説明

可塑化装置のスクリュおよび可塑化装置

【課題】形状を工夫することにより溶融樹脂から発生したガスを加熱筒の後部側から容易に抜くことができる可塑化装置のスクリュ、および前記スクリュが配設される可塑化装置を提供する。
【解決手段】フライト部31と溝部32a,33a,34a,35a,36aが形成され、加熱筒12内で少なくとも回転可能に設けられた可塑化装置11のスクリュ15の後部から前部に向けて、溝部32a全体が深溝に形成される第1ゾーン32と、溝後部33bが深溝から徐々に浅くなるように形成されるとともに溝前部33cが引き続き深溝に形成される第2ゾーン33と、溝後部34bが浅溝に形成されるとともに溝前部34cが引き続き深溝に形成される第3ゾーン34と、溝後部35bが引き続き浅溝に形成されるとともに溝前部35cが深溝から徐々に浅くなるように形成される第4ゾーン35と、溝部36a全体が浅溝に形成される第5ゾーン36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライト部と溝部が形成され、加熱筒内で少なくとも回転可能に設けられた可塑化装置のスクリュおよび前記スクリュが配設される可塑化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱筒内に回転自在に設けられたスクリュにより成形材料を可塑化する可塑化装置としては、特許文献1ないし特許文献4に記載されたものが知られている。そのうち特許文献1と特許文献2は、加熱筒内を負圧吸引するものである。特許文献1は、いわゆるベント式射出成形機と呼ばれるものであり、加熱シリンダの中間部にベント孔を設け、加熱筒内で発生したガスをベント孔から負圧吸引するものである。しかしこのベント式のタイプの場合、溶融材料がベント孔内へ向けて上昇するベントアップと呼ばれる現象が発生して負圧吸引が出来なくなる等の問題があった。特許文献2は、前記問題を解消したものであり、落下口に接続されるフィード装置の部分に排気手段を設けている。しかし特許文献2では、加熱筒内で成形材料が可塑化されガスが発生する部分と排気手段の距離が遠いという問題があり、特に樹脂材料の供給量が多い場合にスクリュ後部の溝部内が樹脂ペレットで満たされてしまいガスの吸引に支障を来たすという問題があった。
【0003】
また特許文献3および特許文献4は、加熱筒内を負圧吸引するものではないので、本発明と可塑化装置の構成および作用効果は相違するが、スクリュ形状に関するものとして取り上げる。特許文献3はスクリュのコンプレッションゾーンの溝の一部をフライトの前面に近い溝後部を徐々に浅溝とし、フライトの後面に近い溝前部を深溝とし、溶融された成形材料を浅溝部分に進入させ溶融樹脂の均一性の確保等を図っている。しかし特許文献3では前記溝後部がメタリングゾーンと同じ浅溝となっている部分については溝前部も徐々に浅溝になっており、溝後部は浅溝であって溝前部は深溝の区間が存在しない。従って溝後部の浅溝部と加熱筒の内孔部の間でせん断発熱された溶融樹脂から発生するガスを、深溝である溝前部を用いて加熱筒の後部側から十分に抜くことが出来なかった。
【0004】
また特許文献4についても、スクリュの移行部分109(コンプレッションゾーンに相当)の前半の溝のフライトの前面に近いランド67とフライトの後面に近いシャフト39はそれぞれ徐々に浅溝となっており、溝後部は浅溝であって溝前部は深溝の区間が存在しない。従ってランド67が浅溝となった部分ではシャフト39も浅くなっているので、ランド67(溝後部)と加熱筒の内孔部の間でせん断発熱された溶融樹脂から発生するガスを、シャフト39(溝前部)を用いて後部側から十分に抜くことが出来なかった。また特許文献4では、ランド67は、供給部分106(フィードゾーンに相当)のねじ山92から接続されているので、フライト前面に沿って供給されてきた成形材料が少ないので、接続されるランド67に当初から送り込まれる成形材料も少なく、その結果、ランド67で直接せん断発熱により成形材料が溶融されることが少なくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−25953号公報(請求項1、第1図)
【特許文献2】特開2008−143022号公報(0011、図1、図2)
【特許文献3】特開平10−113962号公報(0024、図1、図2)
【特許文献4】特表昭62−502677号公報(第6頁、第8頁、FIG1、FIG4C)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、形状を工夫したことにより溶融樹脂から発生したガスを加熱筒の後部側から容易に抜くことができる可塑化装置のスクリュ、および前記スクリュが配設される可塑化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の可塑化装置のスクリュは、フライト部と溝部が形成され、加熱筒内で少なくとも回転可能に設けられた可塑化装置のスクリュにおいて、前記スクリュには後部から前部に向けて、溝部全体が深溝に形成される第1ゾーンと、溝後部が深溝から徐々に浅くなるように形成されるとともに溝前部が引き続き深溝に形成される第2ゾーンと、溝後部が浅溝に形成されるとともに溝前部が引き続き深溝に形成される第3ゾーンと、溝後部が引き続き浅溝に形成されるとともに溝前部が深溝から徐々に浅くなるように形成される第4ゾーンと、溝部全体が浅溝に形成される第5ゾーンが備えられたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の可塑化装置のスクリュは、請求項1において、前記溝前部および溝後部の浅溝は、成形材料が加熱筒の内孔部との間でせん断発熱を発生させる深さであることを特徴とする請求項1に記載の可塑化装置のスクリュ。
【0009】
本発明の請求項3に記載の可塑化装置のスクリュは、請求項1または請求項2において、溝部全体における前記溝後部の占める割合は、30〜70%であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の可塑化装置のスクリュは、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記第3ゾーンと第4ゾーンの間に、溝後部が浅溝から一旦浅溝よりも深くて深溝以下の深さに形成され再び浅溝に形成されるとともに溝前部が引き続き深溝または深溝から徐々に浅くなるように形成される開放ゾーンが備えられたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載の可塑化装置は、前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の可塑化装置のスクリュが加熱筒内に配設されるとともに、前記加熱筒内が、投入口を含む加熱筒後部側から負圧吸引されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の可塑化装置のスクリュは、フライト部と溝部が形成され、加熱筒内で少なくとも回転可能に設けられた可塑化装置のスクリュにおいて、前記スクリュには後部から前部に向けて、溝部全体が深溝に形成される第1ゾーンと、溝後部が深溝から徐々に浅くなるように形成されるとともに溝前部が引き続き深溝に形成される第2ゾーンと、溝後部が浅溝に形成されるとともに溝前部が引き続き深溝に形成される第3ゾーンと、溝後部が引き続き浅溝に形成されるとともに溝前部が深溝から徐々に浅くなるように形成される第4ゾーンと、溝部全体が浅溝に形成される第5ゾーンが備えられているので、溶融樹脂から発生したガスを加熱筒の後部側から容易に抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態の可塑化装置およびスクリュを示す図である。
【図2】図2は、本実施形態の可塑化装置のスクリュの各ゾーンを模式的に表す説明図である。
【図3】図3は、本実施形態の可塑化装置のスクリュの第3ゾーンの溝部の拡大断面図である。
【図4】図4は、本実施形態の可塑化装置のスクリュを用いて、成形材料の供給を低飢餓状態で供給し可塑化した際を模式的に表す概略説明図である。
【図5】図5は、本実施形態の可塑化装置のスクリュを用いて、成形材料の供給を高飢餓状態で供給し可塑化した際を模式的に表す概略説明図である。
【図6】図6は、従来技術の一般的なスクリュを用いて、成形材料の供給を低飢餓状態で供給し可塑化した際を模式的に表す概略説明図である。
【図7】図7は、従来技術の一般的なスクリュを用いて、成形材料の供給を高飢餓状態で供給し可塑化した際を模式的に表す概略説明図である。
【図8】図8は、別の実施形態の可塑化装置のスクリュの各ゾーンを模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図1および図5を参照して説明する。図1に示されるように射出成形機の可塑化装置11は、射出装置を兼ね備えたものである。加熱筒12の前方には、固定されたシリンダヘッド部13を介してノズル14が接続されている。また加熱筒12の内孔部12a内には、スクリュ15が少なくとも回転自在に配設され、スクリュ15の後端は、図示しないスクリュスリーブ等の部材を介して計量用モータ16に接続されている。更に加熱筒12の後部側(ノズルと反対側)は、ハウジングプレート17が固定されている。また射出装置を兼ね備えた可塑化装置11は、加熱筒12内でスクリュ15の前後進移動をさせる図示しない射出用モータおよび射出機構が設けられている。そして加熱筒12の外側には図示しないバンドヒータ等の加熱手段が取付けられ、加熱筒12は後部ゾーン18、中部ゾーン19、前部ゾーン20のように各ゾーン毎に温度コントロール可能となっている。またノズル14も加熱筒12と同様にバンドヒータ等により温度コントロールされる。
【0015】
加熱筒12およびハウジングプレート17の投入口21は、成形材料である樹脂ペレットPのフィード装置22に接続されている。フィード装置22は、加熱筒12内を常時真空状態に保つことができる上下のシャッタ装置23a,23b、樹脂ペレットPを調整して供給可能なフィードスクリュ24aとその駆動モータ24b等からなる。そして図示しない樹脂ペレットPの貯蔵タンクからフィード装置22および加熱筒12の投入口21を経て樹脂ペレットPが加熱筒12内に供給されるようになっている。従って本実施形態では、フィード装置22により、加熱筒12内への樹脂ペレットPの供給量は、高飢餓状態や低飢餓状態など自由に調整することが可能である。
【0016】
フィードスクリュ24aが配設されるフィード装置22の筒部25には、加熱筒12内を負圧吸引する吸引手段である真空ポンプ26に接続される吸引口27が形成されている。そして加熱筒12とスクリュ15の基部28の間、フィード装置22とハウジングプレート17の間、ハウジングプレート17と加熱筒12の間にはそれぞれOリングが挿入され、加熱筒12内は外部から密閉構造となっている。なお吸引手段は、投入口21を含む加熱筒12の後部側(一例として加熱筒12の後部ゾーン18、投入口21および投入口21の周囲、加熱筒12の投入口21よりも更に後部側、加熱筒12の後端とスクリュ15の基部28との間等)から負圧吸引が行われるものでもよい。
【0017】
加熱筒12内に配設されるスクリュ15は、加熱筒12の内孔部12aに対してOリング等を介して摺動可能に保持される基部28を除けば、5つのゾーンから形成されている。そしてその先端にはリングバルブ29等の逆流防止弁と円錐状のスクリュヘッド30が取付けられている。本実施形態ではスクリュ15には連続した螺旋状にフライト部31(メインフライト)が設けられ、フライト部31の間は同じく螺旋状に溝部32a等が設けられている。スクリュ15のフライト部31は、各ゾーンともに等間隔ピッチに設けられ、フライト部31の外周径と加熱筒12の内孔部12aの内径がカジリを生じない範囲の僅かなクリアランスとなるように設けられている。従って可塑化の際(計量時)に発生したガスは、前記クリアランスを通じて加熱筒12の後部側へ吸引することはほとんど期待できない。また前記スクリュ15のフライト部31が形成されている部分の軸方向の長さをスクリュ15の直径で除算したL/Dは、一例として16〜30程度、より一層望ましくは、20〜28と一般的な長さよりもやや長くなっている。またスクリュ15には硬質クロムメッキ等の表面処理がされている。なお前記スクリュ形状、表面処理方法等は、一例であって記載されたものに限定されない。
【0018】
次にスクリュ15の各ゾーンについて後部(投入口21側)から前部(ノズル側)に向けて順に説明する。図1および図2に示されるように、加熱筒12の投入口21およびその前方の部分は、第1ゾーン32となっている。第1ゾーン32は、フライト部31の間の溝部32a(軸部)は、溝部全体が一般的なスクリュのフィードゾーンの溝深さと同様の溝深さである深溝に形成されている。そして溝部32aの底面部とフライト部31の壁面は滑らかな曲面で接続されている(後述する各ゾーンの溝部33a等とフライト部31の壁面も同様に滑らかな曲面で接続されている)。そしてまた溝部32aが深溝に形成されていることから、溝部32aの容積の7割程度の樹脂ペレットPが供給されても、フライト部31の後方に位置する溝部32aの前側まで樹脂ペレットPが詰まることがなく、せん断発熱を引き起こすこともほとんどない。そして前記溝部32aの前側に形成される空間は、後述する溶融樹脂Mから発生するガスや水分等を吸引する際に通路としての役割を果たす。この第1ゾーン32の軸方向の長さについては、樹脂ペレットPの供給能力を確保するために、7D〜12D(D=スクリュ15の直径)とすることが望ましい。なお本発明において「深溝」とは相対的な深さであり、第1ゾーン32の溝深さと後続するゾーンの溝深さを比較した場合、後続するゾーンが圧縮比1.2まで溝を浅くした溝深さまでの範囲であれば「深溝」に該当する。従って第1ゾーン32から後述する第3ゾーン34までの溝部32aおよび溝前部33c,34cは「深溝」に形成されるが、飢餓供給の場合にほとんどせん断発熱を引き起こさない溝深さであれば、徐々に深さが浅くなるものや溝深さが変更されるものを除外するものではない。
【0019】
第1ゾーン32の前方には、第2ゾーン33が形成されている。第2ゾーン33の溝部33aでは、フライト部31の前方に位置する溝後部33bが深溝から徐々に浅くなるように形成されている。またフライト部31の後方に位置する溝前部33cは、第1ゾーン32に引き続き深溝に形成されている。第2ゾーン33の前方には、第3ゾーン34が形成されている。第3ゾーン34の溝部34aにおいては、溝後部34bの溝深さは、一般的なスクリュのメタリングゾーンの溝深さと同じ溝深さであって樹脂ペレットPが加熱筒12の内孔部12aとの間でせん断発熱を起こす程度の浅溝に形成されている。なお本発明において「浅溝」とは相対的な深さであり、第3ゾーン34の溝後部34bの溝深さと後述する第5ゾーン36の溝部36aの溝深さを比較した場合、第5ゾーン36に向けて圧縮比1.2となるように溝を深くした溝深さまでの範囲であれば「浅溝」に該当する。従って第3ゾーン34から後述する第4ゾーン35までの溝後部34b,35bは「浅溝」に形成されるが、飢餓供給の場合にもせん断発熱を引き起こす溝深さであれば、徐々に深さが浅くなるものや深さが変更されるものを除外するものではない。
【0020】
そして一例として第1ゾーン32の溝部32a(深溝)と第3ゾーン34の溝後部34b(浅溝)との間の圧縮比は、1.8〜2.4程度に設けられている。また第3ゾーン34の溝部34aの溝前部34cの溝深さは、第1ゾーン32および第2ゾーン33に引き続き深溝に形成されている。従って後述する溶融樹脂Mから発生するガスや水分等を吸引する際に、第3ゾーン34の溝前部34cが深溝であって一定以上の断面積を有していることが通路としての役割を果たす。
【0021】
なお各ゾーンを代表して図3に第3ゾーン34の溝部34aの拡大断面図を示すが、第2ゾーン33から第4ゾーン35において溝後部34b等は、フライト部31の頂部前端31aから溝後部34bの底面部と溝前部34cの底面部との間の傾斜面または曲面から形成される接続部の中間位置34dまでの部分を指す。また溝前部34c等はフライト部31の頂部後端31bから溝前部34cの底面部と溝後部34bの平坦部との間の傾斜面または曲面から形成される接続部の中間位置34dまでの部分を指す。従って溝後部34b等と溝前部34c等の境界は、フライト部31とほぼ平行に螺旋状に形成される。本実施形態では、溝後部34b等と溝前部34c等の幅は、スクリュ15の各ゾーンそれぞれで1/2づつの同じ幅となっている。しかし溝部34a等全体の幅における前記溝後部34b等の占める割合は、30〜70%であるものでもよい。また第2ゾーン33から後述する第4ゾーン35にかけて溝後部33b,34b,35bの幅が前記の範囲内で広くなるものでもよい。
【0022】
第3ゾーン34の前方には、第4ゾーン35が形成されている。第4ゾーン35の溝部35aでは、フライト部31の前方に位置する溝後部35bは、第3ゾーン34に引き続き浅溝に形成されている。またフライト部31の後方に位置する溝前部35cは、深溝から徐々に浅くなるように形成されている。本実施形態では第2ゾーン33と第4ゾーン35の軸方向の長さは同じ長さに設けられ、第3ゾーン34は、前記第2ゾーン33の1.5倍の長さに設けられている。しかし第2ゾーン33または第4ゾーン35に対する第3ゾーン34の軸方向の長さの比率は、一例として100〜200%の範囲で許容される。そして第2ゾーン33から第4ゾーン35までを加算した軸方向の長さは、一例として10D〜16D(D=スクリュ15の直径)とすることが望ましい。従って溝後部34bが浅溝であって溝前部34cが深溝である第3ゾーン34を、少なくとも3.3D〜8.0D(D=スクリュ15の直径)(いずれも小数点第2位四捨五入)の長さで設けることが望ましい。そしてまた、第4ゾーン35の前方には、第5ゾーン36が形成されている。第5ゾーン36は、溝部36a全体が一般的なスクリュのメタリングゾーンの溝深さと同様の溝深さである浅溝に形成されている。
【0023】
次に射出成形機の可塑化装置11の可塑化方法について図4等により説明する。フィード装置22内を含む加熱筒12内は吸引手段である真空ポンプ26により常時吸引され、−90kPa以上(11.33kPa以下の絶対真空圧)に保たれている。そして図示しない貯蔵タンクからフィード装置22のシャッタ装置23a,23bを介して成形材料である熱可塑性の樹脂ペレットPが供給される。この際にシャッタ装置23a,23bは、2枚のシャッタが同時に開放されず、加熱筒12内が常時真空状態に保たれるようになっている。本実施形態では樹脂ペレットPは、乾燥ペレットが使用されるが、未乾燥ペレットや再生材料を使用してもよい。またスクリュ15の第2ゾーン33に対応する加熱筒12の後部ゾーン18は、樹脂ペレットPが溶融可能な温度になるよう高めに設定されている(樹脂の種類によっても相違するが、一般的な可塑化装置の後部ゾーンの設定温度よりも10〜30℃高く設定されている)。
【0024】
そして可塑化工程(計量工程)では、フィード装置22のフィードスクリュ24aが回転されて樹脂ペレットPが送られ、投入口21を介して加熱筒12内で回転状態のスクリュ15の第1ゾーン32の溝部32aに供給される。本実施形態では加熱筒12内のスクリュ15の回転に応じてフィード装置22から一定量に制御された樹脂ペレットPが所定量づつ供給され、低飢餓成形が行われる。低飢餓成形の場合、スクリュ15の第1ゾーン32の溝部32aの容積の7割程度の樹脂ペレットPが供給され、投入口21を上方から見てスクリュ15のフライト部31の上面が樹脂ペレットPで見えなくなることはない。よって図4に示されるように低飢餓供給の場合は、回転されるスクリュ15のフライト部31の後部側に一定幅の隙間が形成される。なお可塑化工程においてスクリュ15は、スクリュ15の前方の加熱筒12内へ溶融樹脂が貯留されるのに伴い、加熱筒12内で背圧を受けながらもゆっくり後退する。従ってスクリュ15の第1ゾーン32の同じ部分がいつも投入口21に正対している訳ではない。なお、図5に示されるような高飢餓供給の場合は、スクリュ15の下方側の溝部32aにも樹脂ペレットPが完全に充填されず、上方から溝部32aの底面部が見える程度の樹脂ペレットPが供給される。
【0025】
そして前記樹脂ペレットPは、スクリュ15の回転により第1ゾーン32から第2ゾーン33へ向けて送られる。そして第2ゾーン33の溝部33aの溝後部33bは、深溝から徐々に浅くなるように形成されているので、フライト部31の前面に押付けられるようにして送られてきた樹脂ペレットPは、加熱筒12の内孔部12aとの間の狭い空間に押し込められてスクリュ15の回転とともにせん断発熱を起こし段階的に溶融樹脂Mとなる。また前記のように第2ゾーン33に対応する加熱筒12の後部ゾーン18は設定温度が高めに設定されているので、樹脂ペレットPの溶融が通常の可塑化装置を用いた可塑化方法よりも早い段階から促進される。その点については、本実施形態の可塑化装置11のスクリュ15を用いて、成形材料である樹脂ペレットPの供給を低飢餓状態で供給し可塑化した場合を模式的に表す図4と、従来技術のスクリュを用いた場合を模式的に表す図6の比較から自明である。または高飢餓供給の場合についても本実施形態の可塑化装置11のスクリュ15を用いた場合を模式的に表す図5と、従来技術のスクリュを用いた場合を模式的に表す図7の比較からも自明である。
【0026】
そしてスクリュ回転とともに樹脂ペレットPと溶融樹脂Mは次に第3ゾーン34に送られる。第3ゾーン34の溝部34aの溝後部34bは、一般的なスクリュのメタリングゾーンの溝深さや第5ゾーン36の溝部36aと同じ浅溝となっているので、更に樹脂ペレットPの溶融が進行する。その際に溶融樹脂Mからはガスや水分が発生する。しかし図4からも明らかなように、溝前部34cには未溶融の樹脂ペレットPの層とともに一定以上の断面積の隙間(通路)が形成されているから、溶融樹脂Mから発生したガス等は、前記樹脂ペレットPの層を浸透して前記隙間(通路)へ抜け、投入口21、および吸引口27を介して真空ポンプ26により容易に吸引される。一方図6から明らかなように、従来技術のスクリュを用い低飢餓供給の場合は、フィードゾーンの溝全体に詰まった樹脂ペレットPがコンプレッションゾーンの後半からメタリングゾーンにかけて急速に溶融されるから、溶融樹脂Mからガス等が発生する位置が投入口から遠い位置であり、またフィードゾーンの樹脂ペレットPにより邪魔されてガス等が完全に抜けない。そして溶融樹脂Mにガス等が含まれた状態のままでスクリュ前方へ送られてその後に射出され、成形品の品質を低下させたり、金型に不純物を付着させたりする。
【0027】
そして図4に示されるように溶融樹脂Mと一部の未溶融の樹脂は、スクリュ回転とともに次に第4ゾーン35に送られる。第4ゾーン35の溝部35aの溝後部35bは、第5ゾーン36と同じ浅溝となっているので、更に溶融樹脂Mの溶融が進行する。また第4ゾーン35の溝部35aの溝前部35cは、深溝から徐々に浅くなるように形成されているので、低飢餓供給状態の場合に第3ゾーン34の溝前部34cに未溶融の樹脂ペレットPが残っていた場合も、更にせん断発熱が加えられ、溝前部35cの部分で樹脂ペレットPもほぼ完全に溶融される。なお第4ゾーン35の溝前部35cについても溝後部35bと比較すると溝が深いので、溶融樹脂Mから発生したガス等を真空ポンプ26により吸引する際の通路となる。
【0028】
そして第4ゾーン35において溶融された溶融樹脂Mは、スクリュ回転とともに第5ゾーン36に送られ更に溶融および均一化が図られる。そして前記溶融樹脂Mは、リングバルブ29を経て、加熱筒12とシリンダヘッド部13内部のスクリュ15の前方に送られ貯留される。本発明の可塑化方法では、背圧は低め(一例として0MPa〜5MPa)で可塑化工程が行われる。またスクリュ15の回転数は、スクリュ径によっても異なるが通常の回転数の範囲かまたは僅かに高くして可塑化工程を行うことが望ましい。そしてスクリュ15は、計量完了位置まで後退すると回転および後退が停止され、場合によってはその位置で逆転され、可塑化工程が完了する。そして型締装置側で成形金型の型締等の準備が完了すると、射出装置を兼ねた可塑化装置の図示しない射出モータが作動され、計量された溶融樹脂の射出工程(保圧工程を含む)が行われる。
【0029】
なお前記の本実施形態では、図4に記載される低飢餓供給を中心に説明してきた。しかし図5の高飢餓供給を行う場合、可塑化時間は長くなってしまう場合が多いが、溶融樹脂Mからのガス等の吸引は更に良好に行える場合が多いので、樹脂材料の種類等で供給量やスクリュ回転数等を決定する。また本発明では、フィードスクリュ24aを設けずに樹脂ペレットPを断続的に供給して高精度の飢餓供給を行わなかったとしても、早い段階から樹脂ペレットPが溶融されるとともに、スクリュ15の溝前部33c,34c,35cと加熱筒12の内孔部12aの間には螺旋状の空間(通路)が形成されるので、第2ゾーン33から第5ゾーン36の間で溶融樹脂Mから発生したガス等の吸引が容易に行える。また真空度は−90kPa以上の例について説明したが、ブロア等によりガスが負圧吸引できる程度以上であればよい。また真空吸引を含む負圧吸引と並行、または負圧吸引に替えて、加熱筒12の中部ゾーン19やその他の部分から窒素ガス等のガスを加熱筒12内に注入するものでもよい。
【0030】
次に図8により、本発明の請求項4に対応する別の実施形態のスクリュ41について説明する。スクリュ41が配設される可塑化装置11や加熱筒12の形状は先の図1の可塑化装置11とほぼ同じであるので同一部分は同一番号を援用して説明を省略する。またスクリュ41と先に説明したスクリュ15では、後方側から順に、第1ゾーン32、第2ゾーン33、第3ゾーン34、第4ゾーン35、第5ゾーン36が形成される点は同じであるので、同一部分は同一番号を援用して説明を省略する。スクリュ41では、第3ゾーン34と第4ゾーン35の間に、開放ゾーン42が設けられている。開放ゾーン42の溝部42aは、図8に示されるように、溝後部42bが浅溝から一旦浅溝よりも深く深溝以下の深さの範囲に形成される。そして溝後部42bは再び浅溝に形成されている。また溝部42aの溝前部42cは、引き続き深溝に形成されている。なお溝前部42cは、深溝から徐々に浅くなるように形成され、第4ゾーン35の溝前部35cに接続されるようにしてもよい。
【0031】
図8に示されるスクリュ41では、第3ゾーン34の溝後部34bにより溶融された溶融材料が、開放ゾーン42の溝後部42bの溝深さが深くなっている部分で一旦、圧力開放される。その結果、開放ゾーン42において溶融樹脂Mからのガス等の放出をより促進させることができる。
【0032】
本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の可塑化装置に使用される成形材料は、各種の樹脂材料の他、金属材料、樹脂以外の有機材料、無機材料等、限定されない。また本発明の可塑化装置のスクリュは、スクリュが前後進移動も行うインラインタイプの射出成形機の射出装置の他、可塑化装置と射出用のプランジャが組み合されたプリプラ(登録商標)式の射出装置、押出機、混練装置等に採用される。従って加熱筒内におけるスクリュは少なくとも回転するものであればよい。
【符号の説明】
【0034】

11 可塑化装置

12 加熱筒

12a 内孔部

15,41 スクリュ

22 フィード装置

26 真空ポンプ(吸引手段)

31 フライト部

32 第1ゾーン

33 第2ゾーン

34 第3ゾーン

35 第4ゾーン

36 第5ゾーン

32a,33a,34a,35a,36a,42a 溝部

33b,34b,35b,42b 溝後部

33c,34c,35c,42c 溝前部

42 開放ゾーン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライト部と溝部が形成され、加熱筒内で少なくとも回転可能に設けられた可塑化装置のスクリュにおいて、
前記スクリュには後部から前部に向けて、
溝部全体が深溝に形成される第1ゾーンと、
溝後部が深溝から徐々に浅くなるように形成されるとともに溝前部が引き続き深溝に形成される第2ゾーンと、
溝後部が浅溝に形成されるとともに溝前部が引き続き深溝に形成される第3ゾーンと、
溝後部が引き続き浅溝に形成されるとともに溝前部が深溝から徐々に浅くなるように形成される第4ゾーンと、
溝部全体が浅溝に形成される第5ゾーンが備えられたことを特徴とする可塑化装置のスクリュ。
【請求項2】
前記溝前部および溝後部の浅溝は、成形材料が加熱筒の内孔部との間でせん断発熱を発生させる深さであることを特徴とする請求項1に記載の可塑化装置のスクリュ。
【請求項3】
溝部全体における前記溝後部の占める割合は、30〜70%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可塑化装置のスクリュ。
【請求項4】
前記第3ゾーンと第4ゾーンの間に、溝後部が浅溝から一旦浅溝よりも深くて深溝以下の深さに形成され再び浅溝に形成されるとともに溝前部が引き続き深溝または深溝から徐々に浅くなるように形成される開放ゾーンが備えられたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の可塑化装置のスクリュ。
【請求項5】
前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の可塑化装置のスクリュが加熱筒内に配設されるとともに、
前記加熱筒内が、投入口を含む加熱筒後部側から吸引されていることを特徴とする可塑化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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