説明

可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置

【課題】この発明は,ベッドを断面角形フック状に形成し,断面高さが小さく形成され幅も小さく形成されて断面寸法が最もコンパクトに形成され,使用用途に合わせてベッドの長さを種々に設定して種々のストローク長さが得られ,使い勝手が良い可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置を提供する。
【解決手段】ベッド2は,長尺の矩形板状の基板部20,基板部20に所定間隔で平行に対向配置され且つ基板部20より幅小の矩形板状の上板部21,及び基板部20と上板部21との一方の側部を一体構造に構成する側壁部22から形成され,上板部21と基板部20との対向する内側面がマグネットヨーク16の対向面39に形成され,対向面39から延びる基板部20の側部44に直動案内ユニット10が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,半導体製造装置,組立装置,測定・検査装置,試験装置,工作機械等の各種装置に使用される可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,リニアモータを内蔵したスライド装置は,半導体製造装置,組立装置,測定装置等の各種装置に益々多用途に使用されている。スライド装置は,装置そのものを小形にしてコンパクトでシンプルに構成され,高推力があり,高精度で,耐久性・安全性を有し,使い勝手がよく,しかも装置そのものの消費電力が小さく,安価であることが求められている。また,スライド装置に組み込まれている直動案内ユニットは,潤滑のメンテナンスフリーを実現したものが求められている。
【0003】
本出願人は,先に各種のリニアモータを内装したスライド装置を開発した。しかしながら,最近では,リニアモータを内装したスライド装置は,更に小形でありながら従来のスライド装置よりもスライダのストローク長さが長く,種々の使用用途にも対応可能で応用範囲が広い使い勝手のよいものが要望されている。
【0004】
可動マグネット型リニアモータを内蔵したスライド装置として,本出願人が先に出願したものがある。該可動マグネット型リニアモータを内蔵したスライド装置は,長尺な平板状のベッド,ベッドの長手方向に直動案内ユニットを介して往復移動自在な平板状のテーブル,テーブルのベッドに対する対向面にテーブルの移動方向に極性を交互に異にして並設された多数のマグネットから成る界磁マグネット,及び界磁マグネットに対向してベッドのテーブルに対する対向面に長手方向に沿って扁平で矩形状のコアレス形状の電機子コイルを多数配置した電機子組立体を有している。上記スライド装置では,コイルヨークとしてのベッド及びマグネットヨークとしてのテーブルは,磁気回路部分になる磁性材料から構成され,電機子組立体は,基板の上面に電機子コイルを配設して電機子コイルの周囲を接着剤でモールドしたものであり,その基板がベッドに固着された構造に構成されており,スライダのストローク長さが確保され,高速,高応答等の性能を有し,小形でコンパクトな構造に構成されていた(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
また,可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置として本出願人が先に出願したものがある。該可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置は,高い剛性を備えた構造部材としても用いることができる断面U字状の軌道レールとU字状の溝内を摺動するスライダとから成る直動案内ユニット,及びスライダを軌道レールに対して摺動させるための駆動手段である可動コイル型リニアモータから構成されている。該可動コイル型リニアモータは,軌道レールの一方の側部の外側に取り付けられたマグネットヨークに備わる一対の界磁マグネットと,スライダに取り付けられ且つ一対の界磁マグネット間に配置された可動コイル組立体とで構成され,マグネットヨークは連結底部で一体に連結された一対の対向部で断面U字状で開口部を上方に向けた状態で軌道レールの側部に取り付けられ,可動コイル組立体が軌道レールの側部を越えて延びるスライダに固着された取付け台の突出部に取り付けられている。また,可動コイル組立体の各電機子コイルは,扁平且つ矩形に輪状に巻かれた巻線と巻線の内部に樹脂成形により形成された芯部材とでなり,該芯部材はコイル基板と凹凸嵌合してコイル基板に位置ずれすることなく確実に取り付けられている(例えば,特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−300759号公報
【特許文献2】特開2001−25229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上記の可動マグネット型リニアモータを内蔵したスライド装置では,更にストローク長さを長いものにするには,リニアスケールが配設されたテーブルの長さを長くするか,例えば,リニアスケールをベッドに配設してベッド長さを長くする場合には,電機子コイルがベッドの全長に渡って配設されるので,テーブルの界磁マグネットと対向する以外の電機子コイルにも通電しており余分な電力を必要とし発熱も大きくなってしまうので,スライダのストローク長さには限界があった。
【0007】
また,上記の可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置は,どうしても断面高さが大きくなってしまい,小形な装置を製作する上では,大型のものになっていた。更に,可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置では,断面高さが小さく小形な装置にも組み込み自在な使い勝手のよいものが求められている。
【0008】
この発明の目的は,リニアモータを可動マグネット型でなく,可動コイル型に構成して上記要望を実現したものであり,特に,小形な装置を構成するために,ベッドをコンパクトにシンプルに構成してマグネットヨークの機能を持たせ,該ベッドに電機子組立体を可動に支持する界磁マグネットを設け,それに応じて電機子組立体をコンパクトにシンプルに構成して,高推力があり,高精度で,耐久性・安全性を有し,使い勝手がよく,しかも消費電力が小さくて安価になるように構成した可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は,マグネットヨークを構成する長尺でなるベッド,前記ベッドの長手方向に直動案内ユニットを介して往復移動自在なテーブル,前記ベッドの長手方向に交互に極性の異なる磁極が前記マグネットヨークの内側の対向面にそれぞれ並設され且つ互いに対向する前記磁極の前記極性が反対極性に配設された一対の界磁マグネット,及び前記テーブルに支持され且つ前記界磁マグネット間の空隙に位置する電機子コイルを備えた電機子組立体を有し,前記界磁マグネットに生じる磁束と前記電機子コイルに流れる電流との電磁相互作用により前記ベッドに対して前記テーブルを移動させる可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置において,
前記ベッドは,前記マグネットヨークと一体構造に構成されて長手方向に直交する断面で見て角形フック形状に形成され,長手方向にわたって長尺の矩形板状になる基板部,前記基板部に所定間隔を有して平行に対向配置され且つ前記基板部より幅小の矩形板状に形成された上板部,及び前記基板部と前記上板部との一方の側部を一体構造に構成する側壁部から構成されており,前記上板部と前記基板部との対向する内側面が前記マグネットヨークの前記対向面に形成され,前記対向面から延びる前記基板部の他方の側部に前記直動案内ユニットを配設する取付面が形成されていることを特徴とする可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置に関する。
【0010】
このスライド装置において,前記直動案内ユニットは,前記ベッドの前記長手方向に沿って前記取付面に固着された長尺状の軌道レール,及び前記軌道レールに跨架して転動体を介して摺動自在な複数のスライダからなり,前記テーブルは,複数の前記スライダに固着され且つ側面に前記電機子組立体のステイ部が固着されているものである。
【0011】
また,このスライド装置において,前記電機子組立体は,前記界磁マグネット間の前記空隙に位置する平板状のプリント基板と前記プリント基板に長手方向に沿って並設固着された多数の扁平の前記電機子コイルとから成るコイル基板,及び前記テーブルに固定されて前記空隙の外に位置するステイ部とそれぞれの前記電機子コイルの捲線の内側に嵌着された磁性体のコア部とが一体構造に形成されたコイルステイから構成されており,前記コイル基板が前記コイルステイによって前記テーブルに支持されているものである。
【0012】
また,このスライド装置において,前記電機子コイルは,長円形状に巻かれた捲線で形成され,前記電磁相互作用により推力を発生させる平行な一対の腕部と前記腕部のそれぞれの端部同士を円弧状に連結した円弧部とで構成されているものである。
【0013】
また,このスライド装置において,前記コア部と前記ステイとが前記一体構造でなるコイルステイは,それぞれの前記コア部が前記長手方向に沿って所定間隔を有して配列され,各前記コア部の一側が前記ステイ部に連結されて櫛状に構成されているものである。
【0014】
このスライド装置は,一対隔置して配設した前記ベッドで前記テーブルを可動に支持するスライド装置を複数組用いることによって,XYθ位置決め装置に適用できるものである。
【発明の効果】
【0015】
この可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置は,上記のように構成されているので,マグネットヨークとベッドとを一体構造の断面角形フック状に形成し,基板部と上板部との対向面に界磁マグネットを配設したことにより,ベッドの断面高さが小さく形成され,ベッドの幅も小さく形成され,断面寸法が最もコンパクトに形成され,使用用途に合わせてベッドの長さを種々に設定することによって,テーブルのストローク長さを種々に構成することができ,使い勝手が良いものになっている。また,電機子組立体のステイ部とコア部とを一体構造のコイルステイに形成したことにより,電機子組立体のコイル基板が肉薄に形成され且つコイル基板がステイ部によって界磁マグネット間の空隙内に僅かの隙間を有して所定位置に支持されることができ,スライド装置そのものが断面高さが小さく,断面寸法を最もコンパクトに形成し,且つ高推力を発揮できるものになっている。また,ベッドの基板部上に軌道レールを配設すると共に,軌道レールの側方に形成された空隙をコイル基板が移動するが,該空隙を小さく構成でき,ベッドの幅を小さく小形に形成することができ,更に,電機子コイルの捲線内部に磁性体のコア部を嵌着して高推力を確保し,高速性・高応答性に対応でき,所定の推力を得るための消費電力を小さくできる。また,テーブルの側面にコイル基板と一体構造のステイ部を固着しているので,コイル基板そのものを低く形成できると共に,装置そのものの高さを低く構成でき,装置そのものをコンパクトでシンプルに構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,図面を参照して,この発明による可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置の一実施例を説明する。この可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置は,半導体製造装置,組立装置,測定・検査装置,試験装置,工作機械等の各種装置に使用され,図1〜図3に示すように,テーブル1側の可動側の大きさを同一にして,ベッド2側の固定側の長さを種々に設定することによって種々のストローク長さ,例えば,120mm〜300mmのストロークが得られるので,使い勝手がよいものになっている。
【0017】
この可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置は,図1〜図4に示すように,マグネットヨーク16を一体構造に構成して長手方向に直交する断面で見て角形フック形状の断面に形成された長尺でなるベッド2,ベッド2の長手方向に直動案内ユニット10を介して往復移動自在なテーブル1,マグネットヨーク16の内側の対向面にベッド2の長手方向に極性が交互に異なる磁極がそれぞれ並設され且つ互いに対向する磁極の極性が反対極性とされた一対の界磁マグネット6,及びテーブル1に支持されると共に界磁マグネット6間に形成された空隙45内に配置された電機子コイル7を備えた電機子組立体5を有し,界磁マグネット6に生じる磁束と電機子コイル7に流れる電流との電磁相互作用によりベッド2に対してテーブル1を相対移動させるように構成されている。
【0018】
直動案内ユニット10は,マグネットヨーク16の空隙45の開口側になるベッド2の一方側である側部44のみに配設されており,ベッド2の側部44に形成された長手方向に沿った取付面40に固着された長尺状の軌道レール3,及び軌道レール3に跨架して多数のボール等の転動体31(図7)を介して摺動自在な複数のスライダ4から構成されている。テーブル1は,直動案内ユニット10のスライダ4の上部取付面46に固着されている。この実施例では,2つのスライダ4が軌道レール3に跨架しており,テーブル1が複数(例えば,2つ)のスライダ4に跨って固着されている。テーブル1は,図5及び図6に示されるように,2つのスライダ4の取付面46である上面を覆うように,略矩形板状に形成されている。
【0019】
電機子組立体5は,図3〜図6に示すように,長手方向であるテーブル1のスライド方向に沿って多数の扁平な電機子コイル7が並設されたコイル基板11が一対の界磁マグネット6間の空隙45に界磁マグネット6に接触することなく僅かな隙間を有して配設され,空隙45内から延びて一方の側部の開口側に突出したコイル基板11の側部にステイ部29が突出部として形成されており,ステイ部29がテーブル1の側面47に取付けボルトにより固着され,コイル基板11が界磁マグネット6が生じさせる磁束と電機子コイル7に流れる電流との電磁相互作用により空隙45の長手方向に沿って移動可能となると共に,テーブル1を摺動自在に駆動するように構成されている。
【0020】
このスライド装置は,スライド装置の断面高さを小さいものにするために,図3,図9及び図10に示すように,ベッド2とマグネットヨーク16とを一体構造に構成したものであり,ベッド2は,マグネットヨーク16となる磁性材で成り,長手方向に直交する断面で見て角形フック形状に形成されたものになっている。ベッド2は,マグネットヨーク16として構成され,スライド装置30をベース42等に固定して使用するため下面に取付面18が形成され且つ長手方向にわたって長尺の矩形板状になる基板部20,基板部20に所定間隔を有して平行に対向配置され且つ基板部20より幅小で同長尺の矩形板状になる上板部21,及び基板部20と上板部21とを互いの一方の側部である側端部と一体構造になっている側壁部22から構成されている。ベッド2は,特に,上板部21と基板部20とが対向する内側面がマグネットヨーク16の対向面39に形成され,内側面の対向面39から延びる基板部20の他方の側部44が直動案内ユニット10が配設されるスペースとなる取付面40に形成されており,直動案内ユニット10と電機子組立体5とが横並びに併設された状態に構成されている。ベッド2の側部44には,取付面40に隣接して対向面39側にリニアスケール9の取付面41が形成されている。
【0021】
このスライド装置は,長手方向に直交する断面が角形フック状にして長尺で矩形平面状にしてなるベッド2,ベッド2上の一方の側部に構成された角形フック部分にあたる一体構造に形成されたマグネットヨーク16,及びベッド2上の他方の側部44に直動案内ユニット10を介して位置決め駆動されるテーブル1から構成される可動コイル形リニアモータに構成されている。このスライド装置は,断面高さが小さく形成され幅も小さく形成されて断面寸法が最もコンパクトに形成され,使用用途に合わせてベッド2の長さ,従って軌道レール3の長さを種々に設定することによって,スライダ4,従ってテーブル1に種々のストローク長さが得られるものになっており,使い勝手が良いものになっている。例えば,このスライド装置は,断面寸法が高さ16mm×幅45mmに形成され,テーブル1のストローク長さは,120mm,180mm,240mm,300mm等の種々の構造にそれぞれ形成することができる。
【0022】
このスライド装置には,図3,図5,及び図7に示すように,ベッド2に対するテーブル1の位置を検出するために,リニアエンコーダ8が設けられている。リニアエンコーダ8は,ベッド2には軌道レール1の取付面41より中央寄り即ち内部側の長手方向に沿った取付面41に配設されたリニアスケール9,及びリニアスケール9に対向してテーブル1の下面のスライダ4間に位置して配設されたセンサ15から構成されている。スライド装置30の上面には,界磁マグネット6間の空隙45やリニアエンコーダ8等の内部に異物の侵入を防止するため,カバー23が配設されている。カバー23は,ステンレス材等で防錆された矩形板状で成り,マグネットヨーク16の上板部21の上面に取付けボルトにより固着され,上板部21の全面からテーブル1の上面に渡ってほぼベッド2の上面を覆うようにして構成されている。また,スライド装置30の両端であるベッド2の両端には,同様に異物の侵入を防止するため樹脂成形品でなるエンドブロック12が固着されている。エンドブロック12の内側端面は,スライダ4を停止させるストッパ13として機能する。テーブル1は,カバー23に接触することなく僅かな隙間を有したカバー23に対向する上面からカバー23側端の外側部に上部に延びてカバー23上面より僅かに突出した突出部48に形成されて断面L字形状の矩形板状になっており,突出部48の上面がワーク等を取り付けるための取付面19に形成され,その取付面19には取付け用ねじ穴24が設けられている。また,ベッド2側にもベース42等に取り付けるための取付け用孔25,26が形成されている。更に,テーブル1の外側の側面には,センサ15からの信号線,電機子コイル7の電源線等の線材を結線する中継ボックスであるコネクタステイ14が固着されている。コネクタステイ14から延びるコード17は,上記線材を纏めたものであり,ドライバ装置等の所定の箇所へと延びている。
【0023】
この可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置では,図4〜図8に示すように,電機子組立体5は,テーブル1の側面47に取付けボルトにより固着するためにマグネットヨーク16に配設された界磁マグネット8の外側に突出した突出部になるステイ部29を備えたコイルステイ33と,ステイ部29に続き断面高さを小さく形成するように一対の界磁マグネット6間の小さな空隙45内に配設可能に矩形平板状に構成されたコイル基板11とで構成され,コイル基板11は,多数の扁平な電機子コイル7が矩形平板状になるプリント基板35の上面にテーブル1のスライド方向に並設されて固着された構造に構成されている。更に,各電機子コイル7は,高推力を発揮するため,捲線の内部に磁性体の芯部材でなるコア部27が嵌着された,所謂,コア付き電機子コイル7に構成されている。電機子組立体5では,特に,磁性体のコア部27が個々に界磁マグネット6に吸引され吸着してしまうので,コア部27を所定位置にしっかりと支持しなければならものであり,且つ断面高さを小さく構成するために,図8に示すように,個々のコア部27を一本のステイ部29に一体構造に形成したものになっており,各コア部27とステイ部29との一体構造の構成部品をコイルステイ33と構成されており,コイルステイ33は,それぞれのコア部27がスライド方向に所定間隔を有して配列され,各コア部27の一側がステイ部29に連結されるので,全体的に見て櫛状に形成されている。
【0024】
電機子コイル7は,図8に示すように,扁平で長円形状に巻かれた捲線に形成され,電磁相互作用により推力を発生させる平行な一対の腕部37と腕部37のそれぞれの端部同士を円弧で連結した円弧部36とに構成され,腕部37がスライド方向と直交する方向に配設されプリント基板35上にスライド方向に並設して固着され,捲線の内部に合致して細長い長円ブロック状のコア部27が固着されている。電機子組立体5は,図8の(b)に示すように,プリント基板35の上面に12個のコアレスの電機子コイル7が固着されたコイル基板11に対して,図8の(a)に示すように,12個のコア部27と一本のステイ部29とが一体構造になるコイルステイ33を各コア部27が各捲線内部と合致するように嵌合して,図8の(c)に示すように,各コア部27を各電機子コイル7に接着剤で固着して,コイル基板11とコイルステイ33とが合体され,図8の(d)に示すように,コイル基板11の外側が表面保護シート38で覆われて構成され,プリント基板35の両端に電機子コイル7の電源線が結線される端子50が配設されて,両端部が接着剤等で充填され充填物28で覆われて形成され,ステイ部29の取付け用孔34に取付けボルトを挿入してテーブル1の側面に固定される。
【0025】
電機子組立体5は,ステイ部29とコア部27とを一体構造に形成したことにより,電機子組立体5のコイル基板11が肉薄に形成され且つコイル基板11がステイ部29によって界磁マグネット6間の空隙45内に僅かの隙間を有して所定位置に支持されることに成る。ここで,上記所定位置とは,界磁マグネット6間の中央位置,即ちコア部27とのコギングが小さくなる位置に電機子コイル7を配置するものであり,コア部27と一体構造により剛性を有して構成されているステイ部29により位置設定が確実なものになっている。従って,スライド装置30は,断面高さが小さく断面寸法を最もコンパクトに形成し,高推力を発揮できるものになっており,滑らかな摺動が可能になり,高速・高応答に対応可能になっている。
【0026】
図3及び図4に示されるように,界磁マグネット6は,磁極が矩形板状に形成され,マグネットヨーク16の内側の対向面に,ベッド2の長手方向の略全長に渡って矩形板状の長辺が長手方向に直交する方向で極性が交互に異なる磁極が密接してそれぞれ並設され且つ互いに対向する磁極の極性が反対極性とされた多数の磁極が配設されて構成されている。電機子組立体5は,テーブル1に支持されて界磁マグネット6間に形成される空隙45内に12個の扁平のコア付き電機子コイル7が腕部37を長手方向と直交する方向且つコア部27が界磁マグネット6の磁極に対向する方向にして長手方向に沿って密接して並設されて構成されている。電機子コイル7は,U,V,W相の三相通電方式で各相の電流が供給される3個の捲線コイルが一組として構成され,界磁マグネット6の4つ磁極に対応している。コイルピッチをPcとし,磁極ピッチをPmすると,Pc=(4/3)Pmの関係に設定されている。
【0027】
この可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置は,上記のように構成されているので,第1に,マグネットヨーク16とベッド2とを一体構造に断面角形フック状に形成したことにより,断面高さが小さく形成され,幅も小さく形成され,断面寸法が最もコンパクトに形成され,使用用途に合わせてベッド2の長さを種々に設定することによって,テーブル1に種々のストローク長さが得られるものになっており,使い勝手が良いものになっており,また,第2に,電機子組立体5のステイ部29とコア部27とを一体構造に形成したことにより,電機子組立体5のコイル基板11が肉薄に形成され且つコイル基板11がステイ部29によって界磁マグネット6間の空隙45内に僅かの隙間を有して所定位置に支持されることができ,スライド装置そのものが断面高さが小さく,断面寸法を最もコンパクトに形成し,且つ高推力を発揮できるものになっている。
【0028】
次に,この可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置を組み込んだXYθ位置決め装置を,図11を参照して説明する。このXYθ位置決め装置は,θテーブル1K上に載置したワーク等の物品(図示せず)を所定のX方向,Y方向及び角度方向であるθ方向に位置決め案内するものになっており,半導体製造装置,組立装置,測定装置等の位置決めが必要な各種の装置に構成されるものである。このXYθ位置決め装置43は,ベース42上の両側に所定間隔を有して互いに平行にして長尺状になる一対のX軸用のスライド装置30Xが配設され,スライド装置30Xに跨がって載置されたXテーブル1X下に一対のY軸用のスライド装置30Yが配設され,スライド装置30Yに跨がって載置されたYテーブル1Y上にθテーブル1Kを備えたθスライド装置30Kが配設されている。Xテーブル1Xは,額縁状に形成され,ベース42上に一対のスライド装置30X間に跨がって配設され,X方向に位置決め駆動されるものである。また,一対のY軸用のスライド装置30Yは,Xテーブル1Xの下面の両側に所定間隔を有して互いに平行にしてX軸用のスライド装置30X間の間隙に配設されている。一対のY軸用のスライド装置30Yは,Xテーブル1Xの下面にあってスライド装置30Yに跨がってなるYテーブル1YをY方向に位置決め駆動するものになっている。更に,θテーブル1Kは,θ方向に位置決め駆動するものになっている。このXYθ位置決め装置43は,上記のように,Xテーブル1X下にYテーブル1Yを位置させ,Yテーブル1Y上にθテーブル1Kを位置させることによってワーク等の物品をXYθの各方向に位置決めすることができる。従って,このXYθ位置決め装置は,この発明による可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置を複数個組み込むことによって,ワーク等の物品を長い距離にわたり位置決め設定でき,装置全体の断面高さが小さいコンパクトな装置に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明による可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置は,半導体製造装置,組立装置,測定・検査装置,試験装置,位置決めテーブル,スライドテーブル等の各種装置に組み込んで使用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明による可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1のスライド装置の正面図である。
【図3】図1のスライド装置のA−A断面を示す断面図である。
【図4】図1のスライド装置のB−B断面を示す部分断面図である。
【図5】図3のスライド装置における電機子組立体を含む可動側を示す正面図である。
【図6】図5の電機子組立体を示す平面図である。
【図7】図5の電機子組立体を示す下面図である。
【図8】図3の電機子組立体を分解して構成を説明するため斜視図に示す説明図であって,(a)はコイルステイの斜視図,(b)はコイル基板の斜視図,(c)はコイルステイとコイル基板とが嵌着した状態の電機子組立体の斜視図,及び(d)は完成状態の電機子組立体を示す斜視図である。
【図9】図1のスライド装置におけるベッドを示す平面図である。
【図10】図9のベッドを示す側面図である。
【図11】この発明によるスライド装置が複数個組み込まれたXYθ位置決め装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 テーブル
2 ベッド
3 軌道レール
4 スライダ
5 電機子組立体
6 界磁マグネット
7 電機子コイル
10 直動案内ユニット
11 コイル基板
16 マグネットヨーク
20 基板部(ベッド)
21 上板部(ベッド)
22 側壁部(ベッド)
27 コア部(電機子組立体)
29 ステイ部
30 スライド装置
31 転動体
33 コイルステイ
35 プリント基板
36 円弧部(電機子コイル)
37 腕部(電機子コイル)
39 対向面
40 取付面(ベッドに設けた軌道レール用)
43 XYθ位置決め装置
45 空隙(ベッド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットヨークを構成する長尺でなるベッド,前記ベッドの長手方向に直動案内ユニットを介して往復移動自在なテーブル,前記ベッドの長手方向に交互に極性の異なる磁極が前記マグネットヨークの内側の対向面にそれぞれ並設され且つ互いに対向する前記磁極の前記極性が反対極性に配設された一対の界磁マグネット,及び前記テーブルに支持され且つ前記界磁マグネット間の空隙に位置する電機子コイルを備えた電機子組立体を有し,前記界磁マグネットに生じる磁束と前記電機子コイルに流れる電流との電磁相互作用により前記ベッドに対して前記テーブルを移動させる可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置において,
前記ベッドは,前記マグネットヨークと一体構造に構成されて長手方向に直交する断面で見て角形フック形状に形成され,長手方向にわたって長尺の矩形板状になる基板部,前記基板部に所定間隔を有して平行に対向配置され且つ前記基板部より幅小の矩形板状に形成された上板部,及び前記基板部と前記上板部との一方の側部を一体構造に構成する側壁部から構成されており,前記上板部と前記基板部との対向する内側面が前記マグネットヨークの前記対向面に形成され,前記対向面から延びる前記基板部の他方の側部に前記直動案内ユニットを配設する取付面が形成されていることを特徴とする可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置。
【請求項2】
前記直動案内ユニットは,前記ベッドの前記長手方向に沿って前記取付面に固着された長尺状の軌道レール,及び前記軌道レールに跨架して転動体を介して摺動自在な複数のスライダからなり,前記テーブルは,複数の前記スライダに固着され且つ側面に前記電機子組立体のステイ部が固着されていることを特徴とする請求項1に記載の可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置。
【請求項3】
前記電機子組立体は,前記界磁マグネット間の前記空隙に位置する平板状のプリント基板と前記プリント基板に長手方向に沿って並設固着された多数の扁平の前記電機子コイルとから成るコイル基板,及び前記テーブルに固定されて前記空隙の外に位置するステイ部とそれぞれの前記電機子コイルの捲線の内側に嵌着された磁性体のコア部とが一体構造に形成されたコイルステイから構成されており,前記コイル基板が前記コイルステイによって前記テーブルに支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置。
【請求項4】
前記電機子コイルは,長円形状に巻かれた捲線で形成され,前記電磁相互作用により推力を発生させる平行な一対の腕部と前記腕部のそれぞれの端部同士を円弧状に連結した円弧部とで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置。
【請求項5】
前記コア部と前記ステイとが前記一体構造でなるコイルステイは,それぞれの前記コア部が前記長手方向に沿って所定間隔を有して配列され,各前記コア部の一側が前記ステイ部に連結されて櫛状に構成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置。
【請求項6】
一対隔置して配設した前記ベッドで前記テーブルを可動に支持するスライド装置を複数組用いることによって,XYθ位置決め装置に適用できることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の可動コイル型リニアモータを内蔵したスライド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−219300(P2009−219300A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62358(P2008−62358)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】