可変分散補償器
【課題】波長多重伝送システムに適用可能な低損失で広帯域でリップルの少ない分散補償器を提供することである。
【解決手段】片側反射率100%のエタロンとミラーを平行、あるいはわずかに角度を与えることでコリメータから出射される光がエタロンに複数回反射された後、他方のコリメータへ入射する構成とする。さらに、ヒータ等により温度を変化させることにより、可変機構を設ける。そして、これらの分散補償部を多段に設け、ミラー角度とエタロンの反射率を最適にすることで、広帯域でリップルの少ない波長多重光伝送システムに適した可変分散補償器の実現が可能になる。
【解決手段】片側反射率100%のエタロンとミラーを平行、あるいはわずかに角度を与えることでコリメータから出射される光がエタロンに複数回反射された後、他方のコリメータへ入射する構成とする。さらに、ヒータ等により温度を変化させることにより、可変機構を設ける。そして、これらの分散補償部を多段に設け、ミラー角度とエタロンの反射率を最適にすることで、広帯域でリップルの少ない波長多重光伝送システムに適した可変分散補償器の実現が可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いた光伝送システムや、波長多重による光伝送方式を採用したシステムに適用して好適な光分散補償器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光増幅器を中継器として用いる長距離光伝送システムの研究・実用化が盛んである。特に、インターネットを中心としたマルチメディアサービスに対応するために、波長の異なる複数信号光を通信伝送路である1本の光ファイバに多重化するWDM(Wavelength Division Multiplex)による大容量化が有効な技術と考えられている。このような長距離光伝送システムにおいては、光ファイバの波長分散という現象により伝送速度や伝送距離が大きく制限される。波長分散とは、波長の異なる光が光ファイバ中を異なる速度で伝播する現象である。高速で変調された光信号の光スペクトルは異なる波長成分を含むため、これらの成分は光ファイバを伝播する際に波長分散の影響により異なる時刻に受信機に到達する。この結果、ファイバ伝送後の光信号波形は歪みを生じることになる。このような分散による波形劣化を抑えるために、分散補償という技術が重要となる。分散補償とは、伝送路に用いられる光ファイバと逆の波長分散特性を持った光学素子を光送信機、受信機、あるいは中継器などに配置することで光ファイバの波長分散特性を打ち消し、波形劣化を防ぐ手法である。このような光学素子、すなわち分散補償器としては、分散補償ファイバや光ファイバグレーティングなどの逆分散特性を持つデバイスの研究や実用化が行われてきた。
【0003】
分散耐力とは、ある基準の伝送品質を満たす残留分散(伝送路ファイバと分散補償器による分散量の総和)の範囲を示す。分散耐力は光信号のビットレートの2乗に反比例して小さくなるため、分散補償技術は伝送速度が上がるにつれて、より重要となる。例えば、10Gbit/sの伝送システムでは光信号の分散耐力はおよそ1000ps/nm程度であり、シングルモードファイバの分散量がおよそ17ps/nm/kmであることを考慮すると、分散補償技術を用いないと60km程度しか伝送できないことになる。さらに、40Gbit/s伝送における分散耐力は、この1/16の60ps/nm程度であり、シングルモードファイバ4km程度に相当する。現在、光中継器を用いた幹線系光ファイバ伝送の伝送距離は数十kmから数千km程度であるが、伝送距離に応じて分散補償器の分散量を変える必要がある。例えば10Gbit/sの伝送システムでは、分散耐力を考慮し100ps乃至数100ps程度の刻みで、あらかじめ固定補償量の分散補償器を用意しておき、伝送距離に応じインストール時に補償量を決定し、設置するなどの方法がとられてきた。この場合の分散補償器としては、伝送路と逆符号の波長分散を持つ分散補償ファイバを用いる方法が代表的である。次に、40Gbit/sの伝送システムでは、同様に10ps乃至数10ps程度の刻みで、補償分散量が変化できる分散補償器が必要と考えられる。しかも、この場合には伝送路ファイバの温度による波長分散量の変化が無視できなくなる。このため、分散量を可変に制御できる分散補償器が必要となる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−221658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来の分散補償器にも様々な問題がある。固定量の分散補償を行う場合、分散補償ファイバでは数km〜数100kmにもわたる長大な補償用ファイバが必要となるためファイバの収納スペースが大きくなる。また分散補償ファイバの損失を補償するために余分の光増幅器が必要となる可能性がある。さらに分散補償ファイバは一般にモードフィールド径が小さく、大きな光ファイバ非線型効果を生じ、伝送波形の歪みを引き起こす可能性がある。
【0006】
光ファイバグレーティングの場合、透過特性や波長分散特性上に波長に対するリップルが存在するため、わずかな波長変化に対して補償特性が大きく変化する。従って分散補償に用いた場合の伝送特性は分散補償ファイバに比べて劣ることが知られている。また、製造上の問題から分散量や波長帯域の大きなものは作りにくく、狭帯域のものは温度や波長の安定化が必要になるなどの問題点がある。また分散補償ファイバでは原理的に、連続的に分散量を可変することができず、伝送路の分散量の変化に応じて連続的に分散量を変化させるような可変分散補償を実現することは難しい。
【0007】
光ファイバグレーティングの場合、連続的な可変分散補償を実現する方法としては例えば、光ファイバグレーティングの長手方向に温度勾配を作ることにより、チャープトグレーティングを生成し、分散補償伝送を行う方式が報告されている。この場合、温度勾配を制御することにより可変量の分散補償を行うことが可能となる。しかしながら、この方式では均一な温度勾配を得ることが難しく、波長分散にリップルが発生するなど十分な性能の分散補償ができないなどの問題点があり、実用性に問題がある。なお、複数の小型ヒータによって温度勾配を設けて分散補償する公知例、例えば、特許文献1があるが、微細加工を伴う構造あるいは複雑な制御方法が必要となる。本発明の目的は、上記のような問題点を解決した広帯域でリップルの少ない分散補償器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、対向する第3および第4を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備していること、および前記第1の平面の反射率の値は100%以下で
、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、前記第2の角度は前記第1の角度以上であり、前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上であることにより、達成できる。
【0009】
また上記の目的は、対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備していること、および前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、前記第2の平面と前記第1の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を自然数n1回交互に反射させた後、前記第2の平面と前記第1の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第2のエタロンと前記第2のミラーとの間を自然数n2回交互に反射させた後、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上、前記自然数n2は前記自然数n1以下、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成することにより、達成できる。
【0010】
さらに上記の目的は、波長に対する分散を表す関係式において、正の傾きa1と該傾きa1の有効帯域がW1であるプラス側可変分散補償部と、負の傾きa2と該傾きa2の有効帯域がW2である持つマイナス側可変分散補償部と、前記プラス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする第1の温度調節手段が設けられ、前記マイナス側可変分散補償部の分散特性を前記プラス側可変分散補償部とは逆の波長方向にシフトする第2の温度調節手段が設けられ、前記a1と前記a2の符号が反対で絶対量が等しいかまたは差の相対量|(a1−a2)/a1|が0.1以下とすることにより達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、広帯域,低群遅延リップル,可変分散量の大きな特性のよい可変分散補償器が得られた。それにより、波長多重伝送時に各信号光に対して一括で分散補償を行うことができ、伝送システムにおける伝送距離を拡張することができる。
さらには、高次分散についても一括で分散補償を行うことができる。そして、本発明分散補償器を用いることで、伝送特性の優れた簡易で安価な光通信システムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。エタロンについて説明する。図1にエタロンの構造を示す。エタロンとは、精度よく平行にした平面板10の両面に反射膜11,12をコーティングしたものである。反射膜には、反射率の高い金や銀などの金属膜、あるいは誘電体多層膜などが用いられる。特に、理想的には片側の反射率を100%としたエタロンを提案者GiresとTournoisの名前にちなみGTエタロンと呼ぶ。ただし、実際には100%の反射率を実現することは難しいので、90%程度以上の反射率を有する反射膜を用いるということでも構わない。また、他方の反射率は、分散補償に用いる場合はさほど高い必要なく、後で具体的な数値を示すように90%を超えることはない。このようなGTエタロンにおいては、透過率は波長に対して一定となるためオールパスフィルタと呼ばれている。しかし、位相(群遅延時間)については波長依存性を有する。この時の群遅延時間τは次式で表される。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、rは振幅反射率、ωは光の角周波数、ΔTは平行平面板を1往復することによって生じる光学的な距離を示す。波長分散Dは、群遅延時間τを波長で微分したものである。
【0015】
【数2】
【0016】
しかし、高速信号、特に40Gbit/s長距離光伝送システムにおける分散補償器には、有効帯域が広いこと(40GHz以上)、大きな可変範囲をとれること、分散のリップルが小さいことが重要となる。そこで、分散補償器として所望の特性を得るためには、図2に示すように、ミラーを用いて複数回反射させる方法が有効である。図2の構成では、エタロン(10,11,12)に対して、ミラー(20,21)を平行あるいはわずかに角度をつけて配置する。後で具体的な数値を示すように、この角度は大体1度以下であれば、本発明による有効帯域拡大の効果が得られる。ここで、ミラー(20,21)はミラー基板20に高反射率の反射膜21をコーティングすることによって構成される。コリメータ30から出射した光は、エタロン(10,11,12)とミラー(20,21)を交互に反射して、コリメータ31に入射する。コリメータとは、光ファイバを伝播する光を平行ビームとして空間に放射する光部品のことである。エタロン(10,11,12)は温度変化素子40によって温度を制御することができる。このとき、エタロンの熱分布を均一にするために温度変化素子40とエタロン(10,11,12)の間に伝熱剤41を介する。この伝熱剤としては、伝熱シートやサーマルグリースを用いる。
【0017】
群遅延特性を数式によって説明するために、図3を用いて説明する。ミラー(20,21)とエタロン(10,11,12)の角度をΔθとすると、エタロンに対して入射角θ0で入射した光はミラーとi回反射した後θi=θ0+2iΔθの角度で再びエタロンに入射する。ミラーの全反射回数をkとすると,補償部全体の群遅延時間τtotalは,各反射時のエタロン群遅延時間τiを(k+1)回合計することで求められる。
【0018】
【数3】
【0019】
ここで、ΔTiはエタロンの各反射において平行平面板を1往復することによって生じる光学的な距離である。さらに、入射角度を考慮するとΔTiは以下の式で表される。
【0020】
【数4】
【0021】
【数5】
【0022】
ここで,cは光速、Θiはエタロン中での入射角、nは屈折率、Lはエタロン反射膜間隔である。エタロン中での入射角Θiとエタロン入射角θiの関係は数式(5)で表される。
【0023】
エタロン(10,11,12)、ミラー(20,21)、コリメータ30、31を光学部品固定部材200によって制御して固定する方法を図4に示す。ここで、光学部品固定部材200は、熱膨張率の低い金属やガラスを用いて実現する。光学部品固定部材200は、中空になっており、これは超音波ドリル等を用いて加工することで作成できる。光学部品固定部材200の上面図を図5に、斜め上から見た図を図6に示す。図5に示すように、光学部品固定部材200の中空穴は、ビームを通すための楕円状の穴と、コリメータ30,31を固定するための丸状の2つの穴を合わせたような形となっている。また、図6に示したように、部品固定部材200の上部を斜めに研磨することで、エタロン(10,11,12)とミラー(20,21)の角度Δθを精密に制御して固定することができる。また、コリメータ固定用の穴も同様に精密に加工することで、コリメータ30からエタロン(10,11,12)への入射角θ0を精密に制御して固定することが可能である。これらの光学部品は、光学部品用の接着剤等を用いて固定する。
【0024】
温度制御を用いた可変方式について図7を用いて説明する。この可変分散補償器100は、入力ポート110、出力ポート120を持ち、内部はプラス側可変分散補償部130とマイナス側可変分散補償部140の2つの補償部から構成される。各々の補償部は、図2に示したエタロン(10,11,12)とミラー(20,21)を斜めあるいは平行に対向させ、コリメータ30から出射したレーザビームを斜めに複数回反射させる構成で実現される。プラス側可変分散補償部は、図に示すように分散と波長の関係が正の傾きを、マイナス側可変分散補償部は負の傾きを持つ1次関数となっている。エタロンの温度を変えると、エタロン基板の熱膨張により共振波長が変化する。このため、図7に示した分散特性は波長方向にシフトする。このとき、エタロン基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることが、共振波長を制御する上で望ましい。例えば、今回評価した条件では、光学ガラスとして広く使われている硼珪酸光学ガラスで、熱膨張係数が0.87×10−5/℃のものを基板として用いると、100GHz(光の波長で約0.8nm)分散特性をシフトさせるには60℃の温度変化が必要となる。後で具体的な数値を示すように、可変分散補償器としては1段で10GHz程度以上の波長シフトが必要なので、温度制御範囲は5℃以上であることが好ましいプラス側可変分散130、マイナス側可変分散補償部140は、各々独立に温度制御できる構成とする。このとき、可変分散補償器全体の分散特性は2つの補償部の合計となる。正の傾きを持つ直線部分と負の傾きを持つ直線部分の重なりが大きければ、上側の平らな部分が広く低い形状となり(図7右上)、逆に重なりが小さければ、上側の平らな部分が狭く高い形状(図7右下)となる。このように、プラス側、マイナス側可変分散補償部に温度制御をかけることで、分散量を変化することができる。
【0025】
プラス側、マイナス側可変分散補償部の理想的な特性を実現するための、ミラー角度Δθとエタロンの振幅反射率rを最適化するための方法を述べる。そのために、まず、振幅反射率rが異なるときのエタロン単体での分散特性について説明する。数式(3)でk=0として r=5,20,40%とした時、波長に対する分散特性を図8に示す。まず、図8(a)r=5%の場合は,分散の振幅は小さく、sin関数に近い形状を示す。次に、図8(b)r=20%の場合は,分散の振幅は図8(a)に比べやや大きくなり、三角波的な形状を示す。これは、先に述べたプラス側可変分散補償部の特性に近い形状と言える。以後の説明では、正の傾きを持つ部分と負の傾きを持つ部分に分け、分散が最小から最大となる範囲を「正の傾きの帯域」、最大から最小になる範囲を「負の傾きの帯域」と呼ぶことにする。最後に(c)r=40%の場合には、分散の振幅が大きくなり、(b)で示した直線部分は歪んだ形状となる。
【0026】
尚、図8からわかるようにGTエタロンを用いた分散補償器においては、群遅延および分散特性において波長依存性を示す。この周期はFree Spectral Range(FSR)と呼ばれ、この図では100GHz(約0.8nm)である。このような波長周期性を持つことは波長多重伝送において特に有効となる。FSRを波長多重伝送時の波長間隔と等しくすれば、GTエタロンは全ての波長の信号に対して同じような効果を与えることができる。よって、このような可変分散補償器は波長多重伝送システムにおいて極めて有効である。
【0027】
以上の性質を踏まえ、本発明によるプラス側可変分散、マイナス側可変分散補償部を実現する構成を述べる。まず、プラス側であるが、図8(b)で示したように、エタロン単体の特性が既に理想的な特性に近い。このため、簡単には図9に示したミラーとエタロンを平行にする構成で実現できる。ここで、直線性を評価する指標として、数式(6)に示すピアソンの積率相関係数の2乗値R2を用いた。式中のmtotalは評価に用いた全データ数、Yiは分析に用いたデータ値、Yi(ハット)は回帰分析で求めた近似直線による予想値である。
【0028】
【数6】
【0029】
R2は近似直線の予想値が実際のデータにどの程度近いかを示すもので0から1の範囲をとる。この場合、R2値が1に近いほど直線に近い形状となる。
【0030】
【数7】
【0031】
振幅反射率rを横軸にとり0%から60%まで変化させた場合、R2と正の傾きの帯域の変化を図10、11に示す。図11より,振幅反射率rが20%近辺でよい直線性を持つので、これを候補と考えればよい。また、図10に示す正の傾きの帯域の変化を見ると、rとともに増加している。可変分散補償器全体が図7に示すように有効帯域内で平坦な特性を持つためには、プラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部の直線の傾きが、符号が反対で大きさが同じとなる必要がある。よって、マイナス側可変分散補償部の構成を決定した後にプラス側可変分散補償部を構成するエタロンの反射率と反射回数を決定する。
【0032】
マイナス側可変分散補償部は、図8に示した伝達関数が理想的な特性と著しく異なるため、本発明により以下のように解決する。マイナス側可変分散補償部で理想的な特性を実現するために、図12に示す三角波の基本的な性質を応用する。正の傾きの帯域が広い三角波を少しずつシフトさせて足し合わせると、負の傾きの帯域を拡大することができる。この場合、負の傾きの帯域を最大とするための最適なシフト量は、足し合わせる回数と正の傾きの帯域から一意的に決まる。この性質を考慮し、負の傾きを持つ狭い部分を、エタロン斜め反射方式でピーク位置をずらしながら足し合わせ、広帯域化を実現する。簡単にピーク位置をずらす方法としては、図9に示したプラス側可変分散補償部を多段につなぎ合わせて、その各々に温度制御部を設け、各段での分散特性を少しずつシフトさせればよい。ただし、この方法では、簡単に実現できるものの段数が多くなると、損失も増える、部品数が増えてしまうという欠点がある。次に、ピーク位置をずらす方法としては、ミラーとエタロンにわずかに角度を与えるという方法もある。図13に構成を、図14に得られた分散特性を示す。このとき、三角波の検討により、あらかじめ足し合わせ回数と正の傾きの帯域から求めた最適なシフト量を目安に、エタロン斜め反射方式におけるミラー角度の候補を絞り、計算の効率化を図ることが可能となる。
【0033】
次に、図13に示した構成よりもさらにマイナス側可変分散補償部の理想的な特性を実現するための方法を説明する。図14で得られた分散特性は、理想的な特性(図中のまっすぐな点線)に比べると、やや歪みを生じている。それは、図8に示したもともとのエタロンの特性が、三角波と異なる歪みを持っているためである。特に、エタロン斜め反射方式で大きな分散量を稼ぐためには、(1)エタロンの反射率rを高くする、(2)エタロン斜め反射方式を多段にする、といった方法が考えられるが、損失の点で前者の方が好ましい。しかし、エタロンの反射率rを高くすると三角波と比べた歪み成分も大きくなるので、図12に示した三角波の性質を利用する方法がうまく適用できなくなる。図14では、エタロンの振幅反射率r=40%の分散特性を示したが、このとき、R2=0.99831であった。
【0034】
そこで、さらに工夫し、マイナス側可変分散補償部で負の傾きの部分の直線性を向上する方法を示す。ここでは、斜め反射方式1段で得られた特性(図14)と理想的な直線との差分(以後、この差を高次分散リップルと呼ぶ)がsinカーブに近い形状であることに着目した。この差分は図8で示したエタロンの反射率が低い場合(例えば、r=5%)に近い形状と考えられる。しかし、前述のようにエタロン反射率が低い場合は分散の振幅も小さい。そこで、反射率の低いエタロンで補正を行うには、エタロンとミラーを平行に配置して複数反射を行い振幅を倍増させる。以上の考察と改善方法を図15に模式的に示した。次に、この方法によるマイナス側可変分散補償部の具体的な構成と計算結果を各々図16、17に示す。図17に示した結果の構成条件としては、エタロン10−1とミラー20−1の角度は0.051°、エタロン10−2とミラー20−2は平行とし、エタロン10−1、10−2の振幅反射率rは40%と10%、反射回数は各々5回と4回である。この結果、帯域58GHz,R2=0.99996となり、直線性を大幅に改善できる。本発明における分散補償器では、光の入射と出射の順番を逆にしても構わない。すなわち、図16に示した構成で、光を通す向きは、コリメータ30−1→31−1→30−2→31−2でも、コリメータ31−2→30−2→31−1→30−1のどちらでも構わない。また、エタロン10−1,10−2も、どちらを先に光を入射させても構わない。
【0035】
ここで、反射率の低いエタロンで補正を行うには、エタロンに1回だけ反射を行うことでも構わない。この場合の構成を図30に示す。この場合、エタロンに複数反射しないのでミラーは不要となる。また、図16に示した構成同様に、光を通す向きは、コリメータ30−1→31−1→30−2→31−2でも、コリメータ31−2→30−2→31−1→30−1のどちらでも構わない。また、エタロン10−1、10−2も、どちらを先に光を入射させても構わない。さらに、この考え方を発展させて、このような高次分散リップルを補正するための分散補償には、エタロン以外の素子を用いても構わない。その構成を図31に示す。図中では可変分散補償部150によって、高次分散リップルを補正する。可変分散補償部150は比較的小さな分散量を稼ぐ素子でよい。例えば、従来の光ファイバグレーティング、マルチキャビティエタロン、リングキャビティを用いてもよい。あるいは近年、分散補償素子への応用が期待され活発に研究されているフォトニック結晶やフォトニック結晶ファイバを用いても構わない。フォトニック結晶とは、屈折率の異なる物質を光の波長以下のサイズで規則正しく周期的に配列させた構造体で、結晶の周期によって特定の波長領域の光が透過できないため、光を閉じ込めることが可能となり、所望の分散特性を与える素子への応用が期待されている。また、フォトニック結晶ファイバとは多数のエアホールが規則正しく配列した構造のクラッドを持つ光ファイバであり、これも通常のファイバに比べ、大きな波長分散を持たせることが可能となることが知られている。
【0036】
次に多段構成にすることで、プラス側可変分散補償部で負の傾きの部分の直線性を向上する別の実施例を示す。図8(c)に示したように反射率の高いエタロンでは、直線から歪んだ特性を持ち、ゆるやかな残留成分を持つ。この特性と理想的な直線との差分(この差も以後、高次分散リップルと呼ぶ)は、マイナス側可変分散補償部の実施例で述べたように、sinカーブに近い形状である。この差分は図8で示したエタロンの反射率が低い場合に近い形状と考えられる。しかし、前述のようにエタロン反射率が低い場合は分散の振幅も小さい。そこで、反射率の低いエタロンで補正を行うには、エタロンとミラーを平行に配置して複数反射を行い振幅を倍増させる。以上の考察と改善方法を図18に模式的に示す。次に、この方法によるプラス側可変分散補償部の具体的な構成と計算結果を各々図19、20に示す。図20に示した結果の構成条件としては、エタロンとミラーの角度を平行とし、エタロン10−1、10−2の振幅反射率rは55%と11%、反射回数は各々1回と11回である。この結果、帯域86GHz,R2=0.99990となった。図10、11で示した1段構成の場合ではr=25%の場合、帯域75GHz,R2=0.9994であり、これに比べて帯域および直線性とも大幅に改善できたことがわかる。
【0037】
このように、反射率の高いエタロンでは1回だけ反射を行えばよい場合がある。この場合、エタロンに複数反射しないのでミラーは不要となる。この構成を図32に示す。また、図16に示した構成同様に、光を通す向きは、コリメータ30−1→31−1→30−2→31−2でも、コリメータ31−2→30−2→31−1→30−1のどちらでも構わない。また、エタロン10−1、10−2も、どちらを先に光を入射させても構わない。さらに、この考え方を発展させて、このような高次分散リップルを補正するための分散補償には、エタロン以外の素子を用いても構わない。その構成を図33に示す。図中では可変分散補償部150によって、高次分散リップルを補正する。可変分散補償部150は比較的小さな分散量を稼ぐ素子でよい。例えば、従来の光ファイバグレーティング、マルチキャビティエタロン、リングキャビティ、フォトニック結晶やフォトニック結晶ファイバを用いても構わない。
【0038】
このように、正の傾きの帯域を増やすことができたので、図19の構成のプラス側可変分散補償部をさらに多段に組み合わせて、前述の図12で説明した方法で、マイナス側可変分散補償部を構成することも可能である。
また、図1で示したエタロンは、反射膜11と12に囲まれた1つの共振構造を持つシングルキャビティの構成であるが、これを図27に示す複数の共振構造を持つマルチキャビティエタロンに置き換えて分散補償器を構成しても構わない。図27に示すマルチキャビティエタロンにおいては、平面板10と反射膜11を交互に何段も積層した構造となっており、各々の反射率を変えることでシングルキャビティエタロンに比べ自由度が増えるので、所望の分散特性を実現することが可能となる。マルチキャビティエタロンの温度制御については、部品数削減という意味では、1組の伝熱剤41と温度変化素子40を反射膜12に張り合わせる構造がよい。しかし、微細に温度制御を行うという観点からすると、図27に示したようにマルチキャビティエタロンの層数nに対し、n組の伝熱剤41と温度変化素子40を各々の平面板10に張り合わせる構造がよい。この図では平面板10の端の部分に温度制御素子が接触しているが、さらに言えば、平面板10のまわりを取り囲むように温度制御素子が接触している方が好ましい。また、本発明の別の実施例として、エタロンの代りにリングキャビティを用いても構わない。リングキャビティの遅延特性を表す式はエタロンの場合と同じなので、本発明による概念を適用することが可能である。リングキャビティの構造を図28に示す。この図で示されるリングキャビティは、光基盤300とリング共振部310と光導波路320と光カプラ部330から構成される。光導波路では、基盤よりも光の屈折率が高くなっており、光は導波路中に閉じ込められ基盤にはもれない。導波路の左側から入射した光は導波路中を右側に進み、光カプラ部330で光導波路320をそのまま直進していく光と、分岐して一部リング共振部310に進んでいく光とに分かれる。リング共振部310を1周した光は、光カプラ部330で一部は光導波路320を直進し、残りは再びリング共振部310を回周する。このように、リング共振部310を何周かした光が合わさって導波路320に出て行き、共振器が実現される。
また、図29に示すように、リング共振部310と光カプラ部330を多段構造にとることが可能である。このようにすることで、1段の構成よりも自由度が増えるので、所望の分散特性を実現することが可能となる。
【0039】
次に、プラス側とマイナス側の可変分散補償部の本発明による制御方法について説明する。図21は、制御方法を説明するために、理想的な直線モデルを示した。プラス側可変分散補償部の正の傾きの帯域をW1、マイナス側可変分散補償部の負の傾きの帯域をW2とする。この図ではW1>W2の場合を示してある。また、プラス側可変分散補償部の正の傾きをa1、マイナス側可変分散補償部の負の傾きをa2とする。可変分散補償器として高次分散、
【0040】
【数8】
【0041】
を0にするためには、傾きa1とa2は符号が反対で絶対値が同じでなければならない。
ただし、理想的には絶対値が同じであることが好ましいが、製造上の問題やシステムの違い等を考慮し、差の相対量|(a1−a2)/a1|が0.1以下程度まで許容される場合もある。また、図21では可変分散補償器の有効帯域の小さい方の光周波数をT1、大きい方をT2とする。
【0042】
ここで、図7で示したようにプラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部について、波長(光周波数)特性を変化させるようシフト量を与える。このシフト量mについて図21に示すように−m、+mと符号の向きを定義する。WDM光伝送システムでは、各々の波長はITU(International Telecommunication Union)に定められたグリッドによって定められている。従って、可変分散補償器の中心波長は制御時に変化してはならない。言い換えれば、中心波長が変化することは有効帯域を減らすことになる。W1=W2の場合は中心波長(光周波数)を変化させないようにmを与える制御方法は簡単である。すなわち、プラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部に与えるシフト量は、絶対値が同じで符号が反対になるようにすればよい。ここで、プラス側可変分散補償部に−mのシフト量を与え、マイナス側可変分散補償部に+mのシフト量(図21で、二つのピークを寄せる向き)を与えるとする。この場合、図21で示した合計値はm=0の場合を示しているが、重なりの部分が小さくなるので、図7で述べたように分散補償器全体の特性としては帯域が狭く、分散量が増えることになる。プラス側可変分散補償部に+mのシフト量を与え、マイナス側可変分散補償部に−mのシフト量を与える場合は、その逆に重なりの部分が大きくなるので、分散補償器全体の特性としては帯域が広く、分散量が減ることになる。しかし、図21に示した例では、W1>W2であるため、プラス側とマイナス側可変分散補償部のシフト量の与え方として、符号を反対にするだけでは不十分である。それについて説明する。
【0043】
W1>W2の場合、シフト量mを変えた場合のT1とT2、およびその平均値TC(中心光周波数)の変化を図22に示す。このとき、プラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部に与えるシフト量は、絶対値が同じで符号が反対になるように与えてある。この図では、各パラメータは、FSR=100[GHz]、W1=80[GHz]、W2=60[GHz]としてある。m=−50[GHz]の場合では、T1、T2は193.90THzであり、可変分散補償器の有効帯域は0GHzとなる。mを徐々に増やすことにより、T1とT2は各々193.90THzより小さく、あるいは大きくなり、その変化の絶対量は等しい。このため、中心光周波数は193.90THzで一定である。しかし、W1>W2であるため、mが(W2−FSR)/2を越えるとT2は減少を始め、中心光周波数も変化する。これは、mが(W2−FSR)/2+(W1−W2)/2=(W1−FSR)/2に増加するまで続く。その後は、mの増加とともにT1も増加を始め、中心光周波数は(W1−W2)/2で一定となる。図22におけるmと中心光周波数の変化量ΔTCの関係をまとめると以下のようになる。
【0044】
【数9】
【0045】
このように、W1≠W2の場合に生じる中心光周波数の変化を抑えるために、プラス側とマイナス側可変分散補償部に与えるシフト量を、パラメータmoffsetを用いて以下のように与えることにする。
プラス側可変分散補償部シフト量 :−m → moffset−m
マイナス側可変分散補償部シフト量 : m → moffset+m
ここで、中心光周波数を変化させないためのmoffsetの値は、数式(8)から以下のように与えればよい。
【0046】
【数10】
【0047】
この制御方法を行ったときのT1とT2、およびその平均値TC(中心光周波数)の変化を図23に示す。TCを一定に制御できていることがわかる。次に、理想的な特性の場合ではなく、本発明で得られたプラス側とマイナス側の可変分散補償部の特性を用いて効果を検証する。図24に、本発明によるプラス側とマイナス側の可変分散補償部の特性、およびその合計値を示す。図25に本発明による制御方法を適用した結果を示す。ここで、FSR=100GHz,W1=86GHz,W2=58GHzとした。図26にT1、T2、TCの変化を示す。以上より、本発明の制御方法によって、中心周波数が変化していないことがわかる。
以上に述べたように、本発明によって、広帯域で、低分散リップル(あるいは低群遅延リップル)、かつ可変分散量が大きく、中心波長の変化の少ない特性良好な可変分散補償器が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるエタロンを示す図。
【図2】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成を示す図。
【図3】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成を詳細に説明するための図。
【図4】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成を立体的に示した図。
【図5】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成における光学部品固定部材の上面図。
【図6】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成における光学部品固定部材の中空穴の構造を示す図。
【図7】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の原理と構成を示す図。
【図8】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるエタロンの群遅延特性を示す図。
【図9】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の構成を示す図。
【図10】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の振幅反射率と帯域の関係を示す図。
【図11】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の振幅反射率と直線性の関係を示す図。
【図12】本発明の一実施例を説明するための図であって、三角波の基本的な性質を示す図。
【図13】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の構成を示す図。
【図14】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第一の構成の分散特性を示す図。
【図15】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の原理を示す図。
【図16】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第二の構成を示す図。
【図17】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第二の構成の分散特性を示す図。
【図18】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の原理を示す図。
【図19】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第二の構成を示す図。
【図20】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第二の構成の分散特性を示す図。
【図21】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の制御原理を示す図。
【図22】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のシフト量と有効帯域の変化の性質を示す図。
【図23】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の制御方法によって改善されたシフト量と有効帯域の変化を示す図。
【図24】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器によるプラス側とマイナス側の分散補償部の分散特性およびその合計を示す図。
【図25】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の分散特性を示す図。
【図26】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の制御方法によって改善されたシフト量と有効帯域の変化を示す図。
【図27】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるマルチキャビティエタロンを示す図。
【図28】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるリング共振器を示す図。
【図29】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子である多段型リング共振器を示す図。
【図30】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第三の構成を示す図。
【図31】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第四の構成を示す図。
【図32】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第三の構成を示す図。
【図33】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第四の構成を示す図。
【符号の説明】
【0049】
10…平面版、
20…ミラー(基板)、
11,12,21…反射膜、
30,31…コリメータ、
40…温度変化素子、
41…伝熱剤、
100…可変分散補償器、
110…入力ポート、
120…出力ポート、
130…プラス側可変分散補償部、
140…マイナス側可変分散補償部、
150…可変分散補償部、
200…光学部品固定部材、
300…光基盤、
310,311,312…リング共振部、
320…光導波路、
330,331,332…光カプラ部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いた光伝送システムや、波長多重による光伝送方式を採用したシステムに適用して好適な光分散補償器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光増幅器を中継器として用いる長距離光伝送システムの研究・実用化が盛んである。特に、インターネットを中心としたマルチメディアサービスに対応するために、波長の異なる複数信号光を通信伝送路である1本の光ファイバに多重化するWDM(Wavelength Division Multiplex)による大容量化が有効な技術と考えられている。このような長距離光伝送システムにおいては、光ファイバの波長分散という現象により伝送速度や伝送距離が大きく制限される。波長分散とは、波長の異なる光が光ファイバ中を異なる速度で伝播する現象である。高速で変調された光信号の光スペクトルは異なる波長成分を含むため、これらの成分は光ファイバを伝播する際に波長分散の影響により異なる時刻に受信機に到達する。この結果、ファイバ伝送後の光信号波形は歪みを生じることになる。このような分散による波形劣化を抑えるために、分散補償という技術が重要となる。分散補償とは、伝送路に用いられる光ファイバと逆の波長分散特性を持った光学素子を光送信機、受信機、あるいは中継器などに配置することで光ファイバの波長分散特性を打ち消し、波形劣化を防ぐ手法である。このような光学素子、すなわち分散補償器としては、分散補償ファイバや光ファイバグレーティングなどの逆分散特性を持つデバイスの研究や実用化が行われてきた。
【0003】
分散耐力とは、ある基準の伝送品質を満たす残留分散(伝送路ファイバと分散補償器による分散量の総和)の範囲を示す。分散耐力は光信号のビットレートの2乗に反比例して小さくなるため、分散補償技術は伝送速度が上がるにつれて、より重要となる。例えば、10Gbit/sの伝送システムでは光信号の分散耐力はおよそ1000ps/nm程度であり、シングルモードファイバの分散量がおよそ17ps/nm/kmであることを考慮すると、分散補償技術を用いないと60km程度しか伝送できないことになる。さらに、40Gbit/s伝送における分散耐力は、この1/16の60ps/nm程度であり、シングルモードファイバ4km程度に相当する。現在、光中継器を用いた幹線系光ファイバ伝送の伝送距離は数十kmから数千km程度であるが、伝送距離に応じて分散補償器の分散量を変える必要がある。例えば10Gbit/sの伝送システムでは、分散耐力を考慮し100ps乃至数100ps程度の刻みで、あらかじめ固定補償量の分散補償器を用意しておき、伝送距離に応じインストール時に補償量を決定し、設置するなどの方法がとられてきた。この場合の分散補償器としては、伝送路と逆符号の波長分散を持つ分散補償ファイバを用いる方法が代表的である。次に、40Gbit/sの伝送システムでは、同様に10ps乃至数10ps程度の刻みで、補償分散量が変化できる分散補償器が必要と考えられる。しかも、この場合には伝送路ファイバの温度による波長分散量の変化が無視できなくなる。このため、分散量を可変に制御できる分散補償器が必要となる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−221658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来の分散補償器にも様々な問題がある。固定量の分散補償を行う場合、分散補償ファイバでは数km〜数100kmにもわたる長大な補償用ファイバが必要となるためファイバの収納スペースが大きくなる。また分散補償ファイバの損失を補償するために余分の光増幅器が必要となる可能性がある。さらに分散補償ファイバは一般にモードフィールド径が小さく、大きな光ファイバ非線型効果を生じ、伝送波形の歪みを引き起こす可能性がある。
【0006】
光ファイバグレーティングの場合、透過特性や波長分散特性上に波長に対するリップルが存在するため、わずかな波長変化に対して補償特性が大きく変化する。従って分散補償に用いた場合の伝送特性は分散補償ファイバに比べて劣ることが知られている。また、製造上の問題から分散量や波長帯域の大きなものは作りにくく、狭帯域のものは温度や波長の安定化が必要になるなどの問題点がある。また分散補償ファイバでは原理的に、連続的に分散量を可変することができず、伝送路の分散量の変化に応じて連続的に分散量を変化させるような可変分散補償を実現することは難しい。
【0007】
光ファイバグレーティングの場合、連続的な可変分散補償を実現する方法としては例えば、光ファイバグレーティングの長手方向に温度勾配を作ることにより、チャープトグレーティングを生成し、分散補償伝送を行う方式が報告されている。この場合、温度勾配を制御することにより可変量の分散補償を行うことが可能となる。しかしながら、この方式では均一な温度勾配を得ることが難しく、波長分散にリップルが発生するなど十分な性能の分散補償ができないなどの問題点があり、実用性に問題がある。なお、複数の小型ヒータによって温度勾配を設けて分散補償する公知例、例えば、特許文献1があるが、微細加工を伴う構造あるいは複雑な制御方法が必要となる。本発明の目的は、上記のような問題点を解決した広帯域でリップルの少ない分散補償器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、対向する第3および第4を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備していること、および前記第1の平面の反射率の値は100%以下で
、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、前記第2の角度は前記第1の角度以上であり、前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上であることにより、達成できる。
【0009】
また上記の目的は、対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備していること、および前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、前記第2の平面と前記第1の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を自然数n1回交互に反射させた後、前記第2の平面と前記第1の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第2のエタロンと前記第2のミラーとの間を自然数n2回交互に反射させた後、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上、前記自然数n2は前記自然数n1以下、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成することにより、達成できる。
【0010】
さらに上記の目的は、波長に対する分散を表す関係式において、正の傾きa1と該傾きa1の有効帯域がW1であるプラス側可変分散補償部と、負の傾きa2と該傾きa2の有効帯域がW2である持つマイナス側可変分散補償部と、前記プラス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする第1の温度調節手段が設けられ、前記マイナス側可変分散補償部の分散特性を前記プラス側可変分散補償部とは逆の波長方向にシフトする第2の温度調節手段が設けられ、前記a1と前記a2の符号が反対で絶対量が等しいかまたは差の相対量|(a1−a2)/a1|が0.1以下とすることにより達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、広帯域,低群遅延リップル,可変分散量の大きな特性のよい可変分散補償器が得られた。それにより、波長多重伝送時に各信号光に対して一括で分散補償を行うことができ、伝送システムにおける伝送距離を拡張することができる。
さらには、高次分散についても一括で分散補償を行うことができる。そして、本発明分散補償器を用いることで、伝送特性の優れた簡易で安価な光通信システムを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。エタロンについて説明する。図1にエタロンの構造を示す。エタロンとは、精度よく平行にした平面板10の両面に反射膜11,12をコーティングしたものである。反射膜には、反射率の高い金や銀などの金属膜、あるいは誘電体多層膜などが用いられる。特に、理想的には片側の反射率を100%としたエタロンを提案者GiresとTournoisの名前にちなみGTエタロンと呼ぶ。ただし、実際には100%の反射率を実現することは難しいので、90%程度以上の反射率を有する反射膜を用いるということでも構わない。また、他方の反射率は、分散補償に用いる場合はさほど高い必要なく、後で具体的な数値を示すように90%を超えることはない。このようなGTエタロンにおいては、透過率は波長に対して一定となるためオールパスフィルタと呼ばれている。しかし、位相(群遅延時間)については波長依存性を有する。この時の群遅延時間τは次式で表される。
【0013】
【数1】
【0014】
ここで、rは振幅反射率、ωは光の角周波数、ΔTは平行平面板を1往復することによって生じる光学的な距離を示す。波長分散Dは、群遅延時間τを波長で微分したものである。
【0015】
【数2】
【0016】
しかし、高速信号、特に40Gbit/s長距離光伝送システムにおける分散補償器には、有効帯域が広いこと(40GHz以上)、大きな可変範囲をとれること、分散のリップルが小さいことが重要となる。そこで、分散補償器として所望の特性を得るためには、図2に示すように、ミラーを用いて複数回反射させる方法が有効である。図2の構成では、エタロン(10,11,12)に対して、ミラー(20,21)を平行あるいはわずかに角度をつけて配置する。後で具体的な数値を示すように、この角度は大体1度以下であれば、本発明による有効帯域拡大の効果が得られる。ここで、ミラー(20,21)はミラー基板20に高反射率の反射膜21をコーティングすることによって構成される。コリメータ30から出射した光は、エタロン(10,11,12)とミラー(20,21)を交互に反射して、コリメータ31に入射する。コリメータとは、光ファイバを伝播する光を平行ビームとして空間に放射する光部品のことである。エタロン(10,11,12)は温度変化素子40によって温度を制御することができる。このとき、エタロンの熱分布を均一にするために温度変化素子40とエタロン(10,11,12)の間に伝熱剤41を介する。この伝熱剤としては、伝熱シートやサーマルグリースを用いる。
【0017】
群遅延特性を数式によって説明するために、図3を用いて説明する。ミラー(20,21)とエタロン(10,11,12)の角度をΔθとすると、エタロンに対して入射角θ0で入射した光はミラーとi回反射した後θi=θ0+2iΔθの角度で再びエタロンに入射する。ミラーの全反射回数をkとすると,補償部全体の群遅延時間τtotalは,各反射時のエタロン群遅延時間τiを(k+1)回合計することで求められる。
【0018】
【数3】
【0019】
ここで、ΔTiはエタロンの各反射において平行平面板を1往復することによって生じる光学的な距離である。さらに、入射角度を考慮するとΔTiは以下の式で表される。
【0020】
【数4】
【0021】
【数5】
【0022】
ここで,cは光速、Θiはエタロン中での入射角、nは屈折率、Lはエタロン反射膜間隔である。エタロン中での入射角Θiとエタロン入射角θiの関係は数式(5)で表される。
【0023】
エタロン(10,11,12)、ミラー(20,21)、コリメータ30、31を光学部品固定部材200によって制御して固定する方法を図4に示す。ここで、光学部品固定部材200は、熱膨張率の低い金属やガラスを用いて実現する。光学部品固定部材200は、中空になっており、これは超音波ドリル等を用いて加工することで作成できる。光学部品固定部材200の上面図を図5に、斜め上から見た図を図6に示す。図5に示すように、光学部品固定部材200の中空穴は、ビームを通すための楕円状の穴と、コリメータ30,31を固定するための丸状の2つの穴を合わせたような形となっている。また、図6に示したように、部品固定部材200の上部を斜めに研磨することで、エタロン(10,11,12)とミラー(20,21)の角度Δθを精密に制御して固定することができる。また、コリメータ固定用の穴も同様に精密に加工することで、コリメータ30からエタロン(10,11,12)への入射角θ0を精密に制御して固定することが可能である。これらの光学部品は、光学部品用の接着剤等を用いて固定する。
【0024】
温度制御を用いた可変方式について図7を用いて説明する。この可変分散補償器100は、入力ポート110、出力ポート120を持ち、内部はプラス側可変分散補償部130とマイナス側可変分散補償部140の2つの補償部から構成される。各々の補償部は、図2に示したエタロン(10,11,12)とミラー(20,21)を斜めあるいは平行に対向させ、コリメータ30から出射したレーザビームを斜めに複数回反射させる構成で実現される。プラス側可変分散補償部は、図に示すように分散と波長の関係が正の傾きを、マイナス側可変分散補償部は負の傾きを持つ1次関数となっている。エタロンの温度を変えると、エタロン基板の熱膨張により共振波長が変化する。このため、図7に示した分散特性は波長方向にシフトする。このとき、エタロン基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることが、共振波長を制御する上で望ましい。例えば、今回評価した条件では、光学ガラスとして広く使われている硼珪酸光学ガラスで、熱膨張係数が0.87×10−5/℃のものを基板として用いると、100GHz(光の波長で約0.8nm)分散特性をシフトさせるには60℃の温度変化が必要となる。後で具体的な数値を示すように、可変分散補償器としては1段で10GHz程度以上の波長シフトが必要なので、温度制御範囲は5℃以上であることが好ましいプラス側可変分散130、マイナス側可変分散補償部140は、各々独立に温度制御できる構成とする。このとき、可変分散補償器全体の分散特性は2つの補償部の合計となる。正の傾きを持つ直線部分と負の傾きを持つ直線部分の重なりが大きければ、上側の平らな部分が広く低い形状となり(図7右上)、逆に重なりが小さければ、上側の平らな部分が狭く高い形状(図7右下)となる。このように、プラス側、マイナス側可変分散補償部に温度制御をかけることで、分散量を変化することができる。
【0025】
プラス側、マイナス側可変分散補償部の理想的な特性を実現するための、ミラー角度Δθとエタロンの振幅反射率rを最適化するための方法を述べる。そのために、まず、振幅反射率rが異なるときのエタロン単体での分散特性について説明する。数式(3)でk=0として r=5,20,40%とした時、波長に対する分散特性を図8に示す。まず、図8(a)r=5%の場合は,分散の振幅は小さく、sin関数に近い形状を示す。次に、図8(b)r=20%の場合は,分散の振幅は図8(a)に比べやや大きくなり、三角波的な形状を示す。これは、先に述べたプラス側可変分散補償部の特性に近い形状と言える。以後の説明では、正の傾きを持つ部分と負の傾きを持つ部分に分け、分散が最小から最大となる範囲を「正の傾きの帯域」、最大から最小になる範囲を「負の傾きの帯域」と呼ぶことにする。最後に(c)r=40%の場合には、分散の振幅が大きくなり、(b)で示した直線部分は歪んだ形状となる。
【0026】
尚、図8からわかるようにGTエタロンを用いた分散補償器においては、群遅延および分散特性において波長依存性を示す。この周期はFree Spectral Range(FSR)と呼ばれ、この図では100GHz(約0.8nm)である。このような波長周期性を持つことは波長多重伝送において特に有効となる。FSRを波長多重伝送時の波長間隔と等しくすれば、GTエタロンは全ての波長の信号に対して同じような効果を与えることができる。よって、このような可変分散補償器は波長多重伝送システムにおいて極めて有効である。
【0027】
以上の性質を踏まえ、本発明によるプラス側可変分散、マイナス側可変分散補償部を実現する構成を述べる。まず、プラス側であるが、図8(b)で示したように、エタロン単体の特性が既に理想的な特性に近い。このため、簡単には図9に示したミラーとエタロンを平行にする構成で実現できる。ここで、直線性を評価する指標として、数式(6)に示すピアソンの積率相関係数の2乗値R2を用いた。式中のmtotalは評価に用いた全データ数、Yiは分析に用いたデータ値、Yi(ハット)は回帰分析で求めた近似直線による予想値である。
【0028】
【数6】
【0029】
R2は近似直線の予想値が実際のデータにどの程度近いかを示すもので0から1の範囲をとる。この場合、R2値が1に近いほど直線に近い形状となる。
【0030】
【数7】
【0031】
振幅反射率rを横軸にとり0%から60%まで変化させた場合、R2と正の傾きの帯域の変化を図10、11に示す。図11より,振幅反射率rが20%近辺でよい直線性を持つので、これを候補と考えればよい。また、図10に示す正の傾きの帯域の変化を見ると、rとともに増加している。可変分散補償器全体が図7に示すように有効帯域内で平坦な特性を持つためには、プラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部の直線の傾きが、符号が反対で大きさが同じとなる必要がある。よって、マイナス側可変分散補償部の構成を決定した後にプラス側可変分散補償部を構成するエタロンの反射率と反射回数を決定する。
【0032】
マイナス側可変分散補償部は、図8に示した伝達関数が理想的な特性と著しく異なるため、本発明により以下のように解決する。マイナス側可変分散補償部で理想的な特性を実現するために、図12に示す三角波の基本的な性質を応用する。正の傾きの帯域が広い三角波を少しずつシフトさせて足し合わせると、負の傾きの帯域を拡大することができる。この場合、負の傾きの帯域を最大とするための最適なシフト量は、足し合わせる回数と正の傾きの帯域から一意的に決まる。この性質を考慮し、負の傾きを持つ狭い部分を、エタロン斜め反射方式でピーク位置をずらしながら足し合わせ、広帯域化を実現する。簡単にピーク位置をずらす方法としては、図9に示したプラス側可変分散補償部を多段につなぎ合わせて、その各々に温度制御部を設け、各段での分散特性を少しずつシフトさせればよい。ただし、この方法では、簡単に実現できるものの段数が多くなると、損失も増える、部品数が増えてしまうという欠点がある。次に、ピーク位置をずらす方法としては、ミラーとエタロンにわずかに角度を与えるという方法もある。図13に構成を、図14に得られた分散特性を示す。このとき、三角波の検討により、あらかじめ足し合わせ回数と正の傾きの帯域から求めた最適なシフト量を目安に、エタロン斜め反射方式におけるミラー角度の候補を絞り、計算の効率化を図ることが可能となる。
【0033】
次に、図13に示した構成よりもさらにマイナス側可変分散補償部の理想的な特性を実現するための方法を説明する。図14で得られた分散特性は、理想的な特性(図中のまっすぐな点線)に比べると、やや歪みを生じている。それは、図8に示したもともとのエタロンの特性が、三角波と異なる歪みを持っているためである。特に、エタロン斜め反射方式で大きな分散量を稼ぐためには、(1)エタロンの反射率rを高くする、(2)エタロン斜め反射方式を多段にする、といった方法が考えられるが、損失の点で前者の方が好ましい。しかし、エタロンの反射率rを高くすると三角波と比べた歪み成分も大きくなるので、図12に示した三角波の性質を利用する方法がうまく適用できなくなる。図14では、エタロンの振幅反射率r=40%の分散特性を示したが、このとき、R2=0.99831であった。
【0034】
そこで、さらに工夫し、マイナス側可変分散補償部で負の傾きの部分の直線性を向上する方法を示す。ここでは、斜め反射方式1段で得られた特性(図14)と理想的な直線との差分(以後、この差を高次分散リップルと呼ぶ)がsinカーブに近い形状であることに着目した。この差分は図8で示したエタロンの反射率が低い場合(例えば、r=5%)に近い形状と考えられる。しかし、前述のようにエタロン反射率が低い場合は分散の振幅も小さい。そこで、反射率の低いエタロンで補正を行うには、エタロンとミラーを平行に配置して複数反射を行い振幅を倍増させる。以上の考察と改善方法を図15に模式的に示した。次に、この方法によるマイナス側可変分散補償部の具体的な構成と計算結果を各々図16、17に示す。図17に示した結果の構成条件としては、エタロン10−1とミラー20−1の角度は0.051°、エタロン10−2とミラー20−2は平行とし、エタロン10−1、10−2の振幅反射率rは40%と10%、反射回数は各々5回と4回である。この結果、帯域58GHz,R2=0.99996となり、直線性を大幅に改善できる。本発明における分散補償器では、光の入射と出射の順番を逆にしても構わない。すなわち、図16に示した構成で、光を通す向きは、コリメータ30−1→31−1→30−2→31−2でも、コリメータ31−2→30−2→31−1→30−1のどちらでも構わない。また、エタロン10−1,10−2も、どちらを先に光を入射させても構わない。
【0035】
ここで、反射率の低いエタロンで補正を行うには、エタロンに1回だけ反射を行うことでも構わない。この場合の構成を図30に示す。この場合、エタロンに複数反射しないのでミラーは不要となる。また、図16に示した構成同様に、光を通す向きは、コリメータ30−1→31−1→30−2→31−2でも、コリメータ31−2→30−2→31−1→30−1のどちらでも構わない。また、エタロン10−1、10−2も、どちらを先に光を入射させても構わない。さらに、この考え方を発展させて、このような高次分散リップルを補正するための分散補償には、エタロン以外の素子を用いても構わない。その構成を図31に示す。図中では可変分散補償部150によって、高次分散リップルを補正する。可変分散補償部150は比較的小さな分散量を稼ぐ素子でよい。例えば、従来の光ファイバグレーティング、マルチキャビティエタロン、リングキャビティを用いてもよい。あるいは近年、分散補償素子への応用が期待され活発に研究されているフォトニック結晶やフォトニック結晶ファイバを用いても構わない。フォトニック結晶とは、屈折率の異なる物質を光の波長以下のサイズで規則正しく周期的に配列させた構造体で、結晶の周期によって特定の波長領域の光が透過できないため、光を閉じ込めることが可能となり、所望の分散特性を与える素子への応用が期待されている。また、フォトニック結晶ファイバとは多数のエアホールが規則正しく配列した構造のクラッドを持つ光ファイバであり、これも通常のファイバに比べ、大きな波長分散を持たせることが可能となることが知られている。
【0036】
次に多段構成にすることで、プラス側可変分散補償部で負の傾きの部分の直線性を向上する別の実施例を示す。図8(c)に示したように反射率の高いエタロンでは、直線から歪んだ特性を持ち、ゆるやかな残留成分を持つ。この特性と理想的な直線との差分(この差も以後、高次分散リップルと呼ぶ)は、マイナス側可変分散補償部の実施例で述べたように、sinカーブに近い形状である。この差分は図8で示したエタロンの反射率が低い場合に近い形状と考えられる。しかし、前述のようにエタロン反射率が低い場合は分散の振幅も小さい。そこで、反射率の低いエタロンで補正を行うには、エタロンとミラーを平行に配置して複数反射を行い振幅を倍増させる。以上の考察と改善方法を図18に模式的に示す。次に、この方法によるプラス側可変分散補償部の具体的な構成と計算結果を各々図19、20に示す。図20に示した結果の構成条件としては、エタロンとミラーの角度を平行とし、エタロン10−1、10−2の振幅反射率rは55%と11%、反射回数は各々1回と11回である。この結果、帯域86GHz,R2=0.99990となった。図10、11で示した1段構成の場合ではr=25%の場合、帯域75GHz,R2=0.9994であり、これに比べて帯域および直線性とも大幅に改善できたことがわかる。
【0037】
このように、反射率の高いエタロンでは1回だけ反射を行えばよい場合がある。この場合、エタロンに複数反射しないのでミラーは不要となる。この構成を図32に示す。また、図16に示した構成同様に、光を通す向きは、コリメータ30−1→31−1→30−2→31−2でも、コリメータ31−2→30−2→31−1→30−1のどちらでも構わない。また、エタロン10−1、10−2も、どちらを先に光を入射させても構わない。さらに、この考え方を発展させて、このような高次分散リップルを補正するための分散補償には、エタロン以外の素子を用いても構わない。その構成を図33に示す。図中では可変分散補償部150によって、高次分散リップルを補正する。可変分散補償部150は比較的小さな分散量を稼ぐ素子でよい。例えば、従来の光ファイバグレーティング、マルチキャビティエタロン、リングキャビティ、フォトニック結晶やフォトニック結晶ファイバを用いても構わない。
【0038】
このように、正の傾きの帯域を増やすことができたので、図19の構成のプラス側可変分散補償部をさらに多段に組み合わせて、前述の図12で説明した方法で、マイナス側可変分散補償部を構成することも可能である。
また、図1で示したエタロンは、反射膜11と12に囲まれた1つの共振構造を持つシングルキャビティの構成であるが、これを図27に示す複数の共振構造を持つマルチキャビティエタロンに置き換えて分散補償器を構成しても構わない。図27に示すマルチキャビティエタロンにおいては、平面板10と反射膜11を交互に何段も積層した構造となっており、各々の反射率を変えることでシングルキャビティエタロンに比べ自由度が増えるので、所望の分散特性を実現することが可能となる。マルチキャビティエタロンの温度制御については、部品数削減という意味では、1組の伝熱剤41と温度変化素子40を反射膜12に張り合わせる構造がよい。しかし、微細に温度制御を行うという観点からすると、図27に示したようにマルチキャビティエタロンの層数nに対し、n組の伝熱剤41と温度変化素子40を各々の平面板10に張り合わせる構造がよい。この図では平面板10の端の部分に温度制御素子が接触しているが、さらに言えば、平面板10のまわりを取り囲むように温度制御素子が接触している方が好ましい。また、本発明の別の実施例として、エタロンの代りにリングキャビティを用いても構わない。リングキャビティの遅延特性を表す式はエタロンの場合と同じなので、本発明による概念を適用することが可能である。リングキャビティの構造を図28に示す。この図で示されるリングキャビティは、光基盤300とリング共振部310と光導波路320と光カプラ部330から構成される。光導波路では、基盤よりも光の屈折率が高くなっており、光は導波路中に閉じ込められ基盤にはもれない。導波路の左側から入射した光は導波路中を右側に進み、光カプラ部330で光導波路320をそのまま直進していく光と、分岐して一部リング共振部310に進んでいく光とに分かれる。リング共振部310を1周した光は、光カプラ部330で一部は光導波路320を直進し、残りは再びリング共振部310を回周する。このように、リング共振部310を何周かした光が合わさって導波路320に出て行き、共振器が実現される。
また、図29に示すように、リング共振部310と光カプラ部330を多段構造にとることが可能である。このようにすることで、1段の構成よりも自由度が増えるので、所望の分散特性を実現することが可能となる。
【0039】
次に、プラス側とマイナス側の可変分散補償部の本発明による制御方法について説明する。図21は、制御方法を説明するために、理想的な直線モデルを示した。プラス側可変分散補償部の正の傾きの帯域をW1、マイナス側可変分散補償部の負の傾きの帯域をW2とする。この図ではW1>W2の場合を示してある。また、プラス側可変分散補償部の正の傾きをa1、マイナス側可変分散補償部の負の傾きをa2とする。可変分散補償器として高次分散、
【0040】
【数8】
【0041】
を0にするためには、傾きa1とa2は符号が反対で絶対値が同じでなければならない。
ただし、理想的には絶対値が同じであることが好ましいが、製造上の問題やシステムの違い等を考慮し、差の相対量|(a1−a2)/a1|が0.1以下程度まで許容される場合もある。また、図21では可変分散補償器の有効帯域の小さい方の光周波数をT1、大きい方をT2とする。
【0042】
ここで、図7で示したようにプラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部について、波長(光周波数)特性を変化させるようシフト量を与える。このシフト量mについて図21に示すように−m、+mと符号の向きを定義する。WDM光伝送システムでは、各々の波長はITU(International Telecommunication Union)に定められたグリッドによって定められている。従って、可変分散補償器の中心波長は制御時に変化してはならない。言い換えれば、中心波長が変化することは有効帯域を減らすことになる。W1=W2の場合は中心波長(光周波数)を変化させないようにmを与える制御方法は簡単である。すなわち、プラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部に与えるシフト量は、絶対値が同じで符号が反対になるようにすればよい。ここで、プラス側可変分散補償部に−mのシフト量を与え、マイナス側可変分散補償部に+mのシフト量(図21で、二つのピークを寄せる向き)を与えるとする。この場合、図21で示した合計値はm=0の場合を示しているが、重なりの部分が小さくなるので、図7で述べたように分散補償器全体の特性としては帯域が狭く、分散量が増えることになる。プラス側可変分散補償部に+mのシフト量を与え、マイナス側可変分散補償部に−mのシフト量を与える場合は、その逆に重なりの部分が大きくなるので、分散補償器全体の特性としては帯域が広く、分散量が減ることになる。しかし、図21に示した例では、W1>W2であるため、プラス側とマイナス側可変分散補償部のシフト量の与え方として、符号を反対にするだけでは不十分である。それについて説明する。
【0043】
W1>W2の場合、シフト量mを変えた場合のT1とT2、およびその平均値TC(中心光周波数)の変化を図22に示す。このとき、プラス側可変分散補償部とマイナス側可変分散補償部に与えるシフト量は、絶対値が同じで符号が反対になるように与えてある。この図では、各パラメータは、FSR=100[GHz]、W1=80[GHz]、W2=60[GHz]としてある。m=−50[GHz]の場合では、T1、T2は193.90THzであり、可変分散補償器の有効帯域は0GHzとなる。mを徐々に増やすことにより、T1とT2は各々193.90THzより小さく、あるいは大きくなり、その変化の絶対量は等しい。このため、中心光周波数は193.90THzで一定である。しかし、W1>W2であるため、mが(W2−FSR)/2を越えるとT2は減少を始め、中心光周波数も変化する。これは、mが(W2−FSR)/2+(W1−W2)/2=(W1−FSR)/2に増加するまで続く。その後は、mの増加とともにT1も増加を始め、中心光周波数は(W1−W2)/2で一定となる。図22におけるmと中心光周波数の変化量ΔTCの関係をまとめると以下のようになる。
【0044】
【数9】
【0045】
このように、W1≠W2の場合に生じる中心光周波数の変化を抑えるために、プラス側とマイナス側可変分散補償部に与えるシフト量を、パラメータmoffsetを用いて以下のように与えることにする。
プラス側可変分散補償部シフト量 :−m → moffset−m
マイナス側可変分散補償部シフト量 : m → moffset+m
ここで、中心光周波数を変化させないためのmoffsetの値は、数式(8)から以下のように与えればよい。
【0046】
【数10】
【0047】
この制御方法を行ったときのT1とT2、およびその平均値TC(中心光周波数)の変化を図23に示す。TCを一定に制御できていることがわかる。次に、理想的な特性の場合ではなく、本発明で得られたプラス側とマイナス側の可変分散補償部の特性を用いて効果を検証する。図24に、本発明によるプラス側とマイナス側の可変分散補償部の特性、およびその合計値を示す。図25に本発明による制御方法を適用した結果を示す。ここで、FSR=100GHz,W1=86GHz,W2=58GHzとした。図26にT1、T2、TCの変化を示す。以上より、本発明の制御方法によって、中心周波数が変化していないことがわかる。
以上に述べたように、本発明によって、広帯域で、低分散リップル(あるいは低群遅延リップル)、かつ可変分散量が大きく、中心波長の変化の少ない特性良好な可変分散補償器が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるエタロンを示す図。
【図2】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成を示す図。
【図3】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成を詳細に説明するための図。
【図4】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成を立体的に示した図。
【図5】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成における光学部品固定部材の上面図。
【図6】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の第一の構成における光学部品固定部材の中空穴の構造を示す図。
【図7】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の原理と構成を示す図。
【図8】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるエタロンの群遅延特性を示す図。
【図9】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の構成を示す図。
【図10】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の振幅反射率と帯域の関係を示す図。
【図11】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の振幅反射率と直線性の関係を示す図。
【図12】本発明の一実施例を説明するための図であって、三角波の基本的な性質を示す図。
【図13】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の構成を示す図。
【図14】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第一の構成の分散特性を示す図。
【図15】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の原理を示す図。
【図16】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第二の構成を示す図。
【図17】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第二の構成の分散特性を示す図。
【図18】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の原理を示す図。
【図19】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第二の構成を示す図。
【図20】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第二の構成の分散特性を示す図。
【図21】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の制御原理を示す図。
【図22】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のシフト量と有効帯域の変化の性質を示す図。
【図23】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の制御方法によって改善されたシフト量と有効帯域の変化を示す図。
【図24】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器によるプラス側とマイナス側の分散補償部の分散特性およびその合計を示す図。
【図25】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の分散特性を示す図。
【図26】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の制御方法によって改善されたシフト量と有効帯域の変化を示す図。
【図27】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるマルチキャビティエタロンを示す図。
【図28】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子であるリング共振器を示す図。
【図29】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器の基本素子である多段型リング共振器を示す図。
【図30】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第三の構成を示す図。
【図31】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のマイナス側可変分散補償部の第四の構成を示す図。
【図32】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第三の構成を示す図。
【図33】本発明の一実施例を説明するための図であって、本発明における可変分散補償器のプラス側可変分散補償部の第四の構成を示す図。
【符号の説明】
【0049】
10…平面版、
20…ミラー(基板)、
11,12,21…反射膜、
30,31…コリメータ、
40…温度変化素子、
41…伝熱剤、
100…可変分散補償器、
110…入力ポート、
120…出力ポート、
130…プラス側可変分散補償部、
140…マイナス側可変分散補償部、
150…可変分散補償部、
200…光学部品固定部材、
300…光基盤、
310,311,312…リング共振部、
320…光導波路、
330,331,332…光カプラ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、
第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、
対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、
第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備して成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第2の角度は前記第1の角度以上であり、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上であることを特徴とする可変分散補償器。
【請求項2】
前記第2の平面の反射率が90%以下の反射機能を有する面であり、
前記第4の平面の反射率は90%以下の反射機能を有する面であって、
前記第1のミラーの反射面の反射率は100%以下で、かつ90%以上であり、
前記第2のミラーの反射面の反射率は100%以下で、かつ90%以上であり、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を1回又は複数回交互に反射させた後、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から光ビームを入射させ、
前記光ビームを前記第2のエタロンと前記第2のミラーとの間を1回又は複数回交互に反射させた後、
前記第4の平面と前記第2の反射面との間から前記光ビームを出射させることにより、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項3】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項4】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項5】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがマルチキャビティエタロンであることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項6】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがリングキャビティを置き換えられることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項7】
前記第1と第2の角度が1度以下であることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項8】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃以上であることを特徴とする請求項4記載の可変分散補償器。
【請求項9】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項4記載の可変分散補償器。
【請求項10】
対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、
第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、
対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、
第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備して成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を自然数n1回交互に反射させた後、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第2のエタロンと前記第2のミラーとの間を自然数n2回交互に反射させた後、
前記第4の平面と前記第2の反射面との間から前記光ビームを出射させ、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上、前記自然数n2は前記自然数n1以下、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする可変分散補償器。
【請求項11】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項12】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項13】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがマルチキャビティエタロンであることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項14】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがリングキャビティを置き換えられることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項15】
前記第1と第2の角度が1度以下であることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項16】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃以上であることを特徴とする請求項12記載の可変分散補償器。
【請求項17】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項12記載の可変分散補償器。
【請求項18】
波長に対する分散を表す関係式において、正の傾きa1と該傾きa1の有効帯域がW1であるプラス側可変分散補償部と、
負の傾きa2と該傾きa2の有効帯域がW2である持つマイナス側可変分散補償部と、
前記プラス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする第1の温度調節手段が設けられ、
前記マイナス側可変分散補償部の分散特性を前記プラス側可変分散補償部とは逆の波長方向にシフトする第2の温度調節手段が設けられ、
前記a1と前記a2の符号が反対で絶対量が等しいかまたは差の相対量|(a1−a2)/a1|が0.1以下であることを特徴とする可変分散補償器。
【請求項19】
分散特性の調整のための光周波数方向のシフト量をm、オフセットシフト量をmoffset、プラス側可変分散補償部の波長周期をFSR(Free Spectral Range)とした場合、
前記第1の温度調節手段がプラス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする量は(moffset−m)で与えられ、
前記第2の温度調節手段がマイナス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする量は(moffset+m)で与えられとともに、
前記moffsetはmが(W2−FSR)/2以下の時には0と設定され、mが(W2−FSR)/2より大きく(W1−FSR)/2以下の時にはm+(FSR−W2)/2と設定され、mが(W1−FSR)/2より大きい時には(W1−W2)/2と設定されることを特徴とする請求項18に記載の可変分散補償器。
【請求項20】
対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、
反射面を有するミラーの前記反射面とが、或る角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、
前記第1の可変分散補償部と光学的に接続され、前記第1の可変分散補償部から出射される光信号の高次分散リップルを打ち消す分散特性を有する第2の可変分散補償部とを具備することを特徴とする可変分散補償器。
【請求項21】
前記第2の可変分散補償部に、請求項1記載の第2のエタロンを用いることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項22】
前記第1と第2の可変分散補償部の前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがマルチキャビティエタロンであることを特徴とする請求項21記載の可変分散補償器。
【請求項23】
前記第1と第2の可変分散補償部の前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがリングキャビティと置き換えられることを特徴とする請求項21記載の可変分散補償器。
【請求項24】
前記第2の可変分散補償部にファイバグレーティング型分散補償素子を用いることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項25】
前記第2の可変分散補償部にフォトニック結晶型分散補償素子を用いることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項26】
前記第2の可変分散補償部が、対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンから成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上であることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項27】
前記第2の平面の反射率が90%以下の反射機能を有する面であり、
前記第4の平面の反射率は90%以下の反射機能を有する面であって、
前記ミラーの反射面の反射率は100%以下で、かつ90%以上であり、
前記第2の平面と前記反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記ミラーとの間を1回又は複数回交互に反射させた後、
前記第2の平面と前記反射面との間から前記光ビームを出射させ、
前記第4の平面に光ビームを反射させ、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項26記載の可変分散補償器。
【請求項28】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項26記載の可変分散補償器。
【請求項29】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項26記載の可変分散補償器。
【請求項30】
前記角度が1度以下であることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項31】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃であることを特徴とする請求項29記載の可変分散補償器。
【請求項32】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項29記載の可変分散補償器。
【請求項33】
前記第2の可変分散補償部が、対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンから成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第2の平面と前記反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を自然数n回交互に反射させた後、
前記第4の平面に光ビームを反射させ、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上で、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項34】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項33記載の可変分散補償器。
【請求項35】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項33記載の可変分散補償器。
【請求項36】
前記角度が1度以下であることを特徴とする請求項33記載の可変分散補償器。
【請求項37】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃以上であることを特徴とする請求項35記載の可変分散補償器。
【請求項38】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項35記載の可変分散補償器。
【請求項1】
対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、
第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、
対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、
第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備して成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第2の角度は前記第1の角度以上であり、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上であることを特徴とする可変分散補償器。
【請求項2】
前記第2の平面の反射率が90%以下の反射機能を有する面であり、
前記第4の平面の反射率は90%以下の反射機能を有する面であって、
前記第1のミラーの反射面の反射率は100%以下で、かつ90%以上であり、
前記第2のミラーの反射面の反射率は100%以下で、かつ90%以上であり、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を1回又は複数回交互に反射させた後、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から光ビームを入射させ、
前記光ビームを前記第2のエタロンと前記第2のミラーとの間を1回又は複数回交互に反射させた後、
前記第4の平面と前記第2の反射面との間から前記光ビームを出射させることにより、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項3】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項4】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項5】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがマルチキャビティエタロンであることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項6】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがリングキャビティを置き換えられることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項7】
前記第1と第2の角度が1度以下であることを特徴とする請求項1記載の可変分散補償器。
【請求項8】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃以上であることを特徴とする請求項4記載の可変分散補償器。
【請求項9】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項4記載の可変分散補償器。
【請求項10】
対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、
第1の反射面を有する第1のミラーの前記第1の反射面とが、第1の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、
対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンの前記第4の平面と、
第2の反射面を有する第2のミラーの前記第2の反射面とが、第2の角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第2の可変分散補償部とを具備して成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を自然数n1回交互に反射させた後、
前記第2の平面と前記第1の反射面との間から前記光ビームを出射させ、前記第4の平面と前記第2の反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第2のエタロンと前記第2のミラーとの間を自然数n2回交互に反射させた後、
前記第4の平面と前記第2の反射面との間から前記光ビームを出射させ、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上、前記自然数n2は前記自然数n1以下、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする可変分散補償器。
【請求項11】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項12】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項13】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがマルチキャビティエタロンであることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項14】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがリングキャビティを置き換えられることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項15】
前記第1と第2の角度が1度以下であることを特徴とする請求項10記載の可変分散補償器。
【請求項16】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃以上であることを特徴とする請求項12記載の可変分散補償器。
【請求項17】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項12記載の可変分散補償器。
【請求項18】
波長に対する分散を表す関係式において、正の傾きa1と該傾きa1の有効帯域がW1であるプラス側可変分散補償部と、
負の傾きa2と該傾きa2の有効帯域がW2である持つマイナス側可変分散補償部と、
前記プラス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする第1の温度調節手段が設けられ、
前記マイナス側可変分散補償部の分散特性を前記プラス側可変分散補償部とは逆の波長方向にシフトする第2の温度調節手段が設けられ、
前記a1と前記a2の符号が反対で絶対量が等しいかまたは差の相対量|(a1−a2)/a1|が0.1以下であることを特徴とする可変分散補償器。
【請求項19】
分散特性の調整のための光周波数方向のシフト量をm、オフセットシフト量をmoffset、プラス側可変分散補償部の波長周期をFSR(Free Spectral Range)とした場合、
前記第1の温度調節手段がプラス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする量は(moffset−m)で与えられ、
前記第2の温度調節手段がマイナス側可変分散補償部の分散特性を波長方向にシフトする量は(moffset+m)で与えられとともに、
前記moffsetはmが(W2−FSR)/2以下の時には0と設定され、mが(W2−FSR)/2より大きく(W1−FSR)/2以下の時にはm+(FSR−W2)/2と設定され、mが(W1−FSR)/2より大きい時には(W1−W2)/2と設定されることを特徴とする請求項18に記載の可変分散補償器。
【請求項20】
対向する第1および第2の平面を有する板状の第1のエタロンの前記第2の平面と、
反射面を有するミラーの前記反射面とが、或る角度で傾けられ、かつ、対向して配置される第1の可変分散補償部と、
前記第1の可変分散補償部と光学的に接続され、前記第1の可変分散補償部から出射される光信号の高次分散リップルを打ち消す分散特性を有する第2の可変分散補償部とを具備することを特徴とする可変分散補償器。
【請求項21】
前記第2の可変分散補償部に、請求項1記載の第2のエタロンを用いることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項22】
前記第1と第2の可変分散補償部の前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがマルチキャビティエタロンであることを特徴とする請求項21記載の可変分散補償器。
【請求項23】
前記第1と第2の可変分散補償部の前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つがリングキャビティと置き換えられることを特徴とする請求項21記載の可変分散補償器。
【請求項24】
前記第2の可変分散補償部にファイバグレーティング型分散補償素子を用いることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項25】
前記第2の可変分散補償部にフォトニック結晶型分散補償素子を用いることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項26】
前記第2の可変分散補償部が、対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンから成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上であることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項27】
前記第2の平面の反射率が90%以下の反射機能を有する面であり、
前記第4の平面の反射率は90%以下の反射機能を有する面であって、
前記ミラーの反射面の反射率は100%以下で、かつ90%以上であり、
前記第2の平面と前記反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記ミラーとの間を1回又は複数回交互に反射させた後、
前記第2の平面と前記反射面との間から前記光ビームを出射させ、
前記第4の平面に光ビームを反射させ、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項26記載の可変分散補償器。
【請求項28】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項26記載の可変分散補償器。
【請求項29】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項26記載の可変分散補償器。
【請求項30】
前記角度が1度以下であることを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項31】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃であることを特徴とする請求項29記載の可変分散補償器。
【請求項32】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項29記載の可変分散補償器。
【請求項33】
前記第2の可変分散補償部が、対向する第3および第4の平面を有する板状の第2のエタロンから成り、
前記第1の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第2の平面の反射率は第1の平面の反射率より低く、
前記第3の平面の反射率の値は100%以下で、かつ90%以上であり、前記第4の平面の反射率は第3の平面の反射率より低く、
前記第2の平面と前記反射面との間から光ビームを入射させ、前記光ビームを前記第1のエタロンと前記第1のミラーとの間を自然数n回交互に反射させた後、
前記第4の平面に光ビームを反射させ、
前記第4の平面の反射率は前記第2の平面の反射率以上で、一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項20記載の可変分散補償器。
【請求項34】
前記光ビームの入射と出射の順序を逆にして、
一つまたは波長の異なる複数の信号光に波長分散を与えるように構成されたことを特徴とする請求項33記載の可変分散補償器。
【請求項35】
前記第1のエタロンに温度変化を与える第1の温度調節手段が前記第1のエタロンに近接して設けられ、
前記第2のエタロンに温度変化を与える第2の温度調節手段が前記第2のエタロンに近接して設けられていることを特徴とする請求項33記載の可変分散補償器。
【請求項36】
前記角度が1度以下であることを特徴とする請求項33記載の可変分散補償器。
【請求項37】
前記第1と第2の温度調節手段のうち、少なくとも1つの温度制御範囲が5℃以上であることを特徴とする請求項35記載の可変分散補償器。
【請求項38】
前記第1と第2のエタロンのうち、少なくとも1つの基板の熱膨張係数が10−4以下10−6以上のガラス部材で構成されていることを特徴とする請求項35記載の可変分散補償器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2006−53519(P2006−53519A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37623(P2005−37623)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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