説明

可撓性リングの供給装置

【課題】 可撓性リングを安定して供給できるような可撓性リングの供給装置を提供する。
【解決手段】 供給装置1は、可撓性リングWを多数収容する収容部2と、収容部2に一部が挿入される搬送部3とを有している。搬送部3は、可撓性リングWをベルト搬送するレール部41を有し、レール部41の搬送経路中には可撓性リングWを高さ方向に変形させる変形部材54を有する矯正部53が設けられている。また、矯正部53よりも搬出端側には、可撓性リングWを吊り下げてベルト46から離脱させる第一、第二待機部55,56が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性リングを供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動組立ラインを用いて製品を製造する工場においては、シール部材などの可撓性リングをワークに組み込むために、可撓性リングを1つずつ整列して供給する供給装置が用いられる。ここで、この種の供給装置は、可撓性リングを多数収容する回転ドラムを有し、回転ドラム内には、回転ドラムから滑落する可撓性リングを所定の向きで受け止める整列供給ガイドが挿入されている。整列供給ガイドには、可撓性リングを自重によって転動させる転動路が形成されており、可撓性リングが順番に回転ドラム外に供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。整列供給ガイドには、1つの可撓性リングのみが通過可能なトンネル部が形成されており、複数の可撓性リングが重なったままで転動した場合には、トンネル部に入る際に分離される。分離された可撓性リングのうちで、トンネル部を通過できなかった可撓性リングは整列供給ガイドの底部に形成された開口から落下して排除される。
【特許文献1】実開平6−25224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、可撓性リングがゴムなどから製造されている場合には、所定の剛性を有してはいるが柔軟性が高く、かつ付着し易い。したがって、2つ以上の可撓性リングがトンネル部に達したときには、トンネル部の入り口が詰まって可撓性リングの進入が妨げられたり、トンネル部内で可撓性リングが詰まったりし易かった。このようにしてトンネル部が詰まると、可撓性リングを安定して供給するができなくなってしまう。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、可撓性リングを安定して供給できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決する本発明の請求項1に係る発明は、複数の可撓性リングを収容する収容部から前記可撓性リングを搬送するレール部と、前記レール部に設けられ、前記可撓性リングを所定方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される可撓性リングを略起立状態で搬送するためのガイド部と、を備え、前記搬送手段で搬送される前記可撓性リングの搬送経路中に、前記可撓性リングを変形させる変形部材を備えた矯正部を設けたことを特徴とする可撓性リングの供給装置とした。
この可撓性リングの供給装置では、レール部で可撓性リングを搬送する経路中に矯正部を設けたので、可撓性リングが矯正部を通過するときに変形させられる。可撓性リングが強制的に変形させられることで、厚さ方向に付着している可撓性リングが離れる。また、矯正部で可撓性リングが変形しながら転動させると、可撓性リング自体の捩れが矯正される。
【0005】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の可撓性リングの供給装置において、前記搬送経路中で前記矯正部よりも搬出端側に前記搬送手段から前記可撓性リングを引き離す待機部が設けられていることを特徴とする。
この可撓性リングの搬送装置では、搬送手段が可撓性リングを待機部に搬送すると、待機部が可撓性リングを搬送手段から引き離す。このため、可撓性リングを搬出する前に待機部で一次的に待機させた状態で、次の可撓性リングを搬送できるようになる。
【0006】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の可撓性リングの供給装置において、前記搬送手段は、前記レール部の両端部付近に設けられた回転部と、前記回転部に架け渡された策条体とを有することを特徴とする。
この可撓性リングの供給装置では、策条体上に可撓性リングを載せて搬送する。矯正部では、変形部材と策条体に挟まれるようにして可撓性リングが変形する。策条体と可撓性リングとの間の摩擦力と、変形部材と可撓性リングとの間の摩擦力との間に差を設けると、可撓性リングは変形しながら転動するようになる。
【0007】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の可撓性リングの供給装置において、前記矯正部における前記レール部のサイドレールと前記ガイド部との配置間隔は、前記可撓性リングの厚さに略等しいことを特徴とする。
この可撓性リングの供給装置では、矯正部では可撓性リングが1つのみ通過可能であるので、可撓性リングが重なっていた場合には、1つの可撓性リングを除いて残りの可撓性リングは矯正部を通過することができずに収容部に戻される。また、レール部とガイド部に沿って搬送することで可撓性リングの撓みが防止されて捩れが生じなくなる。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の可撓性リングの供給装置において、前記収容部は、一端部が開口し、他端部が閉塞された円筒ドラムを軸線回りに回転自在に有し、前記円筒ドラムの内周側には前記可撓性リングを引っ掛けると共に前記可撓性リングを前記レール部に受け渡す引っ掛け部が設けられていることを特徴とする。
この可撓性リングの供給装置では、円筒ドラムが回転すると、これと共に引っ掛け部が軸線回りに回転し、下部に貯まっている可撓性リングが引っ掛け部に引っ掛けられる。この可撓性リングは、引っ掛け部の移動に伴って上方に引き上げられるので、この可撓性リングをレール部に受け渡すことで、可撓性リングを順番に搬出することが可能になる。
【0009】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の可撓性リングの供給装置において、前記レール部は、前記円筒ドラムの一端部から内部に挿入され、前記レール部の搬入端は前記引っ掛け部の配設位置よりも前記円筒ドラムの他端部側に配置されていることを特徴とする。
この可撓性リングの供給装置では、引っ掛け部によって引き上げられた可撓性リングが、レール部の搬入端に供給される。このため、搬送手段を駆動させれば、可撓性リングをレール部の搬出端まで搬送することができる。
【0010】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載の可撓性リングの供給装置において、前記レール部には、前記円筒ドラムの一端部から外部に露出する部分にリング外れ防止部を有し、前記リング外れ防止部材は前記ガイド部と対向するように設けられていることを特徴とする。
この可撓性リングの供給装置では、収容部から搬出された可撓性リングはリング外れ防止部によってレール部からの脱離が防止され、搬出端まで搬送される。なお、収容部内では、レール部から脱落した可撓性リングは、そのまま収容部の底部に戻る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性リングを起立状態で整列して供給するにあたり、その搬送途中で可撓性リングを変形させるように構成したので、変形によって可撓性リングの重なりが解消され、可撓性リングの捩れが矯正される。したがって、可撓性リングを正しい姿勢で安定して供給することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に可撓性リングの供給装置の全体構成を示す。可撓性リングの供給装置(以下、供給装置という)1は、角断面形状に形成された円形の角リングなどの可撓性リングWを多数収容可能な収容部2と、収容部2内に一部が挿入される搬送部3と有している。
【0013】
収容部2は、一端部が開口する円筒ドラム10を有している。この円筒ドラム10の他端部は、エンド部11で閉塞されており、円筒ドラム10の一端部は、中央に開口部を有するエンド部12を有している。この円筒ドラム10は、駆動部13に支持されており、一端部側のエンド部12が他端側のエンド部11に対して上側にくるように、水平軸に対して斜めになっている。図1及び図2に示すように、駆動部13は、ベース部14にロッド15を介して支持され、エンド部12の下方に配置された支持部16を有している。支持部16には、モータ17が固定されると共に、モータ17の回転軸17Aに連結されたプーリ18が回転自在に支持されている。さらに、支持部16には、プーリ18よりも上方に、2つのプーリ19,20が離間して回転自在に支持されており、これらプーリ19,20の間かつ下方にテンションローラ21が回転自在に支持されている。プーリ18〜20及びテンションローラ21には、ベルト22が架け渡してあり、モータ17を回転させると各プーリ19,20を同じ方向に回転させることができるようになっている。図1に示すように、各プーリ19,20には、回転ローラ23,24が同軸に取り付けられており、この回転ローラ23,24が円筒ドラム10の他端側のエンド部11の外周に当接している。また、円筒ドラム10の一端部側のエンド部12の開口部外周には、下側から回転ローラ25が付き当てられている。回転ローラ25は、支持部26に回転自在に支持されており、支持部26はベース部14に固定されている。
【0014】
ここで、図1及び図2に示すように、円筒ドラム10の内周側で、かつエンド部11寄りの位置には、引っ掛け部30が周方向に等間隔に6つ設けられている。引っ掛け部30は、円筒ドラム10にネジで固定される基部31と、基部31に挿通されたピン32を介して回動自在に取り付けられたアーム部33と、アーム部33に平行にピン32に取り付けられたガイド34とを有している。アーム部33は、自然状態で円筒ドラム10の中心軸線に向かって延び、その先端部には爪部33Aが円筒ドラム10の周方向に向けて突設されている。アーム部33及びガイド34は、不図示の弾性部材によって基部31に対して付勢されており、その付勢方向は、後に詳細を説明するように、爪部33Aの突設方向と反対側の方向にガイド34が押圧されたとき、アーム部33及びガイド34を元の位置に戻すように設定されている。
【0015】
図1に示すように、搬送部3は、支持部40に略水平に支持されたレール部41を有している。レール部41は、その一部が円筒ドラム10内に進入するレール部本体42を有し、レール部本体42の長手方向の両端部には、回転部であるローラ43,44が回転自在に取り付けられている。さらに、レール部本体42との間でローラ43,44を挟むように、サイドレール45が対向配置されている。これらローラ43,44には、無端の策条体であるベルト46が架け渡されており、このベルト46はレール部本体42の他端側である搬出端の下部に設けられた駆動用ローラ47及びテンションローラ48にも架け渡されている。駆動用ローラ47は、不図示のモータの回転軸に連結されており、テンションローラ48は、ベルト46の張りを調整するために水平移動自在になっている。
【0016】
さらに、レール部本体42には、その一端側の搬入端から順番にプレート50と、ガイド部であるガイド壁51とがサイドレール45と平行に固定されている。プレート50及びガイド壁51のそれぞれの側面とサイドレール45との間の間隔は、可撓性リングWを起立させた状態で挿入可能な幅になっている。
【0017】
プレート50は、レール部41に対して略垂直上向きに延びている。プレート50の上端部は、円筒ドラム10側の引っ掛け部30の爪部33Aと干渉せずに、かつ爪部33Aからプレート50の上端部までの距離が可撓性リングWの径よりも小さくなる位置にある。プレート50の上端部からは、細長のロッド52が円筒ドラム10のエンド部11に向かって略水平に延設されている。ロッド52は、引っ掛け部30のガイド34に当接可能な位置に設けられている。
【0018】
ガイド壁51は、その一端部がプレート50に連結固定されており、その高さは可撓性リングWよりも高く設定されている。このガイド壁51には、矯正部53が形成されている。図1及び図2に示すように、矯正部53は、円筒ドラム10内でガイド壁51とプレート50との連結部分の近傍から円筒ドラム10の外側まで延びる変形部材54によって形成されている。変形部材54は、板状の部材からなり、ガイド壁51の側面から突出するようにガイド壁51に固定されている。変形部材54の下端からベルト46の上側のベルト面までの距離は、可撓性リングWの高さより小さくなっている。変形部54の下端、又はサイドレール45の上端側の少なくとも一方には、可撓性リングWが搬送されるときに外れないように、浅い溝が形成されても良い。
【0019】
図1に示すように、矯正部53よりも搬出端側には、第一待機部55、第二待機部56が長手方向に沿って順番に形成されており、第二待機部56よりもさらに搬出端側には受渡部57が設けられている。図1及び図2に示すように、第一待機部55は、ガイド壁51に形成されたスリット60に突没自在に挿入されたフック部61と、フック部61の移動機構62とから構成されている。スリット60は、ガイド壁51の長手方向と直交するように、かつ高さ方向に延びて形成されており、その下端は矯正部53で変形した状態の可撓性リングWの高さよりも十分に低い位置になっている。移動機構62は、ガイド壁51において可撓性リングWが搬送される側面に対して反対側に配置されており、上下方向に移動自在な昇降機構と、フック部61を回動させる回動機構とを有している。フック部61は、その基端部が回動機構に回動自在に支持されており、フック部61の先端部はガイド壁51のスリット60に挿入されている。
【0020】
この移動機構62は、図3に仮想線で示すようにフック部61の先端部がスリット60の下端側でスリット60内に収まる第一の位置と、図3に実線で示すようにフック部61を上昇させつつ回動させた第二の位置とに移動できるように構成されている。第二の位置におけるフック部61の位置は、ベルト46上で起立させた可撓性リングWの高さより高く、フック部61の先端部に形成された引っ掛け部61Aがスリット60から可撓性リングWの搬送経路上に突出している。これに対して、第一の位置では、フック部61の引っ掛け部61Aはスリット60内に収まっている。移動機構62の側面には、プレート63が固定されている。プレート63の下端及びガイド壁51からの側方への突出量は、変形部材54と略等しくなるように設定されている。なお、第二待機部56は、第一待機部55と同じ構成になっているので説明を省略する。
【0021】
さらに、レール部41において矯正部53の手前から第一、第二待機部55,56に至るまでの間には、サイドレール45側に外れ防止部材65(リング外れ防止部)が固定されている。外れ防止部材65は、ガイド壁51と平行に、かつガイド壁51との間が可撓性リングWの厚さに略等しく、起立状態の可撓性リングWが1つだけ通過可能になっている。この外れ防止部材65は、長手方向の両端部が下方が拡がるように斜めにカットされている。
【0022】
図1に示すように、受渡部57は、ガイド壁51に放射状に形成された6つの長孔70のそれぞれに摺動自在に挿入されたピン71と、ピン71を拡開させる拡開機構(不図示)とを有している。拡開機構は、ピン71を中央寄りで、かつピン71の先端部が長孔70内に収容される第一の位置から、ピン71の先端部が互いに径方向に開き、かつガイド壁51の側面から突出させる第二の位置とに移動させるように構成されている。第一の位置におけるピン71の先端部外縁を結ぶ円の径は、可撓性リングWの内径よりも小さく、第二の位置におけるピン71の先端部外縁を結ぶ円の径は、外力が作用しないときの可撓性リングWの内径に略等しい。また、最も下側のピン71は、第二の位置にあるときでもベルト46より上方にある。
【0023】
なお、この供給装置1は、全体の制御を行う制御装置(不図示)を有し、制御装置は、各種のセンサの出力や作業者の操作を受け付けてモータ17の回転制御、レール部41の駆動制御、第一、第二待機部55,56及び受渡部57の駆動制御を行うように構成されている。
【0024】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
まず、多数の可撓性リングWを円筒ドラム10内に入れたら、制御装置でモータ17を回転させる。モータ17に連結されたプーリ18の回転がベルト22を介して回転ローラ23,24に伝達され、円筒ドラム10が軸線回りに回転し始める。円筒ドラム10が回転しても、多数の可撓性リングWは円筒ドラム10のエンド部11側の下方に貯まったままであるが、円筒ドラム10と共に回転する引っ掛け部30が円筒ドラム10の下側を通過する際に、数個の可撓性リングWが引っ掛け部30に引っ掛けられる。この可撓性リングWは、引っ掛け部30が円筒ドラム10の回転によって移動することで、図1に示すように上方に運ばれる。
【0025】
円筒ドラム10の上部では、引っ掛け部30に吊り下げられた可撓性リングWの移動経路上にプレート50があるので、プレート50に可撓性リングWが突き当たる。さらに、引っ掛け部30のガイド34がプレート50から延設されたロッド52に突き当たるので、引っ掛け部30のアーム部33が回動して可撓性リングWが爪部33Aから外れる。この可撓性リングWは、プレート50に案内されるようにしてプレート50とサイドレール45の間に入り込んでベルト46に起立した姿勢で載る。制御装置によってベルト46を回転駆動させると、可撓性リングWが搬送部3の搬出端に向かって移動する。このとき、プレート50及びガイド壁51によって可撓性リングWは起立した状態で移動する。なお、可撓性リングWを脱落させた引っ掛け部30のアーム部33は、円筒ドラム10の回転によってガイド34がロッド52を越えたときに、弾性部材の復元力によって元の姿勢に戻り、再び円筒ドラム10の回転によって円筒ドラム10の下部に移動して別の可撓性リングWを引っ掛ける。
【0026】
そして、搬送部3に受け渡された可撓性リングWは、ベルト46で搬送されて矯正部53に導かれる。図4に示すように、矯正部53では、可撓性リングWは変形部材54で上側から押し潰されるようにして長円形に変形する。ベルト46と可撓性リングWの間の摩擦力の方が、可撓性リングWと変形部材54との間の摩擦力よりも大きいので、可撓性リングWは転動しながら搬送される。このとき、複数の可撓性リングWが互いに付着していた場合には、変形部材54によって変形しながら転動することで分離して落下する。また、可撓性リングWが転動することで可撓性リングWの捩れが矯正される。このようにして、矯正部53には、1つの可撓性リングWのみが残る。この残った可撓性リングWは、外れ防止部材65で脱落が防止されつつ、ベルト46で搬送される。そして、矯正部53を通過した後には、第一待機部55に導かれる。
【0027】
ここで、第二待機部56に可撓性リングWが待機していない場合には、制御装置は、第一待機部55を駆動させずに、ベルト46をさらに回転駆動させ、可撓性リングWをプレート62で変形させたままで第二待機部56に送る。第二待機部56では、可撓性リングWの先端部分がスリット60の形成位置を越えたら、第一の位置にあるフック部61及びプレート62を第二の位置に移動させ、フック部61に可撓性リングWを引っ掛ける。図5に示すように、可撓性リングWは、フック部61に吊り下げられることで、ベルト46から離脱する。したがって、この状態でベルト46を駆動させると、第二待機部56の可撓性リングWは、移動せずに、ベルト46上のその他の可撓性リングWが変形した状態で第一待機部55に向かって転動する。このようにして、第一待機部55に次に搬送されてきた可撓性リングWは、第一待機部55のフック部61及びプレート62が第二の位置に移動することで前記と同様にして吊り下げられる。図6に示すように、第一、第二待機部55,56に可撓性リングWが1つずつ吊り下げられたら、制御装置はベルト46の回転駆動を一旦停止する。なお、可撓性リングWの有無は、レール部41に設けられた不図示のセンサ等で検出することができる。
【0028】
第一、第二待機部55,56にある可撓性リングWを受渡部57に送る際には、両フック部61及びプレート62を下げて、可撓性リングWをベルト46に再び載せる。ベルト46の回転駆動に従って第二待機部56にあった可撓性リングWが受渡部57に転動しながら移動し、第一待機部55にあった可撓性リングWが第二待機部56に転動しながら移動する。図7に示すように、受渡部57では、ピン71が拡開して可撓性リングWを円形に整形しつつ、ベルト46の上方に移動させる。このようにして整形して保持された可撓性リングWは、不図示のエアチャックに受け渡され、ワーク、例えばモータのヨークなどに組み付けられる。なお、第二待機部55では、第一待機部55から可撓性リングWが搬送されてくるので、フック部61及びプレート62を第二の位置に移動させて待機させる。この可撓性リングWが次に受渡部57に搬送する可撓性リングWとなる。
【0029】
ここで、このとき、可撓性リングWは第二待機部55のみ待機し、第一待機部55には待機していないので、制御装置は、ベルト46を回転駆動させて、常に第一、第二待機部55,56に可撓性リングWが1つずつ待機するように制御する。第二待機部56と、受渡部57とでは、可撓性リングWがベルト46から離れて待機しているので、ベルト46を回転駆動させることで、受渡部57、第二待機部56における可撓性リングWに影響を及ぼすことなく可撓性リングWを搬送することができる。そして、制御装置は、第一、第二待機部55,56の両方に可撓性リングWを待機させたら、受渡部57にある可撓性リングWが搬出されるまでベルト46の回転駆動を停止し、円筒ドラム10の回転も停止させる。そして、受渡部57の可撓性リングWが搬出されたら、前記の工程を繰り返し、可撓性リングWを一つずつ順番に、整列して供給する。
【0030】
この実施の形態によれば、可撓性リングWをベルト46の回転駆動によって円筒ドラム10から搬出する際に、その搬送経路中に変形部材54を設けて可撓性リングWを変形させるようにしたので、複数の可撓性リングWが付着したままで搬出端まで搬送されたり、捩れた状態で搬送されたりすることを防止することができる。したがって、可撓性リングWを確実に整列して供給することが可能になる。この際に、レール部41のサイドレール45とガイド壁51とを可撓性リングWの厚さに略等しく配置したので、2つ以上の可撓性リングWが同時に搬送されることはない。また、レール部41が円筒ドラム10から引き出された部分に外れ防止部材65を設けたので、可撓性リングWを変形したり、吊り下げたりするときに可撓性リングWがレール部41から脱落することがなくなり、可撓性リングWを安定して供給することができる。
【0031】
また、円筒ドラム10に引っ掛け部30を設け、引っ掛け部30に吊り下げた可撓性リングWを搬送部3に供給するようにしたので、可撓性リングWを安定して搬送部3に搬入することができる。さらに、引っ掛け部30で吊り下げた可撓性リングWの下方に搬送部3の搬入端を配置したので、可撓性リングWを起立した姿勢で搬出することができる。
搬送部3に第一、第二待機部55,56を設け、可撓性リングWを予め待機させておくようにしたので、受渡部57に可撓性リングWを安定して供給することができる。この際に、可撓性リングWをベルト46よりも上方に待機させるようにしたので、可撓性リングWを待機させた状態で次の可撓性リングWを搬送することが可能になり、作業効率が向上する。同様に、受渡部57は、可撓性リングWをベルト46よりも上方で整形して保持するので、可撓性リングWを保持した状態で次の可撓性リングWを搬送することが可能になり、作業効率が向上する。
【0032】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されずに広く応用することが可能である。
例えば、待機部55,56の数は、実施の形態に限定されない。また、待機部55,56を設けずに、受渡部57に直接に搬送する構成でも良い。
矯正部53の長さは任意に設定することができ、円筒ドラム10から外部に露出する部分のみに変形部材54を設けても良い。この場合において、矯正部53の長さは、可撓性リングWを変形状態で転動させられるように、可撓性リングWの径の大きさよりも長いことが望ましい。また、変形部材54の搬入側の端部に、可撓性リングWを受け入れるようにテーパを設けても良い。
第一、第二待機部55,56にプレート62を設けずに、第一、第二待機部55,56では、可撓性リングWが自身の復元力で略円形に復元するようにしても良い。
搬送部3は、可撓性リングWを垂直に起立させた状態で搬送するようにガイド壁51等を垂直に配置したが、可撓性リングWを搬送方向に直交する方向にわずかに傾けながらも起立させるように配置しても良い。
収容部2は、円筒ドラム10に限定されない。また、搬送部3に可撓性リングWを受け渡す手段は、引っ掛け部30に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る可撓性リングの供給装置の構成を示す図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図4】矯正部の作用を説明する図である。
【図5】第二待機部に可撓性リングを待機させた図である。
【図6】第一、第二待機部のそれぞれに可撓性リングを待機させた図である。
【図7】受渡部に可撓性リングを供給した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 供給装置(可撓性リングの供給装置)
2 収容部
10 円筒ドラム
30 引っ掛け部
41 レール部
43,44 ローラ(搬送手段、回転部)
45 サイドレール
46 ベルト(搬送手段、策条体)
51 ガイド壁(ガイド部)
53 矯正部
55 第一待機部
56 第二待機部
65 外れ防止部材(リング外れ防止部)
W 可撓性リング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可撓性リングを収容する収容部から前記可撓性リングを搬送するレール部と、
前記レール部に設けられ、前記可撓性リングを所定方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される可撓性リングを略起立状態で搬送するためのガイド部と、
を備え、前記搬送手段で搬送される前記可撓性リングの搬送経路中に、前記可撓性リングを変形させる変形部材を備えた矯正部を設けたことを特徴とする可撓性リングの供給装置。
【請求項2】
前記搬送経路中で前記矯正部よりも搬出端側に前記搬送手段から前記可撓性リングを引き離す待機部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の可撓性リングの供給装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記レール部の両端部付近に設けられた回転部と、前記回転部に架け渡された策条体とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可撓性リングの供給装置。
【請求項4】
前記矯正部における前記レール部のサイドレールと前記ガイド部との配置間隔は、前記可撓性リングの厚さに略等しいことを特徴とする請求項1に記載の可撓性リングの供給装置。
【請求項5】
前記収容部は、一端部が開口し、他端部が閉塞された円筒ドラムを軸線回りに回転自在に有し、前記円筒ドラムの内周側には前記可撓性リングを引っ掛けると共に前記可撓性リングを前記レール部に受け渡す引っ掛け部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の可撓性リングの供給装置。
【請求項6】
前記レール部は、前記円筒ドラムの一端部から内部に挿入され、前記レール部の搬入端は前記引っ掛け部の配設位置よりも前記円筒ドラムの他端部側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の可撓性リングの供給装置。
【請求項7】
前記レール部には、前記円筒ドラムの一端部から外部に露出する部分にリング外れ防止部を有し、前記リング外れ防止部材は前記ガイド部と対向するように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の可撓性リングの供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−8655(P2007−8655A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191464(P2005−191464)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】