説明

口唇用油性化粧料

【課題】唇に塗布した際につやが高く、顔料の分散と塗布感触に優れ、かつ経時でのにじみが起こりにくいスティック状口紅等の口唇用油性化粧料を得る。
【解決手段】リンゴ酸等の炭素数3〜10のヒドロキシジカルボン酸と2−オクチルドデカノール等の炭素数20〜30の分岐アルコールから構成される液状ジエステル油0.5〜40重量%と顔料を含有する口唇用油性化粧料。さらにエチレン・ジメチルシロキサンコポリマーワックスやポリオキシアルキレン変性シリコーンを含有するとにじみ抑制効果が増し、好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は唇に塗布した際につやが高く、顔料の分散と塗布感触に優れかつ経時でのにじみが起こりにくい口唇用油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅などの口唇用油性化粧料は唇に色とつやを付与するために用いられるが、時間がたつと、唇の縦皺などに油がひろがることによるにじみ現象が起こりがちである。このような口唇用油性化粧料のにじみを抑制するために、例えばデキストリン脂肪酸や有機変性粘土鉱物などのオイルゲル化剤によってオイルを保持する方法(特許文献1、2)、中空シリカなどの高吸油性粉体を用いる方法(特許文献3)、低極性オイルを用いる方法(特許文献4)などが開示されている。しかしながら、ゲル化剤や高吸油性粉体の添加は、オイルの動きを妨げる作用によるものであるため、つやの低下や感触が重くなる問題が起こりがちであり、また低極性オイルは顔料の分散性が悪化する傾向があった。
【0003】
【特許文献1】特開2002-193749号公報
【特許文献2】特開2003-183128号公報
【特許文献3】特開2004-182667号公報
【特許文献4】特開平8-217639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、唇に塗布した際につやが高く、顔料の分散と塗布感触に優れ、かつ経時でのにじみが起こりにくい口唇用油性化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定のヒドロキシジカルボン酸エステルを用いると、つやの低下や顔料分散性と感触の悪化を引き起こさずに、にじみのみを抑制できることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、炭素数3〜10のヒドロキシジカルボン酸と炭素数20〜30の分岐アルコールから構成される液状ジエステル油0.5〜20重量%及び顔料を含有する口唇用油性化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の口唇用油性化粧料は、唇に塗布した際につやが高く、顔料の分散と塗布感触に優れ、かつ経時でのにじみが起こりにくいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いるヒドロキシジカルボン酸のジエステルは炭素数3〜10、好ましくは4〜6のヒドロキシジカルボン酸と炭素数20〜30、好ましくは20〜24の分岐アルコールから構成される液状ジエステル油である。ここで「液状」とは、25℃で液体状態であることをいう。
【0009】
本発明の分岐アルコールの液状ジエステル油を構成するヒドロキシジカルボン酸としては、リンゴ酸、シトラマル酸(2-メチルリンゴ酸)、3-ヒドロキシグルタル酸、3-メチル-3-ヒドロキシグルタル酸等があげられる。また、分岐アルコールとしては、2−オクチルドデカノールや2−デシルテトラデカノール等のゲルベ型分岐高級アルコールが挙げられる。この中で、リンゴ酸ジ2−オクチルドデシルが、にじみを抑制する効果が高く好ましい。
【0010】
かかる液状ジエステル油は、例えば、炭素数3〜10のヒドロキシジカルボン酸と炭素数20〜30の分岐アルコールとを硫酸等の酸触媒の存在下、高温、例えば約50〜200℃、脱水条件下で反応させ、次いで脱酸、真空蒸留し、不純物を除去することにより製造できる。この際、炭素数3〜10のヒドロキシジカルボン酸1モルに対し、炭素数20〜30の分岐アルコールを2モル以上、好ましくは2〜10モル用い、ジエステルを得る。
【0011】
本発明で用いるヒドロキシジカルボン酸のジエステルは、化粧品で汎用されている炭素数が18以下の分岐アルコールのヒドロキシジカルボン酸ジエステル、例えば、リンゴ酸ジイソステアリルやリンゴ酸ジ2-エチルヘキシルなどとくらべ、格段に優れたにじみ抑制効果を示す。炭素数が10を越えるヒドロキシ酸のエステル、例えば12-ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシルなどは、塗布した感触が重くなり、またつやも低下する。炭素数が10以下でもモノエステル構造、例えば乳酸オクチルドデシルなどは、にじみを抑制する効果が発現しない。
【0012】
本発明のヒドロキシジカルボン酸ジエステルの含有量は、塗布した際のつや、顔料分散、塗布感触及びにじみ抑制の点から口唇用油性化粧料中0.5重量%〜40重量%であり、好ましくは3重量%〜20重量%である。
【0013】
本発明の口唇用油性化粧料に用いられる顔料としては、赤色201号、黄色4号、黄色5号、青色1号などのタール系染料のレーキ顔料;赤色202号、赤色226号などのタール系顔料;コチニール、ベニバナなどの天然色素;カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化鉄、群青、紺青などの無機顔料;タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、無水ケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の体質顔料;さらに酸化チタンや酸化鉄被覆を被覆した雲母、合成金雲母、ガラス末等のパール顔料等が挙げられる。これらの顔料は、口唇油性化粧料の発色、使用感の向上、隠蔽性制御などの目的で含有される。目的に応じてフッ素化合物、シリコーン系油、金属石鹸、油脂、ロウ、炭化水素などで公知の方法により表面被覆処理しても良い。これら顔料の口唇用油性化粧料中の含有量は、例えば1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%である。
【0014】
本発明の口唇用油性化粧料には、ヒドロキシジカルボン酸ジエステル以外に基剤として25℃で液体の油性成分、例えば、流動パラフィン,重質流動イソパラフィン、スクワランなどの炭化水素系オイル,イソノナン酸イソトリデシル、ジミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸・イソステアリン酸グリセリル,ジカプリン酸ネオペンチルグリコール,リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ひまし油,マカデミアンナッツオイル,ホホバ油等のエステルやトリグリセライド類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン油類、パーフルオロポリエーテルなどのフッ素油等を用いることができる。これらの油性成分の含有量は、使用時の感触の点から口唇用油性化粧料中、好ましは10〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%である。
【0015】
本発明の口唇用油性化粧料には、ヒドロキシジカルボン酸ジエステルとともにエチレン・ジメチルシロキサン共重合体ワックスを用いると、にじみ抑制効果が向上し、好ましい。エチレン・ジメチルシロキサン共重合体ワックスは、例えば特開2001-48723号公報に記載の方法により製造でき、以下の式(I)で示されるものを例示できる。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1 は、炭素数の最頻値にして32〜70のアルキル基を示し、R2 〜R5 は、同一でも異なってもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)
エチレン・ジメチルシロキサン共重合体ワックスの含有量は、口唇用油性化粧料中好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜5重量%である。
【0018】
本発明の口唇用油性化粧料には、ヒドロキシジカルボン酸ジエステルとともにポリオキシアルキレン変性シリコーンを用いることが、にじみ抑制効果を高める上で好ましい。ポリオキシアルキレン変性シリコーンの含有量は口唇用油性化粧料中、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。ポリオキシアルキレン変性シリコーンとしては、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体またはポリ(オキシエチレン・プロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体が好ましく。市販品では、東レダウコーニング社のSH3771、SH3772、SH3773、3775M、BY-22-008M、BY11-030や信越シリコーン社のKF6011、KF6012、KF6013、KF6015、KF6016、KF6017などが相当する。
【0019】
本発明の口唇用油性化粧料には、ヒドロキシジカルボン酸ジエステルとともに25℃で液体の油性成分の一つとして重質流動イソパラフィンを用いることが、にじみの抑制に加えて潤い感の持続性も向上し、好ましい。ここで重質流動イソパラフィンとは、イソブテンとn-ブテンの共重合体を水素添加したもので、市販品としてパールリ−ム18、同24、同46(以上日本油脂)がある。重質流動イソパラフィンの含有量は、ヒドロキシジカルボン酸ジエステル1重量部に対して好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜4重量部であり、口唇用油性化粧料中、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは3〜20重量%である。
【0020】
本発明の口唇用油性化粧料には、上記以外に、25℃で固体又は半固体の油性成分や油ゲル化剤を用いることで、固形状とすることができる。25℃で固体又は半固体の油性成分ないし油ゲル化剤としては、固体パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、低分子ポリエチレン、低分子ポリオレフィン、ワセリン等の炭化水素系ワックス類;ラノリン、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ラノリン等の天然ワックス類;ステアリン酸、ベヘニン酸等の長鎖脂肪酸類;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;脂肪酸コレステリル、脂肪酸フィトステアリル、硬化ヒマシ油、12−ヒドロキシステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル;ジアルキルルリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム等のアルキルリン酸塩などが挙げられる。
【0021】
25℃で固体又は半固体の油性成分ないし油ゲル化剤の含有量は、使用時の感触の点から本発明の口唇用油性化粧料中、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%である。
【0022】
また、本発明の口唇用油性化粧料には、上記成分に加え、染料、界面活性剤、酸化防止剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤等を適宜含有させることができる。
【0023】
本発明の口唇用油性化粧料は、例えばロールミル(ディスパーザー)を用いて全成分均一に成るまで混合し、これを加熱溶解状態で金型に流し込み、冷却固化することにより製造できる。
【実施例】
【0024】
表1に示す組成のスティック状口紅を製造し、得られた口紅について、塗布感触、顔料分散性等を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0025】
【表1】

【0026】
(製法)
各成分をロールミルで混合し、90℃で加熱融解、ホモミキサーで攪拌し、顔料や粉体が均一に分散されたことを確認した後、脱泡し、これをアルミ製金型に流し込み、室温まで冷却して、スティック状口紅を得た。
【0027】
(評価方法)
使用性能:
専門パネル10名が実際に口紅を塗布し、塗布感触を自己評価した。「塗布感触が良い」「潤い感が持続する」と評価したパネラーの数を示した。
【0028】
口紅のにじみにくさ:
専門パネル10名が実際に唇を塗布し、3時間後のにじみ程度を自己評価した。にじみが起きていないと評価した専門パネルの人数を示した。
【0029】
顔料の分散性評価:
口紅をへらで十分練った後、流動パラフィンで100倍に希釈したサンプルについて、顔料の平均粒径を光学顕微鏡で観察した。
【0030】
光沢評価:
ウレタン製人工皮革に口紅を塗布し、光沢計(ミノルタGM268)を用いて光沢値を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数3〜10のヒドロキシジカルボン酸と炭素数20〜30の分岐アルコールから構成される液状ジエステル油0.5〜40重量%及び顔料を含有する口唇用油性化粧料。
【請求項2】
分岐アルコールが2−オクチルドデカノールである請求項1記載の口唇用油性化粧料。
【請求項3】
ヒドロキシジカルボン酸がリンゴ酸、2-メチルリンゴ酸、3-ヒドロキシグルタル酸及び3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸から選ばれるものである請求項1または2記載の口唇用油性化粧料。
【請求項4】
さらにエチレン・ジメチルシロキサンコポリマーワックスを含有する請求項1〜3いずれか記載の口唇用油性化粧料。
【請求項5】
さらにポリオキシアルキレン変性シリコーンを含有する請求項1〜4いずれか記載の口唇用油性化粧料。
【請求項6】
さらに重質流動イソパラフィンを含有する請求項1〜5いずれか記載の口唇用油性化粧料。

【公開番号】特開2006−89411(P2006−89411A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277160(P2004−277160)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】