可搬式作業台
【課題】作業台の横転時に作業台本体及び手掛かり棒の損傷を防止ないし軽減できる可搬式作業台を提供する。
【解決手段】天板1の両端に脚体2,2が設けられ、脚体2には天板1より上方に突出する手掛かり棒5が設けられた可搬式作業台において、手掛かり棒5は、脚柱2aの上端部にスペーサ金具7を介して固定される取付金具6に、天板1より上方に突出する起立姿勢と、脚柱2aに沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能であり、スペーサ金具7は、手掛かり棒5が起立姿勢で使用される時の取付金具6にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6より弱い強度に形成されて、作業台の横転時は破損して、手掛かり棒5及び作業台本体Tが受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなる。
【解決手段】天板1の両端に脚体2,2が設けられ、脚体2には天板1より上方に突出する手掛かり棒5が設けられた可搬式作業台において、手掛かり棒5は、脚柱2aの上端部にスペーサ金具7を介して固定される取付金具6に、天板1より上方に突出する起立姿勢と、脚柱2aに沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能であり、スペーサ金具7は、手掛かり棒5が起立姿勢で使用される時の取付金具6にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6より弱い強度に形成されて、作業台の横転時は破損して、手掛かり棒5及び作業台本体Tが受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建設現場等において天井の内装仕上げや天井内の配線、配管等の比較的高い場所で作業を行う時に使用する作業台に関するもので、特に、天板の前後両端に脚体が折り畳み可能に設けられ、各脚体は左右一対の脚柱と両脚柱間に横架された踏桟とからなり、脚体には天板より上方に突出する手掛かり棒が設けられた昇降補助用の可搬式の作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の作業台として、下記特許文献1に記載されたものがある。この作業台において、手掛かり棒は、脚柱の上端部に楔状のブラケットを介して固定される取付金具に、天板より上方に突出する起立姿勢と、脚柱に沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−129744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているような作業台では、手掛かり棒は楔状のブラケットを介して取付金具に取り付けられているが、このブラケットは、取付金具と同等の機械的強度を有する頑丈なブラケットであることから、作業台が例えば地面上に横転した時には、先ず手掛かり棒が衝撃力を受け、その衝撃力はブラケットを介して作業台本体にそのまま伝わることになる。そうすると、横転時の衝撃力をまともに受ける手掛かり棒はその衝撃力によって破損し、その衝撃力は作業台本体側にもそのまま及ぶため、作業台本体の方も破損することになって修理コストが非常に高くつく、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みて、作業台が横転した時に作業台本体及び手掛かり棒の損傷を防止ないし軽減できる可搬式作業台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の可搬式作業台は、天板1の前後両端に脚体2,2が折り畳み可能に設けられ、各脚体2には左右一対の脚柱2a,2aと両脚柱2a,2a間に横架された踏桟2bとからなり、脚体2には天板1より上方に突出する手掛かり棒5が設けられた可搬式作業台において、手掛かり棒5は、脚柱2aの上端部にスペーサ金具7を介して固定される取付金具6に、天板1より上方に突出する起立姿勢と、脚柱2aに沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能となっており、前記スペーサ金具7は、手掛かり棒5が起立姿勢で使用される時の取付金具6にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6より弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒5及び作業台本体Tが受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1に記載の可搬式作業台において、手掛かり棒5の枢支軸11は、手掛かり棒5を左右方向に貫通すると共に取付金具6の両側板6a,6bを貫通していて、取付金具6の両側板6a,6bのうち脚柱2aと隣接するがわの側板6aと反対側の側板6bの外側に突出する枢支軸11の外端部には、作業台が横転した時に枢支軸11が受ける衝撃を吸収するためのクッション部材17が取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の作業台によれば、スペーサ金具7は、手掛かり棒5を起立姿勢で使用する時の取付金具6にかかる荷重には十分耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6より弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒5及び作業台本体Tが受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなるため、作業台が例えば地面上に横転すると、地面に対向する側のスペーサ金具7は、取付金具6が地面に衝突する時に屈曲変形して潰れるなどして自己破損し、このスペーサ金具7の自己破損によって、地面に直接衝突する取付金具6及びこれに取り付けられている手掛かり棒5は、地面との衝撃を緩和されて、損傷が防止され、ないしその損傷が軽減され、またスペーサ金具7の自己破損により作業台本体Tが受ける衝撃も緩和されて、作業台本体Tの損傷も防止されないし軽減されることになる。従ってまた、スペーサ金具7が破損しても、スペーサ金具7のみを新しいものと取り替えれば、手掛かり棒5及び作業台本体Tはそのまま使用できるから、きわめて経済的である。なお、スペーサ金具7が取付金具6に溶接などで一体に形成されている場合には、スペーサ金具7と取付金具6とを新しいものに取り替えればよい。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、角筒状手掛かり棒5の下端部5aを左右方向に貫通すると共に、取付金具6の左右両側壁6a,6bを貫通していて、この取付金具6の左右両側壁6a,6bのうち脚柱2aと隣接する側と反対側の側壁6aを貫通する枢支軸11の外端部にクッション部材17が取り付けてあるから、このクッション部材17により、作業台本体Tが横転した時に作業台本体T及び手掛かり棒5が受ける衝撃を緩和すると共に、作業台本体T及び手掛かり棒5の破損を有効に防止ないし軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る作業台の正面図である。
【図2】同作業台の側面図である。
【図3】手掛かり棒が起立姿勢に固定されている状態を示す斜視図である。
【図4】手掛かり棒が折畳姿勢に固定されている状態を示す斜視図である。
【図5】取付金具による手掛かり棒下端部の取付部分の拡大側面図である。
【図6】取付金具による手掛かり棒下端部の取付部分の拡大正面図である。
【図7】(a) はロックピンをロックした状態を示す平面図、(b) はロックピンをロック解除した状態を示す平面図である。
【図8】(a) はスペーサ金具を取付金具に取り付ける方法を示す正面図、(b) はスペーサ金具を取付金具に取り付けた状態の正面図である。
【図9】(a) は図8の(a) のX−X線断面図、(b) は図8の(a) のY−Y線断面図、(c) は(a) のZ−Z線拡大断面図である。
【図10】(a) は手掛かり棒が折畳位置に固定された状態の作業台の側面図、(b) は同作業台が横転する状態を示す側面図である。
【図11】(a) は図10の(a) の矢印Wで示す部分の拡大図、(b) は作業台が横転した時の(a) の状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1及び図2に示す作業台において、Tは作業台本体で、天板1の左右両端に、梯子状の脚体2,2を、回転金具3を介して、図示はしないが、天板1下面に平行に沿うように折り畳んだ閉脚状態と、図1に示すような下広がり状に傾斜して起立した開脚状態との間で開閉可能に設けてなるもので、天板1と各脚体2との間には途中に屈曲自在なステイ4が介装されている。各脚体2は、図2に示すように下広がり状に配置された左右一対の脚柱2a,2aと、両脚柱2a,2a間に複数段に横架した踏桟2bとからなるもので、各脚柱2aの上端部にスペーサ金具を介して固定される取付金具に、手掛かり棒5が、天板より上方に突出する起立姿勢と、脚柱に沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されている。
【0012】
取付金具6は、図2〜図5に示すように脚柱2aの上端部にスペーサ金具7を介して固定されている。この場合、脚体2を形成する左右の脚柱2a,2aは下広がり状に配置されて、各脚柱2aが一定角度傾斜しているため、図5に示すように、所定角度のスペーサ金具7を介して取付金具6を脚柱2aに対し所定角度傾斜させて取り付けると共に、手掛かり棒5の下端部5aをその上方部に対し所定角度傾斜させた状態に形成することによって、手掛かり棒5を天板1より上方に起立姿勢で突出伸展できるようにしている。
【0013】
この取付金具6は、図3〜図6に示すように、両側板6a,6bと背面板6cとにより側面視が略くの字状を成して上下方向に延びる溝部8を形成するように脚柱2aにスペーサ金具7を介して取り付けられている。その溝部8を形成する片方の側板6a(脚柱2aに隣接する方の側板6a)の上端部及び下端部にピン先端側ロック孔9a,9bが設けられ、反対側の側板6b(脚柱2aから遠い方の側板6b)の上端部は一部切除されて(その切除部をSaで示す)、前記ロック孔9aと対向する部位に半円状のピン係合部10aが形成され、同側板6bの上端部も同様に一部切除されて(その切除部をSbで示す)、前記ロック孔9bと対向する部位に半円状のピン係合部10bが形成されている。
【0014】
スペーサ金具7は、手掛かり棒5が起立姿勢で使用される時の取付金具6にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6よりも弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒5及び作業台が受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなるもので、例えば、図5及び図8(a) ,(b) に示すように、取付金具6を形成する鋼板(例えば厚さ2.3mm)よりも薄い鋼板(例えば厚さ1.6mm)を折り曲げて、背板部7aと、上板部7bと、下板部7cと、上板部7bから下向きに突出する上フランジ7dと、下板部7cから下向きに突出する下フランジ7eとを形成している。勿論、この実施形態に限定されるものではなく、例えば、スペーサ金具7を形成する鋼板に穴加工やディンプル加工あるいは鋼板の一部に破損しやすい箇所を設けたり、薄肉鋼板での絞り加工やスペーサ金具7を樹脂製とすることも考えられる。
【0015】
このスペーサ金具7は、図8の(a) ,(b) に示すように取付金具6の片方の側板6aに取り付けられた後、図5に示すように脚体2の脚柱2a上端部に取り付けられる。先ず、このスペーサ金具7を取付金具6に取り付けるにあたっては、図8の(a) に示すように、スペーサ金具7の上下フランジ7d,7eには夫々複数のナット31をカシメによって取り付け、取付金具6の側板6aには図9の(a) に示すようにナット31と対応する箇所にサラ頭ボルト挿通孔32を設け、また取付金具6の側板6bには図9の(b) に示すように六角レンチ挿入孔33を所要箇所に設けておく。そして、図8の(a) に示すように、スペーサ金具7の上下フランジ7d,7eを取付金具6の側板6aに当接させ、取付金具6の側板6bのレンチ挿入孔33から挿入した六角レンチ30によって、六角孔付きサラボルト34を側板6aのサラ頭ボルト挿通孔32からスペーサ金具7の上下フランジ7d,7eのカシメナット31にねじ込むことにより、図8の(b) に示すようにスペーサ金具7を取付金具6の側板6aに取り付けることができる。図8及び図9において、35は枢支軸貫通孔である。なお、固定手段としてサラ頭ボルトに限定されるものではなく、ボルトその他の固定手段でもよい。スペーサ金具7と取付金具6とを溶接などの固定手段で一体に固定するようにしてもよい。
【0016】
こうして取付金具6の側板6aに取り付けたスペーサ金具7を、脚柱2aの上端部に取り付けるには、図5に示すように、スペーサ金具7の背板部7aの所要箇所にナット22を取り付けておいて、脚柱2aの内側から、脚柱2a、回転金具3及びスペーサ金具7を貫通するボルト挿通孔20にボルト21を通して、スペーサ金具7のナット22にねじ込むことにより、スペーサ金具7を脚柱2aに取り付けることができる。
【0017】
前記取付金具6に形成される溝部8には、上下方向中央部に手掛かり棒5の下端5oが枢支軸11によって上下方向回転可能に枢着され、この溝部8の上半部Aには、天板1の上方に起立姿勢で突出する手掛かり棒5の下端部5aが図3、図5及び図6に示すように嵌合され、溝部8の下半部Bには、図4の実線図示及び図6の仮想線図示のように起立姿勢から反転して脚柱2a沿いに折り畳まれた手掛かり棒5の下端部5aが嵌合されるようになっている。
【0018】
手掛かり棒5の下端部5aには、図3〜図7に示すように、ピン基端側に略U字状の把手23を形成したロックピン12が、角筒状の手掛かり棒5を形成する左右側壁m,nにスライド可能に貫通され、このロックピン12は、手掛かり棒5との間に介装されたコイルバネ14によって、ピン先端部12aが取付金具側板6aの上端部及び下端部のピン先端側ロック孔9a,9bに突入する方向に付勢されている。従って、手掛かり棒5の下端部5aが図3に示すように溝部8の上半部Aに嵌合した状態で、ピン先端部12aを側板6aの上端部のピン先端側ロック孔9aに突入させることによって手掛かり棒5を起立姿勢に固定し、またコイルバネ14の付勢力に抗して把手23を手前側へ引っ張ることによりロックピン12をロック解除し、この状態で手掛かり棒5を下方へ回転して下端部5aを溝部8の下半部Bに嵌合し、ピン先端部12aを側板6aの下端部のピン先端側ロック孔9bに突入することによって手掛かり棒5を折畳姿勢に固定することができる。
【0019】
また、図3、図4、図6及び図7に示すように、ロックピン12の基端側にあるU字状把手23の先端部12bが突入するピン基端側ロック孔24a,25aを形成した取付片24,25が、取付金具6の溝部8を形成する側板6bの上下両端側に取り付けてある。この場合、上下の取付片24,25は、図7から分かるように、側板6bと面一の状態で背面板6cの上下端部に夫々例えば溶接によって固着されている。
【0020】
従って、手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の上半部Aに嵌合した状態で、ピン先端部12aを側板6a上端部のピン先端側ロック孔9aに突入すると共に、U字状把手23の先端部12bを側板6bの上端部側のピン基端側ロック孔24aに突入することにより、手掛かり棒5を起立姿勢の使用状態で安定良く堅固に固定することができる。また手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の下半部Bに嵌合した状態で、ピン先端部12aを側板6a下端部のピン先端側ロック孔9bに突入すると共に、U字状把手23の先端部12bを側板6bの下端部側のピン基端側ロック孔25aに突入することによって、手掛かり棒5を起立姿勢の使用状態で安定良く堅固に固定することができる。
【0021】
尚、取付金具6の溝部8を形成する側板6bの上端部は一部分切除されて、その切除部Saには、手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の上半部Aに嵌合した時にロックピン12の基端側が係合する半円状のピン係合部10aが形成され、また同側板6bの上端部も同じ様に一部分切除されて、その切除部Sbには、手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の下半部Bに嵌合した時にロックピン12の基端側が係合する半円状のピン係合部10bが形成されている。上端側切除部Saは、溝部8の上半部Aに嵌合した手掛かり棒5を下方へ回転させる時に、手掛かり棒5と共に旋回移動するロックピン12の基端部側が側板6bの上端部からスムーズに抜け出るようにするものであり、下端側切除部Sbは、溝部8の下半部Bに嵌合した手掛かり棒5を上方へ回転させる時に、ロックピン12の基端部側が側板6bの下端部からスムーズに抜け出るようにするものである。
【0022】
前記コイルバネ14は、図7の(a) ,(b) に示すように、ロックピン12に嵌め込まれて、ロックピン12の先端側に取り付けられた固定ピン26と、手掛かり棒5の側壁mとの間に介装されたもので、このばね14の付勢力によって、ロックピン12を取付金具6のピン先端側ロック孔9a,9bに突入する方向に付勢している。
【0023】
また、手掛かり棒5の下端5oを取付金具6に上下方向回転可能に枢着する枢支軸11はボルトからなるもので、図5に示すように、角筒状手掛かり棒5の左右両側壁m,nを貫通すると共に、取付金具6の両側板6a,6bを貫通していて(両側板6a,6bの貫通孔を図8,図9に35で示す)、この取付金具6の両側板6a,6bのうちの脚柱2aに隣接する側の側板6aと反対側の側板6bの外側に突出するボルト頭部11aには合成ゴムなどの弾性材料からなるクッション部材17が、この枢支軸11の外端部を被うように取り付けられている。このクッション部材17を枢支軸11の外端部にこれを被うように取り付けたことにより、作業台が横転した時に作業台が受ける衝撃を緩和すると共に、作業台の破損を防止することができる。脚柱2aと隣接するがわの側板6aから突出する枢支軸11の先端部にはナット18が螺着されている。
【0024】
次に、上述した手掛かり棒5の使用方法について説明する。
先ず、図4に示すように手掛かり棒5が取付金具6の溝部8の下半部Bに嵌合してロックピン12がロックされた状態から、コイルバネ14の付勢力に抗してロックピン12の把手23を手前側へ引っ張って、ピン先端部12aを側板6a下端部のピン先端側ロック孔9bから引き抜き且つ把手23の先端部12bをピン基端側ロック孔25aから引き抜いて折畳姿勢での手掛かり棒5のロックを解除し、図7の(b) に示すようなロック解除状態で枢支軸11を中心に手掛かり棒5を上方に回転させる。
【0025】
上記のようにロック解除状態で手掛かり棒5を枢支軸11を中心に上方への回転させてその下端部5aを溝部8の上半部Aに嵌合した後、それまで引っ張っていたロックピン12の把手23を緩めながら、ピン先端部12aを側板6aの上端部のピン先端側ロック孔9aに突入させると共に、把手23の先端部12bを側板6bの上端部側のピン基端側ロック孔24aに突入させることによって、手掛かり棒5を起立姿勢に固定する。この状態を図3及び図6に示す。
【0026】
手掛かり棒5を収納する時は、図3及び図6の実線図示の状態から、コイルバネ14の付勢力に抗してロックピン12の把手23を手前側へ引っ張って、ピン先端部12aを側板6a上端部のピン先端側ロック孔9aから引き抜き且つ把手23の先端部12bをピン基端側ロック孔24aから引き抜いて起立姿勢での手掛かり棒5のロックを解除し、このロック解除状態で、枢支軸11を中心に手掛かり棒5を下方に回転させて、その下端部5aを溝部8の下半部Bに嵌合し、ロックピン12の把手23を緩めながら、ピン先端部12aを側板6aの下端部のピン先端側ロック孔9bに突入させると共に、把手23の先端部12bを側板6bの下端部側のピン基端側ロック孔25aに突入させることによって、手掛かり棒5を起立姿勢に固定する。
【0027】
図10の(a) は各脚体2の脚柱2aに設けられた手掛かり棒5が折畳姿勢に固定された状態にある作業台を示し、(b) は作業台が(a) の状態から横転する状態を示し、図11の(a) は図10の(a) の矢印Wで示す部分の拡大図、(b) は作業台が横転した時の(a) の状態を示している。図10の(b) に示すように作業台が横転すると、図11の(b) に示すように、地面GLに対向する側のスペーサ金具7は、これに取り付けられた取付金具6よりも強度が弱いため、この取付金具6が地面GLに衝突する時に上板部7b及び下板部7cが夫々屈曲変形して潰れる(あるいは潰れて切断するようなこともある)、即ち自己破損することになる。
【0028】
このようなスペーサ金具7の自己破損により、地面GLに直接衝突する取付金具6及びこれに下端部が取り付けてある手掛かり棒5は、地面GLとの衝撃を緩和されて、損傷を免れ、あるいはその損傷を極力軽減されることになる。また、このスペーサ金具7の自己破損によって、作業台本体Tが受ける衝撃も緩和されて、作業台本体Tの損傷も免れ、あるいはその損傷を極力軽減されることになる。
【0029】
またこの時は、取付金具6の両側板6a,6bのうち地面GLに直接衝突する側の側板6bの外側に突出するボルト頭部11aにはクッション部材17が取り付けてあるから、このクッション部材17によって、取付金具6が受ける衝撃が吸収緩和され、それにより手掛かり棒5及び作業台本体Tの損傷を有効に防止ないし軽減することができる。
【0030】
上記のようにスペーサ金具7が潰れて自己破損した時は、図8に示すようにスペーサ金具7の上下フランジ7d,7eを取付金具6の側板6aに取り付けているボルト34を抜き取り、また図5に示すようにスペーサ金具7の背板部7aを脚柱2a側に固定しているボルト21を抜き取って、新しいスペーサ金具7を取り付けることにより、手掛かり棒5を簡単に付け直すことができる。従って、スペーサ金具7が破損しても、スペーサ金具7のみを新しいものと取り替えれば、手掛かり棒5及び作業台本体Tはそのまま使用できるから、きわめて経済的である。またスペーサ金具7と取付金具6とが溶接などによって一体に固定されている場合には、スペーサ金具7とこれと一体の取付金具6とを作業台本体Tと手掛かり棒5とから取り外し、新しいものと取り替えればよい。
【符号の説明】
【0031】
T 作業台本体
1 天板
2 脚体
2a 脚柱
5 手掛かり棒
5a 手掛かり棒の下端部
6 取付金具
6a,6b 取付金具の側板
7 スペーサ金具
7a スペーサ金具の背板部
7b スペーサ金具の上板部
7c スペーサ金具の下板部
7d,7e スペーサ金具の上下フランジ部
11 枢支軸
17 クッション部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建設現場等において天井の内装仕上げや天井内の配線、配管等の比較的高い場所で作業を行う時に使用する作業台に関するもので、特に、天板の前後両端に脚体が折り畳み可能に設けられ、各脚体は左右一対の脚柱と両脚柱間に横架された踏桟とからなり、脚体には天板より上方に突出する手掛かり棒が設けられた昇降補助用の可搬式の作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の作業台として、下記特許文献1に記載されたものがある。この作業台において、手掛かり棒は、脚柱の上端部に楔状のブラケットを介して固定される取付金具に、天板より上方に突出する起立姿勢と、脚柱に沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−129744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているような作業台では、手掛かり棒は楔状のブラケットを介して取付金具に取り付けられているが、このブラケットは、取付金具と同等の機械的強度を有する頑丈なブラケットであることから、作業台が例えば地面上に横転した時には、先ず手掛かり棒が衝撃力を受け、その衝撃力はブラケットを介して作業台本体にそのまま伝わることになる。そうすると、横転時の衝撃力をまともに受ける手掛かり棒はその衝撃力によって破損し、その衝撃力は作業台本体側にもそのまま及ぶため、作業台本体の方も破損することになって修理コストが非常に高くつく、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みて、作業台が横転した時に作業台本体及び手掛かり棒の損傷を防止ないし軽減できる可搬式作業台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の可搬式作業台は、天板1の前後両端に脚体2,2が折り畳み可能に設けられ、各脚体2には左右一対の脚柱2a,2aと両脚柱2a,2a間に横架された踏桟2bとからなり、脚体2には天板1より上方に突出する手掛かり棒5が設けられた可搬式作業台において、手掛かり棒5は、脚柱2aの上端部にスペーサ金具7を介して固定される取付金具6に、天板1より上方に突出する起立姿勢と、脚柱2aに沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能となっており、前記スペーサ金具7は、手掛かり棒5が起立姿勢で使用される時の取付金具6にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6より弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒5及び作業台本体Tが受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1に記載の可搬式作業台において、手掛かり棒5の枢支軸11は、手掛かり棒5を左右方向に貫通すると共に取付金具6の両側板6a,6bを貫通していて、取付金具6の両側板6a,6bのうち脚柱2aと隣接するがわの側板6aと反対側の側板6bの外側に突出する枢支軸11の外端部には、作業台が横転した時に枢支軸11が受ける衝撃を吸収するためのクッション部材17が取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の作業台によれば、スペーサ金具7は、手掛かり棒5を起立姿勢で使用する時の取付金具6にかかる荷重には十分耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6より弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒5及び作業台本体Tが受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなるため、作業台が例えば地面上に横転すると、地面に対向する側のスペーサ金具7は、取付金具6が地面に衝突する時に屈曲変形して潰れるなどして自己破損し、このスペーサ金具7の自己破損によって、地面に直接衝突する取付金具6及びこれに取り付けられている手掛かり棒5は、地面との衝撃を緩和されて、損傷が防止され、ないしその損傷が軽減され、またスペーサ金具7の自己破損により作業台本体Tが受ける衝撃も緩和されて、作業台本体Tの損傷も防止されないし軽減されることになる。従ってまた、スペーサ金具7が破損しても、スペーサ金具7のみを新しいものと取り替えれば、手掛かり棒5及び作業台本体Tはそのまま使用できるから、きわめて経済的である。なお、スペーサ金具7が取付金具6に溶接などで一体に形成されている場合には、スペーサ金具7と取付金具6とを新しいものに取り替えればよい。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、角筒状手掛かり棒5の下端部5aを左右方向に貫通すると共に、取付金具6の左右両側壁6a,6bを貫通していて、この取付金具6の左右両側壁6a,6bのうち脚柱2aと隣接する側と反対側の側壁6aを貫通する枢支軸11の外端部にクッション部材17が取り付けてあるから、このクッション部材17により、作業台本体Tが横転した時に作業台本体T及び手掛かり棒5が受ける衝撃を緩和すると共に、作業台本体T及び手掛かり棒5の破損を有効に防止ないし軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る作業台の正面図である。
【図2】同作業台の側面図である。
【図3】手掛かり棒が起立姿勢に固定されている状態を示す斜視図である。
【図4】手掛かり棒が折畳姿勢に固定されている状態を示す斜視図である。
【図5】取付金具による手掛かり棒下端部の取付部分の拡大側面図である。
【図6】取付金具による手掛かり棒下端部の取付部分の拡大正面図である。
【図7】(a) はロックピンをロックした状態を示す平面図、(b) はロックピンをロック解除した状態を示す平面図である。
【図8】(a) はスペーサ金具を取付金具に取り付ける方法を示す正面図、(b) はスペーサ金具を取付金具に取り付けた状態の正面図である。
【図9】(a) は図8の(a) のX−X線断面図、(b) は図8の(a) のY−Y線断面図、(c) は(a) のZ−Z線拡大断面図である。
【図10】(a) は手掛かり棒が折畳位置に固定された状態の作業台の側面図、(b) は同作業台が横転する状態を示す側面図である。
【図11】(a) は図10の(a) の矢印Wで示す部分の拡大図、(b) は作業台が横転した時の(a) の状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1及び図2に示す作業台において、Tは作業台本体で、天板1の左右両端に、梯子状の脚体2,2を、回転金具3を介して、図示はしないが、天板1下面に平行に沿うように折り畳んだ閉脚状態と、図1に示すような下広がり状に傾斜して起立した開脚状態との間で開閉可能に設けてなるもので、天板1と各脚体2との間には途中に屈曲自在なステイ4が介装されている。各脚体2は、図2に示すように下広がり状に配置された左右一対の脚柱2a,2aと、両脚柱2a,2a間に複数段に横架した踏桟2bとからなるもので、各脚柱2aの上端部にスペーサ金具を介して固定される取付金具に、手掛かり棒5が、天板より上方に突出する起立姿勢と、脚柱に沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されている。
【0012】
取付金具6は、図2〜図5に示すように脚柱2aの上端部にスペーサ金具7を介して固定されている。この場合、脚体2を形成する左右の脚柱2a,2aは下広がり状に配置されて、各脚柱2aが一定角度傾斜しているため、図5に示すように、所定角度のスペーサ金具7を介して取付金具6を脚柱2aに対し所定角度傾斜させて取り付けると共に、手掛かり棒5の下端部5aをその上方部に対し所定角度傾斜させた状態に形成することによって、手掛かり棒5を天板1より上方に起立姿勢で突出伸展できるようにしている。
【0013】
この取付金具6は、図3〜図6に示すように、両側板6a,6bと背面板6cとにより側面視が略くの字状を成して上下方向に延びる溝部8を形成するように脚柱2aにスペーサ金具7を介して取り付けられている。その溝部8を形成する片方の側板6a(脚柱2aに隣接する方の側板6a)の上端部及び下端部にピン先端側ロック孔9a,9bが設けられ、反対側の側板6b(脚柱2aから遠い方の側板6b)の上端部は一部切除されて(その切除部をSaで示す)、前記ロック孔9aと対向する部位に半円状のピン係合部10aが形成され、同側板6bの上端部も同様に一部切除されて(その切除部をSbで示す)、前記ロック孔9bと対向する部位に半円状のピン係合部10bが形成されている。
【0014】
スペーサ金具7は、手掛かり棒5が起立姿勢で使用される時の取付金具6にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具6よりも弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒5及び作業台が受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなるもので、例えば、図5及び図8(a) ,(b) に示すように、取付金具6を形成する鋼板(例えば厚さ2.3mm)よりも薄い鋼板(例えば厚さ1.6mm)を折り曲げて、背板部7aと、上板部7bと、下板部7cと、上板部7bから下向きに突出する上フランジ7dと、下板部7cから下向きに突出する下フランジ7eとを形成している。勿論、この実施形態に限定されるものではなく、例えば、スペーサ金具7を形成する鋼板に穴加工やディンプル加工あるいは鋼板の一部に破損しやすい箇所を設けたり、薄肉鋼板での絞り加工やスペーサ金具7を樹脂製とすることも考えられる。
【0015】
このスペーサ金具7は、図8の(a) ,(b) に示すように取付金具6の片方の側板6aに取り付けられた後、図5に示すように脚体2の脚柱2a上端部に取り付けられる。先ず、このスペーサ金具7を取付金具6に取り付けるにあたっては、図8の(a) に示すように、スペーサ金具7の上下フランジ7d,7eには夫々複数のナット31をカシメによって取り付け、取付金具6の側板6aには図9の(a) に示すようにナット31と対応する箇所にサラ頭ボルト挿通孔32を設け、また取付金具6の側板6bには図9の(b) に示すように六角レンチ挿入孔33を所要箇所に設けておく。そして、図8の(a) に示すように、スペーサ金具7の上下フランジ7d,7eを取付金具6の側板6aに当接させ、取付金具6の側板6bのレンチ挿入孔33から挿入した六角レンチ30によって、六角孔付きサラボルト34を側板6aのサラ頭ボルト挿通孔32からスペーサ金具7の上下フランジ7d,7eのカシメナット31にねじ込むことにより、図8の(b) に示すようにスペーサ金具7を取付金具6の側板6aに取り付けることができる。図8及び図9において、35は枢支軸貫通孔である。なお、固定手段としてサラ頭ボルトに限定されるものではなく、ボルトその他の固定手段でもよい。スペーサ金具7と取付金具6とを溶接などの固定手段で一体に固定するようにしてもよい。
【0016】
こうして取付金具6の側板6aに取り付けたスペーサ金具7を、脚柱2aの上端部に取り付けるには、図5に示すように、スペーサ金具7の背板部7aの所要箇所にナット22を取り付けておいて、脚柱2aの内側から、脚柱2a、回転金具3及びスペーサ金具7を貫通するボルト挿通孔20にボルト21を通して、スペーサ金具7のナット22にねじ込むことにより、スペーサ金具7を脚柱2aに取り付けることができる。
【0017】
前記取付金具6に形成される溝部8には、上下方向中央部に手掛かり棒5の下端5oが枢支軸11によって上下方向回転可能に枢着され、この溝部8の上半部Aには、天板1の上方に起立姿勢で突出する手掛かり棒5の下端部5aが図3、図5及び図6に示すように嵌合され、溝部8の下半部Bには、図4の実線図示及び図6の仮想線図示のように起立姿勢から反転して脚柱2a沿いに折り畳まれた手掛かり棒5の下端部5aが嵌合されるようになっている。
【0018】
手掛かり棒5の下端部5aには、図3〜図7に示すように、ピン基端側に略U字状の把手23を形成したロックピン12が、角筒状の手掛かり棒5を形成する左右側壁m,nにスライド可能に貫通され、このロックピン12は、手掛かり棒5との間に介装されたコイルバネ14によって、ピン先端部12aが取付金具側板6aの上端部及び下端部のピン先端側ロック孔9a,9bに突入する方向に付勢されている。従って、手掛かり棒5の下端部5aが図3に示すように溝部8の上半部Aに嵌合した状態で、ピン先端部12aを側板6aの上端部のピン先端側ロック孔9aに突入させることによって手掛かり棒5を起立姿勢に固定し、またコイルバネ14の付勢力に抗して把手23を手前側へ引っ張ることによりロックピン12をロック解除し、この状態で手掛かり棒5を下方へ回転して下端部5aを溝部8の下半部Bに嵌合し、ピン先端部12aを側板6aの下端部のピン先端側ロック孔9bに突入することによって手掛かり棒5を折畳姿勢に固定することができる。
【0019】
また、図3、図4、図6及び図7に示すように、ロックピン12の基端側にあるU字状把手23の先端部12bが突入するピン基端側ロック孔24a,25aを形成した取付片24,25が、取付金具6の溝部8を形成する側板6bの上下両端側に取り付けてある。この場合、上下の取付片24,25は、図7から分かるように、側板6bと面一の状態で背面板6cの上下端部に夫々例えば溶接によって固着されている。
【0020】
従って、手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の上半部Aに嵌合した状態で、ピン先端部12aを側板6a上端部のピン先端側ロック孔9aに突入すると共に、U字状把手23の先端部12bを側板6bの上端部側のピン基端側ロック孔24aに突入することにより、手掛かり棒5を起立姿勢の使用状態で安定良く堅固に固定することができる。また手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の下半部Bに嵌合した状態で、ピン先端部12aを側板6a下端部のピン先端側ロック孔9bに突入すると共に、U字状把手23の先端部12bを側板6bの下端部側のピン基端側ロック孔25aに突入することによって、手掛かり棒5を起立姿勢の使用状態で安定良く堅固に固定することができる。
【0021】
尚、取付金具6の溝部8を形成する側板6bの上端部は一部分切除されて、その切除部Saには、手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の上半部Aに嵌合した時にロックピン12の基端側が係合する半円状のピン係合部10aが形成され、また同側板6bの上端部も同じ様に一部分切除されて、その切除部Sbには、手掛かり棒5の下端部5aが溝部8の下半部Bに嵌合した時にロックピン12の基端側が係合する半円状のピン係合部10bが形成されている。上端側切除部Saは、溝部8の上半部Aに嵌合した手掛かり棒5を下方へ回転させる時に、手掛かり棒5と共に旋回移動するロックピン12の基端部側が側板6bの上端部からスムーズに抜け出るようにするものであり、下端側切除部Sbは、溝部8の下半部Bに嵌合した手掛かり棒5を上方へ回転させる時に、ロックピン12の基端部側が側板6bの下端部からスムーズに抜け出るようにするものである。
【0022】
前記コイルバネ14は、図7の(a) ,(b) に示すように、ロックピン12に嵌め込まれて、ロックピン12の先端側に取り付けられた固定ピン26と、手掛かり棒5の側壁mとの間に介装されたもので、このばね14の付勢力によって、ロックピン12を取付金具6のピン先端側ロック孔9a,9bに突入する方向に付勢している。
【0023】
また、手掛かり棒5の下端5oを取付金具6に上下方向回転可能に枢着する枢支軸11はボルトからなるもので、図5に示すように、角筒状手掛かり棒5の左右両側壁m,nを貫通すると共に、取付金具6の両側板6a,6bを貫通していて(両側板6a,6bの貫通孔を図8,図9に35で示す)、この取付金具6の両側板6a,6bのうちの脚柱2aに隣接する側の側板6aと反対側の側板6bの外側に突出するボルト頭部11aには合成ゴムなどの弾性材料からなるクッション部材17が、この枢支軸11の外端部を被うように取り付けられている。このクッション部材17を枢支軸11の外端部にこれを被うように取り付けたことにより、作業台が横転した時に作業台が受ける衝撃を緩和すると共に、作業台の破損を防止することができる。脚柱2aと隣接するがわの側板6aから突出する枢支軸11の先端部にはナット18が螺着されている。
【0024】
次に、上述した手掛かり棒5の使用方法について説明する。
先ず、図4に示すように手掛かり棒5が取付金具6の溝部8の下半部Bに嵌合してロックピン12がロックされた状態から、コイルバネ14の付勢力に抗してロックピン12の把手23を手前側へ引っ張って、ピン先端部12aを側板6a下端部のピン先端側ロック孔9bから引き抜き且つ把手23の先端部12bをピン基端側ロック孔25aから引き抜いて折畳姿勢での手掛かり棒5のロックを解除し、図7の(b) に示すようなロック解除状態で枢支軸11を中心に手掛かり棒5を上方に回転させる。
【0025】
上記のようにロック解除状態で手掛かり棒5を枢支軸11を中心に上方への回転させてその下端部5aを溝部8の上半部Aに嵌合した後、それまで引っ張っていたロックピン12の把手23を緩めながら、ピン先端部12aを側板6aの上端部のピン先端側ロック孔9aに突入させると共に、把手23の先端部12bを側板6bの上端部側のピン基端側ロック孔24aに突入させることによって、手掛かり棒5を起立姿勢に固定する。この状態を図3及び図6に示す。
【0026】
手掛かり棒5を収納する時は、図3及び図6の実線図示の状態から、コイルバネ14の付勢力に抗してロックピン12の把手23を手前側へ引っ張って、ピン先端部12aを側板6a上端部のピン先端側ロック孔9aから引き抜き且つ把手23の先端部12bをピン基端側ロック孔24aから引き抜いて起立姿勢での手掛かり棒5のロックを解除し、このロック解除状態で、枢支軸11を中心に手掛かり棒5を下方に回転させて、その下端部5aを溝部8の下半部Bに嵌合し、ロックピン12の把手23を緩めながら、ピン先端部12aを側板6aの下端部のピン先端側ロック孔9bに突入させると共に、把手23の先端部12bを側板6bの下端部側のピン基端側ロック孔25aに突入させることによって、手掛かり棒5を起立姿勢に固定する。
【0027】
図10の(a) は各脚体2の脚柱2aに設けられた手掛かり棒5が折畳姿勢に固定された状態にある作業台を示し、(b) は作業台が(a) の状態から横転する状態を示し、図11の(a) は図10の(a) の矢印Wで示す部分の拡大図、(b) は作業台が横転した時の(a) の状態を示している。図10の(b) に示すように作業台が横転すると、図11の(b) に示すように、地面GLに対向する側のスペーサ金具7は、これに取り付けられた取付金具6よりも強度が弱いため、この取付金具6が地面GLに衝突する時に上板部7b及び下板部7cが夫々屈曲変形して潰れる(あるいは潰れて切断するようなこともある)、即ち自己破損することになる。
【0028】
このようなスペーサ金具7の自己破損により、地面GLに直接衝突する取付金具6及びこれに下端部が取り付けてある手掛かり棒5は、地面GLとの衝撃を緩和されて、損傷を免れ、あるいはその損傷を極力軽減されることになる。また、このスペーサ金具7の自己破損によって、作業台本体Tが受ける衝撃も緩和されて、作業台本体Tの損傷も免れ、あるいはその損傷を極力軽減されることになる。
【0029】
またこの時は、取付金具6の両側板6a,6bのうち地面GLに直接衝突する側の側板6bの外側に突出するボルト頭部11aにはクッション部材17が取り付けてあるから、このクッション部材17によって、取付金具6が受ける衝撃が吸収緩和され、それにより手掛かり棒5及び作業台本体Tの損傷を有効に防止ないし軽減することができる。
【0030】
上記のようにスペーサ金具7が潰れて自己破損した時は、図8に示すようにスペーサ金具7の上下フランジ7d,7eを取付金具6の側板6aに取り付けているボルト34を抜き取り、また図5に示すようにスペーサ金具7の背板部7aを脚柱2a側に固定しているボルト21を抜き取って、新しいスペーサ金具7を取り付けることにより、手掛かり棒5を簡単に付け直すことができる。従って、スペーサ金具7が破損しても、スペーサ金具7のみを新しいものと取り替えれば、手掛かり棒5及び作業台本体Tはそのまま使用できるから、きわめて経済的である。またスペーサ金具7と取付金具6とが溶接などによって一体に固定されている場合には、スペーサ金具7とこれと一体の取付金具6とを作業台本体Tと手掛かり棒5とから取り外し、新しいものと取り替えればよい。
【符号の説明】
【0031】
T 作業台本体
1 天板
2 脚体
2a 脚柱
5 手掛かり棒
5a 手掛かり棒の下端部
6 取付金具
6a,6b 取付金具の側板
7 スペーサ金具
7a スペーサ金具の背板部
7b スペーサ金具の上板部
7c スペーサ金具の下板部
7d,7e スペーサ金具の上下フランジ部
11 枢支軸
17 クッション部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の前後両端に脚体が折り畳み可能に設けられ、各脚体は左右一対の脚柱と両脚柱間に横架した踏桟とからなり、脚体には天板より上方に突出する手掛かり棒が設けられた可搬式作業台において、手掛かり棒は、脚柱の上端部にスペーサ金具を介して固定される取付金具に、天板より上方に突出する起立姿勢と、脚柱に沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能となっており、前記スペーサ金具は、手掛かり棒が起立姿勢で使用される時の取付金具にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具より弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒及び作業台本体が受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなる可搬式作業台。
【請求項2】
手掛かり棒の枢支軸は、手掛かり棒を左右方向に貫通すると共に取付金具の両側板を貫通していて、取付金具の両側板のうち脚柱と隣接するがわの側板と反対側の側板の外側に突出する枢支軸の外端部には、作業台が横転した時に枢支軸が受ける衝撃を吸収するためのクッション部材が取り付けられている請求項1に記載の可搬式作業台。
【請求項1】
天板の前後両端に脚体が折り畳み可能に設けられ、各脚体は左右一対の脚柱と両脚柱間に横架した踏桟とからなり、脚体には天板より上方に突出する手掛かり棒が設けられた可搬式作業台において、手掛かり棒は、脚柱の上端部にスペーサ金具を介して固定される取付金具に、天板より上方に突出する起立姿勢と、脚柱に沿って折り畳まれる折畳姿勢とに姿勢変更可能に枢着されると共に、起立姿勢及び折畳姿勢で夫々固定可能となっており、前記スペーサ金具は、手掛かり棒が起立姿勢で使用される時の取付金具にかかる荷重には十分に耐えるだけの強度を有するが、積極的に取付金具より弱い強度に形成されていて、作業台が横転した時には破損して、手掛かり棒及び作業台本体が受ける衝撃を緩和する自己破損部材からなる可搬式作業台。
【請求項2】
手掛かり棒の枢支軸は、手掛かり棒を左右方向に貫通すると共に取付金具の両側板を貫通していて、取付金具の両側板のうち脚柱と隣接するがわの側板と反対側の側板の外側に突出する枢支軸の外端部には、作業台が横転した時に枢支軸が受ける衝撃を吸収するためのクッション部材が取り付けられている請求項1に記載の可搬式作業台。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−58248(P2011−58248A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208613(P2009−208613)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000101662)アルインコ株式会社 (218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000101662)アルインコ株式会社 (218)
【Fターム(参考)】
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