説明

可変倍率を有する照準望遠鏡

【課題】
照準望遠鏡の強度・精度を損なう事無く、ギヤを使用せずにズーム環の倍率変換操作を軽
快に行ない、ズームカムの回転角以下の回転で、最小倍率から最大倍率に変倍する事を可
能とする照準望遠鏡を提供する。
【解決手段】
前述した目的を達成する為に、本発明は、正立レンズ室を駆動するカム筒とズーム環の間
に移動カムを設けることにより、ズーム環の回転角度を増幅してカム筒に伝達する構造を
持つズーム機構を備えた照準望遠鏡を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変倍率を有する照準望遠鏡のズーム操作を軽快に行なう為の、ズーム構造に
関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変倍率を有する照準望遠鏡の従来の一般的ズーム機構を以下図10、図11を用いて説
明する。従来照準望遠鏡のズーム機構においては、鏡胴(45)の外周に開口した円弧状
のズーム溝(45A)を持ち、該ズーム溝(45A)の外に鏡胴(45)に対して回動自
在にズーム環(43)を配置し、ズーム環(43)に設けたズームビス(44)を、カム
筒(32)の回転溝(32A)に接続してズーム環(43)の回動によりカム筒(32)
を回動させズーミングを行なっている。ズームビス(44)はズーム溝(45A)を通り
カム筒(32)と接続される為、ズーム溝(45A)はズーミングに必要なカム回転角分
開口している必要がある。
【0003】
またカム筒(32)外周には、正立鏡筒(31)内の2つの正立レンズ室(37、38)
を駆動するための光軸に対して傾斜した2本のカム溝(32B、32C)が設けてある。
正立レンズ室前(37)及び正立レンズ室(38)には移動カラー(36)を介して移動
ビス(35)が配置されており、正立鏡筒(31)の縦溝により回転方向が規制され、前
述のカム溝前(32B)及びカム溝後(32C)により光軸方向に駆動されズーミングを
行っている。ズーム変換比が大きくなるに従ってカム筒(32)の回転角は大きくなり、
鏡胴(45)のズーム溝(45A)の開口部は広くなっている。鏡胴(45)に外部の力
がかかった時に開口部での強度が不足し変形してしまうと言う問題があった。
【0004】
開口部が広くなることにより外部の力による鏡胴(45)の変形が起こり易くなる事を防
ぐ為に、開口部を狭くする為の構造としてカム筒とズーム環の間にギヤを設けた機構が提
案されている。(特許文献1、特許文献2参照)
【0005】
銃に取付けた照準望遠鏡を操作する時、低い倍率で標的を確認し、高い倍率に変倍して照
準を合わせる必要がある。銃を構えた姿勢でズーム環を回転させた場合、一般的に一回の
操作で60度から70度の回転が可能であり、2・3回持ち換えてズーミングする為、少
ない角度のズーム操作が好まれている。
【特許文献1】特許第2920592号
【特許文献2】特開2006−10810
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
照準望遠鏡の強度・精度を損なう事無く、ギヤを使用せずにズーム環の倍率変換操作を軽
快に行ない、ズームカムの回転角以下の回転で、最小倍率から最大倍率に変倍する事を可
能とする照準望遠鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成する為に、本発明は、正立レンズ室を駆動するカム筒とズーム環の間
に移動カムを設けることにより、ズーム環の回転角度を増幅してカム筒に伝達する構造を
持つズーム機構を備えた照準望遠鏡を提供するものである。
【0008】
また前記ズーム機構は、ズーム環の回転がそのまま移動カムを回転させると同時に、移動
カムを光軸方向に直進させる。該移動カムの直進を更にカム筒の回転に変換するカムを有
する構造を持つ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のズーム構造によれば、鏡胴外周に大きな開口部を設ける必要がないので、開口部
に対する外力による影響は排除できる。又、変換倍率比が大きくなっても従来と同程度の
開口部で最低倍率から最高倍率までズーミングが可能となる。ズーム環の回転角度を少な
く出来る為、速やかな倍率切り替えが可能となり、可変倍率を有する照準望遠鏡の使い勝
手をいっそう高めることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による一つの実施形態であるズーム構造を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は当該ズーム機構を使用した照準望遠鏡の構造を示す断面図である。図2はズーム機構部の分解斜視図であり、図3はズーム機構部の断面図である。
【0011】
図2で示されるように正立鏡筒(1)には光軸に平行に直線溝(1A)が設けられ、正立
レンズの組み込まれた正立レンズ室後(7)及び正立レンズ室前(8)が正立鏡筒(1)
内に直列に配置される。正立レンズ室後(7)及び正立レンズ室前(8)には移動ビス(15)及び移動カラー(14)が軸方向に対して直角方向に取付けられ、直線溝(1A)により回転方向が規制され直進方向の移動のみが許される。正立鏡筒(1)に覆設してカム筒(2)が配置され、カム筒(2)が回転する事により、カム筒(2)の外周に設けられた2本のカム溝前(2E)カム溝後(2F)にガイドされ、正立レンズ室後(7)及び正立レンズ室前(8)は光学配置位置に配置される。
【0012】
図4で示すように、カム筒(2)はカム押え(3)で軸方向の動きは規制されており回転
のみが許される。カム筒(2)には逃げ溝(2A)、直線カム(2B)、カム溝前(2E)、カム溝後(2F)が設けられる。
【0013】
移動カム(4)は、カム筒(2)に覆設され、直線カム(4A)、直線溝(4B)、移動ビス止穴(4C)が設けられる。移動カム(4)に設けられた移動ビス止穴(4C)にはカム移動ビス(5)が固着され、カム移動ビス(5)下部がカム筒(2)の直線カム(2B)に摺動する。
【0014】
正立鏡筒(1)に固着された回転ビス(6)は、カム筒(2)の逃げ溝(2A)を通り移
動カム(4)の直線カム(4A)に摺動する。移動カム(4)の直線溝(4B)にはズー
ム環(18)に接続されたズームビス(13)が摺動し、ズーム環(18)の回転が伝達
される。
【0015】
ズーム環(18)の回転によりカム筒(2)の回転が増幅される状態を図7、図8、図9
を使って説明する。ズーム環(18)の回転はズームビス(13)で示される。図7は最
高倍率の状態を示し、ズームビス(13)は図の上部に位置している。また、移動カム(4)も最も左側に位置し、直線溝(4B)の右端にズームビス(13)が位置している。カム移動ビス(5)はカム筒(2)の直線カム(2B)左端に位置している。
【0016】
ズーム環(18)を最高倍率から順に倍率を下げていった時、図8のようにズームビス(13)は図の中部に位置し直線溝(4B)を回転させる。移動カム(4)が回転したことにより、回転ビス(6)と直線カム(4A)により直進方向の動きが発生し、移動カム(4)は右方向に移動する。カム筒(2)は移動カム(4)の回転と同方向に回転すると同時に、移動カム(4)の右への動きによりカム移動ビス(5)がカム筒(2)の直線カム(2B)を摺動し、カム筒(2)を回転させる。この時、カム筒(2)はズーム環(18)の回転角+カム移動ビス(5)と直線カム(2B)による回転角の合計が回転したことになる。
【0017】
更に最低倍率までズーム環(18)を回転すると図9のようにズームビス(13)は図の
下部に位置し、直線溝(4B)を回転させる。直線カム(4A)の左端に回転ビス(6)
が位置し、移動カム(4)は右端に移動している。カム移動ビス(5)は直線カム(2B)の右端に移動し、カム筒(2)を回転させる。
【0018】
図に示した例では、ズーム環(18)を120度回転する事により、カム筒(2)を18
0度回転させることが出来る。カム筒(2)及び移動カム(4)のカムの組合せにより、
少ないズーム環の回転でカムの回転角を大きくする事が可能である。
【0019】
この実施例に示した他に、カム筒(2)と移動カム(4)を連携する構造を、移動ビス止
穴(4C)をカム筒(2)に設け、移動カム(4)に対応する直線カムを設ける方法も考
えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るズーム構造を示す照準望遠鏡一実施例の断面図。
【図2】本発明に係るズーム構造を示す一実施例の分解斜視図。
【図3】本発明に係るズーム構造を示す一実施例の断面図。
【図4】一実施例を示す正立鏡筒(1)とカム筒(2)の配置図。
【図5】一実施例のカム筒図。
【図6】一実施例の移動カム図。
【図7】一実施例のズーミング状態図。
【図8】一実施例のズーミング状態図。
【図9】一実施例のズーミング状態図。
【図10】従来のズーミング構造を持つ照準望遠鏡の断面図。
【図11】従来のズーミング構造の分解斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1 正立鏡筒
1A 直線溝
2 カム筒
2A 逃げ溝
2B 直線カム
2C カム筒前端面
2D カム筒後端面
2E カム溝前
2F カム溝後
3 カム押え
4 移動カム
4A 直線カム
4B 直線溝
4C 移動ビス止穴
5 カム移動ビス
6 回転ビス
7 正立レンズ室後
8 正立レンズ室前
9 押え環後
10 押え環前
11 支点枠
12 支点押え環
13 ズームビス
14 移動カラー
15 移動ビス
16 正立レンズ
17 支点ビス
18 ズームリング
19 鏡胴
19A ズーム溝
20 接眼
21 接眼ロックリング
22 レチクル
31 正立鏡筒
32 カム筒
32A 回転溝
32B カム溝前
32C カム溝後
33 カム押え
34 支点枠
35 移動ビス
36 移動カラー
37 正立レンズ室前
38 正立レンズ室後
39 支点押え環
40 支点枠押え環
41 レチクル
42 支点ビス
43 ズームリング
44 ズームビス
45 鏡胴
45A ズーム溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変倍率を有する照準望遠鏡において、鏡胴に円弧状開口溝を持ち、回動自在に設けたズ
ーム環を回転する事により、内部ズーム機構を駆動する機構を持ち、且つ、回転させたズ
ーム環の回転角以上の回転角を内部ズーム機構に発生させる機構を有する照準望遠鏡。
【請求項2】
前記照準望遠鏡のズーム機構は、正立鏡筒と、正立鏡筒内部に光軸方向に駆動可能な2つ
の正立レンズ室と、正立鏡筒外周に覆設したカム筒と、ズーム環の回転と共に回転し且つ
光軸方向に前後移動する移動カムを有し、該移動カムは光軸方向の前後運動をカム筒に回
転運動として伝達する機構を持つ請求項1の照準望遠鏡。
【請求項3】
前記ズーム構造は、移動カムに直進の為の縦溝と回転の為のカム溝を持ち、該移動カムと
カム筒は固定ピンと上記カム溝とは別のカム溝により接続され直進する力を回転の力に変
換する構造を持つ請求項2の照準望遠鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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