説明

可搬式レール反転装置

【課題】レールを効率的に反転可能で、移動が容易な可搬式レール反転装置を提供する。
【解決手段】レールのウェブにその端部から二股状のフォーク金具13を装着し、レールを回転するレール反転装置10であって、レールに直交する方向に移動可能な台車14と、台車14の進行方向に沿って設けられたガイドレール15、16と、ガイドレール15、16に沿って移動可能な移動架台17と、移動架台17に昇降手段18を介して上下動可能に設けられたベース架台19と、ベース架台19に水平軸を介して回動可能に取り付けられた傾動架台22と、傾動架台22に軸受を介して取り付けられ、両端にフォーク金具13が設けられた、ガイドレール15、16に直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸24と、反転スライド軸24を回転させる回転駆動手段25と、傾動架台22の回動角度を制限する傾動角制限手段とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用レールの4面検査及び疵の修復等を行うためにレールを反転させる可搬式レール反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用レール(以下単に「レール」という)の製造工場では、品質保証の観点から実施されるレールの4面検査や疵の修復等のため、レールの反転が行われている。そしてレールの反転作業は、バールを用いて、てこの原理によって人力で行われる場合や、例えば特許文献1に開示されているようにレール反転装置を用いて行われる場合がある。
人力によるレールの反転は、使用するバールがレール反転装置に比べて小さいので、狭いスペースに収納可能な点、及びレールやその他の機材等が多数置かれ、通路スペースが制限された作業場内での持ち運びが容易である点で優れている。
また、レール反転装置は、作業者によるボタン操作等により、レールの反転作業を装置によって行うことができるので、人力を要せず、また、人力では反転が困難な重量のレールも反転可能である点で有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−302370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レールは、一般的に、単位長さあたりの重量が40kg/m以上、長さが10m以上のため、最低でも400kg以上の重量となり、人力によって反転する場合には、作業者の体にかかる負担が大きく、腰痛等を引き起こすことや、レールの反転途中でバールが手から離れると、作業者にバールが勢いよく当たる等の問題がある。
また、特許文献1に記載のレール反転装置は、装置全体が大きく、作業場内等での移動に適さない。更に、レールに装着する爪部材(フォーク金具)をレールと位置合わせするためには、多くの部材を作動させる必要があり、作業効率が低い。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、レールの反転作業を効率的に行え、移動が容易な可搬式レール反転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る可搬式レール反転装置は、水平状態で載置されたレールのウェブにその端部から二股状のフォーク金具を装着し、該フォーク金具を回転して前記レールを回転するレール反転装置であって、前記レールに対して直交する方向に移動可能な台車と、前記台車上に、該台車の進行方向に沿って設けられた対となるガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な移動架台と、前記移動架台に昇降手段を介して上下動可能に設けられたベース架台と、前記ベース架台に水平軸を介して回動可能に取り付けられた傾動架台と、前記傾動架台に軸受を介して取り付けられ、一端又は両端に前記フォーク金具が設けられた、前記ガイドレールに直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸と、前記傾動架台に取り付けられて、前記反転スライド軸を回転させる回転駆動手段と、前記傾動架台の回動角度を制限する傾動角制限手段とを有する。
【0006】
第1の発明に係る可搬式レール反転装置において、前記傾動架台は、一端部が該傾動架台に、他端部が前記ベース架台にそれぞれ固定されたバネ部材によって、前記フォーク金具が前記レールに未装着の状態で、前記ベース架台に対して所定角度位置に保つのが好ましい。
【0007】
第1の発明に係る可搬式レール反転装置において、前記回転駆動手段は、出力軸に第1のスプロケットが取り付けられた駆動モータと、前記反転スライド軸に固定された第2のスプロケットと、該第1、第2のスプロケットに掛け渡されたチェーンとを備えるのが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る可搬式レール反転装置において、前記移動架台には、前記ベース架台の昇降動作をガイドするガイドロッドが設けられ、前記昇降手段は、前記ベース架台を支持する可動ロッド、及び回転により該可動ロッドを昇降する入力軸を備える対となるジャッキと、昇降モータとを有し、該対となるジャッキの各入力軸は、動力伝達ロッドによって連結され、一方の該入力軸は、前記昇降モータの駆動によって回転すると共に、前記動力伝達ロッドを介して他方の該入力軸を回転するのが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る可搬式レール反転装置において、前記台車には、警告灯が設けられているのが好ましい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る可搬式レール反転装置は、水平状態で載置されたレールのウェブに端部から二股状のフォーク金具を装着し、該フォーク金具を回転して前記レールを回転するレール反転装置であって、前記レールに対して直交する方向に移動可能な台車と、前記台車上に設けられ、昇降手段によって上下動される昇降プレートと、前記昇降プレート上に、該台車の進行方向に沿って設けられた対となるガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な移動架台と、前記移動架台に水平軸を介して回動可能に取り付けられた傾動架台と、前記傾動架台に軸受を介して取り付けられ、一端又は両端に前記フォーク金具が設けられた、前記ガイドレールに直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸と、前記傾動架台に取り付けられて、前記反転スライド軸を回転させる回転駆動手段と、前記傾動架台の回動角度を制限する傾動角制限手段とを有する。
【0011】
第2の発明に係る可搬式レール反転装置において、前記傾動角制限手段は、前記傾動架台と前記移動架台を連結する複数の弾性部材を備え、前記傾動架台を、前記フォーク金具が前記レールに未装着の状態で、前記移動架台に対して所定角度位置に保つのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜5記載の可搬式レール反転装置は、レールに対して直交する方向に移動可能な台車と、一端又は両端にフォーク金具が設けられた、ガイドレールに直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸とを備えているので、反転しようとするレールの端部横に移動可能であり、更に、反転スライド軸をスライドすることによって、フォーク金具をレールのウェブに端部から装着でき、レールへのフォーク金具の装着を効率的に行うことが可能である。
また、反転スライド軸が設けられた傾動架台を取り付けたベース架台は、昇降手段を介して上下動可能に設けられているので、フォーク金具をレールと同一高さにすることが容易であり、フォーク金具のレールへの装着を短時間で行うことができる。
そして、移動架台は、ガイドレールに沿って移動可能であり、しかも、傾動架台はベース架台に回動可能に取り付けられているので、可搬式レール反転装置は、レールの反転動作に合わせて、フォーク金具を上下、前後に移動させてレールの反転作業を行うことができ、レールの一部が常に支持された状態でレールを反転可能である。従って、反転のためにレールを持ち上げる必要がなく、可搬式レール反転装置を構成する部材、部品の点数を減らすことができ、可搬式レール反転装置の全体をコンパクトにすることが可能である。
【0013】
特に、請求項2記載の可搬式レール反転装置は、傾動架台が、フォーク金具をレールに未装着の状態で、ベース架台に対して所定角度位置に保たれるので、台車の移動の際に、傾動架台が回動して重心が変動するのを回避し、挙動を安定させることができる。
【0014】
請求項3記載の可搬式レール反転装置は、回転駆動手段が、出力軸に第1のスプロケットが取り付けられた駆動モータと、反転スライド軸に固定された第2のスプロケットと、第1、第2のスプロケットに掛け渡されたチェーンとを備えるので、駆動モータの駆動により反転スライド軸を安定して回転可能である。
【0015】
請求項4記載の可搬式レール反転装置は、対となるジャッキと、昇降モータとを有し、対となるジャッキの各入力軸は、動力伝達ロッドによって連結され、一方の入力軸は、昇降モータの駆動によって回転すると共に、動力伝達ロッドを介して他方の入力軸を回転するので、二つのジャッキの動作を一台の昇降モータで制御でき、可搬式レール反転装置を構成する部材、部品等の点数を少なくすることが可能である。
【0016】
請求項5記載の可搬式レール反転装置は、警告灯が設けられているので、周囲の人にレールの反転作業中であることを視覚的に知らせることができ、未然に事故の発生を防止可能である。
【0017】
請求項6及び7に記載の可搬式レール反転装置は、レールに対して直交する方向に移動可能な台車と、一端又は両端にフォーク金具が設けられた、ガイドレールに直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸とを備えているので、反転しようとするレールの端部横に移動可能であり、更に、反転スライド軸をスライドすることによって、フォーク金具をレールのウェブに端部から装着でき、レールへのフォーク金具の装着を効率的に行うことが可能である。
また、昇降プレートは、昇降手段を介して上下動されるので、フォーク金具をレールと同一高さにすることが容易であり、フォーク金具のレールへの装着を短時間で行うことができる。
そして、移動架台は、ガイドレールに沿って移動可能であり、しかも、傾動架台は移動架台に回動可能に取り付けられているので、可搬式レール反転装置は、レールの反転動作に合わせて、フォーク金具を上下、前後に移動させてレールの反転作業を行うことができ、レールの一部が常に支持された状態でレールを反転可能である。従って、反転のためにレールを持ち上げる必要がなく、可搬式レール反転装置を構成する部材、部品の点数を減らすことができ、可搬式レール反転装置の全体をコンパクトにすることが可能である。
【0018】
特に、請求項7記載の可搬式レール反転装置は、傾動架台が、フォーク金具をレールに未装着の状態で、移動架台に対して所定角度位置に保たれるので、移動の際に、傾動架台が回動して重心が変動するのを回避し、挙動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る可搬式レール反転装置の平面図である。
【図2】同可搬式レール反転装置の一部省略側面図である。
【図3】図1のY−Y矢視断面図である。
【図4】同可搬式レール反転装置の反転スライド軸及びフォーク金具を示す説明図である。
【図5】同可搬式レール反転装置によって反転されるレールの動作の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る可搬式レール反転装置を移動している状態の側面図である。
【図7】同可搬式レール反転装置の一部省略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図4に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る可搬式レール反転装置10は、水平状態で載置されたレール11のウェブ12(図5参照)にレール11の端部から二股状のフォーク金具13を装着し、フォーク金具13を回転してレール11を回転するレール反転装置である。そして、可搬式レール反転装置10は、レール11に対して直交する方向に移動可能な台車14と、台車14上に、台車14の進行方向に沿って設けられた対となるガイドレール15、16と、ガイドレール15、16に沿って移動可能な移動架台17と、移動架台17に昇降手段18を介して上下動可能に設けられたベース架台19と、ベース架台19に水平軸20を介して回動可能に取り付けられた傾動架台22と、傾動架台22に軸受23を介して取り付けられ、両端にフォーク金具13が設けられた、ガイドレール15、16に直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸24と、傾動架台22に取り付けられて、反転スライド軸24を回転させる回転駆動手段25と、傾動架台22の回動角度を制限する傾動角制限手段26とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。
【0021】
図1、図2に示すように台車14は、前部の左右にそれぞれ設けられた回転軸方向が固定の前輪28、29と、後部の左右にそれぞれ設けられた、回転軸方向が変更自在の後輪30、31とを備えている。そして、台車14の後部には、台車14の後側に立った作業者の腹部あるいは胸部の高さ(例えば、台車14の下部から80〜130cmの高さで本実施の形態では105cm)に配置された把持パイプ32が設けられ、作業者は、把持パイプ32を把持して台車14(可搬式レール反転装置10)を押し、台車14を所望の場所に移動させることができる。
また、台車14には、把持パイプ32の前方に、上部にライト点灯部33を備えた警告灯34が設けられているので、ライト点灯部33を点灯して、周囲の人に可搬式レール反転装置10が移動中であることや、レール11の反転作業中であることを知らせることができる。
【0022】
図1〜図3に示すように、台車14に設けられ、前輪28、29及び後輪30、31によって水平に保たれた本体フレーム36は、長手方向を前後方向(台車14の進行方向)に合わせて配置された複数の棒材、及び長手方向を左右方向(台車14の進行方向に直交する方向)に合わせて配置された複数の棒材によって格子状に形成されている。本体フレーム36の前後方向に配置された複数の棒材のうち2本には、上部にガイドレール15、16がそれぞれねじ固定されている。
ガイドレール15、16は、長さが例えば1000〜2000mmであり、設計段階で、反転対象となるレール11が一回転して転がる距離等を考慮して、その長さを決めることができる。
ガイドレール15、16にはそれぞれ、前後に所定の間隔を有して配置された対となるスライドブロック37が進退可能に取り付けられている。そして、移動架台17は、スライドブロック37の上部に固定され、ガイドレール15、16に沿って移動可能であり、レール11の反転動作に合わせて前後動することができる。
【0023】
移動架台17は、昇降手段18を構成する昇降モータ38が取り付けられ、立設された門形支持部材39と、門形支持部材39を下から支持する水平プレート40とを備えている。
昇降モータ38は門形支持部材39にボルトによって固着され、昇降モータ38の出力軸には、駆動スプロケット42が固定されている。そして、駆動スプロケット42には、チェーンカバー41によって覆われたチェーン43が取り付けられている。なお、チェーンカバー41は、図1において2点鎖線で記載している。
【0024】
水平プレート40の前後には、ベース架台19を昇降する垂直配置されたジャッキ44、45がそれぞれ設けられている。ジャッキ44(ジャッキ45についても同様)は、ベース架台19を支持する可動ロッド46と、回転によって可動ロッド46を昇降する入力軸47とを有している。
ジャッキ44の入力軸47には、チェーン43が掛け止めされた従動スプロケット48が取り付けられている。そして、ジャッキ44の入力軸47は、昇降モータ38の駆動力を駆動スプロケット42、チェーン43、及び従動スプロケット48を介して伝えられて回転し、ジャッキ44の可動ロッド46を上下動する。
【0025】
ジャッキ44、45の各入力軸47は、水平配置された回転可能な動力伝達ロッド49によって連結され、ジャッキ44、45の各入力軸47、及び動力伝達ロッド49は同軸上に配置されている。動力伝達ロッド49は、ジャッキ44の入力軸47の回転力をジャッキ45の入力軸47に与えて、ジャッキ44、45の各入力軸47を同一方向に回転する。
なお、昇降手段18は、昇降モータ38、駆動スプロケット42、チェーン43、ジャッキ44、45、従動スプロケット48、及び動力伝達ロッド49を有して構成されている。
【0026】
また、昇降モータ38は、台車14に取り付けられた制御盤50に信号接続されており、制御盤50に接続された図示しない操作ユニットからの入力操作に従って駆動して、駆動スプロケット42を時計回り、反時計回りに回転し、ベース架台19を昇降する。そして、ベース架台19は、上下に一定間隔を有して設けられた上限センサ51及び下限センサ51aによって、昇降動作の上限位置及び下限位置が決められている。
【0027】
水平プレート40には、ベース架台19の昇降動作をガイドする複数(本実施の形態では4本)のガイドロッド52が垂直配置されて設けられている。
そして、ベース架台19は、個々のガイドロッド52に対応し、ガイドロッド52が挿通された貫通孔を備える複数の筒部材53と、水平軸20を支持する支持台54を上部に設けた本体昇降フレーム55とを備えている。なお、筒部材53は、本体昇降フレーム55の外周部に固着され、ジャッキ44、45の各可動ロッド46は、本体昇降フレーム55の前側中央部及び後側中央部に固定されている。
【0028】
水平軸20を介して、支持台54に回動可能に取り付けられた傾動架台22には、回転駆動手段25が取り付けられている。回転駆動手段25は、出力軸に第1のスプロケット57が取り付けられた駆動モータ58と、反転スライド軸24を回転する第2のスプロケット59とを備え、第1、第2のスプロケット57、59にはチェーン60が掛け渡されている。なお、第2のスプロケット59は、反転スライド軸24に固定され、チェーン60はチェーンカバー60aによって覆われている。
駆動モータ58は、時計回り、反時計回りの回転が可能であり、制御盤50に信号接続されて、操作ユニットからの入力操作に従い、回転制御される。そして、第1のスプロケット57は、チェーン60を介して、第2のスプロケット59に駆動モータ58の駆動力を与え、回転筒部材61及びボールスプラインナット61aを介して反転スライド軸24を回転する。
【0029】
図4に示すように、傾動架台22の左右両側に所定間隔を有して設けられた対となる軸受23には、水平配置された回転筒部材61が回転自在に取り付けられ、回転筒部材61の内側には、回転可能にボールスプラインナット61a及び反転スライド軸24が設けられている。そして、反転スライド軸24及び回転筒部材61は、共に第2のスプロケット59に固定されているので、第2のスプロケット59の回転に伴って同軸上で同一方向に回転する。
また、反転スライド軸24の一側端部には、傾動架台22に設けられたラチェット62(図2参照)によって回転動作が止められるラチェット歯車63が固定されており、可搬式レール反転装置10は、レール11の反転途中で、反転スライド軸24の回転動作を止め、レール11を位置固定することが可能である。そして、ラチェット62によるラチェット歯車63の固定及び固定の解除は、操作ユニットによって切り替えられる。
フォーク金具13は、反転スライド軸24の両端に、ボルトによって取り外し可能に取り付けられており、反転スライド軸24には、反転するレールの形状に合わせて、異なる形状のフォーク金具を取り付けることができる。
【0030】
傾動架台22には、制御盤50に信号接続されたモータシリンダ64が固定され、モータシリンダ64は、操作ユニットから制御盤50を介して伝達される信号に従って、反転スライド軸24に平行配置されたモータシリンダ64のラック65を軸方向に移動する。そして、ラック65は、固定部材66を介して反転スライド軸24に連結されている。
反転スライド軸24は、固定部材66と共に反転スライド軸24の軸方向の移動をし、しかも、軸心を軸にして固定部材66に対して回転可能に、固定部材66に取り付けられている。回転部材66は、内側に反転スライド軸24を回転可能に取り付けるベアリング機構67を備えている。
従って、反転スライド軸24は、モータシリンダ64のラック65と共に軸方向にスライドでき、作業者は、操作ユニットでの入力操作により、フォーク金具13をレール11に装着することや、フォーク金具13をレール11から引き離すことが可能である。
なお、モータシリンダ64は、固定部材68によって傾動架台22に固定されている。また、モータシリンダ64のラック65は、モータシリンダ64に取り付けられた位置検出センサ69、69aによって軸方向位置が検知される。
【0031】
図1、図2に示すように、傾動架台22の重心は、水平軸20より後方側に位置している。そして、傾動架台22は、一端部が、傾動架台22の、水平軸20より後方側に位置する部分に固定され、他端部がベース架台19の本体昇降フレーム55に固定されたバネ部材70によって上方向に押し上げられ、フォーク金具13がレール11に未装着の状態で、ベース架台19に対して所定角度位置で保たれている。
また、本体昇降フレーム55には、平面視して水平軸20の前後にそれぞれ配置されたストッパーロッド71、72の下部が固着されている。ストッパーロッド71、72は垂直配置され、クッション材の一例であるウレタンが設けられた上部を傾動架台22に当接することによって、傾動架台22のベース架台19に対する回動角度を制限している。
なお、傾動角制限手段26は、ストッパーロッド71、72を有して構成されている。
【0032】
次に、可搬式レール反転装置10を用いてレール11の反転作業を行う手順について説明する。
作業者は、把持パイプ32を把持して、支持部材75に置かれたレール11の一方の端部の近くまで、可搬式レール反転装置10を手押しで移動し、レール11と反転スライド軸24が略同軸上となるように可搬式レール反転装置10を配置する(図4参照)。そして、操作ユニットの操作により、昇降モータ38を作動して、フォーク金具13をレール11と同一の高さにし、モータシリンダ64の作動によって反転スライド軸24をスライドして、フォーク金具13をレール11の端部からウェブ12に差し込んで、レール11に装着した後、駆動モータ58を作動して、レール11を反転する。
【0033】
図5に示すように、レール11の反転動作中、移動架台17は、フォーク金具13がレール11の反転運動に合わせて前後動するように、ガイドレール15、16に沿って移動し、傾動架台22は、フォーク金具13がレール11の反転に伴って上下動するように、水平軸20を軸にして前後に傾斜する。
これによって、可搬式レール反転装置10は、レール11を、常に支持部材75に接して、即ち支持部材75に支持された状態で反転することができる。
従って、可搬式レール反転装置10をレール11に比べて重くする必要はなく、人力によって容易に移動可能な重量(例えば100〜300Kg)に設計可能である。更に、浮かした状態での回転に比べ、レール11の反転中に可搬式レール反転装置10に生じる負担は小さいので、可搬式レール反転装置10は、構成部材及び部品等の点数を少なくして、全体の大きさをコンパクトにすることができ、作業場内の限られた通路スペースを移動することが可能であると共に、未使用時に可搬式レール反転装置10を置く場所の省スペース化ができる。
なお、レール11の反転中、台車14は、レール11の重量によってロックされ、前後移動しない状態となる。
【0034】
そして、複数のレール11が支持部材75の上に同一高さで平行に配置されている場合には、一のレール11の反転作業が完了した後、昇降モータ38による高さ調整をすることなく、可搬式レール反転装置10を移動して、他のレール11の反転作業を開始できるので、2つ目以降のレール11へのフォーク金具13の装着作業を短時間で行うことが可能である。
更に、フォーク金具13は、反転スライド軸24の左右両端部にそれぞれ設けられているので、レール11が可搬式レール反転装置10の通路スペースの左右に配置されている場合には、可搬式レール反転装置10は、前後の向きを変えることなく、左右のレール11を反転することができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る可搬式レール反転装置90について説明する。
なお、可搬式レール反転装置10と同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図6、図7に示すように、可搬式レール反転装置90は、台車14上に設けられ、昇降手段91によって上下動される昇降プレート92と、昇降プレート92上に前後方向(可搬式レール反転装置90の進行方向)に設けられた対となるガイドレール15、16に沿って移動可能な移動架台93と、移動架台93に水平軸20を介して回動可能に取り付けられた傾動架台94と、傾動架台94に軸受95を介して取り付けられた反転スライド軸24と、傾動架台94に取り付けられて、反転スライド軸24を回転させる回転駆動手段25と、傾動架台94の回動角度を制限する傾動角制限手段96とを有している。なお、台車14は、作業者96aによって手押しされて移動される。
【0036】
昇降手段91は、油圧シリンダからなり、制御盤50に信号接続され、制御盤50に接続された図示しない操作ユニットからの入力によって、昇降プレート92を昇降する。
昇降プレート92は、水平配置され、上下動することによって、レール11の高さに合わせてフォーク金具13の高さを調整可能である。
また、移動架台93は、下部がガイドレール15、16に移動可能に取り付けられ、レール11の反転動作に合わせて、前後に移動する。そして、移動架台93の上部中央には、平面視して、ガイドレール15、16に直交する方向に配置された水平軸20が設けられ、傾動架台94は水平軸20を介して、移動架台93に回動可能に取り付けられている。
【0037】
傾動架台94には、駆動モータ58と、駆動モータ58が上部に固定された矩形のベースプレート97が設けられている。そして、水平軸20は、ベースプレート97の下部中央に固定され、移動架台93の上部にある軸受98に回動自在に挿通されて、傾動架台94を移動架台93に傾斜可能にしている。
ベースプレート97は、前後方向に傾斜可能であり、その傾斜の最大角は、傾動角制限手段96によって決められている。
【0038】
傾動角度制限手段96は、ベースプレート97の4隅と移動架台93をそれぞれ連結する4本の弾性部材99を有している。弾性部材99は、一端部がベースプレート97に固定された支持ロッド100と、支持ロッド100の他端部と移動架台93とを連結するスプリング101を有している。そして、ベースプレート97が前側に傾斜したとき、ベースプレート97は、後側2本のスプリング101によって引っ張られて、後ろ向きに回動する力を受け、前側への傾斜角度を制限される。また、ベースプレート97は、前側2本のスプリング101によって後側への傾斜角度が制限されている。
更に、フォーク金具13がレール11に未装着の状態で、ベースプレート97は、弾性部材99によって、水平に配置されて、移動架台93に対して所定角度位置に保たれる。
なお、反転スライド軸24の左右方向の移動は、人力で行うことや、モータシリンダ等の機器を用いて(本実施の形態では人力)行うことができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、フォーク金具は反転スライド軸の一端にのみ設けてもよい。また、台車には、台車を位置固定するロック機構を設けることができ、この場合、例えばレールの反転作業中には、ロック機構によって台車を固定可能である。
そして、台車の前輪を転動させるモータを設けて、そのモータの駆動力によって台車を移動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10:可搬式レール反転装置、11:レール、12:ウェブ、13:フォーク金具、14:台車、15、16:ガイドレール、17:移動架台、18:昇降手段、19:ベース架台、20:水平軸、22:傾動架台、23:軸受、24:反転スライド軸、25:回転駆動手段、26:傾動角制限手段、28、29:前輪、30、31:後輪、32:把持パイプ、33:ライト点灯部、34:警告灯、36:本体フレーム、37:スライドブロック、38:昇降モータ、39:門形支持部材、40:水平プレート、41:チェーンカバー、42:駆動スプロケット、43:チェーン、44、45:ジャッキ、46:可動ロッド、47:入力軸、48:従動スプロケット、49:動力伝達ロッド、50:制御盤、51:上限センサ、51a:下限センサ、52:ガイドロッド、53:筒部材、54:支持台、55:本体昇降フレーム、57:第1のスプロケット、58:駆動モータ、59:第2のスプロケット、60:チェーン、60a:チェーンカバー、61:回転筒部材、61a:ボールスプラインナット、62:ラチェット、63:ラチェット歯車、64:モータシリンダ、65:ラック、66:固定部材、67:ベアリング機構、68:固定部材、69、69a:位置検出センサ、70:バネ部材、71、72:ストッパーロッド、75:支持部材、90:可搬式レール反転装置、91:昇降手段、92:昇降プレート、93:移動架台、94:傾動架台、95:軸受、96:傾動角制限手段、96a:作業者、97:ベースプレート、98:軸受、99:弾性部材、100:支持ロッド、101:スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平状態で載置されたレールのウェブにその端部から二股状のフォーク金具を装着し、該フォーク金具を回転して前記レールを回転するレール反転装置であって、
前記レールに対して直交する方向に移動可能な台車と、
前記台車上に、該台車の進行方向に沿って設けられた対となるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動可能な移動架台と、
前記移動架台に昇降手段を介して上下動可能に設けられたベース架台と、
前記ベース架台に水平軸を介して回動可能に取り付けられた傾動架台と、
前記傾動架台に軸受を介して取り付けられ、一端又は両端に前記フォーク金具が設けられた、前記ガイドレールに直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸と、
前記傾動架台に取り付けられて、前記反転スライド軸を回転させる回転駆動手段と、
前記傾動架台の回動角度を制限する傾動角制限手段とを有することを特徴とする可搬式レール反転装置。
【請求項2】
請求項1記載の可搬式レール反転装置において、前記傾動架台は、一端部が該傾動架台に、他端部が前記ベース架台にそれぞれ固定されたバネ部材によって、前記フォーク金具が前記レールに未装着の状態で、前記ベース架台に対して所定角度位置に保たれることを特徴とする可搬式レール反転装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の可搬式レール反転装置において、前記回転駆動手段は、出力軸に第1のスプロケットが取り付けられた駆動モータと、前記反転スライド軸に固定された第2のスプロケットと、該第1、第2のスプロケットに掛け渡されたチェーンとを備えることを特徴とする可搬式レール反転装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の可搬式レール反転装置において、前記移動架台には、前記ベース架台の昇降動作をガイドするガイドロッドが設けられ、
前記昇降手段は、前記ベース架台を支持する可動ロッド、及び回転により該可動ロッドを昇降する入力軸を備える対となるジャッキと、昇降モータとを有し、該対となるジャッキの各入力軸は、動力伝達ロッドによって連結され、一方の該入力軸は、前記昇降モータの駆動によって回転すると共に、前記動力伝達ロッドを介して他方の該入力軸を回転することを特徴とする可搬式レール反転装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の可搬式レール反転装置において、前記台車には、警告灯が設けられていることを特徴とする可搬式レール反転装置。
【請求項6】
水平状態で載置されたレールのウェブにその端部から二股状のフォーク金具を装着し、該フォーク金具を回転して前記レールを回転するレール反転装置であって、
前記レールに対して直交する方向に移動可能な台車と、
前記台車上に設けられ、昇降手段によって上下動される昇降プレートと、
前記昇降プレート上に、該台車の進行方向に沿って設けられた対となるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動可能な移動架台と、
前記移動架台に水平軸を介して回動可能に取り付けられた傾動架台と、
前記傾動架台に軸受を介して取り付けられ、一端又は両端に前記フォーク金具が設けられた、前記ガイドレールに直交する軸心方向にスライド可能な反転スライド軸と、
前記傾動架台に取り付けられて、前記反転スライド軸を回転させる回転駆動手段と、
前記傾動架台の回動角度を制限する傾動角制限手段とを有することを特徴とする可搬式レール反転装置。
【請求項7】
請求項6記載の可搬式レール反転装置において、前記傾動角制限手段は、前記傾動架台と前記移動架台を連結する複数の弾性部材を備え、前記傾動架台を、前記フォーク金具が前記レールに未装着の状態で、前記移動架台に対して所定角度位置に保つことを特徴とする可搬式レール反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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