散化面に接する球体を算出する(ステップSa432)。この離散化面に接する球体を算出する処理において、代表点が離散化対象領域の面内にある場合には、代表点に接する1つの球を算出する。
また、代表点が離散化対象領域の2つの面が接する辺上にある場合には、辺に面した2つの面に、辺上にある代表点を基準にしてそれぞれの面の法線をたて、それぞれの面の法線に挟まれる角度の範囲に、球体の中心が配置される複数の球体を算出する。
また、代表点が頂点にある場合には、頂点に面した2つの面をそれぞれ組み合わせて、頂点にある代表点を基準にしてそれぞれの面に法線をたてる。それぞれの面の組み合わせにおいて面の法線に挟まれる角度の領域があり、それぞれ面の法線に挟まれる角度の領域を重ね合わせた範囲に、球体の中心が配置される複数の球体を算出する。
【0145】
次に、特定の代表点において、算出した球体内に、他の代表点、又は、受雷部が含まれるか否かを判定する(ステップSa433)。
【0146】
次に、ステップSa433における判定により、特定の代表点において、算出した球体内に、他の代表点、又は、受雷部が含まれていないと判定した場合、上記の特定の代表点において算出した全ての球体について判定したか否かを判定する(ステップSa434)。ステップSa434における判定により、上記の特定の代表点において算出した全ての球体のうち、未判定の球体を次の判定対象に設定し、ステップSa433からの処理を繰り返す。
【0147】
次に、ステップSa434における判定により、ステップ433において算出した球体内に、他の代表点、又は、受雷部が含まれていないと判定した代表点は、外部雷保護範囲に含まれていないと判定し、回転球体法による雷保護範囲診断処理を終える(ステップSa435)。
【0148】
一方、ステップSa433における判定により、特定の代表点において、算出した球体内に、他の代表点、又は、受雷部が含まれていると判定した場合、上記の特定の代表点は、外部雷保護範囲に含まれていると判定し、回転球体法による雷保護範囲診断処理を終える(ステップSa436)。
【0149】
以上に示した本実施形態によれば、受雷部保護範囲診断装置1は、診断対象とする建築物の受雷部による保護範囲を診断する。離散化処理部20と、建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、建築物の屋根又は外壁に対応する3次元モデルの表面に含まれる第1の面を、複数の離散化領域に離散化する。雷保護範囲診断処理部40は、離散化領域が建築物における受雷部による保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、離散化領域ごとに保護範囲の診断処理をする。
これにより、受雷部保護範囲診断装置1は、建築物の屋根又は外壁に対応する3次元モデルの表面に含まれる面(第1の面)を離散化して、離散化領域が雷保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、離散化領域ごとに雷保護範囲の診断処理をすることから、受雷部による建築物の雷保護範囲を診断することができる。
なお、上記の3次元モデルの表面に含まれる面は、例えば、壁一面、壁の一部、面を離散化して生成された領域などを含むように設けることができる。
【0150】
なお、上述の受雷部保護範囲診断装置1は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、各機能部の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0151】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0152】
1…受雷部保護範囲診断装置
10…入力情報処理部
20…離散化処理部
30…代表点設定処理部
40…雷保護範囲診断処理部
41…メッシュ法診断処理部
42…保護角法診断処理部
43…回転球体法診断処理部
50…出力処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象とする建築物の受雷部による保護範囲を診断する受雷部保護範囲診断装置であって、
前記建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、前記建築物の屋根又は外壁に対応する前記3次元モデルの表面に含まれる第1の面を、複数の離散化領域に離散化する離散化処理部と、
前記離散化領域が前記建築物における受雷部による保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、前記離散化領域ごとに前記保護範囲の診断処理をする診断処理部と、
を備えることを特徴とする受雷部保護範囲診断装置。
【請求項2】
前記離散化処理部は、
前記第1の面を離散化する際の前記離散化領域の広さが、雷撃頻度に基づいて定められる基準により定められる
ことを特徴とする請求項1に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項3】
前記離散化処理部は、
前記第1の面の外周から内側の領域であって、該外周から所定の距離に含まれる第1領域に囲まれた第2領域が存在するか否かの判定を行い、前記第2領域が存在すると判定した場合には、前記第1領域と前記第2領域とに分けて、予め定められた前記基準に従って前記第1の面を離散化し、前記第2領域が存在しないと判定した場合には、予め定められた前記基準に従って前記第1の面を離散化し、
前記第1領域と前記第2領域とに分けて前記第1の面を離散化する前記基準は、
前記第1領域を離散化した第1離散化領域の広さと、前記第2領域を離散化した第2離散化領域の広さとが異なるように、前記第1領域と前記第2領域とにそれぞれ定められる
ことを特徴とする請求項2に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項4】
前記離散化処理部は、
前記第1領域と前記第2領域とにそれぞれ定められた前記基準により、前記第1離散化領域より前記第2離散化領域が広くなるように離散化する
ことを特徴とする請求項3に記載の
受雷部保護範囲診断装置。
【請求項5】
前記診断処理部は、
前記離散化領域には前記離散化領域の位置を示す代表点がそれぞれ設けられており、
前記設けられた代表点ごとに、該代表点が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、前記診断処理をする
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項6】
前記離散化領域に応じた前記代表点を前記離散化領域内に配置する代表点設定部
を備えることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項7】
前記代表点設定部は、
前記3次元モデルの表面が前記第1の面及び第2の面を含む複数の多角形の組み合わせにより構成されており、それぞれの法線方向が異なる前記第1の面と前記第2の面において、前記第1の面の辺と前記第2の面の辺とが互いに接しており、前記互いに接している辺に面した前記第1領域に含まれる前記第1離散化領域の代表点を前記互いに接している辺の上に配置する
ことを特徴とする請求項6に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項8】
前記代表点設定部は、
前記3次元モデルの表面に含まれる面として、前記第1の面と前記第2の面とに対して法線方向が異なる第3の面があり、前記第3の面の複数の頂点のうち前記第1の面の頂点と前記第2の面の頂点に一致する頂点があり、前記第1の面と前記第2の面と前記第3の面に共通する頂点を含む前記第1離散化領域の代表点を、前記共通する頂点の位置に配置する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項9】
前記代表点設定部は、
前記代表点を前記離散化領域の重心又は前記離散化領域として示される多角形の頂点の位置に配置する
ことを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項10】
前記代表点設定部は、
前記離散化領域に応じて複数の前記代表点を設け、前記複数の代表点に対応する前記離散化領域の頂点に対応させてそれぞれ配置する
ことを特徴とする請求項6から9の何れか一項に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項11】
前記診断処理部は、
診断対象である特定の前記離散化領域に設けられた前記複数の代表点が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断し、前記複数の代表点のうち全ての前記代表点が前記受雷部保護範囲に含まれる場合に、前記診断対象である離散化領域が前記受雷部保護範囲に含まれると診断する診断処理をする
ことを特徴とする請求項10に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項12】
前記代表点設定部は、
前記第1の面と前記第2の面に接する辺に面していない前記離散化領域の代表点を、前記代表点に対応する前記離散化領域内に配置する
ことを特徴とする請求項6から9の何れか一項に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項13】
前記診断処理部は、
診断対象である特定の前記離散化領域に設けられた前記代表点が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断し、前記代表点が前記受雷部保護範囲に含まれる場合に、前記診断対象である離散化領域が、前記受雷部保護範囲に含まれると診断する診断処理をする
ことを特徴とする請求項12に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項14】
前記診断処理部は、
前記離散化領域が前記受雷部保護範囲に含まれるか否かを診断する診断方法として、メッシュ法に基づく診断方法、保護角法に基づく診断方法、及び、回転球体法に基づく診断方法のうち少なくとも何れかの診断方法を含む診断処理をする
ことを特徴とする請求項2から13の何れか一項に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項15】
前記診断処理部は、
前記診断方法として、前記メッシュ法に基づく診断方法、前記保護角法に基づく診断方法、及び、前記回転球体法に基づく診断方法のうちから何れか2つの診断方法を含む診断処理をするものであり、
前記診断処理部は、
前記診断方法として含まれる第1の前記診断方法による診断処理を先に行い、前記診断処理により非保護領域と診断された領域に対して第2の前記診断方法による診断処理をする
ことを特徴とする請求項14に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項16】
前記診断処理部は、
前記診断方法として、前記メッシュ法に基づく診断方法、前記保護角法に基づく診断方法、及び、前記回転球体法に基づく診断方法を含む診断処理をする
ことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項17】
前記診断処理部は、
前記メッシュ法に基づく第1の診断処理を先に行い、次に前記第1の診断処理により保護範囲に含まれないと診断された領域に対して前記保護角法に基づく第2の診断処理を行い、続いて前記第1の診断処理と前記第2の診断処理とにより保護範囲に含まれないと診断された領域に対して前記回転球体法による第3の診断処理をする
ことを特徴とする請求項16に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項18】
前記診断処理部は、
前記回転球体法に基づいて診断する診断方法を含む場合、前記回転球体法による診断方法に基づいて、前記3次元モデルの外部に配置される予め定められた所定の半径の球であって、判定対象の前記離散化領域の前記代表点のうちの特定の前記代表点だけが前記球の表面上の1点として含まれるように配置される全ての球が、予め定められた所定の条件を満たす場合に、前記特定の代表点の位置は、前記受雷部保護領域に含まれると判定し、前記特定の代表点の位置が前記受雷部保護領域に含まれると判定する前記所定の条件は、前記建築物の3次元モデルの表面、前記建築物が配置される地面に相当する前記3次元モデルにおける基準面、及び、前記建築物を直撃雷から保護する受雷部の位置が、前記球体内に含まれることとする
ことを特徴とする請求項14から請求項17の何れか一項に記載の受雷部保護範囲診断装置。
【請求項19】
診断対象とする建築物の受雷部による雷保護範囲を診断する受雷部保護範囲診断装置が備えるコンピュータを、
前記建築物をモデル化した3次元モデルにおいて、前記建築物の屋根又は外壁に対応する前記3次元モデルの表面に含まれる第1の面を、複数の離散化領域に離散化する離散化処理部と、
前記離散化領域が前記建築物における受雷部保護範囲に含まれるか否かの判定結果に基づいて、前記離散化領域ごとに前記受雷部保護範囲の診断処理をする診断処理部
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2013−97472(P2013−97472A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238006(P2011−238006)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(000128083)株式会社 NTTファシリティーズ総合研究所 (42)
【Fターム(参考)】