説明

可撓セグメント

【課題】 地中に埋設される上水、下水、その他の管路を含む埋設管に適用可能であり、管路の不等沈下による曲げ、ねじれ等の応力および変位や管路の地震時に発生する曲げねじれ等の応力および変位を吸収し、埋設された管路の安全を確保する。
【解決手段】 一対の主リング2,2と、主リング2,2の間に配置されたゴムリング3とを有し、ゴムリング3は、基端側上面に周方向溝10を設けたフランジ部7と、これらフランジ部間にあって断面角形状に突出し内面に周方向凹部9を形成した中央部8とを備え、ゴムリング8は、各フランジ部7の周方向溝10に主リング2の主桁5bを嵌合した状態でフランジ部7を主リング2に固定手段16により固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド、ボックスカバート、沈埋函等の地下埋設管路に用いられる可撓セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されるボックスカバートやトンネルにおいては、地下埋設管路が地層の境目や地盤急変部における不等沈下や地震時に発生する曲げねじれにより漏水や破損を生じさせないように、管路と管路との間に可撓セグメントを配置している。
【0003】
この種の可撓セグメントは、一対の主リングと、主リングの間に配置されたゴムリングを有する。ゴムリングは、一方のフランジ部から他方のフランジ部まで同一厚さであり、フランジ部を主リングに固定手段により固着される。
【0004】
可撓セグメントは、一方の主リングを一方の管路に連結し、他方の主リングを他方の管路に連結することにより管路と管路の間に組み込まれ、管路と管路の間に配置されたゴムリングの可撓性により管路の沈下等により発生する応力および変位を吸収することで管路の漏水や破損を防ぐようにしている。
【0005】
しかるに、上記可撓セグメントは、ゴムリングがフランジ部からフランジ部まで同一厚さであるので、埋設した管路が地層の境目や地盤急変部における不等沈下や地震時に発生する曲げねじれにより変位を生じた時、ゴムリングが管路の変位に追従できず、埋設した管路の安全性を確保できないという問題をもたらす。
【特許文献1】特開平9−137694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、埋設した管路と管路の間に配置され、管路の沈下や地震時に発生する曲げねじれ等の応力および変位を吸収できる可撓セグメントを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の可撓セグメントは、一対の主リングと、主リングの間に配置されたゴムリングとを有し、ゴムリングは、基端側上面に周方向溝を設けたフランジ部と、これらフランジ部間にあって断面角形状に突出し内面に周方向凹部を形成した中央部とを備え、ゴムリングは、各フランジ部の周方向溝に主リングの主桁を嵌合した状態でフランジ部を主リングに固定手段により固着されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ゴムリングが、フランジ部および中央部に薄肉部分を有するので、管路に偏心や伸縮が生じた場合、ゴムリングが薄肉部分を枢軸としたリンク構造を形成することにより、ゴムリングを大きく変形させることなく管路に追従して変形させることができ、管路の沈下や地震時に発生する曲げねじれ等の応力および変位を吸収し、管路の漏水や破損を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の好ましい実施の形態の可撓セグメントの断面図を示す。この可撓セグメント1は、、一対の主リング2,2と、主リング2,2の間に配置されたゴムリング3と有する。
【0010】
上記主リング2は、図1に示すように、外板4と、外板4の両端から半径方向内方に延びる主桁5a.5bと、内側主桁5bから外板4に平行に延びる内板6とを有する。
【0011】
上記ゴムリング3は、図2に示すように、フランジ部7,7と、これらフランジ部7,7間にあって断面角形状に半径方向外方に突出する中央部8とを有する。中央部8は、その内面側に周方向に延びる凹陥部9を有する。図示の実施形態における凹陥部9は、最深部9aが断面円弧状をなす断面略V字形状に形成されている。これにより、中央部8は、頂部中央が薄肉部8aとされ、両肩部分に断面三角形状の肉盛り補強部8b,8bを形成している。フランジ部7,7の中央部8に連なる部位に環状溝10,10が形成されている。フランジ部7の環状溝10に主リング2の内側主桁5bの内端が嵌入する。フランジ部7,7の上面の環状溝10より外側の部位に周方向に延びる2条のシール用突部11,11が形成されている。
【0012】
また、前記ゴムリング3は、その内側部分に、一方のフランジ部7から中央部8の凹陥部9に沿い他方のフランジ部7まで延びる補強シート12が埋設されている。この補強シート12は好ましくは引張りに対し強靱な布が用いられ、前記フランジ部7,7の肉厚端部内で袋状に折り返されて、その折り返し端12a,12aは中央部8の肉盛り補強部8b,8b内に延び、引張り力に対する耐力の増強が図られている。
【0013】
さらに、可撓セグメント1は、主リング2の内側主桁5b,5bの間のゴムリング3の中央部8の半径方向外方に目地材13を配置し、目地材13を覆うように主リング2,2の外板4,4に跨がってスキンプレート14が配置されている。
【0014】
なお、図1において、符号15はゴムリング3のフランジ部7の下側に配置されたゴム押え板、16はゴムリング3を主リング2に固定するためのボルトナットの固定手段である。
【0015】
可撓セグメント1を組み立ては、一対の主リング2,2を主桁5bの間にゴムリング3の中央部8を通す間隔を置くように配置し、ゴムリング3をフランジ部7に設けた環状溝10が主リング2の主桁5bに対応するように配置し、ゴムリング3をフランジ部7に設けた環状溝10に主リング2の主桁5bが嵌入するように主リング2の方向に移動させ、
ゴムリング3のフランジ部7にゴム押え板15を配置し、固定手段16によりゴムリング
3をフランジ部7を主リング2の内板6に固定する。このときフランジ部7に設けたシール用突部11,11が内板6に対して押し潰されて主リング2とゴムリング3の接合面のシール性が確保される。
【0016】
ゴムリング3が主リング2,2に取り付けられたら、主リング2,2の間に目地材13を設置し、ゴムリング3の中央部8の外面をカバーし、主リング2,2の外板4,4に跨がってスキンプレート14を固着して目地材13を被覆する。
【0017】
次に作用を説明する。
【0018】
図3はゴムリング3の外面に土圧や地下水圧が加わった場合の荷重の分散を示す説明図であり、ゴムリング3の中央部8の外面に加わる荷重は、中央部8の左右の肩部の肉盛り補強部8b,8bを介してフランジ部6,6方向へ伝播し、フランジ部6,6を押し込む力として受ける。そのため、ゴムリング3のフランジ部6に大きな引っ張り力が作用することがなくゴムリング3は主リング2に確実に固定される。
【0019】
図4はゴムリング3の内面に流体の内圧が加わった場合の力の分散を示す説明図であり、ゴムリング3の中央部8の凹陥部9の内面でその内圧を受けるのでフランジ部6,6を引張る力となって受ける。この場合、ゴムリング3に補強シート12が内設されているので、ゴムリング3のフランジ部6に大きな引っ張り力が作用することがなく、ゴムリング3は主リング2に確実に固定される。
【0020】
可撓セグメント1のゴムリング3は、図5(A)に模式的に示すリンク機構とみなすことができる。すなわち、ゴムリング3は、中央部8の薄肉部8およびフランジ部7の環状溝10を枢軸とすると、中央部8の薄肉部8aを挟んた両側部分をリンク20,20とみなすことができる。
【0021】
ゴムリング3は、可撓セグメント1に伸縮する方向の力が作用するとき、中央部8の薄肉部8およびフランジ部7の環状溝10を枢軸とすることで、図5(B)に示す2点鎖線の位置から実線位置に移動する。すなわち、ゴムリング3は、伸縮する方向の力に対して大きく変形することなくスムーズに追従して変形できる。このことは、ゴムリング3に土圧や地下水圧等の外側から荷重が加えられたとき、その荷重をゴムリング3のフランジ部6に押し込む方向の力として受けるため、ゴムリング3のフランジ部6に大きな引っ張り力を加えることがない。
【0022】
また、ゴムリング3は、可撓セグメント1に偏心する方向の力が作用するとき、中央部8の薄肉部8およびフランジ部7の環状溝10を枢軸とすることで、図5(C)に示す2点鎖線の位置から実線位置に移動する。すなわち、ゴムリング3は、偏心する方向の力に対して大きく変形することなくスムーズに追従して変形できる。
【0023】
図6は本発明の可撓セグメント1をマンホール等の構成部材30と、シールド、ボックスカバート、沈埋函等の管路31との間にが配置した実施例を示す。この場合、可撓セグメント1は、コンクリートによるマンホール等の構成部材30およびシールド、ボックスカバート、沈埋函等の管路31の成形時に一体的になるように埋設される。この場合可撓セグメント1の上側および下側に目地材32,33が配置される。
【0024】
なお、本発明の可撓セグメント1は、シールド工法によるトンネルに設置する場合には、各可撓セグメント1はトンネルの標準セグメントと同様に円弧状に成形され、標準セグメントと同様にリング状に組み立てられる。この際、円弧状ゴムリング3は、隣接する円弧状ゴムリング3に接着接合され、全体としてる円形ゴムリングを構成する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、地中に埋設される上水、下水、その他の管路を含む埋設管に適用可能であり、管路の不等沈下による曲げ、ねじれ等の応力および変位や管路の地震時に発生する曲げねじれ等の応力および変位を吸収し、埋設された管路の安全を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の可撓セグメントを示す断面図である。
【図2】本発明の可撓セグメントに組み込まれるゴムリングを示す断面図である。
【図3】本発明の可撓セグメントのゴムリングに外圧が負荷された場合の荷重の分散状態を示す図である。
【図4】本発明の可撓セグメントのゴムリングに内圧が負荷された場合の荷重の分散状態を示す図である。
【図5】(A)〜(C)は本発明におけるゴムリングの作用原理を示す説明図である。
【図6】本発明の可撓セグメントの使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 可撓セグメント
2 主リング
3 ゴムリング
7 フランジ部
8 中央部
8a 薄肉部
5b 肉盛り補強部
9 凹陥部
10 周方向溝
11 シール用突部
12 補強シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主リングと、主リングの間に配置されたゴムリングとを有し、ゴムリングは、基端側上面に周方向溝を設けたフランジ部と、これらフランジ部間にあって断面角形状に突出し内面に周方向凹部を形成した中央部とを備え、ゴムリングは、各フランジ部の周方向溝に主リングの主桁を嵌合した状態でフランジ部を主リングに固定手段により固着されたことを特徴とする可撓セグメント。
【請求項2】
前記ゴムリングの中央部の上方に目地材を配置し、一対の主リングに跨ってスキンプレートを配置したことを特徴とする請求項1に記載の可撓セグメント。
【請求項3】
前記ゴムリングの中央部の凹部は断面略V字形状であり、中央部の肩部分が肉盛り補強部を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の可撓セグメント。
【請求項4】
前記ゴムリングに一方のフランジ部から他方のフランジ部まで連続して補強シートを埋設したことを特徴とする請求項1ないしし3のいずれか1項に記載の可撓セグメント。
【請求項5】
前記補強シートは、その端部を前記フランジ部内で袋状に折り返されて埋設されたことを特徴とする請求項4に記載の可撓セグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−28860(P2006−28860A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208243(P2004−208243)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000230526)日本ヴィクトリック株式会社 (39)
【Fターム(参考)】