説明

可変ビーム特性を有するアンテナ

【課題】よりフレキシブルでより簡単な設計を有する可変ビーム特性を有するアンテナを提供する。
【解決手段】本発明は、それぞれ直交する偏波に対応づけられた第1及び第2の給電点を有する複数の配列素子を備えるアンテナに関するものであり、各配列素子は、直交する偏波とそれぞれ対応づけられた第1及び第2の位相中心を有し、前記配列素子の第1及び第2の位相中心は、少なくとも2列に配置され、1つのアンテナ・ポートは、各給電ネットワークを介して、前記少なくとも2列に配置される第1の位相中心及び第2の位相中心を有する少なくとも2つの配列素子の第1及び第2の給電点に接続される。給電ネットワークは、アンテナ・ポートに接続される一次接続及び少なくとも4つの二次接続を有するビーム形成ネットワークを備える。ビーム形成ネットワークは、第1の給電点と第2の給電点との間で電力を分け、異なる列に配置される位相中心を有する各給電点間の位相シフト差を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム幅及びビーム指向性などの可変ビーム特性を有するアンテナに関する。本発明は、また、そのようなアンテナを備える通信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで移動通信に用いられるほぼ全ての基地局アンテナは、意図的に、大体一定の特性を有する。1つの例外は、頻繁に使われる特徴である電気的ビーム傾斜である。加えて、製品の中には、ビーム幅及び/又は方向を変えることができるものも存在する。
【0003】
配置後に特性(パラメータ)を変えることができる、つまり、調整することができるアンテナを配備することは、以下のことが可能になるため、関心を引いている。すなわち、
【0004】
−長期ベースでパラメータを変えることによって、ネットワークを調整すること、
−例えば24時間にわたるトラフィック負荷における変化を処理するために、短期ベースでネットワークを調整すること、である。
【0005】
したがって、このような特徴を達成するためには、ビーム幅を調整して、ビーム指向方向を調整することができる必要がある。
【0006】
これらの特徴は、現在、アンテナのパーツを機械的に回転又は移動することに基づいて実施されており、結果として、比較的難しい機械的デザインになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の解決案と比較して、よりフレキシブルでより簡単な設計を有する可変ビーム特性を有するアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、以下の可変ビーム特性を有するアンテナによって成し遂げられる。すなわち、複数の配列素子であって、各配列素子は、第1の偏波に対応付けられた第1の給電点、及び、第1の偏波に直交する第2の偏波に対応付けられた第2の給電点を備える、複数の配列素子と、第1の偏波に対応付けられた第1の位相中心及び第2の偏波に対応付けられた第2の位相中心を有し、前記配列素子の第1及び第2の位相中心は、少なくとも2列に配置される、各配列素子と、1以上のアンテナ・ポートであって、各アンテナ・ポートは、それぞれの給電ネットワークを介して前記少なくとも2列に配置される第1の位相中心及び第2の位相中心を有する少なくとも2つの配列素子の第1及び第2の給電点に接続される、1以上のアンテナ・ポートと、を備える可変ビーム特性を有するアンテナである。前記それぞれの給電ネットワークは、それぞれのアンテナ・ポートに接続される一次接続及び少なくとも4つの二次接続を有するビーム形成ネットワークを備え、当該ビーム形成ネットワークは、前記接続配列素子の第1の給電点と第2の給電点との間で電力を分け、異なる列に配置される位相中心を有する接続配列素子の第1の給電点間、及び、異なる列に配置される第2の位相中心を有する接続配列素子の第2の給電点間の位相シフト差を制御するよう構成される。
【0009】
本発明による利点は、可変ビーム幅及び/又はビーム指向を有するアンテナを達成しうるということである。ビーム幅及び/又はビーム指向は、簡単な可変移相器によって制御することができる。可変移相器は、例えば、リモートの電気的傾斜制御を目的として基地局アンテナにおいて多用される同様な技術に基づくことができる。
【0010】
更なる目的及び利点は、当業者であれば、詳細な説明から見出せるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、非制限的な例として提供される以下の図面に関連して記載されている。
【図1】本発明を実施するために用いることができる第1のアンテナ構成を示す。
【図2】仰角ビーム形成に用いることができる図1のアンテナ構成の配電網の例を示す。
【図3】本発明に係る第1のシングルビームアンテナを得るために図1及び2にて図示したように配電網に接続されることを目的とする本発明に係るビーム形成ネットワークを示す。
【図4】図3のビーム形成ネットワークの実施態様を示す。
【図5】位相差の第1のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第1のシングルビームアンテナに対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【図6】位相差の第1のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第1のシングルビームアンテナに対する予測仰角ビーム・パターンを示す。
【図7】位相差の第2のセットにおける列離隔距離D=0.7λを有する本発明に係る第1のシングルビームアンテナに対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【図8】位相差の第2のセットにおける列離隔距離D=0.7λを有する本発明に係る第1のシングルビームアンテナに対する予測仰角ビーム・パターンを示す。
【図9】位相差の第3のセットにおける列離隔距離D=0.7λを有する本発明に係る第2のシングルビームアンテナに対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【図10】位相差の第4のセットにおける列離隔距離D=0.7λを有する本発明に係る第2のシングルビームアンテナに対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【図11】本発明を実施するのに用いることができる第2のアンテナ構成を示す。
【図12】仰角ビーム形成に用いることができる図11のアンテナ構成の配電網の例を示す。
【図13】本発明に係る第1のデュアルビームアンテナを得るために図11及び12にて図示したように配電網に接続されることを目的とする本発明に係るデュアルビーム形成ネットワークの第1の実施形態を示す。
【図14】位相差の第1のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第1のデュアルビームアンテナに対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【図15】位相差の第1のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第1のデュアルビームアンテナに対する予測仰角ビーム・パターンを示す。
【図16】位相差の第2のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第1のデュアルビームアンテナに対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【図17】位相差の第2のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第1のデュアルビームアンテナに対する予測仰角ビーム・パターンを示す。
【図18】本発明に係る第2のデュアルビームアンテナを得るために図11及び12にて図示したように配電網に接続されることを目的とする本発明に係るデュアルビーム形成ネットワークの第2の実施形態を示す。
【図19】本発明を実施するために用いることができる第3のアンテナ構成を示す。
【図20】本発明に係る第2のデュアルビームアンテナを得るために図19にて図示したように配電網に接続されることを目的とする本発明に係るデュアルビーム形成ネットワークの第3の実施形態を示す。
【図21】位相差の第5のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第2のデュアルビームアンテナに対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【図22】位相差の第5のセットにおける列離隔距離D=0.5λを有する本発明に係る第2のデュアルビームアンテナに対する予測仰角ビーム・パターンを示す。
【図23】本発明に係るシングルビームアンテナの配列素子の異なる実施態様を示す。
【図24】本発明に係るデュアルビームアンテナの配列素子の実施態様の例を示す。
【図25】本発明を実施するために用いることができる一般的なアンテナ構成を示す。
【図26a】図26aは、配列素子の実施態様の4つの変形例を示す。
【図26b】図26bは、配列素子の実施態様の4つの変形例を示す。
【図26c】図26cは、配列素子の実施態様の4つの変形例を示す。
【図26d】図26dは、配列素子の実施態様の4つの変形例を示す。
【図27】本発明に係る第3のシングルビームアンテナを示す。
【図28】本発明に係る第3のデュアルビームアンテナを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の基本的概念は、可変ビーム幅及び/又はビーム指向を有するアンテナである。当該アンテナは、第1の偏波に対応づけられた第1の給電点と、第1の偏波に直交する第2の偏波に対応づけられた第2の給電点を各々有する複数の二重偏波配列素子を備えている。各配列素子は2つの位相中心、すなわち、1つ目は第1の偏波に対応づけられ、2つ目は第2の偏波に対応づけられた位相中心を有する。第1の位相中心及び第2の位相中心は、一致してもよいし、実際の配列素子構成によって異なっていてもよい。
【0013】
位相中心とは、以下のように定義される。「アンテナに対応づけられた地点の場所であって、その地点を半径が遠距離電磁界に延びる球形の中心とする場合、放射球面の表面の上の所与の界成分の位相が、少なくとも上記表面で放射が重要となる部分の上では、基本的に固定となる場所」IEEE標準 アンテナ用語の定義、IEEE Std 145−1993(ISBN 1−55937−317−2))を参照されたい。
【0014】
以下に図示した例において、複数の配列素子の第1及び第2の位相中心は、異なる列に配置される第1の位相中心間の距離が、好ましくは、本発明を用いて送信/受信される信号の0.3波長よりも大きく、より好ましくは、0.5波長よりも大きくなるように、少なくとも2つの列に配置される。同じことを、異なる列に配置される第2の位相中心にも適用する。各列に関して、同じ偏波に対応づけられた少なくとも1つの給電点は、配電網を介して接続され、結果として、二重偏波配列素子が用いられる場合、列当たり少なくとも1つの線形配列となる。
【0015】
同じ偏波だが異なる列からの線形配列は、移相器及び電力分割装置を介して結合される。移相器及び電力分割装置は、可変的な相対位相差を有する電力を分割する。その結果、各偏波に対する1以上のビームポートとなり、ここで、ビームに対する水平ビーム指向は、当該ビームポートに対応づけられた移相器及び電力分割装置の可変的な位相差によって制御することができる。ビームの少なくとも1つは1つの偏波を有し、ビームの少なくとも1つは第1の偏波に直交する第2の偏波を有する。
【0016】
直交する偏波のビームポートは、一対ずつ結合されて、1以上のアンテナ・ポートを有するアンテナを提供する。この技術によって、1以上のアンテナ・ポートに対応づけられたビームのビーム幅及びビーム指向は、移相器及び電力分割装置上の相対位相差を変化させることによって制御することができる。
【0017】
以下において、配列素子は、二重偏波放射素子、すなわち、直交する偏波の2つの単一偏波素子として図示されており、列離隔距離及び行離隔距離を有する1又は2列に配置される。各実施形態の説明においてはっきりと明示されていない場合であっても、これらの実施形態は第1の位相中心及び第2の位相中心を少なくとも2列に配置するという要件を果たすものである。
【0018】
図1は、N個の配列素子グループを有するアンテナ構成(左側)を示すものであり、各配列素子は、2つの二重偏波放射素子を有する。右側には、グループ「n」内の放射素子のインデックスを示す。素子は4つの線形配列を形成するように配置されており、各々がポートA〜Dに接続される。本実施形態において、各二重偏波配列素子11は、第1の偏波、例えば、垂直偏波に対応づけられた第1の位相中心と、第2の偏波、すなわち、第1の偏波が垂直である場合は水平偏波に対応づけられた第2の位相中心を有する。全ての配列素子は本実施形態において同一であり、配列素子11の第1の位相中心は2列に配置され、配列素子の第2の位相中心も2列に配置され、各列はN個の配列素子を含んでいる。
【0019】
図2は、ポートA及びポートBの配電網の例を示し、図3は、移相器及び電力結合器/分割器からなる、ビーム幅及びビーム指向調整用ビーム形成ネットワークを示す。
【0020】
図1〜3は共に本発明に係るアンテナの第1の実施形態を図示するものであり、この例ではシングルビームアンテナである。シングルビームアンテナは、二重偏波配列素子11のN個のグループを2列有するアンテナ構成10を備え、列離隔距離Dと行離隔距離Dとを有する。本実施形態において、各グループ「n」は、2つの垂直偏波放射素子A及びCと、2つの水平偏波放射素子B及びD(n=1〜N)とを備える。Nは少なくとも1(N≧1)、好ましくは2よりも大きい(N>2)。各配列素子11は、2つの給電点(図示せず)を有しており、第1の給電点は垂直偏波に対応づけられ、すなわち、第1の列12における放射素子A及び第2の列14の放射素子Cにそれぞれ接続し、第2の給電点は水平偏波に対応づけられ、すなわち、第1の列12における放射素子B及び第2の列14の放射素子Dにそれぞれ接続している(図1を参照)。
【0021】
左側の列12の放射素子Aに接続される第1の給電点は、好ましくは、仰角ビーム形成ネットワークとして実施される第1の配電網13を介してポートAに接続されており、左側の列12の放射素子Bに接続される第2の給電点は、好ましくは、仰角ビーム形成ネットワークとして実施される第2の配電網13を介してポートBに接続されている(図2を参照)。同様に、右側の列14の放射素子C及びDに接続される給電点は、好ましくは、仰角ビーム形成ネットワークとして実施される別々の配電網(図示せず)を介して、それぞれ、ポートC及びポートDに接続される。このように、列ごとに、配電網は同じ偏波を有する配列素子11の給電点に排他的にポートを接続する、すなわち、ポートAを放射素子A〜Aに、ポートBを放射素子B〜Bになどのように接続する。
【0022】
4つのポート、すなわち、ポートA〜ポートDは、図3にて図示したように、ビーム形成ネットワーク20によって、1つのアンテナ・ポート、すなわち、ポート1に結合される。ビーム形成ネットワーク20は、アンテナ・ポート1及び4つの二次接続15〜15に接続されることを目的とする一次接続19を備える。各ポートA、B、C及びDは、ビーム形成ネットワーク20の二次接続15、15、15及び15に、それぞれ接続される。第1の列12のポートAに対応する垂直偏波線形配列及び第2の列14のポートCに対応する垂直偏波線形配列は、位相シフト差を制御して、列間で電力を分割する第1の移相ネットワークを介して互いに接続する。第1の移相ネットワークは、列間で電力を分割する第1の二次電力結合器/分割器16と、位相シフトαとαをそれぞれ与える可変移相器17及び17と、を備えている。第1の列12のポートBに対応する水平偏波線形配列及び第2の列14のポートDに対応する水平偏波線形配列は、列間で電力を分割する第2の二次電力結合器/分割器16と、位相シフトαとαをそれぞれ与える可変移相器17及び17と、を備える第2の移相ネットワークを介して、互いに接続する。結合されたポートAC及びBDは、続いて、異なる偏波を有する放射素子間で電力を分割する一次電力結合器/分割器18を介して、アンテナ・ポート1に接続する。
【0023】
ビーム形成ネットワーク20及び配電網13〜13は、図2にて図示したように、共に、アンテナ・ポート1を2列に配置された配列素子11のそれぞれの給電点に接続する給電ネットワークを形成する。
【0024】
図4は、図3のビーム形成ネットワーク20の実現する別の例を示す。2つの一体型電力結合器/分割器兼移相装置21と21とを備える移相ネットワークは、ポートA、C及びポートB、Dに給電するために用いられる。角度αXYはポートXとポートY間の電気的位相角の差である。この場合、ポートAとポートCとの位相差αAC=α−αと、ポートBとポートDとの位相差αBD=α−αとがある。
【0025】
同じ振幅及び位相差αACを有するポートA及びポートCに給電すると、方位角ビーム指向が位相差αACに依存する垂直偏波ビームが生じる。この例における二重列の配置に対して、空間的な方位角ビーム指向角φと電気的位相差αの関係は、
【数1】


及びその逆である
【数2】


によって与えられる。
式中、Dは列離隔距離であり、λは送信/受信される信号の波長である。
【0026】
同様に、同じ振幅及び位相差αBDを有するポートB及びポートDに給電すると、方位角ビーム指向が位相差αBDに依存する水平偏波ビームが生じる。
【0027】
図3又は図4の一次電力結合器/分割器18は、結合されたポートACを、結合されたポートBDと共に、アンテナ・ポート1に結合する。結合されたポートACは垂直偏波放射パターンに対応し、結合されたポートBDは水平偏波放射パターンに対応するため、アンテナ・ポート1の結果として生じる放射パターンは、結合されたポートACの放射パターンと結合されたポートBDの放射パターンとの電力和に等しい。したがって、アンテナ・ポート1の放射パターンのビーム幅及びビーム指向は、図3の可変位相α、α、α、及びα、又は、図4の可変位相差αAC及びαBDによって制御することができる。
【0028】
なお、垂直及び水平ビームが同じ指向方向及び形状を有していない場合、ポート1のビームは方位角によって変化する偏波を有する。
【0029】
説明を簡単にするため、図示のアンテナは全て、垂直次元に沿った配列素子の列により垂直方向であるものとみなす。以上から、水平角度は、列に平行な軸周りの角度に対応づけられており、仰角は垂直軸に対する角度に対応づけられている。しかしながら、一般に、アンテナは、いずれの向きにすることができる。
【0030】
実施形態1
一例として、図1〜4に関して説明したような、第1のシングルビームアンテナをシミュレートする。ここで、各列の配列素子の数は12個(すなわち、N=12)であり、配列素子間の列離隔距離D、したがって、異なる列に配置される第1及び第2の位相中心の間の距離は、半分の波長(D=0.5λ)になるように選択され、90°の電力半値ビーム幅を有する放射素子パターンを仮定している。
【0031】
図5は、第1のシングルビームアンテナ及び、空間的ビーム指向角φ(α)について表される異なる角度αに対する可変位相:
αAC=−αBD=α
に対する予測方位角ビーム・パターンを示すものである。曲線(0;0)は、φ(αAC)=φ(αBD)=0を示し、曲線(17;−17)は、φ(αAC)=−φ(αBD)=17を示し、曲線(23;−23)は、φ(αAC)=−φ(αBD)=23を示し、曲線(27;−27)は、φ(αAC)=−φ(αBD)=27を示し、曲線(30;−30)は、φ(αAC)=−φ(αBD)=30を示す。方位角ビーム・パターンに対して、電力半値ビーム幅は、それぞれ、50、56、65、77及び90度である。
【0032】
図6は、第1のシングルビームアンテナの対応する仰角パターンを示す。5つのパターンは、互い重なっている。
【0033】
図7は、第1のシングルビームアンテナと同じ構成だが、以下の式に従って設定される位相差αAC及びαBDを有する構成に対して予測される方位角ビーム・パターンを示す。
φ(αAC)−17°=φ(αBD)+17°=δ
式中、δ=[0°、10°、及び20°]である。曲線(17;−17)は、δ=0°、すなわち、φ(αAC)=17°、φ(αBD)=−17°を示し、同様に、曲線(27;−7)はδ=10°を示し、曲線(37;3)はδ=20°を示す。以上から、空間的ビーム指向角は、それぞれビームオフセットの0°、10°、及び20°に加えて+/−17°である。方位角ビーム・パターンに関して、電力半値帯域はすべてのオフセットに対して56度である。
【0034】
図8は、δ=[0°、10°、及び20°]を有する第1のシングルビームアンテナの対応する仰角パターンを示す。3つのパターンは、互い重なっている。
【0035】
実施形態2
更なる一例として、図1〜4に関して説明したような、第2のシングルビームアンテナをシミュレートする。ここで、各列の配列素子の数は12個(すなわち、N=12)であり、配列素子間の列離隔距離D、したがって、異なる列に配置される第1及び第2の位相中心間の距離は、7分の1の波長(D=0.7λ)になるように選択され、65°の電力半値ビーム幅を有する放射素子パターンを仮定している。
【0036】
図9は、第2のシングルビームアンテナ及び、空間的ビーム指向角φ(α)について表された異なる角度αに対する可変位相:
αAC=−αBD=α
に対する予測方位角ビーム・パターンを示すものである。曲線(0;0)は、φ(αAC)=φ(αBD)=0を示し、曲線(13;−13)は、φ(αAC)=−φ(αBD)=13を示し、曲線(19;−19)は、φ(αAC)=−φ(αBD)=19を示し、曲線(22;−22)は、φ(αAC)=−Φ(αBD)=22を示し、曲線(23;−23)は、φ(αAC)=−φ(αBD)=23を示す。方位角ビーム・パターンに対して、それぞれの電力半値帯域は、35、41、55、71、及び83度である。
【0037】
図10は、第2のシングルビームアンテナであるが、以下の式に従って設定される位相差αAC及びαBDを有する第2のシングルビームアンテナに対して予測される方位角ビーム・パターンを示す。
φ(αAC)−13°=φ(αBD)+13°=δ
式中、δ=[0°及び10°]である。曲線(13;−13)は、δ=0°、すなわち、φ(αAC)=13°及びφ(αBD)=−13°を示し、同様に、曲線(23;−3)は、δ=10°を示す。以上から、空間的ビーム指向角φは、それぞれビームオフセットの0°及び10°に加えて+/−13°である。方位角ビーム・パターンに関して、電力半値帯域は両ビームに対して41度である。
【0038】
上述の例は、シングルビームアンテナを説明するものである。しかしながら、移動通信システムでは、デュアルビームアンテナを達成するために、すなわち、同じ領域をカバーするが直交する偏波を有する2つのビームを有するために、二重偏波アンテナを用いることは一般的である。
【0039】
図11は、M個のグループを有する本発明に係るアンテナ構成(左側)を示しており、各グループは、4つの二重偏波配列素子を有し、各二重偏波配列素子は、直交する偏波に対応づけられた第1の給電点及び第2の給電点を有し、図1に関連して説明したように2列に配置される第1及び第2の位相中心を有する。右側には、グループ「m」内の放射素子のインデックスを示す。素子は8個の線形配列を形成するように配置されており、各々がポートA〜Hに接続される。
【0040】
図12は、ポートA及びポートBの配電網の例を示し、図13は、移相器及び電力結合器/分割器からなる、ビーム幅及びビーム指向調整用ビーム形成ネットワークを示す。
【0041】
図11〜13は、共に、本発明に係るアンテナの第2の実施形態を図示しており、この例では、各ビームが可変的なビーム幅及びビーム指向を有する、直交偏波のデュアルビームアンテナである。デュアルビームアンテナは、列離隔距離Dと行離隔距離Dとを有する、二重偏波配列素子31を2列で有するアンテナ構成30を備える。本実施形態では、各グループ「m」は、4つの垂直偏波放射素子A、C、E、及びGと4つの水平偏波放射素子B、D、F、及びH(m=1〜M)とを備え、Mは少なくとも1(M≧1)であり、好ましくは2よりも大きい(M>2)。各配列素子31は、2つの給電点(図示せず)、垂直偏波に対する第1の給電点及び水平偏波に対する第2の給電点を有する。第1の給電点は、第1の列32の放射素子A及び放射素子Cと、第2の列34の放射素子E及び放射素子Gとに接続される。第2の給電点は、第1の列32の放射素子B及び放射素子Dと、第2の列34の放射素子F及び放射素子Hとに接続される(図11参照)。
【0042】
各列のすべての第2の放射素子の各給電点は、好ましくは仰角ビーム形成ネットワークとして実施される配電網を介して接続され、結果として、列A〜D及びE〜Hごとに4つのポートとなる(図11を参照)。図12は、好ましくは仰角ビーム形成ネットワークとして実施される配電網33、33の例を挙げる。放射素子A〜Aに接続される給電点は、垂直偏波を有するM個の素子の垂直線形配列を形成しているポートAに、配電網33を介して接続される。放射素子B〜Bに接続される給電点は、垂直偏波を有するM個の素子の垂直線形配列を形成しているポートBに、配電網33を介して接続される。同様に、放射素子C〜CからH〜Hに接続される給電点は、それぞれの配電網33〜33を介してポートC〜Hに接続される。したがって、各列は全部で8つのポートA〜Hを提供する二重偏波配列素子の2つの交互配置されたM個の素子の線形配列から成る(図11及び12を参照)。
【0043】
8つのポートであるポートA〜ポートHは、ここで、図13にて図示したように、デュアルビーム形成ネットワーク40(2つの別々のビーム形成ネットワーク40及び40を備える)の第1の実施形態によって、2つのアンテナ・ポートであるポート1及びポート2に結合される。別々のビーム形成ネットワーク40、40は、各々、アンテナ・ポート1及びポート2にそれぞれ接続されることを目的とする一次接続39、39を備える。各ポートA〜Hは、デュアルビーム形成ネットワーク40の各二次接続35〜35に接続される。第1の列32のポートAに対応する垂直偏波線形配列と第2の列34のポートGに対応する垂直偏波線形配列とは、第1の二次電力結合器/分割器36と、それぞれ位相シフトα及びαを与える可変移相器37及び37とを備える第1の移相ネットワークを介して、接続されている。第1の列32のポートDに対応する水平偏波線形配列と第2の列34のポートFに対応する水平偏波線形配列とは、第2の二次電力結合器/分割器36と、それぞれ位相シフトα及びαを与える可変移相器37及び37とを備える第1の移相ネットワークを介して、接続されている。結合されたポートAG及びDFは、続いて、一次電力結合器/分割器38によって、一次接続39を介してアンテナ・ポート1に結合する。同様に、アンテナ・ポート2は、図13にて図示したように、ビーム形成ネットワーク40を用いて、ポートC、E、B及びHを結合することによって形成される。この構成により、アンテナ・ポート1及びポート2のアンテナ電力パターンのビーム幅及び/又は指向方向は、位相角α、α、α、α、α、α、α、及びαを適切に選択することによって変えてもよい。
【0044】
なお、以下に示すように、アンテナ・ポート1の水平及び垂直偏波放射素子間の位相差が、アンテナ・ポート2の水平及び垂直偏波放射素子間の位相差に対して適切に選択される場合、アンテナ・ポート1及びアンテナ・ポート2のビームは、全ての方位角に対して直交偏波を有することになる。
【0045】
実施形態3
一例として、図11〜13に関して説明したような、第1のデュアルビームアンテナをシミュレートする。ここで、各列の配列素子の数は12個(すなわち、M=6)であり、配列素子間の列離隔距離D、したがって、異なる列に配置される第1及び第2の位相中心間の距離は、半分の波長(D=0.5λ)になるように選択され、90°の電力半値ビーム幅を有する放射素子パターンを仮定している。
【0046】
図14は、第1のデュアルビームアンテナ及び、空間的ビーム指向角φ(α)について表された異なる角度αに対する可変位相:
α−α=α−α=α−α=α−α=α
に対する予測方位角ビーム・パターンを示すものである。曲線1(0;0)及び曲線2(0;0)(各アンテナ・ポートに対して、φ=0を示す)は重複しており、同様に、曲線1(17;−17)及び曲線2(−17;17)、曲線1(23;−23)及び曲線2(−23;23)、曲線1(27;−27)及び曲線2(−27;27)、曲線1(30;−30)及び曲線2(−30;30)はペアのように一致する、すなわち、アンテナ・ポート1及び2に対応づけられた放射パターンは重複する。方位角ビーム・パターンに対して、電力半値帯域は、それぞれ、50、56、65、77及び90度である。
【0047】
空間的角度φと位相差αの関係は、
【数3】


及びその逆である
【数4】


によって与えられる。
【0048】
図15は、第1のデュアルビームアンテナの対応する仰角パターンを示す。
【0049】
図16は、第1のデュアルビームアンテナと同じ構成だが、以下の式に従って設定される位相差α−α、α−α、α−α、及びα−αを有する構成に対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
φ(α−α)−17°=φ(α−α)+17°=φ(α−α)+17°=φ(α−α)−17°=δ
式中、δ=[0°、10°、及び20°]である。曲線1(17;−17)は曲線2(−17;17)に等しく、δ=0°、すなわち、φ(α−α)=φ(α−α)=17°及びφ(α−α)=φ(α−α)=−17°であることを示し、同様に、曲線1(27;−7)は曲線2(−7;27)に等しく、δ=0°であり、曲線1(37;3)は曲線2(3;37)に等しく、δ=20°であることを示す。空間的ビーム指向角φ(ポートAG、BH、CE及びBHに関して)は、アンテナビームオフセットの0°、10°、及び20°それぞれに加えて+/−17°である。方位角ビーム・パターンに関して、電力半値帯域はすべての設定に対して56度である。
【0050】
図17は、対応する仰角パターンを示す。
【0051】
図18は、本発明に係る第2のデュアルビームアンテナを得るために図11及び図12に図示したように配電網に接続されることを目的とする本発明に係るデュアルビーム形成ネットワークの第2の実施形態を示すものであり、ポートAGをポートBHに結合してアンテナ・ポート1を形成し、同様にポートCEをポートDFに結合してアンテナ・ポート2を形成する。
【0052】
図13において説明された構成の代わりに図18の構成を用いる場合、図14〜17にて開示したように同様の方位角ビーム・パターンが得られる。
【0053】
図19は、R個のグループを有する、本発明に係るアンテナ構成(左側)を示すものであり、各グループは、6個の二重偏波配列素子を有する。右側には、グループ「r」内の放射素子のインデックスを示す。素子は12個の線形配列を形成するように配置されており、各々がポートA〜Lに接続される。
【0054】
図20は、移相器及び電力結合器/分割器からなる、本発明に係るビーム幅及びビーム指向調整用ビーム形成ネットワークを示す。
【0055】
図19及び図20は、共に、本発明に係るアンテナの第3の実施形態を図示しており、この例では、各ビームが可変的なビーム幅及びビーム指向を有する、直交偏波を有するデュアルビームアンテナである。デュアルビームアンテナは、列離隔距離Dと行離隔距離Dとを有する、二重偏波配列素子51のR個のグループを3列52〜54で有するアンテナ構成50を備える。本実施形態では、各グループ「r」は、6個の垂直偏波放射素子A、C、E、G、I、及びKと、6個の水平偏波放射素子B、D、F、H、J、及びL(r=1〜R)とを備え、Rは少なくとも1(R≧1)であり、好ましくは2よりも大きい(R>2)。各配列素子は、2つの給電点である、垂直偏波に対する第1の給電点及び水平偏波に対する第2の給電点を有する(図19を参照)。図11〜13に関連して説明されたアンテナの第2の実施形態との違いは、この例におけるアンテナは2列ではなく3列で二重偏波配列素子を備えることであるが、可変的なビーム幅及びビーム指向を達成する原理は同じことである。
【0056】
各列のすべての第2の放射素子の各給電点は、好ましくは仰角ビーム形成ネットワークとして実施される配電網を介して接続され、結果として、列A〜D、E〜H、及びI〜Lごとにそれぞれ4つのポートとなる(図19を参照)。したがって、アンテナ素子ポートA〜Aは、第1の配電網(図示せず)を介して、垂直偏波を有するR個の素子の垂直線形配列を形成するポートAに接続される。アンテナ素子ポートB〜Bは、第2の配電網(図示せず)を介して、水平偏波を有するR個の素子の水平線形配列を形成するポートBに接続される。同様に、アンテナ素子C〜CからL〜Lは、ポートC〜Lを形成する個々の仰角ビーム形成ネットワークを介して接続される。したがって、各列は全部で12個のポートにA〜Lを提供する二重偏波素子の2つの交互配置されたR個の素子の線形配列から成る(図19を参照)。
【0057】
12個のポートであるポートA〜ポートLは、図20にて図示したように、ビーム形成ネットワーク60(2つの別々のビーム形成ネットワーク60及び60を備える)の第3の実施形態によって、2つのアンテナ・ポートであるポート1及びポート2に結合される。別々のビーム形成ネットワーク60、60は、各々、アンテナ・ポート1及びポート2にそれぞれ接続されることを目的とする一次接続59、59を備える。各ポートA〜Lは、デュアルビーム形成ネットワーク60の各二次接続55〜55Lに接続される。第1の列52のポートAに対応する垂直偏波線形配列、第2の列53のポートGに対応する垂直偏波線形配列、及び、第3の列54のポートIに対応する垂直偏波線形配列は、第1の二次電力結合器/分割器56と、それぞれ位相シフトα、α、及びαを与える可変移相器57、57、及び57とを備える第1の移相ネットワークを介して、接続される。第1の列52のポートBに対応する水平偏波線形配列、第2の列53のポートHに対応する水平偏波線形配列、及び、第3の列54のポートJに対応する水平偏波線形配列は、第2の二次電力結合器/分割器56と、それぞれ位相シフトα、α、及びαを与える可変移相器57、57、及び57とを備える第2の移相ネットワークを介して、接続される。
【0058】
結合されたポートAGI及びDFJは、続いて、一次電力結合器/分割器58によって、一次接続59を介してアンテナ・ポート1に結合される。同様に、アンテナ・ポート2は、図20にて図示したように、ビーム形成ネットワーク60を用いて、ポートC、E、K、D、F、及びLを結合することによって形成される。上述の例と同様で、この構成によって、以下に示すように、位相角α〜αを適切に選択することによって、アンテナ・ポート1及びポート2のアンテナ電力パターンのビーム幅及び/又は指向方向を変更することが可能になる。
【0059】
実施形態4
一例として、図19〜20に関して説明したような、第2のデュアルビームアンテナをシミュレートする。ここで、各列の配列素子の数は12個(すなわち、R=6)であり、配列素子間の列離隔距離D、したがって、異なる列に配置される第1及び第2の位相中心の間の距離は、半分の波長(D=0.5λ)になるように選択され、90°の電力半値ビーム幅を有する放射素子パターンを仮定している。
【0060】
図21は、第2のデュアルビームアンテナ及び可変位相に対する予測方位角ビーム・パターンを示す。
【0061】
同じ空間的離隔距離を有しているため、線形スロープ、すなわち、2つの隣接する配列素子間の同じ位相差が与えられる。曲線1(0;0)及び曲線2(0;0)(各アンテナ・ポートに対して、φ=0を示す)は重複しており、同様に曲線1(10;−10)及び曲線2(−10;10)、曲線1(16;−16)及び曲線2(−16;16)、曲線1(19;−19)及び曲線2(−19;19)はペアのように一致する、すなわち、アンテナ・ポート1及び2に対応づけられた放射パターンは重複する。方位角ビーム・パターンに対して、それぞれの電力半値帯域は、35、41、55、及び67度である。
【0062】
図22は、第2のデュアルビームアンテナの対応する仰角パターンを示す。
【0063】
図1、図11及び図19に関連して説明された配列素子は、二重偏波放射素子を有する配列素子として図示されているが、本発明は、これに限られるものではないことに留意されたい。本明細書から当業者には自明であるように、配列素子が重なっていれば、単一偏波放射素子を有する配列素子を用いて、同様な挙動を生じさせることは可能である。
【0064】
図23及び図24は、どのようにアンテナが2つの配列素子(シングルビームアンテナ用)に、又は、4つの配列素子(デュアルビームアンテナ用)に分けられるかを図示する。配列素子は、第1の偏波に対応づけられた第1の給電点、及び、第1の偏波に直交する第2の偏波に対応づけられた第2の給電点を有する。網掛け部分は、各配列素子を実施するために必要なアンテナ表面を示す。
【0065】
図23において、シングルアンテナ・ポート1を設けたアンテナは、アンテナ表面に配置される2つの配列素子を備える。給電点は、図1のグループのインデックスを参照して図示されている。
【0066】
アンテナ構成は、隣同士に配置される2つの配列素子によって実現してもよい。第1の偏波に対応づけられた第1の給電点「A」及び第2の偏波に対応づけられた第2の給電点「B」を有する第1の配列素子と、第1の偏波に対応づけられた第1の給電点「C」及び第2の偏波に対応づけられた第2の給電点「D」を有する第2の配列素子である。配列素子ごとに、異なる偏波に対する位相中心が、同じ列に配列されているものと考えてもよい。
【0067】
同じアンテナ構成は、互い重なり合う2つの配列素子によって実現してもよい。第1の偏波に対応づけられた第1の給電点「A」及び第2の偏波に対応づけられた第2の給電点「D」を有する第1の配列素子と、第1の偏波に対応づけられた第1の給電点「C」及び第2の偏波に対応づけられた第2の給電点「B」を有する第2の配列素子である。配列素子ごとに、異なる偏波に対する位相中心が、異なる列に配列されているものと考えてもよい。
【0068】
配列素子は、また、給電ネットワークを介して各偏波に共通の給電点に相互接続する複数の放射素子を備えてもよい。これの一例を、図24にて説明する。
【0069】
当該アンテナは、2つの列に配置される12個の二重偏波放射素子を備える。放射素子は、例えば、図13又は図18に関連して開示したように、ビーム形成ネットワークを介して2つのアンテナ・ポート1及び2に接続される。給電点は、図11のグループのインデックスを参照して図示されている。
【0070】
このアンテナ構成は、図11〜13に関連してすでに説明したが、多数の異なる方法で実現されてもよい。図24には、変形例が4つの配列素子を含んで示されおり、アンテナ構成を実現するために重なり合っている。第1の配列素子は、第1の偏波を有する第1の列において、全ての第2の放射素子に接続される第1の給電点「A」と、第2の偏波を有する第2の列において、全ての第2の放射素子に接続される第2の給電点「F」と、を有する。同様に、第2の配列素子は、給電点D及びGを有し、第3の配列素子は、給電点B及びEを有し、第4の配列素子は、給電点C及びHを有する。
【0071】
上記した実施形態では、単一偏波又は二重偏波配列素子によって生じる垂直及び水平の偏波として、異なる偏波の例をあげた。放射素子は、最も簡単な実施態様を図示し、更に、発明の概念を明確に記載するために用いた。しかし、2つ偏波の差が大体90度(すなわち基本的に直交)である限り、他の偏波(例えば+45度/−45度又は+60度/−30度)を有する配列素子を用いてもよいことに留意されたい。さらに、第1の列の0/+90度の偏波を有する配列素子と、第2の列の−20/+70度の偏波を有する配列素子とを有することも考えられる。その場合、異なる列に配置される配列素子の全ての偏波が同じになるように、配列素子の給電を適合させる必要がある。これは、偏波変成器を直接配列素子ポートに適用することで、全ての配列素子が同じ偏波を有するようにすることで達成してもよい。偏波変成器は、好ましくは、配列素子の一部であると見なされ、それによって偏波は全ての配列素子に対して同一となる。
【0072】
図25も、図26a〜26dに関連して、配列素子の他の構成を用いて、上記と同じ特性を有するアンテナを得る可能性を図示するものである。
【0073】
図25は、2列に配置される配列素子を有する一般的なアンテナ構成70を示す。各列は、10個の配列素子を備える。配列素子X〜X10は第1の列に配置され、配列素子Y〜Y10は第2の列に配置される。この一般的な例において、各配列素子は二重偏波されており、第1の給電点71(実線によって示される)及び第2の給電点72(破線によって示される)を有する。第1の偏波を有する配列素子の中の放射素子は、第1の給電点71に接続され、第1の偏波に直交する第2の偏波を有する放射素子は、第2の給電点72に接続される。
【0074】
配列素子X〜X10の給電点は、配電網(図示せず)を介して多くのポートに接続される。配列素子Y〜Y10の給電点は、配電網(図示せず)を介して同数のポートに接続される。ポートの数は、上記のように、何個の配列素子がグループに含まれるかに依存し、グループに二重偏波を有する2つの配列素子のみが含まれる場合は、各列の配列素子の給電点は、2つのポートに接続されることになる(図1を参照)。しかし、グループに二重偏波を有する4つの配列素子が含まれる場合は、各列の配列素子の給電点は、4つのポートに接続されることになる(図11を参照)。
【0075】
列間の水平距離D及び各行間の垂直距離Dは、通常、マルチビームアンテナを設計するときに決定された構造的なパラメータである。これらは好ましくは0.3λと1λの間に設定される。しかしながら、水平距離及び/又は垂直距離を変えることで、マルチビームアンテナの特性を変更し得るマルチビームアンテナを設計することができる。
【0076】
図25に図示される配列素子は、放射素子のn×mマトリクスを有する部分配列として実現されてもよい。ここで、n及びmは1以上の整数である(n,m≧1)。各部分配列内の各放射素子は、それぞれの給電点に接続される。
【0077】
図26a〜26dは、図25に示されるアンテナに用い得る配列素子の4つの例を示す。例示された配列素子は全て、二重偏波放射素子を備えるものであり、したがって、2つの給電点71及び72を備える。図23及び図24に関して図示したように、例示された配列素子のそれぞれは、単一偏波放射素子を有してもよいことに留意されたい。
【0078】
図26aは、第1の偏波を有する第1の放射素子74(1×1のマトリクス)に接続される第1の給電点71、及び、第1の偏波に直交する第2の偏波を有する第2の放射素子75に接続される第2の給電点72を有する簡単な二重偏波配列素子73を図示する。
【0079】
図26bは、第1の偏波を有する第1の放射素子74の2×1のマトリクスに接続される第1の給電点71、及び、第1の偏波に直交する第2の偏波を有する第2の放射素子75の2×1のマトリクスに接続される第2の給電点72を有する二重偏波配列素子76を図示する。
【0080】
図26cは、第1の偏波を有する第1の放射素子74の1×2のマトリクスに接続される第1の給電点71、及び、第1の偏波に直交する第2の偏波を有する第2の放射素子75の1×2のマトリクスに接続される第2の給電点72を有する二重偏波配列素子77を図示する。
【0081】
図26dは、第1の偏波を有する第1の放射素子74の2×2のマトリクスに接続される第1の給電点71、及び、第1の偏波に直交する第2の偏波を有する第2の放射素子75の2×2のマトリクスに接続される第2の給電点72を有する二重偏波配列素子78を図示する。
【0082】
図25において説明される一般的なアンテナ構成の配列素子は全て、例えば、同じタイプの二重偏波配列素子77を有していてもよいが、当然、アンテナ構成の全ての配列素子が異なっていることも可能である。重要な特徴は、配列素子が、直交する偏波に対応づけられた2つの給電点を備え、各偏波に対応づけられた位相中心が、上記のように、少なくとも2列で配置される、ということである。
【0083】
実施形態5
図27は、アンテナ構成81、4つの配電網82〜82、及びビーム形成ネットワーク83を備える、本発明に係る第3のシングルビームアンテナ80を示す。当該アンテナは、2つの異なるタイプ78及び79の、8個の交互配置された配列素子の一列を備える。各配列素子は、第1の偏波に対応づけられた第1の給電点(及び、第1の位相中心)、及び、第1の偏波に直交する第2の偏波に対応づけられた第2の給電点(及び、第2の位相中心)を有する。第1のタイプの配列素子78の第1の位相中心は、第1の列に配置され、第2の配列素子79の第1の位相中心は、第2の列に配置される。配列素子の第1のタイプ78及び第2のタイプ79の第2の位相中心には正反対のものを適用する。各配電網は、同じタイプの配列素子のそれぞれの給電点をポート(A〜D)に接続するように構成され、ビーム形成ネットワーク83を介して、ポート(A〜D)をシングルアンテナ・ポート1に接続する。
【0084】
この例では、配列素子は4つのグループ1〜4に分けられ、各配列素子は2つの単一偏波放射素子を備え、各単一偏波放射素子は、それぞれの給電点に接続される。各グループ「s」は、垂直偏波放射素子A及び水平偏波放射素子Bを有する第1のタイプの配列素子78と、水平偏波放射素子C及び垂直偏波放射素子Dを有する第2のタイプの配列素子79と、を備える。放射素子A及びCの位相中心は第1の列84に配置され、放射素子B及びDの位相中心は第2の列85に配置される。第1の列84の垂直放射素子、すなわち、A〜Aは、第1の配電網82を介してポートAに接続され、第1の列84の水平放射素子、すなわち、C〜Cは、第2の配電網82を介して、ポートCに接続される。同様のことが、第2の列85の放射素子にも当てはまる。すなわち、放射素子B〜Bは、第3の配電網を介してポートBに接続され、放射素子D〜Dは、第4の配電網を介してポートDに接続される。配電網は、好ましくは、別々の仰角ビーム形成ネットワークとして実施される。
【0085】
4つのポートであるポートA〜ポートDは、ビーム形成ネットワーク83によって、1つのアンテナ・ポートであるポート1に結合する。ビーム形成ネットワーク83は、アンテナ・ポート1及び4個の二次接続86〜86に接続されることを目的とする一次接続89を備える。各ポートA、B、C、及びDは、ビーム形成ネットワーク83のそれぞれの二次接続に接続される。第1の列84のポートAに対応する垂直偏波線形配列と第2の列85のポートDに対応する垂直偏波線形配列とは、第1の一体型電力結合器/分割器兼移相装置87を介して接続される(図4に関連して説明されたものと同様である)。第1の列84のポートCに対応する水平偏波線形配列と第2の列85のポートBに対応する水平偏波線形配列とは、第2の一体型電力結合器/分割器兼移相装置87を介して接続される。結合されたポートAD及びBDは、続いて、異なる偏波を有する放射素子間で電力を結合/分割する一次電力結合器/分割器88を介してアンテナ・ポート1に接続される。
【0086】
実施形態6
図28は、配列素子が垂直方向であり、第1のタイプの配列素子78が第1の列94に配置され、第2のタイプの配列素子79が第2の列95に配置されること以外、図27において説明されたものと同様なアンテナ構成を備える、本発明に係る第3のデュアルビームアンテナ90を示す。配列素子は、2つのグループにのみ分けられて、各グループ「t」は4つの配列素子を有する。単一偏波放射素子A、B、E、及びFは、第1のセットに属し、単一偏波放射素子C、D、G、及びHは、第2のセットに属す。第1のタイプの配列素子78の第1の位相中心及び第2の位相中心は、第1の列94に配置され、第2のタイプの配列素子79の第1の位相中心及び第2の位相中心は、第2の列95に配列されるものとする。
【0087】
8個のポート、すなわちポートA〜ポートHは、2つのビーム形成ネットワーク93及び93によって、2つのアンテナ・ポート、すなわちポート1及びポート2に結合する。各ビーム形成ネットワークは、それぞれのアンテナ・ポート及び4個の二次接続に接続されることを目的とする一次接続を備える。各ポートA〜Hは、ビーム形成ネットワークのそれぞれの二次接続に接続される。各列における全ての第2の配列素子のそれぞれの給電点は、好ましくは仰角ビーム形成ネットワークとして実施される別々の配電網92〜92を介して、ポートA〜Hに接続される(図28を参照)。
【0088】
4つのポートA、B、E、及びFは、第1のビーム形成ネットワーク93に接続される。第1の列94のポートAに対応する垂直偏波線形配列と第2の列95のポートFに対応する垂直偏波線形配列とは、第1の一体型電力結合器/分割器兼移相装置97を備える第1の移送ネットワークを介して接続される(図4に関連して説明されたものと同様である)。第1の列94のポートBに対応する水平偏波線形配列と第2の列95のポートEに対応する水平偏波線形配列とは、第2の一体型電力結合器/分割器兼移相装置87を備える第2の移送ネットワークを介して接続される。結合されたポートAF及びBEは、続いて、第1のセットに属す放射素子間で電力を結合/分割し、異なる偏波を有する一次電力結合器/分割器98を介してアンテナ・ポート1に接続される。
【0089】
同様に、ポートC、D、G、及びHは、第2のビーム形成ネットワーク93を介してアンテナ・ポート2に接続される。
【0090】
上記した実施形態の全てにおいて、電気的傾斜を実施することが可能であるが、本発明に対して更なる影響はない。さらにまた、図3、4、13、18、20、27、及び28に関連して説明される結合器/分割器は、変数(又は、少なくとも固定で不均等の電力分割)を有してもよい。不均等な結合/分割は、一次及び二次結合器/分割器に対して実施してもよいが、一次結合器/分割器に対する方がより効果的である。
【0091】
上述の実施形態に関連して説明された各給電ネットワークは、ビーム形成ネットワークと複数の配電網とを備える。各配電網は、ビーム形成ネットワークの各二次接続を、各列に配置される第1の位相中心を有する接続配列素子の第1の給電点に排他的に接続する、又は、ビーム形成ネットワークのそれぞれの二次接続を、各列に配置される第2の位相中心を有する接続配列素子の第2の給電点に排他的に接続する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配列素子であって、各配列素子は、第1の偏波に対応づけられた第1の給電点、及び、前記第1の偏波に直交する第2の偏波に対応づけられた第2の給電点を備える、複数の配列素子と、
第1の偏波に対応づけられた第1の位相中心及び第2の偏波に対応づけられた第2の位相中心を有し、前記配列素子の第1及び第2の位相中心は、少なくとも2列に配置される、各配列素子と、
1以上のアンテナ・ポートであって、各アンテナ・ポートは、それぞれの給電ネットワークを介して前記少なくとも2列に配置される第1の位相中心及び第2の位相中心を有する少なくとも2つの配列素子の第1及び第2の給電点に接続される、1以上のアンテナ・ポートと、を備える可変ビーム特性を有するアンテナであって、
前記それぞれの給電ネットワークは、
それぞれのアンテナ・ポートに接続される一次接続及び少なくとも4つの二次接続を有するビーム形成ネットワークを備え、前記ビーム形成ネットワークは、前記接続配列素子の第1の給電点と第2の給電点との間で電力を分け、異なる列に配置される位相中心を有する接続配列素子の第1の給電点間、及び、異なる列に配置される第2の位相中心を有する接続配列素子の第2の給電点間の位相シフト差を制御するよう構成されることを特徴とする、可変ビーム特性を有するアンテナ。
【請求項2】
少なくとも1つの配列素子の第1の位相中心及び第2の位相中心は、2列に配置される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
少なくとも1つの配列素子の第1の位相中心及び第2の位相中心は、同じ列に配置される、請求項1又は2に記載のアンテナ。
【請求項4】
異なる列に配置される第1の位相中心間の第1の距離が0.3波長、好ましくは0.5波長よりも大きく、異なる列に配置される第2の位相中心間の第2の距離は、0.3波長、好ましくは0.5波長よりも大きい、請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項5】
前記複数の配列素子は、各々複数の配列素子を備える少なくとも第1のセット及び第2のセットを備え、前記第1のセットの配列素子の第1の位相中心及び第2の位相中心、及び、前記第2のセットの配列素子の第1の位相中心及び第2の位相中心は、それぞれ、前記少なくとも2列のそれぞれに配列され、前記アンテナは、給電ネットワークを介して、それぞれ前記第1のセット及び前記第2のセットにおける配列素子に各々接続される少なくとも2つのアンテナ・ポートを更に備える、請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
前記配列素子は列状に配置されており、各列は、前記第2のセットの配列素子と交互配置される前記第1のセットの配列素子を備える、請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記配列素子は複数の行に配置されており、各行は、前記第2のセットの配列素子と交互配置される前記第1のセットの配列素子を備える、請求項5又は6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記配列素子は複数の行に配置されており、各行は、前記第2のセットの配列素子と重なり合う前記第1のセットの配列素子を備える、請求項5又は6に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記配列素子は少なくとも3列に配置されており、各ビーム形成ネットワークは少なくとも6個の二次接続を更に備える、請求項1〜8のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項10】
前記ビーム形成ネットワークの少なくとも1つは、それぞれのアンテナ・ポートに接続されて、接続配列素子の第1の給電点と第2の給電点との間で電力を分けるように構成される一次電力結合器/分割器を更に備える、請求項1〜9のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項11】
前記ビーム形成ネットワークの少なくとも1つは、異なる列に配置される第1の位相中心を有する接続配列素子の第1の給電点の間の位相シフト差を制御し、更に電力を分割するように構成される第1の移相ネットワーク、及び、異なる列に配置される第2の位相中心を有する接続配列素子の第2の給電点の間の位相シフト差を制御し、更に電力を分割するように構成される第2の移相ネットワークの、2つの移相ネットワークを更に備える、請求項1〜10のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
各移相ネットワークは、一体型の移相兼電力分割装置を備える、請求項11に記載のアンテナ。
【請求項13】
各移相ネットワークは、同じ列に配置される第1の位相中心又は第2の位相中心をそれぞれ有する接続配列素子の第1の給電点又は第2の給電点に位相器を介して給電するように構成される二次電力結合器/分割器を備える、請求項11に記載のアンテナ。
【請求項14】
それぞれの給電ネットワークは、複数の配電網を更に備え、各配電網は、前記ビーム形成ネットワークの各二次接続を、各列に配置される第1の位相中心を有する接続配列素子の第1の給電点に排他的に接続する、又は、前記ビーム形成ネットワークの各二次接続を、それぞれの列に配置される第2の位相中心を有する接続配列素子の第2の給電点に排他的に接続するように構成される、請求項1〜13のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項15】
前記ビーム形成ネットワークは、更に、方位角ビーム形成を行うように構成されており、各配電網は、更に、仰角ビーム形成を行うように構成される、請求項14に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26a】
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【図26b】
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【図26c】
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【図26d】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2013−519276(P2013−519276A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551497(P2012−551497)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000756
【国際公開番号】WO2011/095184
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】