説明

口腔病学およびデンタルケアに使用するためのセラックロウおよび漂白セラックを含む口腔用組成物

活性成分と、漂白セラックおよびセラックロウを含む付着膜形成成分とを含む、歯の治療のための口腔用組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分と、漂白セラックおよびセラックロウを含む付着膜形成成分とを含む、歯の治療のための口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う歯(虫歯)は、人口の大多数に発症する主な歯科疾患である。20世紀の初頭、研究者らは、フッ化物がう歯の発生率を低下させるのに有効であることを発見した。その時以来、フッ化物の研究が発展し、現在、フッ化物治療は歯科衛生に役立つことが広く認められている。
【0003】
フッ化物組成物は、いくつもの方法および組成物、すなわち、最も一般的には、練り歯磨きおよび口腔洗浄薬などの、フッ化物含有歯磨剤組成物を用いることによる方法で、歯に日常的に適用される。しかしながら、フッ化物組成物を歯に長期に接触させること、および歯磨剤組成物中に存在するフッ化物量を超えるフッ化物の量を使用することが望ましい、ある特定の状況がある。例えば、口内乾燥症(口渇あるいはドライマウス)、歯の知覚過敏症(tooth hypersensitivity)、う歯(虫歯)を、高濃度のフッ化物で長時間治療するのが望ましいことがある。これは、デンタルトレイの使用によって行うことができ、この場合、組成物をデンタルトレイに塗布し、次いで、この組成物およびトレイを治療する歯に適用する。しかしながら、この方法は、使用者が使用の間トレイを本人の口中に保持することを強制され、したがって、治療時間は使用者がトレイを本人の口中にいかに長く保持できるかによって制限されるので、不便である。そこで、歯にブラシで直接適用する歯科ワニス(tooth vanish;歯科用バニッシュともいう)組成物が開発されている。歯科ワニス組成物の使用は当技術分野でよく知られており、ワニス組成物は、この組成物が徐々に消滅するまで、より長い曝露時間(例えば、約2時間または2時間超)を可能にする。
【0004】
既存の歯科ワニス組成物は、例えば、う歯(虫歯)を治療する、フッ化物療法を提供する、口内乾燥症、歯の過敏症(tooth sensitivity)を治療する、および/または歯を白くするもしくは漂白するための活性成分と、この活性物質を歯に付着させるための付着膜形成成分とを一般的に含む。しかしながら、付着膜形成成分の色のために、ワニスは歯の表面の色を一時的に変化させ、例えば黄色を生じさせ得る。色の差異は、ワニスが適用された歯の表面を識別するのに、使用者に役立つ点で望ましいこともあるが、黄色の歯は、いかにこのワニスが一時的であれ、非衛生的な口腔を示唆するので、過剰な着色は望ましくない。さらに、使用者が歯科ワニスを使用していることに他人が気付くことがあるので、このような変色は使用者に、きまり悪さを生じさせ得る。したがって、歯の色に悪影響を及ぼさない歯科ワニス組成物を開発する必要性が存在する。
【0005】
歯科ワニスについての別の欠点は、ワニスが多相になる傾向があることであり、これは、例えば、活性成分が付着膜形成相中に不溶性であるため、およびワニスが別個の相に析出し得るために起こる。さらに、付着膜形成相の成分も、経時的に別個の相に析出し得る。使用時には、これらの相を混合するために、典型的にはワニスを撹拌する必要があり、これは、ワニスが混合装置に付着し、その後に付着したワニスは廃棄されるので、時間がかかり無駄である。したがって、相が容易に分離しない、より高い安定性を有する歯科ワニス組成物を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によれば、活性成分と、セラックロウ(shellac wax)および漂白セラック(bleached shellac)を含む付着膜形成成分とを含む歯科ワニスは、歯に適用された場合、より少ない着色を与え、かつ、より高い安定性を有し、例えば、層が分離しない傾向があり、さらにこのような組成物の使用は、活性成分の活性の低下を引き起こさないということが、驚くべきことに見出された。このワニスは、ブラシによって容易に塗布することができ、例えば、ブラシを組成物中に浸漬し、次いで、歯の表面、好ましくは乾燥した歯の表面に適用される。ワニスは一時的なものであり、ある時間後、例えば、適用から48時間以内、適用から24時間以内、適用から12時間以内、適用から6時間以内、または適用から2時間以内に歯の表面から徐々に消滅する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、組成物1.0、すなわち、活性成分と、漂白セラックおよびセラックロウを含む付着膜形成成分とを含む、口腔用組成物を対象とする。
【0008】
本発明のその他の組成物には、次の組成物が含まれる:
組成物1.1:漂白セラックが、脱ろう漂白セラック(dewaxed bleached shellac)である組成物1.0;
組成物1.2:漂白セラックが、組成物の約5重量%〜約70重量%、例えば、約5重量%〜約40重量%、約10重量%〜約30重量%、または約20重量%を占めるか、あるいは漂白セラックが、付着膜形成成分の約10重量%〜約50重量%、例えば、この成分の約15重量%〜約35重量%、または約25重量%を占める組成物1.0または1.1;
組成物1.3:セラックロウが、組成物の約0.1重量%〜約20重量%、例えば、約0.5重量%〜約15重量%、約1重量%〜約10重量%、または約1重量%、4重量%、6重量%、8重量%、もしくは10重量%を占めるか、あるいは、セラックロウが、付着膜形成成分の約0.1重量%〜約10重量%、例えば、約0.5重量%〜約8重量%、約1重量%〜約5重量%、または約2重量%、3重量%、もしくは4重量%を占める前述の組成物の任意のもの;
組成物1.4:活性成分が、組成物の約3重量%〜約50重量%、例えば、約5重量%〜約30重量%、約10重量%〜約20重量%、または約14重量%もしくは15重量%を占める前述の組成物の任意のもの;
組成物1.5:付着膜形成成分が、ミツロウ、コロホニウム、マスチック、水不溶性アルキルセルロース、またはこれらの組合せをさらに含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.6:付着膜形成成分が、組成物の約5重量%〜約97重量%、例えば、約50重量%〜約95重量%、約60重量%〜約90重量%、約70重量%〜約85重量%、または約80重量%を占める前述の組成物の任意のもの;
組成物1.7:前述の組成物の任意のものが溶媒をさらに含み、ここで、例えば、組成物が溶媒を約5重量%〜約50重量%、例えば、約10重量%〜約40重量%、約25重量%〜約30重量%、または約27重量%を占める;
組成物1.8:活性成分が溶媒を含み、例えば、溶媒が、活性成分の約20重量%〜約60重量%、例えば、約30重量%〜約50重量%、約35重量%〜約45重量%、または約40重量%もしくは43重量%である前述の組成物の任意の1つ;
組成物1.9:溶媒が、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、イソプロピルアルコール、またはこれらの組合せから選択される組成物1.7または1.8;
組成物1.10:活性成分がコロホニウムを含み、例えば、活性成分が約5重量%〜40重量%のコロホニウム、例えば、約10重量%〜約30重量%、約15重量%〜約25重量%、または約20重量%もしくは22重量%のコロホニウムを含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.11:活性成分が、例えば、組成物全体の約0.5重量%〜約15重量%のフッ化物イオン源、例えば、約1重量%〜約10重量%、約2重量%〜約7重量%、または約5重量%の量で存在するフッ化物イオン源を含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.12:組成物中に約1,000ppm〜約50,000ppmのフッ化物イオン、例えば、約22,000ppm、または23,000ppmのフッ化物イオンを供給するのに十分なフッ化物イオン源を含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.13:フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム亜鉛、フッ化リチウム、フッ化アンモニウム、フッ化第一スズ、フルオロジルコン酸第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化水素酸ラウリルアミン、フッ化水素酸ジエチルアミノエチルオクトイルアミド、フッ化ジデシルジメチルアンモニウム、フッ化セチルピリジニウム、フッ化ジラウリルモルホリニウム、サルコシンフッ化第一スズ、グリシンフッ化カリウム、フッ化水素酸グリシン、フッ化アミン、またはこれらの組合せから選択されるフッ化物イオン源を含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.14:活性成分が歯の過敏症治療剤(あるいは歯の脱感作剤;tooth desensitizing agent)を含む組成物の任意のもの;
組成物1.15:カリウム塩、カプサイシン、オイゲノール、ストロンチウム塩、亜鉛塩、塩化物塩、またはこれらの組合せから選択される歯の過敏症治療剤(歯の脱感作剤)を含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.16:活性成分が、抗菌剤の有効量を含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.17:活性成分が、歯のホワイトニング化合物を含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.18:実質的に水を含まない、例えば、水が1重量%未満の前述の組成物の任意のもの;
組成物1.19:第一スズイオン剤、トリクロサン、トリクロサンモノホスフェート、クロロヘキシジン、アレキシジン、ヘキセチジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、サリチルアニリド、アルギネートエステル、エチルラウリルアルギネート、ビスフェノール、臭化ドミフェン、塩化テトラデシルピリジニウム、塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、オクテニジン、デルモピノール、オクタピノール、ナイシン、亜鉛イオン剤、銅イオン剤、精油(エッセンシャルオイル)、フラノン、バクテリオシン、塩基性アミノ酸、またはこれらの組合せを含む前述の組成物の任意のもの;
組成物1.20:歯科ワニスである前述の組成物の任意のもの。
【0009】
本発明は、組成物1.0〜1.20の任意の1つを、例えば、ブラシ、綿棒、またはシリンジによって口腔中の歯に適用することを含む、活性成分で歯を治療するための方法も対象とする。本発明は、組成物1.0〜1.20の任意の1つを口腔中の歯に適用することを含む、う歯(虫歯)、口内乾燥症、歯の知覚過敏症、または歯の汚染を治療する方法も対象とする。本発明の組成物は、歯のエナメル質、象牙質またはセメント質に適用してもよく、う歯(虫歯)を予防および/または治療し、歯の表面を再石灰化し、知覚過敏症を予防および/または治療するのを助けるために使用することができる。好ましくは、組成物は、適用後0.5時間〜48時間、例えば、適用後2時間、4時間、6時間、12時間、または14時間、歯の表面に付着したままである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例2に説明された結果を詳述するグラフである。
【図2】実施例3に説明された結果を詳述するグラフである。
【図3】実施例4に説明された結果を詳述するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示を通して、範囲は、その範囲内にあるそれぞれのおよびすべての値の記述の省略表現として使用されている。その範囲内の任意の値は、範囲の末端として選択することができる。
本発明の活性成分は、当技術分野で既知の任意の口腔活性剤、例えば、フッ化物イオン源、抗菌剤、歯のホワイトニング剤および/または漂白剤ならびに抗過敏症剤(antisensitivity agent)であってもよい。
【0012】
本発明の付着膜形成成分は、活性成分の歯の表面への付着を容易にし、本発明が適用される表面にわたって実質的に連続する膜を形成するために使用される。付着膜形成成分は、セラックロウ、漂白セラック、および任意に当技術分野で知られている他の付着剤または膜形成物質を含む。
【0013】
セラックは、ラック昆虫であるラックカイガラムシ(ケリア・ラッカ;Kerria lacca)からの、処理された樹脂状分泌物である。セラックを製造する方法は、当技術分野で知られている。セラックは、以前から歯科ワニスに使用されてきたが、本発明者らは、歯科ワニス中に漂白セラックを用いることによってワニスの安定性が改良され、ワニスを歯に適用したときの歯の着色も改善されることを見出したものである。
【0014】
セラックロウを製造する方法は、当技術分野で知られている。通常、未処理のセラックをアルカリ溶液またはアルコールに溶解し、場合によって活性炭を用いて、溶媒抽出にかける。次いで、セラックロウを溶媒相から回収する。セラックロウは、Renshel Exports Pvt.Ltd.(コルカタ、インド)、またはSitaram Saraf(コルカタ、インド)から入手することができる。
【0015】
漂白セラック(これは脱ろうしてもよい)を製造する方法も、当技術分野で知られている。通常、溶媒抽出したアルカリ溶液(セラックロウの製造から生じる)を漂白剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウムで処理する。漂白セラックを強酸、例えば硫酸によって溶液から沈殿させ、乾燥させる。米国特許第6,348,217号明細書を参照されたい。漂白セラックは、タイプ101としてRenshel Exports Pvt.Ltd.(コルカタ、インド)から、またはSitaram Saraf(コルカタ、インド)から入手することができる。
【0016】
その他の膜形成物質も、膜形成成分に加えることができる。例えば、白ロウ、ミツロウ、白色ミツロウ、コロホニウム(ロジンとしても知られている)、マスチック、ポリブテン、およびDE 20 2004 000 552 U1に記載された水不溶性アルキルセルロースを、付着膜形成成分に取り込んでもよい。コロホニウムは、Willers Engels & Co.GMBH(ハンブルグ、ドイツ)から入手することができる。
【0017】
本発明の組成物は、歯科ワニスの意図される目的に応じて選択される活性成分を含む。例えば、活性成分は、フッ化物治療、う歯(虫歯)、知覚過敏症、または口内乾燥症の治療のためのフッ化物イオン源であってもよい。活性成分は、歯の知覚過敏症の治療のための抗過敏症剤であってもよい。活性成分は、歯のホワイトニングまたは漂白のための、例えば、汚染および変色を治療するための、歯のホワイトニングまたは漂白用組成物であってもよい。活性成分は、好ましくは、付着膜形成成分と反応しない。
【0018】
フッ化物イオン源は、当技術分野で知られており、水性環境中にフッ化物イオンを放出することが可能な任意のものとすることができる。典型的な供給源には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム亜鉛、フッ化リチウム、フッ化アンモニウム、フッ化第一スズ、フルオロジルコン酸第一スズ、ならびに錯体フッ化物、例えばモノフルオロリン酸ナトリウムまたはモノフルオロリン酸カリウム等のモノフルオロリン酸塩およびこれらの塩、フッ化水素酸ラウリルアミン、フッ化水素酸ジエチルアミノエチルオクトイルアミド、フッ化ジデシルジメチルアンモニウム、フッ化セチルピリジニウム、フッ化ジラウリルモルホリニウム、サルコシンフッ化第一スズ、グリシンフッ化カリウム、フッ化水素酸グリシン、およびフッ化アミン等の、フッ化物イオンの可溶性の塩が含まれる。例えば、米国特許第3,538,230号明細書、同第3,689,637号明細書、同第3,711,604号明細書、同第3,911,104号明細書、同第3,935,306号明細書および同第4,040,858号明細書を参照されたい(これらの内容を参照によりその全体を本明細書に援用する)。フッ化物イオン源は、塩またはシラン製剤として存在し得る。好ましくは、フッ化物イオン源は塩の形態であり、好ましいフッ化物イオン源はフッ化ナトリウムである。
【0019】
フッ化物イオン源は、最も好ましくは、組成物中に高濃度のフッ化物イオン(即ち、少なくとも約5,000ppm、および、ある場合には最大50,000ppmの量まで、例えば、約7,000ppm〜約40,000ppm、約15,000ppm〜約30,000ppm、または約22,000もしくは23,000ppmである)を与えることが可能になるような量で存在する。最適なppmの範囲にあるこのような濃度を提供するために、組成物中のフッ化物イオン源の正確な重量百分率は、様々なフッ化物イオン源の化学量論的な性質に応じて変化し得る。
【0020】
微生物の減少が望まれる場合は、好ましくは、活性成分として抗菌剤を使用し得る。抗菌剤は、当技術分野で知られており、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、ホウ酸、およびβ−ナフトール、クロロチモール、チモール、アネトール、ユーカリプトール、カルバクロール、メントール、フェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ヘキシルレゾルシノール等のフェノール系化合物、塩化ラウリルピリジニウム、塩化ミリスチルピリジニウム、フッ化セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、およびトリクロサン等のハロゲン化ジフェニルエーテルが含まれる。本発明の組成物はまた、1種または複数の遊離の塩基または塩の形態の塩基性アミノ酸、例えばアルギニンを含んでもよい。このような薬剤は、選択された薬剤に応じて有効量、例えば組成物の総重量に対して約1重量%〜約20重量%で添加することができる。
【0021】
本発明の組成物は、1種または複数の抗過敏症剤、例えば、硝酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、およびシュウ酸カリウム等のカリウム塩;カプサイシン;オイゲノール;ストロンチウム塩;亜鉛塩;塩化物塩およびこれらの組合せを含んでもよい。このような薬剤は、選択された薬剤に応じて有効量、例えば、組成物の総重量に対して約1重量%〜約20重量%で添加することができる。本発明の組成物は、歯に適用された場合、象牙質細管をブロッキングすることによって知覚過敏症を治療するために使用することができる。
【0022】
本発明の活性成分はまた、当技術分野で知られている歯のホワイトニングまたは歯の漂白用組成物であってもよい。適したホワイトニングおよび漂白用組成物は、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過硫酸塩を含む。過酸化物には、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物、有機ペルオキシ化合物、ペルオキシ酸、およびこれらの混合物が含まれる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物には、過酸化リチウム、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、およびこれらの混合物が含まれる。他の過酸化物には、過ホウ酸塩、過酸化尿素、およびこれらの混合物が含まれる。適した金属亜塩素酸塩には、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、および亜塩素酸カリウムが含まれ得る。このような薬剤は、選択された薬剤に応じて有効量、例えば、組成物の総重量に対して約1重量%〜約20重量%で添加し得る。
【0023】
本発明は、本発明の組成物を歯に適用した場合急速に蒸発する溶媒を任意に含むことができる。適した溶媒には、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、またはイソプロパノールが含まれ得る。好ましくは、溶媒は無毒性であり、好ましい溶媒はエタノールである。溶媒はまた、粘度調整剤としての機能を果たし、膜形成成分の堆積(沈殿)さえからも守る。
【0024】
好ましくは、組成物は、約100から5,000センチポアズ(centipoise)の間の粘度を有する。さらに、組成物はまた、適用の間に、より容易に広がるようにチキソトロピー性であり得る。組成物の高粘性およびチキソトロピー性のために、さもなければ適用すると流れるまたは滴る組成物のなんらかの傾向は、最小限に抑えられおよび/または防止される。
【0025】
口腔ケア用組成物は、好ましくは歯科ワニスの形態であり、従って、組成物は、実質的には水を含まない、例えば、水0%、または水1重量%未満であり得る。組成物中の一部の成分、例えば、漂白セラックまたはエタノールは、微量の水を含み得るものと理解される。
【0026】
必要に応じて、本発明の口腔ケア用組成物中に、香味料、例えば、甘味料を使用してもよい。適した甘味料には、限定するものではないが、サッカリンおよびその誘導体、シクラマートおよびその誘導体、アセスルファム−K、タウマチン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、アンモニア化グリシルリジン、デキストロース、レブロース、スクロース、マンノース、グルコース、キシリトール、および任意の他の適した甘味料が含まれる。その他の香味料は、当技術分野で知られており、人工香味料、または植物抽出物が含まれ得る。
【0027】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例に関して説明する。
【実施例】
【0028】
実施例1
エタノール42.5重量%、コロホニウム22.9重量%、およびフッ化ナトリウム34.6重量%を含む歯科ワニス活性成分を調製する。材料を均一になるまで混合する。
5種の異なる付着膜形成成分を表1に従って調製する。成分を均一になるまで混合する。別の指示がなければ、数値は重量百分率として表されている。
【0029】
【表1】

【0030】
次いで、活性成分と付着膜形成成分とを混合することによって、歯科ワニス組成物を調製する。また、追加のエタノールおよび香味料を組成物に添加する。最終歯科ワニス組成物は、84.3重量%の付着膜形成成分、および14.1重量%の活性成分を含んでいる。最終歯科ワニス組成物を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例2
実施例1のワニス組成物を、その安定性および異なる相に分離する傾向を決定するために、15m1遠心管中、3000rpmおよび35℃で、15分から最大360分まで遠心分離させる。遠心分離の間に、ワニスの頂部に透明な相が生成し、これは相が分離したことを示している。透明な相の長さを測定し、図1に示す。
【0033】
実施例3
実施例1のワニスW、X、YおよびZを、0.1cmの相分離が観察されるまで温度増加にかける。結果を図2に示す。この結果は、より高いセラックロウ成分を有する組成物は、より高温で安定であることを示している。図2中のロウの量が、4%、6%、8%、および10%は、それぞれワニスW、X、YおよびZを表す。
【0034】
実施例4
ワニスAおよびXを様々な厚さで歯に適用し、歯の色をUltrascan XE 分光光度計を用いて、ハンターL、a、bカラースケールにより評価する。特に青対黄色のb値を評価する。結果を図3に示す。ワニスAは、ワニスXより黄色成分を多く含むことがわかる。
【0035】
実施例5
ワニスAおよびXを歯科専門家によって患者の歯に適用して、付着力を決定する。歯科専門家は、ワニスXはワニスAに比較して優れた付着力を有することを見出すことがわかる。
【0036】
実施例6
ワニスAおよびXを歯科専門家によって患者の歯に適用して、適用の容易さを決定する。歯科専門家は、ワニスXは、組成物A(ワニスA)よりも、歯に適用するのが容易であることを見出すことがわかる。
【0037】
当業者であれば、その広い発明の概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更および代替を加えることが可能であることを理解する。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付された特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲内の修正を包含するものであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分と、漂白セラックおよびセラックロウを含む付着膜形成成分とを含む、口腔用組成物。
【請求項2】
漂白セラックが、脱ろう漂白セラックである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
漂白セラックが、組成物の約5重量%〜約70重量%を占める、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
セラックロウが、組成物の約0.1重量%〜約20重量%を占める、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
活性成分が、組成物の約3重量%〜約50重量%を占める、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
付着膜形成成分が、ミツロウ、コロホニウム、マスチック、水不溶性アルキルセルロース、およびこれらの組合せをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
付着膜形成成分が、組成物の約5重量%〜約97重量%を占める、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、溶媒を約5重量%〜約50重量%含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
活性成分が、コロホニウムと、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、イソプロピルアルコールまたはこれらの組合せからなる群から選択される溶媒とを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
溶媒がエタノールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
活性成分が、フッ化物イオン源、抗菌剤、抗過敏症剤、歯のホワイトニング剤またはこれらの組合せを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物中に約1,000ppm〜約50,000ppmのフッ化物イオンを供給するのに十分な量で存在するフッ化物イオン源を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
フッ化物イオン源が、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム亜鉛、フッ化リチウム、フッ化アンモニウム、フッ化第一スズ、フルオロジルコン酸第一スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化水素酸ラウリルアミン、フッ化水素酸ジエチルアミノエチルオクトイルアミド、フッ化ジデシルジメチルアンモニウム、フッ化セチルピリジニウム、フッ化ジラウリルモルホリニウム、サルコシンフッ化第一スズ、グリシンフッ化カリウム、フッ化水素酸グリシン、フッ化アミン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
フッ化ナトリウムを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
活性成分が、ハロゲン化ジフェニルエーテルを含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
実質的に水を含まない、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
歯科ワニスである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか一項に記載の組成物を、有効な時間、歯に適用することを含む、フッ化物で歯を治療する方法。
【請求項19】
組成物が、少なくとも24時間、歯上に残存する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
組成物が複数の歯に適用される、請求項18または19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516500(P2011−516500A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503241(P2011−503241)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/039655
【国際公開番号】WO2009/124311
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】