説明

可動ホーム柵装置

【課題】車両の連結位置での操作を容易にできる可動ホーム柵装置を提供する。
【解決手段】可動ホーム柵装置1は、プラットホーム2上の側縁21に沿って立設され、プラットホーム2の脇に延びる線路側の定位置に停止した列車Tとの間に柵を形成するものであり、列車Tのドア開口3に対応する乗降口4を形成する間隔もしくは列車Tの連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口5を形成する間隔を開けて配設された複数の戸袋柵10,11と、該複数の戸袋柵10,11に没入して乗降口4を開き状態にする一方、戸袋柵10,11から突出して乗降口4を閉じ状態にする乗降扉40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホーム上の側縁に沿って立設され、プラットホームの脇に延びる線路側の定位置に停止した列車との間に柵を形成する可動ホーム柵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可動ホーム柵装置としては、例えば、特許文献1の図5に示されているような安全柵がある。
図5は、プラットホームにおける列車の停止位置と安全柵との位置関係を示しており、ケース1として図示されたものは、列車が定位置に停止した場合を示す典型的な例である。すなわち、各車両の4箇所のドア開口に対応して安全柵ドアが位置しており、ストロークが対称である2つの安全柵ドアが車両のドア開口の幅よりも広く間隔を空けて配設された左右の戸袋部に没入および突出できるように成っている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−008330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラットホームに入線して停車している列車と安全柵との間に入って何らかの作業をする必要が生じる場合がある。例えば、プラットホームに入線した列車に異常が生じた場合に、その異常に対処するために車両の連結面に備えられたコックを操作しなければならないときがある。具体的には、車両のドアが開かない場合に、連結面に備えられたコックを操作してドアを開放する場合が考えられる。
【0005】
このような場合、安全柵が設置されているプラットホームでは、車両の連結面に最も近い安全柵の乗降口から安全柵の外側に出て連結面まで歩いて行くことになる。しかしながら、安全柵の外側のプラットホーム側縁までの幅は狭いので移動に不便であり、また、狭いスペースでのコックの操作もし難いという問題点がある。
【0006】
また、線路がカーブしている所にプラットホームがある場合には、列車の軌道半径とプラットホーム上に連設した安全柵が描く半径とは異なる。このため、直線のホームに設置した安全柵をそのまま利用して設置すると、列車のドア開口の位置と安全柵の乗降口を開閉する乗降扉の位置とがずれてしまうという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点や課題に着目してなされたもので、車両の連結位置での操作を容易にできる可動ホーム柵装置を提供することを目的とし、さらに、列車のドア開口の位置と可動ホーム柵装置の乗降口を開閉する乗降扉の位置とがずれを生じる場合に乗降扉をずれに合わせることができるようにした可動ホーム柵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1] プラットホーム(2)上の側縁(21)に沿って立設され、プラットホーム(2)の脇に延びる線路側の定位置に停止した列車(T)との間に柵を形成する可動ホーム柵装置(1)において、
前記列車(T)のドア開口(3)に対応する乗降口(4)を形成する間隔部もしくは前記列車(T)の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)と、該複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)に没入して前記乗降口(4)を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)から突出して前記乗降口(4)を閉じ状態にする乗降扉(40)と、を備えたことを特徴とする可動ホーム柵装置(1)。
【0009】
[2] プラットホーム(2)上の側縁(21)に沿って立設され、プラットホーム(2)の脇に延びる線路側の定位置に停止した列車(T)との間に柵を形成する可動ホーム柵装置(1)において、
前記列車(T)のドア開口(3)に対応する乗降口(4)を形成する間隔部もしくは前記列車(T)の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)と、該複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)に没入して前記乗降口(4)を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)から突出して前記乗降口(4)を閉じ状態にする乗降扉(40)と、を備え、
前記乗降扉(40)は、前記列車(T)のドア開口(3)との位置にずれがある場合に、前記乗降口(4)の開き状態を変えて前記ずれに合わせることが可能であるストロークの非対称な可動扉(41,42)を一対としたことを特徴とする可動ホーム柵装置(1)。
【0010】
[3] プラットホーム(2)上の側縁(21)に沿って立設され、プラットホーム(2)の脇に延びる線路側の定位置に停止した列車(T)との間に柵を形成する可動ホーム柵装置(1)において、
前記列車(T)のドア開口(3)に対応する乗降口(4)を形成する間隔部もしくは前記列車(T)の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)と、該複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)に没入して前記乗降口(4)を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)から突出して前記乗降口(4)を閉じ状態にする乗降扉(40)と、を備え、
前記乗降扉(40)は、前記列車(T)のドア開口(3)との位置にずれがある場合に対応できるように前記乗降口(4)の開きをより広くし、ストロークの非対称な可動扉(41,42)を一対としたことを特徴とする可動ホーム柵装置(1)。
【0011】
[4] プラットホーム(2)上の側縁(21)に沿って立設され、プラットホーム(2)の脇に延びる線路側の定位置に停止した列車(T)との間に柵を形成する可動ホーム柵装置(1)において、
前記列車(T)のドア開口(3)に対応する乗降口(4)を形成する間隔部もしくは前記列車(T)の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)と、該複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)に没入して前記乗降口(4)を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)から突出して前記乗降口(4)を閉じ状態にする乗降扉(40)と、を備え、
前記乗降扉(40)は、前記列車(T)のドア開口(3)との位置にずれがある場合に対応できるように前記乗降口(4)の開きをより広くし、ないし、前記ずれに合わせて前記乗降口(4)の開き状態を変えることが可能であるストロークの非対称な可動扉(41,42)を一対とし、
前記乗降口(4)の幅は、戸袋柵(10,11)の長さよりも広く、
前記複数の戸袋柵(10,10…;11,11…)のうち前記出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵(11)は、前記乗降口(4)を形成する間隔部のみを設けて配設された戸袋柵(10)よりも長さが短く、前記乗降口(4)を形成する側のみでストロークの短い可動扉(41)が没入し、突出することを特徴とする可動ホーム柵装置(1)。
【0012】
[5] 前記出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵(11,11)は、出入り口(5)側を乗降口(4)側よりも前記プラットホーム(2)の側縁(21)から離して配設したことを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載の可動ホーム柵装置(1)。
【0013】
[6] 前記出入り口(5)は、該出入り口(5)を開閉可能な開閉部材(50)を備えたことを特徴とする[1],[2],[3],[4]または[5]に記載の可動ホーム柵装置(1)。
【0014】
前記本発明は次のように作用する。
列車(T)がプラットホーム(2)に到着する以前は、一対のストロークの非対称な可動扉(41,42)が各戸袋柵(10,11)から突出しており、乗降口(4)は閉じ状態にある。また、出入り口(5)は、通常、開閉可能な開閉部材(50)によって閉じられている。これにより、可動ホーム柵装置(1)は、プラットホーム(2)の略全長に亘って、プラットホーム(2)から線路側へと降りられないようにする安全柵を成している。
【0015】
列車(T)がプラットホーム(2)に到着して基準の定位置に停止すると、可動扉(41,42)はそれぞれの所定の基準量を移動して、それぞれ戸袋柵(10,11)に没入して、乗降口(4)を開き状態にする。次に、列車(T)のドア開口(3)が開く。乗降口(4)の幅方向の中心は列車(T)のドア開口(3)の中心と一致し、かつ、乗降口(4)はドア開口(3)より幅広であるので、乗降客は、列車(T)の乗降を支障なく行うことができる。乗降口(4)の可動扉(41,42)は、列車(T)のドア開口(3)のドアの開くのに合わせて同時に開くようにしてもよいし、また、列車(T)のドアが開いた後に乗降口(4)の可動扉(41,42)が開くようにしてもよい。
【0016】
一対の可動扉(41,42)が所定の基準量を移動して、戸袋柵(10,11)から突出し、乗降口(4)を閉じ状態にした後、列車(T)のドア開口(3)のドアが閉じることにより、乗降客は列車(T)への乗降ができなくなる。なお、乗降口(4)の可動扉(41,42)と列車(T)のドアとは同時に閉じるようにしてもよく、また、列車(T)のドアが乗降口(4)の可動扉(41,42)より先に閉じるようにしてもよい。
【0017】
プラットホーム(2)に停車した列車(T)に異常が発生し、例えば、ドア開口(3)のドアが動かずに開かないような場合は、ドア開口(3)のドアを開くための操作をするレバーが車両の連結面に配設されているので、そのレバーを操作してドアを開けばよい。このとき、開閉部材(50)を開けることにより、迅速に出入り口(5)から列車(T)の連結位置に入って操作することができる。プラットホーム(2)側からこの操作をするとき、出入り口(5)を開けたままにしておくことによって作業スペースが得られ、操作を容易にすることができる。
【0018】
さらに、出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵(11,11)がその両端部のうち出入り口(5)側の端部を乗降口(4)側の端部よりもプラットホーム(2)の側縁(21)から離したプラットホーム(2)上に配設してある場合には、出入り口(5)の周囲では戸袋柵(11,11)の外側のプラットホーム(2)の側縁(21)までの幅が広くなっているので、作業がより一層に容易になる。また、この出入り口(5)は、列車(T)が異常時に基準の定位置に停止できなかった場合には、乗客をプラットホーム(2)に入れるために使用することもできる。
【0019】
プラットホーム(2)がカーブしている場合には、線路上の列車(T)が描く半径とプラットホーム(2)上に設置された可動ホーム柵装置(1)が描く半径とは異なる。このため、列車(T)のドア開口(3)と可動扉(41,42)との位置にずれが生じることになる。しかし、可動ホーム柵装置(1)は、乗降口(4)を開閉する一対の可動扉(41,42)のストロークが非対称となっている。これにより、ずれに合わせてストロークを変えて開いた乗降口(4)の位置を調整したり、乗降口(4)の開き状態の幅を広げて調整したりすることによって開き状態の乗降口(4)の中心を列車(T)のドア開口(3)の中心と一致させることができる。
【0020】
また、プラットホーム(2)がカーブしていない場合でも、可動扉(41,42)と列車(T)のドア開口(3)との位置のずれが有る場合には、上記のようにずれに合わせてストロークを変えて乗降口(4)の開き状態を容易に調整することができる。
【0021】
出入り口(5)を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵(11)は、長さの短い可動扉(41)のみが没入し、突出するようにしてあるので、戸袋柵(11)の長さが短い。これにより、列車(T)の連結面からこの連結面に最も近いドア開口(3)までの間隔が短い列車(T)が停止するプラットホーム(2)に設置する可動ホーム柵装置(1)や、列車(T)の停止位置の誤差を考慮した広い乗降口(4)を有する可動ホーム柵装置(1)でも列車(T)の連結位置に出入り口(5)を確実かつ容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる可動ホーム柵装置によれば、列車の連結位置に対応して非常時に使用する出入り口が形成されているので、異常発生時などプラットホームに入線している列車の連結位置での操作が必要な場合に、その操作を容易にすることができる。また、異常時に列車が定位置に停車できなかった場合に、乗客をプラットホームに入れるためのプラットホームへの入口として使用することもできる。
【0023】
また、線路がカーブしている所に施設されたプラットホームの場合など、可動扉と列車のドア開口との位置にずれが有っても、乗降口を開き状態および閉じ状態にする一対の可動扉のストロークが非対称であるので、ストロークを変えて乗降口の開き状態を変えることにより、ずれに合わせることができる。
【0024】
また、出入り口を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵の出入り口側が乗降口側よりもプラットホームの側縁から離れているので、出入り口の周囲では戸袋柵の外側からプラットホームの側縁までの幅が広くなっており、列車の連結位置での操作をプラットホーム側から行うことが容易になる。
【0025】
さらに、出入り口に開閉可能な開閉部材を備えているので、通常は出入り口を閉じて安全柵としてプラットホーム上における利用客の安全を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
各図は本発明の一実施の形態を示している。
図1または図2に示すように、可動ホーム柵装置1はプラットホーム2上の側縁21に沿って立設されている。可動ホーム柵装置1は、複数の戸袋柵10,11を備えている。これらの戸袋柵10,11は、所定の間隔部を設けて配設されている。この所定の間隔部は、広狭2種類あり、広い間隔部は、列車Tのドア開口3に対応する乗降口4を形成している。また、狭い間隔部は、列車Tの連結位置に対応し、非常時に使用するための出入り口5を形成している。
【0027】
戸袋柵11は、戸袋柵10よりも長さが短く、プラットホーム2に沿って基準の定位置に停車した各車両の両端に対応する位置に配設されている。戸袋柵10は、車両の両端では戸袋柵11と対を成して広い間隔部を設けて配設されており、戸袋柵11との間にドア開口3を形成している。また、戸袋柵10は、車両の両端以外の中間では、同じ戸袋柵10と対を成して広い間隔部を設けてドア開口3を形成するように配設されている。
【0028】
各車両の連結位置では、2つの戸袋柵11,11が対を成しており、狭い間隔部を設けて出入り口5を形成している。この戸袋柵11,11は、それぞれ出入り口5側を乗降口4側よりもプラットホーム2の側縁21から離して配設してある。このため、戸袋柵11が配設された所では、戸袋柵10が配設された所よりも側縁21までの幅が広くなっている。
【0029】
このように配設された対を成す戸袋柵11,11の間には、開閉可能な出入り口扉50(開閉部材)が備えられている。この出入り口扉50は、例えば、図示したように片側が戸袋柵11,11の一方に枢着された扉であり、手動で開閉できるものであるが、通常は利用客などが開けられないように開閉不能にロックされている。
【0030】
戸袋柵10および戸袋柵11には、それぞれ乗降扉40が没入して乗降口4を開き状態にし、また、突出して乗降口4を閉じ状態にする。乗降扉40は、ストロークの非対称な可動扉41および可動扉42を一対としている。可動扉41のストロークは、可動扉42のストロークよりも短い。したがって、可動扉41は、可動扉42よりも全長の短いものとなっている。これら可動扉41,42は、戸袋柵10,11への没入の度合いを変えることによって乗降口4の開き状態を変えることができる。
【0031】
戸袋柵11には、全長の短い可動扉41が乗降口4側の側面の出入口(図示せず)で没入および突出する。戸袋柵11とともに乗降口4を形成する戸袋柵10は、可動扉42が側面の出入口(図示せず)で没入および突出する。図示したようにドア開口3が4つ設けられている車両の場合、一車両ごとに両端のドア開口3のうち一方のドア開口3に対応する乗降口4を形成する戸袋柵10には、全長の長い可動扉42が両側端面の出入口(図示せず)で没入および突出する。これ以外の戸袋柵10は、一方の側端面の出入口では可動扉41が没入および突出し、他方の側端面の出入口では可動扉42が没入および突出する。なお、乗降口4は、戸袋柵10の長さよりも広い幅に形成されている。
【0032】
次に作用を説明する。
可動ホーム柵装置1の出入り口5は、通常、列車Tの運行とは無関係に出入り口扉50によって閉じられている。また、可動ホーム柵装置1は、列車Tがプラットホーム2に到着する以前は、乗降扉40である一対の可動扉41,42がそれぞれの戸袋柵10,11から突出しており、乗降口4を閉じ状態にしている。これにより、可動ホーム柵装置1は、プラットホーム2の略全長に亘って、プラットホーム2から線路側へと降りられないようにする安全柵を成している。
【0033】
列車Tがプラットホーム2に到着して基準の定位置に停止すると、可動扉41,42はそれぞれの所定の基準量を移動して、それぞれ戸袋柵10,11に没入して、乗降口4を開き状態にする。これに続き、列車Tのドア開口3のドアが開く。乗降口4の幅方向の中心は列車Tのドア開口3の中心と一致し、かつ、乗降口4はドア開口3より幅広であるから、乗降客は列車Tの乗降を支障なく行うことができる。このときの乗降口4の可動扉41,42と列車Tのドアとが開くタイミングは同時でもよく、また、列車Tのドアが開いた後に僅かに遅れて乗降口4の可動扉41,42が開くようにしてもよい。
【0034】
乗降を止めるために一対の可動扉41,42がそれぞれの戸袋柵10,11から突出して所定の基準量を移動すると、乗降口4は閉じ状態になる。その後、列車Tのドア開口3のドアが閉じると乗降客は列車Tへの乗降ができなくなる。この際、乗降口4の可動扉41,42と列車Tのドアとが同時に閉じるようにしてもよいし、また、列車Tのドアを乗降口4より先に閉じるようにしてもよい。
【0035】
鉄道の運行中、プラットホーム2に停車した列車Tに異常が発生した場合としては、例えば、ドア開口3のドアが車内からの通常の操作によっては開くことができない場合がある。ドア開口3のドアは、車内からの通常の操作によっては開かない場合でも、車両の連結面に配設した操作レバーを操作して開くことができるようになっている。
【0036】
プラットホーム2に停車している列車Tのドア開口3のドアをこの操作レバーを操作して開くためには、列車Tの連結位置まで行かなければならない。従来、このような場合には乗降口4から可動ホーム柵装置1の外側に出て可動ホーム柵装置1とプラットホーム2の側縁21との間の狭いスペースを列車Tの連結面まで歩いていかなければならなかった。しかしながら、本実施の形態にかかる可動ホーム柵装置1では、列車Tの連結位置に対向するように出入り口5が形成されているので、出入り口5を閉じている出入り口扉50を開けて可動ホーム柵装置1の外に出ることができ、容易かつ迅速に列車Tの連結位置に行くことができる。
【0037】
出入り口5を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵11,11は、その両側のうち出入り口5側の端部の位置が乗降口4側の端部の位置よりもプラットホーム2の側縁21から離れている。すなわち、出入り口5側の端部は、乗降口4側の端部よりも線路から離れている。これにより、出入り口5の周囲では戸袋柵11,11からプラットホーム2の側縁21までの幅が広くなっている。したがって、プラットホーム2の上から車両の連結面の操作レバーを操作する場合には、出入り口扉50を開けたままにしておくことにより、出入り口5およびその周辺のスペースが広くなるので容易に作業をすることができる。
【0038】
なお、戸袋柵11の乗降口4側の位置が戸袋柵10の位置よりもプラットホーム2の側縁21から離れているので、戸袋柵11から突出する可動扉41は、隣の戸袋柵10から突出する可動扉42に対して角度をもって斜めに突出する。
【0039】
上記のような出入り口5は、列車Tがプラットホーム2の基準の定位置に停止できないような異常時の場合には、出入り口扉50を開いて乗客をプラットホーム2内に入れるための出口として使用することもできる。
【0040】
図1および図2では、プラットホーム2が直線の場合を示してあるが、プラットホーム2にはカーブした線路に合わせてカーブしているものもある。このような場合、線路上の列車Tが描く半径がプラットホーム2上に設置された可動ホーム柵装置1が描く半径よりも大きくなる。このため、列車Tのドア開口3と可動ホーム柵装置1の可動扉41,42との位置にずれが生じることになる。図示したように、乗降口4を開閉する一対の可動扉41,42はストロークが非対称であり、ずれに合わせてストロークを変えて乗降口4の開き状態の幅を広げて調整することができる。また、乗降口4の開いた位置を変えるような調整をすることができる。これらの調整によってこの開き状態の乗降口4の中心を列車Tのドア開口3の中心と一致させることができる。
【0041】
乗降口4の幅が戸袋柵10,11の長さよりも広く、可動扉41,42のストロークが非対称である。このことから、列車Tが基準の定位置に停止することができず、列車Tのドア開口3と可動扉41,42との位置にずれが生じてしまう場合には、そのようなずれに合わせて可動扉41,42のストロークを変えて乗降口4の開き状態を適切に調整することができる。
【0042】
出入り口5を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵11,11は、長さの短い可動扉41のみが没入し、突出するようにしてあるので、戸袋柵11の長さを他に配設した戸袋柵10よりも短くすることができる。このことにより、連結面から該連結面に最も近いドア開口3までの間隔が短い車両を連結してなる列車Tに対しても可動ホーム柵装置1は、列車Tの連結位置に出入り口5を確実かつ容易に形成することができる。また、列車Tの停止位置の誤差を考慮した広い乗降口4を有する可動ホーム柵装置1にする場合でも列車Tの連結位置に出入り口5を確実かつ容易に設けることができる。
【0043】
なお、出入り口5を開閉する開閉部材として、片側が戸袋柵11に枢着された出入り口扉50を例に挙げたが、戸袋柵11,11の間に着脱可能な柵としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態に係る可動ホーム柵と列車およびプラットホームとの位置関係を説明する説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る可動ホーム柵と列車との位置関係を示し、(A)は、平面図であり、(B)は、側面図である。
【符号の説明】
【0045】
T…列車
1…可動ホーム柵装置
2…プラットホーム
3…ドア開口
4…乗降口
5…出入り口
10…戸袋柵
11…戸袋柵
21…側縁
40…乗降扉
41…可動扉
42…可動扉
50…出入り口扉(開閉部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホーム上の側縁に沿って立設され、プラットホームの脇に延びる線路側の定位置に停止した列車との間に柵を形成する可動ホーム柵装置において、
前記列車のドア開口に対応する乗降口を形成する間隔部もしくは前記列車の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵と、該複数の戸袋柵に没入して前記乗降口を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵から突出して前記乗降口を閉じ状態にする乗降扉と、を備えたことを特徴とする可動ホーム柵装置。
【請求項2】
プラットホーム上の側縁に沿って立設され、プラットホームの脇に延びる線路側の定位置に停止した列車との間に柵を形成する可動ホーム柵装置において、
前記列車のドア開口に対応する乗降口を形成する間隔部もしくは前記列車の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵と、該複数の戸袋柵に没入して前記乗降口を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵から突出して前記乗降口を閉じ状態にする乗降扉と、を備え、
前記乗降扉は、前記列車のドア開口との位置にずれがある場合に、前記乗降口の開き状態を変えて前記ずれに合わせることが可能であるストロークの非対称な可動扉を一対としたことを特徴とする可動ホーム柵装置。
【請求項3】
プラットホーム上の側縁に沿って立設され、プラットホームの脇に延びる線路側の定位置に停止した列車との間に柵を形成する可動ホーム柵装置において、
前記列車のドア開口に対応する乗降口を形成する間隔部もしくは前記列車の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵と、該複数の戸袋柵に没入して前記乗降口を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵から突出して前記乗降口を閉じ状態にする乗降扉と、を備え、
前記乗降扉は、前記列車のドア開口との位置にずれがある場合に対応できるように前記乗降口の開きをより広くし、ストロークの非対称な可動扉を一対としたことを特徴とする可動ホーム柵装置。
【請求項4】
プラットホーム上の側縁に沿って立設され、プラットホームの脇に延びる線路側の定位置に停止した列車との間に柵を形成する可動ホーム柵装置において、
前記列車のドア開口に対応する乗降口を形成する間隔部もしくは前記列車の連結位置に対応し、非常時に使用する出入り口を形成する間隔部を設けて配設された複数の戸袋柵と、該複数の戸袋柵に没入して前記乗降口を開き状態にする一方、前記複数の戸袋柵から突出して前記乗降口を閉じ状態にする乗降扉と、を備え、
前記乗降扉は、前記列車のドア開口との位置にずれがある場合に対応できるように前記乗降口の開きをより広くし、ないし、前記ずれに合わせて前記乗降口の開き状態を変えることが可能であるストロークの非対称な可動扉を一対とし、
前記乗降口の幅は、戸袋柵の長さよりも広く、
前記複数の戸袋柵のうち前記出入り口を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵は、前記乗降口を形成する間隔部のみを設けて配設された戸袋柵よりも長さが短く、前記乗降口を形成する側のみでストロークの短い可動扉が没入し、突出することを特徴とする可動ホーム柵装置。
【請求項5】
前記出入り口を形成する間隔部を設けて配設された戸袋柵は、出入り口側を乗降口側よりも前記プラットホームの側縁から離して配設したことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の可動ホーム柵装置。
【請求項6】
前記出入り口は、該出入り口を開閉可能な開閉部材を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の可動ホーム柵装置。

【図1】
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【図2】
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