説明

可動デッキ及び該可動デッキを備えたシールド掘進機

【課題】エレクタ装置の旋回範囲と干渉し難く、またシールド掘進機の組立作業にも支障を来たさない足場を備えた可動デッキ、該可動デッキを有するシールド掘進機に係る技術を提供する。
【解決手段】シールド掘進機に設けられる可動デッキ19であって、可動デッキ19は作業台となるデッキ部21の一端側を固定デッキ17側に回動可能に連結され、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内で回動動作をすることによりセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように構成されていることを特徴とする可動デッキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に設けられてエレクタ装置に干渉しないように変形可能な可動デッキ、および該可動デッキを備えるシールド掘進機に関する。
以下において、エレクタ装置が、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備える場合、該運搬装置の旋回範囲又はその旋回範囲として画される空間を、エレクタ装置の旋回範囲又は旋回空間という場合がある。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機により掘り進められたトンネル掘削面に対してセグメントが組みつけられる。この組み付けはエレクタ装置によって行われるが、セグメント同士のボルトによる締結は作業者によって手作業によって行われる場合が多く、また位置の微調整に際して、作業者がセグメントに接近して目視確認する必要がある場合も多い。それ故、シールド掘進機には作業者の足場となる作業デッキが必要となる。このような作業デッキは、シールド掘進機に対して固定されているもの(固定デッキ)と、可動なもの(可動デッキ)とに大別され、固定デッキと可動デッキの両方を備えるものもある。
【0003】
作業デッキは、その構成部材及び付属部材を含めて、エレクタ装置によるセグメント運搬作業時において運搬装置に干渉しないものでなければならない。固定デッキはそれ自体が固定であるため、エレクタ装置のいずれの状態においても干渉しないことが必要である。他方、可動デッキはそれ自体が可動であるため、エレクタ装置のセグメント運搬時には干渉しないように退避することが必要であるが、その運搬時の後、作業者によるセグメントへの必要なアクセスを可能にするために掘削壁面側に張り出すように構成される。
【0004】
このような可動デッキの例として、例えば、特許文献1にはシールド掘進機の作業デッキが記載されおり、この作業デッキは複数段のスライド足場装置を上下方向に備えており、各スライド足場装置は、エレクタ装置の旋回動作を阻害することのないタイミングで、エレクタ装置の旋回範囲内外に足場を設けることが可能になるように構成されている。
各足場装置は、作業デッキとして、固定手摺付きの固定足場(固定デッキ)とその固定足場にスライド可能に設けられた可動手摺付きの可動足場(可動デッキ)とを備えている。
(なお、以下の説明においては、従来技術と関係上区別して記載する場合を除き、可動足場は可動デッキとし、固定足場は固定デッキとして表記を統一して説明する。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−120198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、可動足場や可動手摺は、作業者の安全のために設けられるものであるとはいえ、相対的に使用頻度が低い装置である。それ故、不使用時においては作業者の作業の邪魔になるような構成は好ましくない。特に、可動足場や可動手摺を動作させるための駆動装置やそれに動力を供給する付帯設備(油圧ホースや給電ケーブルを含む)が嵩張るようなものは好ましくない。さらに、コストアップを伴う高機能化も好ましいとはいえない。つまり、できるだけコンパクトで、コストを低く抑えられるものであることが望まれる。
【0007】
また、上記の従来技術において、複数のスライド足場装置のうち一部は、可動足場及び可動手摺のスライド方向が、掘進方向であり、残りは掘進方向と垂直な方向である。
可動足場が掘進方向と垂直な方向にスライドする場合、固定足場側に退避したときに、可動足場が固定足場側すなわちシールド掘進機の中央側に出っ張ることになる。ところが、シールド掘進機側に固定足場側に出っ張ると、固定足場上で活動する作業者の作業領域を狭めたり、作業の邪魔になったり、作業環境の安全性を低下させる場合がある。また、例えば、泥土式のシールド掘進機の場合、機体中央部に、下から斜め上方に立ち上がるように配置するスクリューコンベア(排土管)を備えているが、当該スクリューコンベアのように機体中央部に装置・機器・部材等が配置している場合には、出っ張った可動足場があるとシールド掘進機の組立作業を円滑に行うことができない。スクリューコンベア以外の排土機構を備える場合も、エレクタ装置との干渉を避ける位置に設置する必要がある関係上、上記のスクリューコンベアの場合と同様の問題が生じ易い。更に、シールド掘進機が小口径であると、可動足場が退避しようとしても、機体中央部に装置・機器・部材等と干渉(衝突)することなく可動足場が退避することができない場合もあり得る。このような場合には、スライド足場装置を設置すること自体困難になる。
このように、可動足場がスライド式であることにはそれなりの問題がある。
【0008】
更に、手摺についても問題がある。つまり、手摺が例えば折り畳まれるような変形動作をしないままであると、エレクタの旋回範囲と干渉する可能性が高くなる。
それ故、シールド掘進機の径の大小に拘らず、可動手摺が変形動作をしてエレクタ装置の旋回範囲又は旋回空間と干渉しないものであることが望まれ、したがって可動足場(延いては作業デッキ)についてはこのような可動手摺を備えたものであることが望まれる。
【0009】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、できるだけコンパクトで、コストを低く抑えら可動デッキ、エレクタ装置の旋回範囲と干渉し難く、またシールド掘進機の組立作業にも支障を来たさない足場を備えた可動デッキ、該可動デッキを有するシールド掘進機に係る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための、本発明の第1の形態に係る可動デッキは、固定デッキを備えるシールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキは作業台となるデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、前記固定デッキのデッキ面と交差する面内で回動動作が可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第2の形態に係る可動デッキは、上記第1の形態のものにおいて、前記固定デッキのデッキ面と交差する面内において、回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の形態に係る可動デッキは、シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキは作業台となるデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内で回動動作をすることによりセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の第4の形態に係る可動デッキは、上記第1の形態のものにおいて、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、移動動作又は回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の第5の形態に係る可動デッキは、上記第3または第4の形態のものにおいて、前記エレクタ装置は、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備え、前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、前記運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、前記手摺とともに配置可能であることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の第6の形態に係る可動デッキは、上記第4または第5の形態のものにおいて、前記手摺は、前記可動デッキの回動動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の第7の形態に係るシールド掘進機は、上記第1〜第6の形態のいずれかに係る可動デッキを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の第8の形態に係るシールド掘進機は、微速旋回動作と該微速旋回動作よりも速い速度での旋回動作である通常速度旋回動作が可能なエレクタ装置と、作業者が作業を行う固定デッキと、該固定デッキに設置され、前記エレクタ装置と干渉しないように回動可能な可動デッキとを備えるシールド掘進機であって、前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、回動可能なデッキ部を備え、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作しているときは、前記デッキ部が前記固定デッキ側に回動して配置され、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときは、前記デッキ部が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって張出し可能であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の第9の形態に係るシールド掘進機は、上記第8の形態に係るものにおいて、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、移動動作又は回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の第10の形態に係るシールド掘進機は、上記第7の形態に係るものにおいて、前記手摺は、前記可動デッキの回動動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とするものである。
【0020】
また、上記の各形態の説明において、エレクタ装置の旋回範囲に対して出入りするとは、それぞれ、エレクタ装置の旋回範囲から出ること及びエレクタ装置の旋回範囲に入ることを意味している。エレクタ装置の旋回範囲から出ると、エレクタ装置の旋回範囲外に配置されることになるので、エレクタ装置と干渉しないような位置関係になる。また、エレクタ装置の旋回範囲に入ると、エレクタ装置の旋回範囲内に配置されることになるので、エレクタ装置と干渉するような位置関係になる。
また、「掘進方向と交差する面内」とは、作業台となるデッキ部の回動動作における回動方向が掘進方向と平行なものを排除する趣旨である。もっとも、回動動作によってデッキ部がエレクタ装置との干渉をよりよく避けることができるようにすることを考慮すると、この「掘進方向と交差する面内」は、掘進方向と垂直に近くなる方向であることがより望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1の形態においては、可動デッキはデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、固定デッキのデッキ面と交差する面内で回動動作が可能に構成されているので、場所や空間を占めないコンパクトな造形となる。また、固定デッキの内側には可動デッキを構成する部材を配置する必要がなく、故に固定デッキ側に可動デッキに関係する部材を設置するためのスペースを確保する必要がないので、コスト高を招来しにくい。更に、固定デッキ側に設置される部材との干渉を考慮する必要もない。従って、第1の形態によれば、コンパクトでコスト高を招来せず、それでいて作業者の作業領域を確保することができ、作業の邪魔になることもなく、安全性を確保することができる可動デッキを実現することができる。
【0022】
本発明の第2の形態においては、記固定デッキのデッキ面と交差する面内において、移動動作又は回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えているので、可動デッキが手摺を備えていてもなお、場所や空間を占めないコンパクトな造形となる。従って、第2の形態によれば、コンパクトでありながら、安全性がより高い可動デッキを実現することができる。
【0023】
本発明の第3の形態においては、可動デッキは、そのデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内で回動動作をすることによりセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように構成されているので、場所や空間を占めないコンパクトな造形となる。また、固定デッキの内側には可動デッキを構成する部材を配置する必要がなく、故に固定デッキ側に可動デッキに関係する部材を設置するためのスペースを確保する必要がないので、コスト高を招来しにくい。更に、固定デッキ側に設置される部材やエレクタ装置との干渉を考慮する必要もない。従って、第3の形態によれば、コンパクトでコスト高を招来せず、それでいて固定デッキ上で活動する作業者の作業領域(特にトンネル壁面と固定デッキとの間の作業領域)を確保することができ、作業の邪魔になることもなく、安全性を確保することができる。
【0024】
例えば泥土式のシールド掘進機のようにシールド掘進機の中央部にスクリューコンベアが設置されるような場合であっても、第3の形態によれば、可動デッキはスクリューコンベアとの干渉を考慮する必要がなく、シールド掘進機の組立作業を迅速に行うことができる。また、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能な可動デッキを実現できる。
【0025】
また、本発明の第4の形態に係る可動デッキは、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、移動動作又は回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えているので、可動デッキ全体として見たときにトンネツ壁面と固定デッキとの間の水平方向又は上下方向の変形が可能になっており、また、変形に要する空間も小さくて済むので、よりコンパクトで嵩張らない可動デッキとなる。展開された手摺により、作業者の安全性を更に高めることができる。
【0026】
本発明の第5の形態に係る可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、エレクタ装置が備える運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、手摺とともに配置可能であるので、シールド掘進機の径の大小に拘らず望ましい可動デッキ、延いては作業デッキを実現することができる。
【0027】
また、本発明の第6の態様によれば、可動デッキの回動動作との連動を可能にするリンク機構を備えるため、手摺の折畳み動作をさせるために別途駆動源を必要としない。このような手摺の折畳み動作に別途駆動源やアクチュエーターを使わないため、それらの故障発生リスクもなく、従来同様のコンパクトなスペースに装備できる。
また、可動デッキ(又はそのデッキ部)の回動動作に連動するように構成すれば、可動デッキが必要とされるときに手摺を使用可能な状態に設置することができ、作業者が手摺を別途設置するというような負担がなく合理的な構造にすることができる。
【0028】
本発明の第7の形態によれば、上記の効果を奏する可動デッキを備えるシールド掘進機を実現することができる。この第5の形態に係るシールド掘進機としてより奏効的なものは、機体中央部に装置・機器・部材等(排土機構を含む)が配置しているシールド掘進機、例えばスクリューコンベアを備える泥土式のシールド掘進機であり、また、小口径のシールド掘進機である。
【0029】
本発明の各形態が奏するその他の効果及び本発明のその他の形態が奏する効果については、本発明の実施形態又は実施例において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る可動デッキの動作説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の内部の平面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の内部の側面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の内部の斜視図である。
【図9】エレクタ装置の説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の他の態様に係る内部の側面図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の他の態様に係る内部の側面図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の組立工程の説明図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の組立工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態又は実施例により本発明を詳細に説明する。その際、必要に応じて図面を参照しつつ説明するが、各図面において同じ部分又は相当する若しくは共通する部分には共通の符号を付し、一部の説明を省略する場合がある。
なお、言うまでもなく、本発明は、図面に記載された実施の形態や実施例に限定されない。また、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。更に本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものであり、本発明に関する用語の定義はその均等の適用を妨げるものではない。
【0032】
[実施の形態1]
図1〜図5は本発明の実施の形態に係る可動デッキの説明図、図6は本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の内部構造を説明する説明図でありシールド掘進機を平面視した図、図7は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機の側面図、図8は同じく本実施の形態の可動デッキを備えたシールド掘進機(後胴部)の内部構造を示す斜視図である。
以下においては、可動デッキがシールド掘進機の内部においてどのような位置に配置されるかを説明するため、可動デッキの説明に先立って図6〜図8に基づいてシールド掘進機の内部構造を説明し、その後で可動デッキについて説明する。
【0033】
シールド掘進機1は、前胴部3と後胴部5を備えてなる。前胴部3の前端にはカッタヘッド7を有している。前胴部3の後部から後胴部5にかけてシールド掘進機1を推進させるためのシールドジャッキ9が設置されている。そして、このシールドジャッキ9のすぐ後方には、セグメント10を把持して所望の位置まで運搬して設置するエレクタ装置11が設けられている(図9参照)。エレクタ装置11はセグメント10を把持する把持部13と、把持部13を所望の位置まで移動するアーム部15とを備えている。
エレクタ装置11の後方には固定デッキ17が設置されている。そして、この固定デッキ17の上部でかつ前方寄りの部分の両側に可動デッキ19が設置されている。
可動デッキ19は、図8の配置から容易に推察できるように、エレクタ装置11のアーム部15の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に設置されている。
【0034】
可動デッキ19は、シールド掘進機1の進行方向に対して直交する面内で回動可能に構成されている。図6においては、シールド掘進機1の後方から前方に向かって左側に設定されている可動デッキ19は、水平になって使用可能な状態になっており、右側の可動デッキ19は、先端側が下方に向くように回動して使用できない状態になっている。
なお、図6においては、可動デッキ19の構造は簡略化して示している。
【0035】
以上の説明から理解されるように、可動デッキ19は、シールド掘進機1の後胴部5における固定デッキ17に設置され、エレクタ装置11の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に配置されることから、エレクタ装置11の稼動状況に応じてエレクタ装置11の旋回範囲に入ったり、あるいは出たりするようになっている。
【0036】
次に、図1に基づいて本実施の形態の可動デッキ19の構造を説明する。図1は可動デッキ19が外方に張り出して使用可能な状態を示しており、図1(a)が斜視図、図1(b)が側面図である。なお、説明に必要なときには図2〜図4を適宜参照する。
【0037】
可動デッキ19は、固定デッキ17に設置されたブラケット20を介して固定デッキ17に取り付けられている。可動デッキ19を固定デッキ17に取り付けるためのブラケット20は、略矩形の枠状に形成されており、その上辺側が固定デッキ17の上面に固定され、下辺側を固定デッキ17の外側部に張り付くように設置されている。
なお、可動デッキ19は本例に示したようなブラケット20を介して取り付けなくても、固定デッキ17側に可動デッキ19を取り付けるための部材等があればそれで代用してもよい。
【0038】
可動デッキ19は、シールド掘進機1の進行方向に略直交する面内で回動可能なデッキ部21と、デッキ部21の回動に連動して折畳み動作を行う折畳式手摺23と、デッキ部21の回動を駆動する駆動機構部25とを備えている。
デッキ部21は、矩形状のデッキ枠27と、デッキ枠27の枠内に設置されて作業台となるデッキプレート29を備えている。そして、デッキ部21は、デッキ枠27の両端部をブラケット20の縦辺中程よりも少し上の位置に回動可能に設置することによって、ブラケット20に取り付けられている。
【0039】
折畳式手摺23は、デッキ部21の両側部に配置された側方手摺31と、デッキ部21の前部に設けられた前手摺33から構成されている。側方手摺31は、一端側がブラケット20の上端部に回動可能に連結され、他端側が前手摺33にピン結合された一対の管部材によって構成されている。前手摺33は側方手摺31と同様に管部材からなり、下端側がデッキ枠27の先端側に回動可能に取り付けられた矩形枠部35と、この矩形枠部35の上辺に逆U字状に形成された逆U字部37を連結して構成されている。
上記のように構成された折畳式手摺23によってデッキ部21の両側部と前部が囲まれ、デッキ部21上の作業者がデッキ部21から落下するのを防止できるようになっている。
【0040】
駆動機構部25は、基端側がブラケット20の下部に回動可能に取り付けられた矩形枠状の第1駆動枠部材39と、第1駆動枠部材39の先端側に一端側が回動可能に連結され、他端側がデッキ枠27の先端側に回動可能に連結された矩形枠状の第2駆動枠部材41と、本体部43がブラケット20に回動可能に取り付けられ、ロッド45の先端が第1駆動枠部材39に回動軸を介して連結された一対の駆動ジャッキ47を備えて構成されている。
このように構成された駆動機構部25は、駆動ジャッキ47のロッド45を伸縮することによって、第1駆動枠部材39を回動させ、これに連動して第2駆動枠部材41が連動し、さらに第2駆動枠部材41の回動に連動してデッキ部21が回動すると共に折畳式手摺23の折畳み及び折拡げ動作が行われる。
【0041】
図2〜図5は上記のように構成された可動デッキ19の動作を説明する動作説明図であり、図2はデッキ部21の先端側が斜め下方に向き、折畳式手摺23が折り畳まれた状態を示している。また、図3以降は図2の状態からデッキ部21が回動して行く様子を示しており、図4の状態が図1と同様にデッキ部21がほぼ水平になってデッキ部21が使用可能になると共に折畳式手摺23が組み立てられた状態(設置された状態)を示している。図5は図2〜図4に示した側面図を連続して示すものである。
以下、図2〜図5に基づいて可動デッキ19の動作を説明する。
【0042】
図2に示すように、デッキ部21の先端側が斜め下方に向いた状態にあるときは、折畳式手摺23は折り畳まれた状態にある。この状態では、デッキ部21は、全体が固定デッキ17の側部に近接して配置される。また、折畳式手摺23における前手摺33及び側方手摺31はデッキ部21のデッキプレート29に倒れこむように近接して配置されている。したがって、図2に示す状態では、可動手摺全体が固定デッキ17の側面に張り付くように配置され、エレクタ装置11の旋回範囲よりも内側で旋回範囲から出た位置にあり、エレクタ装置11と干渉することはない。
【0043】
図2に示す状態から、駆動ジャッキ47のロッド45を伸張させると、第1駆動枠部材39が一端側を基点にして図3(b)の矢印Aに示す方向に回動して外方に押し出されるように動作する。また、第1駆動枠部材39の動作に連動して第2駆動枠部材41は、全体が外方に押し出されると共に、基端側を回動の支点として図3(b)の矢印Bに示す方向に回動する。さらに、第2駆動枠部材41の動作に連動して、デッキ部21が基端側を回動の支点として図3(b)の矢印Cで示す方向に回動する。またさらに、デッキ部21が回動することにより、これに連結された前手摺33が下端側を回動の支点として図3(b)の矢印Dに示す方向に回動し、これに連れて側方手摺31が基端側を回動の支点として図3(b)の矢印Eに示す方向に回動する。
すなわち、駆動ジャッキ47のロッド45が伸張を開始すると、デッキ部21が張り出しを開始すると共に折畳式手摺23は、図3(a)に示されるように、デッキ部21を囲むような矩形枠状に組み立てられていく。
【0044】
さらに、駆動ジャッキ47のロッド45が伸張されると、可動デッキ19を構成する各部材が図3に示した状態からさらに回動する。そして、図4に示すように、デッキ部21が略水平状態になると共に前手摺33が垂直に立ち上がり、側方手摺31がほぼ水平な状態となる。この状態では、折畳式手摺23が完全に折り広げられ、すなわち組み立てられ、デッキ部21の両側部には側方手摺31が設置され、デッキ部21の前端部には前手摺33が設置されてデッキ部21を囲む状態となる。前手摺33は、矩形状枠部と逆U字枠部の2段構造になっており、高さがあるので作業者の落下を確実に防止できる。
【0045】
この状態においてデッキ部21上に作業者が乗ると、デッキ部21に作用する力が第2駆動枠部材41及び第1駆動枠部材39を回動させるように作用する。そのため、これらの部材が回動しないようにするためのストッパを設ける必要がある。
本実施の形態においては、図4(b)に示すように、第1駆動枠部材39と第2駆動枠部材41で形成される外角αが180°を超えるように設定されている。デッキ部21に作業者が乗ると、第2駆動枠部材41を介して第1駆動枠部材39に荷重が作用するが、この作用する力の方向が第1駆動枠部材39を、図4(b)の矢印Aで示す方向となり、これは駆動ジャッキ47のロッド45を伸張させる方向となる。したがって、図4に示す状態で駆動ジャッキ47のロッド45が最大伸張されているように設定すれば、ロッド45はそれ以上伸張せず、ロッド45が第1駆動枠部材39の回動を規制するストッパとして機能する。したがって、万が一の不具合、例えば油圧ホースからの油漏れなどが発生しても、可動デッキ19が回動することはなく安全である。
なお、本実施の形態では可動デッキ19のデッキ部21が図4に示すように水平になった状態で、駆動ジャッキ47のロッド45が最大伸張されるように設定されているので、別途ストッパを設ける必要がない。もっとも、デッキ部21が水平にセットされた状態で駆動機構部25を構成する各部材間の回動を規制するための機械的ストッパを設けるようにしてよく、そのようにすれば、より安全性が増す。
【0046】
なお、可動デッキ19を張り出し操作の途中で停止させた場合、折畳式手摺23の設置が不十分であったり、デッキ部21が傾斜した状態となっていたりして危険であるため、以下に示すような安全機構を設けるのが望ましい。
<安全機構>
駆動ジャッキ47又は可動デッキ19本体に「デッキの張り出し完了状態」を検知できるリミットスイッチ(以下「LS」という。)を設けておき、使用時の手順を以下のように行う。
(i) 操作者が、例えば操作スイッチ等を押して可動デッキ19の張り出し動作を指示する。
(ii) 駆動ジャッキ47が所定動作(一般的にはロッド伸張動作)を開始する。
(iii) 上記LSが検知されると、駆動ジャッキ47は所定動作を自動的に停止し、同時に、別途設置されている操作完了報知装置(または灯)にて、周囲に「可動デッキ張り出し完了」を知らしめる合図を発する。なお、操作完了報知の態様としては「音声(ブザー音等含む)」または「音声と回転灯の回転(視覚的表示)との併用」などが考えられる。
(iv) 作業者(可動デッキ19に乗り込む人)は、上記3の合図を確認した上で、作業デッキに乗り込むようにする。
なお、可動デッキ19の乗り込み口付近に別の安全柵(手摺)を設けておき、「張り出し完了」後にこの安全柵を自動的に開けるようにしたり、あるいは安全柵のロックを自動的に解除したりして、手動操作にて安全柵を開けられるようにしてもよい。
【0047】
次に、上記のように構成された可動デッキ19を、図4に示す状態から固定デッキ17側に回動させて図2に示す状態に戻す動作について説明する。この場合の動作は、上述した図2〜図4の動作の逆の動作になる。すなわち、図4に示される状態から、駆動ジャッキ47のロッド45を縮退させると、第1駆動枠部材39、第2駆動枠部材41、デッキ部21、前手摺33、側方手摺31の各部材が、それぞれ図3に示した矢印A〜Eと反対の方向に回動する。このような回動動作に従って、デッキ部21は固定デッキ17側に近接してゆき、また折畳式手摺23もデッキ部21側に折畳まれると共にデッキ部21と共に固定デッキ17側に近接してゆき、最終的には図2の状態になる。
図2の状態では、可動デッキ19はエレクタ装置11の旋回範囲よりも内側に収まっており、エレクタ装置11と干渉することはない。
【0048】
図5は図2〜図4の各図の(b)図を上から順に(A)〜(C)として並べたものであり、デッキ部21が回動動作を行い、かつ折畳式手摺23がデッキ部21の回動動作に連動して折り拡げられて設置される状況を説明する説明図である。
【0049】
<デッキ部の動作について>
1.回動動作としての側面
デッキ部21は、前述のように、基端側がブラケット20に回動可能に連結されており、この連結部を回動の支点として、図5の矢印Cで示す方向に回動する。
なお、図5(B)において矢印Cの両端に矢印を付けたのは、図5(B)の状態では両方向に回動できることを示すためである。このことは、後述する矢印D、Eにおいても同様である。
【0050】
2.並進移動動作としての側面
上記1において説明したデッキ部21の回動動作を水平方向に投影すると、その動作は、概ね、図5(C)の矢印Sで示す範囲における水平方向(特にシールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向又は固定デッキ17に対して離隔若しくは接近する水平方向)の移動動作になる。
要するに、デッキ部21は、その回動動作に応じて水平移動成分を伴う動作を行う。
【0051】
<折畳式手摺の動作について>
1.回動動作としての側面
折畳式手摺23を構成する前手摺33は、下端側を駆動機構部25の第2駆動枠部材41に回動可能に連結されており、デッキ部21の回動動作に従って図5の矢印Dで示す方向に回動する。
また、側方手摺31はデッキ部21の回動動作に従って図5の矢印Eで示す方向に回動する。折畳式手摺23は前手摺33と側方手摺31で構成されるものであるため、折畳式手摺23全体として回動動作を行っていると見ることができる。
【0052】
2.並進移動動作としての側面
上記1において説明した側方手摺31の動作は、シールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間で水平移動する成分を有するような動作でもある。即ち、側方手摺31は、図5の矢印C示すようなデッキ部21の回動動作に伴い同図の矢印Eで示すように回動する。この手摺31の回動動作を、水平方向に投影すると、概ね、図5(C)の矢印Sで示す範囲における水平方向(特にシールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向又は固定デッキ17から離隔若しくは接近する水平方向)の移動動作になる。前手摺33は、図5の矢印C示すようなデッキ部81の回動動作に伴い同図の矢印Dに示すように回動するので、これを水平方向に投影すると、やはり、水平方向(特にシールド掘進機とそれにより掘削されたトンネル壁面との間の水平方向又は固定デッキ17に対して離隔若しくは接近する水平方向)の移動を伴うものになる。また、前手摺33は、図5の矢印C示すようなデッキ部21の回動動作に伴い図5(C)の矢印Sに示す水平距離に近い距離を水平移動することになる。要するに、折畳式手摺23を構成する手摺31、33はいずれも、水平移動成分を伴う動作を、デッキ部21の回動動作に応じて行う。
【0053】
<折畳式手摺のデッキ部21の動作との連動について>
上記のとおり、折畳式手摺23の移動動作又は回動動作は、直接的にはデッキ部21に連結された前手摺33がデッキ部21の回動動作に連動して行われるものである。そして、側方手摺31もデッキ部21の回動動作に連動して折り畳み動作と折り拡げ動作を行うものである。したがって、折畳式手摺23はデッキ部21の回動動作に連動して移動又は回動すると共に折畳動作を行うものである。
また、上記のとおり、折畳式手摺23を構成する手摺31、33はいずれも、水平移動成分を伴う移動動作を、デッキ部21の回動に連動して行うものである。
【0054】
本実施の形態の可動デッキ19には、次に掲げる長所がある。
(1) 可動デッキ19においては、それがデッキ部21が張り出す方向に回動するときにはその動作に連動して折畳式手摺33が組み立てられ、またデッキ部21が固定デッキ17側に向けて回動するときにはその回動動作に連動して折畳式手摺33が移動する又は折り畳まれる。それ故、可動デッキ19では、変形に要する空間が小さくて済み、故に、シールド掘進機が大口径である場合は勿論、小口径である場合であっても設置可能なものとなる。
【0055】
(2) 可動デッキ19では、個別の手摺の設置や除去動作が不要になる。つまり、可動デッキ19は、その動作に連動して自動的に設置される折畳式手摺23を装備しているので、作業者が意識することなく、常に可動デッキ19の利用時には手摺がセッティングされることになり、可動デッキ19使用時の安全性が向上する。また、特別なアクチュエーター等を使用することなく手摺が動作するので、当該アクチュエーター等の故障発生リスクもなく、従来同様のコンパクトなスペースに装備できる。
【0056】
(3) 可動デッキ19は、そのデッキ部21がシールド掘進機1の進行方向に垂直な面内又は固定デッキのデッキ面と交差する面内において、固定デッキ17側を支点として回動動作をするため、先端が下方に向いて固定デッキ17側に近接した状態においてエレクタ装置11のアームの旋回範囲よりも内側に確実に入れることができ、それ故にエレクタ装置11との干渉を確実に回避することができる。
【0057】
(4) 本実施の形態の可動デッキ19は、基端側を回動の支点とし、固定デッキ17の側面側から外方に張り出すように動作するので、固定デッキ17の内側には可動デッキ19を構成する部材が配置されず、それ故に固定デッキ17側に可動デッキ19に関係する部材を設置するためのスペースを確保する必要がなく、また固定デッキ17側に設置される部材との干渉を考慮する必要もない。
【0058】
例えば、シールド掘進機1が泥土式の場合には、シールド掘進機1の前胴から後胴に向けて斜めにスクリューコンベアが設置されることになるが、本実施の形態の可動デッキ19ではこのスクリューコンベアとの干渉を考慮する必要がない。
図10はスクリューコンベア49が設置された泥土式のシールド掘進機1に本実施の形態の可動デッキ19を設置した状態を平面視した図、図11は同じく泥土式のシールド掘進機1に本実施の形態の可動デッキ19を設置した状態の側面図である。
図10、図11に示されるように、スクリューコンベア49がシールド掘進機1の中央部に配置されるので、従来例で示されたようなスライド式の可動手摺の場合には可動手摺が固定デッキ17側にスライドした場合に可動手摺とスクリューコンベア49との干渉の問題が生ずるが、本実施の形態の可動手摺ではこのような問題が生じない。
【0059】
また、スクリューコンベア49が設置されるシールド掘進機1の組立過程においても、本実施の形態の可動手摺であれば、シールド掘進機1の組立過程に悪影響を与えることもない。
【0060】
(5) 可動デッキ19であれば、スクリューコンベア49が設置されるシールド掘進機1の組立過程においても、シールド掘進機1の組立過程に悪影響を与えることはない。
図12、図13はスクリューコンベア49を備えるシールド掘進機1の組立過程を説明する説明図であり、図中の(a)〜(f)の順に組み立てが進行する様子を示している。
以下、図12、図13に基づいてスクリューコンベア49を備えるシールド掘進機1の組立過程を概説する。
【0061】
(i) 発進立抗下の発進架台(図示なし)上に、上下分割された前胴部3(下前胴部3a)(上前胴部3b)、カッター駆動部(図示なし)、カッタヘッド7等前胴側機器の大半を投入して仮組立を行う。仮組立が完了した状態が図12(a)に示されている。
(ii) 半割分割構造の後胴部5の下半分である下後胴部5aを投入する(図12(b))。なお、後工程での溶接作業や作業者の出入りを考慮して後胴部5は前胴部3から少し後方に離した位置、具体的には後胴部5に設置されている中折れ部6と前胴部3との間に隙間が形成され、その隙間が溶接作業や作業者の出入りを可能にする程度になるように仮置きする。
(iii) スクリューコンベア49を後胴の上方から投入し、前胴側に連結して設置する(図12(c))。
(iv) 可動デッキ19が設置された固定デッキ17を投入し、下後胴部5a内の支柱に仮固定する(図13(d))。可動デッキ19は固定デッキ17に設置されるものであるため、固定デッキ17との相対位置は変わらないが、この時点では後胴部5の前胴部3に対する相対位置が正規の位置よりも後方にずれている。このとき、仮に可動デッキ19がスライド式のように固定デッキ17側に延出するものであったとすると、当該可動デッキ19はスクリューコンベア49と干渉してしまうはずであり、この時点では設置することができない。
しかし、実際には、可動デッキ19は、固定デッキ17側に延出することがないので、スクリューコンベア49と干渉することがなく、それ故、予め設置しておくことが可能である。
【0062】
(v) 次に、後胴部5の上半分である上後胴部5bを投入して下後胴部5aと仮固定する(図13(e))
(vi) 図13(e)工程の後、分割各部の本組立(溶接作業を含む)を行って、前後胴部3、5それぞれの部分組立を完了した後、発進架台上で後胴を前進させて中折れ部6を差し込む。この時点で初めて前後胴部3、5が正規の相対位置関係となる(図13(f))。可動デッキ19が仮にスライド式のものである場合には、前後胴部3、5が正規の相対位置関係になった時点で、スクリューコンベア49と干渉しない位置において設置が可能となる。
【0063】
図12、図13に基づく説明から分かるように、可動デッキ19が固定デッキ17側に延出する場合には、たとえ完成状態において可動デッキ19がスクリューコンベア49と干渉しない場合であってもシールド掘進機1の組立工程との関係で、その設置時期が制限され、現地組立工程の終盤(前後胴が正規の相対位置関係になった後)にて設置する必要がある。そのため、可動デッキ19は、当初は固定デッキ17上から取り外しておく必要があり、さらにこのような組立工程を考慮し、現地組立作業の簡略化を図るために、可動デッキ全体を、ユニット化するなどの配慮も必要となる。
これに対して、本実施の形態の可動デッキ19は、固定デッキ17側に延出するものがないので、シールド掘進機1の組立工程のいずれの工程でもスクリューコンベア49と干渉することがなく、いつの時点で設置してもよく、工場出荷前に固定デッキ17側に本固定(溶接固定)することが可能となり、現地組立工程の簡素化(工期短縮)が図れる。
【0064】
(6) シールド掘進機1の各ブロック(前胴、後(中)胴、エレクタ装置、後方台車、カッタドラム、カッタディスク、カッタモータ、旋回ベアリング、シールドジャッキなど)の組立完成以降の工程は、概ね、(i)工場内全体仮組立→(ii)工場内試運転・立会検査→(iii)解体→(iv)分割輸送→(v)現地組立→(vi)現地検査・試運転、というものである(より詳しくは、各工程の呼称・名称の多少の相違はあるが、地盤工学・実務シリーズ3「シールド工法の調査・設計から施工まで」(訂正第2刷、発行:社団法人地盤工学会、発売:丸善株式会社)149〜155頁、など参照)。
【0065】
このとき、スクリューコンベアと干渉するような可動デッキであると、その干渉に起因する組立や解体の際の問題を回避しようとする一方で、シールド掘進機の組立や解体を煩雑化させてしまうことがある。即ち、スクリューコンベアと干渉するような可動デッキであると、(i)の工場内全体仮組立工程においては、前胴部と後胴部とを連結して(固定デッキを装備する)後胴部とスクリューコンベアとの相対位置関係が確定してからでないと可動デッキを設置することができない、(iii)の解体工程においては、先に可動デッキを解体撤去してやらないと前胴部と後胴部の解体(例えば相対的な引き離し)ができない、また、(iv)の現地組立工程においては、(i)の工場内全体仮組立工程と同様の手順を取ることが多いため、(i)の工場内全体仮組立工程の場合と同様、可動デッキの組立タイミングに制約を受ける、という問題が生じる。
また、(iv)の現地組立工程において可動デッキの組立タイミングに制約を受けるということは、その前の(iii)の解体工程において、可動デッキを一旦、固定デッキ側から解体撤去しなければならない、という別の制約を受けることでもある。
スクリューコンベアとスライド式の可動デッキを備えるシールド掘進機を構築する際には、往々にして上記のような問題が生じ易い。
【0066】
これに対して、本実施の形態の可動デッキ19は、スクリューコンベア49と干渉することがないので、上記のような種々の問題は生じない。このため、例えば、(iii)の解体工程において、可動デッキ19を解体することなく現地搬入が可能となるので、作業工程を簡略化(延いては工期を短縮)できる。
【0067】
また、上記の説明では、現地組立途中でのスクリューコンベア49との干渉を問題にしていたが、スクリューコンベア49の設置位置によっては、組立完成後においても可動デッキ19の(適切な)設置位置とスクリューコンベア49が干渉するケースもある。(小口径のシールド機や、スクリューコンベア49の配置角度、作業デッキ形状、セグメント組立位置等の諸条件によってそのようなケースが生じ得る。)
【0068】
この場合、次のような対処策を施すことが考えられる。
(i) 可動デッキ位置を例えば前方にずらしてスクリューコンベア49との干渉を回避する。
しかしながら、このようにすると、本来可動デッキ19を張り出したい位置(即ち、セグメント組立作業に効率的な位置)からずれることになり、またエレクタ装置11とも近くなるので、使い勝手が悪化する。
(ii) スライド型の可動デッキ19のスライドストロークを短縮して、可動デッキ19も小さくすることで、収納時でもシールド掘進機中心側のスクリューコンベア49と干渉しないようにする。
しかしながら、このようにすれば可動デッキ19の張り出し量不足となり使い勝手が悪化する。
(iii) 可動デッキ設置位置を上方に移動して、スクリューコンベア49と干渉しない位置に可動デッキ19を配置する。
しかしながら、デッキ上部空間が圧迫されるので、可動デッキ19のみならず、固定デッキ17としても使い勝手が悪化する。
【0069】
以上のようにスライド式の可動デッキ19の場合であっても対策を講じることによりスクリューコンベア49との干渉を回避することは可能であるものの、いずれの対策であっても十分であるとは言えない。
この点、本実施の形態に係る可動デッキ19であれば、可動デッキ19が固定デッキ17側に延出することがなく上記のような対策を取る必要もなく、可動デッキの本来有するべき又は望ましい機能を犠牲にすることがないので、好適である。
【0070】
なお、エレクタ装置11の動作としては、セグメント組み立て動作を行う場合のように通常の作業時の速度で旋回動作を行う場合(通常速度旋回動作)と、通常速度旋回動作よりもゆっくりした動作を行う微速旋回動作を行うことができる。そのため、このようなエレクタ装置11の動作と可動デッキ19の動作とを関連付けしておくことが安全上望ましい。
そのための具体的手段としては、可動デッキ19の退避状態(デッキ部21の先端が下方に向いて固定デッキ17側に近接した状態)をリミットスイッチで監視しており、可動デッキ19が退避している時に限り、エレクタ装置11に通常速度旋回を許可するようにインターロックをプログラミングし、このプログラムに基づいて制御するようにすればよい。このようにすれば、デッキ部21が回動を始め、リミットスイッチが切れた時点でエレクタ装置11側にインターロックが働き、エレクタ装置11が停止する。
また、さらに安全性を増すには、上記の制御に加えて可動デッキ19側にもインターロックをプログラミングし、エレクタ装置11が通常速度旋回動作を行っているときには可動デッキ19が動作しないように制御すればよい。
【符号の説明】
【0071】
1 シールド掘進機
3 前胴部
3a 下前胴部
3b 上前胴部
5 後胴部
5a 下後胴部
5b 上後胴部
6 中折れ部
7 カッタヘッド
9 シールドジャッキ
10 セグメント
11 エレクタ装置
13 把持部
15 アーム部
17 固定デッキ
19 可動デッキ
20 ブラケット
21 デッキ部
23 折畳式手摺
25 駆動機構部
27 デッキ枠
29 デッキプレート
31 側方手摺
33 前手摺
35 矩形枠部材
37 逆U字部
39 第1駆動枠部材
41 第2駆動枠部材
43 本体部
45 ロッド
47 駆動ジャッキ
49 スクリューコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定デッキを備えるシールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキは作業台となるデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、前記固定デッキのデッキ面と交差する面内で回動動作が可能に構成されていることを特徴とする可動デッキ。
【請求項2】
前記固定デッキのデッキ面と交差する面内において、移動動作又は回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えることを特徴とする請求項1記載の可動デッキ。
【請求項3】
シールド掘進機に設けられる可動デッキであって、該可動デッキは作業台となるデッキ部の一端側を固定デッキ側に回動可能に連結され、シールド掘進機の掘進方向と交差する面内で回動動作をすることによりセグメントを運搬するエレクタ装置と干渉しないように構成されていることを特徴とする可動デッキ。
【請求項4】
シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、移動動作又は回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えることを特徴とする請求項3記載の可動デッキ。
【請求項5】
前記エレクタ装置は、セグメントを旋回させて運搬する運搬装置を備え、
前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、前記運搬装置の旋回範囲よりも内側で前記旋回範囲と干渉しない位置に、前記手摺とともに配置可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載の可動デッキ。
【請求項6】
前記手摺は、前記可動デッキの回動動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の可動デッキ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の可動デッキを備えたことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項8】
微速旋回動作と該微速旋回動作よりも速い速度での旋回動作である通常速度旋回動作が可能なエレクタ装置と、作業者が作業を行う固定デッキと、該固定デッキに設置され、前記エレクタ装置と干渉しないように変形可能な可動デッキとを備えるシールド掘進機であって、
前記可動デッキは、掘進方向と交差する面内において、回動可能なデッキ部を備え、
前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作しているときは、前記デッキ部が前記固定デッキ側に回動して配置され、前記エレクタ装置が前記通常速度旋回動作していないときは、前記デッキ部が前記固定デッキ側からトンネル掘削壁面側に向かって張出し可能であることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項9】
シールド掘進機の掘進方向と交差する面内において、移動動作又は回動動作をすることにより折畳み可能な手摺を備えることを特徴とする請求項8記載のシールド掘進機。
【請求項10】
前記手摺は、前記可動デッキの回動動作との連動を可能にするリンク機構を備えることを特徴とする請求項9に記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−229806(P2010−229806A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255600(P2009−255600)
【出願日】平成21年11月7日(2009.11.7)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】