説明

可撓性合成樹脂管

【課題】管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条の対峙面からの第1係合部側突条の離脱を防止して、管本体の巻き構造を円滑に保持できる可撓性合成樹脂管を提供する。
【解決手段】軸線方向の一側に第1係合部13が形成され、軸線方向の他側に第2係合部14が形成された帯状体15を螺旋状に巻き回し、第1係合部13を第2係合部14に対し管本体11の半径方向外方から係合させて螺旋状に捲回して形成した管本体11を備える可撓性合成樹脂管において、両係合部13,14に、管本体11の軸線方向で互いに対峙するように突設され、かつ管本体11を湾曲させた際にその外周側において当接する第1及び第2係合部側突条173,183を設ける。第2係合部側突条183の対峙面183aを、その先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第1係合部側突条173に近付けるように傾斜させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、地中に埋設される電線、電力ケーブル、通信ケーブルなどの保護管として用いられる可撓性合成樹脂管に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に埋設される電線、電力ケーブル、通信ケーブルなどの保護管として用いられる可撓性合成樹脂管として、図30に示すように、軸線方向の一側に沿って第1係合部210が形成されかつ前記第1係合部と連結状として軸線方向の他側に沿って第2係合部220が形成された硬質塩化ビニル樹脂などの硬質な合成樹脂よりなる帯状体200が螺旋状に巻き回され、前記第1係合部210とこれに隣接する第2係合部220とが互いに軸線方向へ摺動自在となるように非接着状態で係合されて螺旋状に捲回して形成された管本体110を有し、この管本体110の内周面に沿って軟質合成樹脂よりなる内層材120が貼着された可撓性合成樹脂管100が既に提案されている(特許文献1)。
【0003】
すなわち、この可撓性合成樹脂管100は、内層材120が軟質な合成樹脂で形成されているので、可撓性に優れている。
一方、管本体110は、硬質な合成樹脂で形成されているので、強度的に優れ、しかも、第1係合部210と第2係合部220とが互いに軸線方向へ摺動自在となるように非接着状態で係合されているだけであるので、管本体110を湾曲させた際にその外周側では、第1係合部210と第2係合部220とが離れる方向に摺動する一方、内周側では第1係合部210と第2係合部220とが近づく方向に摺動し、実質的に管本体110も内層材120の撓みに追従するようになっている。この場合、第1係合部210は、これに隣接する第2係合部220に対し管本体110の半径方向外方から係合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−229247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記可撓性合成樹脂管100の各係合部210,220には、管本体110の軸線方向で互いに対峙するように突設された突条211,221が設けられ、この突条211,221は、管本体110を湾曲させた際にその外周側において互いの係合部210,220内を軸線方向へ摺動して互いに当接する。つまり、管本体110を湾曲させた際にその外周側では、第1係合部210と第2係合部220とが離れる方向に摺動して突条211,221同士が互いに当接する。
その場合、管本体110を湾曲させた際の湾曲度合いによっては、第1係合部210の突条211が第2係合部220の突条221の対峙面221aに沿って管本体110の半径方向外方に移動することがある。このとき、第1係合部210の突条211が管本体110の半径方向外方に移動して第2係合部220の突条221の対峙面221aから離脱すると、双方の係合部210,220による係合が解除されてしまい、管本体110の巻き構造が保持できなくなる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部の突条の対峙面からの第1係合部の突条の離脱を防止して、管本体の巻き構造を円滑に保持することができる可撓性合成樹脂管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明が講じた解決手段では、合成樹脂よりなり、軸線方向の一側に沿って第1係合部が形成されかつ前記第1係合部と連結状として軸線方向の他側に沿って第2係合部が形成された帯状体が螺旋状に巻き回され、前記第1係合部とこれに隣接する第2係合部とが互いに軸線方向へ摺動自在となるように非接着状態で係合されて螺旋状に捲回して形成された管本体を有し、この管本体の内周面に沿って軟質合成樹脂よりなる内層材が貼着された可撓性合成樹脂管を前提とする。更に、前記第1係合部はこれに隣接する第2係合部に対し前記管本体の半径方向外方から係合つまり管本体の半径方向外方から半径方向内方に向かって係合しているとともに、その両係合部に、前記管本体の軸線方向で互いに対峙するように突設され、かつ当該管本体を湾曲させた際に互いに軸線方向へ摺動して当接する突条がそれぞれ設けられている。そして、前記第2係合部の突条の対峙面を、その突条の先端側になるに従い前記第1係合部の突条に近付くように傾斜させている。
この特定事項により、第2係合部の突条の対峙面が、その突条の先端側になるに従い第1係合部の突条に近付くように傾斜しているので、管本体を湾曲させた際にその外周側において第2係合部の突条に当接した第1係合部の突条は、前記第2係合部の突条の先端側になるに従い当該第2係合部の突条の対峙面に対する掛かりが強くなって管本体の半径方向外方へ移動し難くなる。これにより、管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部の突条の対峙面からの第1係合部の突条の離脱が防止され、管本体の巻き構造を円滑に保持することが可能となる。
しかも、地震などの地盤の変動によって管本体に軸線方向の大きな力が作用して当該管本体が伸びた際に、第1係合部の突条の対峙面が、先端側になるに従い掛かりが強くなる方向に傾斜つまり先端側が第1係合部の突条寄りとなるように傾斜している第2係合部の突条の対峙面に対し、強く当接する。このとき、第1係合部の突条の当接により第2係合部の突条の先端が第1係合部の反突条側に撓んでも、先端側が第1係合部の突条寄りに傾斜している第2係合部の突条の対峙面との当接によって、第1係合部の突条が第2係合部の突条を軸線方向に乗り越えることなく持ち堪えられる。これにより、地震などの地盤の変動によって管本体が伸びても、管本体の巻き構造を円滑に保持することが可能となる。
【0008】
また、前記第1係合部の突条の対峙面を、その突条の先端側になるに従い前記管本体の軸線方向で前記第2係合部の突条に近付くように傾斜させることが好ましい。
この場合には、第1係合部の突条の対峙面が、その突条の先端側になるに従い第2係合部の突条に近付くように傾斜しているので、管本体を湾曲させた際にその外周側において第2係合部の突条に当接した第1係合部の突条は、前記第2係合部の突条の先端側になるに従い当該第2係合部の突条の対峙面に対する掛かりが強くなって管本体の半径方向外方へさらに移動し難くなる。これにより、管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部の突条の対峙面からの第1係合部の突条の離脱がさらに防止され、管本体の巻き構造をより円滑に保持することができる。
しかも、地震などの地盤の変動によって管本体に軸線方向の大きな力が作用して当該管本体が伸びた際に、先端側になるに従い掛かりが強くなる方向に傾斜つまり先端側が第1係合部の突条寄りとなるように傾斜している第1係合部の突条の対峙面が、先端側が第1係合部の突条寄りとなるように傾斜している第2係合部の突条の対峙面に対し、強く当接する。このとき、両係合部の突条同士の当接により、第1係合部の突条の先端が第2係合部の反突条側に、第2係合部の突条の先端が第1係合部の反突条側にそれぞれ撓んでも、先端側が第2係合部の突条寄りに傾斜している第1係合部の突条の対峙面と先端側が第1係合部の突条寄りに傾斜している第2係合部の突条の対峙面との当接によって、第1係合部の突条が第2係合部の突条を軸線方向に乗り越えることなく円滑に持ち堪えられる。これにより、地震などの地盤の変動によって管本体が伸びても、管本体の巻き構造をより円滑に保持することができる。
【0009】
また、前記両係合部の突条に、その互いの対峙面の先端部位よりそれぞれ軸線方向に突出し、かつ前記各突条の当接時に当該各突条同士を内外径方向から係合する係合片を設けていてもよい。
この場合には、両係合部の突条同士が互いの係合片によって内外径方向から係合されているので、管本体を湾曲させた際にその外周側において第2係合部の突条に当接した第1係合部の突条は、その係合片が第2係合部の突条の係合片と係合し、第2係合部の突条の対峙面に沿って管本体の半径方向外方へ移動することが防止される。これにより、管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部の突条の対峙面からの第1係合部の突条の離脱が確実に防止され、管本体の巻き構造を効果的に保持することができる。
しかも、地震などの地盤の変動によって管本体に軸線方向の大きな力が作用して当該管本体が伸びた際に、第1係合部の突条の対峙面が、先端側が第1係合部の突条寄りとなるように傾斜している第2係合部の突条の対峙面に対し、強く当接する。このとき、両係合部の突条同士の当接により、第1係合部の突条の先端が第2係合部の反突条側に、第2係合部の突条の先端が第1係合部の反突条側にそれぞれ撓んでも、両係合部の突条の係合片同士の係合によって、第1係合部の突条が第2係合部の突条を軸線方向に乗り越えることなく確実に持ち堪えられる。これにより、地震などの地盤の変動によって管本体が伸びても、管本体の巻き構造を確実に保持することができる。
【0010】
また、前記第2係合部の突条を、前記第1係合部の突条よりも前記管本体の軸線方向に厚肉に形成していてもよい。この場合には、第1係合部を第2係合部の厚肉な突条により内側から支え、管本体の扁平を効果的に防止することができる。
【0011】
また、前記第2係合部の突条に、その先端向きに開口する凹部と、この凹部によって前記管本体の軸線方向に分割された複数の突条部とを設けていてもよい。
この場合には、前記第2係合部の厚肉な突条が凹部によって管本体の軸線方向で複数の突条部に分割されているので、その分割された複数の突条部により第1係合部が内側から満遍なく支えられ、管本体の扁平を効率よく防止することができる。しかも、凹部によって厚肉な突条の材料が削減されて、可撓性合成樹脂管(管本体)のコストの低廉化を図ることもできる。
【0012】
更に、前記管本体を湾曲させた際にその内周側において互いに当接する,前記第1係合部の突条の反対峙面と、この第1係合部に隣接する第2係合部の縦面との少なくとも一方を、当該両面間に前記第1係合部の突条の基端側になるに従い管本体の軸線方向に漸増する空間を形成するように傾斜させていてもよい。
この場合には、前記第1係合部の突条の反対峙面とこの第1係合部に隣接する第2係合部の縦面との少なくとも一方が、当該両面間に前記第1係合部の突条の基端側になるに従い管本体の軸線方向に漸増する空間が形成されるように傾斜しているので、管本体を湾曲させた際にその内周側において前記両面同士が前記空間を閉ざすように当接する。このため、許容曲げ半径(例えば、0.3mR程度)が規定される光ファイバーケーブルなどの通信ケーブルを可撓性合成樹脂管の内部に収容している場合には、管本体を湾曲させた際にその内周側において前記両面同士を当接させることによってそれ以上の曲げが規制される。これにより、通信ケーブルの断線などによる不具合を確実に防止することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明が講じたその他の解決手段では、合成樹脂よりなり、軸線方向の一側に沿って第1係合部が形成されかつ前記第1係合部と連結状として軸線方向の他側に沿って第2係合部が形成された帯状体が螺旋状に巻き回され、前記第1係合部とこれに隣接する第2係合部とが互いに軸線方向へ摺動自在となるように非接着状態で係合されて螺旋状に捲回して形成された管本体を有し、この管本体の内周面に沿って軟質合成樹脂よりなる内層材が貼着された可撓性合成樹脂管を同様に前提とする。更に、 前記第1係合部はこれに隣接する第2係合部に対し前記管本体の半径方向外方から係合されているとともに、その両係合部に、前記管本体の軸線方向で互いに対峙するように突設され、かつ当該管本体を湾曲させた際に互いに軸線方向へ摺動して当接する突条がそれぞれ設けられている。そして、前記両係合部の突条に、その互いの対峙面の先端部位よりそれぞれ軸線方向に突出させ、かつ前記各突条の当接時に当該各突条同士を内外径方向から係合する係合片を設けている。
この特定事項により、両係合部の突条同士が互いの係合片によって内外径方向から係合されるので、管本体を湾曲させた際にその外周側において第2係合部の突条に当接した第1係合部の突条は、その係合片が第2係合部の突条の係合片と係合し、第2係合部の突条の対峙面に沿って管本体の半径方向外方へ移動することが防止される。これにより、管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部の突条の対峙面からの第1係合部の突条の離脱が確実に防止され、管本体の巻き構造を効果的に保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上、要するに、第2係合部の突条の対峙面をその突条の先端側になるに従い第1係合部の突条に近付くように傾斜させたり、両係合部の突条同士を互いの係合片によって内外径方向から係合することで、管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部の突条の対峙面に対する管本体の半径方向外方への第1係合部の突条の移動をし難いものにして、第2係合部の突条の対峙面からの第1係合部の突条の離脱を防止し、管本体の巻き構造を円滑に保持することができる。しかも、地震などの地盤の変動によって管本体が伸びた際に第1係合部の突条の対峙面が第2係合部の突条の対峙面に強く当接して第2係合部の突条の先端が第1係合部の反突条側に撓んでも、先端側が第1係合部の突条寄りに傾斜している第2係合部の突条の対峙面との当接によって第1係合部の突条が第2係合部の突条を軸線方向に乗り越えることなく持ち堪えられ、管本体の巻き構造を円滑に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る可撓性合成樹脂管のレイアウト図である。
【図2】図1の可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切断した断面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】図1の可撓性合成樹脂管の湾曲部分を管軸に沿って切断した断面図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】図4のC部拡大図である。
【図7】図1の継手を管軸に沿って切断した断面図である。
【図8】図1の可撓性合成樹脂管の継手部分を継手と共に管軸に沿って切断した断面図である。
【図9】可撓性合成樹脂管の内部での摺動試験
【図10】第1の実施の形態の変形例に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切断した断面図である。
【図12】図11のD部拡大図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る可撓性合成樹脂管の湾曲部分を管軸に沿って切断した断面図である。
【図14】図13のE部拡大図である。
【図15】図13のF部拡大図である。
【図16】第2の実施の形態の変形例に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図17】同じく可撓性合成樹脂管の湾曲部分の外周側を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図18】第2の実施の形態のその他の変形例に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図19】同じく可撓性合成樹脂管の湾曲部分の外周側を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切断した断面図である。
【図21】図20のG部拡大図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る可撓性合成樹脂管の湾曲部分を管軸に沿って切断した断面図である。
【図23】図22のH部拡大図である。
【図24】図22のI部拡大図である。
【図25】第3の実施の形態の変形例に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図26】同じく可撓性合成樹脂管の湾曲部分の外周側を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図27】同じく可撓性合成樹脂管の湾曲部分の内周側を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図28】本発明の第4の実施の形態に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図29】第4の実施の形態の変形例に係る可撓性合成樹脂管の直線部分を管軸に沿って切り欠いた断面を拡大して示す一部拡大図である。
【図30】従来例に係る可撓性合成樹脂管の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
図1において、1は本発明の第1の実施の形態に係る可撓性合成樹脂管を示し、この可撓性合成樹脂管1は、供給系や引込系などの本管Xから導出させた光ファイバーケーブル(図示せず)を湾曲させた部位において保護するために供される。つまり、可撓性合成樹脂管1は、光ファイバーケーブルを所望する方向に湾曲させる都度(図1では2箇所のみ示す)用いられ、光ファイバーケーブルの直線部分を保護する硬質塩化ビニル樹脂製の複数の直管21,21(図1では2つのみ示す)と組み合わされる。具体的には、可撓性合成樹脂管1は、前記ボディ管Xに取り付けられた分岐管X1に対し継手22を介して一端(図1では左端)が接続されているとともに、その他端(図1では右端)が直管21の一端(図1では左端)に対し継手22を介して接続されている。また、この直管21の他端(図1では右端)にも、同一構成となる別の可撓性合成樹脂管1の一端(図1では左端)が継手22を介して接続され、その可撓性合成樹脂管1の他端(図1では下端)が、同一構成となる別の直管21の一端(図1では上端)に継手22を介して接続されている。
【0018】
また、図2及び図3に示すように、各可撓性合成樹脂管1は、管本体11と、内層材12とを備えている。
管本体11は、硬質塩化ビニル樹脂よりなり、その軸線方向の一側(図2及び図3では左側)に沿って第1係合部13を備えているとともにこの第1係合部13と連結状として軸線方向の他側(図2及び図3では右側)に沿って第2係合部14を備えた帯状体15を螺旋状に巻き回し、前記第1係合部13とこれに隣接する第2係合部14とが互いに軸線方向へ摺動自在となるように非接着状態で係合されて螺旋状に捲回することによって、成形されている。前記帯状体15は、硬質塩化ビニル樹脂を射出成形して得られ、垂直壁部16を挟んで一側(図2及び図3では左側)が第1係合部本体17、他側(図2及び図3では右側)が第2係合部本体18となっている。この場合、第1係合部本体17(第1係合部13)は、これに隣接する第2係合部本体18(第2係合部14)に対し前記管本体11の半径方向外方から半径方向内方に向かって係合している。
【0019】
前記第2係合部本体18は、内壁部181と、第2係合部側突条183(突条)とを備えている。
前記内壁部181は、前記垂直壁部16の内方端(管本体11の半径方向内方端)から当該垂直壁部16に直交するように一側方向(図3では右方向)に延出していて、前記管本体11の内壁を形成するようになっている。また、前記第2係合部側突条183は、前記内壁部181の先端部(図3では右端部)より管本体11の半径方向外方向き(図3では上方)に突設されている。
【0020】
前記第1係合部本体17は、外壁部171と、第1係合部側突条173(突条)とを備えている。
前記外壁部171は、前記垂直壁部16の外方端(管本体11の半径方向外方端)から当該垂直壁部16に直交するように内壁部181とは反対方向となる他側方向(図3では左方向)に延出していて、管本体11の外壁を形成するようになっている。また、前記第1係合部側突条173は、前記外壁部171の先端(図3では左端)より管本体11の半径方向内方向き(図3では下方)に突設されている。また、図4〜図6にも示すように、前記第1係合部側突条173と前記第2係合部側突条183とは、管本体11の軸線方向で互いに対峙している。そして、前記第1係合部側突条173と前記第2係合部側突条183とは、管本体11を湾曲させた際にその外周側において互いに管本体11の軸線方向に摺動して互いの対峙面173a,183a同士の当接を可能とするようにしている。
【0021】
前記第2係合部側突条183の先端は、前記第1係合部本体17の外壁部171の内側面(図3では下側面)に対し管本体11の軸線方向へ摺動自在に接している。一方、前記第1係合部側突条173の先端は、前記第2係合部本体18の内壁部181の外側面(図3では上側面)に対し管本体11の軸線方向へ摺動自在に接している。そして、前記第2係合部側突条183は、前記第1係合部側突条173よりも管本体11の軸線方向に厚肉に形成され、その先端向き(図3では上向き)に開口する凹部180を存して第1突条部184と第2突条部185とに管本体11の軸線方向で2分割されている。
この場合、第1突条部184及び第2突条部185の先端は、いずれも第1係合部本体17の外壁部171の内側面に対し摺接している。また、第1突条部184は、第1係合部側突条173側(図3では左側)に位置し、その第1係合部側突条173側の面が第2係合部側突条183の対峙面183aとなっている。
【0022】
ここで、管本体11の耐衝撃性強度について説明する。
光ファイバーケーブルなどの通信ケーブルを収容する可撓性合成樹脂管1として必要とされる耐衝撃性の評価方法としては、電線共同溝試験実施マニュアル(案)で規定される試験方法がある。これは、管本体11の材料の重量(kg)に係数「3.246」をかけて算出される値を落下高さ(cm)として、重さ15kgの先端ツルハシ形状の重錘を落下させて割れ等の有無を確認するものである。このとき、想定される可撓性合成樹脂管1の使用長さは2m程度であり、これに継手22の重量を加味すると、その重量は4.5kg程度であり、これより重錘の落下高さを算出すれば、約15cmとなる。
通常の硬質塩化ビニル樹脂(VP管と同等材料)により同様の可撓性合成樹脂管を製作した場合、この高さから上述の15kg重錘を落下させると、割れが生じ、この程度の耐衝撃強度では、道路下の埋設での使用に不安がある。このため、耐衝撃性硬質塩化ビニル樹脂を用いることで、上述の耐衝撃性試験でも割れ等発生しないものとなる。
本発明で用いる管本体11(帯状体15)の材料は耐衝撃性改質剤を含む塩化ビニル樹脂組成物である。トータルの改質剤量は塩化ビニル系樹脂100に対し、2〜15phrの範囲であり、2phr未満だと耐衝撃性が悪く、15phrを超えると成形性が困難となる。
本発明で用いる改質剤には、アクリルゴム、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合ゴム(MBS)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。なお、本発明で用いる改質剤は、いずれかのうちの一つ、或いは2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0023】
そして、前記第1突条部184は、その先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し前記第1係合部側突条173に近付くように傾斜しており、これによって、対峙面183aも同様に傾斜している。また、前記第2突条部185は、その先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し前記垂直壁部16の外方端に近付くように傾斜している。この場合、第2係合部側突条183は、第1突条部184と第2突条部185とで、それぞれの先端側になるにしたがって離間するように外方に開放する断面略V字状に成形されている。
【0024】
また、前記第1係合部側突条173の対峙面173aは、その第1係合部側突条173の先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し前記第2係合部側突条183の第1突条部184に近付くように傾斜している。
【0025】
更に、図7及び図8に示すように、前記継手22は、その一端(図7及び図8では左端)が直管21又は分岐管X1に接続され、他端(図7及び図8では右端)に前記可撓性合成樹脂管1(管本体11)の端部を挿通させる挿通部221を有している。この挿通部221の内側には、管本体11を挿通させた際にその管本体11の内周面つまり第2係合部本体18の内壁部181に沿うように継手内コア223が一体的に設けられ、この継手内コア223と前記内層材12との間の隙間を埋めるように充填された接合剤又は接着剤によって水密状態で接続されている。また、前記挿通部221の内周面には雌ねじ部222が設けられている。この雌ねじ部222には、可撓性合成樹脂管1の直線部分の端、つまり直線部分における第1係合部本体17の外壁部171が接着材(図示せず)を介して螺着されている。この場合、挿通部221の雌ねじ部222は、可撓性合成樹脂管1の直線部分における垂直壁部16の外方端とこれに隣接する第1係合部側突条173の外方端との間の間隔と略一致している。
【0026】
また、前記第1係合部側突条173の反対峙面173bと、この第1係合部側突条173に隣接する第2係合部14の縦面としての垂直壁部16の第1係合部側面16a(図6では右側面)とは、前記管本体11を湾曲させた際にその内周側において互いに当接するようになっている。そして、前記第1係合部側突条173の反対峙面173bは、前記垂直壁部16の第1係合部側面16aとの間に前記第1係合部側突条173の基端側(図6では)になるに従い管本体11の軸線方向に漸増する空間(図示せず)を形成するように傾斜している。
この場合、管本体11を湾曲させた際にその内周側において垂直壁部16の第1係合部側面16aと第1係合部側突条173の反対峙面173bとがその両面間の空間を閉ざすように当接し、可撓性合成樹脂管1(管本体11)の内周側での許容曲げ半径を0.3mR(これは、光ファイバーケーブルの敷設許容曲率である)に規制している。つまり、可撓性合成樹脂管1は、管本体11を湾曲させた際に杭などの曲げ規制部材を別途用いることなく、管本体11を螺旋状に捲回することによって内周側での許容曲げ半径を0.3mRに規制する断面形状としている。
【0027】
ここで、管本体11を湾曲させた際の内周側での許容曲げ半径を0.3mRに規制する場合の可撓性合成樹脂管1の断面形状について説明する。
管本体11の許容曲げ半径は、第1係合部本体17(第1係合部13)と第2係合部本体18(第2係合部14)との係合状態での互いのスライド量Sにより求められるが、これを以下の式で求められる値とし、内層材12の変形性を加味した範囲で設定する。
【0028】
つまり、前記スライド量Sを求めるに当たり、可撓性合成樹脂管1の湾曲部分の外周側での円周長Coを、
2×(Ri+D)×πにより算出する。このとき、Riは管本体11を湾曲させた際の内周側での第1係合部本体17の外壁部171の外面の許容曲げ半径、Dは管本体11の外径とする。
次いで、可撓性合成樹脂管1の湾曲部分の内周側での円周長Ciを、
2×(R−t)×πにより算出する。このとき、Rは管本体11を湾曲させた際の内周側での第2係合部本体18の内壁部181の内面の許容曲げ半径、tは管本体11の半径方向の厚みとする。
そして、前記外周側での円周長Co、及び前記内周側での円周長Ciに基づいて、下記の式よりスライド量Sを求める。
S=(Co−Ci)×P1/Ci
このとき、P1は第1係合部本体17の外壁部171の軸線方向の長さとする。
例えば、管本体11の外径Dが75mmの可撓性合成樹脂管1を製作するための帯状体15の断面としては、第1係合部本体17の外壁部171の軸線方向の長さP1を12mm、管本体11の半径方向の厚みtを7mmとし、スライド量Sを3mmとすればよい。
【0029】
また、前記内層材12は、管本体11の内周面に沿って熱融着されている。この内層材12としては、外水圧に対する剥離を防止する上で0.2MPa以上の融着強度が望ましく、内面摩擦抵抗を図る上で硬度50〜90の範囲が望ましい。このとき、硬度90を超えると柔軟性がなくなって曲がり難くなる一方、硬度50以下では内面摩擦抵抗が大きくなって施工後に通信ケーブルを通線できない。
そのため、本発明では、内層材12として無可塑系軟質塩化ビニル樹脂(軟質合成樹脂)が用いられており、この無可塑系軟質塩化ビニル樹脂を軟化させるために可塑剤でなく、熱可塑性エラストマで軟質化させた軟質塩化ビニル樹脂組成物が適用される。この塩化ビニル樹脂の重合度は400〜2400の範囲が好ましく、400未満では高温成形が困難であり、3000を超えると固くなり、表面性が悪化する。
かかる点から、本発明の熱可塑性エラストマとしては、酢酸ビニル系エラストマ、ポリエステル系エラストマやポリウレタン系エラストマを含む軟質塩化ビニル樹脂組成物が望ましい。その比率は20%〜80%が望ましく、20%未満では硬くなり柔軟性が損なわれる一方、比率が80%を超えれば成形が困難になる。この製造方法は反応押出あるいはコンパウンドによる混合等、方法によって規定するものではない。
なお、内面摩擦抵抗低減を図る上では、上記以外に、架橋ゴムとして、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンスチレンゴム、スチレンイソプレンスチレンゴム、或いは熱可塑性エラストマとして、スチレン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、テフロン系エラストマ(テフロンは登録商標)、ポリエーテル系エラストマなどでも本発明の効果を阻害しない範囲で使用できる。また、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ等のフィラーを混合してもかまわない。更に、その他の添加材として、安定剤、着色剤、滑剤などを添加してもかまわない。
【0030】
ここで、内層材12の内面静摩擦係数について説明する。
本実施の形態では、可撓性合成樹脂管1の内部に通信ケーブルを挿通するため、内層材12の内面と通信ケーブルの摩擦抵抗が小さいことが求められる。実際の多様な配管状況等を鑑み、通信ケーブルの許容張力以下で安全に通信ケーブルを引込むためには、内層材12の内面の静摩擦係数が0.5以下であることが望ましく、この値以下となる内層材12(エラストマ)を選定している。この場合、図9に示すように、内層材12として、酢酸ビニル系エラストマ(含有比率:50%)を含んだ軟質塩化ビニル樹脂組成物を使用した実験例(硬度:68)では、この内層材12の内面に対し試験棒Zを矢印方向に引張ると、荷重計Z1により0.35〜0.45の内面静摩擦係数が計測され、良好な内層材12であることが確認された。なお、試験棒Zとしては、長さ250mm、外径34mm、重さ1kgのポリエチレン製のものを使用した。
【0031】
したがって、本実施の形態では、第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aが、その第1突条部184の先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第1係合部側突条173に近付くように傾斜している。その上、第1係合部側突条173の対峙面173aも、その第1係合部側突条173の先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第2係合部側突条183の第1突条部184に近付くように傾斜している。このため、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第2係合部側突条183の第1突条部184に当接した第1係合部側突条173は、前記第2係合部側突条183の第1突条部184の先端側になるに従い当該第1突条部184の対峙面183aに対する掛かりが強くなって管本体11の半径方向外方に移動し難くなる。これにより、管本体11を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aからの第1係合部側突条173の離脱が防止され、管本体11の巻き構造を円滑に保持することができる。
【0032】
また、第2係合部側突条183は、第1係合部側突条173よりも管本体11の軸線方向に厚肉に形成されているものの、その先端向きに開口する凹部180を存して管本体11の軸線方向に第1突条部184と第2突条部185とに分割されて外方に開放する略V字状に成形されているので、第1突条部184及び第2突条部185により第1係合部13(第1係合部本体17)が内側から満遍なく支えられ、管本体11の扁平を効率よく防止することができる。しかも、凹部180によって第2係合部側突条183の材料が削減されて、可撓性合成樹脂管1(管本体11)のコストの低廉化を図ることもできる。
また、第2係合部側突条183が第1突条部184と第2突条部185とに分割されていることにより、厚肉となる第2係合部側突条183の余熱が迅速に放熱され、射出成形された帯状体15を螺旋状に巻き回して管本体11を形成した際に、第1係合部本体17の外壁部171に対し摺接する第2係合部側突条183の第1突条部184及び第2突条部185の先端での融着が緩和されて、第1係合部13と第2係合部14との互いに軸線方向への摺動が円滑に行われることになり、管本体11の成形が容易に行える。
【0033】
更に、管本体11を湾曲させた際にその内周側において垂直壁部16の第1係合部側面16a(図6では右側面)と当接する第1係合部側突条173の反対峙面173bは、垂直壁部16の第1係合部側面16aとの間に第1係合部側突条173の基端側になるに従い管本体11の軸線方向に漸増する空間を形成するように傾斜しているので、管本体11を湾曲させた際にその内周側において前記垂直壁部16の第1係合部側面16aと前記第1係合部側突条173の反対峙面173bとが前記空間を閉ざすように当接する。このため、許容曲げ半径(例えば、0.3mR程度)が規定される光ファイバーケーブルなどの通信ケーブルを可撓性合成樹脂管1の内部に収容していても、管本体11を湾曲させた際にその内周側において前記両面16a,173b同士を当接させることによってそれ以上の曲げが規制される。これにより、通信ケーブルの断線などによる不具合を確実に防止することができる。
【0034】
しかも、地震などの地盤の変動によって管本体11に軸線方向の大きな力が作用して当該管本体11が伸びた際に、先端側になるに従い掛かりが強くなる方向に傾斜つまり先端側が第1係合部の突条寄りとなるように傾斜している第1係合部側突条173の対峙面173aが、先端側になるに従い掛かりが強くなる方向に傾斜つまり先端側が第1係合部側突条173寄りとなるように傾斜している第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aに対し、強く当接する。このとき、第1係合部側突条173と第2係合部側突条183の第1突条部184との当接により、第2係合部側突条183の第1突条部184の先端が反第1係合部側突条173側に撓んでも、先端側が第2係合部側突条183の第1突条部184寄りに傾斜している第1係合部側突条173の対峙面173aと先端側が第1係合部側突条173寄りに傾斜している第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aとの当接によって、第1係合部側突条173が第2係合部側突条183の第1突条部184を軸線方向に乗り越えることなく円滑に持ち堪えられる。これにより、地震などの地盤の変動によって管本体11が伸びても、管本体11の巻き構造を円滑に保持することができる。
【0035】
なお、前記第1の実施の形態では、第1係合部側突条173の対峙面173aも、その第1係合部側突条173の先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第2係合部側突条183の第1突条部184に近付くように傾斜させたが、図10に示すように、第1係合部側突条173の対峙面173aが、管本体11の軸線と直交する直交面と平行に延びていてもよい。この場合においても、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第1係合部側突条173は、第2係合部側突条183の第1突条部184の先端側になるに従い当該第1突条部184の対峙面183aに対する掛かりが強くなって管本体11の半径方向外方に移動し難くなる。これにより、管本体11を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aからの第1係合部側突条173の離脱が防止され、管本体11の巻き構造を円滑に保持することが可能となる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態を図11〜図15に基づいて説明する。
この実施の形態では、第1係合部側突条及び第2係合部側突条の第1突条部の先端にそれぞれ係合片を設けている。なお、係合片を除くその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
すなわち、本実施の形態では、図11〜図15に示すように、第1係合部側突条173及び第2係合部側突条183の第1突条部184は、その互いの対峙面173a,183aの先端部位よりそれぞれ管本体11の軸線方向に突出する係合片177,187を備えている。この各係合片177,187は、前記第1係合部側突条173と前記第2係合部側突条183の第1突条部184との当接時に当該第1係合部側突条173及び第2係合部側突条183の第1突条部184同士を内外径方向から係合し離脱防止できる。
この場合、各係合片177,187の突出面は、それぞれ垂直壁部16の第1係合部側面16aと平行な面に形成されている。また、第2係合部側突条183の第1突条部184における対峙面183aは、係合片187を除く基端側のみが傾斜している。
【0037】
この場合には、第1係合部側突条173と第2係合部側突条183の第1突条部184とが互いの係合片177,187によって内外径方向から係合されているので、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第2係合部側突条183の第1突条部184に当接した第1係合部側突条173の係合片177が第2係合部側突条183の第1突条部184の係合片187と係合し、第2係合部側突条183(第1突条部184)の対峙面183aに沿って管本体11の半径方向外方に移動することがより一層防止される。これにより、管本体11を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aからの第1係合部側突条173の離脱が確実に防止され、管本体11の巻き構造を効果的に保持することができる。
【0038】
しかも、地震などの地盤の変動によって管本体11に軸線方向の大きな力が作用して当該管本体11が伸びた際に、先端側が第1係合部の突条寄りとなるように傾斜している第1係合部側突条173の対峙面173aが、先端側が第1係合部側突条173寄りとなるように傾斜している第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aに対し、強く当接する。このとき、第1係合部側突条173と第2係合部側突条183の第1突条部184との当接により、第1係合部側突条173の先端が反第2係合部側突条183側に、第2係合部側突条183の第1突条部184の先端が反第1係合部側突条173側にそれぞれ撓んでも、互いの係合片177,187同士の係合によって、第1係合部側突条173が第2係合部側突条183の第1突条部184を軸線方向に乗り越えることなく確実に持ち堪えられる。これにより、地震などの地盤の変動によって管本体11が伸びても、管本体11の巻き構造を確実に保持することができる。
【0039】
なお、前記第2の実施の形態では、第1係合部側突条173及び第2係合部側突条183の第1突条部184の互いの対峙面173a,183aの先端部位にそれぞれ管本体11の軸線方向に突出する係合片177,187を設けたが、図16及び図17に示すように、第1係合部側突条173及び第2係合部側突条183の第1突条部184の互いの対峙面173a,183aに、それぞれ基端から先端に亘って連続的に突出する断面略三角形状の複数の係合片201,202が設けられていてもよい。この場合には、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第1係合部側突条173と第2係合部側突条183の第1突条部184とが対峙面173a,183a同士の当接によって速やかに係合片201,202同士が係合し、第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aに対する第1係合部側突条173の対峙面173aの掛かりが強固になって管本体11の半径方向外方への移動が規制される。これにより、管本体11を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aからの第1係合部側突条173の離脱がより確実に防止され、管本体11の巻き構造を強固に保持することが可能となる。
【0040】
また、前記第2の実施の形態では、第2係合部側突条183を第1突条部184と第2突条部185とに分割して外方に開放する略V字状に成形したが、図18及び図19に示すように、第1係合部側突条173も、第2係合部側突条183と同様に管本体11の軸線方向に厚肉に形成し、その先端向きに開口する凹部203を存して管本体11の軸線方向に第1突条部204と第2突条部205とに分割されて内方に開放する略V字状に成形されていてもよい。そして、前記第1突条部204は、第2係合部側突条183側(図18及び図19では右側)に位置し、その第1係合部側突条183側の面が第2係合部側突条173の対峙面173aとなっている。また、前記第2突条部205の垂直壁部16側(図18及び図19では左側)の面が第2係合部側突条173の反対峙面173bとなっている。更に、前記第1係合部側突条173の第1突条部204及び第2係合部側突条183の第1突条部184の互いの対峙面173a,183aの先端部位に、それぞれ管本体11の軸線方向に突出する係合片177,187が設けられている。
この場合においても、第1係合部側突条173の第1突条部204と第2係合部側突条183の第1突条部184とが互いの係合片177,187によって内外径方向から係合されているので、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第2係合部側突条183の第1突条部184に当接した第1係合部側突条173の第1突条部204の係合片177が第2係合部側突条183の第1突条部184の係合片187と係合し、第2係合部側突条183(第1突条部184)の対峙面183aに沿って管本体11の半径方向外方に移動することがより一層防止される。これにより、管本体11を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183aからの第1係合部側突条173の第1突条部204の離脱が確実に防止され、管本体11の巻き構造を効果的に保持することが可能となる。しかも、第1係合部側突条173も、第2係合部側突条183と同様に管本体11の軸線方向に厚肉に形成されている上、その先端向きに開口する凹部203を存して管本体11の軸線方向に第1突条部204と第2突条部205とに分割されて内方に開放する略V字状に成形されているので、第1突条部204及び第2突条部205により第2係合部14(第2係合部本体18)が外側から満遍なく支えられ、管本体11の扁平をより効率よく防止することが可能となる上、凹部203によって第1係合部側突条173の材料が削減されて可撓性合成樹脂管1(管本体11)のコストの低廉化を図ることも可能となる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施の形態を図20〜図24に基づいて説明する。
この実施の形態では、第2係合部側突条の形状を変更している。なお、第2係合部側突条を除くその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
すなわち、本実施の形態では、図20〜図24に示すように、第2係合部本体18は、内壁部181の略中央部から先端(図21では右端)に至る広い範囲から管本体11の半径方向外方向き(図21では上方)に突設された第2係合部側突条188(突条)を備えている。この第2係合部側突条188は、第1係合部側突条173よりも前記管本体11の軸線方向に厚肉(例えば2〜3倍程度の厚肉)に形成されている。
【0042】
また、前記第2係合部側突条188の対峙面188aは、その第2係合部側突条188の先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第1係合部側突条173に近付くように傾斜している。
【0043】
したがって、本実施の形態では、第2係合部側突条188の対峙面188aが、その第2係合部側突条188の先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第1係合部側突条173に近付くように傾斜しているので、第1係合部側突条173の対峙面173aの傾斜と相俟って、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第2係合部側突条188に当接した第1係合部側突条173は、前記第2係合部側突条188の先端側になるに従い当該第2係合部側突条188の対峙面188aに対する掛かりが強くなって管本体11の半径方向外方に移動し難くなる。これにより、管本体11を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条188の対峙面188aからの第1係合部側突条173の離脱が防止され、管本体11の巻き構造を円滑に保持することができる。
【0044】
また、第2係合部側突条188が、第1係合部側突条173よりも管本体11の軸線方向に厚肉に形成されているので、第2係合部側突条188により第1係合部13が内側から支えられ、管本体11の扁平を防止することができる。
【0045】
次に、本発明の第4の実施の形態を図25〜図27に基づいて説明する。
この実施の形態では、前記第3の実施の形態の第1係合部側突条及び第2係合部側突条の先端にそれぞれ係合片を設けている。なお、係合片を除くその他の構成は、前記第3の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
すなわち、本実施の形態では、図25〜図27に示すように、第1係合部側突条173及び第2係合部側突条188は、その互いの対峙面173a,188aの先端部位よりそれぞれ管本体11の軸線方向に突出する係合片177,187を備えている。この各係合片177,187は、前記第1係合部側突条173と前記第2係合部側突条188との当接時に当該第1係合部側突条173及び第2係合部側突条188同士を内外径方向から係合している。この場合、各係合片177,187の突出面は、それぞれ管本体11の軸線方向と直交する直交面と平行に形成されている。また、第2係合部側突条188における対峙面188aは、係合片187を除く基端側のみが傾斜している。
【0046】
この場合には、第1係合部側突条173と第2係合部側突条188とが互いの係合片177,187によって内外径方向から係合されているので、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第2係合部側突条188に当接した第1係合部側突条173は、その係合片177が第2係合部側突条188の係合片187と係合し、第2係合部側突条188の対峙面188aに沿って管本体11の半径方向外方に移動することが防止される。これにより、管本体11を湾曲させた際にその外周側での第2係合部側突条188の対峙面188aからの第1係合部側突条173の離脱が確実に防止され、管本体11の巻き構造を効果的に保持することができる。
【0047】
なお、本発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記各実施の形態では、第2係合部側突条183,188を第1係合部側突条173よりも管本体11の軸線方向に厚肉に形成したが、外周側での円周長Co、及び内周側での円周長Ci、第1係合部本体17の外壁部171の軸線方向の長さP1に基づいて、スライド量Sを前述した式(S=(Co−Ci)×P1/Ci)の関係を満たす帯状体の断面であれば、図28に示すように、第2係合部側突条189が第1係合部側突条173とほぼ同等の管本体11の軸線方向の厚さに形成されていてもよい。加えて、この変形例では、第2係合部側突条189の対峙面189aをその第2係合部側突条188の先端側になるに従い管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第1係合部側突条173に近付くように傾斜させる一方、第1係合部側突条173の対峙面173aを管本体11の軸線と直交する直交面と平行に延ばしたが、第1係合部側突条の対峙面については、その第1係合部側突条の先端側になるに従い管本体の軸線方向でこれと直交する直交面に対し第2係合部側突条に近付くように傾斜させていてもよいのはいうまでもない。
また、図29に示すように、前記変形例で述べた第2係合部側突条189及び第1係合部側突条173に、その互いの対峙面173a,189aの先端部位よりそれぞれ管本体11の軸線方向に突出する係合片177,187が設けられていてもよい。この場合には、第1係合部側突条173の対峙面173a及び第2係合部側突条189の対峙面189aがそれぞれ傾斜しているので、管本体11を湾曲させた際にその外周側において第2係合部側突条189に当接した第1係合部側突条173の係合片177が第2係合部側突条189の係合片187と係合すると、第2係合部側突条189の対峙面189aからの第1係合部側突条173の離脱を確実に防止して、管本体11の巻き構造を効果的に保持することができる。
【0048】
また、前記各実施の形態では、第1係合部側突条173の反対峙面173bを、垂直壁部16の第1係合部側面16aとの間に第1係合部側突条173の基端側になるに従い管本体11の軸線方向に漸増する空間を形成するように傾斜させたが、垂直壁部の第1係合部側面を、第1係合部側突条の反対峙面との間に垂直壁部の外方端(管本体の半径方向外方端)側になるに従い管本体の軸線方向に漸増する空間を形成するように傾斜させたり、垂直壁部の第1係合部側面及び第1係合部側突条の反対峙面の双方を傾斜させていてもよい。
【0049】
また、前記各実施の形態では、第2係合部側突条183の第1突条部184の対峙面183a又は第2係合部側突条188,189の対峙面188a,189a、及び第1係合部側突条173の対峙面173aを管本体11の軸線方向でこれと直交する直交面に対しそれぞれ傾斜させたが、第2係合部側突条の第1突条部の対峙面又は第2係合部側突条の対峙面、及び第1係合部側突条の対峙面が管本体の軸線方向でこれと直交する直交面と平行にし、この第1係合部側突条及び第2係合部側突条の互いの対峙面にその先端部位よりそれぞれ管本体の軸線方向に突出する係合片が設けられていてもよい。この場合には、管本体を湾曲させた際にその外周側での第2係合部の突条の対峙面からの第1係合部の突条の離脱が確実に防止され、管本体の巻き構造を効果的に保持することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 可撓性合成樹脂管
11 管本体
12 内層材
13 第1係合部
14 第2係合部
15 帯状体
16a 垂直壁部の第1係合部側面(第2係合部の縦面)
173 第1係合部側突条(突条)
173a 対峙面
173b 反対峙面
177,187,201,202 係合片
180,203 凹部
183,188,189 第2係合部側突条(突条)
183a,188a,189a 対峙面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂よりなり、軸線方向の一側に沿って第1係合部が形成されかつ前記第1係合部と連結状として軸線方向の他側に沿って第2係合部が形成された帯状体が螺旋状に巻き回され、前記第1係合部とこれに隣接する第2係合部とが互いに軸線方向へ摺動自在となるように非接着状態で係合されて螺旋状に捲回して形成された管本体を有し、
この管本体の内周面に沿って軟質合成樹脂よりなる内層材が貼着された可撓性合成樹脂管において、
前記第1係合部はこれに隣接する第2係合部に対し前記管本体の半径方向外方から係合するとともに、その両係合部には、前記管本体の軸線方向で互いに対峙するように突設され、かつ当該管本体を湾曲させた際に互いに軸線方向へ摺動して当接する突条がそれぞれ設けられており、
前記第2係合部の突条の対峙面が、その突条の先端側になるに従い前記第1係合部の突条に近付くように傾斜していることを特徴とする可撓性合成樹脂管。
【請求項2】
前記第1係合部の突条の対峙面が、その突条の先端側になるに従い前記第2係合部の突条に近付くように傾斜している請求項1に記載の可撓性合成樹脂管。
【請求項3】
前記両係合部の突条は、その互いの対峙面の先端部位よりそれぞれ軸線方向に突出し、かつ前記各突条の当接時に当該各突条同士を内外径方向から係合する係合片を備えている請求項1又は請求項2に記載の可撓性合成樹脂管。
【請求項4】
前記第2係合部の突条が、前記第1係合部の突条よりも前記管本体の軸線方向に厚肉に形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の可撓性合成樹脂管。
【請求項5】
前記第2係合部の突条が、その先端向きに開口する凹部と、この凹部によって前記管本体の軸線方向に分割された複数の突条部とを備えている請求項4に記載の可撓性合成樹脂管。
【請求項6】
前記第1係合部の突条の反対峙面と、この第1係合部に隣接する第2係合部の縦面とは、前記管本体を湾曲させた際にその内周側において互いに当接しており、
前記第1係合部の突条の反対峙面及び前記第2係合部の縦面のうちの少なくとも一方が、当該両面間に前記第1係合部の突条の基端側になるに従い管本体の軸線方向に漸増する空間を形成するように傾斜している請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の可撓性合成樹脂管。
【請求項7】
合成樹脂よりなり、軸線方向の一側に沿って第1係合部が形成されかつ前記第1係合部と連結状として軸線方向の他側に沿って第2係合部が形成された帯状体が螺旋状に巻き回され、前記第1係合部とこれに隣接する第2係合部とが互いに軸線方向へ摺動自在となるように非接着状態で係合されて螺旋状に捲回して形成された管本体を有し、
この管本体の内周面に沿って軟質合成樹脂よりなる内層材が貼着された可撓性合成樹脂管において、
前記第1係合部はこれに隣接する第2係合部に対し前記管本体の半径方向外方から係合するとともに、その両係合部には、前記管本体の軸線方向で互いに対峙するように突設され、かつ当該管本体を湾曲させた際に互いに軸線方向へ摺動して当接する突条がそれぞれ設けられており、
前記両係合部の突条は、その互いの対峙面の先端部位よりそれぞれ軸線方向に突出し、かつ前記各突条の当接時に当該各突条同士を内外径方向から係合する係合片を備えていることを特徴とする可撓性合成樹脂管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−208686(P2011−208686A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75156(P2010−75156)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】