説明

可動接点型温度ヒューズ

【課題】可動接点支持部材の押圧変動を安定化し、感温可溶体への熱伝導を円滑にして動作精度を向上する温度ヒューズを提供する。
【解決手段】中空収容部を有する絶縁ベース11と、この絶縁ベースに固定した一対の導出リード15と、前記導出リードの一端に接続した固定接点端子16および可動接点端子12と、この可動接点端子を付勢する弾性部材12aと、前記中空収容部に収納され前記弾性部材を押圧する可溶体13と、この可溶体の溶融や軟化変形などの感温変化を閉成した前記両接点に伝達するための可動接点支持部材14と、前記中空収容部の底部を閉口する伝熱体17とを具備し、前記可溶体が過熱を感知して所定の動作温度で前記可動接点端子の接点を開離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体となる絶縁ベースに、弾性部材によって付勢された可動接点端子と固定接点端子とからなる駆動要素と、両端子間を閉成する感温可溶体を含む制動要素とを具備し、温度異常を感知して弾性部材の付勢力を用いて強制的に両接点を開離する電気開閉装置に関し、特に過熱感知した可溶体の変形を利用して可動接点を作動させる温度ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定接点端子と可動接点端子とを備える絶縁ベースの接点間を、圧縮ばねの作用する可溶体の変形を感知して開放または閉止させる温度ヒューズが知られている。例えば、特許文献1には、組立コストを低減し組立サイクル時間を短縮する目的で、伝達ピンが絶縁ピンと金属スリーブの2つの部分からなり、押圧力を加えることによって一方の部分が他方の部分の中に押し込まれることにより、伝達ピンの長さを変更可能にした温度ヒューズが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1 : 特開平04−212234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開閉装置は、接点ばねを押圧する部品として伝達ピンを用いている。この伝達ピンは、絶縁ピンと、金属可溶体を収納する金属スリーブとの複数の部品から作られている。そして、組立工程で絶縁ピンを金属スリーブ内に摺動圧入し、伝達ピンの長さを調節することで、セラミックケースの焼成寸法の誤差を解消する。しかし、この構成では伝達ピン軸方向の寸法誤差は解消できても、依然としてピンの外周方向の誤差は解消されない欠点がある。その結果、絶縁ケースに形成したピン装着孔の内径がばらついたり、ピンを圧入する際に部品位置がずれたりすると、伝達ピンが軸中心より外れてしまい、圧入できる長さが短くなって接点を圧接する押圧力が変化し、内部抵抗が変動しやすいという欠点があった。また、従来の構成では、金属可溶体を収納する金属スリーブとともに絶縁ケース底部の内孔に納める必要があるため、金属スリーブの肉厚の分、絶縁ケースの内壁面との間に余分な間隙が生じ、伝達ピンが軸中心より外れやすく、位置決めしにくいという問題があった。また、伝達ピンと金属スリーブの剛体同士を組み合わせて軸沿いに伸縮させることで軸方向の寸法偏差を吸収する構成であるため、構造上、製品の高さが高くなるという問題もあった。さらに、感温可溶体の周囲が絶縁性の伝達ピンおよびセラミックケースで覆われているため、外界の熱を断熱し金属可溶体への円滑な伝熱が妨げられる短所があった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、押圧力により可動接点支持部材に変動が生じないよう可動接点支持部材の偏心を無くして感温可溶体の変形を円滑に伝達して開閉動作を安定化する温度ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の温度ヒューズは、担体となる絶縁ベースに固定した一対の導出リードと、導出リードの一端に接点を有する固定接点端子および可動接点端子と、可動接点端子に付勢力を与えて異常時に開離動作する駆動要素と、さらに平常時に駆動要素を押圧して両接点を閉成させ、異常時に感温変形して前記押圧を開放する可溶体と可動接点支持部材からなる制動要素とを備え、駆動要素と可溶体との間に可動接点支持部材を介した可動接点型温度ヒューズであって、絶縁ベースと接点支持部材との寸法偏差を低減し、同時に可溶体に効率よく熱を伝達する伝熱体を有する可動接点型温度ヒューズが提供される。具体的には、絶縁ベースに設けた中空収容部は、その収容底面が伝熱体により閉口され、収容内壁面と略整合する外径の可溶体が熱伝達体と熱的に結合して収納され、さらに可動接点支持部材を中空収容部の上部に挿着して内部の可溶体と可動接点支持部材を当接する。上記構成により、可溶体はその外径表面が絶縁ベースの中空収容部の内径壁面に直に接触でき、かつ中空収容部底部の伝熱体と熱結合することで絶縁ベース部材の外側からの熱伝導を損なうことなく、接点支持部材と中空収容部内壁との間隙を極小化して押圧軸の偏心を抑制する。
【0007】
さらに、本発明によれば、中空収容部を有する絶縁ベースと、この絶縁ベースに固定した一対の導出リードと、導出リードの一端に接続した固定接点端子および可動接点端子と、可動接点端子を付勢する弾性部材と、絶縁ベースの中空収容部に収納され弾性部材を押圧する可溶体と、この可溶体の溶融や軟化変形などの感温変化を閉成した前記両接点に伝達する可動接点支持部材と、絶縁ベース中空収容部の底部を閉口する伝熱体とを具備し、可溶体が絶縁ベースの中空収容部の内径壁面および底部の伝熱体からの熱伝導により過熱を感知して所定の動作温度で可動接点端子の接点を開離させる温度ヒューズが提供される。ここで、可溶体は外周表面を絶縁ベースの中空収容部の内壁面に可及的に近接させ、かつ中空収容部底面の伝熱体と熱的結合させたことを特徴とする。さらに伝熱体は可溶体に当接する上部鍔状部、中空収容部から絶縁ベースの外側に露出させた下部鍔状部およびこれらの両鍔状部を結合する胴部からなり、上部鍔状部の径をφ1、下部鍔状部の径をφ2、胴部の径をφ3とするとき、その寸法関係をφ2≧φ1>φ3に設定し、絶縁ベースの底部外側に下部鍔状部を固定させ、伝熱体と可溶体との熱結合効率を高めたことを特徴とする温度ヒューズを開示する。さらに、可動接点支持部材は、絶縁ピンおよびスプリング材、もしくは、絶縁ピンまたはスプリング材からなり、可溶体と可動接点端子との間に可動接点支持部材を挟んで配置したことを特徴とする温度ヒューズを開示する。なお、伝熱体は、良熱伝導性材料からなり断面形状が略エ字状を有し、上部と下部の鍔状部と、この鍔状部に挟まれた柱状の胴部を有している。伝熱体は、上部鍔状部の径をφ1、下部鍔状部の径をφ2、胴部の径をφ3として各寸法がφ2≧φ1>φ3となるように成形され、絶縁ベースの底部外側に下部鍔状部を露出させて固定される。この上部鍔状部に径φ1と略同径の外径を有する可溶体を熱結合させて、絶縁ベースの底部から外部の熱を効率よく絶縁ベース内に収容された可溶体へ伝熱できるようにし迅速な回路遮断を実現する。なお、上述する径の寸法的関係式は、面積上の対比として示されるもので、円形状に限定されるものではない。たとえば、四角形などの多角形であっても同様な関係式を有すれば効果として有効である。
【発明の効果】
【0008】
上述するように、本発明の温度ヒューズは、可動接点支持部材の寸法偏差を抑制し位置決めを容易にして接点に対する押圧力の変動を低減することで内部抵抗値を安定化でき、同時に可溶体への円滑な熱伝導を実現して熱応答性に優れた温度ヒューズを提供できる。さらに、従来必要とされていた可溶体の金属スリーブを省略することができ温度ヒューズの構成を簡素化できる。また、本発明によるとスプリング材を含む可動接点支持部材を選択でき、伸縮方向に自由度を与えて必要以上に製品の高さを増大させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る実施例の温度ヒューズ10であり、図1(A)は上面図を示し、図1(B)は正面断面図を示す。
【図2】本発明に係る実施例の温度ヒューズの動作状態を示した正面断面図である。
【図3】本発明に係る温度ヒューズの伝熱体を示し、図3(A)は絶縁ベースに鋲着する前の形状30を示す斜視図であり、図3(B)は絶縁ベースに鋲着した後の形状40を示した斜視図である。
【図4】本発明に係る実施例を変形した変形例1の温度ヒューズ50であり、図4(A)は上面図を示し、図4(B)は正面断面図を示す。
【図5】本発明に係る実施例の変形例2である温度ヒューズ60であり、図5(A)は上面図を示し、図5(B)は正面断面図を示す。
【図6】本発明に係る実施例の変形例3である温度ヒューズ70であり、図6(A)は上面図を示し、図6(B)は正面断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によると、一対の導出リード15を固定した中空収容部を有する絶縁ベース11と、前記導出リード間に接続配置し可動接点端子12および固定接点端子16と、前記中空収容部に収納された可溶体13と、前記中空収容部の底部を閉止し前記可溶体に過熱を伝達する伝熱体17とを具備し、前記可動接点端子は前記固定接点端子の固定接点と接する可動接点を有し、この可動接点を付勢する弾性部材により構成し、前記可溶体の溶融または軟化により前記可動接点を所定の動作温度で開離する可動接点型温度ヒューズが提供される。すなわち図1に示すように、担体である絶縁ベース11の一方の上方側に弾性部材12aを備えた可動接点端子12を有する駆動要素、他方の下方側に過熱感知する可溶体13とスプリング材14aおよび絶縁ピン14bからなる可動接点支持部材14とを含む制動要素を備え、可溶体13に当接する可動接点支持部材14の介在により可動接点端子12をスイッチングさせる。具体的には、中空収容部を有する絶縁ベース11の上方側に一対の導出リード15を装着し、この一対の導出リード15の一方端部が固定接点端子16、他方端部が可動接点端子12としたスイッチング駆動要素を設けると共に、絶縁ベース11の中空収容部の下方側に可溶体13と、この可溶体13に熱結合して絶縁ベース11の外側に一端を露出させた伝熱体17と、弾性部材12aの付勢力を可溶体13に伝える絶縁ピン14bないしスプリング材14aを収容した制動要素を設け、可溶体13の過熱時の軟化・溶融と弾性部材12aの付勢力により可動接点端子12を開離作動させる温度ヒューズである。ここで、可動接点端子12は先端部に可動接点18を設けた弾性部材12aと可動アーム12bからなり、正常時には、可溶体13、スプリング材14aおよび絶縁ピン14bからなる制動要素によって可動接点端子12が固定接点端子16側に押圧されることで弾性部材12aの付勢力が制動され、可動接点18と固定接点19とを接触させ閉成保持している。過熱感知した異常時には、図2に示すように、制動要素の可溶体23が軟化、溶融することによりスプリング材24aの圧縮状態が開放され、その結果、可動接点端子22の弾性部材22aの付勢力によって、可動接点28と固定接点29間の接触状態をカットオフして開離スイッチングされる。伝熱体17および27は、例えばCu、Cu合金、Al、Al合金などの良熱伝導性部材からなる鋲材であり、伝熱体の鋲着前の形状30を図3(A)に示す。伝熱体の鋲着前の当初形状30は、下部鍔状部31の略中央に柱状の胴部32を有し、断面は凸状である。この胴部32を、絶縁ベースの中空収容部の底部に設けた貫通孔に挿通して胴部32の上端を展延することによって、図3(B)に示す鋲着後の形状40のように、上部鍔状部43を形成して絶縁ベースに鋲着される。伝熱体40は鋲着により断面形状が略工字状に成形され、上部鍔状部43と、下部鍔状部41と、上下の鍔状部に挟まれた柱状の胴部42を形成して絶縁ベース中空収容部の底部を閉口する。伝熱体40は、上部鍔状部43の径をφ1、下部鍔状部41の径をφ2、胴部42の径をφ3として各寸法比がφ2≧φ1>φ3となるように成形され、図1に示すように絶縁ベース11の底部外側に下部鍔状部17aを露出させて固定される。この伝熱体17の上部鍔状部17cにφ1と略同径の可溶体13を熱結合させ、絶縁ベース11の底部から外部の熱を効率よく絶縁ベース11内の可溶体13へ伝熱できるようにして迅速な回路遮断を実現する。伝熱体17の受熱部分となる下部鍔状部17aの形状は、前記寸法比によって規定される底面の面積を確保できれば良く、円形のみならず楕円形、多角形等の形状に変形しても差し支えない。可溶体13は、略円柱状または球形のペレットであり、可溶合金や金属単体などの金属材または耐熱性の化学材料を使用でき、金属伝熱体17の上部鍔状部17cに当接させ、加圧し、組み込み寸法を合わせるとともに、その外周表面を絶縁ベース中空収容部の底部および内壁面と熱結合させる。そして、スプリング材14aの介在により、可動接点端子12の弾性部材12aとの弾性的結合状態の調整を含めた改善効果を得る。さらに、図4ないし図6の各変形例に示されるように、絶縁ピンとスプリング材からなる可動接点支持部材は、絶縁ピンのみ有する構成またはスプリング材のみを有する構成に変更してもよい。
【0011】
本発明の温度ヒューズ10は、図1に示すように、略中央部に中空収容部を形成したセラミックス製絶縁ベース11と、中空収容部の底部に設けた金属伝熱体17と、この金属伝熱体17と熱結合させた金属可溶体13と、絶縁ベース11に固定具80で鋲着した一対のNiめっき銅材製の導出リード15とを備える。金属伝熱体17は、Al製金属材からなり、上部鍔状部17cの径をφ1、下部鍔状部17aの径をφ2、胴部17bの径をφ3として各寸法がφ2≧φ1>φ3となるように成形され絶縁ベース11の底部外側に下部鍔状部17aを露出させて固定される。この金属伝熱体17に外径が略φ1に等しい金属可溶体13を熱結合させ、絶縁ベース11の底部から外部の熱を効率よく絶縁ベース11の中空収容部内に収容された金属可溶体13へ伝熱できるようにして迅速な回路遮断を実現する。さらに、一端に可動接点18または固定接点19を設けた可動接点端子12と固定接点端子16とを導出リード15に接続して、可動接点端子12には、可動接点18と固定接点19とを開離させる金属板ばね材から作られた弾性部材12aを有し、中空収容部に金属可溶体13を挿入する。この金属可溶体13の上面にスプリング材として金属コイルばね14aを接置して、さらに金属コイルばね14a上部にセラミックス製絶縁ピン14bを被せ、金属コイルばね14aと可動接点端子12との間に絶縁ピン14bを挟み、絶縁ピン14bを可動接点端子16に当接する。金属コイルばね14aは、弾性部材12aより強い付勢力を有するので、平常時は金属コイルばね14aの蓄勢によって接点18と接点19とを閉成させることができる。温度異常時には図2に示すように、金属コイルばね24aを押圧している金属可溶体23が、所定の動作温度に達すると溶融し、金属コイルばね24aの蓄勢が消失し、弾性部材22aの付勢力により可動アーム22bを動かし、可動接点28と固定接点29を開離して電気回路を遮断する。実施例の温度ヒューズ10は、金属コイルばね14bの介在により、金属板ばね材12aとの弾性的結合状態の調整を含めた改善効果を得る。可動接点端子12の可動アーム12bは、全体を一体の弾性部材で形成することもでき、可動アーム12b自体に弾性部材12aの付勢機能を具備させて使用する部品数を削減してもよい。可動接点端子12に設けた可動接点18および固定接点端子16に設けた固定接点19は、チップ状接点を溶接して用いるほか、何れか一方または両方ともめっき層からなるめっき接点を用いてもよい。また、絶縁ベース11は、耐熱性の絶縁材であればよく、セラミックス材のほか、例えば液晶ポリマー(LCP)などの耐熱プラスチック材で構成しても差し支えない。
【0012】
さらに、本発明の温度ヒューズ50は、図4に示すように、略中央部に中空収容部を形成したセラミックス製絶縁ベース51と、中空収容部の底部に設けた金属伝熱体57と、この金属伝熱体57と熱結合させた金属可溶体53と、絶縁ベース51に固定具80で鋲着した一対のNiめっき銅製の導出リード55を備える。金属伝熱体57は、Al−Cu合金製金属材からなり、上部鍔状部57cの径をφ1、下部鍔状部57aの径をφ2、胴部57bの径をφ3として各寸法がφ2≧φ1>φ3となるように成形され絶縁ケースの底部外側に下部鍔状部57aを露出させて固定される。この金属伝熱体57に外径が略φ1に等しい金属可溶体53を熱結合させ、絶縁ベース51の底部から外部の熱を効率よく絶縁ベース51内に収容された金属可溶体53へ伝熱できるようにして迅速な回路遮断を実現する。さらに、一端に可動接点58または固定接点59を設けた可動接点端子52と固定接点端子56を導出リード55に接続して、可動接点端子52には可動接点58と固定接点59とを開離させる金属板ばねから作られる弾性部材52aを有し、絶縁ベース51の中空収容部に金属可溶体53を挿入して、金属可溶体53と可動接点端子52との間にセラミックス製絶縁ピン54を挟んで、金属可溶体53を絶縁ピン54で直に押圧するとともに、絶縁ピン54を可動接点端子52に当接して、可動接点端子52に設けた可動接点58と固定接点端子56に設けた固定接点59とを閉成する。温度異常時には、絶縁ピン54の押圧している金属可溶体53が軟化・溶融することで、弾性部材52aの付勢力によって可動接点端子52を動かし、可動接点58と固定接点59を開離して電気回路を遮断する。また、可動接点端子52の可動アーム52bは、それ自体一体の弾性部材で形成することもでき可動アーム52bに弾性部材52aの付勢機能を具備して使用する部品数を削減してもよい。絶縁ベース51および絶縁ピン54は、耐熱性の絶縁材であればよく、セラミックス材のほか、例えばLCPなどの耐熱プラスチック材で構成しても差し支えない。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例である温度ヒューズ10は、図1に示すように、略中央部に中空収容部を形成したセラミックス製絶縁ベース11と、中空収容部の底部に設けた金属伝熱体17と、この金属伝熱体17と熱結合させた金属可溶体13と、絶縁ベース11に固定具80で鋲着した一対のNiめっき銅材製の導出リード15とを備える。金属伝熱体17は、Al製金属材からなり、上部鍔状部17cの径φ1を2.0mm、下部鍔状部17aの径φ2を3.0mm、胴部17bの径φ3を1.5mmとして各寸法がφ2≧φ1>φ3となるように成形され絶縁ベース11の底部外側に下部鍔状部17aを露出させて固定される。この金属伝熱体17に外径が2mmの金属可溶体13を熱結合させ、絶縁ベース11の底部から外部の熱を効率よく絶縁ベース11の中空収容部内に収容された金属可溶体13へ伝熱できるようにして迅速な回路遮断を実現する。さらに、一端に可動接点18または固定接点19を設けた可動接点端子12と固定接点端子16とを導出リード15に接続して、可動接点端子12には、可動接点18と固定接点19とを開離させる金属板ばね材から作られた弾性部材12aを有し、中空収容部に金属可溶体13を挿入する。この金属可溶体13の上面にスプリング材として金属コイルばね14aを接置して、さらに金属コイルばね14a上部にセラミックス製絶縁ピン14bを被せ、金属コイルばね14aと可動接点端子12との間に絶縁ピン14bを挟み、絶縁ピン14bを可動接点端子16に当接する。金属コイルばね14aは、弾性部材12aより強い付勢力を有するので、平常時は金属コイルばね14aの蓄勢によって接点18と接点19とを閉成させることができる。温度異常時には図2に示すように、金属コイルばね24aを押圧している金属可溶体23が、所定の動作温度で溶融し、金属コイルばね24aの蓄勢が消失し、弾性部材22aの付勢力により可動アーム22bを動かし、可動接点28と固定接点29を開離して電気回路を遮断する。実施例の温度ヒューズ10は、金属コイルばね14bの介在により、金属板ばね材12aとの弾性的結合状態の調整を含めた改善効果を得る。
【0014】
実施例の変形例1である温度ヒューズ50は、図4に示すように、略中央部に中空収容部を形成したセラミックス製絶縁ベース51と、中空収容部の底部に設けた金属伝熱体57と、この金属伝熱体57と熱結合させた金属可溶体53と、絶縁ベース51に固定具80で鋲着した一対のNiめっき銅製の導出リード55を備える。金属伝熱体57は、Al−Cu合金製金属材からなり、上部鍔状部57cの径φ1を2.0mm、下部鍔状部57aの径φ2を6.0mm、胴部57bの径φ3を1.5mmとして各寸法がφ2≧φ1>φ3となるように成形され絶縁ケースの底部外側に下部鍔状部57aを露出させて固定される。変形例1はφ2を6.0mmと前記実施例より広い面積とし熱応答性をさらに良くしている。この金属伝熱体57に外径が2mmの金属可溶体53を熱結合させ、絶縁ベース51の底部から外部の熱を効率よく絶縁ベース51内に収容された金属可溶体53へ伝熱できるようにして迅速な回路遮断を実現する。さらに、一端に可動接点58または固定接点59を設けた可動接点端子52と固定接点端子56を導出リード55に接続して、可動接点端子52には可動接点58と固定接点59とを開離させる金属板ばねから作られる弾性部材52aを有し、絶縁ベース51の中空収容部に金属可溶体53を挿入して、金属可溶体53と可動接点端子52との間にセラミックス製絶縁ピン54を挟んで、金属可溶体53を絶縁ピン54で直に押圧するとともに、絶縁ピン54を可動接点端子52に当接して、可動接点端子52に設けた可動接点58と固定接点端子56に設けた固定接点59とを閉成する。温度異常時には、絶縁ピン54の押圧している金属可溶体53が軟化・溶融することで、弾性部材52aの付勢力によって可動接点端子52を動かし、可動接点58と固定接点59を開離して電気回路を遮断する。
【0015】
別の変形例2として図5に示す温度ヒューズ60は、自体弾性を有する可動接点端子62を用い、さらに金属可溶体63の上に直接コイルばね64を乗せて可動接点68を押圧する構造とすることで、構成部品数を削減しながら、接点支持部材にコイルばね64を用いて伸縮方向に自由度を与え、かつ必要以上に製品の高さが増大することを防止できる。前記実施例と共通する他の部分については、実施例と同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0016】
さらに変形例3として、図6に示す温度ヒューズ70は、自体弾性を有する可動接点端子72を用い、さらに前記温度ヒューズ60のコイルばね64の代わりにセラミックス製絶縁ピン74を配置し、金属可溶体73の上に直接絶縁ピン74を乗せて可動接点78を支持する構造としたもので構成部品数を削減しコスト低減に寄与する。前記実施例と共通する他の部分については、実施例と同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、低い内部抵抗を維持しながら大電流を通電でき、動作信頼性を長期間損なうことがない温度ヒューズに利用できる。特に二次電池や電気器具、電気機械の保護素子として利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
10,50,60,70・・・可動接点型温度ヒューズ、
30・・・鋲着前の伝熱体形状、 40・・・鋲着後の伝熱体形状、
17,27,57・・・伝熱体、 17a,31,41,57a・・・下部鍔状部、
17b,32,42,57b・・・胴部、 17c,43,57c・・・上部鍔状部、
11,51・・・絶縁ベース、 12,22,52,62,72・・・可動接点端子、
13,53,63,73・・・可溶体、 23・・・溶融した可溶体、
14,24,54,64,74・・・可動接点支持部材(絶縁ピンまたはコイルばね)
15,55・・・導出リード、 16,26,56・・・固定接点端子、
12a,22a,52a・・・弾性部材(板ばね)、
18,28,58,68,78・・・可動接点、 19,29,59・・・固定接点、
12b,22b,52b・・・可動アーム、 80・・・固定具。
φ1・・・上部鍔状部直径、 φ2・・・下部鍔状部直径、 φ3・・・胴部直径。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空収容部を有する絶縁ベースと、この絶縁ベースに固定した一対の導出リードと、前記導出リードの一端に接続した固定接点端子および可動接点端子と、この可動接点端子を付勢する弾性部材と、前記中空収容部に収納され前記弾性部材を押圧する可溶体と、この可溶体の溶融や軟化変形などの感温変化を閉成した前記両接点に伝達するための可動接点支持部材と、前記中空収容部の底部を閉口する伝熱体とを具備し、前記可溶体が過熱を感知して所定の動作温度で前記可動接点端子の接点を開離させる可動接点型温度ヒューズ。
【請求項2】
前記可動接点支持部材は絶縁ピンまたはスプリング材の何れかを含み、前記可溶体と前記可動接点端子との間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の可動接点型温度ヒューズ。
【請求項3】
前記可溶体はその外周面を前記中空収容部の内壁面に可及的に近接させ、かつ前記中空収容部の底面に備える前記伝熱体と熱的結合させたことを特徴とする請求項1に記載の温度ヒューズ。
【請求項4】
前記可溶体は、略円柱状または球形のペレットであり、前記伝熱体の上部鍔状部に当接させ、加圧し、組み込み寸法を合わせるとともに、その外周表面を前記絶縁ベース中空収容部の底部および内壁面と熱結合させたことを特徴とする請求項3に記載の可動接点型温度ヒューズ。
【請求項5】
前記伝熱体は前記可溶体に当接する上部鍔状部、前記中空収容部から前記絶縁ベースの外側に露出させた下部鍔状部およびこれらの両鍔状部を結合する胴部からなり、前記上部鍔状部の径をφ1、前記下部鍔状部の径をφ2、前記胴部の径をφ3とするとき、その寸法関係をφ2≧φ1>φ3に設定し、前記絶縁ベースの底部外側に前記下部鍔状部を固定させ、前記伝熱体と前記可溶体との熱結合効率を高めたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の可動接点型温度ヒューズ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−77411(P2013−77411A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215799(P2011−215799)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(300078431)エヌイーシー ショット コンポーネンツ株式会社 (75)
【Fターム(参考)】