説明

古紙処理方法

【課題】
古紙に記載の機密情報を漏洩することなく、効率的に、古紙の糖化および糖の回収を行うことができる古紙処理方法を提供することである。
【解決手段】
貯蔵室内に投入された古紙に酵素含有液を接触させる接触工程を有し、古紙と酵素との反応進行中または反応完了後に、貯蔵室を糖回収施設に輸送し/又は輸送すること無しに、糖を回収することを特徴とする古紙処理方法である。前記接触工程において、噴霧器、スリットもしくは塗工ロールのうちから選ばれる少なくとも1つの接触装置を用いるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古紙処理方法に関し、更に詳しくは、機密情報を含み、公開されることを嫌う古紙を再資源化するに際し、糖化し、糖から更に化学品、燃料等を発酵生産して供給することを可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人情報保護の観点から情報の管理が厳しくなっており、個人情報が記載された古紙について、個人情報を漏洩することなく処理する方法が望まれている。
前記古紙を処理する方法として、一般的に、(1)機密書類や個人情報が記載された書類等をシュレッダーにより細かく裁断した後、焼却処理する方法、(2)密閉容器に前記書類を封入し、パルプ製造プロセスのパルパーに投入して、再資源化処理する方法等が採用されている。
これらの方法を用いる場合、間違いなく処理されたことを確認するため、排出者が、輸送から廃棄まで立会わなければならず、手間がかかるという問題がある。
【0003】
前記(1)の方法を用いると、古紙を裁断することに伴い、繊維自体が切断され、その結果、裁断した古紙を再利用して得られた再生紙の紙力は低下してしまう。
また、裁断した古紙から紙を再生すると、古紙再生の禁忌品と呼ばれるカーボン複写紙、ノーカーボン紙および感熱紙等の情報用紙、印画紙ならびに捺染紙等が古紙パルプ中に含まれてしまい、抄紙工程でトラブルが発生するということもある。そのため、裁断後の古紙は、再利用されず、焼却処理されていた。
さらに、古紙を裁断すると、紙ゴミの体積が増加してしまう。この問題を改善する方法として、シュレッダー後の破砕物を圧縮する装置が開発されているが(特許文献1参照)、搬送コストが高くなるという問題は回避できない。
【0004】
そこで、オフィスで発生する機密書類を細かく裁断するシュレッダー処理を要することなく、紙として再利用するための方法、例えば、ミル搭載車を事業所に出張させて古紙出張回収システムや廃棄書類を水中に投入し古紙繊維を解繊する装置等が知られている(特許文献2、3および4参照)。
【0005】
一方、古紙は再生可能な木質資源に由来し、古紙に含まれる繊維分はその主成分がセルロースおよびヘミセルロース等の糖類であり、多くの動物および微生物の栄養源として利用可能な資源である。
古紙はサイズ剤、紙力増強剤、インキまたはトナー等の様々な化合物やカオリン等の鉱物を含むため、動物の餌とすることは必ずしも適切とは言えないが、微生物の培養基として利用できる。微生物による発酵を利用して、古紙を糖化して糖類を得る方法が知られている(特許文献5参照)。
糖化により得られたセルロース等を原料として、エタノール、メタン、有機酸類、アミノ酸、アセトン、ブタノールまたは抗生物質等を生成することが可能である。特に、エタノール、アセトン、ブタノール、乳酸、琥珀酸等は、現在化石資源から製造されており、これらを化石資源以外の再生可能な資源である植物由来の廃棄物から製造することは資源の有効活用、環境面から重要であり、望まれている。
【0006】
発酵の基質として古紙を利用する場合にはセルロース、ヘミセルロース等の糖類を加水分解して、微生物が利用可能な糖類に変換することが一般的である(特許文献6、7および8参照)。加水分解する方法としては、硫酸等の酸を加え、加熱して行う方法、加水分解酵素を利用する方法、加圧熱水処理、超臨界処理等が知られているが、硫酸法、加圧熱水法、超臨界法等は危険な薬品の使用、高温、高圧処理が必要であり、これらの条件に耐える材質で作られた、安全対策を施した専用の設備を有する工場で行う必要がある。そのため、糖質資源として利用する場合でも事業所で発生する古紙を回収し、これらの設備のある場所へ運搬することが必要である。
【0007】
【特許文献1】特開2000−301014号公報
【特許文献2】特開2001−140180号公報
【特許文献3】特開平5−125678号公報
【特許文献4】特開2003−119680号公報
【特許文献5】特開2003−135052号公報
【特許文献6】特開2002−176997号公報
【特許文献7】特開2002−186938号公報
【特許文献8】特開2002−159954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
機密古紙を始めとして古紙を糖質資源として、オフィス古紙を運搬、又は輸送する前に酵素により溶解処理し糖を回収する古紙処理方法はまだ開発されていない。
本発明者らは鋭意研究を重ね、古紙、特に機密古紙を糖質資源として回収する方法を開発するに至った。
本発明は、古紙に記載の機密情報を漏洩することなく、効率的に、古紙の糖化および糖の回収を行うことができる古紙処理方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明は以下の構成を採用する。
(1)貯蔵室内に投入された古紙に酵素含有液を接触させる接触工程を有し、古紙と酵素との反応進行中または反応完了後に、貯蔵室を糖回収施設に輸送し、糖を回収することを特徴とする古紙処理方法。
(2)前記接触工程において、噴霧器、スリットもしくは塗工ロールのうちから選ばれる少なくとも1つの接触装置を用いる前記(1)に記載の古紙処理方法。
(3)前記接触工程の前工程または後工程の少なくとも一方に古紙を破砕する破砕工程を有し、該破砕工程において、破砕機、エンボスロールもしくは2軸混練機のうちから選ばれる少なくとも1つの破砕装置を用いる前記(1)または(2)に記載の古紙処理方法。
(4)前記酵素含有液が、酵素含有液1mlあたり200〜1000単位の濾紙崩壊活性を含む前記(1)〜(3)に記載の古紙処理方法。
(5)前記貯蔵室が混合手段を有する前記(1)〜(4)に記載の古紙処理方法。
(6)前記古紙を圧縮する圧縮手段を有する前記(1)〜(5)に記載の古紙処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、古紙に記載の機密情報を漏洩することなく、古紙を処理することができ、さらに、古紙と酵素の加水分解反応中に糖回収施設に運搬することができるので、効率的に、古紙の糖化および糖の回収を行うことが可能になる。
さらに、本発明によれば、古紙中の繊維を糖化して糖類を生成することができるので、糖を原料として、アルコール燃料や化学品原料を生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の古紙処理方法は、貯蔵室内に投入された古紙に酵素含有液を接触させる接触工程を有し、古紙と酵素との反応進行中または反応完了後に、貯蔵室を糖回収施設に輸送し、糖を回収することを特徴とする。
【0012】
本発明で処理可能な古紙としては、特に、機密情報を含む古紙が好適であるが、これに限定されることなく、書類、書籍、雑誌、印刷物、新聞、チラシ、帳票または金券等も処理可能である。
また、本発明に供することができる古紙再生の禁忌品としては、ノーカーボン複写紙、感熱紙(ファックス用紙)、クリーニングタグ用紙、滅菌紙、印画紙、ラベル用紙または剥離紙等が挙げられる。特にオフィスから発生するいわゆるオフィスペーパーが好ましい。
一方、セルロース繊維を含まない合成紙や、紙以外のフィルムは適さない為、これらの混入量は少ない方が好ましい。
【0013】
本発明に使用可能な酵素としては、古紙中の生体成分を分解できる酵素であれば、特に制限はなく、例えば、セルロース分解酵素、ヘミセルロース分解酵素、リグニン分解酵素またはデンプン分解酵素等を単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
これらの酵素は、市販の酵素の原液または酵素生産菌の培養後の酵素を含む培養上清を、水、酵素の活性を維持するのに適した緩衝液または酵素安定化剤等と混合することにより希釈して用いることもできる。
前記酵素を水、酵素の活性を維持するのに適した緩衝液または酵素安定化剤等で希釈する場合における酵素の含有量としては、酵素含有液1mlあたり200〜1000単位の濾紙崩壊活性を含むのが好ましい。
【0014】
本発明の古紙処理方法に使用する貯蔵室は、水の漏れない構造とし、投入した古紙を酵素と接触させることにより古紙を加水分解する。加水分解により古紙の解繊、糖化を行うことができ、同時に機密情報が判読不能となる。
貯蔵室はサイトグラス、レベルセンサーまたは秤を取り付けることにより、視覚的または機械的に液面の高さを把握可能にして、内容物の溢出を防止することもできる。
また、機密情報の消去を促進するために混合手段を設置することも可能である。前記混合手段としては、タービン型もしくはプロペラ型等の撹拌翼を有する攪拌機等を挙げることができる。さらに、セメントミキサー車のように貯蔵室自体が回転するものでもよい。
本発明においては、貯蔵室に古紙を導入し、古紙に酵素を接触させて加水分解を行い、加水分解終了後、貯蔵室内から糖を取り出し、糖を生成する糖回収施設に移送することができる。
他にも、貯蔵室に古紙を導入し、古紙に酵素を接触させて、貯蔵室を糖回収施設へ移送する間に、加水分解により古紙を糖化させ、糖回収施設に到着後、直ちに糖を取り出すこともできる。
【0015】
本発明の古紙処理方法は、古紙に酵素含有液を接触させる接触工程を有する。古紙に酵素含有液を接触させる方法としては、貯蔵室に接触装置を設け、この接触装置を用いて接触させる方法、または、酵素含有液が貯留された貯蔵室に古紙を投入することにより接触させる方法等を挙げることできる。
本発明においては、前記接触装置を古紙投入口の前段に設け、古紙を酵素含有液に接触させた後、貯蔵室に投入してもよく、または、前記接触装置を古紙投入口の後段に設け、古紙を貯蔵室に投入した後、古紙と酵素含有液とを接触させてもよい。
前記接触装置としては、噴霧器、スリットまたは塗工ロールを挙げることができる。これらの接触装置は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記接触装置が噴霧器またはスリットである場合、酵素供給パイプ内を案内された酵素含有液を、酵素供給パイプの一端に接続されたノズルから吐出させて接触させることができる。一方、前記接触装置が塗工ロールである場合、酵素含有液が付着した塗工ロールに古紙を通過させることにより接触させることができる。
酵素含有液の接触量としては、古紙1kgに対して濾紙崩壊活性で1000〜10000単位が好ましく、特に好ましくは5000〜10000単位である。
【0016】
本発明においては、接触工程の前工程または後工程の少なくとも一方に古紙を破砕する破砕工程を加えることができる。破砕装置としては、破砕機、2軸混練機またはエンボスロール等を挙げることができる。
破砕装置で古紙に凹凸をつけ、または一部を破断する等により、酵素と古紙との接触面積を増加させることができるので、加水分解反応を促進し、機密情報の消去を促進することができる。
【0017】
古紙と酵素とを接触させる温度は、酵素が作用する温度であればいずれでも良く、酵素の至適温度に維持することが好ましい。好ましくは30℃〜60℃の範囲である。
酵素が好熱菌の生産する耐熱酵素の場合、更に高い温度で処理することができる。酵素の至適温度に加温するには、貯蔵室に加熱装置を設置して加温することができ、例えば、コイル状のヒーターを貯蔵室内に設置して、該ヒーターに電気を通電することにより加温する方法、電磁加熱器に貯蔵室を載置して、電磁誘導加熱することにより加温する方法または貯蔵室の周囲にリボンヒーターを巻きつけて加温する方法等を用いることができる。
【0018】
古紙と酵素含有液とを混合した後の混合液のpHとしては、酵素の最適pHであることが好ましく、用いる酵素の種類に応じて、適宜、pHを調整することができる。pH調整剤としては、特に制限はなく、例えば、希硫酸、希塩酸、酢酸もしくはリン酸等の酸またはアンモニア、重曹、水酸化ナトリウムもしくは石灰乳等のアルカリ用いることができる。
また、pHは、加水分解反応の経過に伴って変化するので、貯蔵室にpHセンサーを取付け、pHセンサーと連動させることによって、貯留室内にpH調整剤を供給する構成にしてもよい。
【0019】
本発明において、貯蔵室を糖回収施設に輸送する手段としては、貨物自動車、船舶または鉄道貨車等を挙げることができる。中でも、機密古紙が発生する事務所等に直接出向いて処理できる古紙回収車が好適である。
古紙回収車としては、古紙と酵素の混合物を圧縮する機能を有するゴミ収集用パッカー車または古紙と酵素の混合物を撹拌できる機能を有するセメントミキサー車が好ましい。
例えば、前記ゴミ収集用パッカー車で古紙収集を行う場合、ゴミ収集用パッカー車に古紙を積載する前および/または積載してから酵素を散布し、輸送中に酵素の作用により加水分解させ、糖化させる方法が好ましい。
【0020】
本発明の古紙処理方法に用いられる処理装置の一例を図1に示し、本発明の古紙処理方法について簡単に説明する。なお、本発明の古紙処理方法は図1に示される古紙処理装置により、なんら制限されることはない。
【0021】
古紙aは古紙投入口1から貯蔵室2内に投入される。貯蔵室2内に投入された古紙aは、貯蔵室2内に設けられた破砕機11により、裁断される。破砕機11により裁断された古紙aは、破砕機11の近傍に設けられた酵素含有液添加ノズル10から酵素含有液が吹付けられる。貯蔵室2外部に設けられた酵素含有液貯留槽7に貯留された酵素含有液は、酵素含有液添加用ポンプ9により酵素含有液輸送パイプ8を案内され、酵素含有液添加ノズル10に至る。酵素含有液が吹付けられた古紙は、貯蔵室2内に貯留された酵素含有液と古紙との混合液と混ぜ合わされる。混合液は、攪拌機モーター4の動力で駆動する攪拌機3により攪拌されている。
【0022】
一方、貯蔵室2には、先端部が貯蔵室2内の混合液に浸漬するように、pHセンサー16が設けられている。このpHセンサー16は、pH調整剤導入ポンプ14と連動し、混合液のpHが設定値以上または設定値以下になると、pHセンサー16が出力信号を発し、その出力信号を検出器(図示せず)が検知すると、検出器から作動信号がpH調整剤導入ポンプ14に出力される。検出器からの作動信号をpH調整剤導入ポンプ14が検知すると、pH調整剤導入ポンプ14が作動を開始する。これにより、pH調整剤貯留槽12に貯留されたpH調整剤が、pH調整剤導入管13を通り、pH調整剤添加ノズル15から混合液へ滴下される。これにより、加水分解反応によるpHの変動を抑え、混合液のpHを一定に維持することができる。
所定時間経過後、貯蔵室2を糖回収施設に輸送した後に、排出口バルブ6を開き、排出口5から分解生成物である糖を取り出すことができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
濾紙崩壊活性で200単位/mLのセルラーゼを含む50mM酢酸緩衝液(pH4.5)30Lを入れてある下部に攪拌機を具備するステンレス製貯蔵室(幅50cm×奥行き50cm×高さ40cm)に、印刷用紙古紙3kgを投入した。1分間に100回転の回転数で30分撹拌後、排出口より懸濁液の一部を取り出した。懸濁物には元の形状を保った紙はなく、書類の文字は判読不能であった。さらに8時間撹拌して加水分解した。加水分解終了後30Lの反応液を得た。
(実施例2)
濾紙崩壊活性で200単位/mLのセルラーゼを含む50mM酢酸緩衝液(pH4.5)30Lを入れてあるステンレス製貯蔵室(幅50cm×奥行き50cm×高さ40cm)に、印刷用紙古紙3kgを投入した。導入時に噴霧器により印刷用紙古紙に上記酵素含有液を、印刷用紙古紙1kgに対し、1L(印刷用古紙1kg当りの濾紙崩壊活性20万単位に相当)噴霧した。60分後、排出口より懸濁液の一部を取り出した。懸濁物には元の形状を保った紙はなく、書類の文字は判読不能であった。さらに8時間撹拌して加水分解した。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例3)
噴霧器の代わりに塗工用スリットを用いた他は(実施例2と同様に行った。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例4)
噴霧器の代わりに塗工用ロールを用いた他は実施例2と同様に行った。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例5)
古紙投入口の直後に破砕機を具備するステンレス製貯蔵室を使用する他は(実施例2と同様に行った。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例6)
古紙投入口の直後にエンボスロールを具備するステンレス製貯蔵室を使用する他は(実施例2と同様に行った。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例7)
古紙投入口の直後に2軸破砕機を具備するステンレス製貯蔵室を使用する他は(実施例2と同様に行った。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例8)
濾紙崩壊活性で200単位/mLのセルラーゼ含有液30Lを入れたステンレス製貯蔵室(幅50cm×奥行き50cm×高さ40cm)に、印刷用紙古紙3kgを投入した。導入時に噴霧器により印刷用紙古紙に酵素含有液を、印刷用紙古紙1kgに対し、1L(印刷用古紙1kg当りの濾紙崩壊活性20万単位に相当)噴霧し、古紙投入口の直後に具備する2軸破砕機により破砕した。また貯蔵室内に貯蔵する紙懸濁物のpHをセンサーで測定し、ノズルより、1Nの硫酸を噴霧し、3.5〜5.5の範囲に維持した。60分後、排出口より懸濁液の一部を取り出した。懸濁物には元の形状を保った紙はなく、書類の文字は判読不能であった。さらに8時間撹拌して加水分解した。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例9)
濾紙崩壊活性で10単位/mLのセルラーゼ含有液30Lを入れたステンレス製貯蔵室(幅50cm×奥行き50cm×高さ40cm)に、印刷用紙古紙5kgを投入した。導入時に噴霧器により印刷用紙古紙に酵素含有液を、印刷用紙古紙1kgに対し、1L(印刷用古紙1kg当りの濾紙崩壊活性20万単位に相当)噴霧し、古紙投入口の直後に具備する2軸破砕機により破砕した。貯蔵室に投入後の古紙懸濁物を1分間に100回転の回転数で30分撹拌し、また貯蔵室内に貯蔵する紙懸濁物のpHをセンサーで測定し、ノズルより、1Nの硫酸を噴霧し、3.5〜5.5の範囲に維持した。60分後、排出口より懸濁液の一部を取り出した。懸濁物には元の形状を保った紙はなく、書類の文字は判読不能であった。さらに濾紙崩壊活性で100単位/mLの酵素液を1L追加し、8時間撹拌して加水分解した。加水分解終了後31Lの反応液を得た。
(実施例10)
濾紙崩壊活性で200単位/mLのセルラーゼを含む50mM酢酸緩衝液(pH4.5)30Lを入れた混練容量50Lのセメントミキサーに印刷用紙古紙5kgを投入し、8時間混練した。8時間後31Lの反応液を得た。
<反応液の糖化率分析>
得られた反応液の糖化率は懸濁物を遠心分離し、上清中の全糖濃度をフェノール硫酸法によって測定した。投入した古紙の質量から計算した投入時の有機分濃度に対する糖化率を計算した。結果を表1に示す。
またこの反応上清をイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、グルコースの大きいピークとキシロースのピークが観察された。
【0024】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、これまで焼却処理されていた機密古紙または古紙再生の禁忌品等の古紙をバイオマス資源として有効利用を図ることができる。具体的には古紙から糖類を生成し、さらに、微生物を利用して糖類から、エタノール、こはく酸または乳酸等を生成することができる。
また、本発明によれば、古紙の発生源である事業所に古紙回収車を回送し、事業所で古紙を回収し、糖回収施設に移動する間に加水分解し糖化された糖を糖回収施設で回収する機密古紙回収システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】攪拌機を備える古紙糖化回収用設備である。
【図2】破砕機、酵素添加装置を備える古紙糖化回収用設備である。
【図3】破砕機、酵素添加装置及びpH調整装置を備える古紙糖化回収用設備である。
【図4】破砕機、酵素添加装置、攪拌機及びpH調整装置を備える古紙糖化回収用設備である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・古紙投入口
2・・・貯蔵室
3・・・攪拌機
4・・・攪拌機モーター
5・・・排出口
6・・・排出口バルブ
7・・・酵素含有液貯留槽
8・・・酵素含有液輸送パイプ
9・・・酵素含有液添加用ポンプ
10・・・酵素含有液添加ノズル
11・・・破砕機
12・・・pH調整剤貯留槽
13・・・pH調整剤導入管
14・・・pH調整剤導入用ポンプ
15・・・pH調整剤添加用ノズル
16・・・pHセンサー
a・・・古紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室内に投入された古紙に酵素含有液を接触させる接触工程を有し、古紙と酵素との反応進行中または反応完了後に、貯蔵室を糖回収施設に輸送し/又は輸送すること無しに、糖を回収することを特徴とする古紙処理方法。
【請求項2】
前記接触工程において、噴霧器、スリットもしくは塗工ロールのうちから選ばれる少なくとも1つの接触装置を用いる前記請求項1に記載の古紙処理方法。
【請求項3】
前記接触工程の前工程または後工程の少なくとも一方に古紙を破砕する破砕工程を有し、該破砕工程において、破砕機、エンボスロールもしくは2軸混練機のうちから選ばれる少なくとも1つの破砕装置を用いる前記請求項1または2に記載の古紙処理方法。
【請求項4】
前記酵素含有液が、酵素含有液1mlあたり10〜1000単位の濾紙崩壊活性を含む前記請求項1〜3に記載の古紙処理方法。
【請求項5】
前記貯蔵室が混合手段を有する前記請求項1〜4に記載の古紙処理方法。
【請求項6】
前記古紙を圧縮する圧縮手段を有する前記請求項1〜5に記載の古紙処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−319754(P2007−319754A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151458(P2006−151458)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】