説明

口紅オーバーコート

【課題】 塗布する際の物理的摩擦により口紅化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性(化粧膜が他の物質に移らない事)等の口紅の化粧もちに優れた口紅オーバーコートに関するものである。
【解決手段】 次の成分(A)〜(C);(A)部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物(B)フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン(C)有機粉体を配合することを特徴とする口紅オーバーコート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅オーバーコートに関し、詳細には、塗布した際に物理的摩擦により口紅の化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性(化粧膜が他の物質に移らない事)等の口紅の化粧もち効果に優れた口紅オーバーコートを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、口紅オーバーコートは、口紅を塗布した上に塗布することにより、口紅の化粧効果の持続性の向上や、衣類や食器、皮膚等との接触による色移り防止を目的としており、例えば、パーフルオロアルキル基含有フッ素変性シリコーンと粉末とを組み合わせ、化粧効果の持続性を向上させた口紅オーバーコート(例えば特許文献1参照)が報告されている。しかしながら、この口紅オーバーコートは化粧持続性を向上させる目的で粉末を高配合するために、ペースト状あるいはクリーム状と粘性が高く、塗布する際に物理的摩擦により口紅の化粧膜を崩してしまう。またオーバーコート自体も時間の経過とともにツヤがなくなるため、口紅のツヤまでも損なってしまう欠点を有する。さらに、エラストマーオルガノポリシロキサンとフッ素基含有化合物とを組み合わせ、耐油性を向上させた化粧料(例えば特許文献2参照)が報告されている。しかしながら、この化粧料はエラストマーオルガノポリシロキサンとフッ素基含有化合物との相溶性が悪く、塗布後形成される化粧膜が均一ではないために十分な色移り防止機能がなく、またツヤを付与するものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平8−295614号公報
【特許文献2】特開2000−327528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、塗布する際に物理的摩擦により口紅の化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性(化粧膜が他の物質に移らない事)等の口紅の化粧持ち効果に優れた口紅オーバーコートの開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情を鑑み、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物、フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン及び有機粉体を組み合わせた口紅オーバーコートが、塗布時は口紅の化粧膜との抵抗が少なく化粧膜を崩さずに伸び広がり、塗布後は徐々に口紅化粧膜との親和性が向上し、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(C);
(A)部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物
(B)フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン
(C)有機粉体
を配合することを特徴とする口紅オーバーコートを提供するものである。
さらに成分(C)の有機粉体の配合量が0.001〜10質量%(以下単に「%」で示す。)であることを特徴とする口紅オーバーコートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の口紅オーバーコートは、塗布する際の物理的摩擦により口紅化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性(化粧膜が他の物質に移らない事)等の口紅の化粧持ち効果に優れた口紅オーバーコートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(A)の部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物は、部分的に架橋結合を有する三次元構造を呈するシリコーン系エラストマーにフッ素置換アルキル基を導入した化合物である。このような部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物としては、例えば特開2001−342255号公報に記載した化合物が挙げられる。例えば、INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)で(トリフルオロプロピルジメチコン/トリフルオロプロピルジビニルジメチコン)クロスポリマーが挙げられる。
【0009】
成分(A)の特定のオルガノポリシロキサン重合物を得るには、下記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び下記一般式(2)で示されるオルガノポリシロキサンを白金化合物(例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸−ビニルシロキサン錯体等)、又はロジウム化合物の存在下、室温又は加温下(約50℃〜120℃)で反応させればよい。反応を行なう際には無溶媒で行なってもよいし、必要に応じて有機溶媒を使用してもよい。有機溶媒としては具体的には、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン系溶剤等が挙げられる。しかしながら、化粧料用途として用いるためには、無溶媒、若しくはエタノール、2−プロパノールが好ましい。
【0010】
SiO(4−a−b)/2 …(1)
SiO(4−c−d)/2 …(2)
(但し、式中Rはそれぞれ同じか又は異なってもよく、脂肪族不飽和結合を有しない、置換又は非置換の、炭素数1〜20の一価炭化水素基であって、その11〜60モル%がフッ素基置換一価炭化水素基である一価炭化水素基であり、Rは末端ビニル基を有する炭素数2〜10の一価炭化水素基であり、aは1.0〜2.3、bは0.001〜1.0、cは1.0〜2.3、dは0.001〜1.0であって、1.5≦a+b≦2.6、1.5≦c+d≦2.6を満たす。)
【0011】
成分(A)の特定のオルガノポリシロキサン重合物は、三次元架橋構造を有し、有機溶媒に不溶なものである。ここでいう有機溶媒とは、直鎖状あるいは分岐状のペンタン、ヘキサン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、デカノール等のアルコール系有機溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒の他、低粘度のジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系化合物等が挙げられる。また、本発明に使用される成分(A)の特定のオルガノポリシロキサン重合物は、自重と同質量以上のペンタ−3,3,3−トリフルオロプロピルペンタメチルシクロペンタシロキサンを含みうることを特徴とする。
【0012】
成分(A)は目的に応じてその1種又は2種以上を用いることができ、その配合量は特に限定されないが、口紅オーバーコート中に5〜45%が好ましく、特に10〜25%が特に好ましい。成分(A)が5%未満では、口紅オーバーコートの粘性が低く、成分(C)の沈降、凝集等が生じ、安定性が損なわれることがある。また、45%を超えて含有すると、口紅オーバーコートの粘性が高く、塗布しづらくなることがある。
【0013】
本発明に用いられる成分(B)のフルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンは、有機基として分子中に少なくとも一つ以上のフルオロアルキル基を有する環状オルガノポリシロキサンである。フルオロアルキル基として具体的には、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘプタデシルフルオロデシル基等のフッ素置換アルキル基が挙げられ、特にトリフルオロプロピル基が好ましい。
【0014】
成分(B)のフルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が200mm/s以下が好ましく、特に好ましいのは20〜180mm/sである。この範囲であれば、成分(A)の特定のオルガノポリシロキサン重合物との親和性においてより良好なものを得ることができる。
【0015】
成分(B)のフッ素基含有環状オルガノポリシロキサンは、粘度や成分(A)の特定のオルガノポリシロキサン重合物との親和性から、下記一般式(3)で示されるフルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンが特に好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、pは4〜6の整数である。)
具体的には、特開平09−268110号公報記載されるものが挙げられ、例えばINCI名でトリフルオロプロピルシクロテトラシロキサン/トリフルオロプロピルシクロペンタシロキサン(KF−5002:信越化学工業社製)が挙げられる。
【0018】
成分(B)は、目的に応じてその1種又は2種以上を用いることができ、その配合量は特に限定されないが、口紅オーバーコート中に55〜94%が好ましく、75〜90%が特に好ましい。この範囲であれば、本発明の効果が十分に発揮できる。
【0019】
本発明において、成分(A)の特定のオルガノポリシロキサン重合物は、成分(B)のフルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンと混練することにより、ペースト状の組成物を得ることができる。予め、成分(A)と成分(B)の一部とを混練した組成物を製造することにより、成分(B)の流動特性を調整することができるため、製造時の操作性が良好で、且つより安定性に優れた口紅オーバーコートを得ることができる。
前記ペースト状の組成物を得るには、通常の攪拌機で行なっても構わないが、剪断力下の混練処理を行なうことが好ましい。これは成分(A)の特定のオルガノポリシロキサン重合物が有機溶媒不溶の三次元架橋構造を有しているため、剪断力下で充分な分散性を与えることにより、ペースト状の組成物が得られるためである。混練処理としては、例えば3本ロール、2本ロール、サンドラグラインダー、コロイドミル、高粘度ミキサー、ガウリンホモジナイザー、ディスパーズミル等で行なうことができるが、好ましくは3本ロール、高粘度ミキサー、ディスパーズミルによる方法が好ましい。
得られたペースト状の組成物の口紅オーバーコートへの配合量は、25〜99.8%が好ましく、30〜99.5%が更に好ましい。この範囲であれば、塗布した際に物理的摩擦により口紅化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに化粧持ちに優れた口紅オーバーコートを得ることができる。また、成分(A)と成分(B)の質量比率は1:99〜50:50が好ましく、更に好ましくは、5:95〜30:70であり、この範囲であると製造時の操作性が良好なものが得られる。
【0020】
本発明で用いられる成分(C)の有機粉体は、球状、針状、板状等の形状や煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径さらに多孔質、中空、無孔質等の粒子構造を問わず、成分も通常化粧料に用いられている有機物であればいずれのものも使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ナイロン、部分架橋型シリコーンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサン、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレン、ウレタン、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー、N−アシルリジンパウダー等が挙げられる。特にポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ナイロンが耐移行性を高める上で好ましい。
【0021】
成分(C)は、必要に応じて、1種又は2種以上を用いることができ、その配合量は、口紅オーバーコート中0.001〜10%が好ましく、更に好ましくは、0.1〜5%である。成分(C)が0.001%未満であると、口紅オーバーコートの耐移行性(化粧膜が他の物質に移らない事)が損なわれることがあり、また、10%を超えて配合すると、塗布した際のツヤが損なわれることがある。
【0022】
さらに、本発明においては、前記必須成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば炭化水素、高級脂肪酸エステル、動植物油脂、シリコーン等の化粧品用油剤、界面活性剤、粉体、水性成分、酸化防止剤、香料、色素、アルコール、多価アルコール、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、水等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0023】
本発明の口紅オーバーコートは、成分(A)の部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物に、成分(B)のフルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンを混合し、さらに成分(C)の有機粉体を加え、混合することにより製造することができ、液状あるいはペースト状の形態とすることが特に好ましい。
【0024】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0025】
合成例1 オルガノポリシロキサン重合物1
反応器中に下記平均組成式(4)
【0026】
【化2】

【0027】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを118質量部と、下記平均組成式(5)
【0028】
【化3】

【0029】
で示されるビニル変性オルガノポリシロキサン175質量部を仕込み、塩化白金酸2%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.1質量部を加え、内温を70〜80℃に維持して2時間攪拌し、弾力性のあるオルガノポリシロキサン重合物1を得た。
【0030】
合成例2 オルガノポリシロキサン重合物2
反応器中に下記平均組成式(6)
【0031】
【化4】

【0032】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを567質量部と、下記平均組成式(7)
【0033】
【化5】

【0034】
で示されるビニル変性オルガノポリシロキサン995質量部を仕込み、塩化白金酸2%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.1質量部を加え、減圧下で内温を70〜80℃に維持して2時間攪拌し、弾力性のあるオルガノポリシロキサン重合物2を得た。
【0035】
製造例1 ペースト状組成物1の調製
合成例1のオルガノポリシロキサン重合物1を20質量部と、フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンとして、テトラ−3,3,3−トリフルオロプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサン/ペンタ−3,3,3−トリフルオロプロピルペンタメチルシクロペンタシロキサン混合物(1/1質量比、粘度60mm/s)80質量部を混合し、3本ロールで充分混練することにより、チキソトロピー性を持つ、半透明なペースト状組成物1を得た。
【0036】
実施例1〜5及び比較例1〜8:口紅オーバーコート(ゲル状)
表1に示す組成の口紅オーバーコートを調製し、「塗布時の口紅化粧膜の崩れのなさ」、「3時間後の化粧持ち」、「ツヤ感」、「耐移行性」(色移り防止効果)、「耐水性」、「耐油性」について以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
*1:オルガノポリシロキサン重合物1
*2:KF−5002(信越化学工業社製)
*3:KSG−16(信越化学工業社製)
*4:FL−100(信越化学工業社製)
*5:ガンツパールGS−0605(ガンツ化成社製)
*6:マツモトマイクロスフェアーM(松本油脂社製)
*7:SP−500(東レ社製)
*8:サイロイド55(富士デヴィソン化学社製)
*9:アルミナAKS−G(住友化学社製)
(製造方法)
A.成分(1)〜(4)を均一に混合する。
B.Aに成分(5)〜(12)を添加し、均一に分散する。
C.Bを容器に充填して口紅オーバーコートを得た。
【0039】
(評価方法1):「塗布時の口紅化粧膜の崩れのなさ」「3時間後の化粧持ち」「ツヤ感」「耐移行性」(色移り防止効果)
化粧品評価専門パネル20名に市販の口紅を塗布した上に各試料を使用してもらい、「塗布時の口紅化粧膜の崩れのなさ」、「3時間後の化粧持ち」、「ツヤ感」について、各自が以下の評価基準に従って7段階に評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って4段階に判定した。尚、「耐移行性」については、各試料をヒト上腕部に市販の口紅を長さ3cmに2回塗布し、その上に口紅オーバーコートを塗布した後、ティッシュを軽く押し付けて、ティッシュへの色移りを観察し、耐移行性を判断した。
(評価基準)
(評点):(評価)
6 :非常に良い
5 :良い
4 :やや良い
3 :普通
2 :やや悪い
1 :悪い
0 :非常に悪い
(判定基準)
(評点の平均点) :(評価)
5.0以上 :◎(非常に良好)
3.5以上5.0未満:○(良好)
1.0以上3.5未満:△(普通)
1.0未満 :×(不良)
【0040】
(評価方法2):「耐水性」
前記実施例及び比較例の口紅オーバーコートをガラス板に2mg/cm均一に塗布し、流水中に20分置いた後の残量を以下の評価基準により4段階判定基準により判定した。
(評価基準)
(内容) :(判定)
塗布量の90%以上残っている :◎
塗布量の70%以上90%未満残っている:○
塗布量の50%以上70%未満残っている:△
塗布量の50%未満残っている :×
【0041】
(評価方法3):「耐油性」
前記実施例及び比較例の口紅オーバーコートをガラス板に2mg/cm均一に塗布し、流動パラフィンを1滴滴下して接触角を測定し、以下の評価基準により4段階判定基準により判定した。
(評価基準)
(内容) :(判定)
接触角65°%以上 :◎
接触角45°以上65°未満:○
接触角10°以上45°未満:△
接触角10°未満 :×
【0042】
表1の結果から明らかなように、実施例の口紅オーバーコートは、「塗布時の口紅化粧膜の崩れのなさ」、「3時間後の化粧持ち」、「ツヤ感」、「耐移行性」(色移り防止効果)、「耐水性」、「耐油性」の全ての項目において優れた口紅オーバーコートであった。
一方、比較例1の成分(A)部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物と成分(B)フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサンとの混合物のみでは、化粧持ちと耐移行性に劣り、成分(A)に代えて、フッ素を含有していない部分架橋型オルガノポリシロキサンと成分(B)に代えて、鎖状のフッ素含有ポリシロキサンを用いた、比較例2と3では、両者とも特に化粧持ちにおいて、また、それぞれでツヤ感、耐移行性、耐水性、耐油性について劣るものであった。成分(B)に代えて鎖状のフッ素含有ポリシロキサンを用いた比較例4と、成分(A)に代えてフッ素を含有していない部分架橋型オルガノポリシロキサンを用いた比較例5は特に化粧持ちにおいて劣るものであった。また、成分(C)の有機粉体に代えて、種々の粉体を用いた比較例6〜10は、何れも実施例に比べ劣るものであったが、耐移行性に関しては、比較例6、7は優れていたが、粘性が高く、塗布時の口紅化粧膜を崩し、またツヤ感がないものであった。
【0043】
実施例6:口紅オーバーコート(液状)
(成分) (%)
1.部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物*1 15
2.フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン*2 83.45
3.ポリスチレン*5 0.05
4.雲母チタン 1
5.赤202号 0.1
6.黄色4号 0.1
7.防腐剤 0.3
(製造方法)
成分(1)に成分(2)を添加し、均一に混合後、さらに成分(3)〜(7)を混合して口紅オーバーコートを製造する。
本発明の口紅オーバーコートは、塗布する際の物理的摩擦により口紅化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性に優れた口紅オーバーコートであった。
【0044】
実施例7:口紅オーバーコート(ペースト状)
(成分) (%)
1.部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物*10 45
2.フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン*11 51.9
3.ポリメタクリル酸アルキル*6 1
4.雲母チタン 2
5.グリセリン 0.1
*10:オルガノポリシロキサン重合物2
*11:テトラ−3,3,3−トリフルオロプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサン/ペンタ−3,3,3−トリフルオロプロピルペンタメチルシクロペンタシロキサン混合物(1/1質量比、粘度60mm/s)
(製造方法)
成分(1)に成分(2)を添加し、均一に混合後、さらに成分(3)〜(5)を混合して口紅オーバーコートを製造する。
本発明の口紅オーバーコートは、塗布する際の物理的摩擦により口紅化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性に優れた口紅オーバーコートであった。
【0045】
実施例8:口紅オーバーコート(液状)
(成分) (%)
1.製造例1のペースト状組成物1 80
2.フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン*2 17.8
3.ポリスチレン*5 1
4.雲母チタン 1
5.赤202号 0.1
6.香料 0.1
(製造方法)
成分(1)に成分(2)を添加し、均一に混合後、さらに成分(3)〜(6)を混合し、容器に充填して口紅オーバーコートを得た。
本発明の口紅オーバーコートは、塗布する際の物理的摩擦により口紅化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性に優れた口紅オーバーコートであった。
【0046】
実施例9:口紅オーバーコート(液状)
(成分) (%)
1.部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物*1 10
2.フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン*12 73.89
3.ナイロン*7 15
4.雲母チタン 1
5.ヒアルロン酸 0.01
6.香料 0.1
(製造方法)
成分(1)に成分(2)を添加し、均一に混合後、さらに成分(3)〜(6)を混合し、容器に充填して口紅オーバーコートを得た。
本発明の口紅オーバーコートは、塗布する際の物理的摩擦により口紅化粧膜を崩すことなく、且つツヤを付与し、さらに耐水性、耐油性、耐移行性に優れた口紅オーバーコートであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)部分架橋型フッ素変性オルガノポリシロキサン重合物
(B)フルオロアルキル基含有環状オルガノポリシロキサン
(C)有機粉体
を配合することを特徴とする口紅オーバーコート。
【請求項2】
前記成分(C)の有機粉体の配合量が0.001〜10質量%であることを特徴とする請求項1記載の口紅オーバーコート。
【請求項3】
前記成分(C)の有機粉体が、ポリスチレン、ポリアクリル酸アルキル、ポリメタアクリル酸アルキル、ナイロンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の口紅オーバーコート。

【公開番号】特開2006−273827(P2006−273827A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100269(P2005−100269)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】