説明

可動接点及びスイッチ

【課題】外径が小型化されても十分な押圧ストロークが得られ、同時に寿命の長期化が図れ、さらに良好なクリック感触が得られる可動接点及びスイッチを提供すること。
【解決手段】弾性を有する薄板を絞り加工することで外周部を円錐台形状のスカート部30、その内側の中央部を上方に膨らむ略球面状のドーム部20としてなる可動接点1−1である。スカート部30内の4か所に、ドーム部20が突出する方向とは逆方向に突出する当接突起31を形成する。当接突起31はその外周辺の一部が可動接点の外周辺13の一部となる形状であり、この外周辺13に位置する当接突起31の部分を当接突起31中の最も下降した当接部35とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点及びこの可動接点を用いて構成されるスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可動接点は、例えば特許文献1の図13に示す接点板(89)のように、弾性を有する円形の薄板をドーム状に絞り加工することによって形成されている。そしてこの接点板(89)は、スイッチ基板(80)上に取り付けられる。スイッチ基板(80)上には、接点パターン(85)とこの接点パターン(85)を囲む円弧形状の接続パターン(83)とが形成されており、前記接点板(89)はその外周辺(89a)が接続パターン(83)上に載置される。接点パターン(85)からは接続パターン(83)の切り欠き部分(83a)を通して引出パターン(86)が引き出されており、引出パターン(86)の前記接点板(89)の外周辺(89a)を載置する部分には絶縁パターン(87)がオーバーコートされている。
【0003】
しかしながら上記従来例においては、接点板(89)の外周辺(89a)が絶縁パターン(87)に当接しているため、この接点板(89)の反転動作が繰り返されるうちに前記絶縁パターン(87)が削られ、経時的に接点板(89)と引出パターン(86)との間の絶縁が破壊されショートしてしまう恐れがあった。
【0004】
この問題を解決するには例えば特許文献1の接点板(89)に代えて、特許文献2に記載のクリックバネ(23)を用いればよい。即ち特許文献2に記載のクリックバネ(23)の場合、その外周近傍部分に等間隔にプレス加工によって固定接点(33)の方向に向かって略球面状に突出する4つの突部(25)を形成している。そしてこのクリックバネ(23)を前記特許文献1のスイッチ基板(80)上に載置し、その際クリックバネ(23)の各突部(25)を特許文献1の接続パターン(83)上に載置すれば、クリックバネ(23)の外周辺は各突部(25)の部分を除いてスイッチ基板(80)から浮き上がる。このためこの浮き上がった外周辺部分の下に前記特許文献1の絶縁パターン(87)を通過させることで、クリックバネ(23)が絶縁パターン(87)を削る恐れが小さくなり、両者間の絶縁状態を経時的に良好な状態に保つことができる。また特許文献2に記載のスイッチのように、クリックバネ(23)に突部(25)を形成すると、クリックバネ(23)の押圧ストロークを長くすることができ、良好なクリック感触が得られ、反転点が明確になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−151029号公報
【特許文献2】実開平5−94919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献2に示す従来のクリックバネ(23)には以下のような問題があった。即ちクリックバネ(23)の上面中央を押圧してこれを反転動作させると、ドーム形状であるクリックバネ(23)全体が反転変形する。このとき反転変形するドーム形状部分の中に前記突部(25)があると、突部(25)の周囲の突部(25)と連結している部分が反転変形するのに対して突部(25)の部分は変形できず、両者間に不均一な応力が働く。このためクリックバネ(23)を多数回作動させていると破壊が生じ易くなり、その製品の寿命が短くなってしまう恐れがあった。また不均一な応力が働くので、反転時のクリック感触が良好でなくなる恐れもあった。
【0007】
また上記従来のクリックバネ(23)に形成された突部(25)は、略球面状に突出しているので、固定接点(33)との当接は点接触となり、一点に大きな力が集中し、突部(25)の先端が経時的に潰れてしまう恐れがあり、この点からも製品寿命に悪影響を及ぼす恐れがあった。また突部(25)は略球面状なので最も下方に位置して固定接点(33)に点接触するその中心点よりも外側位置にまでクリックバネ(23)の外周辺が広がっており、広がっている分だけクリックバネ(23)の外径寸法が大きくなり、小型化が図れないという問題もあった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、スイッチパターンとの間に絶縁不良が生じることがなく、十分な押圧ストロークが得られ、同時に寿命の長期化が図れ、さらに良好なクリック感触が得られる可動接点及びこの可動接点を用いたスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、弾性を有する薄板を絞り加工することで外周部を円錐台形状のスカート部、その内側の中央部を上方に膨らむ略球面状のドーム部としてなる可動接点であって、前記スカート部内の4か所に、前記ドーム部が突出する方向とは逆方向に突出する当接突起を形成したことを特徴とする可動接点にある。
【0010】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可動接点であって、前記当接突起はその外周辺の一部が可動接点の外周辺の一部であり、この外周辺の部分を当接部としたことを特徴とする可動接点にある。
【0011】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の可動接点であって、前記当接突起は、スカート部内に円弧形状に形成されていることを特徴とする可動接点にある。
【0012】
本願請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の可動接点であって、前記スカート部内に、可動接点の外周辺を切り欠いてなるパターン逃げ部を形成したことを特徴とする可動接点にある。
【0013】
本願請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内の何れかに記載の可動接点と、この可動接点を載置するスイッチ基板とを具備し、前記スイッチ基板の表面には前記可動接点の各当接突起を当接するパターン当接部を有する外周接点パターンと、前記可動接点の中央に対向する位置に設けられる中央接点パターンとが形成されており、前記外周接点パターンの各パターン当接部上に可動接点の各当接突起を載置してなることを特徴とするスイッチにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、反転時に反転しないスカート部を設けてこの部分に当接突起を形成したので、円形のドーム部の反転動作を前記当接突起が阻害することはなく、このため良好なクリック感触が得られると同時に、可動接点の寿命の長期化が図れる。またスカート部を設けることで可動接点の押圧ストロークを長くすることができる上に、スカート部に設けた当接突起によってさらに前記押圧ストロークを長くすることができる。以上のことから良好なスイッチのオンオフとクリック感触とが得られ反転点が明確になり、さらに可動接点の長寿命化が図れる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、可動接点の外周辺の一部が当接突起の当接部になるので、この当接部を載置する固定接点とは線接触となり、当接部と固定接点間に加わる力が線上に分散され、これによって当接部の変形が防止されて製品寿命の長期化が図れる。また当接部は可動接点の外周辺上にあるので、当接部を外周辺の内側に設ける場合に比べて可動接点の外径の小型化を図ることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、スカート部の狭い幅寸法を使って無理のない形状への変形で、且つ長さの長い当接部が得られる当接突起を形成することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、この可動接点を載置するスイッチ基板に形成する固定接点である接点パターン(中央接点パターン)から引き出される引出回路パターンを通過させるために設けるパターン逃げ部をスカート部内に形成したので、確実に引出回路パターン(中央接点パターン)との絶縁が図られる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、上記可動接点を用いたスイッチを構成することができる。本発明に係る可動接点は当接突起を設けているので、可動接点の外周辺は各当接突起の部分を除いてスイッチ基板から浮き上がる。このためこの浮き上がった部分の下に中央接点パターンから引き出される引出回路パターンを通過させる場合でも、その引出回路パターンが削れる恐れはなく、両者間の絶縁状態は経時的に良好な状態を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】可動接点1−1を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】可動接点1−1の製造方法説明図である。
【図5】可動接点1−1を用いて構成されるスイッチ200の分解斜視図である。
【図6】スイッチ200(但し粘着テープ270の記載は省略)の図5に示すD−D線上断面図である。
【図7】スイッチ200(但し粘着テープ270の記載は省略)の図5に示すE−E線上断面図である。
【図8】スイッチ200の動作説明図である。
【図9】可動接点1−2を示す平面図である。
【図10】図9のF−F断面図である。
【図11】図9のG−G断面図である。
【図12】スイッチパターン230の状態を詳細に示す平面図である。
【図13】スイッチパターン230の変形例(改良例)を詳細に示す平面図である。
【図14】スイッチパターン230の別の変形例(改良例)を詳細に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1〜図3は本発明の第1実施形態に係る可動接点1−1を示す図であり、図1は平面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面図である。これらの図に示すように可動接点1−1は、1枚の弾性を有する金属(例えばステンレス)製の円形の薄板を絞り加工することで、その外周部を円錐台形状のスカート部30、その内側の中央部を上方に膨らむ略球面状のドーム部20として構成されている。なお以下の説明において、「上」とはドーム部20が膨出する方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0021】
円錐台形状のスカート部30の傾斜角度は、ドーム部20の外周部分の傾斜角度よりも大きく形成され、これによって両者の境界部分は円形で上方向に凸となる境界線11となっている。
【0022】
スカート部30内の等間隔に離れた4か所には、前記ドーム部20が突出する方向とは逆方向、即ち下方向に向かって突出する当接突起31が形成されており、またスカート部30内には可動接点1−1の外周辺13の一部を凹状に切り欠いてなる一対のパターン逃げ部41が形成されている。さらにスカート部30の外周の2か所からは外方に向けて突出する連結残り部51が形成されている。
【0023】
ここで当接突起31は、この当接突起31を上面側から見てスカート部30内に円弧形状に形成されている。即ちこの当接突起31を上面側から見た外形形状は、スカート部30内に位置する円弧33と、円弧33の両端の間に位置する可動接点1−1の外周辺13とによって形成される形状である。言い換えれば当接突起31はその外周辺の一部が可動接点1−1の外周辺13の一部である。この当接突起31はその面(平面)全体がスカート部30の面よりも少し下方に下がるように、当接突起31の円弧33の部分を屈曲させて構成されている。また円弧33の上部側の部分(スカート部30から曲がり始める部分、図1で示す円弧33の外側の実線部分)は、その一部(中央部分)が境界線11に接しており、また円弧33の下部側の部分(当接突起31の平面に接している部分、図1で示す円弧33の内側の実線部分)は、境界線11よりもスカート部30側に位置している。なお本発明においては、少なくとも円弧33の下部側の部分の一部が境界線11に接するように構成すればよい(このとき円弧33の上部側の部分は、その一部が境界線11から若干ドーム部20内にはみ出すが、下記するドーム部20のスムーズな動作はほとんど阻害されない)。
【0024】
当接突起31の面はスカート部30の面とほぼ平行になっており、このため可動接点1−1の外周辺13に位置する当接突起31の部分は、当接突起31中の最も下降した辺となり、この辺を当接部35としている。
【0025】
パターン逃げ部41は、スカート部30内の外周辺13の180°対向する位置であって、且つ隣り合う当接突起31の中間位置に配置されている。パターン逃げ部41はスカート部30の外周辺を所定の長さにわたって所定の同一幅寸法だけ凹ませることで円弧状に形成されており、また4つの角部41aは何れも円弧状に形成されており、頂点が尖った角状の角部ではない。
【0026】
また連結残り部51は、外周辺13の180°対向する位置であって、且つ前記パターン逃げ部41を形成していない側の隣り合う当接突起31の中間位置に形成されている。各連結残り部51は、水平面方向に突出する小突起であり、従って水平面から傾いているスカート部30の面との間で外周辺13において屈曲している。また連結残り部51の根元部分の両端角部の形状は何れも円弧状になっている。
【0027】
図4は可動接点1−1の製造方法説明図である。図4(a)に示すようにまず弾性金属板からなる帯状の連結体100を順送りしながら順次プレス加工していくことで、開口101内に一対の連結部111によって保持された状態の円形の可動接点板110を形成する。
【0028】
次に図4(b)に示すように可動接点板110の外周の4か所に、当接突起31をプレス加工する。
【0029】
そして図4(c)に示すように可動接点板110をプレス加工することによって可動接点板110を絞り加工し、その外周部に円錐台形状のスカート部30、その内側の中央部に上方に膨らむ略球面状のドーム部20を形成し、可動接点1−1を構成する。そして最後に、前記一対の連結部111を切断すれば、可動接点1―1が完成する。
【0030】
この製造方法のように、ドーム部20とスカート部30とを絞り加工する前に、可動接点板110に当接突起31を形成したので、当接突起31の形成が容易且つ確実に行える。
【0031】
図5は可動接点1−1を用いて構成されるスイッチ200の分解斜視図、図6はスイッチ200の図5に示すD−D線上断面図、図7はスイッチ200の図5に示すE−E線上断面図である。図5に示すようにスイッチ200は、硬質板(合成樹脂板や金属板等)からなる基台210上に、可撓性を有する合成樹脂フイルム(例えばポリエチレンテレフタレートフイルム等)上にスイッチパターン(固定接点)230を形成してなるスイッチ基板250を載置し、このスイッチパターン230上に可動接点1−1を載置し、この可動接点1−1を粘着テープ270によってスイッチ基板250上に貼り付けて構成されている。
【0032】
スイッチパターン230は、可動接点1−1の4つの当接突起31を当接する4つのパターン当接部233を有する外周接点パターン(固定接点)231と、可動接点1−1の中央に対向する位置に設けられる中央接点パターン(固定接点)235とを具備している。パターン当接部233は小円形状であり、各パターン当接部233間はこれらを直線状に連結する3本の連結パターン237によって接続されている。つまり外周接点パターン231は各パターン当接部233を頂点とする四角形状(コ字状)に形成されている。そして連結パターン237によって連結されていないパターン当接部233の間の隙間部分から中央接点パターン235に接続された引出回路パターン239が引き出されている。また2つのパターン当接部233にも引出回路パターン241が接続されている。
【0033】
つまり、スイッチ200は、スイッチ基板250の各パターン当接部233上に可動接点1−1の各当接突起31を当接した状態で、粘着テープ270によってスイッチ基板250上に貼り付けられている。このとき図6,図7に示すように、パターン当接部233に当接するのは当接突起31の辺からなる当接部35であり、パターン当接部233と当接部35は線接触する。
【0034】
上記スイッチ200において、図7に点線で示すキートップの押圧部300によって可動接点1−1の上面中央を押圧すれば、図8に示すようにそのドーム部20が反転し、ドーム部20の下面中央が中央接点パターン235に当接し、スイッチがオンする。前記押圧部300による押圧を解除すれば、ドーム部20の自動復帰力によって、ドーム部20は元の図7に示す状態に自動復帰し、スイッチはオフする。
【0035】
ところでこの可動接点1−1においては、スカート部30を設けることでドーム部20の位置を高くし、これによって可動接点1−1の押圧ストロークを長くすることができる上、さらにスカート部30に設けた当接突起31によって前記押圧ストロークをさらに長くすることができる。これによって良好で確実なスイッチ200のオンオフ及び確実なクリック感触を得ることができる。
【0036】
またこの可動接点1−1においては、反転時に反転するのはドーム部20だけであり、反転しないスカート部30の部分に当接突起31を形成したので、円形のドーム部20の反転動作を当接突起31が阻害することはなく、このため可動接点1−1の寿命の長期化が図れ、さらに円形のドーム部20だけが反転動作を行うので良好なクリック感触が得られる。
【0037】
またこの可動接点1−1においては、可動接点1−1の外周辺13の一部が当接突起31の当接部35になっているので、この当接部35を載置する外周接点パターン231のパターン当接部233とは線接触となり、当接部35と外周接点パターン231のパターン当接部233間に加わる力が線上に分散され、これによって当接部35の変形が防止されて製品寿命の長期化が図れる。また当接部35は可動接点1−1の外周辺13上にあるので、当接部35を外周辺13の内側に設ける場合に比べて可動接点1−1の外径寸法の小型化が図れる。
【0038】
またこの可動接点1−1においては、スカート部30の狭い幅寸法を使って無理のない形状への変形で、且つ長さの長い当接部35が得られる当接突起31を形成することができる。
【0039】
またこの可動接点1−1においては、この可動接点1−1を載置するスイッチ基板250に形成する固定接点である中央接点パターン235から引き出される引出回路パターン239を通過させるために設けるパターン逃げ部41をスカート部30内に形成したので、確実に引出回路パターン239(中央接点パターン235)との絶縁が図られる。またパターン逃げ部41をスカート部30内に形成したので、円形のドーム部20のスムーズで全周均一な反転動作をパターン逃げ部41が阻害することはなく、良好なクリック感触が得られ、且つ可動接点1−1の寿命の長期化が図れる。特にこのパターン逃げ部41は、各角部41aが円弧状に形成されていて頂点が尖った角状ではないので、これら角部41aに応力集中が生じることはなく、この点からも可動接点1−1の長寿命化が図れる。
【0040】
図9〜図11は本発明の第2実施形態に係る可動接点1−2を示す図であり、図9は平面図、図10は図9のF−F断面図、図11は図9のG−G断面図である。これらの図に示す可動接点1−2において、前記図1〜8図に示す実施形態にかかる可動接点1−1と同一又は相当部分には同一符号(但し添え字「−2」を付す)を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図8に示す実施形態と同じである。
【0041】
これらの図に示すように可動接点1−2においても、前記可動接点1−1と同様に、1枚の弾性を有する金属(例えばステンレス)製の円形の薄板を絞り加工することで、その外周部を円錐台形状のスカート部30−2、その内側の中央部を上方に膨らむ略球面状のドーム部20−2として構成されている。
【0042】
そしてこの可動接点1−2において前記可動接点1−1と相違する点は、連結部111(図4参照)を切断する際に、連結部111の全てとスカート部30−2の一部を切り欠き、これによって可動接点1−1に形成した連結残り部51を形成しなかった点と、スカート部30−2にパターン逃げ部41を形成しなかった点とである。連結部111を切断する際に、スカート部30−2の外周に直線状の切り欠き部37−2が形成される。切り欠き部37−2はスカート部30−2に形成されるので、円形のドーム部20のスムーズで全周均一な反転動作が切り欠き部37−2によって阻害されることはなく良好なクリック感触が得られ、且つ可動接点1−2の寿命の長期化が図れる。
【0043】
可動接点1−2をこのように構成すれば、可動接点1−1に形成したパターン逃げ部41を形成しないので、スカート部30−2自体の強度をより強くでき、可動接点1−2の小型化にさらに好適となる。可動接点1−2の場合、パターン逃げ部41を形成しないので、図5に示す中央接点パターン235から引出回路パターン239は引き出さず、その代りに中央接点パターン235にスルホールを設けてスイッチ基板250の裏面側に引き出す。もちろん、当接突起31−2によってスイッチ基板250との間に十分な隙間が取れる場合は、パターン逃げ部41がなくても、図5に示す引出回路パターン239を設けても良い。
【0044】
図12は前記図5に示すスイッチ基板250のスイッチパターン230の状態を詳細に示す平面図である。同図において中央接点パターン235は、銀ペースト(銀粉を樹脂塗料に混練してなるペースト、銀インク)をスクリーン印刷等することによって形成される第1中央接点パターン235aの上に、カーボンペースト(カーボン粉を樹脂塗料に混練してなるペースト、カーボンインク)をスクリーン印刷等することによって形成される第2中央接点パターン235bを形成して構成されている。第1中央接点パターン235aには第1引出回路パターン239aが一体に形成されている。また第2中央接点パターン235bにも第2引出回路パターン239bが一体に形成されている。つまり第1,第2中央接点パターン235a,235bによって中央接点パターン235が構成され、第1,第2引出回路パターン239a,239bによって引出回路パターン239が構成されている。第2引出回路パターン239bは、図12に一点鎖線で示す可動接点1−1の外周辺よりも外方まで引き出されている。なお記載の簡略化のため、可動接点1−1の外形にはパターン逃げ部41の形状は記載していない。
【0045】
外周接点パターン231は、銀ペーストをスクリーン印刷等することによって形成される第1外周接点パターン231aの上に、カーボンペーストをスクリーン印刷等することによって形成される第2外周接点パターン231bを形成して構成されている。第1外周接点パターン231aには第1引出回路パターン241aが一体に形成されている。つまり第1,第2外周接点パターン231a,231bによって外周接点パターン231が構成され、第1引出回路パターン241aによって引出回路パターン241が構成されている。
【0046】
そしてスイッチパターン230(外周接点パターン231)の周囲を囲んでこのスイッチパターン230の部分だけを露出するように、レジスト層243が印刷されている。つまりレジスト層243中に設けた開口部245内にスイッチパターン230が露出している。またスイッチパターン230の引出回路パターン239を引き出している部分には、中央接点パターン235に近づくようにレジスト層243が開口部245内に張り出しており、これによって少なくともこのスイッチパターン230上に設置される一点鎖線で示す可動接点1−1の外周辺の真下の引出回路パターン239上にはレジスト層243が形成されている。
【0047】
ところで上記スイッチ基板250上に可動接点1−1を載置してスイッチ200を構成した際、上述のように可動接点1−1の外周辺と交差する引出回路パターン239の部分にはその上にレジスト層243が形成されているので、可動接点1−1と引出回路パターン239とが直接接触することはない。特に本発明の可動接点1−1(1−2)の場合は、前述のように当接突起31を設けて可動接点1−1(1−2)全体をスイッチ基板250から浮かせているので、可動接点1−1(1−2)とレジスト層243との間に隙間ができ、可動接点1−1(1−2)の反転後のオン時に両者は当接しにくい。また可動接点1−1(1−2)の反転後のオン時に両者が当接する場合でも接触荷重はわずかであるため、可動接点1−1(1−2)の反転動作を継続して行っても、レジスト層243が削られて破壊されることはなく、ショート不良が生じることはない。さらに可動接点1−1においてはパターン逃げ部41を設けているので、さらに可動接点1−1とレジスト層243との間により大きな隙間ができ、上記効果がより大きくなる。
【0048】
図13は前記図12に示すスイッチ基板250のスイッチパターン230の変形例(改良例)を詳細に示す平面図である。同図において前記図12に示すスイッチパターン230と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図12に示すスイッチパターン230と同じである。
【0049】
図13に示すスイッチパターン230において前記図12に示すスイッチパターン230と相違する点は、第2引出回路パターン239bを、図13に一点鎖線で示す可動接点1−1の外周辺に至らない位置まで短く形成した点のみである。つまりこの例の場合、可動接点1−1の外周辺と交差する引出回路パターン239の部分は第1引出回路パターン239aとレジスト層243の二層になっており、図12の場合のように第1,第2引出回路パターン239a,239bとレジスト層243の三層にはなっていない。つまり図12の場合に比べて第2引出回路パターン239bの厚み分だけ薄く、このため第2引出回路パターン239bの厚み分だけ可動接点1−1の外周辺とレジスト層243間の隙間が大きくなっている。従って図12の場合に比べてさらに効果的にレジスト層243の削れを防止できる。
【0050】
図14は前記図12に示すスイッチ基板250のスイッチパターン230の別の変形例(改良例)を詳細に示す平面図である。同図において前記図12,図13に示すスイッチパターン230と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図12,図13に示すスイッチパターン230と同じである。
【0051】
図14に示すスイッチパターン230において前記図12に示すスイッチパターン230と相違する点は、スイッチ基板250として合成樹脂フイルムの代りに硬質基板を用いた点(このとき図5に示す基台210は省略しても良い)と、第1中央接点パターン235aと第1引出回路パターン239aと第1外周接点パターン231aと第1引出回路パターン241aとを金属箔(銅箔)をエッチングすることで形成した点と、エッチングで形成した第1外周接点パターン231aの各パターン当接部233となる部分の上面と第1中央接点パターン235aの上面とに界面抵抗を抑えるためにパターン当接部233,第1中央接点パターン235aからはみ出さない大きさの円形のパターン247を銀ペーストの塗布によって形成した点と、第2引出回路パターン239bを、図13の場合と同様に、可動接点1−1(図14には示さず)の外周辺に至らない位置まで短く形成した点とである。なお第2中央接点パターン235bと第2引出回路パターン239bと第2外周接点パターン231bとがカーボンペーストの塗布によって形成されている点は図12,図13の場合と同様である。
【0052】
銅箔のエッチングによって形成されるパターンは、銀ペーストの印刷によって形成されるパターンに比べてその表面粗さが均一(滑らか)になる。このためレジスト層243によって第1引出回路パターン239aの上面を確実に覆うことができる(銀ペーストの場合は表面に微細な凹凸があって粗いので、比較的レジスト層243を厚めにしないとレジスト層243による絶縁が確実でなくなる恐れがある)。同時に可動接点1−1の外周辺と交差する引出回路パターン239の部分は第1引出回路パターン239aとレジスト層243の二層であり、図12の場合に比べて第2引出回路パターン239bの厚み分だけ薄く、このため第2引出回路パターン239bの厚み分だけ可動接点1−1の外周辺とレジスト層243間の隙間が大きくなっている。さらにパターン247を設けているのでその厚み分だけ可動接点1−1とレジスト層243間の隙間がさらに大きくなっている。従ってこれらのことから図12の場合に比べてさらに効果的に可動接点1−1の外周辺と引出回路パターン239との間の絶縁を確実にすることができる。
【0053】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では当接突起31を円弧形状に形成しているが、必ずしも円弧でなくても良く、他の各種形状であっても良い。また必ずしも外周辺13をその一部にしなくても良い。要は当接突起31は、スカート部30内において、ドーム部20が突出する方向とは逆方向に突出する形状であればよい。
【0054】
またパターン逃げ部41の形状も、スカート部30内において可動接点1−1の外周辺13を切り欠くものであれば、どのような形状であっても良い。また上記スイッチ200では外周接点パターン231を四角形状(コ字状)に形成したが、円形状(C字状)に形成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1−1 可動接点
13 外周辺
20 ドーム部
30 スカート部
31 当接突起
41 パターン逃げ部
51 連結残り部
35 当接部
33 円弧
200 スイッチ
210 基台
230 スイッチパターン(固定接点)
231 外周接点パターン(固定接点)
233 パターン当接部
235 中央接点パターン(固定接点)
250 スイッチ基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する薄板を絞り加工することで外周部を円錐台形状のスカート部、その内側の中央部を上方に膨らむ略球面状のドーム部としてなる可動接点であって、
前記スカート部内の4か所に、前記ドーム部が突出する方向とは逆方向に突出する当接突起を形成したことを特徴とする可動接点。
【請求項2】
請求項1に記載の可動接点であって、
前記当接突起はその外周辺の一部が可動接点の外周辺の一部であり、この外周辺の部分を当接部としたことを特徴とする可動接点。
【請求項3】
請求項2に記載の可動接点であって、
前記当接突起は、スカート部内に円弧形状に形成されていることを特徴とする可動接点。
【請求項4】
請求項3に記載の可動接点であって、
前記スカート部内に、可動接点の外周辺を切り欠いてなるパターン逃げ部を形成したことを特徴とする可動接点。
【請求項5】
請求項1乃至4の内の何れかに記載の可動接点と、この可動接点を載置するスイッチ基板とを具備し、
前記スイッチ基板の表面には前記可動接点の各当接突起を当接するパターン当接部を有する外周接点パターンと、前記可動接点の中央に対向する位置に設けられる中央接点パターンとが形成されており、
前記外周接点パターンの各パターン当接部上に可動接点の各当接突起を載置してなることを特徴とするスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−38641(P2012−38641A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179340(P2010−179340)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】