説明

可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器

【課題】電子機器の操作部を構成するための可動接点体に関し、電子機器への磁気による悪影響を及ぼさないものを提供する。
【解決手段】消磁した下方開口のドーム状をした弾性薄板金属製の可動接点11と、上記可動接点11の上面を、下面に備えた粘着層2Aにより粘着保持した絶縁樹脂製のベースシート2とで可動接点体13を構成するようにしたことにより、電子機器への磁気による悪影響を及ぼさない可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作部に用いられる可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やPDA等の各種電子機器は、小型化や多機能化などの進展がめざましく、それら電子機器の操作部として複数個の押圧スイッチが所定の配列状態に配置されて構成されたパネルスイッチの周辺部分も、各種搭載部品の集積密度が高くなっており、それらの配置自由度の向上が求められるようになっている。
【0003】
そのようなパネルスイッチを構成する時に用いられる従来の可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器について、図4〜図6を用いて説明する。
【0004】
図4は従来の可動接点体の断面図、図5は同分解斜視図であり、同図において、1は下方開口のドーム状をした弾性金属薄板製の可動接点、2は絶縁樹脂フィルムからなり下面に粘着層2Aを有するベースシートである。このベースシート2の下面には、上記可動接点1が複数個、所定の配列状態で配置され、各可動接点1の上面が上記粘着層2Aにより粘着保持されることにより、複数個の押圧スイッチが構成可能な可動接点体3として構成されている。
【0005】
なお、通常は、各可動接点1の下面側を保護するために、上記構成の各可動接点1付きのベースシート2下面には、ベースシート2の粘着層2Aを用いて、上面に離型処理が施された絶縁性のフィルムからなるセパレータが貼り付けられており、その使用時に上記セパレータを剥がして露出したベースシート2の粘着層2Aで所定箇所に貼付け装着するようにしている。
【0006】
そして、図6は上記従来の可動接点体を用いて構成したパネルスイッチを装着した電子機器の要部断面図であり、同図において、4は平板状の配線基板で、その上面には、各可動接点1に対応する中央固定接点5Aと外側固定接点5Bが1組となって、各々の可動接点1の位置に対応して複数組配設されている。なお、図示していないが、それぞれの固定接点からは、他回路への接続用電極が導出されている。
【0007】
そして、各可動接点1の外周下端が、対応する各外側固定接点5B上に載り、ドーム状の頂点部下面が対応する各中央固定接点5Aと対峙するように、セパレータが剥がされた当該可動接点体3は、端部に設けられた位置決め用の小孔4Aとベースシート2の小孔2Bを基準として配線基板4に重ね合わされ、ベースシート2の露出した粘着層2Aで配線基板4上に貼付けされ、複数個の押圧スイッチが配列されたパネルスイッチ7として構成される。
【0008】
そして、パネルスイッチ7は、電子機器の外装ケース8内に位置決め配置され、そのパネルスイッチ7の可動接点1それぞれの位置に対応して備えられた操作ボタン9が、外装ケース8のボタン孔から上下動可能に突出して、外方から押圧操作可能な操作部として構成される。
【0009】
上記電子機器の操作部の動作としては、まず、操作ボタン9を押し下げて操作ボタン9により可動接点1の頂点部上面を押圧すると、可動接点1が節度感を伴いながら弾性反転し、その頂点部下面が中央固定接点5Aに接触することにより、可動接点1を介して外側固定接点5Bと中央固定接点5Aとが電気的に接続されて押圧スイッチがON状態となる。
【0010】
また、操作ボタン9への押圧力を除くと、可動接点1の弾性復元力により頂点部下面が中央固定接点5から離れると共に、操作ボタン9も押し戻されて、元の図6のOFF状態に復帰するものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2003−077368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器においては、携帯電話機などに代表されるように、機器の小型化、多機能化に伴い、それに搭載される各部品の集積密度が高くなり、装着位置や装着容積の制限等が生じている。
【0013】
一方、上記電子機器の操作部を構成する可動接点体3の可動接点1の材料としては、SUS301などのステンレス製の薄板が多く用いられ、このものは取り扱いその他で磁化することもあり、上記機器内における各部品の集積密度が高くなるにつれて、例えば、上記携帯電話機等で開閉判定用や方位確認用に搭載されている磁気センサに対し、上記磁化した可動接点による影響の配慮も必要になりつつあるという課題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、電子機器への磁気による悪影響を及ぼさない可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、下方開口のドーム状をした弾性薄板金属製の可動接点と、上記可動接点を保持した絶縁樹脂製のベースシートとからなり、上記可動接点が消磁されたものであることを特徴とする可動接点体としたものであり、可動接点自身が消磁されているため、電子機器への磁気による悪影響を及ぼさず節度のある操作感触が得られるものにできるという作用を有する。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の可動接点体を用い、可動接点に対応した外側固定接点と中央固定接点の一対が配置された配線基板上に、上記可動接点の外周下端が上記外側固定接点上に載置されるように上記可動接点体を重ね合わせて構成したパネルスイッチが装着された電子機器としたものであり、消磁した可動接点を用いて構成したパネルスイッチを搭載しているため、他の機能用に配された磁気センサ等への影響も殆ど考慮することなく、両者を近接配置することもでき、機器の小型薄型化等に寄与できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、電子機器への磁気による悪影響を及ぼさない可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器を提供することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0020】
なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0021】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図であり、同図において、2は、外形を定型に加工された可撓性を有する絶縁性のベースシートで、その下面全体には粘着層2Aが備えられている。
【0022】
そして、その粘着層2Aによって、下方開口のドーム状に形成された可動接点11が、複数個互いに独立状態で各上面部を粘着保持されて可動接点体13が構成されている。
【0023】
この可動接点11は、SUS301などのステンレス製の薄板が絞り加工されて下方開口のドーム形状に形成されていると共に、消磁処理を施したものを用いている。
【0024】
なお、上記可動接点11付きのベースシート2の下面には、可動接点11の下面を保護するためのセパレータが、可動接点11をベースシート2とで挟むようにベースシート2下面の粘着層2Aによって貼り付けられること等は、従来の技術の場合と同じである。
【0025】
また、その使用時には、上記セパレータを剥がし、露出したベースシート2の粘着層2Aで、図2の電子機器の要部断面図に示すように、可動接点11に対応する固定接点5A、5Bが配設された配線基板4上に、ベースシート2下面の粘着層2Aで貼り付け装着してパネルスイッチ15として搭載される。
【0026】
このとき、各可動接点11のドーム状の頂点部下面が、対応する各中央固定接点5Aと対峙するように、各可動接点11の外周下端が、対応する各外側固定接点5B上に載せられ、その周囲部分の粘着層2Aが、配線基板4の上面に粘着されることにより、個々の押圧スイッチは構成される。
【0027】
そして、上記構成の個々の押圧スイッチを有するパネルスイッチ15は、機器の外装ケース8内に位置決めして配されると共に、各可動接点11それぞれの位置に対応して上下動可能に備えられた操作ボタン9等と組み合わせられて、外方から押圧操作可能な操作部として構成される。
【0028】
その動作は、操作ボタン9を押し下げて可動接点11の頂点部上面を押圧すると、可動接点11が節度感を伴いながら弾性反転し、可動接点11を介して外側固定接点5Bと中央固定接点5Aとが電気的に接続されたスイッチON状態となる。そして、操作ボタン9への押圧力を除くと、可動接点11は自らの弾性復元力により元の下方開口のドーム形状に復元して操作ボタン9を押し戻すと共に、その頂点部下面が中央固定接点5Aから離れて、元の図2のスイッチOFF状態に戻るものである。
【0029】
そして、上記構成のパネルスイッチ15は、例えば図3に示すような、折り畳み式の携帯電話機21などのテンキー部22等として搭載される。
【0030】
この携帯電話機21は、液晶などからなる表示部31Aを備えた第一筐体31と、テンキー部22などを備えた第二筐体32が、ヒンジ33を介して開閉自在に構成されており、その閉じられた状態で、表示部31Aやテンキー部22などは内面側に収納状態となるように構成されている。
【0031】
なお、表示部31Aなどは、フレキシブル配線板25を介して第二筐体32内に収容さ
れている上記配線基板4(図3には図示せず)に接続されている。
【0032】
そして、当該携帯電話機21の使用時には、使用者は、その閉じられた状態から第一および第二筐体31および32を所定角度に開き、テンキー部22などへの押圧操作を行なって電話をかけたりメールの送受信などを行うものである。
【0033】
そして、通常、上記第一および第二筐体31および32が閉じられた状態は、非操作状態であるため、その閉状態を検出して省電力モードに切り換える処理等が施されることが多い。
【0034】
その検出手段の構成の一事例としては、第一筐体31のヒンジ33が配された側とは逆の端部位置に配された磁気発生素子41に対し、閉じられた状態で上記磁気発生素子41の位置に対向状態となる第二筐体32の位置に磁気センサ42を配置したものがある。
【0035】
つまり、この構成のものは、上記第一および第二筐体31および32が閉じられた状態では、磁気発生素子41からの磁気を磁気センサ42で検出し所定出力が得られる構成になされ、その所定出力に基づいて上記省電力モードへの移行処理などがなされるようになっている。
【0036】
このとき、テンキー部22は、第二筐体32上面の略全面で配設されることも多く、テンキー部22の配置領域と磁気センサ42の配置箇所が近接するようにもなるが、テンキー部22の各押圧スイッチを構成している可動接点11は、消磁されているものを用いているため、磁気センサ42での誤検知などの発生要因が低減できる。また、近接的に配置される可動接点11からの不要な磁気がなくなるため、磁気センサ42の検知レベルをおとすことも可能である。
【0037】
以上のように当該実施の形態によれば、操作時に節度感が得られる薄型かつ軽量な操作部を構成できると共に、その構成部材となる可動接点体13の各可動接点11自身として消磁したものを用いているため、他の機能用に配された磁気センサ42等への影響も殆ど考慮することなく、両者を近接配置することも可能であるため、機器の小型薄型化等にも寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明による可動接点体およびそれを用いたパネルスイッチが装着された電子機器は、電子機器への磁気による悪影響を及ぼさないものにできるという特徴を有し、各種電子機器の構成時等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図
【図2】同可動接点体を用いて構成したパネルスイッチを装着した電子機器の要部断面図
【図3】同電子機器である折り畳み式の携帯電話機の部分断面の外観斜視図
【図4】従来の可動接点体の断面図
【図5】同分解斜視図
【図6】同可動接点体を用いて構成したパネルスイッチを装着した電子機器の要部断面図
【符号の説明】
【0040】
2 ベースシート
2A 粘着層
4 配線基板
5A 中央固定接点
5B 外側固定接点
8 外装ケース
9 操作ボタン
11 可動接点
13 可動接点体
15 パネルスイッチ
21 携帯電話機
22 テンキー部
25 フレキシブル配線板
31 第一筐体
31A 表示部
32 第二筐体
33 ヒンジ
41 磁気発生素子
42 磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方開口のドーム状をした弾性薄板金属製の可動接点と、上記可動接点を保持した絶縁樹脂製のベースシートとからなり、上記可動接点が消磁されたものであることを特徴とする可動接点体。
【請求項2】
請求項1記載の可動接点体を用い、可動接点に対応した外側固定接点と中央固定接点の一対が配置された配線基板上に、上記可動接点の外周下端が上記外側固定接点上に載置されるように上記可動接点体を重ね合わせて構成したパネルスイッチが装着された電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−120396(P2006−120396A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305474(P2004−305474)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】