説明

可変分散補償器の位相最適化方法、位相最適化された可変分散補償器および位相最適化装置

【課題】LCOSによって実際に与えられる分散値には、設定値からの無視できないずれが生じていた。同じ印加電圧を加えても、ピクセルで実際に設定される位相値はピクセル番号によって僅かながら異なり、LCOSのx軸上で位置依存性がある。1つの分散値に対するルックアップテーブル電圧データを使用して、ある番号のピクセルで適切な位相値が設定されていても、別の番号のピクセルではその適切な位相設定値からずれる。
【解決手段】本発明の方法では、設定した目標分散値から得られる位相設定値と、群遅延スペクトルを周波数に関して積分して得られた実際のLCOSの出力位相値との差分を求める。設定した目標位相設定値に求めた差分を加えた値を、新たな位相設定値として、ピクセル印加電圧へのフィードバックを行なう。実際に出力する位相分布が、設定した2次関数の位相分布により近くなり、群遅延リップルは抑制される。位相誤差のフィードバックを行うピクセル範囲を狭い範囲に限定しフィードバックの収束を高速に行う。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年、光ネットワークの容量が10Gb/sから40Gb/s、100Gb/sへと大容量化するのに伴い、可変分散補償器(Tunable optical dispersion compensator:以下TODC)に関する検討が盛んに行われている。通常の光ファイバ中を光信号が伝播した場合、光信号の波長成分によって到達時間が異なるため、信号波形の歪みが生じる。この歪みは、光ファイバの分散の効果によるものである。ここで、光ファイバ中を伝播した光信号に対して、光ファイバの分散とは逆の分散特性を与えれば、歪んだ信号波形を元の波形へ復元することができる。この信号波形の復元は、分散補償器によって行なわれる。
【0002】
複雑化すかつ変動するシステムへの柔軟な適応性から、付与する分散値を任意の値に可変して設定できる可変分散補償器がとりわけ注目されている。可変分散補償器としては、例えば、PLC−Lattice型TODC、ファイバーブラッググレーティング(FBG)型TODC、エタロン型TODC、分光光学系と空間位相変調器(SLM)とを組み合わせたTODCなど、様々な方式が提案されている。それらの方式の多くは、独立して分散値を設定できるチャンネル数が1つのみに制限されている。
【0003】
一方、光ネットワークにおいてはRODAM (Reconfigurable optical add / droop) システムやリングネットワーク間の接続など、柔軟なネットワーク構成が必要とされてきている。上述のネットワーク構成の場合、ネットワーク内の光の経路が必要に応じて切り替えられる。各光の経路においては、複数の異なる波長の光信号が同時に伝送されているので、複数の異なる波長チャンネルに対して一括して分散補償を行なう必要がある。
【0004】
したがって、複数の波長チャンネルを一括して分散補償できる多チャンネルTODCが要求されてきた。例えば、アレイ導波路格子(Arrayed waveguide grating:以下AWG)とLiquid Crystal on silicon (以下LCOS)とを用いた可変分散補償器 (非特許文献1、非特許文献2) では、8チャンネル、40チャンネルなどの多チャンネルの各チャンネルに対して独立して分散補償することに成功している。AWGとLCOSとの組合せは、多チャンネルTODCとして有望なデバイスである。
【0005】
図1は、AWGを用いた多チャンネルTODCの構成を示す概念図である。AWG1の入力ポートに入力された光信号は、AWG1によって光信号の波長に応じた出射方向(x軸方向)に分波される。分波された異なる波長の各光信号は、シリンドリカルレンズ2を経て、集光レンズによりそれぞれ集光される。集光された光信号5は、LCOS型の光位相変調器4上の、x軸上の波長に応じた位置に集光する。光位相変調器4は後述するようにミラー(図2の反射板14)を有しており、集光した光信号は、光位相変調器4において所定の位相だけ位相変調を受けて、z軸逆方向に元の光路を戻る。このような構成は、反射型TODCと呼ばれる。AWG1によって分波される全波長チャンネルの各波長成分が、各チャネルに対応した、LCOS光位相変調器4上のx軸方向に配列された要素素子群上に展開される。尚、TODCは図1の反射型構成に限らず、対向するもう1つのAWGを備えた、透過型の構成でも良い。
【0006】
LCOSは分波方向(x軸方向)に多数の光変調要素素子11(液晶ピクセル)が配列された、ピクセル化されたアレイ構造を持つ。各々の要素素子によって、波長チャネル毎に、高い空間分解能で位相変調パターンを設定することができる。図1では、x軸方向について図面の下から上に向かってチャネル1からチャネル8までの8チャネルに対して、それぞれ別個の位相特性(位相パターン)が付与されている。1つのチャンネルに、所定の数の要素素子が対応している。入射光は、LCOSにおいて設定された位相パターン分だけ位相変化を受けるため、入射光の分散を制御することができる。
【0007】
一般に、光信号に与えられる波長分散値Dは式(1)に従う。(非特許文献1を参照)
【0008】
【数1】

【0009】
ここでxはピクセルが並んでいるx方向軸上の座標を表し、λは波長、cは光速を表す。さらに、Φは、LCOSへ光が入射しさらに反射してLCOSから出射するまで間に受ける位相変化の、x軸依存性(以後、位相分布と呼ぶ)である。なお、dx/dλの項は、AWGの波長分散を表す項であり、AWGの設計により決定される値である。
【0010】
ここで、LCOSによって与えられる位相分布Φを座標x0を中心とするx軸に関する2次関数に設定する。
【0011】
【数2】

【0012】
式(2)を式(1)へ代入することによって、LCOSにより、光信号に対して式(3)で表される分散値を与えることができる。
【0013】
【数3】

【0014】
式(3)で表されるように、LCOSの各要素素子によって設定する位相分布をx軸に関する2次関数に設定にすれば、分散補償が可能となる。
【0015】
図2は、LCOSの構成の概要を示す図である。図2の(a)は、図1でLCOSをAWG側から見た上面図を示している。LCOSはシリコン基板15をベースとして、間隔dでx軸方向に配列された多数のピクセル(要素素子)11から構成される。各ピクセル間には、ピクセル間ギャップ12が存在する。図2の(b)は、LCOSをy軸方向からみた側面図である。光信号は(b)側面図の上方からz軸に沿って入射して、ガラス16、透明電極17、液晶層13を経て、各ピクセルを画定する反射板兼電極14で反射される。電極14からの反射光は再び上方に向かい、液晶層13を往復する間に所定の位相が与えられた後で、LCOSから出射する。透明電極17と反射板兼電極14との間に与える制御電圧によって、液晶層13で各ピクセルに与える位相量を制御する。各ピクセルに独立して異なる電圧を加えれば、多数のピクセルによって式(2)のような所望の位相分布Φが与えられる。尚、図2では液晶層13を制御するための電制御電圧源、制御回路などは記載されていない。
【0016】
上述のようなLCOSのピクセル構造のため、位相分布Φは、ピクセル番号の関数で表すことができる。ピクセル番号と、ピクセルに入射する光の波長(周波数)との関係はおおよそ1次式によって近似できる。図2の(a)に示したように、x軸方向にntotal個のピクセルが並んでおり、図2のx軸方向が図1のx軸方向に対応している。 尚、図2の(a)では、x軸に直交する縦方向(y軸方向)に長い、1個のピクセルしか示されていないが、縦方向に複数個のピクセルが配置されていても良い。
【0017】
例として、全ピクセル数ntotal個のピクセルの中で、nt個のピクセルに対して位相値を設定する場合を考える。例えばnt個のピクセルは、ある1つの周波数チャンネルに対応するピクセルである。nをピクセル番号とし、n0をnt個のピクセルにおける中心のピクセル番号とする。このとき、通常、n0は周波数チャンネルの中心すなわち周波数グリッドに対応するピクセル番号となる。
【0018】
座標xとピクセル番号nとの間の関係は、隣り合うピクセルの中心位置同士の間隔をdとすると、式(4)で表される。さらに、中心のピクセル番号n0について式(5)で表される。
【0019】
【数4】

【0020】
【数5】

【0021】
したがって式(2)の位相分布Φは、ピクセル番号nの関数として次式によって与えられる。
【0022】
【数6】

【0023】
ここで、nの2次の項の係数を次のようにAと置く。
【0024】
【数7】

【0025】
位相分布Φは、Aを使ってさらに次式によって表される。
【0026】
【数8】

【0027】
ここで式(8)に、式(3)および式(7)を適用して、係数Aは分散Dを用いて式(9)で表される。
【0028】
【数9】

【0029】
式(9)から明らかなように、分散値Dからnの2次の係数Aを求めて、位相分布φ(n)が求められることがわかった。式(8)によって求められる各ピクセル番号における位相の内で、その値が2πを超えた位相については、剰余をとる(mod)ことができる。すなわち、次式で表されるように、設定位相値を2πで折り返すようにして、LCOSの各ピクセルに位相を与える。
【0030】
【数10】

【0031】
ここで、液晶材料が充填されたピクセルに印加する電圧Vと、設定される位相値φとの関係を次のように式(11)を使って表す。
【0032】
【数11】

【0033】
通常、式(11)は多項式であって、LCOSのデバイス材料・構成などによって決定される。したがって、LCOS上のnt個のピクセルに対して、次式(12)で示す電圧分布を与えれば、所望の位相分布φ(n)および所望の分散値Dが得られる。
【0034】
【数12】

【0035】
従来のTODCでは、その製造調整の段階において、上述の方法を用いて、各分散値Dに対してLCOSへの印加電圧分布のテーブルを作製していた。TODCの製造時に、1つの分散値(例えば、800ps/nm)に対して1チャネル分に対応する数のピクセルに対する印加電圧データを作成する。したがって、設定すべき分散値の数が例えば160個あるとすると、160セットの電圧データを装置内のメモリに書き込む。印加電圧データは、LCOSのデバイス材料・構成などで決定される、分散値に対応した予め知られたデータを使用する。
【0036】
TODCは、モジュールになった状態でネットワークのノードに置かれ、ネットワークとネットワークとが接続される場所において分散補償に用いられる。TODCのモジュールにおいては、上述の各分散値Dに対する電圧分布のルックアップテーブルがTODC制御ボードのデータメモリに格納されている。ネットワークを制御するシステムが、特定のチャンネルに対して特定の分散値を指定すると、対応する分散値に対する電圧分布ルックアップテーブルが読み込み込まれる。その後、LCOSにのそのチャネルのピクセルに位相分布が設定されて、光信号に指定された分散値が与えられるようになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】妹尾和則、鈴木賢哉、渡辺啓、大庭直樹、石井元速、大庭直樹、美野真司、”アレイ導波路格子とLCOSを用いたチャンネル個別設定可能な可変分散補償器,”信学技報, OPE2008-70, pp.45-50, 2008年
【非特許文献2】大庭直樹、鈴木賢哉、妹尾和則、石井元速、美野真司、”アレイ導波路回折格子とLCOSによる40波長チャンネル可変分散補償器”, 信学技法,OPE2009-80, pp.31-35, 2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
しかしながら、LCOSによって実際に与えられる分散値には、設定値からの無視できないずれが生じていた。ピクセルへの印加電圧と、実際に設定される位相値との間の関係は、必ずしも一定の関係式(11)が正確に成り立つわけではなかった。LCOSににおける液晶素子は、1つの方向(x軸方向)に最大で例えば2500個ものピクセルが配置される。例えば液晶の配向方向の乱れなどによって、同じ印加電圧を加えても、ピクセルで実際に設定される位相値はピクセル番号によって僅かながら異なる。すなわち、設定される位相値には、LCOSのx軸上で位置依存性がある。したがって、1つの分散値に対するルックアップテーブル電圧データを使用して、ある番号のピクセルで適切な位相値が設定されていても、別の番号のピクセルではその適切な位相設定値からずれてしまう場合があった。この位相設定値からのずれは、チャネルに与えられる実際の位相分布に誤差を生じ、光信号に与えられる分散値Dにも意図した設定値からの無視できない逸脱が生じていた。
【0039】
また、各ピクセルに実際に設定される位相出力値は、隣のピクセルの印加電圧に影響される。例えば、隣接するピクセルへの印加電圧値が0Vと5Vなどのように、大きく異なっている場合、隣接する電極からの影響を受ける。したがって、結果的に出力される位相分布は、設定した2次関数の位相分布φ(n)からずれてしまい、TODCによって得られる群遅延スペクトルに群遅延リップルが生じる。群遅延リップルは、本TODCを通して光信号を伝送した場合に光信号波形が崩れる原因となり、群遅延リップルを抑制することが望まれていた。
【0040】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、TODCの製造調整時において、実際の位相設定値のLCOSの位置依存性の問題を解消し、各分散値に対応したLCOS電圧データを短時間で設定・記憶し、さらに、これらの電圧データによって群遅延の少ないリップルを有する位相分布を実現するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1の発明は、アレイ導波路格子(AWG)および反射型液晶変調素子(LCOS)から構成される可変分散補償器において、前記LCOSの液晶要素素子に設定する位相を最適化する方法において、所定のチャンネルに対応する第1の区間内にある複数の液晶要素素子の各々に対して、前記所定のチャンネルに対して設定する分散値Dを実現するための位相値を算出する第1のステップと、前記複数の要素素子の各々に、前記算出された位相値に対応する初期制御電圧を印加する第2のステップと、前記初期電圧が印加された状態で、前記複数の要素素子の各々に設定された実際の位相値を測定する第3のステップと、前記測定された位相値と、前記算出された位相値との差分を算出して、位相誤差を算出する第4のステップと、前記位相誤差を所定の限界値と比較して、前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する第5のステップと、前記位相誤差が前記範囲を越えている場合は、前記前記算出された位相誤差に基づいて、前記位相誤差を相殺するように前記算出された位相値を修正して、更新された位相値を求め、前記初期制御電圧に代えて、前記更新された位相値に対応する電圧を前記複数の要素素子の各々に印加して、前記第2のステップから前記第5のステップを繰り返すステップと、前記位相誤差が前記所定の範囲内にある場合は、前記初期電圧または前記更新された位相値に対応する電圧を、前記所定のチャンネルに対応する前記複数の液晶要素素子の各々に対する印加電圧と決定するステップとを備えることを特徴とする方法である。第1の区間は、発明の詳細な説明のnt個のピクセルに対応する。初期制御電圧は、初期ピクセル電圧に対応する。
【0042】
請求項2の発明は、請求項1の方法であって、前記更新された位相値は、前記第1の区間にある前記複数の液晶要素素子の内で、前記第1の区間よりも狭い第2の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ求められることを特徴とする。第2の区間は、発明の詳細な説明のnt1個のピクセルに対応する。
【0043】
請求項3の発明は、請求項1の方法であって、前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する前記第5のステップにおいて、前記第1の区間よりも狭い第3の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ、前記所定の限界値との比較を行うことを特徴とする。第3の区間は、発明の詳細な説明のnt2個のピクセルに対応する。
【0044】
請求項4の発明は、前記LCOSが、複数のチャンネルに対応する複数の前記第1の区間が前記AWGの分波方向に配列されており、前記複数のチャンネルの各々に関し、複数の分散値Dに対して、請求項1乃至3いずれかの方法により最適化された位相値に対応した前記印加電圧のデータが記憶された記憶手段を有するかまたは前記記憶手段に関連付けられていることを特徴とするTODCである。
【0045】
請求項5の発明は、アレイ導波路格子(AWG)および反射型液晶変調素子(LCOS)から構成される可変分散補償器に対して、前記LCOSの液晶要素素子に設定する位相を最適化する位相最適化装置において、所定のチャンネルに対応する第1の区間内にある複数の液晶要素素子の各々に対して、前記所定のチャンネルに対して設定する分散値Dを実現するための位相値を算出する第1のステップと、前記複数の要素素子の各々に、前記算出された位相値に対応する初期制御電圧を印加する第2のステップと実行する制御手段と、前記初期電圧が印加された状態で、前記複数の要素素子の各々に設定された実際の位相値を測定する第3のステップを実行する位相測定手段と、前記測定された位相値と、前記算出された位相値との差分を算出して、位相誤差を算出する第4のステップと、前記位相誤差を所定の限界値と比較して、前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する第5のステップと、前記位相誤差が前記範囲を越えている場合は、前記前記算出された位相誤差に基づいて、前記位相誤差を相殺するように前記算出された位相値を修正して、更新された位相値を求め、前記初期制御電圧に代えて、前記更新された位相値に対応する電圧を前記複数の要素素子の各々に印加して、前記第2のステップから前記第5のステップを繰り返すステップと、前記位相誤差が前記所定の範囲内にある場合は、前記初期電圧または前記更新された位相値に対応する電圧を、前記所定のチャンネルに対応する前記複数の液晶要素素子の各々に対する印加電圧と決定するステップとを実行する演算処理手段とを備えたことを特徴とする位相最適化装置である。
【0046】
請求項6の発明は、請求項5の位相最適化装置であって、前記更新された位相値は、前記第1の区間にある前記複数の液晶要素素子の内で、前記第1の区間よりも狭い第2の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ求められることを特徴とする。
【0047】
請求項7の発明は、請求項5の位相最適化装置であって、前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する前記第5のステップにおいて、前記第1の区間よりも狭い第3の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ、前記所定の限界値との比較を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
以上説明したように、本発明により、TODCの製造調整時において、実際の位相設定値のLCOSの位置依存性の問題を解消する。各分散値に対応したLCOS電圧データを短時間で設定・記憶し、調整工程を簡略化できる。さらに、これらの電圧データによって群遅延リップルが少ない分散補償特性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、多チャンネルTODCの構成を示す概念図である。
【図2】図2は、LCOSの構成の概要を示し、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図3】図3は、LCOSの位相分布を最適化するフローを説明する図である
【図4】図4は、実施例1におけるチャネル幅およびフィードバックを行う帯域幅ならびに対応するピクセル数の関係を説明する図である。
【図5】図5は、(a)に位相最適化前の、(b)に位相最適化後の群遅延スペクトルをそれぞれ示す。
【図6】図6は、(a)に位相最適化前の、(b)に位相最適化後の群遅延偏差の周波数依存性それぞれ示す。
【図7】図7は、実施例2におけるチャネル幅、フィードバックを行う帯域幅、収束判定を行う帯域ならびに対応するピクセル数の関係を説明する図である。
【図8】図8は、本発明の位相最適化を実行した後の位相誤差実測値のピクセル番号依存性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、上記の課題を解決するために、設定した目標分散値から得られる位相設定値と、群遅延スペクトルを周波数に関して積分して得られた実際のLCOSの出力位相値との差分を求める。設定した目標位相設定値に求めた差分を加えた値を、新たな更新された位相設定値として、LCOSのピクセル印加電圧へのフィードバック動作を行なう。フィードバック動作により、LCOSにおける実際の出力位相値を目標位相設定値に近づけることができる。LCOSが実際に出力する位相分布が、設定した2次関数の位相分布により近くなることにより、群遅延リップルは抑制される。さらに、位相誤差のフィードバックを行うピクセル範囲を、1チャンネルに対応するピクセル群よりも狭い範囲に限定してフィードバックの収束を高速に行う。TODCの製造調整時において、複数のチャンネルの各チャンネルに関し、複数の分散値に対応したLCOS電圧データを短時間で設定する。
【0051】
以下、本発明のLCOSの各ピクセルに対する位相設定値の最適化方法をフローチャートとともに説明する。本方法は、TODCが製造されるときに実施することによって、位置依存性の無い電圧データを決定し、TODCに関連付けられたメモリへ書き込まれるルックアップテーブルをより短時間で作成することができる。
【0052】
図3は、本発明のLCOSの設定位相値の最適化方法の全体を示すフローチャートである。本発明の設定位相値の最適化方法は、ステップ1(31)で始まる。まず、設定する分散値Dから、式(9)に従って位相分布の係数Aを求める。式(8)に基づいて、各ピクセル対して設定する位相分布ΦSET(n)を次式のように求める。
【0053】
【数13】

【0054】
上式において、n0は、周波数チャンネルのほぼ中心すなわち周波数グリッドに対応するピクセルのピクセル番号である。
【0055】
次に、ステップ2(32)で、LCOSに設定しようとしている位相分布実現するための電圧分布を算出する。式(13)で計算される位相値で、2πを超えた位相については、式(9)のように剰余(mod)をとることにより、2πで折り返すようにしてLCOSへの設定位相値とする。既に述べたように、LCOSにおける出力位相φと印加電圧Vとの関係は、式(11)の多項式V=f(φ)によって近似される。したがって、この多項式に従って、出力すべき位相に対する電圧を、1つのチャネル幅に対応するnt個のピクセルにそれぞれ印加する。ここで、nt個のピクセルの内で、番号n0をチャネルの中心に対応するピクセルとする。最初に各ピクセルに印加されるこれらの電圧を、初期ピクセル電圧と呼ぶ。従来技術によるTODCでは、初期ピクセル電圧のデータが、ルックアップテーブルから読み出されて、LCOSの各チャンネルに、同一のデータがそのまま使用されていたことに注意されたい。
【0056】
次に、ステップ3(33)で、LCOSで実際に設定された位相分布を測定する。分散測定機(例えば、例えばアジレントテクノロジー製のPhotonic Dispersion and Loss Analyzer(PDLA)など)を使用して、TODCの群遅延スペクトルを測定してこれを周波数に関して積分することにより、nt個のピクセルについて実際の位相分布を求める。ここで、導出した位相分布は、積分における未定の定数項を含むので、相対値であることに留意されたい。
【0057】
次に、ステップ4(34)で、測定された位相分布をフィッティングしてフィッティングパラメータを決定する。本発明では、LCOSに設定しようとしている(算出された)位相分布と、LCOSによって現実に設定された位相分布の測定値との差分を求める。上述のように設定した位相分布ΦSET(n)は、分散値Dから式(9)を用いて求めた係数Aを式(8)に代入することによって算出される。一方、ステップ3で求められた測定値Φmeasure(n)は相対値であるので、このままでは設定位相値ΦSET(n)との差分をとることはできない。
【0058】
そこで、未定部分をフィッティングパラメータcとし、測定値の位相分布Φmeasure(n)に近づくように、計算値である設定位相値ΦSET(n)をフィティングすることによって、次式のようにフィッティングされた設定位相値ΦFit(n)を求める。すなわち、次式においてフィッティングパラメータcを決定する。
【0059】
【数14】

【0060】
次に、ステップ5(35)で、LCOSに設定しようとした位相分布の「計算値」と、初期ピクセル電圧によってLCOSによって現実に設定された位相分布の「測定値」との差分Φerror(n)を各ピクセルについて求める。設定位相値ΦSET(n)の代わりに、上述のフィッティングされた設定位相値ΦFit(n)を使用し、実際に測定した位相分布Φmeasure(n)から設定された位相分布ΦSET(n)を差し引くことによって、次式のように「差分」である位相誤差分布Φerror(n)を求める。
【0061】
【数15】

【0062】
ステップ6(36)において、この位相誤差ΦError(n)が、例えば所定の値よりも小さな場合はループを終了する(37)。所定の値は、必要とされる位相設定精度に基づいて決定する。位相誤差が所定の値(範囲)よりも大きな場合は、ステップ7(37)において、次式のように、現在の位相分布Φ(n)に位相誤差分布ΦError(n)を加算して、改めてこれを更新した位相分布Φ(n)とする。
【0063】
【数16】

【0064】
更新された位相分布Φ(n)に対して、ステップ2に戻り、再び式(9)を用いて剰余をとることで、2πを超えた位相については2πで折り返す。さらに、出力位相φと印加電圧Vの関係を示す多項式V=f(φ)により、更新された位相分布Φ(n)から新たな印加電圧を求め、ピクセルに「更新した電圧」を印加する。すなわち、ステップ6において求められた差分を相殺するようにフィードバックされた、初期ピクセル電圧とは異なる新たな電圧がLCOSの各ピクセルに印加されることになる。
【0065】
上述のフィードバック動作は、図3のステップ2からステップ7までを、位相設定を行う1つのチャネルのすべてのピクセルntに対して、収束するまで繰り返し行なうことも可能である。しかし、本発明では、上述のフィードバック動作の収束の早さを考慮して、差分のフィードバックは、1つのチャネルに対応する第1の区間のnt個のピクセルの範囲の中で、その内側にある第2の区間のnt1個のピクセルに対してのみ行う。したがって、続いてステップ5で位相誤差分布ΦError(n)をnt1個のピクセルに対して求め、位相誤差分布をnt1個のピクセルに対して評価する。
【0066】
上述のステップ2からステップ7までのループを繰り返し、位相誤差分布が所定の値よりも小さくなった時点(ステップ6)で、ループを停止する(37)。位相誤差は、正または負の値を取り得るので、例えば、位相誤差の絶対値の最大値が所定の上限値の位相量以下となれば、ループを停止することができる。ループを停止する判断(位相誤差の収束の判定)は、位相誤差の平均値によって所定の上限値との比較を行なうことも可能であり、様々な判断手法を適用できることは言うまでも無い。ループを停止したときの、最後の更新された位相分布から、各々のピクセルにおいて対応する印加電圧を求めて、この印加電圧データを最終的にルックアップテーブルに記憶する。
【0067】
本発明の位相値最適化方法のフローは、LCOSの中の1つのチャネル幅(第1の区間)に対応するnt個のピクセルにおいて、異なる分散値に対してそれぞれ実行できる。したがって、設定する分散値毎に、位相最適化のフローを実行する。その後、最適化が完了したnt個とは異なるチャンネルの別のnt個のピクセルに対して、同様に位相最適化フローを実行する。例えば、LCOS上に10チャンネル分のピクセルは配列されていれば、個々のチャンネルに対して最適化を実行する。したがって、10チャンネルのうちの各々のチャンネルにおいて、異なる分散値Dに対する印加電圧データが求められる。
【0068】
順次、すべてのチャンネルに対するピクセルに対して、最適化を実行することで、LCOSのすべてのピクセルの各々について、印加電圧データを記憶することができる。したがって、設定される位相値に関するLCOSのx軸上の位置依存性が無い電圧データを取得できる。
【0069】
本発明の方法によって取得された電圧データは、ルックアップテーブルとしてメモリなどの記憶手段に記憶され、このメモリは、通常は、TODCのモジュール内部に備えられる。しかしながら、TODCに指定の分散値を随時設定可能であれば、TODCモジュール内に限定されることはなく、最適化調整を実行したLCOSと関連付けられている限り、TODCモジュール外に配置されても良い。
【0070】
本発明の最適化方法は、TODCの製造調整工程において使用できる。すなわち、TODCを最適化調整するための装置によって調整が実行される。調整工程においては、TODCの所定のチャンネルにおいて対応するピクセルに電圧を印加する手段が用いられる。これは、TODC内部のピクセル電圧駆動部を制御して、所定のピクセル電圧を印加すれば良い。また、TODCに設定された実際の位相を測定する手段が用いられる。さらに、本発明の最適化方法は、測定した位相値および設定した分散値Dに基づいて、ステップ3〜6の演算処理を実行する演算処理部を利用する。また、最終的に、最適化された電圧データをTODCのメモリなどの記憶手段へ書き込む書き込み手段が利用される。上述のピクセルに電圧を印加する手段、演算処理部、書き込み手段などは、TODCに内蔵されているものを利用して、TODCの外部の処理装置(例えばコンピュータ)から、TODCを制御することによって本発明の最適化方法を実行しても良い。
【0071】
以上、本発明のLCOSの各ピクセルに対する位相設定値の最適化方法の一般化したフローを説明した。次に、より具体的な実施例ついて述べる。
【実施例1】
【0072】
本実施例の位相を最適化したTODCは、チャンネル間隔(幅)が100GHzである。分散値Dを800ps/nmに設定し、位相最適化のフィードバックは、50GHzのバンド幅で行った。このTODCにおいて、LCOSの1ピクセルは周波数にして約0.4GHzに対応する。したがって、チャネル間隔100GHzはnt=250個程度に、50GHzのバンド幅はnt1=125個程度のピクセル数に対応した。
【0073】
図4は、実施例1におけるチャネル幅およびフィードバックを行う帯域幅ならびに対応するピクセル数の関係を説明する図である。位相最適化のフィードバックを行うバンド幅はチャンネル幅(100GHz)内において、信号光のバンド幅以上に限定すれば良い。例えば、ここで位相最適化のフィードバックを行う帯域(バンドB、第2の区間に対応)およびピクセル数はチャンネル幅(バンドA、第1の区間に対応)に対応するピクセル数の半分程度に設定している。本例ではC帯における43Gbit/s CSRZ−DQPSK変調方式の通信を想定しており、変調信号の所要帯域は30GHz程度である。
【0074】
図5は、実施例1における位相最適化の効果を示す図である。図5の(a)は位相最適化前の群遅延スペクトルを示し、図5の(b)は位相最適化後の群遅延スペクトルを示す。本実施例において、ステップ6でフィードバックループを停止する位相誤差の判定基準は例えば0.2 [rad]とした。(a)の群遅延スペクトルと比較して(b)の群遅延スペクトルの方が、中心波長から上下端の各波長へ向かって、より直線性が良いことがわかる。
【0075】
図6は、実施例1における位相最適化の効果を示す図である。図6の(a)は位相最適化前の、(b)は位相最適化後の群遅延偏差の周波数依存性それぞれ示す。各群遅延偏差は、図5(a)、(b)の群遅延時間特性からそれぞれ求められた。すなわち、図6の(a)および(b)は、図5の群遅遅延時間特性をそれぞれ直線近似し、近似した直線からの差分をプロットしたものである。図6のグラフでは、所定の周波数範囲内の遅延値の最大値と最小値との差分をもって群遅延リップルの値とした。ステップ2からステップ7までの位相最適化のループを5回繰り返すことによって、帯域30GHzの範囲における群遅延リップルは、位相最適化前で19psであったものが位相最適化後には9psへと減少した。
【実施例2】
【0076】
本実施例では、実施例1と同様にチャンネル間隔100GHzのTODCに対して位相最適化を行った。実施例1と同様に図3に示した位相最適化のフローに従った。位相最適化のフィードバックは、60GHzのバンド幅で行い、位相誤差の収束の判定を中心波長近傍の40GHzで行った。設定する分散値Dが、800ps/nmの場合を例示的に示す。
【0077】
本実施例のTODCにおいて、LCOSの1ピクセルは実施例1と同様に周波数にして約0.4GHzに対応する。したがって、チャネル間隔100GHzはnt=250個程度に、位相最適化のフィードバックを行う帯域60GHzはnt1=125個程度のピクセル数に対応した。また、ステップ6における収束の判定はさらに内側のnt2=100個程度に限定された範囲のピクセルに対して行った。
【0078】
図7は、実施例2におけるチャネル幅、フィードバックを行う帯域幅、収束判定を行う帯域ならびに対応するピクセル数の関係を説明する図である。Aはチャネル帯域幅100GHz(nt=250、第1の区間に対応)を、Bは位相最適化のフィードバックを行う60GHzのバンド幅(nt1=125、第2の区間に対応)、Cは収束の判定を行う帯域(nt2=100、第3の区間に対応)に対応する。本実施例では、収束の判定を行う帯域を、例えば収束を判定するピクセル数をフィードバックを行うピクセル数の7割程度の範囲に限定している。
【0079】
図8は、本実施例において、本発明の位相最適化を実行した後の位相誤差実測値のピクセル番号依存性を示した図である。位相最適化のフィードバックを行ったピクセルは、ピクセル番号1300近傍からピクセル番号1450近傍のほぼ150個のピクセルに対応する。収束の判定を行ったピクセルは、ほぼピクセル番号1325近傍からピクセル番号1425近傍までのほぼ100個のピクセルに対応する。フィードバックを行うバンドの境界近傍(ピクセル番号1300近傍およびピクセル番号1450近傍)では位相誤差が大きいことがわかる。
【0080】
図8のような位相誤差が得られるのは、2つの原因があると推定している。第1に、位相誤差のフィードバックを行っているピクセルと行っていないピクセルとの境界で位相設定が不連続になるため、境界近傍における位相分布はピクセル座標の2次関関数からずれる。そのため、境界近傍のピクセルにおいて群遅延スペクトル上でリップルが現れ、このスペクトルを周波数に関して積分することで求めた位相測定値が位相設定値からずれてしまうと考えられる。
【0081】
第2に、境界近傍は中心波長から離れるため、2次関数で与えられる(折り返しをする前の)設定位相値の大きさ自体が大きい。それに対応して位相誤差自体も大きくなるものと考えられる。いずれにせよ、位相誤差のフィードバックを行っているピクセルと行っていないピクセルとの境界近傍で位相誤差が大きくなり、位相のフィードバックを行う区間の中心近傍のピクセルに対しては位相誤差が小さくなる。尚、図8において、ピクセル番号1250から1300の範囲及びピクセル番号1450から1500の範囲においては、これらの区間において位相最適化を行っておらず、位相誤差も計算していないので、位相誤差を0としている。
【0082】
本実施例のように、位相誤差の収束を判定する区間を、位相最適化のフィードバックを行う区間(nt1)のさらに内側のより狭い区間(nt2)に設定することによって、位相誤差が少ない領域で位相誤差の収束を判定できる。このため、位相誤差の位相最適化のループをより早く収束させることができる。従来技術の位相設定値のLCOSの位置依存性の問題を解消しながら、調整時間をより短くすることができる。位相誤差の判定基準は例えば0.2[rad]にした。
【0083】
本実施例では、位相誤差が所定の値の範囲内に収束するまでのフィードバックのループ繰り返し回数は、実施例1の5回よりも少ない3回で済んだ。帯域30GHzの範囲における群遅延リップルは実施例1とほぼ同じ値であった。図3に示したフィードバックループの処理には、1回のループで30秒程度の時間がかかり、印加電圧データを取得する分散値の数が多ければ、全チャンネルおよび全分散値の対する最適化には、数時間が掛かる場合もある。このため、フィードバックのループ繰り返し回数を削減することで、調整肯定に掛かる時間を大幅に低減できる。
【0084】
以上、詳細に説明したように、本発明によって、TODCの製造調整時において、実際の位相設定値のLCOSの位置依存性の問題を解消することができる。また、各分散値に対応したLCOS電圧データを短時間で設定・記憶し、製造工程を簡略化できる。さらに、これらの電圧データによって群遅延の少ないリップルを有する位相分布を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、一般的に通信システムに利用することができる。特に、光通信システムのネットワークに利用される分散補償装置に関する。
【符号の説明】
【0086】
1 AWG
2 コリメートレンズ
3 集光レンズ
4 LCOS
11 ピクセル
12 ピクセル間ギャップ
13 液晶
14 反射板兼電極
15 シリコン基板
16 ガラス
17 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ導波路格子(AWG)および反射型液晶変調素子(LCOS)から構成される可変分散補償器において、前記LCOSの液晶要素素子に設定する位相を最適化する方法において、
所定のチャンネルに対応する第1の区間内にある複数の液晶要素素子の各々に対して、前記所定のチャンネルに対して設定する分散値Dを実現するための位相値を算出する第1のステップと、
前記複数の要素素子の各々に、前記算出された位相値に対応する初期制御電圧を印加する第2のステップと、
前記初期電圧が印加された状態で、前記複数の要素素子の各々に設定された実際の位相値を測定する第3のステップと、
前記測定された位相値と、前記算出された位相値との差分を算出して、位相誤差を算出する第4のステップと、
前記位相誤差を所定の限界値と比較して、前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する第5のステップと、
前記位相誤差が前記範囲を越えている場合は、前記前記算出された位相誤差に基づいて、前記位相誤差を相殺するように前記算出された位相値を修正して、更新された位相値を求め、前記初期制御電圧に代えて、前記更新された位相値に対応する電圧を前記複数の要素素子の各々に印加して、前記第2のステップから前記第5のステップを繰り返すステップと、
前記位相誤差が前記所定の範囲内にある場合は、前記初期電圧または前記更新された位相値に対応する電圧を、前記所定のチャンネルに対応する前記複数の液晶要素素子の各々に対する印加電圧と決定するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記更新された位相値は、前記第1の区間にある前記複数の液晶要素素子の内で、前記第1の区間よりも狭い第2の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ求められることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する前記第5のステップにおいて、前記第1の区間よりも狭い第3の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ、前記所定の限界値との比較を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記LCOSは、複数のチャンネルに対応する複数の前記第1の区間が前記AWGの分波方向に配列されており、前記複数のチャンネルの各々に関し、複数の分散値Dに対して、請求項1乃至3いずれかの方法により最適化された位相値に対応した前記印加電圧のデータが記憶された記憶手段を有するかまたは前記記憶手段に関連付けられていることを特徴とするTODC。
【請求項5】
アレイ導波路格子(AWG)および反射型液晶変調素子(LCOS)から構成される可変分散補償器に対して、前記LCOSの液晶要素素子に設定する位相を最適化する位相最適化装置において、
所定のチャンネルに対応する第1の区間内にある複数の液晶要素素子の各々に対して、前記所定のチャンネルに対して設定する分散値Dを実現するための位相値を算出する第1のステップと、
前記複数の要素素子の各々に、前記算出された位相値に対応する初期制御電圧を印加する第2のステップと実行する制御手段と、
前記初期電圧が印加された状態で、前記複数の要素素子の各々に設定された実際の位相値を測定する第3のステップを実行する位相測定手段と、
前記測定された位相値と、前記算出された位相値との差分を算出して、位相誤差を算出する第4のステップと、
前記位相誤差を所定の限界値と比較して、前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する第5のステップと、
前記位相誤差が前記範囲を越えている場合は、前記前記算出された位相誤差に基づいて、前記位相誤差を相殺するように前記算出された位相値を修正して、更新された位相値を求め、前記初期制御電圧に代えて、前記更新された位相値に対応する電圧を前記複数の要素素子の各々に印加して、前記第2のステップから前記第5のステップを繰り返すステップと、
前記位相誤差が前記所定の範囲内にある場合は、前記初期電圧または前記更新された位相値に対応する電圧を、前記所定のチャンネルに対応する前記複数の液晶要素素子の各々に対する印加電圧と決定するステップとを実行する演算処理手段と
を備えたことを特徴とする位相最適化装置。
【請求項6】
前記更新された位相値は、前記第1の区間にある前記複数の液晶要素素子の内で、前記第1の区間よりも狭い第2の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ求められることを特徴とする請求項5に記載の位相最適化装置。
【請求項7】
前記位相誤差が前記所定の限界値で決定される範囲内にあるかどうかを判定する前記第5のステップにおいて、前記第1の区間よりも狭い第3の区間内にある複数の液晶素子に対してのみ、前記所定の限界値との比較を行うことを特徴とする請求項5に記載の位相最適化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237800(P2012−237800A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105229(P2011−105229)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】