説明

口腔用組成物

【課題】硝酸カリウムを特定量含有し、かつ界面活性剤及び/又は脂肪酸二価金属塩の油風味をもたらす成分、並びにメントールを含有しながら、口腔用組成物を口腔内に適用した時から適用後に亘って酸味や苦味が抑制され、後味が良好でおだやかな清涼感のある口腔用組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)硝酸カリウム 4〜8質量%、(B)界面活性剤及び/又は炭素数12〜18の飽和脂肪酸を由来とする脂肪酸二価金属塩、(C)アネトール 0.002〜0.2質量%、(D)メントール 0.003〜1.0質量%、(E)シトラール、リモネン及びシトロネラールから選ばれる柑橘系香料 0.00002〜0.5質量%、並びに(F)炭素数4〜14のラクトン 0.00001〜0.00055質量%を含有し、成分(C)及び成分(E)と成分(F)との質量比(C+E)/Fが、150〜1500である口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝酸カリウムを含有する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質知覚過敏症は、歯面に機械的、温度的或いは化学的刺激が与えられた際に疼痛が誘発される疾患である。歯周炎の進行や加齢、強い歯磨処理等によって、歯肉の退縮や歯牙のエナメル質の損傷が生じ、これらに被覆されていた歯牙の象牙質が露出することが要因となる。従来より、このような象牙質知覚過敏症を予防又は治療するために種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重炭酸カリウム及び塩化カリウムの中から選択されたカリウム塩を有効量で施用する方法が開示されており、カリウムイオンの作用によって知覚神経自体の活動の低下を図り、疼痛を緩和させるものである。特許文献2には、硝酸カリウム等の可溶性のカリウム塩が、象牙質の敏感性をやわらげることのできる活性成分として開示されている。
【0004】
一方、これらカリウム塩は渋味や苦味等を伴う傾向にあり、なかでも硝酸カリウムは独特の苦味を有するため、口腔用組成物にカリウム塩を配合する際には、こうした渋味や苦味を改善することが求められる。例えば、特許文献3には、水溶性カリウム塩と水溶性アルミニウム塩とを含有する液体口腔用組成物が記載されており、これに特定の直鎖脂肪族アルデヒドと特定のラクトンを含有することによって、渋味や苦味の改善を図っている。また、特許文献4には、硝酸カリウム塩によりもたらされる苦味を低減すべく、アネトールを配合し、さらにシネオール、バニリン、シトロネラール、シンナミックアルデヒドから選ばれる少なくとも1種以上の成分を配合した口腔用組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表昭61−501389号公報
【特許文献2】特開2000−281551号公報
【特許文献3】特開2011−105690号公報
【特許文献4】特開2003−73282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、口腔用組成物に硝酸カリウムを配合するにあたり、上記文献に記載のラクトンやシネオール等の香料成分を併用すると、口腔内に適用した際における硝酸カリウムの苦味を低減することはできるものの、例えば、歯磨組成物の場合、口を漱いだ後に硝酸カリウムの後味が酸味の混じった苦味として口腔内に残るため、歯磨組成物の風味や使用感が損なわれるおそれがあり、依然として改善の余地がある。その一方、界面活性剤や脂肪酸金属塩のような油風味をもたらす傾向にある成分を併用すると、硝酸カリウムに起因する苦味や酸味が増幅されるだけでなく、後味が残りやすいという課題が生じ、これにメントールのような成分を併用したとしても、さらに苦味と悪い後味が残り、充分な清涼感を享受できないおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、硝酸カリウムを特定量含有し、かつ界面活性剤及び/又は脂肪酸二価金属塩の油風味をもたらす成分、並びにメントールを含有しながら、口腔用組成物を口腔内に適用した時から適用後に亘って酸味や苦味が抑制され、後味が良好でおだやかな清涼感のある口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、硝酸カリウム、界面活性剤及び/又は特定の脂肪酸二価金属塩、並びにメントールに、さらにアネトール、特定の柑橘系香料及び特定のラクトンを各々特定量で併用することにより、各成分が有する作用を互いに損なうことなく、口腔内への適用時から継続的かつ効果的に酸味や苦味を抑制できる口腔用組成物が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)並びに(F):
(A)硝酸カリウム 4〜8質量%、
(B)界面活性剤及び/又は炭素数12〜18の飽和脂肪酸を由来とする脂肪酸二価金属塩、
(C)アネトール 0.002〜0.2質量%、
(D)メントール 0.003〜1.0質量%、
(E)シトラール、リモネン及びシトロネラールから選ばれる柑橘系香料 0.00002〜0.5質量%、並びに
(F)炭素数4〜14のラクトン 0.00001〜0.00055質量%
を含有し、成分(C)及び成分(E)と成分(F)との質量比(C+E)/Fが、150〜1500である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の口腔用組成物によれば、硝酸カリウムを特定量含有しながら、口腔用組成物を口腔内に適用した時から適用後に亘り、酸味や苦味が抑制され、後味を良好なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、硝酸カリウム(A)を含有する。硝酸カリウム(A)は、知覚神経周辺のイオンバランスを変化させて神経の過敏性を除去する作用又は神経を鈍感にさせる作用を有する成分であり、神経鈍感化成分ともいうことができる。また、硝酸カリウム(A)は水溶性であり、組成物においてカリウムイオンを供給して、知覚神経周辺のイオンバランスを変化させることもできる。硝酸カリウム(A)の含有量は、口腔用組成物を口腔内に適用した際に、有効に知覚神経周辺のイオンバランスを変化させて象牙質知覚過敏症に起因する痛みの軽減を図る観点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に4〜8質量%であって、4〜6質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、(B−1)界面活性剤及び/又は(B−2)炭素数12〜18の飽和脂肪酸を由来とする脂肪酸二価金属塩を含有する。成分(B)は、口腔用組成物に発泡性や安定性を付与したり、象牙質知覚過敏症に起因する痛みの低減効果を高めたりする作用を有する成分であるが、その一方で口腔用組成物に油っぽい味をもたらすおそれがあるとともに、成分(A)の苦味、渋味及び酸味を増幅して、口腔用組成物の後味を悪化させるおそれがある。しかしながら、本発明の口腔用組成物は、後述する特定量の他の成分と相まって、成分(A)に起因する酸味や苦味等を効果的に抑制し、かつ良好な後味をもたらすことができる。本発明の口腔用組成物100質量%中における成分(B)の合計含有量は、0.2〜4質量%が好ましく、0.4〜3質量%がより好ましい。
【0013】
成分(B−1)界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤が挙げられる。なかでも、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、非イオン性界面活性剤がより好ましく、具体的には、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトステロール及びフィトスタノール、ポリオキシエチレンラノリン及びラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン及び脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及び脂肪酸エタノールアミドなどが挙げられるが挙げられ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。また、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、アニオン性界面活性剤がより好ましく、具体的には、例えば、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のN−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤における疎水基のアルキル基、アシル基は炭素数6〜18のものが好ましく、10〜14のものがより好ましく、アルキル硫酸エステル塩及び/又はN−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩が好ましく、これらの塩としてはナトリウム塩が好ましい。
【0014】
本発明の口腔用組成物が界面活性剤(B−1)を含有する場合、その含有量は、発泡性と使用感の観点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に、好ましくは0.1〜2質量%であり、より好ましくは0.2〜1.5質量%であり、さらに好ましくは0.4〜1.2質量%である。なお、界面活性剤(B−1)が非イオン性界面活性剤である場合、その含有量は、安定性と味の観点から、0.1〜1.5質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。界面活性剤(B−1)がアニオン性界面活性剤である場合、その含有量は、発泡性、安定性及び味の点から0.2〜2質量%がより好ましく、0.4〜1.5質量%がさらに好ましい。
【0015】
成分(B−2)脂肪酸二価金属塩は、炭素数12〜18の飽和脂肪酸を由来とするものであり、2つの飽和脂肪酸と二価金属とから構成される。かかる飽和脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸が挙げられる。なかでも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸がより好ましい。成分(B−2)を構成する2つの飽和脂肪酸は、同一であることが好ましい。また、二価金属としては、具体的には、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。なかでも、口腔内への適用性、延展性及びコスト面の点から、亜鉛、カルシウム、マグネシウムが好ましく、本発明の味の課題の点から、二価金属が亜鉛又はマグネシウムである場合により適しており、さらに亜鉛である場合に適している。
【0016】
脂肪酸二価金属塩(B−2)は、25℃において100gの水に対して溶解する量が0.1g未満である粉体であり、好ましくは溶解する量が0.05g未満である粉体、又は水に実質的に溶解しない粉体である。なお、成分(B−2)は、口腔用組成物中に粉体状態で分散して存在しており、好ましくは、平均粒径1〜20μmの粉体状態で分散して存在、さらに好ましくは平均粒径2〜10μmの粉体状態で分散して存在する。
【0017】
本発明の口腔用組成物が脂肪酸二価金属塩(B−2)を含有する場合、その含有量は、象牙質知覚過敏に起因する痛みの軽減の観点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に、好ましくは0.1〜2質量%であり、より好ましくは0.2〜1.5質量%であり、さらに好ましくは0.4〜1.2質量%である。
【0018】
なお、成分(B)としては、上記成分(B−1)及び成分(B−2)のいずれか一方を単独で含有してもよく、双方をともに含有してもよい。象牙質知覚過敏症を予防または治療する作用をより高める観点からすれば、少なくとも成分(B−2)を含有するのが好ましく、
【0019】
本発明の口腔用組成物は、アネトール(C)を含有する。アネトール(C)は、アニス、スターアニス、フェンネル等の精油に含まれ、天然抽出物と合成品とがあり、いずれを用いてもよい。アネトール(C)の含有量は、口腔内に適用した際の硝酸カリウムの苦味を改善し、さらに後述する柑橘系香料(E)及びラクトン(F)との相乗効果により後味を改善する点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に0.002〜0.2質量%であって、0.005〜0.15質量%であることが好ましい。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物の場合には、アネトール(C)の含有量は、本発明の歯磨組成物100質量%中に0.02〜0.2質量%であることが好ましく、0.05〜0.15質量%であることがより好ましい。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物の場合には、アネトール(C)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物100質量%中に0.002〜0.02質量%であることが好ましく、0.005〜0.015質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明の口腔用組成物は、メントール(D)を含有する。メントール(D)としては、l−メントール、dl−メントール等が挙げられ、l-メントールが好ましい。メントール(D)の含有量は、口腔用組成物を口腔内に適用した際の清涼感と、界面活性剤や油成分との組合せによる異味を防止し、後味を向上する観点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に0.003〜1.0質量%であって、0.004〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.5質量%であることがさらに好ましい。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、メントール(D)の含有量は0.03〜1.0質量%が好ましく、0.04〜0.5質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%がさらに好ましい。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、メントール(D)の含有量は0.003〜0.1質量%が好ましく、0.004〜0.05質量%がより好ましく、0.01〜0.05質量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、シトラール、リモネン及びシトロネラールから選ばれる1種又は2種以上の柑橘系香料(E)を含有する。柑橘系香料(E)は1種単独で含有してもよいが、2種含有することが好ましく、3種含有することがより好ましい。柑橘系香料(E)の含有量は、1種単独で含有する場合は1種の含有量、2種以上を含有する場合は合計の含有量であって、口腔用組成物を口腔内に適用した際の硝酸カリウムの苦味を抑制しつつ、口腔用組成物を口腔内に適用した後に、成分(F)との相互作用によって後味を良好にする観点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に0.00002〜0.5質量%であって、0.00005〜0.3質量%がより好ましい。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、歯磨組成物中の成分(E)の含有量は、0.0001〜0.5質量%であることが好ましく、0.0005〜0.4質量%がより好ましく、0.001〜0.3質量%であることがさらに好ましい。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、液体口腔用組成物中の成分(E)の含有量は、0.00002〜0.05質量%が好ましく、0.00005〜0.04質量%がより好ましく、0.0001〜0.03質量%がさらに好ましい。なお、成分(E)は、オレンジ油、レモン油、ユーカリ油等の精油として含有するものであってもよいが、その場合の成分(E)の含有量は、精油中のリモネン、シトラール及びシトロネラールの含有量とする。
【0022】
成分(E)は、硝酸カリウムの後味を良好にする観点から、リモネンを含有し、さらにシトラール及び/又はシトロネラールを含有するものが好ましい。この場合における成分(E)の本発明の口腔用組成物中の含有量は、0.001〜0.5質量%であることが好ましく、0.002〜0.3質量%であることがより好ましい。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物であり、リモネンを含有し、さらにシトラール及び/又はシトロネラールを含有する場合の成分(E)の歯磨組成物中の含有量は、0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.02〜0.3質量%であることがより好ましい。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物であり、リモネンを含有し、さらにシトラール及び/又はシトロネラールを含有する場合の成分(E)の液体口腔用組成物中の含有量は、0.001〜0.05質量%であることが好ましく、0.002〜0.03質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明の口腔用組成物は、炭素数4〜14のラクトン(F)を含有する。ラクトン(F)としては、γ−ブチロラクトン、γ−パレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、γ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、γ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、γ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、γ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、ε−デカラクトン、γ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、ε−ドデカラクトン、γ−ドデカラクトン等があげられる。なかでも炭素数8〜12のラクトンが好ましく、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトンから選ばれる1種又は2種以上のラクトンがより好ましく、炭素数10〜12のラクトンがより好ましく、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトンから選ばれる1種又は2種のラクトンがさらに好ましい。ラクトン(F)の含有量は、口腔用組成物の使用直後から使用後しばらくの間に口腔内に残る苦味と酸味が混ざった後味を良好にし、口腔用組成物に含まれる成分(B)やその他の油性成分との組合せに起因するぬるい感触を抑制する点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に0.00001〜0.00055質量%であり、0.000015〜0.0005質量%が好ましく、0.000015〜0.0004質量%がより好ましい。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、成分(F)の本発明の歯磨組成物中の含有量は、0.00005〜0.00055質量%であることが好ましく、0.0001〜0.0005質量%であることがより好ましく、0.00015〜0.0004質量%がさらに好ましい。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合には、成分(F)の本発明の液体口腔用組成物中の含有量は、0.00001〜0.00009質量%が好ましく、0.000015〜0.00008質量%がより好ましく0.000015〜0.000055質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明の口腔用組成物において、成分(F)の含有量に対する成分(C)及び成分(E)の合計含有量の質量比((C+E)/F)は、成分(F)の甘さと成分(C)と成分(E)の風味とのバランスによって本発明の口腔用組成物の後味を良好とし、油風味を抑制する観点から、150〜1500であり、200〜1300が好ましく、210〜1000がより好ましく、さらに240〜700が好ましい。
【0025】
本発明の口腔用組成物において、成分(F)の含有量に対する成分(C)の含有量の質量比(C/F)は、成分(F)の甘さと油風味の混ざりあった味が成分(C)によって改善され、本発明の口腔用組成物の後味を良好とし油風味を抑制する観点から140〜1100が好ましく、180〜500がより好ましく、200〜400がさらに好ましい。
【0026】
なお、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合の成分(F)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比(A/F)は、9500〜25000が好ましく、12000〜23000がさらに好ましい。本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合の質量比(A/F)は、95000〜250000が好ましく、120000〜230000がより好ましい。
【0027】
本発明の口腔用組成物は、より清涼感を高めて後味の向上を図る点、及び渋味や苦味、金属味等の抑制を図る点から、さらにソルビトール(G)を含有することが好ましい。ソルビトール(G)の含有量は、清涼感や味の改善を図る点だけでなく、良好な保形性の点から、本発明の口腔用組成物100質量%中に、好ましくは3〜55質量%であり、より好ましくは5〜45質量%であり、さらに好ましくは10〜40質量%である。本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合には、成分(G)の含有量は30〜55質量%が好ましく、30〜45質量%がより好ましい。
【0028】
本発明の口腔用組成物のpHは、硝酸カリウムの苦味、酸味を抑制し、さらに後味を良好にする点から6〜9であることが好ましく、6.5〜8.5であることがより好ましく、7〜8.5であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の口腔用組成物の形態としては、口中に適用できるものであれば特に制限されず、練り歯磨剤や粉歯磨剤等の歯磨組成物、洗口剤や液状歯磨剤等の液体口腔用組成物として用いることができる。本発明の口腔用組成物は、成分(C)、(E)及び(F)を十分量配合可能とし、硝酸カリウムの後味の抑制効果向上の点から歯磨組成物に好適であり、さらに練り歯磨剤に好適である。
【0030】
本発明の口腔用組成物は、水を含有する。これにより、成分(A)が溶解してカリウムイオンを効果的に供給し、神経鈍感化作用を有効に奏することができる。例えば、本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、かかる水の含有量は、本発明の歯磨組成物100質量%中に、好ましくは30〜60質量%であり、より好ましくは35〜50質量%である。また、本発明の口腔用組成物が液体口腔用組成物である場合、かかる水の含有量は、本発明の液体口腔用組成物100質量%中に、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは70〜90質量%である。
【0031】
本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合、その水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業(株))を用いることができる。この装置では、歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0032】
本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合は、さらに粘結剤(H)を含有することが好ましい。粘結剤(H)としては、アルギン酸ナトリウム、エーテル化度が0.7〜2.0のカルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体等からなる群より選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。このうち、エーテル化度が0.7〜2.0のカルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガムが好ましい。また、保形性や糸引き性、及び使用感の面から2種以上、さらには3種以上を使用するこができる。粘結剤(H)は、本発明の口腔用組成物100質量%中に、好ましくは0.1〜3質量%含有し、より好ましくは0.2〜2質量%が、さらに好ましくは0.5〜1.7質量%含有する。なお、粘結剤(H)として含有するカルボキシメチルセルロースナトリウムのエーテル化度は、一般的に0.7以上であって、0.7〜2.0であるものが好ましく、適度な粘性を得る点から1.0〜1.5であるものが好ましい。また、安定性や各種成分の分散性等から増粘性シリカ等の増粘剤を併用することがさらに好ましい。
【0033】
本発明の口腔用組成物は、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、フッ化スズ、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、乳酸アルミニウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、アルギニン-炭酸カルシウム等の象牙質知覚過敏用の他の成分をさらに含有することができる。
【0034】
本発明の口腔用組成物が歯磨組成物である場合は、本発明の効果を阻害しない範囲で研磨剤を含有することができる。研磨剤としては、例えばリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、ピロリン酸カルシウム、無水ケイ酸(研磨性シリカ:JIS K5101−13−2に準ずる方法により測定される吸油量が、50〜150mL/100g)等が挙げられる。研磨剤は、RDA値(Radioactive Dentine Abrasion values、ISO11609研磨性の試験方法 付随書Aにより測定される値)が20〜250のものが一般に用いられる。研磨剤の含有量は、本発明の歯磨組成物中に0〜20質量%であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。上記RDA値が250を超える研磨剤の含有量は、本発明の口腔用組成物100質量%中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましく0は.1質量%以下であり、実質的に配合しないことがさらに好ましい。
【0035】
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、成分(G)以外の湿潤剤、甘味剤、成分(C)〜(F)以外の香料、pH調整剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、植物抽出物、その他有効成分等を含有することができる。
【0036】
成分(G)以外の湿潤剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、キシリトール、マルチット、ラクチット等が好適に用いられる。甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。成分(C)〜(F)以外の香料としては、カルボン、オイゲノール、オシメン、n-アミルアルコール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール等、及び桂皮油、ピメント油、シソ油、冬緑油等の精油が挙げられる。殺菌剤としては、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四級アンモニウム化合物、クロルヘキシジン塩類、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。抗炎症剤としては、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アズレン、グリチルレチン酸、エピジヒドロコレステリン、α−ビサボロール、グリチルリチン酸及びその塩類等が挙げられ、他の有効成分としては、ヒノキチオール等のフェノール性化合物、酢酸dl−トコフェロールのビタミンE類等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0038】
[実施例:歯磨組成物]
表1に記載の歯磨1、歯磨2を調製し、香料0.75%について、表2に記載の香料組成物を賦香した。歯磨1、歯磨2はpHを7.7に調整した。
【0039】
評価は3名の専門パネラー(フレーバーの調香者)により、1gを歯ブラシにとりブラッシング後、水で数回すすいだ後の口腔内の後味を評価した。後味の評価は以下の5段階評価により、3名の協議により行った。評価結果を表2に示す。
5:苦味と酸味が抑制されている。
4:苦味と酸味がほぼ抑制されている。
3:苦味と酸味が混じった味をわずかに感じる。
2:苦味と酸味が混じった味を感じる。
1:苦味と酸味が混じった味が長く残る。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表2に示すように、ラクトンを香料組成物中に0.03〜0.07質量%含有する(組成物中に0.00008〜0.0005質量%含有する)香料3〜5、香料8〜14、香料16〜19は、使用後の後味においても苦味と酸味が抑制され、またはわずかに感じる程度に抑制されていた。また、柑橘系香料を2種又は3種併用する香料3〜5、香料12〜14、香料16〜19は、さらに使用後の後味における苦味と酸味が抑制されていた。
【0043】
[実施例:液体口腔用組成物] 単位:質量%
硝酸カリウム 5
ソルビトール液(70%) 7.5
サッカリンナトリウム 0.005
塩化セチルピリジニウム 0.05
エタノール(95%) 4.0
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.7
pH調整剤(NaOH48%) 0.05
パラオキシ安息香酸エステル 0.05
香料※ 0.2
精製水 82.445
合計 100.00
【0044】
上記液体口腔用組成物の香料※として、表2に記載の香料2,16、17を用い、口腔内に適用した後に吐き出し、使用直後〜3分の後味の評価した。評価結果を表3に示す。香料16、17を配合する場合には、香料2に比べて後味の苦味や酸味が抑制された。
【0045】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)並びに(F):
(A)硝酸カリウム 4〜8質量%、
(B)界面活性剤及び/又は炭素数12〜18の飽和脂肪酸を由来とする脂肪酸二価金属塩、
(C)アネトール 0.002〜0.2質量%、
(D)メントール 0.003〜1.0質量%、
(E)シトラール、リモネン及びシトロネラールから選ばれる柑橘系香料 0.00002〜0.5質量%、並びに
(F)炭素数4〜14のラクトン 0.00001〜0.00055質量%
を含有し、成分(C)及び成分(E)と成分(F)との質量比(C+E)/Fが、150〜1500である口腔用組成物。
【請求項2】
成分(F)の含有量に対する成分(C)の含有量の比(C/F)が、140〜1100である請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(F)の含有量に対する成分(A)の含有量の比(A/F)が、9500〜25000である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
成分(B)の含有量が、0.2〜4質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
歯磨組成物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
ソルビトールを30〜55質量%含有する請求項5記載の口腔用組成物。
【請求項7】
pHが6〜9である請求項5又は6に記載の口腔用組成物。

【公開番号】特開2013−35792(P2013−35792A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174266(P2011−174266)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】