可同調薄膜フィルタ
光フィルタであって、第1の複数および第2の複数の交互の第1および第2の材料層を含み、第1の複数の層は、入射光に対して第1の角度であり、カットオンエッジを有し、第2の複数の層は、入射光およびカットオフエッジに対して第2の角度であり、約0〜40度の任意の第1および第2の角度の場合、カットオンエッジでの第1の複数の層の偏光分離およびカットオフエッジでの第2の複数の層の偏光分離は、約1パーセントを超えず、第2の複数の層のS阻止帯域の波長は、ほぼカットオンエッジの波長以下であり、カットオンエッジの波長は、カットオフエッジの波長未満であり、カットオフエッジの波長は、ほぼ第1の複数の層のS阻止帯域の波長以下である、光フィルタを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可同調光フィルタに関する材料、構成要素、および方法に関し、そのような可同調光フィルタを使用するシステムおよびそのようなフィルタを作製する方法を含む。本出願は、2010年1月8日に出願された米国特許出願第12/684,871号に対する優先権を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
光学システムにおいて、単一波長(もしくは限定された範囲の波長)を分離すること、またはシステムに衝突するかもしくはシステムを透過する光の波長特性を測定することが有用であることが多い。光学エッジフィルタ、ノッチフィルタ、および/またはレーザラインフィルタ(LLF)等の薄膜干渉フィルタは、そのようなシステムにおいて単一のもしくは限定された範囲の波長を分離するため、または不必要な光を遮断するために有利に使用することができる。薄膜干渉フィルタに関する多くの使用法が知られている。例えば、米国特許第7,068,430号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)は、蛍光分光法および他の定量化技術におけるそのようなフィルタの使用について考察している。
【0003】
一般に、薄膜干渉フィルタは、異なる屈折率を有する材料間の境界における入射波および反射波の間で生じる干渉効果の結果として波長選択的である。従来、干渉フィルタは、異なる屈折率を有する2つ以上の誘電材料からなる複数の交互の層から構成される誘電スタックを含む。さらに、従来の薄膜干渉フィルタでは、フィルタスタックのそれぞれの層の各々は非常に薄く、例えば、光の約1/4波長程度の光学的厚さ(物理的厚さ×層の屈折率)を有する。これらの層は、バンドパスフィルタまたは帯域除去フィルタの特性を1つ以上提供するように、1つ以上の基板(例えばガラス基板)に種々の構成で被着することができる。さらに、反射された帯域を再度方向付けることによって、フィルタが波長の2つの帯域を分離できるように、波長の少なくとも1つの帯域を実質的に反射し、第1の帯域にすぐ隣接する波長の少なくとも第2の帯域を実質的に透過するフィルタの場合、結果として得られるフィルタは、従来、「ダイクロイックビームスプリッタ」または単に「ダイクロイック」フィルタと称される。
【0004】
本明細書で使用される場合、ある波長の、またはある波長の範囲にわたるフィルタの「遮断率」は、典型的には光学密度(「OD」、OD=−log10(T)、Tは、特定の波長でのフィルタの透過率)で測定される。特定の波長でまたはある波長の範囲にわたって高いOD値に達する従来のフィルタが、任意の他の波長でまたは他の波長の範囲にわたって、必ずしも高い透過率(例えば、50%を超える)に達するわけではない。高いODは、通常、基本的な「阻止帯域」の波長領域において示され、後にさらに考察するように、そのような阻止帯域は、それらに関連して、他の波長領域で生じるより高次の阻止帯域領域を有する。
【0005】
エッジフィルタは、本明細書で使用される場合、画定されたエッジを有する透過スペクトルを示すように構成され、選択された「遷移」波長λTよりも高いか、または代替としてそれよりも低い波長を有する不必要な光が遮断され、望ましい光がλTの反対側で透過される。また、本明細書で使用される場合、エッジフィルタは、透過特性が「遮断」から「透過」にまたはその逆に遷移する波長域が、「遮断」および「透過」特性が示される波長域よりも実質的に小さくなる(すなわち、少なくとも1等級小さく、通常は2等級以上小さい)ように構成される。λTよりも長い光波長を透過するエッジフィルタは、ロングパス(LWP)フィルタと称され、λTよりも短い波長を透過するエッジフィルタは、ショートパス(SWP)フィルタと称される。
【0006】
米国特許出願第12/129,534号(その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)は、理想的なLWPおよびSWPフィルタのそれぞれのスペクトル透過特性に関する考察を含む。例えば、理想的なLWPフィルタは、λTより低い波長の光を完全に遮断し、λTより高い波長を完全に透過する。反対に、理想的なSWPフィルタは、λTより低い波長の光を完全に透過し、λTより高い波長の光を完全に遮断する。
【0007】
エッジ急峻度および透過光の相対的な量は、多くのフィルタ用途において重要なパラメータとなり得る。上記のように、理想的なエッジフィルタは、波長λTの透過率対波長のプロットにおいて垂直線によって表される正確な波長端を有すると考えることができる。つまり、理想的なフィルタは、λTで0の「エッジ急峻度」(すなわち、透過特性が「遮断」から「透過」にまたはその逆に遷移する際の波長の変化)を有する。しかしながら、実際のエッジフィルタは、小さいがゼロではない波長の範囲にわたって遮断から透過に変化し、増加するエッジ急峻度の値は、徐々に傾斜が緩くなるエッジを反映している。したがって、実際のエッジフィルタの遷移は、λT付近で垂直ではないが傾斜の大きい線によってより正確に表される。同様に、理想的なエッジフィルタは、透過領域内の入射光を全て透過すると考えられ得るが(透過率T=1)、実際のエッジフィルタは、常に目的の透過領域内の光(T<1)の一部を遮断しており、ある程度の量の透過損失を有する。その結果として、実際のエッジフィルタのエッジ急峻度は、それが画定される透過率の範囲に依存すると考えることができる。
【0008】
光フィルタリングによる波長選択から恩恵を受けるシステムは、フィルタ通過帯域領域における高い透過率、傾斜の大きなスペクトルエッジ、および望ましくない波長の高い帯域外遮断率を示す光フィルタから恩恵を受けると予測することができる。したがって、100%に近い透過率を提供することが可能な薄膜光フィルタは、傾斜の大きなスペクトルエッジを呈し(エッジ波長1%未満で、高透過率から6またはそれより高い光学密度の遮断への遷移)、広いスペクトル領域にわたって6またはそれより高い光学密度の遮断を示し、そのようなシステムにとって有益であると考えることができる。
【0009】
しかしながら、各薄膜フィルタが、従来、限定された波長領域にわたって使用可能な特定のスペクトル機能を有することから、薄膜フィルタはまた、従来「固定」フィルタであると見なされている。所与のスペクトル機能を有する第1の薄膜フィルタを用いる従来のシステムが、異なるスペクトル機能を必要とし得る限り、そのようなシステムは、第1の薄膜フィルタを必要なスペクトル機能を示す異なるフィルタと交換するための手段を必要とするであろう。フィルタホイールの使用等のフィルタ交換を行うための機械的手段が知られているが、これらは従来、大規模で、比較的時間がかかり(すなわち、最短交換時間が従来50〜100msである)、限定された数のフィルタしか許容しない(例えば、従来のホイールは、そのような固定フィルタの場合4〜12個のスロットを含む)。よって、薄膜フィルタの使用からおよび可変または動的なスペクトル特性の可用性からも恩恵を受ける従来のフィルタシステムは、上記のサイズ、速度、およびフィルタリング機能柔軟性の特徴の結果として限定的な用途を有する。
【0010】
従来、波長または波長域に関連するスペクトル機能を、比較的高い速度の異なる波長または波長域に変更することが望ましい場合、回折格子が使用されてきた。回折格子は、ある範囲内の任意の波長を選択することを可能にし、格子の回転のみを必要とするため、波長の変化に比較的迅速に対応することができる。よって、格子は、ほとんどの走査スペクトル測定システムの基本である。しかしながら、格子は、あまり良好なスペクトルの識別を提供しない。例えば、従来、スペクトルエッジの傾斜は大きくなく、従来、帯域外遮断は不良である。その上、これらの欠陥のうちのいくつかに対応するために、複数の回折格子分光器を一緒に連結することは、帯域外遮断の不良を完全には緩和しない傾向があり、全体的な透過率を減少させ、さらには機器を非常に大規模にする。格子に基づくシステムはまた、従来、フィルタの帯域幅にわたって限定的な制御を示す。すなわち、(通常、機械的スリットの幅を調節することによって)帯域幅は調節することができるが、帯域幅が増加するにつれてエッジの傾斜が増加する。さらに、格子に基づくシステムでは、従来、波長に依存する様式で光線を拡散するために少なくとも1つの空間次元が必要とされるため、従来の回折格子を用いて2次元画像ビームを直接(1回ごとに)測定することは不可能である。例えば、いわゆる「画像格子分光器」は、スペクトル情報のために第2の次元が保存された1次元空間画像を提供する。第2の空間次元が画像ビームで表される限り、またそれが静的である限り、回折格子が第2の利用可能な次元をサンプリングするためにかかる時間の関数として別個に取得されてもよい。
【0011】
可変スペクトル機能性を示すように設計された他の従来型フィルタシステムとして、角度同調フィルタ、液晶同調フィルタ、音響光学同調フィルタ、および線形可変同調フィルタが挙げられる。各々について以下に考察する。
【0012】
角度同調薄膜フィルタに関して、フィルタ上の入射角(AOI)が0度(法線入射)からより大きな角度に増加されると、薄膜フィルタのスペクトルがより短い波長にシフトすることが分かっている(Optical Waves in Layered Media,Pochi Yeh,Wiley,New York,1988,Section 7.6を参照)。このシフトは、一般に、方程式
【数1】
によって説明され、式中、θはAOIであり、neffは「有効屈折率」であり、それは通常、フィルタ設計ならびに偏光の2つの直交状態(すなわち、「S」および「P」)に依存する。この効果は、限定された範囲の波長にわたって光フィルタのスペクトルを同調させるために使用することができる。しかしながら、従来、より大きな角度ではフィルタのスペクトルが歪み、S偏光された光とP偏光された光では波長のシフトが著しく異なり得るため、より大きな角度では強い偏光依存性がもたらされる。
【0013】
一例として、図1は、561nmで狭い通過帯域(約2nm)を提供するように構成された例示的な多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタの算出したスペクトルを示す。曲線101および102は、AOI60度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線111および112は、AOI45度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線121および122は、AOI30度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線130は、AOI0度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルである。図1に示されるように、AOIが0度から60度に増加するにつれて、通過帯域が、S偏光ではより狭くなり、P偏光ではより広くなる。また、透過曲線のピークは、S偏光透過光よりもP偏光透過光で、AOIの関数としてより大きな波長シフトを示す。結果として、従来の薄膜フィルタは、より高いAOIで強い偏光依存性を示す。単なる例として、この例示的なフィルタが561nmでAOI0度から離調することができる従来の使用可能な範囲の波長(つまり、スペクトルに過度の歪みが発生する前)は、約10〜15nmの波長であるか、または約2〜3%の開始波長である。
【0014】
図1の例示的な薄膜フィルタに従った従来の角度同調薄膜フィルタは、光ファイバ通信の試験および測定、ならびに1550nm付近で動作するように構成されたシステムアプリケーションのための数多くの商業用デバイスおよび機器において使用される。これらの例示的デバイスのための従来の同調範囲は、1550nm付近で約30〜40nmであり、これは開始波長の約2〜2.5%に相当する。また、米国特許第5,481,402号、第5,781,332号、および第5,781,341号明細書も、光ファイバに連結されたコリメート光の近くに配置され、角度同調特性を達成するように回転させられる1550nm付近の通過帯域を有する多空洞ファブリ・ペロー薄膜バンドパスフィルタの使用を含む、光ファイバ/通信用途のための角度同調薄膜フィルタについて開示している。
【0015】
正確なレーザラインまたは光ファイバ通信に依存しない用途の場合、より広い通過帯域が典型的には望ましい。単なる例として、図2は、半値全幅(FWHM)で約20nmの通過帯域を示すように構成される例示的な多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタに関連する算出したスペクトルを示す。曲線201および202は、AOI60度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線211および212は、AOI45度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線221および222は、AOI30度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線230は、AOI0度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルである。図2の例示的な薄膜フィルタによって示される挙動は、図1のフィルタの挙動に類似する。例えば、通過帯域波長は、より高いAOIでより短い波長にシフトする。その上、通過帯域領域にわたる透過特性は、より高いAOIで徐々に歪む(すなわち、より大きな範囲の可変性を示す)。さらに、AOIが増加するにつれて、通過帯域領域(阻止帯域エッジによって確定される)が、S偏光ではより狭くなり、P偏光ではより広くなる。さらに、通過帯域は、S偏光された光よりもP偏光された光で、AOIの関数としてより大きな波長シフトを示す。これらの特性の全てが、従来、より高いAOIで徐々に歪んだスペクトルをもたらし、したがって、そのような従来のフィルタの有用な同調範囲を減少させる。
【0016】
多くの蛍光撮像および定量化の用途は、図2の例示的な薄膜フィルタよりもさらに広い通過帯域を有するフィルタから恩恵を受けることができる。例えば、そのような用途は、(可視波長で)幅30〜50nm以上の通過帯域から恩恵を受けることができる。そのような広い通過帯域を有するフィルタ、特にインコヒーレント光に関与する用途では、従来のフィルタは、(米国特許第6,809,859号および第7,411,679B2号明細書に開示されるような)ロングパスフィルタとショートパスエッジフィルタの組み合わせから形成されてもよい。そのようなエッジフィルタは、高屈折率および低屈折率薄膜層の約1/4波長スタックからもたらされる「阻止帯域」のスペクトル領域のエッジから形成される。しかしながら、そのようなエッジフィルタの組み合わせに伴う1つの制約は、従来のエッジフィルタは、ゼロ以外の入射角で操作された場合に偏光分離を示すということである。
【0017】
単なる例として、図3は、ロングパスおよびショートパスフィルタのコーティング(FWHM約35nm)の組み合わせに関連する算出したスペクトルを示す。曲線301および302(これらのうちの後者は、本質的に横座標と同一平面である)は、AOI60度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線311および312は、AOI45度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線321および322は、AOI30度に関連する算出したpおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線330は、AOI0度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルである。図3に関連するエッジフィルタの例示的な組み合わせは、図2の例示的な多空洞ファブリ・ペロー型フィルタと定性的に同様の挙動を示すが、AOIが法線入射から増加されるにつれて、著しくさらに歪んだスペクトルが存在する。具体的には、通過帯域リップルは、フィルタをP偏光に使用不可能とし、S偏光の通過帯域は、AOI60の光の場合に本質的に排除されるまで減衰する。結果として、図3に関連するエッジフィルタの例示的な組み合わせの有用な角度同調範囲は、このフィルタの場合は約10度〜15度のみであり、約0.5%〜1%の波長同調範囲をもたらす。
【0018】
より一般的には、従来の干渉フィルタのAOIを法線角度から増加させることにより、通常、フィルタのスペクトルに二通りの影響が与えられる。まず、フィルタのスペクトル特性が、より短い波長へとシフトされる。次に、フィルタの角度が法線角度からさらに増加されると、フィルタの複合スペクトルが次第に2つの明確なスペクトルを示す:一方はS偏光された光のスペクトルであり、もう一方はP偏光された光のスペクトルである。本明細書で使用される場合、所与の点におけるS偏光スペクトルとP偏光スペクトルの間の相対的な差は、「偏光分離」と称される。
【0019】
この効果を示すために、中心波長500nmでSiO2およびTa2O5に基づく約1/4波長スタックのAOIの関数としての偏光分離のプロットである図4Aおよび4Bを参照する。図4Aのプロット中、S偏光およびP偏光の光に関連する阻止帯域の帯域幅が示されており、該帯域幅は、いわゆる「G空間」で測定されている。パラメータg=λ0/λは、波長に反比例し、したがって光の周波数に正比例し、各々がλ0/4n(Nは各層の屈折率)に等しい厚さの薄膜層のスタックに関連する基本的な阻止帯域の中心の波長λ0では1に等しい。したがって、G空間における帯域幅は、λ0/λSとλ0/λLの差に等しい(λSおよびλLは、それぞれ阻止帯域の短波長端および長波長端である)。よって、G空間における偏光分離は、単純に、S偏光された光およびP偏光された光のG空間における帯域幅の差の半分である。図4Bに示されるように、スタックは、AOI45度で操作された場合、約0.04g数の偏光分離を示す。AOIを60度に増加させることによって、ほぼ0.07g数の偏光分離がもたらされる。AOIを20度に減少することによって、0.01g数未満の偏光分離がもたらされる。
【0020】
単なる例として、従来のダイクロイック光フィルタは、特に約45度のAOIで操作された場合に、実質的な偏光分離を示す。この偏光分離は、ダイクロイックフィルタの特定の構造から生じる。前途のように、従来のダイクロイックフィルタは、通常、異なる屈折率を有する薄い材料の層を交互に重ねることによって構成される。各層の屈折率が隣接する層の屈折率と異なることに加えて、各個別層の有効屈折率が、異なる光の偏光に関連して異なる。つまり、P偏光された光とS偏光された光とでは、層の有効屈折率が異なるということである。結果として、S偏光およびP偏光された光は、ダイクロイックフィルタの各層を通過する時に異なる度数にシフトする。このシフトにおける差が、これらの異なる偏光に応じて最終的にフィルタのスペクトルをオフセットし、偏光分離をもたらす。
【0021】
従来のダイクロイックフィルタが、角度を合わせた1/4波長スタックの一次阻止帯域に基づく場合、フィルタの阻止帯域の帯域幅間の偏光分離を推定することは比較的簡単である。つまり、ダイクロイックフィルタが、それぞれ、
【数2】
および
【数3】
の屈折率を有する2つの材料で構成されると仮定すると、入射角45度の有効屈折率は以下のように算出することができる:
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
式中、
AOIは、入射媒体であると仮定される空気中の入射角である。
【数8】
および
【数9】
は、それぞれ、P偏光された光およびS偏光された光に対するダイクロイックスタックの低屈折率材料の有効屈折率である。
【数10】
および
【数11】
は、それぞれ、P偏光された光およびS偏光された光に対するダイクロイックスタックの高屈折率材料の有効屈折率である。
【数12】
および
【数13】
は、それぞれ、2つの材料に関連する高屈折率および低屈折率の二乗であり、偏光とは独立している。
【0022】
次に、2つの偏光における一次阻止帯域の帯域幅および偏光分離は、以下のように算出することができる:
【数14】
【数15】
【数16】
式中、
【数17】
および
【数18】
は、それぞれ、G空間におけるS偏光された光およびP偏光された光における一次(基本的な)阻止帯域の帯域幅である。
PSgは、G空間における一次阻止帯域の偏光分離である。
代替として、偏光分離は、波長の観点から表されてもよい。例えば、
【数19】
であり、式中、
PSλは、基本的な阻止帯域の長波長端の偏光分離である(エッジはロングパスフィルタに関連する)。
この値は、S偏光およびP偏光に関連するエッジの平均波長に対するその比率を百分率として表すことにより、無次元値として表されることが多い。
【0023】
偏光分離は、画定された波長帯域にわたって、P偏光およびS偏光のそれぞれで高い透過率および遮断率が達成される偏光フィルタを設計するために用いられてきた。しかしながら、エッジフィルタおよびビームスプリッタの光フィルタにおいて、偏光分離は、平均的な偏光を有する光のエッジ急峻度を大幅に制限する。そのようなエッジフィルタの組み合わせを用いると開示されるシステムは、米国特許第3,864,037,5,591,981号および第5,852,498号明細書に記載されている。
【0024】
米国特許第4,373,782号および第5,926,317号明細書は、角度同調薄膜エッジフィルタの組み合わせに見られる従来のスペクトルの歪みを最小限に抑えるためのアプローチを開示している。例えば、米国特許第4,373,782号および第5,926,317号明細書は、特定のゼロ以外のAOIでのS偏光およびP偏光の通過帯域のスペクトルの配置をある程度制御することを可能にするための、複数層を有する多空洞ファブリ・ペロー型バンドパスフィルタの使用を開示している。特定のAOI(例えば45度)では、そのエッジがより広いP偏光通過帯域の対応するエッジと並ぶことによって、ロングパスエッジまたはショートパスエッジのいずれかと関連する偏光分離をほぼ排除するように、より狭いS偏光の通過帯域を配置することが可能である。しかしながら、2つの偏光の通過帯域の帯域幅の著しい相違および多空洞ファブリ・ペロー型フィルタの通過帯域の帯域幅とエッジ急峻度の相関性のために、2つのエッジは、従来、著しく異なるエッジ急峻度を有する。さらに、阻止帯域領域内のファブリ・ペロー通過帯域の形成のために、エッジフィルタ用途向けの通過帯域幅は、従来、非常に限定されている。
【0025】
Thelenによって提唱される偏光分離を最小限に抑えるためのさらなる方法において(A.Thelen,Design of Optical Interference Coatings,McGraw Hill,1989を参照)、該方法は、S偏光された光およびP偏光された光のスペクトラムエッジを整合させるために、多空洞ファブリ・ペローバンドパスフィルタのチューニングスペーサを用いる。しかしながら、この方法は、ダイクロイックフィルタを作製するために使用される場合に重要な制約を有する。特に、この方法において、最初の層構造は、関連する阻止帯域を画定するために使用される基準波長の複数の半波長に等しい光学的厚さを有するスペーサ層を伴う多空洞ファブリ・ペローバンドパスフィルタの最初の層構造である。また、結果として生じるダイクロイックのエッジは、関連する阻止帯域の本質的に中心になければいけない。阻止帯域の帯域幅を減少させることにより、それに付随して偏光分離の減少をもたらすことができることが分かっている。二次阻止帯域を有するフィルタの場合、阻止帯域の帯域幅は、フィルタを構成する誘電スタックにおける材料の不一致に比例し(この場合の「不一致」とは、層の厚さが波長の1/4から変動することを指す)、高屈折率層および低屈折率層の各対の厚さの合計を波長の約半分に等しく維持する。不一致の程度が高いほど偏光分離の程度が高く、またその逆も同様である。よって、異なる(例えばより高次の)阻止帯域を用いることおよびダイクロイックフィルタを構成する誘電スタックにおける材料の不一致を調節することによって、偏光分離を最小限に抑えることができることが分かっている。
【0026】
しかしながら、この方法は有効であるものの、わずかな不一致が、常に狭い遮断領域およびより低い遮断レベルを有するフィルタをもたらすため、許容されないことが多い。遮断領域の強化を達成することは可能であるが、誘電スタックにおける層の数を増加させることによってのみである。その結果、二次阻止帯域に基づく従来のダイクロイックフィルタの性能は、典型的には製造工程によって許容される最大コーティング厚さにより制限される。
【0027】
より高次の阻止帯域は、高度な遮断が生じる波長よりも短い波長で高い透過率を達成することが困難である1つの理由である。阻止帯域は、薄膜干渉フィルタに見られるように、屈折率の周期的またはほぼ周期的な変動を伴って構造物から反射される光の多くの部分波の建設的干渉のために、透過光が強度に減衰する(T≦10%)波長の範囲である。高屈折率および低屈折率の材料が交互に重なった層からなる「1/4波長スタック」構造(それらの各々が、特定の波長λ0の厚さ(材料中)の約1/4である)の場合、「基本的な」阻止帯域は、ほぼλ0に集中し、約λ0/(1+x)〜λ0/(1−x)の範囲であり、式中、xは、それぞれ屈折率の高屈折率および低屈折率nHおよびnLに関連する。
【数20】
【0028】
多層薄膜干渉フィルタの場合に典型的に見られるように、層ごとの屈折率の変動が純粋に正弦波変動ではなく、むしろ急激に変化する場合、より高次の阻止帯域はより短い波長に存在する。例えば、そのような急激な屈折率変化を有する1/4波長スタックは、約λ0/3、λ0/5等の波長で生じ、三次の阻止帯域では約λ0/(3+x)〜λ0/(3−x)の範囲であり、五次の阻止帯域ではλ0/(5+x)〜λ0/(5−x)である等の「奇数調波」の阻止帯域を示す。層が正確に1/4波長の厚さではない場合、約λ0/2、λ0/4等の波長で生じる「偶数調波」の阻止帯域も存在し得る。
【0029】
一般に、既知のフィルタは、基本的な阻止帯域を用いることか、複数の基本的な阻止帯域を組み合わせることか、または1つ以上の基本的な阻止帯域に関連する層をチャーピングする(徐々に変化させる)ことによって、広範囲にわたって高度な遮断を達成する。アプローチにかかわらず、これらの遮断層に関連するより高次調波の阻止帯域は、基本の阻止帯域(単数)または阻止帯域(複数)よりも短い波長で透過を阻止する。
【0030】
液晶同調フィルタ(LCTF)もまた、可変スペクトル機能性を示すように設計される。LCTFは、直線偏光板によって隔てられた一連の複屈折結晶板であるLyot−Ohman偏光干渉フィルタ構成に基づく(Optical Waves in Layered Media,Pochi Yeh,Wiley,New York,1988,Section 10.1)。このフィルタの各「段階」は、波長の関数として透過率の正弦波変動をもたらし、多数の段階の組み合わせが、各々、異なる周波数の正弦波透過曲線を生成し、唯一の波長であるフィルタ通過帯域で全体的な透過特性の建設的干渉をもたらす。LCTFは、これらの板を横断する電圧の印加による結晶複屈折性の調節が、建設的干渉が生じる波長を修正し、それによって通過帯域の波長を同調させるように、各セクションの固定複屈折プレートに複屈折結晶板を加える。
【0031】
LCTFフィルタは、何百nmにもわたって同調するように設計することができる。具体的には、フィルタは、可視波長域(<400nm〜>700nm)全体にわたって同調するように利用可能である。角度同調薄膜フィルタと同様に、これらは大きな開口および2次元画像に対応可能である。これらのフィルタの重大な欠点として、透過率不良、エッジ急峻度および帯域外遮断の不良、固定帯域幅、および低いレーザ損傷閾値(LDT)が挙げられる。また、これらは偏光に基づくため、強度に偏光依存性である。実際には、これらは直線的に偏光された光のみを透過するため、偏光されていない光の最大透過率は50%であり、実際には、フィルタを通過する偏光された光の透過率でさえも約50%である傾向にある(偏光されていない光の全体的な透過率の25%をもたらす)。強誘電性液晶に基づくフィルタの例は、米国特許第5,132,826号明細書に開示されている。
【0032】
可変スペクトル機能性を示すように設計されたさらなる従来のフィルタシステムとして、音響光学同調フィルタ(AOTF)が挙げられる。AOTFは、酸化テルル(TeO2)等の材料の単一結晶内を進む音響せん断波によって形成される体積格子からの光の屈折に基づく。波長は、結晶の片側に連結されたラジオ周波数(RF)変換器によって生成される。結晶を透過した光は、ゼロ次非回折ビーム、(直線)偏光の一方向回折ビーム、および他の(直交)偏光の回折ビームの3つの波に分離され、各々が異なる(角度)方向に進む。非回折ビームが全ての波長を含むのに対し、回折ビームは、体積ホログラムからの回折のために狭通過帯域内の波長のみを含む。このデバイスをフィルタとして使用する場合、通常、非回折ビームと、偏光された回折ビームのうちの1つとが遮断され、第2の偏光された回折ビームが透過光として使用される。
【0033】
AOTFフィルタはまた、広い同調範囲を示すことができ(LCTFと同様に、これもまた何百nmにもわたって同調することができる)、高い同調速度を示すことができる(他の全ての技術でミリ秒以上であることと比較して、10マイクロ秒の速さの波長切替時間が可能)。最も重大な短所として、エッジ急峻度および帯域外遮断の不良、調節可能な帯域幅の欠如、ならびに非常に小さな開口(典型的には最大3〜10mm)が挙げられ、それらは撮像用途のための有用性を制限する。また、LCTFと同様に、AOTFは直線的に透過された光のみを使用するため、偏光されない光の用途では少なくとも50%の光が損失する。米国特許第5,796,512号明細書が、AOTFを使用する撮像システムの例を提供している。
【0034】
可変スペクトル機能性を示すように設計されたさらなる従来のフィルタシステムとして、線形可変同調フィルタ(LVTF)が挙げられる。線形(および円形)可変薄膜フィルタは、直線方向(線形可変フィルタの場合)に沿った、または円形フィルタの方位角方向の周囲の(円形可変フィルタの場合)配置の関数としての不均一な薄膜層の厚さ変動に基づく。結果として、層の厚さに対応するLVTFフィルタのスペクトル特性は、空間的にも変化する。したがって、フィルタを横切ってビームを移動させるか、またはビームの経路を横切ってフィルタを移動させるかのいずれかによってフィルタ上の光ビームの位置を変更することにより、スペクトル特性(エッジフィルタのエッジ位置またはバンドパスフィルタの通過帯域波長等)を変更することができる。米国特許第6,700,690号明細書は、それらが独立して平行移動された場合、2つのフィルタの組み合わせによって形成される中心波長だけではなく、帯域幅もまた調節することができるような、一方はロングパスフィルタであり、他方はショートパスフィルタである、2つのLVTFの組み合わせについて記載している。
【0035】
LVTFは、透過特性、撮像特性を含む、他の可同調薄膜フィルタの特徴をいくつか共有し、それらは、比較的高いレーザ損傷閾値を示す。また、光は、常にほぼ0度のAOIで入射するため、これらは偏光悲感受性であり得る。さらに、米国特許第6,700,690号明細書に開示される構成を使用することにより、いずれの中心波長に対しても帯域幅を任意に調節することができる。短所として、ゼロ以外の幅の光ビームにわたるスペクトル特性の変動に起因してスペクトル性能がより不良であること(エッジ急峻度)と、フィルタを機械的に変換する必要性に起因して同調速度が低いことが挙げられる。
【0036】
2次元画像ビームから波長の帯域を選択することが可能な可同調光フィルタに対する多くの他の薄膜および非薄膜アプローチが存在し、それには、大半のSagnac、Mach−Zehnder、およびMichelson型干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、ならびに能動的に調節可能な層および/もしくは基板を有するか、または応力光学効果によって光学特性の変化を機械的に誘発することによって同調される薄膜フィルタが含まれる。一例として、「Tunable thin−film filters:review and perspectives」M.Lequime,Proceedings of the SPIE,Vol.5250,pp.302−311,2003(C.Amra,N.Kaiser,H.A.Macleod,Eds.)が、そのようなフィルタの概念をいくつか記載している。
【0037】
したがって、薄膜フィルタのスペクトル特性および2次元画像性能特性、ならびに回折格子の中心波長を同調させる柔軟性を有する光フィルタを提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0038】
本開示による光フィルタの一実施形態は、第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有する、材料層とを備え、
第1の複数の材料層は、入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈し、第2の複数の材料層は、入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈し、約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、カットオンエッジにおける第1の複数の材料層の偏光分離は、第1の角度の関数としてカットオンエッジの波長の約1パーセントを超えず、約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、カットオフエッジにおける第2の複数の材料層の偏光分離は、第2の角度の関数としてカットオフエッジの波長の約1パーセントを超えず、第1の角度の値および第2の角度の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼカットオンエッジの波長以下になり、カットオンエッジの波長がカットオフエッジの波長未満になり、カットオフエッジの波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である。
【0039】
本開示による光フィルタのさらなる実施形態は、光フィルタであって、少なくとも1つの基板と、第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、第1および第2の複数の第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有る、材料層と、を備え、第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第1の角度の関数として、第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈し、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第2の角度の関数として、第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈し、第1の角度の第1の値および第2の角度の第1の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼ第1の波長以下になり、第1の波長が第2の波長未満になり、第2の波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、第1の角度の第1の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第1の値によって決定される第2の波長との分離は、第1の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、第1の角度の第1の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第1の値によって決定される第2の波長との差が、第1の通過帯域幅であるような第1の通過帯域領域であり、第1の角度の第2の値および第2の角度の第2の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼ第1の波長以下になり、第1の波長が第2の波長未満になり、第2の波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、第1の角度の第2の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第2の値によって決定される第2の波長との分離は、第2の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、第1の角度の第2の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第2の値によって決定される第2の波長との差が、第2の通過帯域幅であるような第2の通過帯域領域であり、第1の角度の第1の値と第1の角度の第2の値との間の値の任意の第1の角度の場合、第1の偏光分離は、第1の角度の関数として第1の波長の約1パーセントを超えず、第2の角度の第1の値と第2の角度の第2の値との間の値の任意の第2の角度の場合、第2の偏光分離は、第2の角度の関数として第2の波長の約1パーセントを超えず、第1の角度の第2の値によって決定される第1の波長は、第1の角度の第1の値によって決定される第1の波長の少なくとも約6パーセント以内であり、第2の角度の第2の値によって決定される第2の波長は、第2の角度の第1の値によって決定される第2の波長の少なくとも約6パーセント以内である。
【0040】
本開示による光フィルタを作製する方法の実施形態は、光フィルタを作製する方法であって、第1の複数の交互の第1および第2の材料層を第1の基板表面に被着するステップと、第2の複数の交互の第1および第2の材料層を第2の基板表面に被着するステップと、を含み、第1および第2の複数の第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有し、第1の基板表面に被着された第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、第2の基板表面に被着された第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第1の基板表面に被着された第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第1の角度の関数として、第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第2の基板表面に被着された第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第2の角度の関数として、第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、第1の偏光分離は、第1の角度の関数として第1の波長の約1パーセントを超えず、約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、第2の偏光分離は、第2の角度の関数として第2の波長の約1パーセントを超えず、第1の角度の値および第2の角度の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼ第1の波長以下になり、第1の波長が第2の波長未満になり、第2の波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である。
【0041】
さらなる特徴および利点は、この後に続く説明に一部記載され、該説明から明白であるか、または開示される実施形態の実施によって明らかになる。特徴および利点は、付属の特許請求の範囲に具体的に指定される要素および組み合わせによって実現および達成される。
【0042】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的および説明的であるに過ぎず、請求されるような実施形態の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0043】
本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を成す添付の図面は、実施形態を示しており、説明と一緒になって、開示される実施形態の特徴、利点、および原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】既知の狭帯域多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタに関連するスペクトルを示す(FWHMおよそ2nm)。
【図2】法線入射で比較的広い通過帯域を有する多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタに関連するスペクトルを示す(FWHMおよそ20nm)。
【図3】ロングパスおよびショートパスフィルタのコーティングの組み合わせからなる既知の蛍光薄膜バンドパスフィルタに関連するスペクトルを示す(FWHMおよそ35nm)。
【図4A】中心波長500nmでSiO2およびTa2O5に基づく既知の1/4波長スタックのAOIの関数としてのG空間における帯域幅のプロットである。
【図4B】中心波長500nmでSiO2およびTa2O5に基づく既知の1/4波長スタックのAOIの関数としての偏光分離のプロットである。
【図5】一実施形態に従って、単一ガラス基板の対向する面に適用された可同調カットオンおよびカットオフフィルタコーティングからなる可同調バンドパスフィルタ、ならびに比較的広い波長域にわたって帯域外遮断を提供するように法線入射で使用される任意選択的な広範囲遮断フィルタを示す。
【図6】同じく一実施形態に従って、入射光ビームの横方向の平行移動を排除するように広範囲遮断フィルタを逆回転させた、図5の実施形態のさらなる描写である。
【図7】一実施形態に従って、独立した、逆回転可能な可同調エッジフィルタを示す。
【図8】一実施形態に従って、可同調カットオンおよびカットオフコーティングの組み合わせを有し、固定または可同調広範囲遮断コーティングをさらに含む実施形態の代表的なスペクトルを示す。
【図9】一実施形態に従って、可同調カットオンフィルタについて法線入射(AOI=0度)で算出したスペクトルを示す。
【図10】一実施形態に従って、可同調カットオンフィルタについてAOI=60度で算出したスペクトルを示す。
【図11】一実施形態に従って、裏面が被覆されていない別個の基板上の2つの可同調エッジフィルタに関連する法線入射(AOI=0度)で算出したスペクトルを示す。
【図12】一実施形態に従って、裏面が被覆されていない別個の基板上の2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI=45度で算出したスペクトルを示す。
【図13】一実施形態に従って、単一基板の対向する側面に被覆された2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI0〜60度で算出したスペクトルを示す。
【図14】一実施形態に従って、単一基板の対向する側面に被覆された2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI0〜60度で測定されたスペクトルを示す。
【図15】一実施形態に従って、単一基板の対向する側面に被覆された2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI0〜60度およびプローブ光2.5°CHAで算出したスペクトルを示す。
【図16】一実施形態に従って、コーティング層上の入射光用媒体が、空気ではなくガラスであるフィルタを示す。
【図17】一実施形態に従って、コーティング層上の入射光用媒体が、空気ではなくガラスである、直列の2つの可同調エッジフィルタを示す。
【図18】一実施形態に従って、コーティング層上の入射光用媒体が、空気ではなくガラスである、直列の2つの可同調バンドパスフィルタを示す。
【図19】可同調バンドパスフィルタを含む一実施形態による光学システムと、2つ以上の経路のうちのいずれか1つに光を再度方向付けるために使用される鏡の配置とを表す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能である場合、同一のまたは類似する部分を言及するために図面を通して同じ参照番号が使用される。
【0046】
本開示による実施形態は、本質的に偏光分離を伴わない高い入射角で動作し、両方の光の偏光でほぼ等しいエッジ急峻度を示すエッジフィルタ(ロングパスまたは「カットオン」型フィルタおよびショートパスまたは「カットオフ」型フィルタの両方)を含む。本開示による実施形態はまた、両方の偏光で高いエッジ急峻度の値を有し、法線角度(0度)から実質的に90度までの全ての入射角度で実質的に偏光分離を示さないエッジフィルタも含む。したがって、これらの実施形態によるエッジフィルタを通過する光の偏光状態にかかわらず、開示される実施形態によって示される特性をほとんど変更せずに、この全範囲の入射角にわたって、開示される実施形態によるエッジフィルタまたは開示される実施形態によるエッジフィルタの組み合わせを角度同調させることが可能である。よって、本開示による実施形態は、法線入射でフィルタのエッジ波長または中心波長の12%を超える実質的に一定であるフィルタ特性を有する実施形態等の、広い波長の範囲にわたって動作する可同調薄膜フィルタを含む。本開示による実施形態はまた、屈折率の高い層および低い層のために異なる材料の選択肢を伴う、より広い範囲にわたって可同調である可同調薄膜フィルタも含む
【0047】
一実施形態に従って、図5は、単一ガラス基板の対向する面に適用された可同調カットオンおよびカットオフフィルタコーティングからなる可同調バンドパスフィルタ、ならびに広い波長域にわたって実質的な帯域外遮断を提供するために法線入射で使用される広範囲遮断光フィルタを示す。図5は、第1の表面上に可同調カットオンフィルタコーティング501、そして第2の表面上に可同調カットオフフィルタコーティング502を有するガラス基板503を含むバンドパスフィルタ500を含む。一実施形態によると、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/896,589号(「Low Cost Filter for Fluorescence Systems」)に記載されるように、コーティング501、502の両方を基板503の単一表面上の単一コーティングに組み合わせるか、第2の表面を非被覆状態のままにするか、または反射防止(AR)コーティングで被覆することができる。
【0048】
図5に示される配置もまた、法線入射で広範囲遮断フィルタ510上に衝突する光線/光ビーム690のための、バンドパスフィルタ500とともに使用することのできる広範囲遮断フィルタ510を示す。一実施形態によると、広範囲遮断フィルタ510は、バンドパスフィルタ500によって到達可能な波長の全範囲にわたって高透過率であり、バンドパスフィルタ500の通過帯域から遠く離れており、バンドパスフィルタ500によって明らかには遮断されない波長で著しく遮断(減衰)する、コーティングまたはコーティングの組み合わせを含むことができる。一実施形態によると、広範囲遮断フィルタ510は、ガラス基板513上に広範囲遮断カットオンフィルタコーティング511と、広範囲遮断カットオフフィルタコーティング512とを含んでもよい。加えて、かつ一実施形態によると、広範囲遮断フィルタ510は必要とされないが、バンドパスフィルタ500を補完するために使用されてもよい。
【0049】
例えば、広範囲の遮断は、さもなければ弱い望ましい信号を圧倒し得る励起光または周囲光を検出器で排除するための多くの用途(例えば、光ダイオードおよびCCD/CMOSカメラを含むSiに基づく検出器ではUVから約1100nm等、システムにおいて使用される検出器の感度の全範囲にわたって光を遮断する)において有益であり得る。しかしながら、P偏光された光は、高いAOIで大幅に減少された反射力を示す傾向があるため、高い角度でP偏光された光を遮断するためには法線入射よりもかなり多くの層が必要である。したがって、全ての偏光のために広い波長域にわたって少なくともある程度の広範囲の遮断を図5に示されるバンドパスフィルタ500に組み込むことが可能であるが、バンドパスフィルタ500のみを用いてこの遮断を行うことは、法線入射で使用される広範囲遮断カットオンフィルタコーティング511および広範囲遮断カットオフフィルタコーティング512等の補助的なフィルタを用いた場合よりもはるかに効率が悪い(本明細書において、効率とは、正味コーティング厚さ当たりの遮断量を指して使用される)。
【0050】
一実施形態に従って、図5はまた、バンドパスフィルタ500の配向を回転させること(585)によってフィルタ波長が同調されると、バンドパスフィルタ500から出るビーム690が横方向に(すなわち、光軸に対して垂直方向に)平行移動されることも示している。横方向の平行移動の量は、同調角度および基板503の厚さに依存する。非撮像システムの場合、この平行移動は、システムの設計誤差に組み込むことができる。
【0051】
一実施形態によると、ビームの横方向の平行移動を排除するための方法が存在する。図6は、バンドパスフィルタ500を回転させると広範囲遮断フィルタ510が逆回転する(575)一実施形態に従ったアセンブリを示す。一実施形態によると、この実装は、可同調カットオンエッジフィルタコーティング501、可同調カットオフエッジフィルタコーティング502を含む可同調バンドパスフィルタ500を含む。広範囲遮断フィルタ510は、広範囲遮断カットオンエッジフィルタコーティング511および広範囲遮断カットオフエッジフィルタコーティング512を含む。ここでも同様に、図6によって示される配置は、ビーム690の横方向の平行移動を排除するが、広範囲遮断フィルタ510は、高いAOI値で高度な遮断を達成するためにかなり多くの層を必要とするため、これは固定角広範囲遮断フィルタの使用ほど効率的ではない。
【0052】
一実施形態による代替の配置は、図7に示されるように逆回転する2つのフィルタを構成することであり、図中、フィルタ700は、可同調カットオンエッジフィルタコーティング701を含み、フィルタ705は、可同調カットオフエッジフィルタコーティング706を含む。フィルタ700および705の回転角度は、それらが等しく、かつ反対であり、したがって、ビーム790の横方向の平行移動を排除し(例示目的のみであるが、平行移動を決定するフィルタ700およびフィルタ705の特性は他の点において同一である)、結果として得られる性能が、効率的に固定通過帯域幅を有する可同調バンドパスフィルタの性能であるように相関していてもよい。しかしながら、図7に示されるように、一実施形態によると、カットオフエッジフィルタ706およびカットオンエッジフィルタ701に関連する波長を独立して同調することができ、したがって、独立して可同調帯域幅を有する可同調バンドパスフィルタを可能にするように、フィルタ700およびフィルタ705は、独立して回転するように構成されてもよい。よって、一実施形態によると、フィルタ700およびフィルタ705は、第2の表面が被覆されていない状態であってもよいか、または反射防止(AR)コーティング702もしくは広範囲遮断コーティング(図示せず)で被覆されてもよい。さらに、一実施形態によると、カットオンエッジフィルタコーティング511およびカットオフエッジフィルタコーティング512を有する広範囲遮断フィルタ510は、効率的なコーティング厚さの全体的な使用を提供するように、フィルタ700およびフィルタ705との組み合わせにおいて使用されてもよい。
【0053】
一実施形態によると、図8は、図5〜7に記載される実施形態の各々に関連する(可同調フィルタの比較的大きな代表的AOIでの)例示的な代表的スペクトルを示す。実線801は、可同調カットオンエッジフィルタコーティング501または701のスペクトルを表し、破線802は、比較的高いAOIでの可同調カットオフエッジフィルタコーティング502または706のスペクトルを表す。点線803は、広範囲遮断カットオンエッジフィルタコーティング511のスペクトルを表し、一点長鎖線804は、広範囲遮断カットオフエッジフィルタコーティング512の(固定AOIでの)スペクトルを表す。波長811および809は、比較的高いAOIでのカットオンエッジフィルタコーティング501または702の阻止帯域806のエッジに関連する。範囲805(波長809および810によって挟まれる)は、AOI0度(エッジ810)と、実線801で図示されるスペクトル(エッジ809)に関連する比較的高いAOIとの間の通過帯域807を分ける阻止帯域のカットオンエッジに関連する可同調範囲を表す。波長812は、カットオフエッジフィルタコーティング502または706の阻止帯域の通過帯域に最も近いエッジに関連する。波長813は、広範囲遮断カットオフエッジフィルタコーティング512の阻止帯域の通過帯域に最も近いエッジに関連する。波長814は、広範囲遮断カットオンエッジフィルタコーティング511の阻止帯域の通過帯域に最も近いエッジに関連する。通過帯域808は、固定広範囲遮断フィルタ510に関連する。
【0054】
固定広範囲遮断型補助フィルタ(図5および7と一致して示される)を含む一実施形態による比較的広い遮断フィルタを得るために、各可同調エッジフィルタの有効同調範囲は、フィルタの実際の同調範囲(すなわち、範囲805等、フィルタのスペクトルの明らかな歪みなしで最大角度範囲にわたってどれくらい遠くにエッジが移動するか)および阻止帯域幅のうちの最も小さいものである。例示目的のみであるが、我々は、阻止帯域幅(阻止帯域806の幅等)が実際の同調範囲(範囲805等)よりも小さい状況について検討する。(図8のスペクトルは、必ずしもそのような関係を反映するわけではないことに留意されたい。しかしながら、それは、阻止帯域および可同調通過帯域の代表的なエンドポイントのみに依存する以下の考察を損うものではない。)そのような例示的なシナリオでは、可同調エッジフィルタが、その最も長い波長に(すなわち法線入射で)同調される場合、広範囲遮断カットオンエッジ814は、可同調カットオンエッジフィルタの阻止帯域の最も小さい波長(すなわち、エッジ811に対応する波長)に配置することができる。(さらに、図8は、法線入射で可同調カットオンエッジフィルタコーティングの完全なスペクトルを示さないことに留意されたい。しかしながら、我々は、検討の目的のために、可同調カットオンエッジフィルタのエッジ811に関連する波長が、法線入射で波長814とほぼ同じ波長にシフトすると仮定することができる。)そのような広範囲遮断カットオンエッジの設置は、阻止帯域幅が同調範囲よりも小さいという仮定に基づくと、カットオンエッジ(すなわち波長814)が、エッジ(すなわち波長809)の実際の同調範囲によって達成可能な最も短い波長よりも長いため、同調範囲を制限する。同じ論法に基づいて、各可同調エッジフィルタの通過帯域幅は、カットオンおよびカットオフ同調可能エッジフィルタの合わせたスペクトルから得られる帯域通過特性によって達成可能な最大帯域幅に上限を効率的に設定する。
【0055】
反対に、また、可同調カットオンエッジフィルタおよび可同調カットオフエッジフィルタの各々のそれぞれの阻止帯域幅が、それぞれの可同調カットオンエッジフィルタおよび可同調カットオフエッジフィルタの実際の同調範囲よりも大きいと仮定すると、一実施形態に従って、広範囲遮断フィルタ510の固定通過帯域が、カットオンフィルタの有効同調範囲の最も短い波長(すなわち波長λS、または波長809)からカットオフフィルタの有効同調範囲の最も長い波長(すなわち波長λL、または法線入射810でエッジ813に対応する波長)までを網羅するように選択される場合、図7に示される実施形態には、ゼロと、λS−λLの差、可同調カットオンエッジフィルタコーティング701の通過帯域幅、および可同調カットオフエッジフィルタコーティング706の通過帯域幅のうちの最も小さいものとの間のいずれかの任意の通過帯域の帯域幅が選択されてもよい。さらに、いずれの中心波長が、2つのバンドパスフィルタのエッジが範囲内[λS,λL]であるという制約を受けるように選択されてもよい。
【0056】
さらに、一実施形態によると、組み合わされたフィルタが任意の中心波長で任意の小さな(例えばおよそ0nm幅の)通過帯域の帯域幅を達成できるためには、カットオフエッジフィルタコーティング706の有効同調範囲の最も短い波長が、カットオンエッジフィルタコーティング701の有効同調範囲の最も短い波長以下でなければならない。さらに、図8に示されるように、カットオフエッジフィルタコーティング706の有効同調範囲の最も短い波長は、カットオンエッジフィルタコーティング701の有効同調範囲の最も短い波長よりも長く、したがって、全体的により広いバンドパスフィルタの同調範囲を達成するように構成することが可能であるが、同調範囲の下端および上端でバンドパスフィルタの最も小さい達成可能な帯域幅により低い制限を設けることになる。
【0057】
一実施形態によると、本明細書で考察されるエッジフィルタは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/129,534号(「Interference filter for non−zero incidence spectroscopy」、AOI約45度で使用するためのエッジフィルタを開示する)および参照により本明細書に組み込まれる第12/238,228号(「Optical thin−film notch filter with very wide passband regions」、比較的広い通過帯域を有するノッチフィルタを開示する)に記載されるような「通過帯域欠陥」に関連するスペクトルエッジを利用する。
【0058】
一実施形態に従って、図9は、本開示による例示的な可同調カットオンフィルタの法線入射(AOI=0度)で算出したスペクトルを示す。約600nm〜約750nmの領域は、フィルタ構造を形成する約1/4波長厚の高屈折率および低屈折率の交互の薄膜層のスタックに関連する阻止帯域901である。この例では、可同調カットオンエッジ902は、約540nmで生じる。カットオフ阻止帯域エッジ903は約600nmで生じ、この波長未満は通過帯域領域である。典型的なカットオフ(ショートパス)フィルタの場合、約600nm未満の通過帯域領域においてリップルを排除するために、約1/4波長厚の層の正確な層の厚さが最適化される。しかしながら、通過帯域内の限定された範囲にわたってリップルを排除するのではなく、むしろ増強するように注意深く最適化が行われてもよく、したがって、通過帯域欠陥904と称される透過率の非常に低い領域が生じる。図9に示されるように、欠陥は、約470〜約540nmの広範囲にわたって生じる。通過帯域欠陥の長波長側では、約540nmで傾斜の大きなカットオンエッジが形成される。
【0059】
本開示によるフィルタアセンブリの同調特性は、より高い値のAOIでスペクトルを算出した場合に明白となる。一実施形態に従って、図10は、図9に関連するフィルタのAOI=60で算出したスペクトルを示す。一実施形態によるフィルタアセンブリを用いると、欠陥の少なくとも片側に傾斜の大きなエッジが存在するように、1/4波長スタック構造に関連する通過帯域内に通過帯域欠陥1001を形成すること、および通過帯域欠陥を深い遮断によってかなり広くすることの両方が可能である。また、一実施形態によると、両方の偏光状態(「S」および「P」)に関連する通過帯域欠陥のカットオンエッジ1002が互いに整合するように構造を最適化するように、十分に多数の薄膜層が、システムの設計における十分な自由度を許容する。そのような約475nmでの2つのカットオンエッジの整合は、図10において明白である。
【0060】
約475nmにおけるカットオンエッジに関連する偏光分離の欠如を、約500nm〜約550nmの主な阻止帯域のカットオフエッジ(すなわち、エッジ1004および1005)で明白な分離(約30nmまたはエッジ波長の約6%である)と比較することは有益である。対照的に、可同調通過帯域欠陥のエッジ1002に関連する分離は、1nm未満またはエッジ波長の約0.2%である。一実施形態によると、S偏光およびP偏光された光に関連する通過帯域欠陥のエッジ1002の整合を達成することは、通過帯域欠陥に自然に備わった特徴ではなく、薄膜層構造は、この結果を達成するように最適化されなければならない。図10に示されるように、阻止帯域(S)1006は、約520nm〜約680nmに存在し、阻止帯域(P)1007は、約540nm〜約630nmに存在する。
【0061】
一実施形態によると、図9で算出したスペクトルから、第2の側面が被覆されていない一枚のガラスの片側にコーティングが施され、約4%の反射率による損失がもたらされることが推定される(したがって通過帯域領域の平均透過率は96%)。
【0062】
図9および10に示される例示的なスペクトルは、可同調カットオンエッジフィルタに対応する実施形態によるアセンブリの一部に関連する。可同調カットオフ(ショートパス)エッジフィルタを形成するために、通過帯域の長波長側に通過帯域が作製され、通過帯域欠陥の短波長側に傾斜の大きなカットオフエッジが形成される。したがって、可同調カットオフフィルタは、この欠陥の短波長端であり、この可同調フィルタに関連する通過帯域は、阻止帯域カットオンエッジ(同調されると著しい偏光分離を示す)と可同調カットオフエッジとの間の領域である。
【0063】
一実施形態に従って、図11および12は、可同調カットオンフィルタとカットオフフィルタの組み合わせが、どのように可同調バンドパスフィルタを形成するかを示している。上記のように、これらの2つのフィルタは、1つの基板上の単一コーティングに組み合わせられてもよいか、またはそれらは単一基板の対向する側面に被覆されてもよいか、またはそれらは、バンドパスフィルタエッジの独立した同調を達成するように、2つの独立して回転可能な基板に被覆されてもよい。一実施形態に従って、図11は、例示的な可同調カットオンエッジフィルタ1101およびカットオフエッジフィルタ1102の法線入射で算出したスペクトルを示しており、計算は、各フィルタが別個の基板に被覆され、その裏面は被覆されていない状態の実施形態によるものである(したがって、4%の反射損失を示す)。AOI=0度で得られるバンドパスフィルタの通過帯域(図11に示されるような)は、約540nm〜約570nmである。
【0064】
一実施形態に従って、図12は、本開示によるフィルタが各々45°のAOIに同調された場合に得られる算出したスペクトルを示す。中心波長が約555nmから約512nmにシフトし、この時、通過帯域1201は約497nm〜約527nmである。図12に示されるように、エッジ急峻度および通過帯域の帯域幅のどちらも、法線入射での値と比較して本質的に変化しないままであった。
【0065】
一実施形態に従って、図13は、例示的な可同調カットオンおよびカットオフフィルタが単一基板の対抗する側面に被覆された場合に得られるバンドパスフィルタについて、約0〜約60度の範囲の4つの異なるAOIで両方の光の偏光について算出したスペクトルを示す。曲線1300は、AOI60度でのスペクトルを示し、曲線1310は、AOI45度でのスペクトルを示し、曲線1320は、AOI30度でのスペクトルを示し、曲線1330は、AOI0度でのスペクトルを示す。一実施形態に従って、コーティングの各々と関連する薄膜層構造(屈折率値および厚さ)を表1に示す。スペクトルは、同調範囲全体にわたる偏光にかかわらず高い透過率および急峻なエッジを維持する一方で、法線入射で約555nm〜約490nmまたは中心波長の約12%に同調する能力を示している。
【0066】
以下の表1は、一実施形態による可同調バンドパスフィルタの例示的な設計を含む。例示的なフィルタは、2つのコーティングを備え、単一基板の対向する側面、または2つの異なる基板に被覆されてもよい。
【表1】
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【0067】
図13および表1に示されるスペクトルに関連するフィルタは、イオン助成によるイオンビームスパッタリングおよび光学的モニタリングを使用して製造した(プロセスの詳細な記述については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,068,430号明細書を参照)。
【0068】
一実施形態に従って、一連のAOIおよび両方の直交偏光状態で測定された、得られたフィルタの透過スペクトルを図14に示す。曲線1400は、AOI60度で測定されたスペクトルを示し、曲線1410は、AOI50度で測定されたスペクトルを示し、曲線1420は、AOI40度で測定されたスペクトルを示し、曲線1430は、AOI30度で測定されたスペクトルを示し、曲線1440は、AOI15度で測定されたスペクトルを示し、曲線1450は、AOI0度で測定されたスペクトルを示している。一実施形態によると、スペクトルは、分解能を0.1nmに設定したPerkin Elmer Lambda 950商業用分光光度計を使用して測定した。使用した構成では、フィルタにおける光ビームは完全にはコリメートされておらず、円錐半角(CHA)は約2.5度である。この角度の範囲は、AOIが増加するにつれて明らかに減少するエッジ急峻度を説明するものである。コリメート光の実際のエッジ急峻度は比較的一定のままであるが、5度の範囲の角度を網羅するプローブ光を用いてフィルタを測定した場合、(分光光度計上に設定された広い波長の分解能でフィルタを測定したかのような)明らかにあまり急峻ではないエッジをもたらすように生じる平均化効果が存在する。この効果を示すために、一実施形態に従って、図15は、CHA2.5度のプローブ光を想定して、このフィルタ設計について算出したスペクトルを示す。曲線1500は、AOI60度で算出したスペクトルを示し、曲線1510は、AOI50度で算出したスペクトルを示し、曲線1520は、AOI40度で算出したスペクトルを示し、曲線1530は、AOI30度で算出したスペクトルを示し、曲線1540は、AOI15度で算出したスペクトルを示し、曲線1550は、AOI0度で算出したスペクトルを示している(全てCHA2.5度のプローブ光を想定)。
【0069】
図14および15に示されるように、測定されたスペクトルにおいて明白なエッジ急峻度の感度および不完全なコリメート光について算出したスペクトルは、一実施形態による角度同調薄膜フィルタについて考慮されるべきトレードオフを強調している。角度の所与の変化に対してフィルタの同調範囲を最大化するために、またはフィルタを同調することができる速度を最大化するために、角度の所与の変化に対する波長の変化を可能な限り大きくすること(同調方程式(1)のneffを可能な限り小さくすることに等しい)が好ましい。慣性が、所与の時間内に所与の量だけフィルタを回転させることができる速度を制限するため、速度が向上する。
【0070】
ガルバノメータスキャナ(すなわち、「ガルボスキャナ」)は、より小さい角度範囲にわたってより迅速に動作できることが知られているが、この角度に対する波長の感度増加には代償が伴う。角度の所与の変化に対する波長の変化の感度が高いほど、ある範囲の角度からなる実際の光ビームを使用した場合に鋭いスペクトル特徴を維持することが困難である。レーザに基づくシステムは、典型的に、光が例外的に良好にコリメートされる(典型的には数ミリラジアン未満)領域をシステム内に有する。しかしながら、多くの撮像システムの高度にコリメートされたほとんどの領域において、光線角度の範囲は1〜2度以上であることが多い。
【0071】
有効屈折率neffによって特徴付けられる角度に対する波長の感度は、任意に調節することはできない。本開示によるフィルタの設計構造を変更することによって、neffをごく僅かに修正することができるのみである。これらのスペーサ層内に光度が局在化することから、スペーサ層材料の選択(高屈折率または低屈折率材料であるかどうか)がその値に著しい影響を与え得るため、多空洞ファブリ・ペロー型フィルタのneffを修正するためにより多くの柔軟性が存在する。本開示によるフィルタのneffを明らかに変化させるために、異なるコーティング材料を選択することができる。しかしながら、屈折率差が低いと、急峻なエッジおよび広範囲の遮断を達成するために多大な数の層を必要とする結果になるため、屈折率差(平均値に対する高屈折率値と低い屈折率値の差の比率)をあまり減少させないように注意が払われてもよい。
【0072】
2つの異なる屈折率の媒体間の境界面で光の屈折を左右するスネルの法則のために、実際の薄膜コーティング層内の光のAOIは、フィルタに対する空気中のAOIよりも小さい。例えば、一実施形態によると、θ=60度の空気中のAOIで上記可同調フィルタに光が入射すると、有効屈折率が約neff=1.84であるため、層内の角度は約θeff=sin−1(sin θ/neff)であるか、またはこの場合θeff=28度である。しかしながら、一実施形態によると、入射媒体が空気以外の材料(ガラス等)である場合、層内の角度がより大きくなり、より高い波長同調感度をもたらす。例えば、可同調フィルタがガラス等の空気以外の材料に埋め込まれ、ガラスが約n=1.5の屈折率を有する実施形態(「埋め込み型形状」)によると、層内の角度は約θeff=sin−1(n sin θ/neff)であるか、またはガラス内の入射角がθ=60度である場合はθeff=49度である。一般に、入射媒体が入射角nを有する場合、同調依存性は以下に変化する。
【数21】
【0073】
換言すると、これは、あたかも有効屈折率neffがneffからneff/nに変化したかのようである。よって、例示的なフィルタの場合、新しい有効屈折率は約1.84/1.5=1.23である。したがって、一実施形態によると、埋め込み型形状では波長同調範囲の増加もあり得る。例えば、埋め込み型形状のためにAOIを0度から60度に同調させることができる場合、方程式(11)は、波長が開始波長の約29%に同調するであろうことを示唆している。上記例示的フィルタでは、同調は、555nmから555nm×0.71=394nmになるであろう。フィルタを0度から70度に同調させることができる場合、波長は開始波長の約35%に同調するであろう。そのため、法線入射で650nmの中心波長になるように設計されたフィルタは、420nm未満に同調させることができる。そのようなフィルタは、波長のほぼ全可視域を網羅するであろう。しかしながら、通常、コーティング層内の角度が大きくなり、バンドパスフィルタを得ることを困難にする他の物理的作用が生じるため、そのような大きな角度範囲にわたってフィルタを同調させることは不可能である。
【0074】
よって、ガラス内に「埋め込まれた」フィルタコーティングの場合、AOIの所与の変化のために波長により大きな変化が生じる。この感度増加の利点は、所与の波長同調範囲の埋め込み型の場合、ガラス板上の空気中のコーティングの場合ほどフィルタコーティング領域が大きくなくてもよいことである。また、薄膜コーティングのコストは、コーティング領域にほぼ比例する傾向にあるため、埋め込み型アプローチには潜在的なコスト優位性が存在する。
【0075】
一実施形態に従って、図16は、入射光1690が、空気の代わりにガラスを通って進むことができるようにするための可能なアプローチを示す。図16に示されるように、中空ガラスシリンダ1601(その端部から見た状態で示される)は、入射孔および射出孔として研磨された平坦な面1602を有する。ガラスシリンダ1604を2等分する平面に適用されたバンドパスフィルタコーティング(複数可)1605を有し、中空ガラスシリンダ1601の穴よりもやや小さい直径を有するガラスシリンダ1604は、その軸の周囲を自由に回転するように(1685)作製することができる。この回転は、間隙1606に非常に薄い層の屈折率整合油を適用することによって達成することができる。例えば、間隙1606は、約1mmまたはそれよりも小さい幅を示してもよい。さらに、一実施形態によると、平面1602のうちの一方または両方が、ARコーティングで被覆されてもよい。
【0076】
一実施形態に従って、図17は、ガラスシリンダ1714およびガラスシリンダ1724に適用されたフィルタ1715およびフィルタ1725をそれぞれ示しており、両方のシリンダ1714および1724は、長方形ガラスブロック1701内の2つの中空の円筒状領域の内部にある。例えば、フィルタ1715およびフィルタ1725は、個別のカットオンおよびカットオフエッジフィルタであってもよい。小さな間隙1706が、ガラスシリンダ1714、ガラスシリンダ1724、長方形ガラスブロック1701の各々の間に位置してもよい。また、一実施形態によると、2つより多くのフィルタがこの様式で連結されてもよい。一実施形態によると、一方または両方の平面1702が、ARコーティングで被覆されてもよい。
【0077】
一実施形態に従って、図18は、フィルタフロック1801内の可同調フィルタ1815および可同調フィルタ1825を示す。例えば、可同調フィルタ1815および1825は、バンドパスフィルタであってもよい。可同調フィルタ1815および可同調フィルタ1825は、それぞれガラスシリンダ1814およびガラスシリンダ1834に適用することができ、その両方が、長方形ガラスブロック1801内の中空の円筒状領域内に配置されてもよい。ここでも同様に、小さな間隙1706が、ガラスシリンダ1814、ガラスシリンダ1834、長方形ガラスブロック1801の各々の間に位置してもよい。一実施形態によると、一方または両方の平面1802が、ARコーティングで被覆されてもよい。
【0078】
コーティング層が薄いため、回転させたフィルタ層の平面がシステムの光軸に平行になり、よってシステムを通る光1890の透過率に与える影響が最小限となるように、多くのシステムにおいて、可同調フィルタ1815および可同調フィルタ1825のうちの1つの角度を回転させることが可能である。この場合、光軸と実質的に平行ではない角度に回転させたフィルタのみが、バンドパスフィルタとして動作するであろう。このように、任意の所与の時間に、一方のみまたは他方のバンドパスフィルタを使用することを選択することができ、それによって、各々が全同調範囲の一部を網羅する2つ以上のフィルタを用いて非常に広い同調範囲を網羅することが可能になる。
【0079】
一実施形態による可同調フィルタは、任意に広い同調範囲を有さないため、いくつかの用途のための実際の使用法は、2つ以上のフィルタを使用して有効同調範囲を拡張するための方法を必要とするかもしれない。例えば図18に示されるような、そのような拡張を達成するための1つの方式は上に記載されている。一実施形態によると、別の方式は、一連の2つ以上のフィルタまたはフィルタの組み合わせに光を再度方向付けることである。一実施形態によると、図19に一例が示され、回転可能な平面鏡1940および回転可能な平面鏡1950(例えば、ガルボスキャナによって直接駆動される)は、第1の対の固定平面鏡1941および1951、または第2の対の固定平面鏡1942および1952によって画定される2つ以上の光路のうちの1つを選択するために使用することができる。一実施形態によると、鏡は、回転可能な平面鏡1940と回転可能な平面鏡1950の間の光路が全ての経路で等しくなるように配置することができる。第1の光路は、可同調カットオンフィルタ1916、可同調カットオフフィルタ1917、広範囲遮断カットオンフィルタ1921、および広範囲遮断カットオフフィルタ1922を通過する。第2の光路は、可同調カットオンフィルタ1906、可同調カットオフフィルタ1907、広範囲遮断カットオンフィルタ1911、および広範囲遮断カットオフフィルタ1912を通過する。本開示によると、本明細書に記載される可同調フィルタのための実施形態のうちのいずれもが、光路のうちのいずれに挿入されてもよい。例えば、図5に示される実施形態の代わりに、各経路は、図7および17に示されるような2つの独立して可同調エッジフィルタの組み合わせを含んでもよく、よって、バンドパスフィルタの中心波長およびその経路に関連する同調範囲内の帯域幅の任意の調節を可能にする。
【0080】
本開示によるシステムおよび方法は、蛍光顕微鏡検査法および他の蛍光撮像法ならびに定量化用途、ハイパースペクトル撮像法、ハイスループット分光法、そして通信を含む分野において幅広く使用される可能性を有する。例えば、本開示によるシステムおよび方法は、画像情報を運ぶ光のビームがフィルタを通過する撮像システムにおいて使用されてもよいか、またはそれは検出のために単純にサンプルから最大量の光を収集する非撮像システムであってもよい。本開示によるシステムおよび方法は、連続的な一連の波長データポイントを取得するために波長の迅速な同調を必要としてもよいか、またはシステム性能の最適な調整のために波長同調性を利用してもよい。
【0081】
蛍光顕微鏡検査法および他の蛍光測定法において、本開示によるシステム、方法、およびフィルタは、励起光および放射光のスペクトルを制御するために有用であり得る。本開示によるシステム、方法、およびフィルタは、実験または所与の実験内の条件を変更する間に、所望の計測柔軟性およびさらにはリアルタイムでの最適化を提供することができる。
【0082】
ハイパースペクトル撮像法は、地球資源のモニタリングのための遠隔センシングから、医療用画像診断、農業分析、法医学、製造等に至る範囲の用途において使用される。この技法は、各々が異なる波長であるため、各ボリュームピクセル(または「ボクセル」)が2つの空間次元および波長に関連する強度値を含むデータの「画像キューブ」をもたらす一連の2次元画像の取得を指す。一般に、ハイパースペクトル撮像法は、「プッシュブルーム」画像取得技法とともに実装され、格子分光計に取り付けられた2次元CCDアレイが、CCDの1つの軸に沿った1次元空間情報および別の軸に沿ったスペクトル情報を含む個別フレームを取得する。次いで、システムは、各連続的なフレームが新しい空間情報の列を取得するが、時間がずらされるように、他の空間軸(例えば、飛行機が地球の上を飛ぶときに自然に生じる)に沿って走査される。本開示によるシステム、方法、およびフィルタは、2次元画像ビームを送信するように使用することができ、それによって、各フレームが2次元の空間情報(典型的には、より多くのピクセルを必要とするより高い分解能から恩恵を受ける)を取得し、分解能のより低いスペクトル測定値の時間がずらされる、より望ましいことが多い取得モードを有効にする。
【0083】
本開示によるシステム、方法、およびフィルタはまた、特に、スループットがスペクトル分解能よりも重要である場合に、単純な小型化スペクトル測定システムを提供することもできる。また、本開示によるシステム、方法、およびフィルタはまた、試験および測定の両方の目的のための光ファイバ通信システムにおける要素であってもよく、それは、「波長アジリティ(wavelength agility)」をもたらすことによって、それらが実装されたシステムにおける波長弁別構成要素の複雑さを大幅に単純化できるためである。
【0084】
当業者には、本明細書および本明細書に開示される本発明の実践から、他の実施形態が明らかであろう。本明細書および実施例は、例示に過ぎないと見なされることが意図され、本発明の真の範囲および主旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【技術分野】
【0001】
本開示は、可同調光フィルタに関する材料、構成要素、および方法に関し、そのような可同調光フィルタを使用するシステムおよびそのようなフィルタを作製する方法を含む。本出願は、2010年1月8日に出願された米国特許出願第12/684,871号に対する優先権を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
光学システムにおいて、単一波長(もしくは限定された範囲の波長)を分離すること、またはシステムに衝突するかもしくはシステムを透過する光の波長特性を測定することが有用であることが多い。光学エッジフィルタ、ノッチフィルタ、および/またはレーザラインフィルタ(LLF)等の薄膜干渉フィルタは、そのようなシステムにおいて単一のもしくは限定された範囲の波長を分離するため、または不必要な光を遮断するために有利に使用することができる。薄膜干渉フィルタに関する多くの使用法が知られている。例えば、米国特許第7,068,430号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)は、蛍光分光法および他の定量化技術におけるそのようなフィルタの使用について考察している。
【0003】
一般に、薄膜干渉フィルタは、異なる屈折率を有する材料間の境界における入射波および反射波の間で生じる干渉効果の結果として波長選択的である。従来、干渉フィルタは、異なる屈折率を有する2つ以上の誘電材料からなる複数の交互の層から構成される誘電スタックを含む。さらに、従来の薄膜干渉フィルタでは、フィルタスタックのそれぞれの層の各々は非常に薄く、例えば、光の約1/4波長程度の光学的厚さ(物理的厚さ×層の屈折率)を有する。これらの層は、バンドパスフィルタまたは帯域除去フィルタの特性を1つ以上提供するように、1つ以上の基板(例えばガラス基板)に種々の構成で被着することができる。さらに、反射された帯域を再度方向付けることによって、フィルタが波長の2つの帯域を分離できるように、波長の少なくとも1つの帯域を実質的に反射し、第1の帯域にすぐ隣接する波長の少なくとも第2の帯域を実質的に透過するフィルタの場合、結果として得られるフィルタは、従来、「ダイクロイックビームスプリッタ」または単に「ダイクロイック」フィルタと称される。
【0004】
本明細書で使用される場合、ある波長の、またはある波長の範囲にわたるフィルタの「遮断率」は、典型的には光学密度(「OD」、OD=−log10(T)、Tは、特定の波長でのフィルタの透過率)で測定される。特定の波長でまたはある波長の範囲にわたって高いOD値に達する従来のフィルタが、任意の他の波長でまたは他の波長の範囲にわたって、必ずしも高い透過率(例えば、50%を超える)に達するわけではない。高いODは、通常、基本的な「阻止帯域」の波長領域において示され、後にさらに考察するように、そのような阻止帯域は、それらに関連して、他の波長領域で生じるより高次の阻止帯域領域を有する。
【0005】
エッジフィルタは、本明細書で使用される場合、画定されたエッジを有する透過スペクトルを示すように構成され、選択された「遷移」波長λTよりも高いか、または代替としてそれよりも低い波長を有する不必要な光が遮断され、望ましい光がλTの反対側で透過される。また、本明細書で使用される場合、エッジフィルタは、透過特性が「遮断」から「透過」にまたはその逆に遷移する波長域が、「遮断」および「透過」特性が示される波長域よりも実質的に小さくなる(すなわち、少なくとも1等級小さく、通常は2等級以上小さい)ように構成される。λTよりも長い光波長を透過するエッジフィルタは、ロングパス(LWP)フィルタと称され、λTよりも短い波長を透過するエッジフィルタは、ショートパス(SWP)フィルタと称される。
【0006】
米国特許出願第12/129,534号(その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)は、理想的なLWPおよびSWPフィルタのそれぞれのスペクトル透過特性に関する考察を含む。例えば、理想的なLWPフィルタは、λTより低い波長の光を完全に遮断し、λTより高い波長を完全に透過する。反対に、理想的なSWPフィルタは、λTより低い波長の光を完全に透過し、λTより高い波長の光を完全に遮断する。
【0007】
エッジ急峻度および透過光の相対的な量は、多くのフィルタ用途において重要なパラメータとなり得る。上記のように、理想的なエッジフィルタは、波長λTの透過率対波長のプロットにおいて垂直線によって表される正確な波長端を有すると考えることができる。つまり、理想的なフィルタは、λTで0の「エッジ急峻度」(すなわち、透過特性が「遮断」から「透過」にまたはその逆に遷移する際の波長の変化)を有する。しかしながら、実際のエッジフィルタは、小さいがゼロではない波長の範囲にわたって遮断から透過に変化し、増加するエッジ急峻度の値は、徐々に傾斜が緩くなるエッジを反映している。したがって、実際のエッジフィルタの遷移は、λT付近で垂直ではないが傾斜の大きい線によってより正確に表される。同様に、理想的なエッジフィルタは、透過領域内の入射光を全て透過すると考えられ得るが(透過率T=1)、実際のエッジフィルタは、常に目的の透過領域内の光(T<1)の一部を遮断しており、ある程度の量の透過損失を有する。その結果として、実際のエッジフィルタのエッジ急峻度は、それが画定される透過率の範囲に依存すると考えることができる。
【0008】
光フィルタリングによる波長選択から恩恵を受けるシステムは、フィルタ通過帯域領域における高い透過率、傾斜の大きなスペクトルエッジ、および望ましくない波長の高い帯域外遮断率を示す光フィルタから恩恵を受けると予測することができる。したがって、100%に近い透過率を提供することが可能な薄膜光フィルタは、傾斜の大きなスペクトルエッジを呈し(エッジ波長1%未満で、高透過率から6またはそれより高い光学密度の遮断への遷移)、広いスペクトル領域にわたって6またはそれより高い光学密度の遮断を示し、そのようなシステムにとって有益であると考えることができる。
【0009】
しかしながら、各薄膜フィルタが、従来、限定された波長領域にわたって使用可能な特定のスペクトル機能を有することから、薄膜フィルタはまた、従来「固定」フィルタであると見なされている。所与のスペクトル機能を有する第1の薄膜フィルタを用いる従来のシステムが、異なるスペクトル機能を必要とし得る限り、そのようなシステムは、第1の薄膜フィルタを必要なスペクトル機能を示す異なるフィルタと交換するための手段を必要とするであろう。フィルタホイールの使用等のフィルタ交換を行うための機械的手段が知られているが、これらは従来、大規模で、比較的時間がかかり(すなわち、最短交換時間が従来50〜100msである)、限定された数のフィルタしか許容しない(例えば、従来のホイールは、そのような固定フィルタの場合4〜12個のスロットを含む)。よって、薄膜フィルタの使用からおよび可変または動的なスペクトル特性の可用性からも恩恵を受ける従来のフィルタシステムは、上記のサイズ、速度、およびフィルタリング機能柔軟性の特徴の結果として限定的な用途を有する。
【0010】
従来、波長または波長域に関連するスペクトル機能を、比較的高い速度の異なる波長または波長域に変更することが望ましい場合、回折格子が使用されてきた。回折格子は、ある範囲内の任意の波長を選択することを可能にし、格子の回転のみを必要とするため、波長の変化に比較的迅速に対応することができる。よって、格子は、ほとんどの走査スペクトル測定システムの基本である。しかしながら、格子は、あまり良好なスペクトルの識別を提供しない。例えば、従来、スペクトルエッジの傾斜は大きくなく、従来、帯域外遮断は不良である。その上、これらの欠陥のうちのいくつかに対応するために、複数の回折格子分光器を一緒に連結することは、帯域外遮断の不良を完全には緩和しない傾向があり、全体的な透過率を減少させ、さらには機器を非常に大規模にする。格子に基づくシステムはまた、従来、フィルタの帯域幅にわたって限定的な制御を示す。すなわち、(通常、機械的スリットの幅を調節することによって)帯域幅は調節することができるが、帯域幅が増加するにつれてエッジの傾斜が増加する。さらに、格子に基づくシステムでは、従来、波長に依存する様式で光線を拡散するために少なくとも1つの空間次元が必要とされるため、従来の回折格子を用いて2次元画像ビームを直接(1回ごとに)測定することは不可能である。例えば、いわゆる「画像格子分光器」は、スペクトル情報のために第2の次元が保存された1次元空間画像を提供する。第2の空間次元が画像ビームで表される限り、またそれが静的である限り、回折格子が第2の利用可能な次元をサンプリングするためにかかる時間の関数として別個に取得されてもよい。
【0011】
可変スペクトル機能性を示すように設計された他の従来型フィルタシステムとして、角度同調フィルタ、液晶同調フィルタ、音響光学同調フィルタ、および線形可変同調フィルタが挙げられる。各々について以下に考察する。
【0012】
角度同調薄膜フィルタに関して、フィルタ上の入射角(AOI)が0度(法線入射)からより大きな角度に増加されると、薄膜フィルタのスペクトルがより短い波長にシフトすることが分かっている(Optical Waves in Layered Media,Pochi Yeh,Wiley,New York,1988,Section 7.6を参照)。このシフトは、一般に、方程式
【数1】
によって説明され、式中、θはAOIであり、neffは「有効屈折率」であり、それは通常、フィルタ設計ならびに偏光の2つの直交状態(すなわち、「S」および「P」)に依存する。この効果は、限定された範囲の波長にわたって光フィルタのスペクトルを同調させるために使用することができる。しかしながら、従来、より大きな角度ではフィルタのスペクトルが歪み、S偏光された光とP偏光された光では波長のシフトが著しく異なり得るため、より大きな角度では強い偏光依存性がもたらされる。
【0013】
一例として、図1は、561nmで狭い通過帯域(約2nm)を提供するように構成された例示的な多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタの算出したスペクトルを示す。曲線101および102は、AOI60度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線111および112は、AOI45度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線121および122は、AOI30度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線130は、AOI0度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルである。図1に示されるように、AOIが0度から60度に増加するにつれて、通過帯域が、S偏光ではより狭くなり、P偏光ではより広くなる。また、透過曲線のピークは、S偏光透過光よりもP偏光透過光で、AOIの関数としてより大きな波長シフトを示す。結果として、従来の薄膜フィルタは、より高いAOIで強い偏光依存性を示す。単なる例として、この例示的なフィルタが561nmでAOI0度から離調することができる従来の使用可能な範囲の波長(つまり、スペクトルに過度の歪みが発生する前)は、約10〜15nmの波長であるか、または約2〜3%の開始波長である。
【0014】
図1の例示的な薄膜フィルタに従った従来の角度同調薄膜フィルタは、光ファイバ通信の試験および測定、ならびに1550nm付近で動作するように構成されたシステムアプリケーションのための数多くの商業用デバイスおよび機器において使用される。これらの例示的デバイスのための従来の同調範囲は、1550nm付近で約30〜40nmであり、これは開始波長の約2〜2.5%に相当する。また、米国特許第5,481,402号、第5,781,332号、および第5,781,341号明細書も、光ファイバに連結されたコリメート光の近くに配置され、角度同調特性を達成するように回転させられる1550nm付近の通過帯域を有する多空洞ファブリ・ペロー薄膜バンドパスフィルタの使用を含む、光ファイバ/通信用途のための角度同調薄膜フィルタについて開示している。
【0015】
正確なレーザラインまたは光ファイバ通信に依存しない用途の場合、より広い通過帯域が典型的には望ましい。単なる例として、図2は、半値全幅(FWHM)で約20nmの通過帯域を示すように構成される例示的な多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタに関連する算出したスペクトルを示す。曲線201および202は、AOI60度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線211および212は、AOI45度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線221および222は、AOI30度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線230は、AOI0度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルである。図2の例示的な薄膜フィルタによって示される挙動は、図1のフィルタの挙動に類似する。例えば、通過帯域波長は、より高いAOIでより短い波長にシフトする。その上、通過帯域領域にわたる透過特性は、より高いAOIで徐々に歪む(すなわち、より大きな範囲の可変性を示す)。さらに、AOIが増加するにつれて、通過帯域領域(阻止帯域エッジによって確定される)が、S偏光ではより狭くなり、P偏光ではより広くなる。さらに、通過帯域は、S偏光された光よりもP偏光された光で、AOIの関数としてより大きな波長シフトを示す。これらの特性の全てが、従来、より高いAOIで徐々に歪んだスペクトルをもたらし、したがって、そのような従来のフィルタの有用な同調範囲を減少させる。
【0016】
多くの蛍光撮像および定量化の用途は、図2の例示的な薄膜フィルタよりもさらに広い通過帯域を有するフィルタから恩恵を受けることができる。例えば、そのような用途は、(可視波長で)幅30〜50nm以上の通過帯域から恩恵を受けることができる。そのような広い通過帯域を有するフィルタ、特にインコヒーレント光に関与する用途では、従来のフィルタは、(米国特許第6,809,859号および第7,411,679B2号明細書に開示されるような)ロングパスフィルタとショートパスエッジフィルタの組み合わせから形成されてもよい。そのようなエッジフィルタは、高屈折率および低屈折率薄膜層の約1/4波長スタックからもたらされる「阻止帯域」のスペクトル領域のエッジから形成される。しかしながら、そのようなエッジフィルタの組み合わせに伴う1つの制約は、従来のエッジフィルタは、ゼロ以外の入射角で操作された場合に偏光分離を示すということである。
【0017】
単なる例として、図3は、ロングパスおよびショートパスフィルタのコーティング(FWHM約35nm)の組み合わせに関連する算出したスペクトルを示す。曲線301および302(これらのうちの後者は、本質的に横座標と同一平面である)は、AOI60度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線311および312は、AOI45度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線321および322は、AOI30度に関連する算出したpおよびS偏光透過スペクトルであり、曲線330は、AOI0度に関連する算出したPおよびS偏光透過スペクトルである。図3に関連するエッジフィルタの例示的な組み合わせは、図2の例示的な多空洞ファブリ・ペロー型フィルタと定性的に同様の挙動を示すが、AOIが法線入射から増加されるにつれて、著しくさらに歪んだスペクトルが存在する。具体的には、通過帯域リップルは、フィルタをP偏光に使用不可能とし、S偏光の通過帯域は、AOI60の光の場合に本質的に排除されるまで減衰する。結果として、図3に関連するエッジフィルタの例示的な組み合わせの有用な角度同調範囲は、このフィルタの場合は約10度〜15度のみであり、約0.5%〜1%の波長同調範囲をもたらす。
【0018】
より一般的には、従来の干渉フィルタのAOIを法線角度から増加させることにより、通常、フィルタのスペクトルに二通りの影響が与えられる。まず、フィルタのスペクトル特性が、より短い波長へとシフトされる。次に、フィルタの角度が法線角度からさらに増加されると、フィルタの複合スペクトルが次第に2つの明確なスペクトルを示す:一方はS偏光された光のスペクトルであり、もう一方はP偏光された光のスペクトルである。本明細書で使用される場合、所与の点におけるS偏光スペクトルとP偏光スペクトルの間の相対的な差は、「偏光分離」と称される。
【0019】
この効果を示すために、中心波長500nmでSiO2およびTa2O5に基づく約1/4波長スタックのAOIの関数としての偏光分離のプロットである図4Aおよび4Bを参照する。図4Aのプロット中、S偏光およびP偏光の光に関連する阻止帯域の帯域幅が示されており、該帯域幅は、いわゆる「G空間」で測定されている。パラメータg=λ0/λは、波長に反比例し、したがって光の周波数に正比例し、各々がλ0/4n(Nは各層の屈折率)に等しい厚さの薄膜層のスタックに関連する基本的な阻止帯域の中心の波長λ0では1に等しい。したがって、G空間における帯域幅は、λ0/λSとλ0/λLの差に等しい(λSおよびλLは、それぞれ阻止帯域の短波長端および長波長端である)。よって、G空間における偏光分離は、単純に、S偏光された光およびP偏光された光のG空間における帯域幅の差の半分である。図4Bに示されるように、スタックは、AOI45度で操作された場合、約0.04g数の偏光分離を示す。AOIを60度に増加させることによって、ほぼ0.07g数の偏光分離がもたらされる。AOIを20度に減少することによって、0.01g数未満の偏光分離がもたらされる。
【0020】
単なる例として、従来のダイクロイック光フィルタは、特に約45度のAOIで操作された場合に、実質的な偏光分離を示す。この偏光分離は、ダイクロイックフィルタの特定の構造から生じる。前途のように、従来のダイクロイックフィルタは、通常、異なる屈折率を有する薄い材料の層を交互に重ねることによって構成される。各層の屈折率が隣接する層の屈折率と異なることに加えて、各個別層の有効屈折率が、異なる光の偏光に関連して異なる。つまり、P偏光された光とS偏光された光とでは、層の有効屈折率が異なるということである。結果として、S偏光およびP偏光された光は、ダイクロイックフィルタの各層を通過する時に異なる度数にシフトする。このシフトにおける差が、これらの異なる偏光に応じて最終的にフィルタのスペクトルをオフセットし、偏光分離をもたらす。
【0021】
従来のダイクロイックフィルタが、角度を合わせた1/4波長スタックの一次阻止帯域に基づく場合、フィルタの阻止帯域の帯域幅間の偏光分離を推定することは比較的簡単である。つまり、ダイクロイックフィルタが、それぞれ、
【数2】
および
【数3】
の屈折率を有する2つの材料で構成されると仮定すると、入射角45度の有効屈折率は以下のように算出することができる:
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
式中、
AOIは、入射媒体であると仮定される空気中の入射角である。
【数8】
および
【数9】
は、それぞれ、P偏光された光およびS偏光された光に対するダイクロイックスタックの低屈折率材料の有効屈折率である。
【数10】
および
【数11】
は、それぞれ、P偏光された光およびS偏光された光に対するダイクロイックスタックの高屈折率材料の有効屈折率である。
【数12】
および
【数13】
は、それぞれ、2つの材料に関連する高屈折率および低屈折率の二乗であり、偏光とは独立している。
【0022】
次に、2つの偏光における一次阻止帯域の帯域幅および偏光分離は、以下のように算出することができる:
【数14】
【数15】
【数16】
式中、
【数17】
および
【数18】
は、それぞれ、G空間におけるS偏光された光およびP偏光された光における一次(基本的な)阻止帯域の帯域幅である。
PSgは、G空間における一次阻止帯域の偏光分離である。
代替として、偏光分離は、波長の観点から表されてもよい。例えば、
【数19】
であり、式中、
PSλは、基本的な阻止帯域の長波長端の偏光分離である(エッジはロングパスフィルタに関連する)。
この値は、S偏光およびP偏光に関連するエッジの平均波長に対するその比率を百分率として表すことにより、無次元値として表されることが多い。
【0023】
偏光分離は、画定された波長帯域にわたって、P偏光およびS偏光のそれぞれで高い透過率および遮断率が達成される偏光フィルタを設計するために用いられてきた。しかしながら、エッジフィルタおよびビームスプリッタの光フィルタにおいて、偏光分離は、平均的な偏光を有する光のエッジ急峻度を大幅に制限する。そのようなエッジフィルタの組み合わせを用いると開示されるシステムは、米国特許第3,864,037,5,591,981号および第5,852,498号明細書に記載されている。
【0024】
米国特許第4,373,782号および第5,926,317号明細書は、角度同調薄膜エッジフィルタの組み合わせに見られる従来のスペクトルの歪みを最小限に抑えるためのアプローチを開示している。例えば、米国特許第4,373,782号および第5,926,317号明細書は、特定のゼロ以外のAOIでのS偏光およびP偏光の通過帯域のスペクトルの配置をある程度制御することを可能にするための、複数層を有する多空洞ファブリ・ペロー型バンドパスフィルタの使用を開示している。特定のAOI(例えば45度)では、そのエッジがより広いP偏光通過帯域の対応するエッジと並ぶことによって、ロングパスエッジまたはショートパスエッジのいずれかと関連する偏光分離をほぼ排除するように、より狭いS偏光の通過帯域を配置することが可能である。しかしながら、2つの偏光の通過帯域の帯域幅の著しい相違および多空洞ファブリ・ペロー型フィルタの通過帯域の帯域幅とエッジ急峻度の相関性のために、2つのエッジは、従来、著しく異なるエッジ急峻度を有する。さらに、阻止帯域領域内のファブリ・ペロー通過帯域の形成のために、エッジフィルタ用途向けの通過帯域幅は、従来、非常に限定されている。
【0025】
Thelenによって提唱される偏光分離を最小限に抑えるためのさらなる方法において(A.Thelen,Design of Optical Interference Coatings,McGraw Hill,1989を参照)、該方法は、S偏光された光およびP偏光された光のスペクトラムエッジを整合させるために、多空洞ファブリ・ペローバンドパスフィルタのチューニングスペーサを用いる。しかしながら、この方法は、ダイクロイックフィルタを作製するために使用される場合に重要な制約を有する。特に、この方法において、最初の層構造は、関連する阻止帯域を画定するために使用される基準波長の複数の半波長に等しい光学的厚さを有するスペーサ層を伴う多空洞ファブリ・ペローバンドパスフィルタの最初の層構造である。また、結果として生じるダイクロイックのエッジは、関連する阻止帯域の本質的に中心になければいけない。阻止帯域の帯域幅を減少させることにより、それに付随して偏光分離の減少をもたらすことができることが分かっている。二次阻止帯域を有するフィルタの場合、阻止帯域の帯域幅は、フィルタを構成する誘電スタックにおける材料の不一致に比例し(この場合の「不一致」とは、層の厚さが波長の1/4から変動することを指す)、高屈折率層および低屈折率層の各対の厚さの合計を波長の約半分に等しく維持する。不一致の程度が高いほど偏光分離の程度が高く、またその逆も同様である。よって、異なる(例えばより高次の)阻止帯域を用いることおよびダイクロイックフィルタを構成する誘電スタックにおける材料の不一致を調節することによって、偏光分離を最小限に抑えることができることが分かっている。
【0026】
しかしながら、この方法は有効であるものの、わずかな不一致が、常に狭い遮断領域およびより低い遮断レベルを有するフィルタをもたらすため、許容されないことが多い。遮断領域の強化を達成することは可能であるが、誘電スタックにおける層の数を増加させることによってのみである。その結果、二次阻止帯域に基づく従来のダイクロイックフィルタの性能は、典型的には製造工程によって許容される最大コーティング厚さにより制限される。
【0027】
より高次の阻止帯域は、高度な遮断が生じる波長よりも短い波長で高い透過率を達成することが困難である1つの理由である。阻止帯域は、薄膜干渉フィルタに見られるように、屈折率の周期的またはほぼ周期的な変動を伴って構造物から反射される光の多くの部分波の建設的干渉のために、透過光が強度に減衰する(T≦10%)波長の範囲である。高屈折率および低屈折率の材料が交互に重なった層からなる「1/4波長スタック」構造(それらの各々が、特定の波長λ0の厚さ(材料中)の約1/4である)の場合、「基本的な」阻止帯域は、ほぼλ0に集中し、約λ0/(1+x)〜λ0/(1−x)の範囲であり、式中、xは、それぞれ屈折率の高屈折率および低屈折率nHおよびnLに関連する。
【数20】
【0028】
多層薄膜干渉フィルタの場合に典型的に見られるように、層ごとの屈折率の変動が純粋に正弦波変動ではなく、むしろ急激に変化する場合、より高次の阻止帯域はより短い波長に存在する。例えば、そのような急激な屈折率変化を有する1/4波長スタックは、約λ0/3、λ0/5等の波長で生じ、三次の阻止帯域では約λ0/(3+x)〜λ0/(3−x)の範囲であり、五次の阻止帯域ではλ0/(5+x)〜λ0/(5−x)である等の「奇数調波」の阻止帯域を示す。層が正確に1/4波長の厚さではない場合、約λ0/2、λ0/4等の波長で生じる「偶数調波」の阻止帯域も存在し得る。
【0029】
一般に、既知のフィルタは、基本的な阻止帯域を用いることか、複数の基本的な阻止帯域を組み合わせることか、または1つ以上の基本的な阻止帯域に関連する層をチャーピングする(徐々に変化させる)ことによって、広範囲にわたって高度な遮断を達成する。アプローチにかかわらず、これらの遮断層に関連するより高次調波の阻止帯域は、基本の阻止帯域(単数)または阻止帯域(複数)よりも短い波長で透過を阻止する。
【0030】
液晶同調フィルタ(LCTF)もまた、可変スペクトル機能性を示すように設計される。LCTFは、直線偏光板によって隔てられた一連の複屈折結晶板であるLyot−Ohman偏光干渉フィルタ構成に基づく(Optical Waves in Layered Media,Pochi Yeh,Wiley,New York,1988,Section 10.1)。このフィルタの各「段階」は、波長の関数として透過率の正弦波変動をもたらし、多数の段階の組み合わせが、各々、異なる周波数の正弦波透過曲線を生成し、唯一の波長であるフィルタ通過帯域で全体的な透過特性の建設的干渉をもたらす。LCTFは、これらの板を横断する電圧の印加による結晶複屈折性の調節が、建設的干渉が生じる波長を修正し、それによって通過帯域の波長を同調させるように、各セクションの固定複屈折プレートに複屈折結晶板を加える。
【0031】
LCTFフィルタは、何百nmにもわたって同調するように設計することができる。具体的には、フィルタは、可視波長域(<400nm〜>700nm)全体にわたって同調するように利用可能である。角度同調薄膜フィルタと同様に、これらは大きな開口および2次元画像に対応可能である。これらのフィルタの重大な欠点として、透過率不良、エッジ急峻度および帯域外遮断の不良、固定帯域幅、および低いレーザ損傷閾値(LDT)が挙げられる。また、これらは偏光に基づくため、強度に偏光依存性である。実際には、これらは直線的に偏光された光のみを透過するため、偏光されていない光の最大透過率は50%であり、実際には、フィルタを通過する偏光された光の透過率でさえも約50%である傾向にある(偏光されていない光の全体的な透過率の25%をもたらす)。強誘電性液晶に基づくフィルタの例は、米国特許第5,132,826号明細書に開示されている。
【0032】
可変スペクトル機能性を示すように設計されたさらなる従来のフィルタシステムとして、音響光学同調フィルタ(AOTF)が挙げられる。AOTFは、酸化テルル(TeO2)等の材料の単一結晶内を進む音響せん断波によって形成される体積格子からの光の屈折に基づく。波長は、結晶の片側に連結されたラジオ周波数(RF)変換器によって生成される。結晶を透過した光は、ゼロ次非回折ビーム、(直線)偏光の一方向回折ビーム、および他の(直交)偏光の回折ビームの3つの波に分離され、各々が異なる(角度)方向に進む。非回折ビームが全ての波長を含むのに対し、回折ビームは、体積ホログラムからの回折のために狭通過帯域内の波長のみを含む。このデバイスをフィルタとして使用する場合、通常、非回折ビームと、偏光された回折ビームのうちの1つとが遮断され、第2の偏光された回折ビームが透過光として使用される。
【0033】
AOTFフィルタはまた、広い同調範囲を示すことができ(LCTFと同様に、これもまた何百nmにもわたって同調することができる)、高い同調速度を示すことができる(他の全ての技術でミリ秒以上であることと比較して、10マイクロ秒の速さの波長切替時間が可能)。最も重大な短所として、エッジ急峻度および帯域外遮断の不良、調節可能な帯域幅の欠如、ならびに非常に小さな開口(典型的には最大3〜10mm)が挙げられ、それらは撮像用途のための有用性を制限する。また、LCTFと同様に、AOTFは直線的に透過された光のみを使用するため、偏光されない光の用途では少なくとも50%の光が損失する。米国特許第5,796,512号明細書が、AOTFを使用する撮像システムの例を提供している。
【0034】
可変スペクトル機能性を示すように設計されたさらなる従来のフィルタシステムとして、線形可変同調フィルタ(LVTF)が挙げられる。線形(および円形)可変薄膜フィルタは、直線方向(線形可変フィルタの場合)に沿った、または円形フィルタの方位角方向の周囲の(円形可変フィルタの場合)配置の関数としての不均一な薄膜層の厚さ変動に基づく。結果として、層の厚さに対応するLVTFフィルタのスペクトル特性は、空間的にも変化する。したがって、フィルタを横切ってビームを移動させるか、またはビームの経路を横切ってフィルタを移動させるかのいずれかによってフィルタ上の光ビームの位置を変更することにより、スペクトル特性(エッジフィルタのエッジ位置またはバンドパスフィルタの通過帯域波長等)を変更することができる。米国特許第6,700,690号明細書は、それらが独立して平行移動された場合、2つのフィルタの組み合わせによって形成される中心波長だけではなく、帯域幅もまた調節することができるような、一方はロングパスフィルタであり、他方はショートパスフィルタである、2つのLVTFの組み合わせについて記載している。
【0035】
LVTFは、透過特性、撮像特性を含む、他の可同調薄膜フィルタの特徴をいくつか共有し、それらは、比較的高いレーザ損傷閾値を示す。また、光は、常にほぼ0度のAOIで入射するため、これらは偏光悲感受性であり得る。さらに、米国特許第6,700,690号明細書に開示される構成を使用することにより、いずれの中心波長に対しても帯域幅を任意に調節することができる。短所として、ゼロ以外の幅の光ビームにわたるスペクトル特性の変動に起因してスペクトル性能がより不良であること(エッジ急峻度)と、フィルタを機械的に変換する必要性に起因して同調速度が低いことが挙げられる。
【0036】
2次元画像ビームから波長の帯域を選択することが可能な可同調光フィルタに対する多くの他の薄膜および非薄膜アプローチが存在し、それには、大半のSagnac、Mach−Zehnder、およびMichelson型干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、ならびに能動的に調節可能な層および/もしくは基板を有するか、または応力光学効果によって光学特性の変化を機械的に誘発することによって同調される薄膜フィルタが含まれる。一例として、「Tunable thin−film filters:review and perspectives」M.Lequime,Proceedings of the SPIE,Vol.5250,pp.302−311,2003(C.Amra,N.Kaiser,H.A.Macleod,Eds.)が、そのようなフィルタの概念をいくつか記載している。
【0037】
したがって、薄膜フィルタのスペクトル特性および2次元画像性能特性、ならびに回折格子の中心波長を同調させる柔軟性を有する光フィルタを提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0038】
本開示による光フィルタの一実施形態は、第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有する、材料層とを備え、
第1の複数の材料層は、入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈し、第2の複数の材料層は、入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈し、約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、カットオンエッジにおける第1の複数の材料層の偏光分離は、第1の角度の関数としてカットオンエッジの波長の約1パーセントを超えず、約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、カットオフエッジにおける第2の複数の材料層の偏光分離は、第2の角度の関数としてカットオフエッジの波長の約1パーセントを超えず、第1の角度の値および第2の角度の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼカットオンエッジの波長以下になり、カットオンエッジの波長がカットオフエッジの波長未満になり、カットオフエッジの波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である。
【0039】
本開示による光フィルタのさらなる実施形態は、光フィルタであって、少なくとも1つの基板と、第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、第1および第2の複数の第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有る、材料層と、を備え、第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第1の角度の関数として、第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈し、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第2の角度の関数として、第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈し、第1の角度の第1の値および第2の角度の第1の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼ第1の波長以下になり、第1の波長が第2の波長未満になり、第2の波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、第1の角度の第1の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第1の値によって決定される第2の波長との分離は、第1の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、第1の角度の第1の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第1の値によって決定される第2の波長との差が、第1の通過帯域幅であるような第1の通過帯域領域であり、第1の角度の第2の値および第2の角度の第2の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼ第1の波長以下になり、第1の波長が第2の波長未満になり、第2の波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、第1の角度の第2の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第2の値によって決定される第2の波長との分離は、第2の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、第1の角度の第2の値によって決定される第1の波長と、第2の角度の第2の値によって決定される第2の波長との差が、第2の通過帯域幅であるような第2の通過帯域領域であり、第1の角度の第1の値と第1の角度の第2の値との間の値の任意の第1の角度の場合、第1の偏光分離は、第1の角度の関数として第1の波長の約1パーセントを超えず、第2の角度の第1の値と第2の角度の第2の値との間の値の任意の第2の角度の場合、第2の偏光分離は、第2の角度の関数として第2の波長の約1パーセントを超えず、第1の角度の第2の値によって決定される第1の波長は、第1の角度の第1の値によって決定される第1の波長の少なくとも約6パーセント以内であり、第2の角度の第2の値によって決定される第2の波長は、第2の角度の第1の値によって決定される第2の波長の少なくとも約6パーセント以内である。
【0040】
本開示による光フィルタを作製する方法の実施形態は、光フィルタを作製する方法であって、第1の複数の交互の第1および第2の材料層を第1の基板表面に被着するステップと、第2の複数の交互の第1および第2の材料層を第2の基板表面に被着するステップと、を含み、第1および第2の複数の第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有し、第1の基板表面に被着された第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、第2の基板表面に被着された第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第1の基板表面に被着された第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第1の角度の関数として、第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の場合、第2の基板表面に被着された第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て第2の角度の関数として、第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、第1の偏光分離は、第1の角度の関数として第1の波長の約1パーセントを超えず、約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、第2の偏光分離は、第2の角度の関数として第2の波長の約1パーセントを超えず、第1の角度の値および第2の角度の値は、第2のS阻止帯域の波長がほぼ第1の波長以下になり、第1の波長が第2の波長未満になり、第2の波長未満がほぼ第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である。
【0041】
さらなる特徴および利点は、この後に続く説明に一部記載され、該説明から明白であるか、または開示される実施形態の実施によって明らかになる。特徴および利点は、付属の特許請求の範囲に具体的に指定される要素および組み合わせによって実現および達成される。
【0042】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的および説明的であるに過ぎず、請求されるような実施形態の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0043】
本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を成す添付の図面は、実施形態を示しており、説明と一緒になって、開示される実施形態の特徴、利点、および原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】既知の狭帯域多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタに関連するスペクトルを示す(FWHMおよそ2nm)。
【図2】法線入射で比較的広い通過帯域を有する多空洞ファブリ・ペロー薄膜フィルタに関連するスペクトルを示す(FWHMおよそ20nm)。
【図3】ロングパスおよびショートパスフィルタのコーティングの組み合わせからなる既知の蛍光薄膜バンドパスフィルタに関連するスペクトルを示す(FWHMおよそ35nm)。
【図4A】中心波長500nmでSiO2およびTa2O5に基づく既知の1/4波長スタックのAOIの関数としてのG空間における帯域幅のプロットである。
【図4B】中心波長500nmでSiO2およびTa2O5に基づく既知の1/4波長スタックのAOIの関数としての偏光分離のプロットである。
【図5】一実施形態に従って、単一ガラス基板の対向する面に適用された可同調カットオンおよびカットオフフィルタコーティングからなる可同調バンドパスフィルタ、ならびに比較的広い波長域にわたって帯域外遮断を提供するように法線入射で使用される任意選択的な広範囲遮断フィルタを示す。
【図6】同じく一実施形態に従って、入射光ビームの横方向の平行移動を排除するように広範囲遮断フィルタを逆回転させた、図5の実施形態のさらなる描写である。
【図7】一実施形態に従って、独立した、逆回転可能な可同調エッジフィルタを示す。
【図8】一実施形態に従って、可同調カットオンおよびカットオフコーティングの組み合わせを有し、固定または可同調広範囲遮断コーティングをさらに含む実施形態の代表的なスペクトルを示す。
【図9】一実施形態に従って、可同調カットオンフィルタについて法線入射(AOI=0度)で算出したスペクトルを示す。
【図10】一実施形態に従って、可同調カットオンフィルタについてAOI=60度で算出したスペクトルを示す。
【図11】一実施形態に従って、裏面が被覆されていない別個の基板上の2つの可同調エッジフィルタに関連する法線入射(AOI=0度)で算出したスペクトルを示す。
【図12】一実施形態に従って、裏面が被覆されていない別個の基板上の2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI=45度で算出したスペクトルを示す。
【図13】一実施形態に従って、単一基板の対向する側面に被覆された2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI0〜60度で算出したスペクトルを示す。
【図14】一実施形態に従って、単一基板の対向する側面に被覆された2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI0〜60度で測定されたスペクトルを示す。
【図15】一実施形態に従って、単一基板の対向する側面に被覆された2つの可同調エッジフィルタに関連するAOI0〜60度およびプローブ光2.5°CHAで算出したスペクトルを示す。
【図16】一実施形態に従って、コーティング層上の入射光用媒体が、空気ではなくガラスであるフィルタを示す。
【図17】一実施形態に従って、コーティング層上の入射光用媒体が、空気ではなくガラスである、直列の2つの可同調エッジフィルタを示す。
【図18】一実施形態に従って、コーティング層上の入射光用媒体が、空気ではなくガラスである、直列の2つの可同調バンドパスフィルタを示す。
【図19】可同調バンドパスフィルタを含む一実施形態による光学システムと、2つ以上の経路のうちのいずれか1つに光を再度方向付けるために使用される鏡の配置とを表す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に示す。可能である場合、同一のまたは類似する部分を言及するために図面を通して同じ参照番号が使用される。
【0046】
本開示による実施形態は、本質的に偏光分離を伴わない高い入射角で動作し、両方の光の偏光でほぼ等しいエッジ急峻度を示すエッジフィルタ(ロングパスまたは「カットオン」型フィルタおよびショートパスまたは「カットオフ」型フィルタの両方)を含む。本開示による実施形態はまた、両方の偏光で高いエッジ急峻度の値を有し、法線角度(0度)から実質的に90度までの全ての入射角度で実質的に偏光分離を示さないエッジフィルタも含む。したがって、これらの実施形態によるエッジフィルタを通過する光の偏光状態にかかわらず、開示される実施形態によって示される特性をほとんど変更せずに、この全範囲の入射角にわたって、開示される実施形態によるエッジフィルタまたは開示される実施形態によるエッジフィルタの組み合わせを角度同調させることが可能である。よって、本開示による実施形態は、法線入射でフィルタのエッジ波長または中心波長の12%を超える実質的に一定であるフィルタ特性を有する実施形態等の、広い波長の範囲にわたって動作する可同調薄膜フィルタを含む。本開示による実施形態はまた、屈折率の高い層および低い層のために異なる材料の選択肢を伴う、より広い範囲にわたって可同調である可同調薄膜フィルタも含む
【0047】
一実施形態に従って、図5は、単一ガラス基板の対向する面に適用された可同調カットオンおよびカットオフフィルタコーティングからなる可同調バンドパスフィルタ、ならびに広い波長域にわたって実質的な帯域外遮断を提供するために法線入射で使用される広範囲遮断光フィルタを示す。図5は、第1の表面上に可同調カットオンフィルタコーティング501、そして第2の表面上に可同調カットオフフィルタコーティング502を有するガラス基板503を含むバンドパスフィルタ500を含む。一実施形態によると、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/896,589号(「Low Cost Filter for Fluorescence Systems」)に記載されるように、コーティング501、502の両方を基板503の単一表面上の単一コーティングに組み合わせるか、第2の表面を非被覆状態のままにするか、または反射防止(AR)コーティングで被覆することができる。
【0048】
図5に示される配置もまた、法線入射で広範囲遮断フィルタ510上に衝突する光線/光ビーム690のための、バンドパスフィルタ500とともに使用することのできる広範囲遮断フィルタ510を示す。一実施形態によると、広範囲遮断フィルタ510は、バンドパスフィルタ500によって到達可能な波長の全範囲にわたって高透過率であり、バンドパスフィルタ500の通過帯域から遠く離れており、バンドパスフィルタ500によって明らかには遮断されない波長で著しく遮断(減衰)する、コーティングまたはコーティングの組み合わせを含むことができる。一実施形態によると、広範囲遮断フィルタ510は、ガラス基板513上に広範囲遮断カットオンフィルタコーティング511と、広範囲遮断カットオフフィルタコーティング512とを含んでもよい。加えて、かつ一実施形態によると、広範囲遮断フィルタ510は必要とされないが、バンドパスフィルタ500を補完するために使用されてもよい。
【0049】
例えば、広範囲の遮断は、さもなければ弱い望ましい信号を圧倒し得る励起光または周囲光を検出器で排除するための多くの用途(例えば、光ダイオードおよびCCD/CMOSカメラを含むSiに基づく検出器ではUVから約1100nm等、システムにおいて使用される検出器の感度の全範囲にわたって光を遮断する)において有益であり得る。しかしながら、P偏光された光は、高いAOIで大幅に減少された反射力を示す傾向があるため、高い角度でP偏光された光を遮断するためには法線入射よりもかなり多くの層が必要である。したがって、全ての偏光のために広い波長域にわたって少なくともある程度の広範囲の遮断を図5に示されるバンドパスフィルタ500に組み込むことが可能であるが、バンドパスフィルタ500のみを用いてこの遮断を行うことは、法線入射で使用される広範囲遮断カットオンフィルタコーティング511および広範囲遮断カットオフフィルタコーティング512等の補助的なフィルタを用いた場合よりもはるかに効率が悪い(本明細書において、効率とは、正味コーティング厚さ当たりの遮断量を指して使用される)。
【0050】
一実施形態に従って、図5はまた、バンドパスフィルタ500の配向を回転させること(585)によってフィルタ波長が同調されると、バンドパスフィルタ500から出るビーム690が横方向に(すなわち、光軸に対して垂直方向に)平行移動されることも示している。横方向の平行移動の量は、同調角度および基板503の厚さに依存する。非撮像システムの場合、この平行移動は、システムの設計誤差に組み込むことができる。
【0051】
一実施形態によると、ビームの横方向の平行移動を排除するための方法が存在する。図6は、バンドパスフィルタ500を回転させると広範囲遮断フィルタ510が逆回転する(575)一実施形態に従ったアセンブリを示す。一実施形態によると、この実装は、可同調カットオンエッジフィルタコーティング501、可同調カットオフエッジフィルタコーティング502を含む可同調バンドパスフィルタ500を含む。広範囲遮断フィルタ510は、広範囲遮断カットオンエッジフィルタコーティング511および広範囲遮断カットオフエッジフィルタコーティング512を含む。ここでも同様に、図6によって示される配置は、ビーム690の横方向の平行移動を排除するが、広範囲遮断フィルタ510は、高いAOI値で高度な遮断を達成するためにかなり多くの層を必要とするため、これは固定角広範囲遮断フィルタの使用ほど効率的ではない。
【0052】
一実施形態による代替の配置は、図7に示されるように逆回転する2つのフィルタを構成することであり、図中、フィルタ700は、可同調カットオンエッジフィルタコーティング701を含み、フィルタ705は、可同調カットオフエッジフィルタコーティング706を含む。フィルタ700および705の回転角度は、それらが等しく、かつ反対であり、したがって、ビーム790の横方向の平行移動を排除し(例示目的のみであるが、平行移動を決定するフィルタ700およびフィルタ705の特性は他の点において同一である)、結果として得られる性能が、効率的に固定通過帯域幅を有する可同調バンドパスフィルタの性能であるように相関していてもよい。しかしながら、図7に示されるように、一実施形態によると、カットオフエッジフィルタ706およびカットオンエッジフィルタ701に関連する波長を独立して同調することができ、したがって、独立して可同調帯域幅を有する可同調バンドパスフィルタを可能にするように、フィルタ700およびフィルタ705は、独立して回転するように構成されてもよい。よって、一実施形態によると、フィルタ700およびフィルタ705は、第2の表面が被覆されていない状態であってもよいか、または反射防止(AR)コーティング702もしくは広範囲遮断コーティング(図示せず)で被覆されてもよい。さらに、一実施形態によると、カットオンエッジフィルタコーティング511およびカットオフエッジフィルタコーティング512を有する広範囲遮断フィルタ510は、効率的なコーティング厚さの全体的な使用を提供するように、フィルタ700およびフィルタ705との組み合わせにおいて使用されてもよい。
【0053】
一実施形態によると、図8は、図5〜7に記載される実施形態の各々に関連する(可同調フィルタの比較的大きな代表的AOIでの)例示的な代表的スペクトルを示す。実線801は、可同調カットオンエッジフィルタコーティング501または701のスペクトルを表し、破線802は、比較的高いAOIでの可同調カットオフエッジフィルタコーティング502または706のスペクトルを表す。点線803は、広範囲遮断カットオンエッジフィルタコーティング511のスペクトルを表し、一点長鎖線804は、広範囲遮断カットオフエッジフィルタコーティング512の(固定AOIでの)スペクトルを表す。波長811および809は、比較的高いAOIでのカットオンエッジフィルタコーティング501または702の阻止帯域806のエッジに関連する。範囲805(波長809および810によって挟まれる)は、AOI0度(エッジ810)と、実線801で図示されるスペクトル(エッジ809)に関連する比較的高いAOIとの間の通過帯域807を分ける阻止帯域のカットオンエッジに関連する可同調範囲を表す。波長812は、カットオフエッジフィルタコーティング502または706の阻止帯域の通過帯域に最も近いエッジに関連する。波長813は、広範囲遮断カットオフエッジフィルタコーティング512の阻止帯域の通過帯域に最も近いエッジに関連する。波長814は、広範囲遮断カットオンエッジフィルタコーティング511の阻止帯域の通過帯域に最も近いエッジに関連する。通過帯域808は、固定広範囲遮断フィルタ510に関連する。
【0054】
固定広範囲遮断型補助フィルタ(図5および7と一致して示される)を含む一実施形態による比較的広い遮断フィルタを得るために、各可同調エッジフィルタの有効同調範囲は、フィルタの実際の同調範囲(すなわち、範囲805等、フィルタのスペクトルの明らかな歪みなしで最大角度範囲にわたってどれくらい遠くにエッジが移動するか)および阻止帯域幅のうちの最も小さいものである。例示目的のみであるが、我々は、阻止帯域幅(阻止帯域806の幅等)が実際の同調範囲(範囲805等)よりも小さい状況について検討する。(図8のスペクトルは、必ずしもそのような関係を反映するわけではないことに留意されたい。しかしながら、それは、阻止帯域および可同調通過帯域の代表的なエンドポイントのみに依存する以下の考察を損うものではない。)そのような例示的なシナリオでは、可同調エッジフィルタが、その最も長い波長に(すなわち法線入射で)同調される場合、広範囲遮断カットオンエッジ814は、可同調カットオンエッジフィルタの阻止帯域の最も小さい波長(すなわち、エッジ811に対応する波長)に配置することができる。(さらに、図8は、法線入射で可同調カットオンエッジフィルタコーティングの完全なスペクトルを示さないことに留意されたい。しかしながら、我々は、検討の目的のために、可同調カットオンエッジフィルタのエッジ811に関連する波長が、法線入射で波長814とほぼ同じ波長にシフトすると仮定することができる。)そのような広範囲遮断カットオンエッジの設置は、阻止帯域幅が同調範囲よりも小さいという仮定に基づくと、カットオンエッジ(すなわち波長814)が、エッジ(すなわち波長809)の実際の同調範囲によって達成可能な最も短い波長よりも長いため、同調範囲を制限する。同じ論法に基づいて、各可同調エッジフィルタの通過帯域幅は、カットオンおよびカットオフ同調可能エッジフィルタの合わせたスペクトルから得られる帯域通過特性によって達成可能な最大帯域幅に上限を効率的に設定する。
【0055】
反対に、また、可同調カットオンエッジフィルタおよび可同調カットオフエッジフィルタの各々のそれぞれの阻止帯域幅が、それぞれの可同調カットオンエッジフィルタおよび可同調カットオフエッジフィルタの実際の同調範囲よりも大きいと仮定すると、一実施形態に従って、広範囲遮断フィルタ510の固定通過帯域が、カットオンフィルタの有効同調範囲の最も短い波長(すなわち波長λS、または波長809)からカットオフフィルタの有効同調範囲の最も長い波長(すなわち波長λL、または法線入射810でエッジ813に対応する波長)までを網羅するように選択される場合、図7に示される実施形態には、ゼロと、λS−λLの差、可同調カットオンエッジフィルタコーティング701の通過帯域幅、および可同調カットオフエッジフィルタコーティング706の通過帯域幅のうちの最も小さいものとの間のいずれかの任意の通過帯域の帯域幅が選択されてもよい。さらに、いずれの中心波長が、2つのバンドパスフィルタのエッジが範囲内[λS,λL]であるという制約を受けるように選択されてもよい。
【0056】
さらに、一実施形態によると、組み合わされたフィルタが任意の中心波長で任意の小さな(例えばおよそ0nm幅の)通過帯域の帯域幅を達成できるためには、カットオフエッジフィルタコーティング706の有効同調範囲の最も短い波長が、カットオンエッジフィルタコーティング701の有効同調範囲の最も短い波長以下でなければならない。さらに、図8に示されるように、カットオフエッジフィルタコーティング706の有効同調範囲の最も短い波長は、カットオンエッジフィルタコーティング701の有効同調範囲の最も短い波長よりも長く、したがって、全体的により広いバンドパスフィルタの同調範囲を達成するように構成することが可能であるが、同調範囲の下端および上端でバンドパスフィルタの最も小さい達成可能な帯域幅により低い制限を設けることになる。
【0057】
一実施形態によると、本明細書で考察されるエッジフィルタは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/129,534号(「Interference filter for non−zero incidence spectroscopy」、AOI約45度で使用するためのエッジフィルタを開示する)および参照により本明細書に組み込まれる第12/238,228号(「Optical thin−film notch filter with very wide passband regions」、比較的広い通過帯域を有するノッチフィルタを開示する)に記載されるような「通過帯域欠陥」に関連するスペクトルエッジを利用する。
【0058】
一実施形態に従って、図9は、本開示による例示的な可同調カットオンフィルタの法線入射(AOI=0度)で算出したスペクトルを示す。約600nm〜約750nmの領域は、フィルタ構造を形成する約1/4波長厚の高屈折率および低屈折率の交互の薄膜層のスタックに関連する阻止帯域901である。この例では、可同調カットオンエッジ902は、約540nmで生じる。カットオフ阻止帯域エッジ903は約600nmで生じ、この波長未満は通過帯域領域である。典型的なカットオフ(ショートパス)フィルタの場合、約600nm未満の通過帯域領域においてリップルを排除するために、約1/4波長厚の層の正確な層の厚さが最適化される。しかしながら、通過帯域内の限定された範囲にわたってリップルを排除するのではなく、むしろ増強するように注意深く最適化が行われてもよく、したがって、通過帯域欠陥904と称される透過率の非常に低い領域が生じる。図9に示されるように、欠陥は、約470〜約540nmの広範囲にわたって生じる。通過帯域欠陥の長波長側では、約540nmで傾斜の大きなカットオンエッジが形成される。
【0059】
本開示によるフィルタアセンブリの同調特性は、より高い値のAOIでスペクトルを算出した場合に明白となる。一実施形態に従って、図10は、図9に関連するフィルタのAOI=60で算出したスペクトルを示す。一実施形態によるフィルタアセンブリを用いると、欠陥の少なくとも片側に傾斜の大きなエッジが存在するように、1/4波長スタック構造に関連する通過帯域内に通過帯域欠陥1001を形成すること、および通過帯域欠陥を深い遮断によってかなり広くすることの両方が可能である。また、一実施形態によると、両方の偏光状態(「S」および「P」)に関連する通過帯域欠陥のカットオンエッジ1002が互いに整合するように構造を最適化するように、十分に多数の薄膜層が、システムの設計における十分な自由度を許容する。そのような約475nmでの2つのカットオンエッジの整合は、図10において明白である。
【0060】
約475nmにおけるカットオンエッジに関連する偏光分離の欠如を、約500nm〜約550nmの主な阻止帯域のカットオフエッジ(すなわち、エッジ1004および1005)で明白な分離(約30nmまたはエッジ波長の約6%である)と比較することは有益である。対照的に、可同調通過帯域欠陥のエッジ1002に関連する分離は、1nm未満またはエッジ波長の約0.2%である。一実施形態によると、S偏光およびP偏光された光に関連する通過帯域欠陥のエッジ1002の整合を達成することは、通過帯域欠陥に自然に備わった特徴ではなく、薄膜層構造は、この結果を達成するように最適化されなければならない。図10に示されるように、阻止帯域(S)1006は、約520nm〜約680nmに存在し、阻止帯域(P)1007は、約540nm〜約630nmに存在する。
【0061】
一実施形態によると、図9で算出したスペクトルから、第2の側面が被覆されていない一枚のガラスの片側にコーティングが施され、約4%の反射率による損失がもたらされることが推定される(したがって通過帯域領域の平均透過率は96%)。
【0062】
図9および10に示される例示的なスペクトルは、可同調カットオンエッジフィルタに対応する実施形態によるアセンブリの一部に関連する。可同調カットオフ(ショートパス)エッジフィルタを形成するために、通過帯域の長波長側に通過帯域が作製され、通過帯域欠陥の短波長側に傾斜の大きなカットオフエッジが形成される。したがって、可同調カットオフフィルタは、この欠陥の短波長端であり、この可同調フィルタに関連する通過帯域は、阻止帯域カットオンエッジ(同調されると著しい偏光分離を示す)と可同調カットオフエッジとの間の領域である。
【0063】
一実施形態に従って、図11および12は、可同調カットオンフィルタとカットオフフィルタの組み合わせが、どのように可同調バンドパスフィルタを形成するかを示している。上記のように、これらの2つのフィルタは、1つの基板上の単一コーティングに組み合わせられてもよいか、またはそれらは単一基板の対向する側面に被覆されてもよいか、またはそれらは、バンドパスフィルタエッジの独立した同調を達成するように、2つの独立して回転可能な基板に被覆されてもよい。一実施形態に従って、図11は、例示的な可同調カットオンエッジフィルタ1101およびカットオフエッジフィルタ1102の法線入射で算出したスペクトルを示しており、計算は、各フィルタが別個の基板に被覆され、その裏面は被覆されていない状態の実施形態によるものである(したがって、4%の反射損失を示す)。AOI=0度で得られるバンドパスフィルタの通過帯域(図11に示されるような)は、約540nm〜約570nmである。
【0064】
一実施形態に従って、図12は、本開示によるフィルタが各々45°のAOIに同調された場合に得られる算出したスペクトルを示す。中心波長が約555nmから約512nmにシフトし、この時、通過帯域1201は約497nm〜約527nmである。図12に示されるように、エッジ急峻度および通過帯域の帯域幅のどちらも、法線入射での値と比較して本質的に変化しないままであった。
【0065】
一実施形態に従って、図13は、例示的な可同調カットオンおよびカットオフフィルタが単一基板の対抗する側面に被覆された場合に得られるバンドパスフィルタについて、約0〜約60度の範囲の4つの異なるAOIで両方の光の偏光について算出したスペクトルを示す。曲線1300は、AOI60度でのスペクトルを示し、曲線1310は、AOI45度でのスペクトルを示し、曲線1320は、AOI30度でのスペクトルを示し、曲線1330は、AOI0度でのスペクトルを示す。一実施形態に従って、コーティングの各々と関連する薄膜層構造(屈折率値および厚さ)を表1に示す。スペクトルは、同調範囲全体にわたる偏光にかかわらず高い透過率および急峻なエッジを維持する一方で、法線入射で約555nm〜約490nmまたは中心波長の約12%に同調する能力を示している。
【0066】
以下の表1は、一実施形態による可同調バンドパスフィルタの例示的な設計を含む。例示的なフィルタは、2つのコーティングを備え、単一基板の対向する側面、または2つの異なる基板に被覆されてもよい。
【表1】
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【0067】
図13および表1に示されるスペクトルに関連するフィルタは、イオン助成によるイオンビームスパッタリングおよび光学的モニタリングを使用して製造した(プロセスの詳細な記述については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,068,430号明細書を参照)。
【0068】
一実施形態に従って、一連のAOIおよび両方の直交偏光状態で測定された、得られたフィルタの透過スペクトルを図14に示す。曲線1400は、AOI60度で測定されたスペクトルを示し、曲線1410は、AOI50度で測定されたスペクトルを示し、曲線1420は、AOI40度で測定されたスペクトルを示し、曲線1430は、AOI30度で測定されたスペクトルを示し、曲線1440は、AOI15度で測定されたスペクトルを示し、曲線1450は、AOI0度で測定されたスペクトルを示している。一実施形態によると、スペクトルは、分解能を0.1nmに設定したPerkin Elmer Lambda 950商業用分光光度計を使用して測定した。使用した構成では、フィルタにおける光ビームは完全にはコリメートされておらず、円錐半角(CHA)は約2.5度である。この角度の範囲は、AOIが増加するにつれて明らかに減少するエッジ急峻度を説明するものである。コリメート光の実際のエッジ急峻度は比較的一定のままであるが、5度の範囲の角度を網羅するプローブ光を用いてフィルタを測定した場合、(分光光度計上に設定された広い波長の分解能でフィルタを測定したかのような)明らかにあまり急峻ではないエッジをもたらすように生じる平均化効果が存在する。この効果を示すために、一実施形態に従って、図15は、CHA2.5度のプローブ光を想定して、このフィルタ設計について算出したスペクトルを示す。曲線1500は、AOI60度で算出したスペクトルを示し、曲線1510は、AOI50度で算出したスペクトルを示し、曲線1520は、AOI40度で算出したスペクトルを示し、曲線1530は、AOI30度で算出したスペクトルを示し、曲線1540は、AOI15度で算出したスペクトルを示し、曲線1550は、AOI0度で算出したスペクトルを示している(全てCHA2.5度のプローブ光を想定)。
【0069】
図14および15に示されるように、測定されたスペクトルにおいて明白なエッジ急峻度の感度および不完全なコリメート光について算出したスペクトルは、一実施形態による角度同調薄膜フィルタについて考慮されるべきトレードオフを強調している。角度の所与の変化に対してフィルタの同調範囲を最大化するために、またはフィルタを同調することができる速度を最大化するために、角度の所与の変化に対する波長の変化を可能な限り大きくすること(同調方程式(1)のneffを可能な限り小さくすることに等しい)が好ましい。慣性が、所与の時間内に所与の量だけフィルタを回転させることができる速度を制限するため、速度が向上する。
【0070】
ガルバノメータスキャナ(すなわち、「ガルボスキャナ」)は、より小さい角度範囲にわたってより迅速に動作できることが知られているが、この角度に対する波長の感度増加には代償が伴う。角度の所与の変化に対する波長の変化の感度が高いほど、ある範囲の角度からなる実際の光ビームを使用した場合に鋭いスペクトル特徴を維持することが困難である。レーザに基づくシステムは、典型的に、光が例外的に良好にコリメートされる(典型的には数ミリラジアン未満)領域をシステム内に有する。しかしながら、多くの撮像システムの高度にコリメートされたほとんどの領域において、光線角度の範囲は1〜2度以上であることが多い。
【0071】
有効屈折率neffによって特徴付けられる角度に対する波長の感度は、任意に調節することはできない。本開示によるフィルタの設計構造を変更することによって、neffをごく僅かに修正することができるのみである。これらのスペーサ層内に光度が局在化することから、スペーサ層材料の選択(高屈折率または低屈折率材料であるかどうか)がその値に著しい影響を与え得るため、多空洞ファブリ・ペロー型フィルタのneffを修正するためにより多くの柔軟性が存在する。本開示によるフィルタのneffを明らかに変化させるために、異なるコーティング材料を選択することができる。しかしながら、屈折率差が低いと、急峻なエッジおよび広範囲の遮断を達成するために多大な数の層を必要とする結果になるため、屈折率差(平均値に対する高屈折率値と低い屈折率値の差の比率)をあまり減少させないように注意が払われてもよい。
【0072】
2つの異なる屈折率の媒体間の境界面で光の屈折を左右するスネルの法則のために、実際の薄膜コーティング層内の光のAOIは、フィルタに対する空気中のAOIよりも小さい。例えば、一実施形態によると、θ=60度の空気中のAOIで上記可同調フィルタに光が入射すると、有効屈折率が約neff=1.84であるため、層内の角度は約θeff=sin−1(sin θ/neff)であるか、またはこの場合θeff=28度である。しかしながら、一実施形態によると、入射媒体が空気以外の材料(ガラス等)である場合、層内の角度がより大きくなり、より高い波長同調感度をもたらす。例えば、可同調フィルタがガラス等の空気以外の材料に埋め込まれ、ガラスが約n=1.5の屈折率を有する実施形態(「埋め込み型形状」)によると、層内の角度は約θeff=sin−1(n sin θ/neff)であるか、またはガラス内の入射角がθ=60度である場合はθeff=49度である。一般に、入射媒体が入射角nを有する場合、同調依存性は以下に変化する。
【数21】
【0073】
換言すると、これは、あたかも有効屈折率neffがneffからneff/nに変化したかのようである。よって、例示的なフィルタの場合、新しい有効屈折率は約1.84/1.5=1.23である。したがって、一実施形態によると、埋め込み型形状では波長同調範囲の増加もあり得る。例えば、埋め込み型形状のためにAOIを0度から60度に同調させることができる場合、方程式(11)は、波長が開始波長の約29%に同調するであろうことを示唆している。上記例示的フィルタでは、同調は、555nmから555nm×0.71=394nmになるであろう。フィルタを0度から70度に同調させることができる場合、波長は開始波長の約35%に同調するであろう。そのため、法線入射で650nmの中心波長になるように設計されたフィルタは、420nm未満に同調させることができる。そのようなフィルタは、波長のほぼ全可視域を網羅するであろう。しかしながら、通常、コーティング層内の角度が大きくなり、バンドパスフィルタを得ることを困難にする他の物理的作用が生じるため、そのような大きな角度範囲にわたってフィルタを同調させることは不可能である。
【0074】
よって、ガラス内に「埋め込まれた」フィルタコーティングの場合、AOIの所与の変化のために波長により大きな変化が生じる。この感度増加の利点は、所与の波長同調範囲の埋め込み型の場合、ガラス板上の空気中のコーティングの場合ほどフィルタコーティング領域が大きくなくてもよいことである。また、薄膜コーティングのコストは、コーティング領域にほぼ比例する傾向にあるため、埋め込み型アプローチには潜在的なコスト優位性が存在する。
【0075】
一実施形態に従って、図16は、入射光1690が、空気の代わりにガラスを通って進むことができるようにするための可能なアプローチを示す。図16に示されるように、中空ガラスシリンダ1601(その端部から見た状態で示される)は、入射孔および射出孔として研磨された平坦な面1602を有する。ガラスシリンダ1604を2等分する平面に適用されたバンドパスフィルタコーティング(複数可)1605を有し、中空ガラスシリンダ1601の穴よりもやや小さい直径を有するガラスシリンダ1604は、その軸の周囲を自由に回転するように(1685)作製することができる。この回転は、間隙1606に非常に薄い層の屈折率整合油を適用することによって達成することができる。例えば、間隙1606は、約1mmまたはそれよりも小さい幅を示してもよい。さらに、一実施形態によると、平面1602のうちの一方または両方が、ARコーティングで被覆されてもよい。
【0076】
一実施形態に従って、図17は、ガラスシリンダ1714およびガラスシリンダ1724に適用されたフィルタ1715およびフィルタ1725をそれぞれ示しており、両方のシリンダ1714および1724は、長方形ガラスブロック1701内の2つの中空の円筒状領域の内部にある。例えば、フィルタ1715およびフィルタ1725は、個別のカットオンおよびカットオフエッジフィルタであってもよい。小さな間隙1706が、ガラスシリンダ1714、ガラスシリンダ1724、長方形ガラスブロック1701の各々の間に位置してもよい。また、一実施形態によると、2つより多くのフィルタがこの様式で連結されてもよい。一実施形態によると、一方または両方の平面1702が、ARコーティングで被覆されてもよい。
【0077】
一実施形態に従って、図18は、フィルタフロック1801内の可同調フィルタ1815および可同調フィルタ1825を示す。例えば、可同調フィルタ1815および1825は、バンドパスフィルタであってもよい。可同調フィルタ1815および可同調フィルタ1825は、それぞれガラスシリンダ1814およびガラスシリンダ1834に適用することができ、その両方が、長方形ガラスブロック1801内の中空の円筒状領域内に配置されてもよい。ここでも同様に、小さな間隙1706が、ガラスシリンダ1814、ガラスシリンダ1834、長方形ガラスブロック1801の各々の間に位置してもよい。一実施形態によると、一方または両方の平面1802が、ARコーティングで被覆されてもよい。
【0078】
コーティング層が薄いため、回転させたフィルタ層の平面がシステムの光軸に平行になり、よってシステムを通る光1890の透過率に与える影響が最小限となるように、多くのシステムにおいて、可同調フィルタ1815および可同調フィルタ1825のうちの1つの角度を回転させることが可能である。この場合、光軸と実質的に平行ではない角度に回転させたフィルタのみが、バンドパスフィルタとして動作するであろう。このように、任意の所与の時間に、一方のみまたは他方のバンドパスフィルタを使用することを選択することができ、それによって、各々が全同調範囲の一部を網羅する2つ以上のフィルタを用いて非常に広い同調範囲を網羅することが可能になる。
【0079】
一実施形態による可同調フィルタは、任意に広い同調範囲を有さないため、いくつかの用途のための実際の使用法は、2つ以上のフィルタを使用して有効同調範囲を拡張するための方法を必要とするかもしれない。例えば図18に示されるような、そのような拡張を達成するための1つの方式は上に記載されている。一実施形態によると、別の方式は、一連の2つ以上のフィルタまたはフィルタの組み合わせに光を再度方向付けることである。一実施形態によると、図19に一例が示され、回転可能な平面鏡1940および回転可能な平面鏡1950(例えば、ガルボスキャナによって直接駆動される)は、第1の対の固定平面鏡1941および1951、または第2の対の固定平面鏡1942および1952によって画定される2つ以上の光路のうちの1つを選択するために使用することができる。一実施形態によると、鏡は、回転可能な平面鏡1940と回転可能な平面鏡1950の間の光路が全ての経路で等しくなるように配置することができる。第1の光路は、可同調カットオンフィルタ1916、可同調カットオフフィルタ1917、広範囲遮断カットオンフィルタ1921、および広範囲遮断カットオフフィルタ1922を通過する。第2の光路は、可同調カットオンフィルタ1906、可同調カットオフフィルタ1907、広範囲遮断カットオンフィルタ1911、および広範囲遮断カットオフフィルタ1912を通過する。本開示によると、本明細書に記載される可同調フィルタのための実施形態のうちのいずれもが、光路のうちのいずれに挿入されてもよい。例えば、図5に示される実施形態の代わりに、各経路は、図7および17に示されるような2つの独立して可同調エッジフィルタの組み合わせを含んでもよく、よって、バンドパスフィルタの中心波長およびその経路に関連する同調範囲内の帯域幅の任意の調節を可能にする。
【0080】
本開示によるシステムおよび方法は、蛍光顕微鏡検査法および他の蛍光撮像法ならびに定量化用途、ハイパースペクトル撮像法、ハイスループット分光法、そして通信を含む分野において幅広く使用される可能性を有する。例えば、本開示によるシステムおよび方法は、画像情報を運ぶ光のビームがフィルタを通過する撮像システムにおいて使用されてもよいか、またはそれは検出のために単純にサンプルから最大量の光を収集する非撮像システムであってもよい。本開示によるシステムおよび方法は、連続的な一連の波長データポイントを取得するために波長の迅速な同調を必要としてもよいか、またはシステム性能の最適な調整のために波長同調性を利用してもよい。
【0081】
蛍光顕微鏡検査法および他の蛍光測定法において、本開示によるシステム、方法、およびフィルタは、励起光および放射光のスペクトルを制御するために有用であり得る。本開示によるシステム、方法、およびフィルタは、実験または所与の実験内の条件を変更する間に、所望の計測柔軟性およびさらにはリアルタイムでの最適化を提供することができる。
【0082】
ハイパースペクトル撮像法は、地球資源のモニタリングのための遠隔センシングから、医療用画像診断、農業分析、法医学、製造等に至る範囲の用途において使用される。この技法は、各々が異なる波長であるため、各ボリュームピクセル(または「ボクセル」)が2つの空間次元および波長に関連する強度値を含むデータの「画像キューブ」をもたらす一連の2次元画像の取得を指す。一般に、ハイパースペクトル撮像法は、「プッシュブルーム」画像取得技法とともに実装され、格子分光計に取り付けられた2次元CCDアレイが、CCDの1つの軸に沿った1次元空間情報および別の軸に沿ったスペクトル情報を含む個別フレームを取得する。次いで、システムは、各連続的なフレームが新しい空間情報の列を取得するが、時間がずらされるように、他の空間軸(例えば、飛行機が地球の上を飛ぶときに自然に生じる)に沿って走査される。本開示によるシステム、方法、およびフィルタは、2次元画像ビームを送信するように使用することができ、それによって、各フレームが2次元の空間情報(典型的には、より多くのピクセルを必要とするより高い分解能から恩恵を受ける)を取得し、分解能のより低いスペクトル測定値の時間がずらされる、より望ましいことが多い取得モードを有効にする。
【0083】
本開示によるシステム、方法、およびフィルタはまた、特に、スループットがスペクトル分解能よりも重要である場合に、単純な小型化スペクトル測定システムを提供することもできる。また、本開示によるシステム、方法、およびフィルタはまた、試験および測定の両方の目的のための光ファイバ通信システムにおける要素であってもよく、それは、「波長アジリティ(wavelength agility)」をもたらすことによって、それらが実装されたシステムにおける波長弁別構成要素の複雑さを大幅に単純化できるためである。
【0084】
当業者には、本明細書および本明細書に開示される本発明の実践から、他の実施形態が明らかであろう。本明細書および実施例は、例示に過ぎないと見なされることが意図され、本発明の真の範囲および主旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光フィルタであって、
少なくとも1つの基板と、
第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、前記第1および第2の複数の前記第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有する、材料層と、を備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で前記第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で前記第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第1の角度の関数として、前記第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈し、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第2の角度の関数として、前記第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈し、
約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1パーセントを超えず、
約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えず、
前記第1の角度の前記値および前記第2の角度の前記値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である、光フィルタ。
【請求項2】
前記基板は、第1の基板表面と、第2の基板表面とを有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記第1の基板表面に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板表面に被着される、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの基板を回転させるように構成されるガルボスキャナをさらに備える、請求項2に記載の光フィルタ。
【請求項4】
前記基板は、第1の基板表面と、第2の基板表面とを有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第1の構成、ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第2の構成のうちの1つから選択される構成に従って、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記基板に被着される、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの基板を回転させるように構成されるガルボスキャナをさらに備える、請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項6】
前記第2の基板表面に被着された反射防止コーティングをさらに備える、請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項7】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項8】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項9】
第2の基板をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記少なくとも1つの基板に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板に被着される、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの基板を回転させるように構成される第1のガルボスキャナと、
前記第2の基板を回転させるように構成される第2のガルボスキャナと、をさらに備える、請求項9に記載の光フィルタ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の表面に平行な第1の軸の周囲を回転するように構成され、前記第2の基板は、前記第2の表面に平行な第2の軸の周囲を回転するように構成される、請求項9に記載の光フィルタ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの基板の回転は、前記少なくとも1つの基板に入射する前記電磁放射に第1の横方向シフトを導入するように構成され、前記第2の基板の回転は、前記第2の基板に入射する前記電磁放射に第2の横方向シフトを導入するように構成される、請求項11に記載の光フィルタ。
【請求項13】
前記第1の横方向シフトおよび前記第2の横方向シフトは、ほぼ等しく、かつ反対方向である、請求項12に記載の光フィルタ。
【請求項14】
約40度〜約60度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、さらに、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1%を超えない、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項15】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項16】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項14に記載の光フィルタ。
【請求項17】
光フィルタを作製する方法であって、
第1の複数の交互の第1および第2の材料層を第1の基板表面に被着するステップと、
第2の複数の交互の第1および第2の材料層を第2の基板表面に被着するステップと、を含み、
前記第1および第2の複数の前記第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有し、
前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で前記第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、
前記第2の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で前記第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第1の角度の関数として、前記第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第2の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第2の角度の関数として、前記第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、
約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1パーセントを超えず、
約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えず、
前記第1の角度の前記値および前記第2の角度の前記値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である、方法。
【請求項18】
第1の側面および第2の側面を有する少なくとも1つの基板を導入することをさらに含み、
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の側面上に前記第1の基板表面を呈し、前記第2の側面上に前記第2の基板表面を呈する、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項19】
第1の側面および第2の側面を有する少なくとも1つの基板を導入することをさらに含み、
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の側面上に前記第1の基板表面を呈し、
前記第1の基板表面が、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層であり、前記第2の基板表面が、前記第1の側面である、第1の構成、ならびに前記第1の基板表面が、前記第1の側面であり、前記第2の基板表面が、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層である、第2の構成のうちの1つから選択される構成に従って、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第2の基板表面に被着される、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項20】
前記第2の側面に反射防止コーティングを被着することをさらに含む、請求項19に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項21】
広範囲遮断フィルタを導入することをさらに含む、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項22】
広範囲遮断フィルタを導入することをさらに含む、請求項19に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項23】
第1の側面を有する少なくとも1つの基板を導入することと、
第2の側面を有する第2の基板を導入することと、をさらに含み、
前記第1の基板表面は、前記第1の側面であり、前記第2の基板表面は、前記第2の側面である、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の表面に平行な第1の軸の周囲を回転するように構成され、前記第2の基板は、前記第2の表面に平行な軸の周囲を回転するように構成される、請求項23に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの基板の回転は、前記少なくとも1つの基板に入射する前記電磁放射に第1の横方向シフトを導入するように構成され、前記第2の基板の回転は、前記第2の基板に入射する前記電磁放射に第2の横方向シフトを導入するように構成される、請求項24に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項26】
前記第1の横方向シフトおよび前記第2の横方向シフトは、ほぼ等しく、かつ反対方向である、請求項25に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項27】
約40度〜約60度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、さらに、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1%を超えない、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項28】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項29】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項27に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項30】
光フィルタであって、
少なくとも1つの基板と、
第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、前記第1および第2の複数の前記第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有る、材料層と、を備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で前記第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で前記第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第1の角度の関数として、前記第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈し、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第2の角度の関数として、前記第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈し、
前記第1の角度の前記第1の値および前記第2の角度の前記第1の値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長との分離は、前記第1の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長との差が、第1の通過帯域幅であるような第1の通過帯域領域であり、
前記第1の角度の第2の値および前記第2の角度の第2の値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長との分離は、前記第2の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長との差が、第2の通過帯域幅であるような第2の通過帯域領域であり、
前記第1の角度の前記第1の値と前記第1の角度の前記第2の値との間の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1パーセントを超えず、
前記第2の角度の前記第1の値と前記第2の角度の前記第2の値との間の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えず、
前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長は、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長の少なくとも約6パーセント以内であり、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長は、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長の少なくとも約6パーセント以内である、光フィルタ。
【請求項31】
前記第1の通過帯域幅は、前記第2の通過帯域幅とほぼ等しい、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項32】
前記基板は、第1の基板表面および第2の基板表面、を有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記第1の基板表面に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板表面に被着される、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項33】
前記基板は、第1の基板表面および第2の基板表面を有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第1の構成、ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第2の構成のうちの1つから選択される構成に従って、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記基板に被着される、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項34】
前記第2の基板表面に被着された反射防止コーティングをさらに備える、請求項33に記載の光フィルタ。
【請求項35】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項36】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項33に記載の光フィルタ。
【請求項37】
第2の基板をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記少なくとも1つの基板に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板に被着される、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項38】
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の表面に平行な第1の軸の周囲を回転するように構成され、前記第2の基板は、前記第2の表面に平行な軸の周囲を回転するように構成される、請求項37に記載の光フィルタ。
【請求項39】
前記少なくとも1つの基板の回転は、前記少なくとも1つの基板に入射する前記電磁放射に第1の横方向シフトを導入するように構成され、前記第2の基板の回転は、前記第2の基板に入射する前記電磁放射に第2の横方向シフトを導入するように構成される、請求項38に記載の光フィルタ。
【請求項40】
前記第1の横方向シフトおよび前記第2の横方向シフトは、ほぼ等しく、かつ反対方向である、請求項39に記載の光フィルタ。
【請求項41】
前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長は、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長の少なくとも約12パーセント以内であり、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長は、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長の少なくとも約12パーセント以内である、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項42】
空気の屈折率よりも高い屈折率を有する入射媒体をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記入射媒体に埋め込まれる、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項43】
前記入射媒体は、第1の埋め込み材料と、第2の埋め込み材料と、屈折率整合油とを含み、
前記第1の埋め込み材料は、第1の入射面と、第2の入射面と、前記屈折率整合油を収容する実質的に円筒状の空洞とともに構成され、
前記第2の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第1の埋め込み材料と、前記第2の埋め込み材料と、前記屈折率整合油とは全て、実質的に等しい屈折率を呈し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料に埋め込まれるように構成される、請求項42に記載の光フィルタ。
【請求項44】
前記第1の入射面と前記第2の入射面とは、実質的に平行であり、前記電磁放射の第1の方向に対する第3の角度で第3の法線ベクトルを呈するように構成され、前記第3の角度は実質的にゼロである、請求項43に記載の光フィルタ。
【請求項45】
前記第1の入射面に被着された第1の反射防止コーティングと、前記第2の入射面に被着された第2の反射防止コーティングと、をさらに備える、請求項44に記載の光フィルタ。
【請求項46】
前記第1の埋め込み材料および前記第2の埋め込み材料は、ガラスを含む、請求項45に記載の光フィルタ。
【請求項47】
前記第2の埋め込み材料を回転させるように構成される少なくとも1つのガルボスキャナをさらに備える、請求項46に記載の光フィルタ。
【請求項48】
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料の直径を実質的に横断して被着されるように構成される、請求項46に記載の光フィルタ。
【請求項49】
前記入射媒体は、第1の埋め込み材料と、第2の埋め込み材料と、第3の埋め込み材料と、屈折率整合油とを含み、
前記第1の埋め込み材料は、第1の入射面と、第2の入射面と、前記屈折率整合油を収容する第1の実質的に円筒状の空洞と、前記屈折率整合油を収容する第2の実質的に円筒状の空洞とともに構成され、
前記第2の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第1の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第3の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第2の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第1の埋め込み材料と、前記第2の埋め込み材料と、前記第3の埋め込み材料と、前記屈折率整合油とは全て、実質的に等しい屈折率を呈し、
前記複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料に埋め込まれるように構成され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第3の埋め込み材料に埋め込まれるように構成される、請求項42に記載の光フィルタ。
【請求項50】
空気の屈折率よりも高い屈折率を有する入射媒体をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記入射媒体に埋め込まれる、請求項38に記載の光フィルタ。
【請求項51】
前記入射媒体は、第1の埋め込み材料と、第2の埋め込み材料と、第3の埋め込み材料と、屈折率整合油とを含み、
前記第1の埋め込み材料は、第1の入射面と、第2の入射面と、前記屈折率整合油を収容する第1の実質的に円筒状の空洞と、前記屈折率整合油を収容する第2の実質的に円筒状の空洞とともに構成され、
前記第2の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第1の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第3の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第2の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第1の埋め込み材料と、前記第2の埋め込み材料と、前記第3の埋め込み材料と、前記屈折率整合油とは全て、実質的に等しい屈折率を呈し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料に埋め込まれるように構成され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第3の埋め込み材料に埋め込まれるように構成される、請求項50に記載の光フィルタ。
【請求項52】
請求項30に記載の第1の光フィルタと、
請求項30に記載の第2の光フィルタと、を備え、
前記第1の光フィルタの前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長が、前記第2の光フィルタの前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長とほぼ同じになるように、前記第1の光フィルタの前記第2の通過帯域幅は、前記第2の光フィルタの前記第1の通過帯域幅と重複するように構成される、光学システム。
【請求項53】
請求項32に記載の第1の光フィルタと、
請求項32に記載の第2の光フィルタと、を備え、
前記第1の光フィルタの前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長が、前記第2の光フィルタの前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長とほぼ同じになるように、前記第1の光フィルタの前記第2の通過帯域幅は、前記第2の光フィルタの前記第1の通過帯域幅と重複するように構成される、光学システム。
【請求項1】
光フィルタであって、
少なくとも1つの基板と、
第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、前記第1および第2の複数の前記第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有する、材料層と、を備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で前記第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で前記第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第1の角度の関数として、前記第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈し、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第2の角度の関数として、前記第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈し、
約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1パーセントを超えず、
約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えず、
前記第1の角度の前記値および前記第2の角度の前記値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である、光フィルタ。
【請求項2】
前記基板は、第1の基板表面と、第2の基板表面とを有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記第1の基板表面に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板表面に被着される、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの基板を回転させるように構成されるガルボスキャナをさらに備える、請求項2に記載の光フィルタ。
【請求項4】
前記基板は、第1の基板表面と、第2の基板表面とを有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第1の構成、ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第2の構成のうちの1つから選択される構成に従って、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記基板に被着される、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの基板を回転させるように構成されるガルボスキャナをさらに備える、請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項6】
前記第2の基板表面に被着された反射防止コーティングをさらに備える、請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項7】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項8】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項4に記載の光フィルタ。
【請求項9】
第2の基板をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記少なくとも1つの基板に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板に被着される、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの基板を回転させるように構成される第1のガルボスキャナと、
前記第2の基板を回転させるように構成される第2のガルボスキャナと、をさらに備える、請求項9に記載の光フィルタ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の表面に平行な第1の軸の周囲を回転するように構成され、前記第2の基板は、前記第2の表面に平行な第2の軸の周囲を回転するように構成される、請求項9に記載の光フィルタ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの基板の回転は、前記少なくとも1つの基板に入射する前記電磁放射に第1の横方向シフトを導入するように構成され、前記第2の基板の回転は、前記第2の基板に入射する前記電磁放射に第2の横方向シフトを導入するように構成される、請求項11に記載の光フィルタ。
【請求項13】
前記第1の横方向シフトおよび前記第2の横方向シフトは、ほぼ等しく、かつ反対方向である、請求項12に記載の光フィルタ。
【請求項14】
約40度〜約60度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、さらに、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1%を超えない、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項15】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項1に記載の光フィルタ。
【請求項16】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項14に記載の光フィルタ。
【請求項17】
光フィルタを作製する方法であって、
第1の複数の交互の第1および第2の材料層を第1の基板表面に被着するステップと、
第2の複数の交互の第1および第2の材料層を第2の基板表面に被着するステップと、を含み、
前記第1および第2の複数の前記第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有し、
前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で前記第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、
前記第2の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で前記第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第1の角度の関数として、前記第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第2の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第2の角度の関数として、前記第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈するように構成され、
約0度〜約40度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1パーセントを超えず、
約0度〜約40度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えず、
前記第1の角度の前記値および前記第2の角度の前記値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値である、方法。
【請求項18】
第1の側面および第2の側面を有する少なくとも1つの基板を導入することをさらに含み、
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の側面上に前記第1の基板表面を呈し、前記第2の側面上に前記第2の基板表面を呈する、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項19】
第1の側面および第2の側面を有する少なくとも1つの基板を導入することをさらに含み、
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の側面上に前記第1の基板表面を呈し、
前記第1の基板表面が、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層であり、前記第2の基板表面が、前記第1の側面である、第1の構成、ならびに前記第1の基板表面が、前記第1の側面であり、前記第2の基板表面が、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層である、第2の構成のうちの1つから選択される構成に従って、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第2の基板表面に被着される、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項20】
前記第2の側面に反射防止コーティングを被着することをさらに含む、請求項19に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項21】
広範囲遮断フィルタを導入することをさらに含む、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項22】
広範囲遮断フィルタを導入することをさらに含む、請求項19に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項23】
第1の側面を有する少なくとも1つの基板を導入することと、
第2の側面を有する第2の基板を導入することと、をさらに含み、
前記第1の基板表面は、前記第1の側面であり、前記第2の基板表面は、前記第2の側面である、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の表面に平行な第1の軸の周囲を回転するように構成され、前記第2の基板は、前記第2の表面に平行な軸の周囲を回転するように構成される、請求項23に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの基板の回転は、前記少なくとも1つの基板に入射する前記電磁放射に第1の横方向シフトを導入するように構成され、前記第2の基板の回転は、前記第2の基板に入射する前記電磁放射に第2の横方向シフトを導入するように構成される、請求項24に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項26】
前記第1の横方向シフトおよび前記第2の横方向シフトは、ほぼ等しく、かつ反対方向である、請求項25に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項27】
約40度〜約60度の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、さらに、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1%を超えない、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項28】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項17に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項29】
約40度〜約60度の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、さらに、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えない、請求項27に記載の光フィルタを作製する方法。
【請求項30】
光フィルタであって、
少なくとも1つの基板と、
第1の複数の交互の第1および第2の材料層、ならびに第2の複数の交互の第1および第2の材料層であって、前記第1および第2の複数の前記第1および第2の材料層の各々は、それぞれ異なる屈折率を有る、材料層と、を備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する電磁放射の第1の方向に対する第1の角度で第1の法線ベクトルを有する第1の表面を呈し、第1の波長で前記第1の角度の関数として可同調カットオンエッジを呈するように構成され、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の第2の方向に対する第2の角度で第2の法線ベクトルを有する第2の表面を呈し、第2の波長で前記第2の角度の関数として可同調カットオフエッジを呈するように構成され、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第1の角度の関数として、前記第1の波長で第1の偏光分離を呈し、第1のS阻止帯域の波長で第1のS阻止帯域エッジを呈し、
前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に入射する前記電磁放射の場合、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、全て前記第2の角度の関数として、前記第2の波長で第2の偏光分離を呈し、第2のS阻止帯域の波長で第2のS阻止帯域エッジを呈し、
前記第1の角度の前記第1の値および前記第2の角度の前記第1の値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長との分離は、前記第1の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長との差が、第1の通過帯域幅であるような第1の通過帯域領域であり、
前記第1の角度の第2の値および前記第2の角度の第2の値は、前記第2のS阻止帯域の波長がほぼ前記第1の波長以下になり、前記第1の波長が前記第2の波長未満になり、前記第2の波長未満がほぼ前記第1のS阻止帯域の波長以下になるような値であり、前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長との分離は、前記第2の通過帯域領域の電磁放射が少なくとも約80%透過され、前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長と、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長との差が、第2の通過帯域幅であるような第2の通過帯域領域であり、
前記第1の角度の前記第1の値と前記第1の角度の前記第2の値との間の値の任意の第1の角度の場合、前記第1の偏光分離は、前記第1の角度の関数として前記第1の波長の約1パーセントを超えず、
前記第2の角度の前記第1の値と前記第2の角度の前記第2の値との間の値の任意の第2の角度の場合、前記第2の偏光分離は、前記第2の角度の関数として前記第2の波長の約1パーセントを超えず、
前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長は、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長の少なくとも約6パーセント以内であり、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長は、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長の少なくとも約6パーセント以内である、光フィルタ。
【請求項31】
前記第1の通過帯域幅は、前記第2の通過帯域幅とほぼ等しい、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項32】
前記基板は、第1の基板表面および第2の基板表面、を有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記第1の基板表面に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板表面に被着される、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項33】
前記基板は、第1の基板表面および第2の基板表面を有し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第1の構成、ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記第1の基板表面に被着された前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層に被着される、第2の構成のうちの1つから選択される構成に従って、前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層が前記基板に被着される、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項34】
前記第2の基板表面に被着された反射防止コーティングをさらに備える、請求項33に記載の光フィルタ。
【請求項35】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項36】
広範囲遮断フィルタをさらに備える、請求項33に記載の光フィルタ。
【請求項37】
第2の基板をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料は、前記少なくとも1つの基板に被着され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の基板に被着される、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項38】
前記少なくとも1つの基板は、前記第1の表面に平行な第1の軸の周囲を回転するように構成され、前記第2の基板は、前記第2の表面に平行な軸の周囲を回転するように構成される、請求項37に記載の光フィルタ。
【請求項39】
前記少なくとも1つの基板の回転は、前記少なくとも1つの基板に入射する前記電磁放射に第1の横方向シフトを導入するように構成され、前記第2の基板の回転は、前記第2の基板に入射する前記電磁放射に第2の横方向シフトを導入するように構成される、請求項38に記載の光フィルタ。
【請求項40】
前記第1の横方向シフトおよび前記第2の横方向シフトは、ほぼ等しく、かつ反対方向である、請求項39に記載の光フィルタ。
【請求項41】
前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長は、前記第1の角度の前記第1の値によって決定される前記第1の波長の少なくとも約12パーセント以内であり、前記第2の角度の前記第2の値によって決定される前記第2の波長は、前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長の少なくとも約12パーセント以内である、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項42】
空気の屈折率よりも高い屈折率を有する入射媒体をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記入射媒体に埋め込まれる、請求項30に記載の光フィルタ。
【請求項43】
前記入射媒体は、第1の埋め込み材料と、第2の埋め込み材料と、屈折率整合油とを含み、
前記第1の埋め込み材料は、第1の入射面と、第2の入射面と、前記屈折率整合油を収容する実質的に円筒状の空洞とともに構成され、
前記第2の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第1の埋め込み材料と、前記第2の埋め込み材料と、前記屈折率整合油とは全て、実質的に等しい屈折率を呈し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料に埋め込まれるように構成される、請求項42に記載の光フィルタ。
【請求項44】
前記第1の入射面と前記第2の入射面とは、実質的に平行であり、前記電磁放射の第1の方向に対する第3の角度で第3の法線ベクトルを呈するように構成され、前記第3の角度は実質的にゼロである、請求項43に記載の光フィルタ。
【請求項45】
前記第1の入射面に被着された第1の反射防止コーティングと、前記第2の入射面に被着された第2の反射防止コーティングと、をさらに備える、請求項44に記載の光フィルタ。
【請求項46】
前記第1の埋め込み材料および前記第2の埋め込み材料は、ガラスを含む、請求項45に記載の光フィルタ。
【請求項47】
前記第2の埋め込み材料を回転させるように構成される少なくとも1つのガルボスキャナをさらに備える、請求項46に記載の光フィルタ。
【請求項48】
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料の直径を実質的に横断して被着されるように構成される、請求項46に記載の光フィルタ。
【請求項49】
前記入射媒体は、第1の埋め込み材料と、第2の埋め込み材料と、第3の埋め込み材料と、屈折率整合油とを含み、
前記第1の埋め込み材料は、第1の入射面と、第2の入射面と、前記屈折率整合油を収容する第1の実質的に円筒状の空洞と、前記屈折率整合油を収容する第2の実質的に円筒状の空洞とともに構成され、
前記第2の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第1の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第3の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第2の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第1の埋め込み材料と、前記第2の埋め込み材料と、前記第3の埋め込み材料と、前記屈折率整合油とは全て、実質的に等しい屈折率を呈し、
前記複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料に埋め込まれるように構成され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第3の埋め込み材料に埋め込まれるように構成される、請求項42に記載の光フィルタ。
【請求項50】
空気の屈折率よりも高い屈折率を有する入射媒体をさらに備え、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料ならびに前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記入射媒体に埋め込まれる、請求項38に記載の光フィルタ。
【請求項51】
前記入射媒体は、第1の埋め込み材料と、第2の埋め込み材料と、第3の埋め込み材料と、屈折率整合油とを含み、
前記第1の埋め込み材料は、第1の入射面と、第2の入射面と、前記屈折率整合油を収容する第1の実質的に円筒状の空洞と、前記屈折率整合油を収容する第2の実質的に円筒状の空洞とともに構成され、
前記第2の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第1の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第3の埋め込み材料は、実質的に円筒状であり、前記第1の埋め込み材料の前記屈折率整合油を収容する前記第2の実質的に円筒状の空洞内に回転可能に配置されるように構成され、
前記第1の埋め込み材料と、前記第2の埋め込み材料と、前記第3の埋め込み材料と、前記屈折率整合油とは全て、実質的に等しい屈折率を呈し、
前記第1の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第2の埋め込み材料に埋め込まれるように構成され、前記第2の複数の交互の第1および第2の材料層は、前記第3の埋め込み材料に埋め込まれるように構成される、請求項50に記載の光フィルタ。
【請求項52】
請求項30に記載の第1の光フィルタと、
請求項30に記載の第2の光フィルタと、を備え、
前記第1の光フィルタの前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長が、前記第2の光フィルタの前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長とほぼ同じになるように、前記第1の光フィルタの前記第2の通過帯域幅は、前記第2の光フィルタの前記第1の通過帯域幅と重複するように構成される、光学システム。
【請求項53】
請求項32に記載の第1の光フィルタと、
請求項32に記載の第2の光フィルタと、を備え、
前記第1の光フィルタの前記第1の角度の前記第2の値によって決定される前記第1の波長が、前記第2の光フィルタの前記第2の角度の前記第1の値によって決定される前記第2の波長とほぼ同じになるように、前記第1の光フィルタの前記第2の通過帯域幅は、前記第2の光フィルタの前記第1の通過帯域幅と重複するように構成される、光学システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−516661(P2013−516661A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548130(P2012−548130)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/020438
【国際公開番号】WO2011/085144
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512176439)セムロック・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SEMROCK,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/020438
【国際公開番号】WO2011/085144
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512176439)セムロック・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SEMROCK,INC.
【Fターム(参考)】
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