説明

口腔用組成物

【課題】本発明は、乾燥した口腔内をすばやく潤し、乾燥した汚れに水分を浸透させ、清掃しやすくするとともに、口腔内における組成物の滞留性を高め乾燥を予防したり、保湿剤などの活性成分を留めるための十分な粘度を有する口腔用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、寒天と、1種以上の増粘剤、特にカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム及びキサンタンガムからなる群から選択される1種以上の増粘剤とを含み、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sである、口腔用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した口腔内にすばやく水分を供給することで口腔内の乾燥症状をやわらげたり、口腔内で乾燥し、こびりついた痰や汚れに水分をすばやく浸透させ、清掃しやすくするとともに、口腔内における組成物の滞留性を高め乾燥を予防したり、保湿剤などの活性成分を留めるための十分な粘度を有する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢とともに口腔に乾燥感を訴える患者が増加している。この原因としては、口腔内に分泌される唾液量が少なくなることや、口での呼吸が増えることが挙げられる。乾燥を感じた際、水を飲んだり飴をなめるなどの対処ができる患者は口腔の重度な乾燥にはいたらないが、要介護者など自分で口を湿らせることのできない患者、特に経管栄養にて生命維持が図られ、経口摂取が途絶えている患者では、口腔内が過度に乾燥し、痰や汚れが口腔内にへばりついたり、口腔粘膜がひび割れたりといった症状が現れる。
【0003】
これらの症状の治療及び予防は、単に患者の不快感を改善するという点のみならず、近年では、口腔内常在菌のバランスを保ち、口腔カンジダのような口腔感染症や、誤嚥性肺炎の発症を予防する点からも重要視されている。したがって、患者の口腔の湿潤を回復させ、患者に負担を与えず円滑に汚染物の除去を行なうと共に、口腔ケア後の口腔乾燥を予防することのできる製品が求められている。
【0004】
現在、口腔内を潤す製品として、保湿剤を配合したスプレーや、ジェル状の保湿クリームが報告され、また市販されている。スプレータイプは使用が簡便であるが、液の粘性が低くなければスプレーから噴射されないため、口腔内にとどまる十分な粘度がなく、頻繁に使用する必要がある。このような欠点を改善するものとして、口腔粘膜上での内容物の滞留時間を延長を期待してチキソトロピー性を付与した組成物などが報告されている(例えば、特許文献1参照)が、製剤自体の保水率を高めているに過ぎず、乾燥した口腔内に水分を供給し潤いを広げたり、乾燥した汚れをふやかし、清掃しやすくするには十分とはいえない。
【0005】
一方ジェル状の保湿クリームとしては、口腔潤滑剤としても使用しうる、ポリビニルピロリドンとアニオン性粘膜付着性物質とを含む口腔ケア組成物(例えば、特許文献2参照);唾液の代替物として使用しうる、熱可逆性ポリマーと生体接着性ポリマーとを含む熱可逆性組成物(例えば、特許文献3参照)などが報告されている。しかしながら、これらの組成物は、口腔内に保湿剤を留めることはできるが、ジェル内に水分を閉じ込めた状態で口腔内にとどまるため、乾燥した口腔内に水分を供給し潤いを広げたり、乾燥した汚れをふやかし、清掃しやすくするには時間がかかる。
【特許文献1】特開2005−200327号公報
【特許文献2】特開2008−508338号公報
【特許文献3】特開2005−526784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乾燥した口腔内にすばやく水分を供給することで口腔内の乾燥症状をやわらげたり、口腔内で乾燥し、こびりついた痰や汚れに水分をすばやく浸透させ、清掃しやすくするとともに、口腔内における組成物の滞留性を高め乾燥を予防したり、保湿剤などの活性成分を留めるための十分な粘度を有する口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
食品・化粧品分野で一般に使用されている、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガムのような増粘剤を含む水性組成物は、その粘度を上昇させるに従い組成物からの水分の滲出、すなわち組成物から口腔への水分の供与量は低下し、粘度10,000mPa・s(25℃)を越える前に水分を与える力はほぼ無くなってしまう。このように、<1>口腔内における滞留性を高め乾燥を予防したり、保湿剤などの活性成分を留めるための十分な粘度を組成物に付与することと、<2>組成物から口腔への水分を供給し、乾燥した口腔内を速やかに湿潤させること、を両立させるのは困難であった。
【0008】
本発明者らは、乾燥した口腔内を速やかに湿潤させることができるよう、一定の水分供給能を有し、かつ口腔内に保湿剤などの活性成分を留めるための十分な粘度を有する口腔用組成物を提供すべく鋭意検討した。その結果、医薬品・食品・化粧品分野で一般に使用されうる増粘剤と、寒天とを含み、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sである組成物が、かかるを所望の性質を満たすことを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sと高いにもかかわらず、一定の水分供給能を有する。したがって、乾燥した口腔内をすばやく潤し、乾燥した汚れに水分を浸透させ、患者に負担を与えることなく、汚れの除去を容易にする。一方で、本発明の組成物は、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sと高いため、口腔内における滞留時間の延長が期待される。したがって、組成物自体が口腔内を覆うことによる乾燥の予防と共に、組成物に配合される保湿剤などの活性成分を留めることによる、口腔の乾燥状態やそれに伴う疾患の治療及び予防効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の口腔用組成物に使用しうる寒天は、医薬品・食品・化粧品原料として市販されている、粉末状、顆粒状又はフレーク状のものであってよい。そのような寒天として、例えば、伊那食品工業株式会社製の伊那寒天CS、伊那寒天CSG、ウルトラ寒天AX−100、ウルトラ寒天イーナなどが挙げられる。寒天の配合量は、増粘剤と共に組成物の25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sとなるような量であれば特に限定されるものではないが、水分供給能や粘度の点から、組成物の重量を基準にして0.5質量%以上、5.0質量%以下の範囲であるのが好ましく、さらには1.0質量%以上、2.0質量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0011】
本発明の口腔用組成物に使用しうる増粘剤は、医薬品・食品・化粧品原料として市販されているものであればよく、例えば、カラギーナン、グァーガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム(アルギン酸Na)、キサンタンガムなどの増粘多糖類が挙げられる。増粘剤は、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム及びキサンタンガムからなる群から選択される1種以上である。増粘剤の配合量は、寒天と共に組成物の25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sとなるような量であれば特に限定されるものではないが、水分供給能や粘度の点から、組成物の重量を基準にして、0.05質量%以上、10.0質量%以下の範囲であるのが好ましく、さらには0.1質量%以上、5.0質量%以下の範囲であるのが好ましい。
【0012】
本発明の組成物には、さらにpH調整剤、矯味剤、防腐剤、香料、色素、可溶化剤、界面活性剤などの添加剤を、該組成物の水分供給能を損なわない範囲において配合してもよい。また本発明の組成物には、口腔の乾燥状態やそれに伴う疾患の治療及び予防効果を期待して、保湿剤、抗菌剤、ビタミン剤などの活性成分を配合してもよい。
【0013】
本発明の組成物は口腔内で使用するものであるため、そのpHは、5.5〜8.0の範囲であるのが好ましい。本発明の組成物に使用しうるpH調整剤としては、食品に使用しうるものであれば特に限定されず、例えばリン酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、あるいはクエン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、酒石酸、酢酸又はこれらの塩が挙げらる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0014】
本発明の組成物に使用しうる矯味剤、防腐剤、香料、着色料、可溶化剤、界面活性剤などの添加剤としては、医薬品・食品・化粧品に使用しうるものであれば特に限定されない。例えば、矯味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、ハチミツ、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、キシリトール、イノシトール、トレハロース、D−ソルビトール、D−マンニトール、ラフィノース、ラクチュロース、ラクチトール、エリスリトール、還元パラチノース、パラチノース、パラチニット、アセスルファムK、マルトース、マルトシルトレハロース又はマルチトールが挙げられる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0015】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、イソプロピルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベンなどのパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)類、フェノキシエタノール、エタノールなどのアルコール類、あるいはソルビン酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸又はこれらの塩などが挙げらる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0016】
香料としては、l−メントール、ペパーミント、スペアミント又はフルーツ香料などが挙げられる。香料は、唾液分泌を刺激するという利点も有する。着色料としては、天然又は合成の色素、例えば、食用タール系色素、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、ベニバナ色素などが挙げられる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0017】
可溶化剤は、本発明の組成物の基剤である水への上記添加剤や活性成分の溶解を促進することができるものであればよく、例として、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類などを挙げることができる。また界面活性剤としては、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩、ラウリン酸ポリグリセリル、ラウロイルサルコシン塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、水添ヒマシ油などを挙げることができる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0018】
本発明の組成物にさらに配合しうる活性成分としての保湿剤もまた、医薬品・食品・化粧品に使用しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アミノ酸又はその塩、ピロリドンカルボン酸;ムチン、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類;グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトール、キシリトール又はポリエチレングリコールなどの多価アルコール類;チャエキスなどの天然エキス成分などを挙げることができる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0019】
抗菌剤としては、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、亜鉛化合物又はトリクロサンなどが挙げられる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0020】
ビタミン剤としては、レチノイン酸、β−カロテンなどのビタミンA類、パントテン酸又はその塩類、ナイアシン、ビオチンなどのビタミンB類、アスコルビン酸又はその塩類、誘導体などのビタミンC類、α−トコフェロールなどのビタミンE類、葉酸などが挙げられる。これらの一種又は二種以上の組み合わせを適宜選択すればよい。
【0021】
本発明の組成物は、水に寒天及び少なくとも1種の増粘剤、並びに添加剤及び/又は活性成分を配合することにより得られる。その際、かかる組成物は、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sとなるように、好ましくは30,000〜45,000mPa・sとなるように、寒天及び増粘剤により適宜調整される。ここで粘度は、B型粘度計BL(株式会社東京計器製)で25℃にて測定した。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sと比較的高い。したがって一般に、口腔用のジェル状製品として提供されるのが好ましい。本発明の組成物は、患者自身あるいは介護者により、口腔内に手であるいはブラシやスポンジなどで適量を塗布して使用すればよい。
【実施例】
【0023】
〔水分供与量測定実験法〕
以下の各製造例により得られた試料の水分供与能を、以下の方法により測定した。
(1)ろ紙(東京ろ紙会社製、ADAVANTEC 5B(直径110mm))の中央に、直径5mmの穴の開いた金属製の板(直径22mm、厚み1.5mm)を置く。
(2)穴に25μLの各試料を入れ、室温で10分間静置する。
(3)金属板を静かに除き、ろ紙に水が吸収され変色した部分の直径を計測する。
【0024】
〔粘度測定法〕
粘度は、B型粘度計BL(株式会社東京計器製)を用い、25℃にて測定した。
【0025】
〔例1〕
寒天(ウルトラ寒天AX−100、伊那食品工業株式会社製)の1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%水溶液にカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC:CMCダイセル、ダイセル化学工業製)を0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%となるよう加えていき、粘度、水分供与量を測定した。
【0026】
図1に、例1で調整した各試料の粘度の変化を示した。グラフ中、■は、CMC1.5wt%及びCMC2.0wt%水溶液における粘度の変化を示し、◆は、寒天1.0wt%+CMC0.5wt%水溶液;+CMC1.0wt%水溶液;+CMC1.5wt%水溶液における粘度の変化を示し、▲は、寒天1.5wt%+CMC0.5wt%水溶液;+CMC1.0wt%水溶液;+CMC1.5wt%水溶液における粘度の変化を示し、●は、寒天2.0wt%+CMC0.5wt%水溶液;+CMC1.0wt%水溶液;+CMC1.5wt%水溶液における粘度の変化を示している。それぞれCMCの配合量の増加と共に粘度が増加し、水分供与量が明らかに低下しているが、寒天とCMCとを併用したことにより、10,000mPa・sを超える粘度でも高い水分供与量を得ることができた。
【0027】
〔例2〕
寒天(例1と同じ)の1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%水溶液にアルギン酸ナトリウム(ダックアルギン酸NSPM、株式会社紀文フードケミファ製)を0.5wt%、1.0wt%、2.0wt%となるよう加えていき、粘度、水分供与量を測定した。図3に示すように、アルギン酸ナトリウムを寒天と併用することにより10,000mPa・sを超える粘度でも高い水分供与量を得ることができた。
【0028】
図2に、例2で調整した各試料の粘度の変化を示した。グラフ中、■は、アルギン酸ナトリウム1.0wt%、2.0wt%及び4.0wt%水溶液における粘度の変化を示し、◆は、寒天1.0wt%+アルギン酸ナトリウム0.5wt%水溶液;+アルギン酸ナトリウム1.0wt%水溶液;+アルギン酸ナトリウム2.0wt%水溶液における粘度の変化を示し、▲は、寒天1.5wt%+アルギン酸ナトリウム0.5wt%水溶液;+アルギン酸ナトリウム1.0wt%水溶液;+アルギン酸ナトリウム2.0wt%水溶液における粘度の変化を示し、●は、寒天2.0wt%+アルギン酸ナトリウム0.5wt%水溶液;+アルギン酸ナトリウム1.0wt%水溶液;+アルギン酸ナトリウム2.0wt%水溶液における粘度の変化を示している。それぞれアルギン酸ナトリウムの配合量の増加と共に粘度が増加し、水分供与量が明らかに低下しているが、寒天とアルギン酸ナトリウムとを併用したことにより、10,000mPa・sを超える粘度でも高い水分供与量を得ることができた。
【0029】
〔例3〕
寒天(例1と同じ)の1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%水溶液にキサンタンガム(サンエースNXG−S、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を0.2wt%、0.5wt%、1.0wt%となるよう加えていき、粘度、水分供与量を測定した。図3に示すように、アルギン酸ナトリウムを寒天と併用することにより10,000mPa・sを超える粘度でも高い水分供与量を得ることができた。
【0030】
図3に、例3で調整した各試料の粘度の変化を示した。グラフ中、■は、キサンタンガム0.2wt%、0.5wt%、1.0wt%及び2.0wt%水溶液における粘度の変化を示し、◆は、寒天1.0wt%+キサンタンガム0.2wt%水溶液;+キサンタンガム0.5wt%水溶液;+キサンタンガム1.0wt%水溶液における粘度の変化を示し、▲は、寒天1.5wt%+キサンタンガム0.2wt%水溶液;+キサンタンガム0.5wt%水溶液;+キサンタンガム1.0wt%水溶液における粘度の変化を示し、●は、寒天2.0wt%+キサンタンガム0.2wt%水溶液;+キサンタンガム0.5wt%水溶液;+キサンタンガム1.0wt%水溶液における粘度の変化を示している。それぞれキサンタンガムの配合量の増加と共に粘度が増加し、水分供与量が明らかに低下しているが、寒天とキサンタンガムとを併用したことにより、10,000mPa・sを超える粘度でも高い水分供与量を得ることができた。
【0031】
〔例4〕
口腔用ジェル組成物の調製
【0032】
【表1】

【0033】
上記組成の口腔用ジェル組成物を、以下の方法に従って調製した:
(1)寒天を適量の精製水に加え、撹拌しながら80℃に加熱し溶解させ、得られた溶液を撹拌しながら40℃まで冷却した;
(2)プロピレングリコール、グリセリン中に、メチルパラベン、l−メントールを溶解し、さらにそこにアルギン酸ナトリウムとキサンタンガムを分散させた;
(3)その他の成分を、残りの精製水に溶解させ、得られた溶液を前記(2)で得られた分散液に加え、撹拌、溶解させた;
(4)40℃に保持した前記(1)の溶液に、前記(3)の溶液を加えて撹拌しながら室温まで冷却した。
【0034】
〔例5〕
口腔用ジェル組成物の調製
【0035】
【表2】

【0036】
上記組成の口腔用ジェル組成物を、以下の方法に従って調製した:
(1)寒天を適量の精製水に加え、撹拌しながら80℃に加熱し溶解させ、得られた溶液を撹拌しながら40℃まで冷却した;
(2)プロピレングリコール、グリセリン中に、メチルパラベンを溶解させ、さらにそこにCMCを分散させた;
(3)その他の成分を、残りの精製水に溶解させ、得られた溶液を前記(2)で得られた分散液に加え、撹拌、溶解させた;
(4)40℃に保持した前記(1)の溶液に、前記(3)の溶液を加えて撹拌しながら室温まで冷却した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の組成物は、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sと高いにもかかわらず、一定の水分供給能を有する。したがって、乾燥した口腔内をすばやく潤し、乾燥した汚れに水分を浸透させ、患者に負担を与えずに、汚れの除去を容易にする。一方で、本発明の組成物は、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sと高いため、口腔内における滞留時間の延長が期待される。したがって、組成物自体が口腔を覆うことによる乾燥の予防と共に、組成物に配合される保湿剤などの活性成分を留めることによる、口腔状態やそれに伴う疾患の治療及び予防効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】例1で調整した各試料(寒天+CMC)の粘度の変化を示した図である。
【図2】例2で調整した各試料(寒天+アルギン酸ナトリウム)の粘度の変化を示した図である。
【図3】例3で調整した各試料(寒天+キサンタンガム)の粘度の変化を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天と、少なくとも1種の増粘剤とを含み、25℃での粘度が10,000〜50,000mPa・sである、口腔用組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の増粘剤が、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム及びキサンタンガムからなる群から選択される、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
寒天の配合量が、組成物の重量を基準にして2.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
寒天の配合量が、組成物の重量を基準にして1.0〜2.0質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
さらに保湿剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138080(P2010−138080A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313535(P2008−313535)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000252322)和光堂株式会社 (13)
【Fターム(参考)】