説明

口腔内崩壊錠及びその製造方法

【課題】
本発明は、いかなる主薬を用いたとしても、普通錠と同等の錠剤の硬度、つまり適度の機械的強度を付与しながら、口腔内での崩壊時間が短く、かつ服用感のよい口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、(a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)崩壊剤、(e)粉末状の甘味剤を含有し、崩壊試験法(日本薬局方)での崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上であることを特徴とする口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内崩壊錠及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊錠は、高齢者、小児及び嚥下困難な患者に飲みやすくする剤形で、水なしで服用することが可能なことから、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を向上させる剤形として注目されている。
【0003】
一般に、口腔内崩壊錠は、服用後速やかに崩壊するが、機械的強度が弱く、自動分封機に付することが困難であるなどの問題がある。また、服装後速やかに崩壊するため、当然のことながら服用感がよくなければならない。
【0004】
口腔内崩壊錠の添加物としては、一般に崩壊性が良好である糖アルコールが好適に使用される。しかし、糖アルコールは、通常、細かい粉末状であり、成形性が悪く、そのままでは打錠により成形することができない。また、糖アルコールに結晶セルロースなどのセルロース系の賦形剤を混合することによって、打錠性を確保することが提案されている(例えば、特許文献1)が、糖アルコールが平均粒径40μmより小さい微粉の場合には成形性を改善することは困難である。
【0005】
ところで、平成17年4月より改正された薬事法が施行されたことにより、医薬品メーカーは、医薬品の製造を外部へ委託することができるようになった。そして、医薬品の製造を受託するビジネスが普及しはじめた。すると、製造を受託するビジネスを行う立場としては、口腔内崩壊錠においては、あらゆる医薬品に対応することができ、服用感が良好であり、かつ、低コストである製造技術を持ち合わせていることが要求される。
【0006】
【特許文献1】特開2004−175796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、いかなる主薬を用いたとしても、普通錠と同等の錠剤の硬度、つまり適度の機械的強度を付与したものであって、口腔内での崩壊時間が短く、かつ服用感のよい口腔内崩壊錠及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来の口腔内崩壊剤の添加物について鋭意検討を行った結果、糖アルコールは、平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒物を用い、甘味剤は粉末状のものを用いることにより、いかなる主薬を用いたとしても、口腔内崩壊錠の機械的強度の向上と口腔内での崩壊性というトレードオフの関係となる特性の双方について、十分満足する特性を得ることができ、かつ服用感が良好である口腔内崩壊錠が製造できることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] (a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)崩壊剤、(e)粉末状の甘味剤を含有し、口腔内における崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上であることを特徴とする口腔内崩壊錠、
[2] (a)主薬が、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬及び鎮痛鎮痙薬からなる群より選択される少なくとも1である[1]に記載の口腔内崩壊錠、
[3] (a)主薬が、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド及びアカルボースからなる群より選択される少なくとも1である[1]に記載の口腔内崩壊錠、
[4] (a)主薬が苦味を有するものであり、さらに、コーティング剤で覆われてなる[1]に記載の口腔内崩壊錠、
[5] コーティング剤が、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ステアリルアルコール、メタクリル酸コポリマー、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、グリセリン、軽質無水ケイ酸、流動パラフィン、合成ケイ酸アルミニウム、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、酸化チタン、酸化マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸誘導体、セラック、タルク、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、マクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリビニルアルコール、クエン酸及びマンニトールからなる群より選択される少なくとも1である[4]に記載の口腔内崩壊錠、
[6] (b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールが、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール及びラクチトールからなる群より選択される少なくとも1の平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒物である[1]に記載の口腔内崩壊錠、
[7] (b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールが、担体に糖アルコールが吸着されてなるものである[1]に記載の口腔内崩壊錠、
[8] (c)セルロース類が、平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒物であって、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1である[1]に記載の口腔内崩壊錠、
[9] (d)崩壊剤が、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん、部分α化澱粉、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース及びヒドロキシプロピルスターチからなる群より選ばれる少なくとも1である[1]に記載の口腔内崩壊錠、
[10] (e)粉末状の甘味剤が、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、サッカリン、ソルビトール、乳糖水和物、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ブドウ糖、ショ糖、果糖、サッカリン、スクラロース、マルトース、マンニトール、マルチトール、エリスリトール及びキシリトールからなる群より選ばれる少なくとも1の粉末である請求項1記載の口腔内崩壊錠、
[11] (a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)結合剤、(e)粉末状の甘味剤を混合し、圧縮成形により、崩壊試験法(日本薬局方)での崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上となるような条件で成形された口腔内崩壊錠、
及び、[12] (a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)結合剤、(e)粉末状の甘味剤を混合し、圧縮成形により、崩壊試験法(日本薬局方)での崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上となるような条件で成形することを特徴とする口腔内崩壊錠の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔内崩壊錠は、平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、粉末の甘味剤を用いることにより、口腔内で崩壊性及び機械的強度が高い。また、本発明の口腔内崩壊錠は、舌触り及び味が良好で、かつ、嚥下がスムーズとなるため服用感が良好である。さらに、本発明の口腔内崩壊錠の製造方法は、特別な装置などを必要とせず、圧縮成形で容易に製造することができるため、製造コストが安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の口腔内崩壊錠は、(a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)崩壊剤、(e)粉末状の甘味剤を含有し、崩壊試験法(日本薬局方)での崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の口腔内崩壊錠における(a)主薬は、通常経口剤として使用可能な主薬であれば、特に限定されるものではない。(a)主薬は、例えば、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬及び鎮痛鎮痙薬などが挙げられる。
【0013】
上記(a)主薬は、化合物名で例示列挙すると、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド及びアカルボースなどが挙げられる。
【0014】
上記(a)主薬は、通常いずれか1が選択されるが、副作用がおきない限りにおいては2種類以上を併用してもよい。
【0015】
(a)主薬は、粉末状、固体状、顆粒状など、いずれの形態であってもよい。その大きさは、特に限定されず、口腔内崩壊錠として服用する際に、舌触り等を考慮して、適宜調整することができる。なお、(a)主薬を適切な形状及び大きさにするためには、例えば、篩又はメンブレンフィルター等により粒径をそろえる方法、ボールミル粉砕機、ハンマーミル粉砕機、ピンミル粉砕機等で粉砕する方法等が挙げられる。また、(a)主薬の含量は、口腔内崩壊錠の製造が容易となる観点から、口腔内崩壊錠の全重量に対して、1重量%以上であることが適しており、50重量%未満であることが好ましい。
【0016】
尚、(a)主薬が苦味を有する場合は、当該苦味を抑制するために、主薬にコーティングを施すことが望ましい。コーティング量は、後述する圧縮成形によりコーティング層が崩壊せず、かつ主薬の除放が遅延しない範囲において適宜設計することができるため、特に限定されるものではない。例えば、主薬に対して重量比で10〜200%、好ましくは30〜100%が選択される。
【0017】
ここで、苦味を有する主薬としては、上述で化合物名により例示列挙したものの中では、例えば、リスペリドン、アムロジピンベシル酸塩、ファモチジン及びゾルピデム酒石酸塩が挙げられる。
【0018】
コーティング剤の原料は、主薬の苦味を抑えることができ、かつ主薬の薬効及び人体に影響が少ないものであれば、特に限定されるものではない。コーティング剤の原料は、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ステアリルアルコール、メタクリル酸コポリマー、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、グリセリン、軽質無水ケイ酸、流動パラフィン、合成ケイ酸アルミニウム、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、酸化チタン、酸化マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸誘導体、セラック、タルク、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、マクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリビニルアルコール、クエン酸及びマンニトールなどが挙げられる。コーティング剤は、主薬との相性を考慮して適宜選択することができる。
【0019】
本発明の口腔内崩壊錠は、第1の賦形剤として、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールを含有する。粉末糖アルコールとは、工業的に結晶化して製造さた糖アルコールをいい。一方、造粒糖アルコールとは、工業的に造粒して製造された糖アルコールをいう。本発明において、平均粒径40μm以上とは、粒径45μm未満の粉末及び/又は造粒物が、15%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満しか存在ない上で、平均粒径40μm以上となることをいう。これらの平均粒径は、例えばレーザー回折、錯乱式粒度分布測定装置(例えばMASTERSIZER2000 Ver.2.00J;MALVERN社製等)及び画像解析装置(例えばLUZEX登録商標 AP;ニコレ社製等)等を用いて測定されたものである。これらの糖アルコールは、微粉末の糖アルコールと比較して成形性が良好であり、かつ舌触りが良好であるため、口腔内崩壊錠を服用した際における服用感を良好にする。尚、結晶物と造粒物は、それぞれ単独で用いることもできるが、併用することもできる。
【0020】
糖アルコールは、口腔内崩壊錠の賦形剤として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。糖アルコールは、例えば、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール及びラクチトールなどが挙げられる。特に、原材料費が安価である観点から、糖アルコールは、マンニトール及びエリスリトールが好ましい。また、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールの含量は、口腔内崩壊錠の製造が容易となる観点から、口腔内崩壊錠の全重量に対して、約50〜70重量%であることが好ましい。
【0021】
さらに、上記(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールは、主に小さい平均粒径を有する第1の(b)粉末及び/又は造粒糖アルコールと、大きい平均粒径を有する第2の(b)粉末及び/又は造粒糖アルコールの2種類の(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールを用いる。ここで、小さい平均粒径とは、約40〜100μm、好ましくは約50〜80μmをいう。また、大きい平均粒径とは、約100〜500μm、好ましくは約100〜300μmをいう。尚、それぞれの平均粒径を有する(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールは、整粒されたものである。また、別の観点から、大きい平均粒径を有する第2の(b)粉末及び/又は造粒糖アルコールは、小さい平均粒径を有する第1の(b)粉末及び/又は造粒糖アルコールの2〜20倍以上の粒径を有し、好ましくは3〜8倍の粒径を有する。
【0022】
また、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールの粒子として、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールの一部乃至全部を担体に吸着させた粒子を用いることもできる。もちろん、これらの粒子も整粒されたものである。担体は、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールを吸着するものであれば特に限定されるものではない。担体は、例えば、多孔性シリカ、軽質無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、含水二酸化ケイ素、カルメロースカルシウム、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0023】
本発明の口腔内崩壊錠は、第2の賦形剤として、(c)セルロース類を含有する。セルロース類は、口腔内崩壊錠の成形性を向上させる役割を有する。(c)セルロース類は、口腔内崩壊錠の賦形剤として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。(c)セルロース類は、例えば、結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びエチルセルロースなどが挙げられる。特に、とりわけ成形性がよい観点から、結晶セルロースが好ましい。また、(c)セルロース類の含量は、口腔内崩壊錠の製造が容易であり、服用感の良好さを維持する観点から、口腔内崩壊錠の全重量に対して、約10〜20重量%であることが好ましい。
【0024】
本発明の口腔内崩壊錠は、(d)崩壊剤を含有する。(d)崩壊剤は、服用時における崩壊性を向上させる役割を有する。(d)崩壊剤は、口腔内崩壊錠の崩壊剤として用いられるものであれば、特に限定されるものではない。(d)崩壊剤は、例えば、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん、部分α化澱粉、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルスターチなどが挙げられる。特に、とりわけ崩壊性がよい観点から、クロスポビドンが好ましい。また、(d)崩壊剤の含量は、機械的強度を損なわないようにする観点から、口腔内崩壊錠の全重量に対して、約5〜15重量%であることが好ましい。
【0025】
本発明の口腔内崩壊錠は、(e)粉末状の甘味剤を含有する。粉末状の甘味剤は、主薬の苦味を抑制する上、味を良好にすることにより、服用感を良好にする役割を有する。特に粉末であるために、上述の4成分と均一に混合することができ、製造される口腔内崩壊錠の機械的強度が安定する。液状の甘味剤では、上述の4成分と均一に混合することが困難である上、製造される口腔内崩壊錠の機械的強度が安定しないことがある。さらに、液状の甘味剤では、混合時や圧縮成形時において発生する熱により、当該甘味剤が揮発することがある。また、液状の甘味剤は、揮発する虞がある以上、口腔内崩壊錠としての保存安定性も良くない。加えて、液状の甘味剤は、(a)薬剤を分解するおそれがある上、製造される口腔内崩壊錠が変色するおそれもある。本発明における(e)粉末状の甘味剤は、上述の4成分との混合が容易とする粉末状のものであれば、特に限定されるものではない。(e)粉末状の甘味剤は、例えば、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、サッカリン、ソルビトール、乳糖水和物、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ブドウ糖、ショ糖、果糖、サッカリン、スクラロース、マルトース、マンニトール、マルチトール、エリスリトール及びキシリトールなどが挙げられる。また、(e)粉末状の甘味剤の含量は、服用時における適度な甘みを付与する観点から、口腔内崩壊錠の全重量に対して、約0.05〜0.5重量%であることが好ましい。尚、(e)粉末状の甘味剤の原料には、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールの原料と同じものが存在するが、(e)粉末状の甘味剤の原料は、当該(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールの原料とは異なる原料を選択する。また、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールが、造粒物のみからなる場合は、同種の原料を選択してもよい。
【0026】
また、本発明の口腔内崩壊錠には、主薬の薬効に影響を及ぼさない限りにおいては、上述の5成分の他に、さらに、添加剤等が含有されていてもよい。添加剤等としては、例えば、結合剤、溶解補助剤、滑沢剤、流動化剤、香料、発泡剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤及び着色剤等が挙げられるが、本発明はこれら添加剤の種類等により限定されるものではない。
【0027】
結合剤としては、例えば、水溶性物質が挙げられる。結合剤としては、例えば、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、キタンサンガム、アラビアゴム末、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プルラン、部分α化澱粉及び糖類等が挙げられる。
【0028】
溶解補助剤としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0029】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、軽質無水ケイ酸、硬化ナタネ油、硬化ひまし油、グリセリン脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、L-ロイシン及びL-バリン等が挙げられる。
【0030】
流動化剤としては、例えば、水和二酸化ケイ素及び軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
【0031】
香料としては、例えば、ミント、レモン及びオレンジ等が挙げられる。
【0032】
発泡剤としては、例えば、酒石酸塩、クエン酸塩及び重炭酸塩等が挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンヒマシ油誘導体などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0034】
pH調整剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウムなどの無機塩類、グリシン、酢酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸並びにクエン酸等の有機酸又はこれら有機酸の塩類などが挙げられる。
【0035】
防腐剤としては、例えば、安息香酸並びにパラオキシ安息香酸及びそれらの塩等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄(赤色)、オレンジエッセンス、褐色酸化鉄、カラメル、軽質無水ケイ酸、食用青色5号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、タルク、フルオレセインナトリウム、緑茶末及びビタミンC等が挙げられる。
【0036】
以上に説明した口腔内崩壊錠の成分は、混合後、錠剤として成形される。
【0037】
混合は、例えば、V型混合機、コンテナブレンダー等の装置を用いることにより行うことができる。特に(e)粉末の甘味剤は、その形状が粉末であるために、上述の4成分と均一に混合することができる。これにより、製造される口腔内崩壊錠は、均一な味付けがなされ、服用感を良好にする。この際の混合は、湿潤又は加湿することなく行うことが望ましい。ここで湿潤又は加湿とは、口腔内崩壊錠の全重量の5%程度より多い水分量を添加することをいう。したがって、非湿潤及び非加湿下とは、添加される水分量が口腔内崩壊錠の全重量の5%程度以下で混合することをいう。
【0038】
次に、錠剤への成形は、製造コストを安価にする観点から、圧縮成形、いわゆる打錠により製造される。言い換えると、錠剤への成形は、上述した製剤の処方が単純であるために、特別な方法で製造する必要がない。圧縮成形する装置としては、例えば、錠剤の成形に使用する打錠用臼、打錠用上杵及び下杵を用い、油圧式ハンドプレス機、単発式打錠機又はロータリー式打錠機等を利用することができる。
【0039】
上記圧縮成形は、製造する口腔内崩壊錠としての錠剤重量に応じて、打錠圧力の設定を行う。打錠圧力は、例えば、錠剤重量が100mg未満の場合、打錠圧力は0.1〜2.3t、好ましくは0.1〜1tである。錠剤重量が100mg〜150mg未満の場合、打錠圧力は0.1〜3t、好ましくは0.2〜1.1tである。錠剤重量が150mg〜200mg未満の場合、打錠圧力は0.1〜3.2t、好ましくは0.2〜1.3tである。錠剤重量が200mg〜250mg未満の場合、打錠圧力は0.1〜3.9t、好ましくは0.3〜1.4tである。錠剤重量が250mg〜300mg未満の場合、打錠圧力は0.1〜4.8t、好ましくは0.4〜1.6tである。錠剤重量が300mg〜500mg未満の場合、打錠圧力は0.1〜6.8t、好ましくは0.5〜2tである。錠剤重量が500mg〜1,000mg未満の場合、打錠圧力は0.1〜20t、好ましくは0.8〜10tと設定することができる。
【0040】
本発明の口腔内崩壊錠の形状は、特に限定されないが、円盤状、ドーナツ状、多角形板状、球状、楕円状又はキャプレット状等とすることができる。特に、口腔内崩壊錠の形状は、通常の錠剤の形状である円盤状であるものが好ましい。口腔内崩壊錠の大きさは、特に限定されないが、直接嚥下されないように若干大きめであることが適しており、例えば、直径が3〜30mm程度、厚みが1〜10mm程度であることが好ましい。
【0041】
以上に説明した製造方法により製造された口腔内崩壊錠は、2つの物性を有する。つまり、崩壊試験法(日本薬局方)での崩壊時間が30秒以内であるという第1の物性と、錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上であるという第2の物性である。
【0042】
まず、第1の物性は、口腔内において、30秒以内、好ましくは20秒以内、さらに好ましくは15秒以内の崩壊時間を有することである。現在、口腔内崩壊錠における口腔内における崩壊時間の公的な試験法は確立されていない。このため本発明では、口腔内における崩壊時間の測定は、年齢25〜45歳の健常な成年男子を測定者とすることにより行われるものとしている。具体的には、測定者が口腔内崩壊錠を服用した時を開始時間とし、当該服用した口腔内崩壊錠が口腔内で完全に崩壊した時に測定者が挙手することにより崩壊したものとみなし、その時間を測定する。そして、開始時間から測定者が挙手した時間を崩壊時間としている。ここで、完全に崩壊した時とは、口腔内における崩壊した口腔内崩壊錠の舌触りにざらつき感を感じなくなった時をいう。
【0043】
次に、第2の物性は、30N以上、好ましくは35N以上、さらに好ましくは40N以上の錠剤硬度計により測定された硬度を有することである。係る測定は、特段難しいものではなく、当業者であれば特に問題なく測定することができるため、詳細は省略する。錠剤硬度計は、例えば、SCHLEUNIGER社のTBLET TESTER 60(商品名)、ANIEX社のQAX セミオート錠剤試験装置(商品名)及び富山産業株式会社の錠剤硬度計などが挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の口腔崩壊錠及びその製造方法の実施例を詳述する。
【0045】
参考例1:(a)主薬
(a)主薬としては、テモカプリル塩酸塩、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリダゾン塩酸塩、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバピリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、オロパタジン塩酸塩、セフォゾプラン塩酸塩及びアカルボースの計30種類を用いた。
【0046】
参考例2:(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコール
(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールとしては、マンニトールの結晶物、マンニトールの造粒物(自作)、マンニトールの造粒物(市販品)及びエリスリトールの造粒物(市販品)の4種類を用いた。
【0047】
結晶マンニトールとしては、結晶D−マンニトール(メルク社製 05980、平均粒子径40〜50μm、以下 結晶マンニトール)をそのまま用いた。この結晶マンニトールは、市販品であるため、整粒されたものである。
【0048】
マンニトールの造粒物(自作)は、流動層造粒法により製造した。具体的には、流動層造粒機(パウレック社製、マルチプレックスMP−01)に、D−マンニトール500gを入れ、噴霧液として15%D−マンニトール(日研化成製)水溶液500gを噴霧し、乾燥することにより得た(平均粒径400〜500μm、以下 造粒マンニトール)。この造粒マンニトールは、流動層造粒法により製造しているため、整粒されたものである。
【0049】
マンニトールの造粒物(市販品)として、直打用マンニトール(パーテック100M、メルク製、造粒マンニトール、平均粒径90〜120μm、以下 直打用マンニトール)を用いた。この造粒マンニトールは、市販品であるため、整粒されたものである。
【0050】
エリスリトールの造粒物(市販品)として、造粒エリスリトール(三菱化成製、造粒エリスリトール、平均粒径80〜130μm、以下 造粒エリスリトール)を用いた。この造粒エリスリトールは、市販品であるため、整粒されたものである。
【0051】
参考例3:(c)セルロース類
(c)セルロース類としては、結晶セルロース(旭化成ケミカル製、セオラスPH301)を用いた。
【0052】
参考例4:(d)崩壊剤
(d)崩壊剤としては、クロスポビドンXL10(ISP製)を用いた。
【0053】
参考例5:(e)粉末状の甘味剤
(e)粉末状の甘味剤としては、アスパルテーム(味の素製)、アセスルファムカリウム(三栄源エフエフアイ製)、マンニトール(日研化成製)、キシリトール(三栄源エフエフアイ製)、エリスリトール(三栄源エフエフアイ製)及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製)の6種類を用いた。
【0054】
参考例5:コーティング液
コーティング液は、次のように調製した。まず、オイドラギットL30−D55(商品名 デグサ製)133g、トリアセチン(有機合成薬品製)10g、マンニトール(日研化成製)10gを精製水392gに溶解することにより第1の液を調製した。他方、ヒプロメロース(信越化学、TC−5RW)60g、マクロゴール6000(日本油脂)6gを精製水600gに溶解することにより第2の液を調製した。そして、上記第1の液と第2の液を全量混合することにより、コーティング液を調製した。
【0055】
実施例1〜29
上述した各種化合物を、表1〜表3に示した処方にて混合した。混合は、全てV型混合機を用いて行った。得られた混合物は、ロータリー打錠機にて直径7mm、1錠重量100mgになるように打錠した。尚、表1〜3における数字は、グラム量を示している。また、口腔内崩壊時間は、測定者5名(年齢25〜45歳の健常な成年男子)の協力を得て、測定者が口腔内崩壊錠を服用した時を開始時間とし、当該服用した口腔内崩壊錠を嚥下した時に測定者が挙手することにより崩壊したものとみなし、開始時間から測定者が挙手した時間までの時間とした。さらに、錠剤硬度は、SCHLEUNIGER社のTBLET TESTER 60(商品名)により測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
実施例30
リスペリドン60g、マンニトール(日研化成製)210g、クロスカルメロースナトリウム(旭化成製)30gをワースター型流動層造粒機(パウレック社製 MP−01改良型)に投入し、吸気温度75℃、排気温度35℃付近になるように、参考例5で調製したコーティング液を全量噴霧した。
【0060】
このコーティングした顆粒(リスペリドン酸塩含有)7.5g、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールとしての結晶マンニトール37.5g並びに造粒エリスリトール30g、(c)セルロース類としての結晶セルロース13g、(d)崩壊剤としてのクロスポビドン10g、(e)粉末状の甘味剤としてのアスパルテーム1g及び添加剤としてのステアリン酸マグネシウム1gを混合した。当該混合物を、ロータリー打錠機を用いて打錠圧500(kgf/cm)で打錠した。その結果、硬度45N、口腔内崩壊時間18秒の口腔内崩壊錠を得た。
【0061】
実施例31
(a)主薬として、リスペリドンの代わりに、アムロジピンベシル酸塩を用いた以外は実施例30と同様にコーティングを行った。このコーティングした顆粒(アムロジピンベシル酸塩含有)7.5g、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールとしての造粒マンニトール67.5g、(c)セルロース類としての結晶セルロース13g、(d)崩壊剤としてのクロスポビドン10g、(e)粉末状の甘味剤としてのアセスルファムカリウム1g及び添加剤としてのステアリン酸マグネシウム1gを混合した。当該混合物を、ロータリー打錠機を用いて打錠圧500(kgf/cm)で打錠した。その結果、硬度40N、口腔内崩壊時間20秒の口腔内崩壊錠を得た。
【0062】
実施例32
(a)主薬として、リスペリドンの代わりに、ファモチジンを用いた以外は実施例30と同様にコーティングを行った。このコーティングした顆粒(ファモチジン含有)7.5g、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールとしての結晶マンニトール37.5g並びに造粒マンニトール30g、(c)セルロース類としての結晶セルロース13g、(d)崩壊剤としてのクロスポビドン10g、(e)粉末状の甘味剤としてのアセスルファムカリウム1g及び添加剤としてのステアリン酸マグネシウム1gを混合した。当該混合物を、ロータリー打錠機を用いて打錠圧500(kgf/cm)で打錠した。その結果、硬度50N、口腔内崩壊時間20秒の口腔内崩壊錠を得た。
【0063】
実施例33
(a)主薬として、リスペリドンの代わりに、ゾルピデム酒石酸塩を用いた以外は実施例30と同様にコーティングを行った。このコーティングした顆粒(ゾルピデム酒石酸塩含有)7.5g、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールとしての結晶マンニトール37.5g、造粒マンニトール15g並びに造粒エリスリトール15g、(c)セルロース類としての結晶セルロース13g、(d)崩壊剤としてのクロスポビドン10g、(e)粉末状の甘味剤としてのアセスルファムカリウム1g及び添加剤としてのステアリン酸マグネシウム1gを混合した。当該混合物を、ロータリー打錠機を用いて打錠圧500(kgf/cm)で打錠した。その結果、硬度45N、口腔内崩壊時間22秒の口腔内崩壊錠を得た。
【0064】
以上の説明した実施例30〜33を表4に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
[比較例1]
処方を、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールとしての結晶マンニトール40g並びに造粒エリスリトール30gの代わりに、平均粒径20μmのマンニトールの微粉末70gとしたこと以外は全て実施例7と同様にした。しかしながら、口腔内崩壊錠を製造することすらできなかった。
【0067】
以上、表1〜4の結果から、本発明の実施例では、いずれも硬度が30N以上と、高いにもかかわらず、口腔内崩壊時間が30秒以内と、迅速に崩壊する口腔内崩壊錠が得られた。なお、実施例の口腔内崩壊錠は、いずれも、口腔内での舌触りは良好であり、薬物の苦みが良好にマスキングされており、服用感が良好であるとともに、ざらつき感及び違和感はなく、嚥下が容易であった。これに対し、比較例1は、口腔内崩壊錠すら製造することができなかった。
【0068】
[比較例2]
処方を、(e)粉末状の甘味剤としてのアスパルテーム1gの代わりに、水あめ1gとしたこと以外は全て実施例7と同様にし、口腔内崩壊錠を製造した。しかしながら、製造された口腔内崩壊錠は、錠剤硬度が25Nと、実施例7の口腔内崩壊錠よりも強度が下がった。また、温度40度、湿度75%の環境下で保存した本比較例の口腔内崩壊錠は、目視で観察したところ、同条件で保存した実施例7の口腔内崩壊錠と比較して変色していた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、主薬の種類にかかわらず、崩壊させる部位にかかわらず、崩壊させて服用する剤形に広範囲に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)崩壊剤、(e)粉末状の甘味剤を含有し、口腔内における崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上であることを特徴とする口腔内崩壊錠。
【請求項2】
(a)主薬が、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬及び鎮痛鎮痙薬からなる群より選択される少なくとも1である請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項3】
(a)主薬が、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド及びアカルボースからなる群より選択される少なくとも1である請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
(a)主薬が苦味を有するものであり、さらに、コーティング剤で覆われてなる請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項5】
コーティング剤が、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ステアリルアルコール、メタクリル酸コポリマー、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、グリセリン、軽質無水ケイ酸、流動パラフィン、合成ケイ酸アルミニウム、酢酸セルロース、酢酸ビニル樹脂、酸化チタン、酸化マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸誘導体、セラック、タルク、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、マクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリビニルアルコール、クエン酸及びマンニトールからなる群より選択される少なくとも1である請求項4に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項6】
(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールが、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール及びラクチトールからなる群より選択される少なくとも1の平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒物である請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項7】
(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールが、担体に糖アルコールが吸着されてなるものである請求項1記載の口腔内崩壊錠。
【請求項8】
(c)セルロース類が、平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒物であって、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1である請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項9】
(d)崩壊剤が、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、でんぷん、部分α化澱粉、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース及びヒドロキシプロピルスターチからなる群より選ばれる少なくとも1である請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項10】
(e)粉末状の甘味剤が、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、サッカリン、ソルビトール、乳糖水和物、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ブドウ糖、ショ糖、果糖、サッカリン、スクラロース、マルトース、マンニトール、マルチトール、エリスリトール及びキシリトールからなる群より選ばれる少なくとも1の粉末である請求項1に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項11】
(a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)結合剤、(e)粉末状の甘味剤を混合し、圧縮成形により、崩壊試験法(日本薬局方)での崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上となるような条件で成形された口腔内崩壊錠。
【請求項12】
(a)主薬と、(b)平均粒径40μm以上の粉末及び/又は造粒糖アルコールと、(c)セルロース類と、(d)結合剤、(e)粉末状の甘味剤を混合し、圧縮成形により、崩壊試験法(日本薬局方)での崩壊時間が30秒以内であり、かつ錠剤硬度計により測定された硬度が30N以上となるような条件で成形することを特徴とする口腔内崩壊錠の製造方法。

【公開番号】特開2009−114113(P2009−114113A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288124(P2007−288124)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】