説明

口腔用組成物

【課題】口腔内の乾燥を防ぐことができる上に、使用時に香料による爽快感を損なわずに口腔内への刺激を緩和することができる口腔用組成物を提供する。
【解決手段】2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの重合体0.001〜5重量%と、香料0〜1重量%を含有することを特徴とする口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本品は口腔中をゆすぐ際に、あるいは、歯ブラシなどでブラッシングする際に用いられる口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口臭の予防、歯肉炎などの口腔疾患の予防、口中を爽快にするなどの目的で殺菌剤、界面活性剤、香料などを配合した歯磨き、洗口液、口中清涼剤などの口腔用組成物が用いられている。
【0003】
近年、ストレスや医薬品の副作用による唾液分泌の低下、睡眠中の口呼吸などによるドライマウスとよばれる口腔内の乾燥状態が広く知られるようになって来た。口腔内の乾燥は口腔内の細菌数の増加、舌苔の増加、口腔内のバリア機能の低下、それに伴う口臭の発生や炎症の発生などさまざまな問題を引き起こすことが考えられる。
【0004】
特許文献1にはグリセリンとエリスリトールを含有する液状咽喉保護組成物が開示され、グリセリンによる保湿感について記載されている。このように、従来は口腔内の乾燥を防ぐ成分としてグリセリン、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコールを配合していたが、その乾燥防止効果は十分なものでなかった。またドライマウスの状態では口腔内の粘膜が痛んでいることが多く、爽快感を得る目的で香料を配合した場合は口腔内への刺激を伴うため、これを緩和する必要があった。口腔内への刺激感緩和に関しては特許文献2にはペパーミントオイル等の香味成分と重曹を配合し苦みや、口腔内への痛みを緩和した口腔用組成物が、特許文献3にはメントール及びエタノールの刺激感と辛さをキシリトールにより緩和させた口腔用組成物が開示されている。しかし、重曹やキシリトールを刺激感緩和のために使用することは、これら原料の味による風味の変化が無視できないものであった。
【特許文献1】特開2004−359595号公報
【特許文献2】特開2002−212041号公報
【特許文献3】特開2000−178152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、口腔内の乾燥を防ぐことができる上に、使用時に香料による爽快感を損なわずに口腔内への刺激を緩和することができる口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体を配合することにより、口腔内の乾燥感を緩和し、かつ使用時に香料の爽快感を損なわずに口腔内への刺激感を緩和する口腔用組成物を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
下記一般式[I]
【化1】

【0008】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは−(CHR)m−基又は−(CHCHRO)m−CHCHR−基を示し(但し、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは1〜18の整数を示す。)、Rは−(CH)n−基を示し(但し、nは2〜4の整数を示す)、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。]で表されるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートの単独重合体、若しくは前記一般式[I]で表されるモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体を含む組成物であって、前記単独重合体又は共重合体の重量平均分子量が2,000〜5,000,000であることを特徴とする口腔用組成物を提供するものである。
【0009】
前記一般式[I]で示される化合物は、下記一般式[II]
【化2】

【0010】
[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは2〜4の整数である。]で表されるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0011】
本発明による口腔用組成物の特に好ましい形態は、一般式[II] で表されるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートにおいてRがメチル基でありかつnが2である化合物2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、すなわち2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの重合体0.001〜5重量%と、香料0〜1重量%を含有する組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、口腔内の乾燥を防ぐことができる上に、使用時に香料による爽快感を損なわずに口腔内への刺激を緩和することができる口腔用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
前記一般式[I]で示される化合物は常法よって調製することができ、その単独重合体又は共重合体も常法によって合成することができる。そのうち、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体は2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体であってもよいし、このモノマーと疎水性及び/又はイオン性のモノマーとの共重合体があってもよい。疎水性のモノマーとしてはメタクリル酸アルキルが挙げられる。イオン性のモノマーとしてはメタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。前記単独重合体又は共重合体は、市販品(日本油脂社製「リピジュアシリーズ」)であってもよい。
【0014】
本発明による組成物中の前記単独重合体又は共重合体の配合量は0.001重量%〜5重量%である。配合量が0.001重量%未満であるとは口腔内の乾燥防止、刺激緩和効果が期待できず、5重量%を超えると使用感が悪くなるため、いずれも好ましくない。
【0015】
本発明で使用される香料成分は爽快感を得る目的で通常口腔用製品に配合されるものであればよく特に限定されないが、例として挙げるならば次のような成分を単品もしくは混合物として使用する。
【0016】
ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、タイム油、セージ油、ハッカ油等の天然香料及びメントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、チモール、メントン、メンチルアセテート、ピネンなどの香料。これらの配合量は香料によって異なるが、0.001〜1重量%が望ましい。
【0017】
本発明品には、口腔内の乾燥防止及び刺激緩和効果を阻害しない限り通常の口腔用組成物に配合される成分、例えば湿潤剤、溶剤、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、色素、甘味剤などを配合できる。
【0018】
湿潤剤としては特に限定されないがプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの多価アルコール類、ヒアルロン酸、アルギン酸、カラギーナン、ジェランガム等の多糖類、ベタインなどが挙げられる。
【0019】
溶剤としては特に限定されないが精製水、エタノールが挙げられる。
【0020】
界面活性剤としては特に限定されないがポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル及びその酸化エチレン付加物、グリセリン脂肪酸エステル及びその酸化エチレン付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びその酸化エチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルアミノ酸塩、脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸アミドベタイン等が挙げられる。特に製剤中での安定性、味への影響の面からポリオキシエチレン硬化ひまし油が望ましい。
【0021】
緩衝剤としては特に限定されないが、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸及びそれらの塩等が挙げられ、pHは5〜8に調整することが望ましい。
【0022】
防腐剤及び殺菌剤としては特に限定されないが、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、サリチル酸及びその塩、安息香酸及びその塩、パラベン類、塩化リゾチーム、塩化亜鉛、塩化アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられ、配合量は通常0.01〜1重量%である」。
【0023】
消炎剤としては特に限定されないがグリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン、アズレン、ε−アミノカプロン酸、塩酸ピリドキシン、アラントイン等が挙げられ、通常0.01〜1重量%配合できる。
【0024】
甘味剤としては特に限定されないが、サッカリン、ステビオシド、スクラロース、アスパルテーム、甘草抽出物等が挙げられ、通常0.001〜0.1重量%配合できる。
【0025】
本発明における口腔用組成物は、歯磨き、洗口剤、口中清涼剤、含嗽剤、うがい薬等の口腔用製品に応用できる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
[合成例1]
モノマーとして2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート50gと重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル0.025gをエタノール溶媒100gに溶解し、この溶液を反応器に入れ、窒素置換後、恒温槽にて50℃で10時間重合反応を行った。重合終了後、エタノール・ジイソプロピルエーテル系の混合溶媒を用いて再沈精製し、精製物を真空乾燥させて重合体を得た。重合体の収率は92重量%で、ポリエチレングリコールを標準物質としてGPC分析より求めた重量平均分子量は550,000であった。
【0028】
[合成例2]
モノマーとして2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート45gとn−ブチルメタクリレート5gの混合物を用いた以外は、合成例1と同様にして共重合体を得た。共重合体の収率は95重量%で、GPC分析により求めた重量平均分子量は610,000であった。さらに得られた重合体の元素分析によりn−ブチルメタクリレートの含有量は、10.5重量%と確認した。
【0029】
実施例1〜実施例11
合成例1及び2の重合体、香料1及び2並びにその他の成分を表1〜3に示す割合で配合し種々の洗口液を調製した。香料1としては、メントール、ペパーミント油、アネトールを主とする調合香料を用いた。香料2としては、メントール、1,8シネオール、チモール、サリチル酸メチルを主とする調合香料を用いた。
【0030】
比較例1〜比較例7
合成例1及び2の重合体を用いず、香料1及び2並びにその他の成分を表1〜3に示す割合で配合し種々の洗口液を調製した。
【0031】
評価試験
実施例及び比較例で得られた洗口液を対象として緩和効果と湿潤感について下記の補法でパネラー8名による官能評価を行った。すなわち、洗口液5mLで30秒間口腔中をすすいだ後、吐き出した。口中をすすぐ間の刺激性、及び吐き出して5分後の湿潤感を下記の基準に従い3段階で評価し、その平均点を表に示した。
【0032】
刺激緩和効果
3;比較例1の洗口液と比べて口腔内の刺激が少ない
2;比較例1の洗口液と比べて口腔内の刺激は同等である
1;比較例1の洗口液と比べて口腔内の刺激が多い。
【0033】
湿潤感の評価
3;比較例1の洗口液と比べて湿潤感が高い
2;比較例1の洗口液と比べて湿潤感は同等である
1;比較例1の洗口液と比べて湿潤感が低い。
【0034】
官能評価の結果を各表中の下段にそれぞれ示す。
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
評価結果
比較例2〜7の評点は2.0以下であり、比較例1と比べ、刺激感及び湿潤感は同等以下であった。一方、実施例1〜11の評点は2.2以上であり、比較例1と比べて刺激緩和効果及び湿潤感に優れていることが分かった。
【0038】
以上の結果より、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体を配合することにより、香料による爽快感を損なわずに刺激を緩和する効果及び口腔内の乾燥を防止する効果が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]
【化1】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは−(CHR)m−基又は−(CHCHRO)m−CHCHR−基を示し(但し、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは1〜18の整数を示す。)、Rは−(CH)n−基を示し(但し、nは2〜4の整数を示す)、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。]で表されるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートの単独重合体、若しくは前記一般式[I]で表されるモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体を含む組成物であり、かつ、前記重合体の重量平均分子量が2,000〜5,000,000であることを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
前記一般式[I]で示される化合物が下記一般式[II]
【化2】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは2〜4の整数である。]で表されるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートであり、かつ、前記重合体の重量平均分子量が2,000〜5,000,000である請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記一般式[II]で示される化合物が2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記単独重合体又は共重合体0.001〜5重量%と、香料0〜1重量%を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの重合体0.001〜5重量%と、香料0〜1重量%を含有することを特徴とする口腔用組成物。

【公開番号】特開2006−273767(P2006−273767A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96960(P2005−96960)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(500346419)ニッサン石鹸株式会社 (10)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】